以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれることが理解されるべきである。
I.(メタ)アクリル酸エステル化合物:
(メタ)アクリル酸エステル化合物は、
下記一般式(0)で表される化合物であり、その構造中に(メタ)アクリル酸構造を有しているので、ラジカル反応等の従来公知の重合反応により重合体を与えるものである。
(前記一般式(0)中、R 1 は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R 2 及びR 3 は、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。Rfは、少なくとも1つのフッ素原子を有するとともに、−COOR 4 (但し、R 4 は、水素原子、酸解離性基、又は炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表される基を有する有機基を示す。なお、R 2 、R 3 、及びRfのうち、いずれか2つが相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに環状構造を形成してもよい。)
前記一般式(0)中、R2及びR3として表される基のうち、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格等の有橋式骨格や、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン骨格を有する基がある。なお、これらの基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基の1種又は1個以上で置換した基等であってもよい。
また、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。
(メタ)アクリル酸エステル化合物を合成する方法は特に限定されるものではなく、例えば、下記反応式(2)で表されるように対応する(メタ)アクリル酸(0−1)と、アルコール誘導体(0−2)をトリエチルアミン等の塩基存在下、溶媒中で反応させることにより合成することができる。
(一般式(0−1)中、R
1は、前記一般式(0)中のR
1と同義である。また、一般式(0−2)中、R
2、R
3、及びRfは、前記一般式(0)中のR
2、R
3、及びRfと同義である。)
II.重合体:
重合体は、後述する本発明の感放射線性樹脂組成物の(A)重合体成分に含まれる第一の重合体であり、「I.(メタ)アクリル酸エステル化合物」に記載の(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体である。即ち、前記繰り返し単位(a1)を有する重合体であり、その構造中にフッ素部位を有するため、感放射線性樹脂組成物を構成する(A)重合体成分に含まれると、感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト被膜を形成した際に、レジスト被膜中の第一の重合体の撥油性的特長により、その分布がレジスト被膜表面で高くなる傾向がある。そのため、液浸露光時において、レジスト被膜中の(C)酸発生剤や酸拡散制御剤等が、水等の液浸露光液に溶出することを抑制することができる。また、第一の重合体の撥水性的特長により、レジスト被膜と液浸露光液との後退接触角が高くなる。そのため、液浸露光液に由来する水滴がレジスト被膜上に残り難く、高速でスキャン露光を行ってもウォーターマーク等の液浸露光液に起因する欠陥の発生を抑制することができる。更に、従来使用されてきた液浸用上層膜と併用することで、(C)酸発生剤等の液浸露光液への溶出を更に低減できる他、レジストの撥水性が高くウォーターマーク等の液浸露光液由来の欠陥の発生を更に抑制することができる。
即ち、重合体は、液浸露光工程、即ち、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光液(例えば、水等)をレンズとレジスト被膜との間に介して放射線を照射して露光する液浸露光工程を含むレジストパターン形成方法において、レジスト被膜を形成するための材料として特に好適に用いることができる。
1.構成成分:
(1)繰り返し単位(a1):
前記一般式(1−1)中、R2及びR3として表される基としては、前記一般式(0)中のR2及びR3として表される基と同義である。
前記繰り返し単位(a1)は、前記繰り返し単位(1−1)である。
前記一般式(1−1)中、R 5として表される基のうち、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数1〜10の2価の飽和若しくは不飽和の脂環式炭化水素基としては、メチレン基;エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、2−メチルプロピレン基、1−メチルプロピレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基に由来する2価の炭化水素基;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン等のシクロアルカン類の水素原子を2つ取り除いた基;ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素の水素原子を2つ取り除いた基がある。
更に、Xとして表される基のうち、少なくとも1つのフッ素原子を有する炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、イコサレン基等の直鎖状のアルカンジイル基;1,2−プロピレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等の分岐状のアルカンジイル基;1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等の炭素数3〜10の単環型シクロアルキレン基;1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の多環型シクロアルキレン基;フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子で置換した基がある。
また、Rpとして表される基のうち、酸解離性基とは、カルボキシル基の水素原子を置換する基であって、酸の存在下で解離する基をいう。より具体的には、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基や、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基等がある。なお、アルコキシ置換メチル基におけるアルコキシ基(置換基)としては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基がある。また、アルキルスルファニル置換メチル基におけるアルキル基(置換基)としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基がある。
また、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基;
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン等のシクロアルカン類等の脂環式炭化水素に由来する基;ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素に由来する基がある。但し、Rpとして表される基のうち、炭素数1〜20の炭化水素基には、酸解離性基に該当するものは含まれない。
なお、炭素数1〜20の炭化水素基は、上述の非置換の炭化水素基における少なくとも1つの水素原子を、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、酸素原子等の1種又は2種以上により置換された基であってもよい。
繰り返し単位(a1)の含有割合は、重合体を構成する全繰り返し単位100mol%に対して、20〜100mol%であることが好ましく、40〜100mol%であることが更に好ましく、50〜100mol%であることが特に好ましい。含有割合が20mol%未満であると、重合体としての撥水性を十分に保つことができないおそれがある。
重合体は、繰り返し単位(a1)以外に、酸解離性基を有する繰り返し単位(但し、繰り返し単位(a1)に該当するものを除く。以下、「繰り返し単位(a2)」ともいう)、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位(但し、繰り返し単位(a1)に該当するものを除く。以下、「繰り返し単位(a3)」ともいう)、アルカリ反応性基を有する繰り返し単位(但し、繰り返し単位(a1)に該当するものを除く。以下、「繰り返し単位(a4)」ともいう)、フッ素原子を有する繰り返し単位(但し、繰り返し単位(a1)に該当するものを除く。以下、「繰り返し単位(a5)」ともいう)を更に有していてもよい。
(2)繰り返し単位(a2):
重合体が繰り返し単位(a2)を有する重合体である場合、レジスト被膜の前進接触角と後退接触角との差を小さくすることができ、露光時のスキャン速度向上に対応することができる。
繰り返し単位(a2)の好適例としては、下記一般式(3)で表される繰り返し単位がある。
(一般式(3)中、R
6は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。複数のR
7は、相互に独立に、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示す。但し、いずれか2つのR
7が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成し、残りの1つのR
7が、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であってもよい。)
