JP5640191B2 - 無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成方法 - Google Patents

無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成方法 Download PDF

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Description

本発明は、無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成方法に関する。特に、本発明は、コアである無機ナノ粒子の表面にアンカーを介して修飾剤が結合し、該修飾剤と(a)高分子及び(b)キャッピング剤とがリンカーを介して結合しており、該ナノ粒子の表面に(a)高分子及び(b)キャッピング剤が担持された構造を有する新規な高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成方法に関する。
ナノメーターサイズの粒子(ナノ粒子)は、様々な特有の優れた性状・特性・機能を示すことから、材料・製品のすべてに対して、現状よりも高精度で、より小型化、より軽量化の要求を満たしている技術を実現するものとして期待されている。このようにナノ粒子は、セラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などの産業・工業材料、医薬品・化粧品材料などの高機能・高性能・高密度・高度精密化を可能にするものとして且つ21世紀の材料として注目されている。最近のナノ粒子に関する基礎研究から、ナノ粒子の量子サイズ効果による超高機能性や新しい物性の発現、新物質の合成などの発見も相次いでいることから産業界からも大きな関心を集めている。
こうしたナノ粒子として、金属酸化物などを含めた無機ナノ粒子が様々な優れた性状・特性・機能から注目されている。ナノ粒子は、多くの場合、表面エネルギーが極めて高いために凝集しやすく、そのためナノ粒子本来の機能が発現されないことが多い。一度凝集したナノ粒子は再分散させることはできず、その段階で界面活性剤等を用いても、ナノ粒子を分散させることはできない。
こうした状況下、阿尻らは、超臨界水熱合成場が、有機修飾剤と原料水溶液との均一相を形成することに着目し、超臨界水中で反応を行って、有機修飾を行いつつナノ粒子合成に成功している。本手法によれば、高温安定相も合成でき、また単に有機修飾剤が吸着しているのではなく、高温反応のため化学結合も生じている〔特許第3925932号(特許文献1)及び特許第3925936号(特許文献2)〕。
特許第3925932号 特許第3925936号
無機ナノ粒子を使用する場合、高分子とのハイブリッド化のためには、その親和性を高めるために、表面修飾が行われてきたが、従来の技術では、高分子との親和性を完全には高めることができず、多くの場合、相分離してしまうことが多いという問題があった。
また、ソルゲル法によるハイブリッド化では、高分子が熱的に損傷を受けないような比較的低い温度での合成のため、また、それに使用する無機前駆体として入手できる系も限られるため、極めて限られた無機ナノ粒子にしか適用できないものである。
極めて汎用性の高い、無機材料からなるナノ粒子と高分子とをハイブリッド化する技術及び高濃度で無機ナノ粒子を高分子にハイブリッド化する技術の開発が求められている。
本発明者は、超臨界水熱合成場を利用して得られる、表面修飾された無機ナノ粒子を利用して、優れた性状を有する高分子修飾されてハイブリッド化された無機ナノ粒子につき研究をすすめ、無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成方法を開発することに成功した。特に、本発明は、コアである無機ナノ粒子の表面にアンカーを介して修飾剤が結合し、該修飾剤と(a)高分子及び(b)キャッピング剤とがリンカーを介して結合しており、該ナノ粒子の表面に(a)高分子及び(b)キャッピング剤が担持された構造を有する新規な高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成方法である。
本発明では、次なる態様が提供されている。
〔1〕無機ナノ粒子のコアの表面にアンカーを介して修飾剤由来の修飾基が結合し、該修飾基と(a)高分子及び(b)キャッピング剤とがリンカーを介して結合しており、該ナノ粒子の表面に(a)高分子及び(b)キャッピング剤が担持された構造を有することを特徴とする高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔2〕単一の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子において、無機ナノ粒子-修飾基-高分子の構造と無機ナノ粒子-修飾基-キャッピング剤の構造の両方を担持し、無機ナノ粒子-修飾基間の結合は、修飾剤の沸点よりも高い温度で安定なものであり、無機ナノ粒子-修飾基-高分子間の結合が高分子のガラス遷移点以上の温度で安定であることを特徴とする上記〔1〕に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔3〕単一の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子において、無機ナノ粒子の重量分率が20wt%以上、好ましくは45 