JP5640694B2 - 直流ランプ点灯装置 - Google Patents
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Description
すなわち、ランプを定電力制御で点灯する場合は、ランプ電流が相対的に高いランプの点灯初期において電極部材の蒸発損耗が最も顕著となることが判った。
そして、コイルから蒸発するタングステンは、発光管の放電容器の内面に付着して発光管の黒化を生じさせる原因となる場合があり、更に、コイルの蒸発損耗が進行すると、コイルの線径が次第に細くなって、その一部が欠落することがあり、これらの現象は、ランプ寿命特性を悪化させる要因となる。
この光源装置31にあっては、楕円反射鏡34で集光した光をライトガイド33に導く際に、フィルタ36で反射された光成分の一部が、楕円反射鏡9の一次焦点付近に戻って、その一次焦点位置付近に配された放電容器内の電極部材の温度を上昇させるために、電極部材の蒸発損耗がより顕著なものとなる。
前記PWM制御回路は、ランプ動作電流を定格電流より低く設定された一定の目標電流値に維持する電流優先制御手段と、前記電流優先制御手段により低電流化されたことにより落ち込んだ電力分を補って平均電力を定格電力に維持する電力優先制御手段と、これら各制御手段を予め設定されたミリ秒オーダーの制御周期で交互に切り換えるタイミング制御手段とを備え、
前記電力優先制御手段による一回の連続制御時間をTp、電流優先制御手段による一回の連続制御時間Td、Tp+Tdで定義される1サイクルの制御時間をTsとしたときに、夫々の制御時間が、
1≦Ts≦10(msec)
0.1≦Td/Ts<0.5
を満たすことを特徴としている。
電流優先制御手段により給電されている間は、ランプ動作電流が、ランプ電圧によらず定格電流より低く設定された一定の目標電流値に維持されているので、通常点灯時に比して低電流化され、電極部材の温度上昇による蒸発損耗が抑制されて寿命特性が良化する。
また、電力優先制御手段により給電されている間は、電流優先制御手段により低電流化されたことにより落ち込んだ電力分を補って平均電力が定格電力に維持されるので、1サイクルの制御周期内で定電力制御されていることとなり、累積点灯時間の増大に伴いランプ電圧が上昇した場合であっても、定電流制御のようにランプ入力電力が上昇してランプが破壊されることもない。
さらに、電流優先制御手段による給電と電力優先制御手段による給電が、ミリ秒オーダーの周期で実行され、その周期が極めて短いので、ランプ動作電流の変動によるちらつきも生じないという優れた効果がある。
高圧放電ランプ3は、発光管4の放電容器5内に一対の電極6A,6Bが対向して配置され、陰極となる電極6Aは、タングステンで形成された電極ロッド7の先端側に当該電極ロッド7を所定長さ露出させた状態でコイル8が巻回され、陽極となる電極6Bは先丸状のロッドで形成され、発光管4の陽極側が、反射鏡9のネック部10に挿通されて固定されている。
本例の高圧放電ランプ3は、定格電力Pc=100W、定格電圧Ec=100V、定格電流Ic=1Aのものを用いた。
そして、検出されたランプ電流を定格電流より低く設定された一定の目標電流値に維持する電流優先制御手段23と、前記電流優先制御手段23により低電流化されたことにより落ち込んだ電力分を補って平均電力を定格電力に維持する電力優先制御手段24と、これら各制御手段を予め設定されたミリ秒オーダーの制御周期で交互に切り換えるタイミング制御手段25と、前記電流優先制御手段23及び電力優先制御手段24により決定されたデューティ比に応じたPWM信号を出力する生成するPWM信号生成器26を備えている。
なお、目標電流値Idは、式(1)を満足することが好ましい。
0.45Ic≦Id≦0.9Ic ………(1)
目標電流値Idが0.45Ic未満では、放電が不安定になって立消えが発生するおそれがあり、0.9Icを超えると、電流低下によるコイル温度上昇抑止効果が得られないからである。