一般式(3)中、R7として表される基のうち、炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。また、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基、いずれか2つのR7が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格等の有橋式骨格や、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン骨格を有する基;これらの基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基の1種又は1個以上で置換した基等であってもよい。
このような繰り返し単位の具体例としては、下記式(3−1)〜(3−4)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
(一般式(3−1)〜(3−4)中、R
6は、一般式(3)中のR
6と同義である。R
7は、一般式(3)中のR
7と同義である。但し、R
7が複数ある場合は相互に独立である。n
pは、1〜4の整数である。)
繰り返し単位(a2)は、一般式(3)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(3−2−1)で表される繰り返し単位であることが特に好ましい。
(一般式(3−2−1)中、R
6は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。R
8は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。kは、1〜4の整数である。)
一般式(3−2−1)中、R8として表される炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。
一般式(3)で表される繰り返し単位を構成するための単量体としては、特開2009−175746号公報の段落0014や0015に記載の単量体を挙げることができる。
一般式(3)で表される繰り返し単位を構成するための単量体の中でも、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロオクチルエステルが好ましい。
なお、重合体は、繰り返し単位(a2)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
重合体は、繰り返し単位(a1)及び(a2)以外にも、繰り返し単位(a3)又は(a4)を更に有するものであってもよい。この場合、現像液に対する溶解性を向上させることができる。
(3)繰り返し単位(a3):
繰り返し単位(a3)におけるアルカリ可溶性基は、現像液に対する溶解性向上の観点から、pKaが4〜11の水素原子を有する官能基であることが好ましい。このような官能基の具体例としては、下記一般式(4a−1)、下記式(4a−2)で表される官能基等を挙げることができる。
(一般式(4a−1)中、R
9は、フッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)
一般式(4a−1)中、R9として表されるフッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基は、炭素数1〜10の炭化水素基における1又は2以上の水素原子がフッ素原子に置換されたものであれば特に限定されないが、トリフルオロメチル基等が好ましい。
なお、繰り返し単位(a3)の主鎖骨格は、特に限定されるものではないが、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、又はα−トリフルオロアクリル酸エステル等の骨格であることが好ましい。
繰り返し単位(a3)としては、例えば、下記一般式(4−1)で表される繰り返し単位や、下記一般式(4−2)で表される繰り返し単位がある。
(一般式(4−1)及び(4−2)中、R
1は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R
10は、2価の連結基を示す。一般式(4−1)中、R
9は、前記一般式(4a−1)中のR
9と同義である。iは、0又は1である。)
一般式(4−1)及び(4−2)中、R10は、2価の連結基を示す。このような連結基としては、例えば、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の2価の環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、又はこれらとエーテル基、エステル基若しくはカルボニル基とを組み合わせた2価の基を挙げることができる。また、前記2価の連結基は置換基を有していてもよい。
炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基等がある。また、2価の環状の飽和又は不飽和の炭化水素基としては、例えば、炭素数3〜20の脂環式炭化水素に由来する基や炭素数6〜20の芳香族炭化水素に由来する基がある。
なお、2価の連結基は、上述の非置換の炭化水素基における少なくとも1つの水素原子を、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、酸素原子等の1種又は2種以上により置換された基であってもよい。
繰り返し単位(a3)の具体例としては、下記一般式(4−1−1)〜(4−1−2)、及び下記一般式(4−2−1)〜(4−2−5)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
(一般式(4−1−1)〜(4−1−2)及び一般式(4−2−1)〜(4−2−5)中、R
1は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。)
なお、重合体は、繰り返し単位(a3)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
(4)繰り返し単位(a4):
繰り返し単位(a4)の具体例としては、ラクトン骨格を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a4−1)」という)又は環状カーボネート骨格を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a4−2)」という)を挙げることができる。
(i)繰り返し単位(a4−1):
繰り返し単位(a4−1)としては、例えば、下記一般式(5−1−1)〜(5−1−6)で表される単量体に由来する繰り返し単位がある。
(一般式(5−1−1)〜(5−1−6)中、R
11は、水素原子又はメチル基を示す。また、一般式(5−1−1)中、R
12は、水素原子又は炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基を示し、lは、1〜3の整数を示す。更に、一般式(5−1−4)及び(5−1−5)中、R
13は、水素原子又はメトキシ基を示す。また、一般式(5−1−2)及び(5−1−3)中、Aは、単結合、エーテル基、エステル基、カルボニル基、炭素数1〜30の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせた2価の基を示し、mは、0又は1である。更に、一般式(5−1−3)及び(5−1−5)中、Bは、酸素原子又はメチレン基を示す。)
一般式(5−1−1)中、R12として表される基のうち、炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。また、このアルキル基の水素原子は1つ以上置換されていてもよい。置換基の具体例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フェニル基、アセトキシ基、アルコキシ基等を挙げることができる。
一般式(5−1−2)及び(5−1−3)中、Aとして表される基のうち、炭素数1〜30の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、イコサレン基等の直鎖状のアルカンジイル基;1,2−プロピレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基等の分岐状のアルカンジイル基等がある。
また、炭素数3〜30の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等の炭素数3〜30の単環型シクロアルキレン基;1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の多環型シクロアルキレン基等がある。
更に、炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基等のアリーレン基等がある。
繰り返し単位(a4−1)を与える単量体の好適例としては、特開2010−044374号公報の段落0108に記載の単量体を挙げることができる。
(ii)繰り返し単位(a4−2):
繰り返し単位(a4−2)としては、例えば、一般式(5−2)で表される繰り返し単位がある。
(一般式(5−2)中、Rは、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R
14は、単結合又は2価の連結基を示す。R
15は、環状カーボネート構造を有する1価の有機基を示す。)
R14として表される基のうち、2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の2価の環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、又はこれらとエーテル基、エステル基若しくはカルボニル基とを組み合わせた2価の基を挙げることができる。また、2価の連結基は置換基を有していてもよい。
一般式(5−2)中、R15の具体例としては一般式(R15−1)又は(R15−2)で表される基を挙げることができる。
(一般式(R
15−1)中、n
C1は0〜2の整数を示す。一般式(R
15−2)中、n
C2〜n
C5は、相互に独立に、0〜2の整数を示す。一般式(R
15−1)及び(R
15−2)中、「*」は、一般式(5−2)中のR