wt%以上であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔4〕無機ナノ粒子が、金属酸化物ナノ粒子であり、アンカーが-0-P-結合であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔5〕修飾剤がホスホンエステルであり、そのP原子結合残基が11-カルボアルコキシウンデカニル基で、無機ナノ粒子に結合する修飾基が該修飾剤に由来するものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔6〕リンカーが、-(C=O)-O-結合であることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔7〕高分子が、ポリメチルメタクリレートであり、キャッピング剤が低級アルコール由来のものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔8〕高分子が、Grafting from法で高分子修飾ハイブリッドナノ粒子中に導入されたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔9〕高分子用モノマーとキャッピング剤とを使用して濡れ性を制御して高分子修飾ハイブリッドナノ粒子中に高分子が導入されたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子。
〔10〕無機ナノ粒子のコアの表面にアンカーを介して修飾剤由来の修飾基が結合し、該修飾基に遊離のリンカー部とキャッピング剤が担持された構造の該無機ナノ粒子に高分子を導入し、請求項1に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子を合成することを特徴とする高分子修飾ハイブリッドナノ粒子の合成方法。
〔11〕
高分子用モノマーとキャッピング剤とを使用して濡れ性を制御して高分子修飾ハイブリッドナノ粒子中に高分子が導入することを特徴とする上記〔10〕に記載の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子の合成方法。
本発明の無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、ナノ粒子が均一に分散した高硬度材料を作製することを可能にし、高濃度に高分子マトリックス中に混合しつつ成形することを可能にする。本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、光学材料への応用にも適した性状・機能を有している。本発明の技術によれば、有機溶媒に対する相溶性(濡れ性)の制御及び高分子のサイズ並びにハイブリッド量の制御が可能である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、コアとなる無機粒子、表面修飾剤、高分子、キャッピング剤からなり、アンカーを介して修飾剤が粒子表面に結合し、さらにリンカーを介して高分子とキャッピング剤を粒子表面に担持した構造を有している。図1に、本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子モデルの構造を模式的に示す。本ハイブリッドナノ粒子の特徴は粒子表面に固定化する高分子鎖の数を制限し、さらに残された粒子表面をキャッピング剤で覆うことにより分散媒または高分子材料と親和性の高い表面を構築していることである。本ハイブリッドナノ粒子では、高分子と粒子表面の両方で分散媒または高分子材料との親和性の向上を図ることが行われており、高分子成分の量を削減し、結果として無機材料を高濃度化することを達成できる。本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子では、構造的にその高分子鎖は充分に溶液中に分散して溶媒を抱き込み膨潤状態となることができて、膨潤できるため、溶液分散系においてはこれが浮き袋のような役割を果たすことにより粒子の分散性の向上や超臨界CO2といった低密度媒体中への分散ということも期待できる。また、高分子鎖とキャッピング剤を目的にあわせて選択することにより多様な局面への対応も可能である。
本発明で使用されるコアとなる無機粒子としては、無機ナノ粒子であり、代表的なものとしては金属酸化物などからなるナノ粒子が挙げられる。
該無機ナノ粒子は、高温高圧条件下、例えば、亜臨界又は超臨界水条件下の反応場でナノ粒子前駆体からナノ粒子を合成する技術により得ることができる。当該技術としては、例えば、特許第3925932号、特許第3925936号などが挙げられる。該ナノ粒子合成法では、亜臨界又は超臨界水を反応場としてナノ粒子合成を行っているが、その反応場に有機修飾剤を共存させることにより、媒質への分散性に優れた無機ナノ粒子を、極めて簡単な手法で効率よく合成できる。