また、目標電流値Idは、式(1)の条件を満たし、且つ、定格電力Pcに維持して点灯している場合に、ランプ電圧ELが累積点灯時間に応じて上昇する放電ランプ3の寿命末期時におけるランプ電流IL以下に設定されていることが望ましい。
そして、電流検出回路16と電圧検出回路17で検出された瞬時ランプ電流IL及び瞬時ランプ電圧ELの積から瞬時ランプ電力PL=IL×ELを算出し、さらに、1サイクルの制御周期の開始か終了までの積算電力量Wsをその都度記憶していく。
PWM信号のデューティ比は、算出された瞬時ランプ電力PLを目標電力Pfと比較し、その差に基づいて決定すると共に、瞬時ランプ電力PLが目標電力Pfに達したときは、積算電力量Wsが目標積算電力量Wcと一致するように、その都度、目標電力Pfを修正する。
このとき、これらの制御時間は式(2),(3)を満足することが好ましい。
1≦Ts≦10(msec) ………(2)
0.1≦Td/Ts<0.5 …………(3)
制御周期Tsが1msec未満では、電流低下によるコイル温度上昇抑止効果が得られず、10msecを超えると、ちらつき感が増加し実用上好ましくないからである。
また、Td/Tsが0.1未満では、制御周期Tsが下限値にときに応答速度の問題でランプ電流が下がりきらないため、温度上昇抑止効果が得られず、0.5を超えると、Tsが上限値のときに電極先端温度が低下しすぎて放電が不安定になるためである。
グラフは、式(2)及び(3)の条件を示し、Ts=1、Td=0.5Ts、Ts=10、Td=0.1Tsの4本の線で囲まれた斜線部分が式(2)及び(3)の条件を満たす部分である(境界条件は式(2)及び(3)に従う)。
そして、目標電流値Idを式(1)の条件の範囲で変化させ、制御周期Ts及び定電流制御時間Tdを式(2)及び(3)の条件で変化させて実験を行ったところ、放電が不安定になったり、立ち消えしたり、ちらつきを生じたりすることなく、電極部材の温度上昇による蒸発損耗を効果的に抑制して、寿命特性を向上させることができた。
スイッチ(図示せず)をオンして、イグナイタ回路15より始動パルスが発せられ、高圧放電ランプ3が点灯すると、処理が実行開始される。
まず、ステップSTP1でタイマを起動させて制御開始からの時刻tnを計時し、ステップSTP2で電流検出回路16及び電圧検出回路17からランプ電流IL及びランプ電圧ELを検出し、ステップSTP3でランプ電力PL=IL×ELを算出し、ステップSTP4で1サイクルの制御周期Tsの開始から現時点までの時刻tnにおける積算電力量Wnを算出し、所定の記憶領域に記憶していく。
時間ΔTにおける電力量ΔWは、
ΔW=ランプ電力PL×データ検出時間ΔT
であるから、積算電力量Wnは、
Wn=Σ(PL×ΔT)
で算出できる。
そして、時刻tn<Tdであれば、電流優先制御を行うためにステップSTP6に移行し、予め設定された目標電流値Idを所定の記憶領域から読み出し、ステップSTP7に移行して、検出された瞬時ランプ電流ILと目標電流値Idとを比較し、IL=IdであればステップSTP8に移行して現在のPWM信号のデューティ比を維持し、IL≠IdであればステップSTP9に移行してその差に応じてPWM信号のデューティ比を増減する。
一般に放電ランプは負性特性を有するため、ランプ電流ILを低下させるには、PWM信号のデューティ比を高く、つまりオン時間を長くする必要がある。
そこで、ステップSTP9でランプ電流を低下させる場合は、目標電流値Idとの差に応じてPWM信号のデューティ比を高くするように調整し、ランプ電流を上昇させる場合はデューティ比を低くするように調整する。
1サイクルの制御周期Tsの開始からの経過時間をtnとすると、定格電力Pcが供給されたと仮定したときの積算電力量Wcは、
Wc=Pc×tn
であり、それまでの積算電力量WnはステップSTP3で算出されているから、不足している電力量Wxは、
Wx=Wc−Wn=Pc×tn−Wn