14に結合する結合手を示す。また、一般式(R
15−1)及び(R
15−2)で表される基は置換基を有していてもよい。)
一般式(R15−1)又は(R15−2)で表される基としては、一般式(R15−1−1)又は(R15−2−1)で表される基を挙げることができる。
(一般式(R
15−1−1)及び(R
15−2−1)中、「*」は、一般式(5−2)中のR
14に結合する結合手を示す。)
繰り返し単位(a4−2)のうち、前記一般式(R
15−1−1)又は(R
15−2−1)で表される基を有する繰り返し単位の具体例としては、一般式(5−2−1)〜(5−2−10)で表される繰り返し単位を挙げることができる。なお、一般式(5−2−1)〜(5−2−10)中のRは、前記一般式(5−2)中のRと同義である。
繰り返し単位(a4−2)のその他の具体例としては、一般式(5−2−11)〜(5−2−23)で表される繰り返し単位を挙げることができる。なお、一般式(5−2−11)〜(5−2−23)中のRは、前記一般式(5−2)中のRと同義である。
なお、繰り返し単位(a4−2)を形成するための単量体は、従来公知の方法により合成することができ、具体的には、Tetrahedron Letters,Vol.27,No.32 p.3741(1986)、Organic Letters,Vol.4,No.15 p.2561(2002)等に記載された方法で合成することができる。
なお、繰り返し単位(a4−2)は1種単独で又は2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
ここで、重合体中の全繰り返し単位の合計を100mol%とした場合の、各繰り返し単位の好ましい含有割合を以下に示す。繰り返し単位(a1)の含有割合は、20〜100mol%であることが好ましく、40〜100mol%であることが更に好ましく、50〜100mol%であることが特に好ましい。含有割合がこの範囲内である場合には、塗布後の撥水性確保と、PEB後の現像液に対する親和性の上昇との両立という観点から特に有効である。また、繰り返し単位(a2)の含有割合は、通常80mol%以下であり、好ましくは20〜80mol%であり、更に好ましくは30〜70mol%である。繰り返し単位(a2)の含有割合がこの範囲内である場合には、前進接触角と後退接触角との差を小さくするという観点から特に有効である。更に、繰り返し単位(a3)の含有割合は、通常50mol%以下であり、好ましくは5〜30mol%であり、更に好ましくは5〜20mol%である。繰り返し単位(a3)の含有割合がこの範囲内である場合には、塗布後の撥水性確保と、PEB後の現像液に対する親和性の上昇との両立という観点から特に有効である。また、繰り返し単位(a4)の含有割合は、通常50mol%以下であり、好ましくは5〜30mol%であり、更に好ましくは5〜20mol%である。繰り返し単位(a4)の含有割合がこの範囲内である場合には、塗布後の撥水性確保と、PEB後の現像液に対する親和性の上昇との両立という観点から特に有効である。
(5)繰り返し単位(a5):
繰り返し単位(a5)の具体例としては、下記一般式(6−1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(5−1)」という)や、下記一般式(6−2)で表される繰り返し単位(但し、前記繰り返し単位(a1)に該当するものを除く。以下、「繰り返し単位(5−2)」という)を挙げることができる。
(一般式(6−1)中、R
16は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。Eは、連結基を示す。R
17は、少なくとも一つ以上のフッ素原子を有する、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示す。)
(一般式(6−2)中、R
16は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R
18は、単結合、又は(n+1)価の連結基を示す。R
19は、単結合、又は2価の連結基を示す。G
1は、フッ素原子で置換されたメチレン基、又は炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキレン基を示す。G
2は、単結合、又はカルボニル基を示す。nは、1〜3の整数である。R
20は、水素原子、又は酸解離性基を示す。)
一般式(6−1)中、Eとして表される連結基としては、例えば、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等がある。
一般式(6−1)中、R17として表される基のうち、少なくとも一つ以上のフッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基の部分フッ素化された基やパーフルオロアルキル基等がある。
また、少なくとも一つ以上のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチル基、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基、2−ノルボルニル基等のシクロアルキル基の部分フッ素化された基やパーフルオロシクロアルキル基等がある。
繰り返し単位(5−1)を与える単量体の好適例としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
一般式(6−2)中、R18として表される基のうち、(n+1)価の連結基としては炭素数1〜10の(n+1)価の脂肪族炭化水素基や、(n+1)価の環状の飽和又は不飽和の炭化水素基がある。炭素数1〜10の(n+1)価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基に由来する(n+1)価の脂肪族炭化水素基等がある。
また、(n+1)価の環状の飽和又は不飽和の炭化水素基としては、例えば、炭素数3〜10の脂環式炭化水素又は芳香族炭化水素に由来する(n+1)価の基がある。脂環式炭化水素として、具体的には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン等のシクロアルカン類に由来する(n+1)価の基を挙げることができる。また、芳香族炭化水素として、具体的には、ベンゼン、ナフタレン等に由来する(n+1)価の基を挙げることができる。
一般式(6−2)中、R19としてとして表される基のうち、2価の連結基としては、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基や、2価の環状の飽和又は不飽和の炭化水素基がある。このような基としては前記R18の説明においてn=1としたものを挙げることができる。なお、これらの基は、上述の非置換の炭化水素基における少なくとも1つの水素原子を、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、酸素原子等の1種又は2種以上により置換された基であってもよい。
また、一般式(6−2)中、nが、2又は3である場合、複数のR19は全て同一の基であってもよく、一部又は全てが異なった基であってもよい。
一般式(6−2)中、R20として表される基のうち、酸解離性基とは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基中の水素原子を置換する基であって、酸の存在下で解離する基をいう。より具体的には、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基や、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基等がある。なお、アルコキシ置換メチル基におけるアルコキシ基(置換基)としては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基がある。また、アルキルスルファニル置換メチル基におけるアルキル基(置換基)としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基がある。これらの中でも、前記一般式(3)中のC(R7)3に該当する内容と同様のことが好ましい。
一般式(6−2)中、G
1として表される、フッ素原子で置換されたメチレン基、又は炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキレン基としては、例えば、下記式(X−1)〜(X−8)等で表される基がある。
繰り返し単位(5−2)の具体例としては、下記一般式(6−2−1)〜(6−2−3)で表される繰り返し単位を挙げることができる。なお、一般式(6−2−1)〜(6−2−3)中のR
16、G
1、R
20、R
19、及びnは、一般式(6−2)中のR
16、G
1、R
20、R
19、及びnと同義である。
繰り返し単位(5−2)を与える単量体の具体例としては、一般式(6−2a)〜(6−2f)で表される化合物がある。なお、一般式(6−2a)〜(6−2f)中のR
16及びR
20は、一般式(6−2)中のR
16及びR
20と同義である。
(6)その他の繰り返し単位:
また、重合体は、前述の繰り返し単位(a1)〜(a5)以外に、その他の繰り返し単位を有してもよい。その他の繰り返し単位として、具体的には、脂環式化合物を含有する繰り返し単位及び芳香族化合物に由来する繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位等を挙げることができる。
その他の繰り返し単位の含有割合は、重合体を構成する全繰り返し単位100mol%に対して、10〜70mol%であることが好ましく、15〜60mol%であることが更に好ましく、20〜50mol%であることが特に好ましい。含有割合が10mol%未満であると、形成したレジスト被膜の解像度が低下するおそれがある。一方、70mol%超であると、現像性、露光余裕が悪化するおそれがある。
2.調製方法:
重合体は、例えば、連鎖移動剤の存在下、ラジカル重合開始剤(例えば、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等)を添加した溶媒中で、「I.(メタ)アクリル酸エステル化合物」に記載の繰り返し単位(a1)を構成するための(メタ)アクリル酸エステル化合物等を重合することによって調製することができる。