超臨界状態でナノ粒子製造を行うためには、一般に溶媒である水の臨界点よりも高い温度に保持する。超臨界水の場合、臨界点は臨界温度647K(374℃)、臨界圧力22.064MPa(218気圧)であるが、臨界温度以下の温度でも圧力が臨界圧力をはるかに越えるような状態が存在する。例えば、オートクレーブ(耐圧容器)に対する充填率が高ければ、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力をはるかに越える。ここでいう超臨界状態とはこのような臨界圧力を越えた状態を含んでいてよい。反応混合物は一定容積(容器容積)内に封入されているので、温度上昇は、流体の圧力を増大する。一般に、温度TはT>Tc(Tc:溶媒の臨界温度)および圧力P>Pc(Pc:溶媒の臨界圧力)であれば、超臨界状態にある。反応混合物はある程度高圧にされた後、一定容積(容器容積)内に封入され、次いで、温度上昇せしめられて、流体の圧力が増大するようにされていてよい。実際に、溶媒中に導入された原料の溶解度は、亜臨界条件と超臨界条件との間で極めて異なるので、超臨界条件では、ナノ粒子の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に、原料ナノ粒子前駆体の反応性、有機修飾剤の反応性および熱力学的パラメーター、即ち、温度および圧力の数値に依存する。
ナノ粒子形成場は、高温高圧の条件を達成できる装置中で得ることができ、そうした装置であれば特に限定されず、当該分野で当業者に広く知られている装置から選択して使用できるが、例えば、回分式装置(バッチ式装置)を使用できる。通常、オートクレーブ(耐圧反応器)などを使用できる。本発明では、好適に、オートクレーブ式リアクターを使用することができる。そうしたリアクターは、温度制御可能とされているものであってよい。例えば、ナノ粒子前駆体の投入後と、生成ナノ粒子を取り出す前の時点とで、反応場の温度が異なっていてよいし、また、反応場の温度をそれぞれ変えることにより微粒子の核生成段階と有機修飾剤の反応による微粒子の成長段階制御とを可能にするものであってよい。さらに、リアクター内の反応場の温度変化は、例えば、昇温後一定に保持したり、連続的に変化させてもよいし、不連続的に高温とそれよりは温度の低い低温に一旦した後、次に高温にするといったものの、いずれであってもよい。
オートクレーブ内などの反応場の温度範囲は、充填率により適切な値を選択できるが、例えば、下限として、通常、約150℃、好ましくは約200℃、より好ましくは約250℃、ある場合には約275℃であり、さらに好ましくは約300℃で、より好ましくは約350℃であり、上限として、通常、約800℃、好ましくは約650℃、さらに好ましくは約550℃、より好ましくは約500℃、ある場合には約450℃が挙げられ、そして該反応場の温度範囲は上記したような上限と下限の範囲内とすることが望ましい。
オートクレーブ内などの反応場の圧力範囲は、使用原料により適切な値を選択できるが、例えば、通常は、液体状の反応混合物をリアクターに収容後オートクレーブに入れて密封した後、上記所定の温度に昇温することで得られるものが挙げられる。オートクレーブ内などの反応場の圧力範囲は、例えば、約4MPa〜600MPaの範囲の圧力に保持することができ、例えば、下限として通常5MPa、好ましくは7MPa、特に好ましくは10MPa、上限として通常500MPa、好ましくは400MPa、特に好ましくは200MPaに保持することができるが、これらに限定されるものではなく、上記密封条件下で所定の温度に昇温することで得られるものであり且つ目的の反応が生起するものであれば特に限定されない。
オートクレーブ内などの反応器中の上記の温度範囲、圧力範囲を達成するための水、ナノ粒子前駆体、有機修飾剤などの注入の割合、すなわち充填率は、容器内部のフリー容積、すなわち、オートクレーブに入れるナノ粒子前駆体などを含有する水性溶液の体積をオートクレーブの全容積から差し引いて残存する容積に対する原料などを含有する水性溶液の容積を基準として、通常、10〜98%、好ましくは20〜95%、さらに好ましくは10〜85%とすることができるが、所定の目的を達成できるならば特に限定されず適切に選択できる。
反応用出発混合物中のナノ粒子前駆体:有機修飾剤との比率は、所望のナノ粒子生成物が得られるよう、適宜、実験を行うなどして決定でき、特には限定されないが、例えば、そのナノ粒子前駆体: 有機修飾剤の比率を、モル比で、約1:1,000〜約1,000:1としたり、約1:100〜約100:1としたり、約1:50〜約50:1としたり、約1:25〜約25:1としたり、約1:10〜約10:1としたり、約1:5〜約5:1としたり、約1:2〜約2:1としたりしてもよい。
本発明の製造方法では、予め加熱しておいたナノ粒子前駆体の水性液を反応場に供給し、そこに予め加熱してある修飾剤を導入することもできる。
所定の温度に達した後の反応時間については、目的とするナノ粒子の種類、用いる原料、有機修飾剤の種類、製造するナノ粒子の大きさや量によっても異なるが、通常、数分間から数ヶ月とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温または降温させることもできる。所望のナノ粒子を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内にオートクレーブを設置したまま放冷してもかまわないし、オートクレーブを電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することもできる。本発明の方法では、反応時間、前駆体:修飾剤の比率、修飾基に存在する炭素鎖の長さ、反応温度などのパラメーターを変えることで、100nm以下の粒子サイズのナノ粒子を、それぞれ得ることができる。5〜50 nmの幅を有する棒状ナノ粒子やワイアー状ナノ粒子を得ることもでき、さらに、均一な大きさのキューブ状ナノ粒子を取得することもできる。