で表される。この不足電力量Wxを1サイクルの制御周期Tsの残りの時間で上乗せすればよいから、上乗せする電力量ΔPnは、
ΔPn=Wx/(Ts−tn)
で表され、目標ランプ電力Pfは、
Pf=Pc+ΔPn
=Pc+(Pc×tn−Wn)/(Ts−tn)
で算出できる。
逆に、ランプ電力を減少させる場合は、目標電力Pfとの差に応じてPWM信号のデューティ比を増加させ、これによって、目標電力Pfとの差が小さくなれば一致するまで増加させる制御を行い、デューティ比の増加により目標電力Pfとの差が大きくなればデューティ比を減少させる制御を行えばよい。
なお、ランプ電力はランプ電圧値にランプ電流値を乗じれば算出される。
ステップSTP16では、電力優先制御を継続するか否かを時刻tn<Tsで判断し、tn<Tsの場合は、電力優先制御を継続すべくそのままステップSTP2に戻り、tn≧Tsの場合は、電力優先制御を終了して電流優先制御を実行させるためステップSTP17で時刻tn=0にリセットし再起動してから、ステップSTP2に戻る。
図5(a)はPWM信号、(b)はランプ電流IL、(c)はランプ電圧EL、(d)はランプ電力PLを示す。
時刻tnがTdより小さいときは、電流優先制御が実行され、検出されたランプ電流ILが目標電流値Id(0.8A)まで低下されるようにPWM制御が行われる。
ランプ電流を低下させる場合は、目標電流値Idとの差に応じてPWM信号のデューティ比を高くするように調整する。
この場合、ランプ電圧ELは図5(c)に示すように定格電圧Ecより高くなり、ランプ電力PLは図5(d)に示すように定格電力Pcより低めであった。
したがって、電流優先制御が行われている間は、電力が低めに維持されるので、1サイクルの制御周期内で定電力制御とするためには電力優先制御ではその不足分を補う必要がある。
1サイクルの制御周期の開始から時刻tnまでの電力量の不足分Wxに基づき目標ランプ電力Pfが算出され(ステップSTP11)、ランプ電力PL=Pfとなるようにデューティ比が決定される。
ランプ電力PLを増加させるためには、ランプ電圧ELとランプ電流ILの積を増加させる必要があり、ランプ電圧ELとランプ電流ILをモニタしてその積を算出しながら、目標電流値Idとの差に応じて、PWM信号のデューティ比が例えばd1/d0=40%と低くなるように設定される。
放電ランプ3は累積点灯時間の増加に伴って電極6A,6B先端部の蒸発損耗が進行することにより電極間距離が長くなり、ランプ電圧が上昇する傾向にある。
本例では、図6(a)に示すように定電力制御が行われているが、図6(b)に示すように累積点灯時間の増加に伴って平均ランプ電圧EAVは徐々に上昇し、ランプの種類によっても異なるが寿命末期まで約10%程上昇する傾向にある。
これに伴い平均ランプ電流IAVは、図6(c)に示すように、点灯初期において定格電流Icと同程度であり、累積点灯時間の増加に伴い徐々に低下して、寿命末期において約10%程低下するが、平均ランプ電流IAVが低下すればするほど、電極部材の加熱が抑制されて蒸発損耗の弊害も低減される。
点灯初期の平均ランプ電流IAVが定格電流Icと同程度であり、寿命末期に至るまで徐々に低下して0.9Aまで低下する場合に、点灯初期においては、平均ランプ電流IAVと目標電流Idとの差ΔI=IAV−Id=0.15Aと大きいため、低電流化による温度抑制効果が高い。
一方、寿命末期に近づくにつれて平均ランプ電流IAVが低下してくると、電極先端の加熱が抑制されて蒸発損耗の弊害も低減されるだけでなく、これに伴って、目標電流Idとの差ΔI=IAV−Idも小さくなって、低電流化による温度抑制効果が自動的に緩和されていく。
したがって、電極部材の蒸発損耗の程度が少なくなるのに伴って、電流優先制御時のランプ電流の低下に伴う加熱抑制効果も自動的に緩和されることとなり、電極先端が冷却され過ぎて放電が不安定になることもない。
さらに、電流優先制御手段23による給電と電力優先制御手段24による給電が、ミリ秒オーダーの周期(最長10msec)で交互に実行され、その周期は、人間の視力の時間分解能より十分小さいので、ランプ電流の変動によるちらつきを感じることもない。