溶媒としては、例えば、アルカン類;シクロアルカン類;脂環式炭化水素類;芳香族炭化水素類;ハロゲン化炭化水素類;飽和カルボン酸エステル類;ケトン類;エーテル類;アルコール類等がある。なお、これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合の反応温度は、40〜150℃であることが好ましく、50〜120℃であることが更に好ましい。また、反応時間は、1〜48時間であることが好ましく、1〜24時間であることが更に好ましい。
(物性値)
重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という)が、1,000〜50,000であることが好ましく、1,000〜40,000であることが更に好ましく、1,000〜30,000であることが特に好ましい。Mwが1,000未満であると、十分な後退接触角を有するレジスト被膜を得ることができないおそれがある。一方、50,000超であると、レジスト被膜の現像性が低下するおそれがある。
また、重合体は、MwとGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(以下、「Mn」という)との比(Mw/Mn)が1〜5であることが好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
更に、重合体は、ハロゲン、金属等の不純物の含有量が少ないほど好ましい。このような不純物の含有量が少ない場合、レジスト被膜の感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等を更に向上させることができる。重合体の精製法としては、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法とを組み合わせた方法等を挙げることができる。
液々抽出に用いる溶剤としては、例えば、アルカン類;アルコール類;ケトン類がある。好適な具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メタノール、エタノール、アセトン、2−ブタノンを挙げることができる。
III.感放射線性樹脂組成物:
本発明の感放射線性樹脂組成物は、(A)第一の重合体を含む重合体成分と、(B)溶剤と、を含有するものであり、通常、(C)感放射線性酸発生剤(以下、「(C)酸発生剤」ともいう)と、を更に含有するものである。このような感放射線性樹脂組成物は、良好なパターン形状を得ることが可能で、水等の液浸露光液に溶出し難く、液浸露光液との後退接触角が大きく、レジスト被膜の材料として好適に用いることができる。
また、このような感放射線性樹脂組成物は、化学増幅型レジストとして有用である。即ち、露光によって(C)酸発生剤から酸が発生し、この酸の作用によって、(A)重合体成分中の酸解離性基が解離するため、露光した部分(露光部分)は、アルカリ現像液に対して溶解性が高くなる。そのため、露光部分をアルカリ現像液によって溶解、除去するとポジ型のレジストパターンを得ることができる。本発明の感放射線性樹脂組成物は、液浸露光工程、即ち、波長193nmにおける屈折率が空気よりも高い液浸露光液(例えば、水等)をレンズとレジスト被膜との間に介して放射線を照射して露光する液浸露光工程を有するレジストパターン形成方法において、レジスト被膜を形成するための材料として特に好適に用いることができる。
1.(A)重合体成分:
(A)重合体成分は、「II.重合体」の項に記載の重合体を含み、第二の重合体を更に含むことが好ましい。第二の重合体は、酸の作用により解離する酸解離性官能基を有し、この酸解離性官能基が解離してアルカリ可溶性となる酸解離性官能基含有重合体である。
(1)第一の重合体:
第一の重合体は、感放射線性樹脂組成物に含有される(A)重合体成分として単独で用いてもよいし、後述する第二の重合体とともに用いてもよい。第二の重合体とともに用いる場合、この第一の重合体は、本発明の感放射線性樹脂組成物に対して高分子添加剤として作用する成分となる。この場合、第一の重合体は、第二の重合体よりもフッ素原子の含有率が高いものであることが好ましい。第一の重合体と第二の重合体とを含む重合体成分を含有する感放射線性樹脂組成物を用いてフォトレジスト膜を形成した場合、フォトレジスト膜の表面において第一の重合体の分布が高くなる傾向がある。即ち、第一の重合体が、フォトレジスト膜の最表面に偏在する傾向がある。従って、フォトレジスト膜と液浸露光用液体とを遮断することを目的として、フォトレジスト膜に、上層膜を形成する必要がなく、そのまま、液浸露光法に好適に用いることができる。尚、本発明の効果を十分に発揮するためには、第二の重合体におけるフッ素原子の含有率と、第一の重合体におけるフッ素原子の含有率との差が1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。第一の重合体におけるフッ素原子の含有率は、第一の重合体全体を100質量%とした場合に、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。なお、各重合体におけるフッ素原子含有率は、13C−NMRを用いて測定することができる。
第一の重合体の配合量は、第二の重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることが更に好ましい。配合量がこの範囲内にあると、十分な後退接触角を有するレジスト被膜を形成することができるとともに、(C)酸発生剤等が溶出し難いレジスト被膜を得ることができる。これはレジスト被膜を形成した際に第一の重合体が被膜の表面付近に偏在することによると考えられる。なお、第一の重合体は1種単独であってもよく、2種以上を組み合わせたものでもよい。
(2)第二の重合体:
第二の重合体としては、酸の作用によりアルカリ可溶性となるアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の重合体であることが好ましい。ここでいう「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、第二の重合体を含有する感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、このレジスト被膜の代わりに第二の重合体のみを用いた被膜を現像した場合に、この被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
第二の重合体としては、例えば、ノルボルネン誘導体等を重合して得られる主鎖にノルボルナン環等の脂環式骨格を有する重合体、ノルボルネン誘導体と無水マレイン酸を共重合して得られる主鎖にノルボルナン環及び無水マレイン酸誘導体を有する重合体、ノルボルネン誘導体と(メタ)アクリル化合物を共重合して得られる主鎖にノルボルナン環と(メタ)アクリル骨格が混在する重合体、ノルボルネン誘導体と無水マレイン酸、(メタ)アクリル化合物を共重合して得られる主鎖にノルボルナン環と無水マレイン酸誘導体と(メタ)アクリル骨格が混在する重合体、(メタ)アクリル化合物を共重合して得られる主鎖が(メタ)アクリル骨格の重合体等がある。
第二の重合体の好適例として、前記繰り返し単位(a2)を有する重合体を挙げることができる。第二の重合体は、繰り返し単位(a2)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。繰り返し単位(a2)の含有割合は、第二の重合体における全繰り返し単位を100mol%とした場合に、5〜85mol%であることが好ましく、10〜70mol%であることが更に好ましく、15〜60mol%であることが特に好ましい。繰り返し単位(a2)の含有割合が5mol%未満であると、現像性や露光余裕が悪化する傾向がある。一方、85mol%超であると、第二の重合体の溶剤への溶解性が悪化したり、解像度が悪化したりする傾向がある。
また、第二の重合体は、繰り返し単位(a2)以外に、前記繰り返し単位(a4−1)を1種単独で又は2種以上組み合わせて有することが好ましい。繰り返し単位(a4−1)の含有割合は、第二の重合体における全繰り返し単位を100mol%とした場合に、通常、10〜70mol%であり、好ましくは15〜60mol%であり、更に好ましくは20〜50mol%である。繰り返し単位(a4−1)の含有割合が10mol%未満であると、レジストとしての解像度が低下するおそれがある。一方、70mol%超であると、現像性や露光余裕が悪化するおそれがある。
第二の重合体は、繰り返し単位(a2)及び(a4−1)以外の繰り返し単位(以下、「その他の繰り返し単位」という)を1種以上有していてもよい。その他の繰り返し単位の具体例としては、脂環式化合物を有する繰り返し単位、及び芳香族化合物に由来する繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位等を挙げることができる。
(調製方法)
第二の重合体の調製方法は特に限定されるものではなく、例えば、本発明の重合体と同様にして調製することができる。
(物性値)
第二の重合体は、Mwが1000〜100000であることが好ましく、1000〜30000であることが更に好ましく、1000〜20000であることが特に好ましい。Mwが1000未満であると、形成したレジスト被膜の耐熱性が低下するおそれがある。一方、100000超であると、形成したレジスト被膜の現像性が低下するおそれがある。
また、第二の重合体は、MwとMnとの比(Mw/Mn)が1〜5であることが好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
更に、第二の重合体は、第二の重合体を調製する際に用いられる単量体に由来する低分子量成分(以下、単に「低分子量成分」という)の含有割合が、第二の重合体100質量%に対して、固形分換算で0.1質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以下であることが更に好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。このように含有割合が0.1質量%以下であると、液浸露光時に、レジスト被膜に接触した水等の液浸露光液に対して溶出する溶出物の量を少なくすることができる。また、感放射線性樹脂組成物の保管時に異物が発生し難く、塗布時に塗布ムラが発生し難いことに加え、レジストパターン形成時における欠陥の発生を良好に抑制することができる。
なお、低分子量成分とは、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等をいい、具体的には、Mwが500以下の成分をいう。低分子量成分は、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法とを組み合わせた方法等により除去することができる。
また、第二の重合体は、ハロゲン、金属等の不純物の含有量が少ないほど好ましい。このような不純物の含有量が少ないと、レジスト被膜の感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等を更に向上させることができる。
第二の重合体の精製法としては、上述した、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法とを組み合わせた方法等を挙げることができる。
なお、(A)重合体成分は、第二の重合体を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて含んでもよい。
2.(B)溶剤:
(B)溶剤としては、(A)重合体成分を溶解して、本発明の感放射線性樹脂組成物を溶液状態にするものであれば特に制限はなく、例えば、直鎖状又は分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、γ−ブチロラクトンがある。なお、本発明の感放射線性樹脂組成物は、(B)溶剤を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。
(B)溶剤の使用量は、本発明の感放射線性樹脂組成物の全固形分濃度が1〜50質量%となる量であることが好ましく、1〜25質量%となる量であることが更に好ましい。本発明の感放射線性樹脂組成物は、(B)溶剤を加えた後、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって、組成物溶液として用いることができる。
3.感放射線性酸発生剤:
(C)酸発生剤は、露光により酸を発生するものである。従って、本発明の感放射線性樹脂組成物によって形成されたレジスト被膜は、露光された部分(露光部)において、(C)酸発生剤から酸を発生する。そして、この酸の作用によって、露光部における(A)重合体成分中の酸解離性官能基が解離してアルカリ現像液に易溶性となる。そのため、アルカリ現像液でレジスト被膜の露光部を除去すれば、所望のポジ型のレジストパターンを得ることができる。
(C)酸発生剤としては、前記作用を有するものである限り特に制限はないが、例えば、下記一般式(7)で表される化合物、その他の酸発生剤等を挙げることができる。これらの中でも、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
(一般式(7)中、R
21は、水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数2〜11の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基を示す。R
22は、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルカンスルホニル基を示す。R
23は、相互に独立に、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基を示す。但し、2つのR
23が相互に結合して形成される員数2〜10の環状構造を形成してもよい。なお、フェニル基、ナフチル基、員数2〜10の環状構造は置換基を有してもよい。kは、0〜2の整数であり、rは、0〜10の整数である。Z
−は、下記一般式(8)〜(11)で表されるアニオンを示す。)
(一般式(8)中のR
24及び一般式(9)中のR
25は、フッ素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。一般式(8)中、nは、1〜10の整数である。一般式(10)及び(11)中、R
26は、相互に独立に、フッ素原子を有する炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。但し、2つのR
26が相互に結合して形成される、置換基を有してもよいフッ素原子を有する員数2〜10の環状構造を形成してもよい。)
一般式(7)中、R21、R22及びR23として表される基のうち、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等がある。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
一般式(7)中、R21及びR22として表される基のうち、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等がある。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基が好ましい。
一般式(7)中、R21として表される基のうち、炭素数2〜11の直鎖状又は分岐状のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等がある。これらの中でも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基が好ましい。
一般式(7)中、R22として表される基のうち、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルカンスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、tert−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等がある。これらの中でも、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基が好ましい。
一般式(7)中、rは、0〜2の整数であることが好ましい。
一般式(7)中、R23として表される基のうち、フェニル基としては、例えば、フェニル基、4−エチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−フルオロフェニル基等のフェニル基や、これらのフェニル基を炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基で置換した(シクロ)アルキル置換フェニル基;これらのフェニル基又は(シクロ)アルキル置換フェニル基を、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基等の少なくとも1種の基で置換した基等がある。
フェニル基又は(シクロ)アルキル置換フェニル基に対する置換基のうち、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基等がある。
また、アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−エトキシエチル基等の炭素数2〜21の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシアルキル基等がある。
更に、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素数2〜21の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシカルボニル基等がある。
また、アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜21の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。
これらのフェニル基の中でも、フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基が好ましい。
一般式(7)中、R23として表される基のうち、ナフチル基としては、例えば、1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、2,3−ジメチル−1−ナフチル基、2,4−ジメチル−1−ナフチル基、2,5−ジメチル−1−ナフチル基、2,6−ジメチル−1−ナフチル基、2,7−ジメチル−1−ナフチル基、2,8−ジメチル−1−ナフチル基、3,4−ジメチル−1−ナフチル基、3,5−ジメチル−1−ナフチル基、3,6−ジメチル−1−ナフチル基、3,7−ジメチル−1−ナフチル基、3,8−ジメチル−1−ナフチル基、4,5−ジメチル−1−ナフチル基、5,8−ジメチル−1−ナフチル基、4−エチル−1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等のナフチル基や、これらのナフチル基を炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基で置換した(シクロ)アルキル置換ナフチル基;これらのナフチル基又は(シクロ)アルキル置換ナフチル基を、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等の少なくとも1種の基で置換した基等がある。
ナフチル基又は(シクロ)アルキル置換ナフチル基を置換する置換基としては、フェニル基又は(シクロ)アルキル置換フェニル基を置換する置換基として例示したものと同様のものを例示することができる。
これらのナフチル基の中でも、1−ナフチル基、1−(4−メトキシナフチル)基、1−(4−エトキシナフチル)基、1−(4−n−プロポキシナフチル)基、1−(4−n−ブトキシナフチル)基、2−(7−メトキシナフチル)基、2−(7−エトキシナフチル)基、2−(7−n−プロポキシナフチル)基、2−(7−n−ブトキシナフチル)基が好ましい。