放電ランプ3は、楕円反射鏡9の一次焦点位置に発光管4の放電容器5の中心(発光点)が配され、その二次焦点に集光された光が、光出射口34に接続されたライトガイド33に導かれるように成っている。
そして、光出射口34とランプユニット32との間に位置する二次焦点近傍には波長選択フィルタ及び/又は減光フィルタなどのフィルタ36が介装されている。
次いで、この放電ランプ3を反射鏡9に装着し、光源装置31に組み込んで点灯させても、寿命時間(3000時間)を通じてコイル8が著しく損耗する程度までに加熱されることはなかった。
すなわち、本発明に係る点灯装置1によれば、従来の定電力制御を行う場合に比して、コイル8の最高温度の温度差が200℃もあり、その分、電極軸に巻装されたコイルの温度上昇を抑制することができた。
次いで、この放電ランプ3を反射鏡9に装着し、光源装置31に組み込んで、従来の定電力制御により点灯させた場合は、コイル8が加熱されて蒸発損耗し、その一部が欠落するものが見受けられた。
2 交流電源
3 高圧放電ランプ
4 発光管
5 放電容器
6A,6B 電極
7 電極ロッド
8 コイル
9 反射鏡
13 スイッチング素子
14 降圧チョッパ回路
15 イグナイタ回路
21 PWM制御回路
23 電流優先制御手段
24 電力優先制御手段
25 タイミング制御手段
26 PWM信号生成器
Claims (6)
- 発光管の放電容器内に一対の電極が対向して配置された直流点灯型の高圧放電ランプに対し、安定点灯時に供給される直流電力をPWM制御により調整するスイッチング素子を有する降圧チョッパ回路と、ランプ動作電流及びランプ動作電圧に基づいて算出されたランプ動作電力が予め設定された定格電力に維持されるように前記スイッチング素子に供給されるPWM信号のデューティ比を決定して定電力制御を行うPWM制御回路とを備えた直流ランプ点灯装置において、
前記PWM制御回路は、ランプ動作電流を定格電流より低く設定された一定の目標電流値に維持する電流優先制御手段と、前記電流優先制御手段により低電流化されたことにより落ち込んだ電力分を補って平均電力を定格電力に維持する電力優先制御手段と、これら各制御手段を予め設定されたミリ秒オーダーの制御周期で交互に切り換えるタイミング制御手段とを備え、
前記電力優先制御手段による一回の連続制御時間をTp、電流優先制御手段による一回の連続制御時間Td、Tp+Tdで定義される1サイクルの制御時間をTsとしたときに、夫々の制御時間が、
1≦Ts≦10(msec)
0.1≦Td/Ts<0.5
を満たすことを特徴とする直流ランプ点灯装置。 - 前記電流優先制御手段によりランプ動作電流が維持される目標電流値は、定格電流より低く、且つ、寿命末期におけるランプ電流値以下に設定された請求項1記載の直流ランプ点灯装置。
- 前記電流優先制御手段によりランプ動作電流が維持される目標電流値をId、ランプの設計値である定格電流をIcとしたときに、
0.45Ic≦Id≦0.9Ic
である請求項1又は2記載の直流ランプ点灯装置。 - 放電容器内に一対の電極が対向して配置され、陰極となる電極ロッドの先端側に電極ロッドを所定長さ露出させた状態でコイルが巻回された直流点灯型の高圧放電ランプを光源とし、請求項1乃至3いずれか記載の直流ランプ点灯装置を備えたことを特徴とする光源装置。
- 前記高圧放電ランプに、該ランプの発光点を一次焦点位置に配して、その発光点から放射される光を二次焦点に集光させる楕円反射鏡が取り付けられている請求項4記載の光源装置。
- 前記高圧放電ランプに、該ランプの発光点から放射される光を反射させて平行光にする放物面反射鏡が取り付けられると共に、該反射鏡の前方に前記平行光を集光させるレンズ系が配設されている請求項4記載の光源装置。
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