一般式(7)中、R23として表される基のうち、2つのR23が相互に結合して形成される員数2〜10の環状構造としては、一般式(7)で表される化合物中の硫黄カチオンと共に5員環又は6員環を形成する基が好ましく、5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する基が更に好ましい。
炭素数2〜10の環状構造の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等がある。
R23として表される基の中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2つのR23が相互に結合して形成される硫黄カチオンと共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する環状構造であることが好ましい。
Z−が、一般式(8)で表されるアニオンである場合、「−CnF2n−」基は、炭素数nのパーフルオロアルキレン基であるが、この基は直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。なお、nは、1、2、4、又は8であることが好ましい。
一般式(8)中のR24として表される基及び一般式(9)中のR25として表される基のうち、炭素数1〜12の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、有橋脂環式炭化水素基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、ヒドロキシノルボルニル基、アダマンチル基が好ましい。
一般式(10)及び(11)中のR26として表される基のうち、フッ素原子を有する炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ドデカフルオロペンチル基、パーフルオロオクチル基等がある。また、2つのR26が相互に結合して形成される、置換基を有してもよいフッ素原子を有する員数2〜10の環状構造としては、例えば、テトラフルオロエチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基、オクタフルオロブチレン基、デカフルオロペンチレン基、ウンデカフルオロヘキシレン基等がある。
Z
−として表される基としては、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パーフルオロ−n−ブタンスルホネートアニオン、パーフルオロ−n−オクタンスルホネートアニオン、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートアニオン、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネートアニオン、下記式(12−1)〜(12−7)で表されるアニオンが好ましい。
一般式(7)で表される化合物として、具体的には、特開2009−092880号公報の段落0073〜0077に記載の化合物を挙げることができる。なお、一般式(7)で表される化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物等がある。なお、その他の酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)酸発生剤の配合量は、(A)重合体成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることが更に好ましい。配合量がこの範囲内にあると、形成したレジスト被膜の感度及び現像性を維持することができる。配合量が0.1質量部未満であると、感度及び現像性が低下するおそれがある。一方、20質量部超であると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンを得られ難くなるおそれがある。
なお、一般式(7)で表される化合物とその他の酸発生剤とを併用する場合、その他の酸発生剤の含有割合は、一般式(7)で表される化合物とその他の酸発生剤との合計100質量%に対して、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。その他の酸発生剤の含有割合が80質量%超であると、感度が低下するおそれがある。
4.その他の成分:
本発明の感放射線性樹脂組成物には、(A)重合体成分、(C)酸発生剤、及び(B)溶剤以外にも、必要に応じて、酸拡散制御剤、各種の添加剤(例えば、脂環族添加剤、界面活性剤、増感剤等)を含有させることができる。
酸拡散制御剤を更に含有する場合、パターン形状や寸法忠実度を向上させることができる。酸拡散制御剤としては、例えば、下記一般式(13)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個以上有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等がある。このような酸拡散制御剤の具体例としては、特開2010−44374号公報の段落0148〜0151に記載の化合物を挙げることができる。
(一般式(13)中、複数のR
27は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は酸解離性基を示す。)
一般式(13)で表される化合物中、R27として表される基のうち、酸解離性基の具体例としては、下記一般式(13−1)で表される基等を挙げることができる。
(一般式(13−1)中、複数のR
28は、相互に独立に、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示す。但し、2つのR
28が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
含窒素化合物(I)のうち酸解離性基を有しないものの具体例としては、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン等のトリアルキルアミン類を挙げることができる。また、含窒素化合物(I)のうち酸解離性基を有するものの具体例としては、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−N’,N”−ジシクロヘキシルアミン等を挙げることができる。含窒素化合物(II)の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンを挙げることができる。含窒素化合物(III)の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等を挙げることができる。含窒素複素環化合物の具体例としては、2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等を挙げることができる。
また、酸拡散制御剤としては、下記一般式(14)で表される化合物を用いることもできる。
(一般式(14)中、R
29+は、下記一般式(R
29+−1)又は(R
29+−2)で表されるカチオンを示す。R
29−は、OH
−及び下記一般式(R
29−−1)〜(R
29−−3)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを示す。)
(一般式(R
29+−1)及び(R
29+−2)中、複数のR
30は、相互に独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、水酸基、又はハロゲン原子を示す。)
(一般式(R
29−−1)〜(R
29−−3)中、R
31は、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、又はアリール基を示す。なお、これらの基は置換基を有していてもよい。また、これらの基を構成する炭素原子の一部が酸素原子、カルボニル基等で置換されていてもよい。一般式(R
29−−3)中、R
32は、フッ素化アルキル基、1価の脂環式フッ素化炭化水素基、又はフッ素化アリール基を示す。但し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
一般式(14)で表される化合物は、露光により分解して酸拡散制御性を失う酸拡散制御剤(以下、「光分解性酸拡散制御剤」ともいう)として用いられるものである。そして、光分解性酸拡散制御剤を含有することによって、露光部では酸が拡散し、未露光部では酸の拡散が制御されるので露光部と未露光部のコントラストが優れる(即ち、露光部と未露光部の境界部分が明確になる)。そのため、現像後のレジストパターン形状の改善等に特に有効である。
一般式(R29+−1)において、複数のR30としては、光分解性酸拡散制御剤の現像液に対する溶解性を低下させる効果があるため、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であることが好ましい。また、一般式(R29+−2)中の複数のR30としては、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子が好ましい。
なお、一般式(14)中のR
29−としては、下記式(R
29−−1−1)、(R
29−−1−2)、(R
29−−2−1)、(R
29−−3−1)で表されるアニオンが好ましい。
光分解性酸拡散制御剤は、一般式(14)で表される化合物であり、具体的には、前記条件を満たすスルホニウム塩化合物又はヨードニウム塩化合物である。前記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記式(14−1)〜(14−15)で表される化合物がある。
なお、光分解性酸拡散制御剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの酸拡散制御剤の中でも、含窒素化合物(I)、含窒素化合物(II)、含窒素複素環化合物、光分解性酸拡散制御剤が好ましい。なお、酸拡散制御剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸拡散制御剤の配合量は、(A)重合体成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることが更に好ましい。酸拡散制御剤の配合量が過剰であると、形成したフォトレジスト膜の感度が著しく低下するおそれがある。
IV.レジストパターンの形成方法:
本発明のレジストパターンの形成方法は、「III.感放射線性樹脂組成物」の項にて記載した感放射線性樹脂組成物を用いて基板上にフォトレジスト膜を形成する工程(1)と、フォトレジスト膜上に液浸露光用液体を配置し、液浸露光用液体を介してフォトレジスト膜を液浸露光する工程(2)と、液浸露光されたフォトレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程(3)と、を含む方法である。このようなレジストパターンの形成方法によれば、良好なパターン形状のレジストパターンを形成することができる。
より具体的には、先ず、本発明の感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布することによってフォトレジスト膜を形成する。感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の方法がある。基板としては、例えば、シリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等を用いることができる。
次に、フォトレジスト膜上に液浸露光用液体を配置し、液浸露光用液体を介してフォトレジスト膜を露光する。液浸露光用液体としては、例えば、純水、長鎖又は環状の脂肪族化合物等を用いることができる。また、液浸露光の露光光源としては、例えば、放射線を使用することができる。この放射線は、感放射線性樹脂組成物中の(C)酸発生剤の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を用いることができる。これらの中でも、ArFエキシマレーザー(波長193nm)或いはKrFエキシマレーザー(波長248nm)で代表される遠紫外線が好ましく、特にArFエキシマレーザー(波長193nm)が好ましい。なお、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択することができる。
最後に、露光されたフォトレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。この現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%超であると、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。
アルカリ性水溶液からなる現像液には、例えば、有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。なお、有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
有機溶媒の使用量は、アルカリ性水溶液に対して、100容量%以下であることが好ましい。有機溶媒の使用量が100容量%超であると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。
なお、現像後は、水で洗浄して乾燥させる。また、露光後に加熱処理(PEB)を行うことが好ましい。PEBにより、(A)重合体成分中の酸解離性基の解離反応が円滑に進行するという利点がある。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって変わるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜170℃であることが更に好ましい。また、露光前にレジスト被膜を、加熱処理(以下、「PB」という)することもできる。PBの加熱条件は、PEBの加熱条件と同様の条件とすることができる。
感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、使用される基板上に有機系或いは無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。更に、液浸露光においてレジスト被膜からの(C)酸発生剤等の溶出を防止するため、例えば、特開2005−352384号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に液浸用保護膜を設けることもできる。なお、これらの技術は併用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]:東ソー社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は測定結果より算出した。
[核磁気共鳴分光法]:日本電子社製「JNM−EX270」を用いて測定した。
(合成例1:2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸−t−ブチルエステルの合成)
下記反応式(15)のようにして合成した。具体的には、100mLのフラスコに活性化した金属亜鉛2.10gと脱水テトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう)30mLを加え、2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸t−ブチル5.0gを10mLの脱水THFに溶解した溶液を滴下した。その後アセトン1.25gを加え室温で30分間攪拌した。水10mL、ジイソプロピルエーテル10mLを加えて二層に分離した後、有機層を抽出した。得られた有機層を希塩酸、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去した。そして溶液をろ過し、溶媒を減圧除去して目的の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸−t−ブチルエステル3.31gを得た。
得られた2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸−t−ブチルエステルを核磁気共鳴分光法を用いて分析した。ケミカルシフトは、1H−NMR[δppm(CDCl3]:1.24(6H,m)、1.38(9H,m)、3.65(1H,m)]、19F−NMR[δppm(CDCl3)]:−115.43(d)、−122.16(d)]であり、目的化合物であることが確認された。
(実施例1:メタクリル酸1−(t−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−メチル−2−プロピルエステルの合成)
下記反応式(16)のようにして合成した。具体的には、100mLのフラスコに合成例1で合成した2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸−t−ブチルエステル1.50g、クロロホルム15mL、ノンフレックスMBP10mg、メタクリル酸クロリド1.17g、トリエチルアミン0.87gを加え、55℃で24時間攪拌した。水15mLを加えて二層に分離した後、有機層を抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去した。そして溶液をろ過し、溶媒を減圧除去して目的のメタクリル酸1−(t−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−メチル−2−プロピルエステル1.48gを得た。
得られたメタクリル酸1−(t−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−メチル−2−プロピルエステルを核磁気共鳴分光法を用いて分析した。ケミカルシフトは、1H−NMR[δppm(CDCl3):1.38(9H,m)、1.43(6H,m)、2.01(3H,m)、6.40(1H,m)、6.48(1H,m)]、19F−NMR[δppm(CDCl3):−113.63(d)、−120.42(d)]であり、目的化合物であることが確認された。
(実施例2)
下記式(M−1)で表される単量体(以下、「単量体(M−1)」という)70mol%、実施例1で合成した下記式(M−2)で表される単量体(以下、「単量体(M−2)」という)30mol%、及び重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(以下、「MAIB」という)8mol%を、50gのメチルエチルケトンに溶解した単量体溶液を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mLの三つ口フラスコにメチルエチルケトン50gを加え、30分間窒素パージを行った後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。次いで、準備しておいた単量体溶液をフラスコ内に滴下漏斗を用いて3時間かけ滴下した。滴下終了後、3時間熟成させた後、30℃以下になるまで冷却して共重合体溶液を得た。
この共重合体溶液を600gのメタノールへ投入し、白色粉末を析出させた後、これを濾別した。濾別した白色粉末を、2度、300gのメタノールにてスラリー状で洗浄した後、濾別した。濾別して得られた白色粉末を50℃で17時間乾燥し、無色固体の共重合体38g(収率76%)を得た。得られた共重合体はMwが7550であり、Mw/Mnが1.32であり、13C−NMR分析の結果、単量体(M−1)、単量体(M−2)で表される各繰り返し単位の含有割合が、それぞれ71.5:28.5(mol%)の共重合体であった。この共重合体を第一の重合体(1)とする。なお、単量体の合計の使用量は50gとし、各単量体の使用割合は単量体全量に対する使用割合を表し、重合開始剤の使用割合は単量体全量と重合開始剤の合計量に対する使用割合を表す。
(実施例3)
単量体(M−2)を100mol%使用したこと、MAIBを5mol%使用したこと以外は実施例2と同様にして共重合体31g(収率62%)を得た。得られた共重合体はMwが7940であり、Mw/Mnが1.41であった。得られた共重合体を第一の重合体(2)とする。
(合成例2)
単量体(M−1)15mol%、下記式(M−3)で表される単量体(以下、「単量体(M−3)」という)35mol%、及び下記式(M−4)で表される単量体(以下、「単量体(M−4)」という)50mol%を、2−ブタノン100gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5mol%を投入した単量体溶液を準備した。一方、50gの2−ブタノンを投入した500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備しておいた単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間行った。
重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却した後、1000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を、200gのメタノールにてスラリー状で2回洗浄した後、再度ろ別し、50℃にて17時間乾燥させて白色粉末の共重合体を得た(38g、収率76%)。得られた共重合体はMwが5850であり、Mw/Mnが1.54であり、13C−NMR分析の結果、単量体(M−1)、単量体(M−3)、単量体(M−4)で表される各繰り返し単位の含有割合が、それぞれ14.2:37.6:48.2(mol%)の共重合体であった。得られた共重合体を第二の重合体(1)とする。なお、単量体の合計の使用量は50gとし、各単量体の使用割合は単量体全量に対する使用割合を表し、重合開始剤の使用割合は単量体全量と重合開始剤の合計量に対する使用割合を表す。
(合成例3)
単量体(M−1)40mol%、前記式(M−5)で表される単量体(以下、「単量体(M−5)」という)10mol%、及び単量体(M−4)50mol%を使用したこと以外は合成例2と同様にして白色粉末の共重合体を得た(40g、収率80%)。得られた共重合体はMwが7980であり、Mw/Mnが1.55であり、13C−NMR分析の結果、単量体(M−1)、単量体(M−4)、単量体(M−5)で表される各繰り返し単位の含有割合が、それぞれ40.2:8.9:50.9(mol%)の共重合体であった。得られた共重合体を第二の重合体(2)とする。なお、第二の重合体(2)中の各単量体由来の低分子量成分の含有割合は、第二の重合体(2)100%に対して、0.03%以下であった。
(実施例4)
実施例2で得られた第一の重合体(1)5部、合成例2で得られた第二の重合体(1)70部、合成例3で得られた第二の重合体(2)30部、酸発生剤(C−1)4部、酸発生剤(C−2)5部、窒素含有化合物(D−1)0.65部、溶剤(B−1)1500部、溶剤(B−2)650部を混合し、実施例4の感放射線性樹脂組成物を調製した。
なお、酸発生剤、窒素含有化合物、及び溶剤の種類を以下に記す。
酸発生剤(C−1):下記式(C−1)で表される化合物
酸発生剤(C−2):下記式(C−2)で表される化合物
溶剤(B−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(下記式(B−1)で表される化合物)
溶剤(B−2):シクロヘキサノン(下記式(B−2)で表される化合物)
窒素含有化合物(D−1):N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン(下記式(D−1)で表される化合物)
(実施例5)
第一の重合体として、実施例3で得られた第一の重合体(2)を用いたこと以外は、実施例4と同様に感放射線性樹脂組成物を調製した。
(比較例)
第一の重合体を用いないこと以外は、実施例4と同様に感放射線性樹脂組成物を調製した。
(感放射線性樹脂組成物の評価)
実施例4,5及び比較例で調製した感放射線性樹脂組成物について、下記(1)〜(3)の各種評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
[(1)溶出量の測定]:図1に示すように、予めコータ/デベロッパ(商品名「CLEAN TRACK ACT8」、東京エレクトロン社製)にてヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理(100℃、60秒)を行った8インチシリコンウェハ上の中心部に、中央部が直径11.3cmの円形状にくり抜かれたシリコンゴムシート2(クレハエラストマー社製、厚み;1.0mm、形状;1辺30cmの正方形)を載せた。なお、図1の符号11は、ヘキサメチルジシラザン処理層を示す。次いで、シリコンゴムシート2の中央部にあるくり抜き部に10mLホールピペットを用いて10mLの超純水3を満たした。
その後、図2に示すように、予め前記コータ/デベロッパにより、膜厚77nmの下層反射防止膜(商品名「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)41を形成した後、調製した各感放射線性樹脂組成物を前記コータ/デベロッパにて、下層反射防止膜41上にスピンコートし、ベーク(115℃、60秒)することにより膜厚205nmのレジスト被膜42を形成した。レジスト被膜42を形成したシリコンウェハ4を、レジスト塗膜面が超純水3と接触するようあわせ、且つ超純水3がシリコンゴムシート2から漏れないように、シリコンゴムシート2上に載せた。その状態のまま10秒間保った後、8インチシリコンウェハ4を取り除き、超純水3をガラス注射器にて回収し、これを分析用サンプルとした。なお、超純水3の回収率は95%以上であった。
得られた超純水中の酸発生剤(C−1)及び(C−2)のアニオン部のピーク強度を、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS、LC部:AGILENT社製の商品名「SERIES1100」、MS部:Perseptive Biosystems,Inc.社製の商品名「Mariner」)を用いて下記の測定条件により測定した。その際、酸発生剤(C−1)及び(C−2)の1ppb、10ppb、100ppb水溶液の各ピーク強度を下記の測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いてピーク強度から溶出量を算出した。また、同様にして、窒素含有化合物(D−1)の1ppb、10ppb、100ppb水溶液の各ピーク強度を下記の測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いてピーク強度から含窒素化合物の溶出量を算出した。溶出量が、5.0×10−12mol/cm2/sec以上であった場合を「不良」と評価し、5.0×10−12mol/cm2/sec未満であった場合を「良好」と評価した。
(測定条件)
使用カラム;商品名「CAPCELL PAK MG」、資生堂社製、1本
流量;0.2mL/分
流出溶剤:水/メタノール(3/7)(質量比)に0.1%のギ酸を添加した溶剤
測定温度;35℃
[(2)後退接触角(°)]:後退接触角の測定は、KRUS社製の接触角計(商品名「DSA−10」)を用いて、調製した各感放射線性樹脂組成物による塗膜を形成した基板(ウェハ)を作成した後、速やかに、室温23℃、湿度45%、常圧の環境下で、次の手順により後退接触角を測定した。
先ず、接触角計のウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に基板をセットする。次に、針に水を注入し、セットした基板上に水滴を形成可能な初期位置に針の位置を微調整する。その後、この針から水を排出させて基板上に25μLの水滴を形成し、一旦、この水滴から針を引き抜き、再び初期位置に針を引き下げて水滴内に配置する。続いて、10μL/分の速度で90秒間、針によって水滴を吸引すると同時に液面と基板との接触角を毎秒1回測定する(合計90回)。このうち、接触角の測定値が安定した時点から20秒間の接触角についての平均値を算出して後退接触角とした。
[(3)パターン形状の評価]:基板として、表面に膜厚77nmの下層反射防止膜(商品名「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)を形成した12インチシリコンウェハを用いた。なお、この反射防止膜の形成には、溶出量の測定に用いたコータ/デベロッパを用いた。次に、基板上に、調製した各感放射線性樹脂組成物を前記コータ/デベロッパにてスピンコートし、表3の条件でベーク(PB)を行うことにより、膜厚120nmのレジスト被膜を形成した。形成したレジスト被膜に、ArFエキシマレーザー露光装置(商品名「NSR S306C」、NIKON社製、照明条件;NA0.78、シグマ0.93/0.69)により、マスクパターンを介して露光した。
表3に示す条件でPEBを行った後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で30秒間現像し、水洗した後、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅90nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とした。なお、この測長には走査型電子顕微鏡(商品名「S−9380」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。形成したポジ型のレジストパターン断面を走査型電子顕微鏡(商品名「S−4800」、日立ハイテクノロジー社製)にて観察し、断面形状が矩形である場合を「良好」と評価し、テーパー状である場合を「不良」と評価した。
表3から明らかなように、本発明の重合体である第一の重合体(1)及び(2)を含む(A)重合体成分を含有する感放射線性樹脂組成物を用いた場合には、液浸露光時に接触した液浸露光用液体への溶出物の量が少なく、高い後退接触角を与え、パターン形状も良好である(実施例4及び5)。そのため、今後、更に微細化するリソグラフィに適用される液浸露光方法に好適に用いることができると考えられる。一方、比較例で調製した感放射線性樹脂組成物を用いた場合には、液浸露光時に接触した液浸露光用液体への溶出物の量が多く、後退接触角が低かった。