原料であるナノ粒子前駆体は、使用する水性溶媒、例えば、水、及び/又は、水と有機修飾剤との混合物などに溶解するものを好ましく使用できるが、製造操作上の簡便性の理由で液状であるものを好適に使用できる。原料物質は、水溶液、あるいは必要に応じて適当な有機溶媒と水の混合物の溶液としても構わないが、原料物質自身が常温で液体であればそのまま使用して良い。本発明では、ナノ粒子前駆体は、反応場で均一系を形成可能であるものを、好適に使用できる。また、本発明では、反応場で均一系を形成可能であり、水溶性の原料前駆体を好適に使用できる。
ナノ粒子前駆体としては、所望のナノ粒子を与えるものを好適に使用でき、それらは所望のナノ粒子が得られる限り任意の物質を使用することができる。したがって、製造しようとするナノ粒子に含有される元素を含有する単体や化合物から適切なものを任意に選択して使用することができる。好ましくは、市販されており容易に入手できるもの、あるいは、それから容易に導くことができるものを使用する。例えば、金属元素を含有するナノ粒子の場合に、ナノ粒子前駆体としては、例えば、金属ハロゲン化物、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属アルコキシド、金属アルキルキサントゲン酸塩、金属カルボニル化合物などの金属錯体化合物、金属水酸化物などが挙げられる。代表的な金属酸化物ナノ粒子前駆体としては、例えば、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属グリコール酸塩、金属オキザロ酸塩、金属グリオキザロ酸塩、金属グリセリン酸塩、金属アミン錯体、金属アセトン錯体、金属アセチルアセトネートなどが好適に用いられる。該前駆体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。前駆体は、反応液中においてどのような状態で存在していても良いが、通常は、前駆体は反応系内で溶解した状態で存在する。さらには、所望のナノ粒子の構成元素供与体として、当該構成元素を含有している化合物を共存させるようにして使用できる。
本発明の一つの典型的な態様では、ナノ粒子前駆体としては、水可溶性塩を好適に使用でき、例えば、チタン錯体などを使用できる。好適には、グリセリン酸、シュウ酸、グリオキサル酸、グリコール酸などのTi錯体水溶液、あるいはFe, Ce, Co, Ni, Alなどの金属塩の水溶液を使用できる。酸性塩を使用した場合、アルカリ水溶液、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液により処理して、pHを約7〜10とすることもできるし、その逆も可能である。ナノ粒子前駆体を含有する溶液は、所望のナノ粒子合成を可能とするように、適宜、その液のpHを調整しておくことも可能であるし、ある場合には好ましい。なお、原料に由来するその他の不可避的な不純物元素を含有することは許容される。
本発明のナノ粒子を構成する「金属元素」としては、典型的にはナノ粒子を製造することが可能なものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できる。代表的な金属元素としては、元素の周期表で第13族のホウ素(B)-第14族のケイ素(Si)-第15族のヒ素(As)-第16族のテルル(Te)の線を境界としてその線上にある元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものが挙げられ、例えば、第8, 8, 10族の元素ではFe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、第11族の元素ではCu, Ag, Auなど、第12族の元素ではZn, Cd, Hgなど、第13族の元素ではB, Al, Ga, In, Tlなど、第14族の元素ではSi, Ge, Sn, Pbなど、第15族の元素ではAs, Sb, Biなど、第16族の元素ではTe, Poなど、そして第1〜7族の元素などが挙げられる。第7族の元素では、Mn, Tc, Reなど、第6族の元素では、Cr, Mo, Wなど、第5族の元素では、V, Nb, Taなど、第4族の元素では、Ti, Zr, Hf など、第3族の元素では、Sc, Y, ランタノイド(例えば、La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Yb, Luなど)、アクチノイド(Ac, Thなど)、ミッシュメタルなど、第2族の元素では、Be, Mg, Ca, Sr, Ba など、第1族の元素では、Li, Na, K, Rb, Csなどが挙げられる。なお、元素の周期律表は、IUPC (International Union of Pure and Applied Chemistry) 無機化学命名法改訂版(1989)に基づくものである。
本発明のナノ粒子は、(a)金属酸化物であるナノ粒子、(b)すくなくとも2種類以上の金属からなる複合酸化物であるナノ粒子、(c)金属であるナノ粒子、(d)すくなくとも2種類以上の金属からなる複合金属であるナノ粒子、(e)周期表第15族元素を含有する半導体化合物であるナノ粒子、(f)上記(a)〜(e)のナノ粒子が結晶ナノ粒子であるものを包含してよい。本発明のナノ粒子は、粒子が周期表第16族元素を含有する半導体化合物であるナノ粒子も包含してよい。コアとして機能する代表的な無機ナノ粒子としては、例えば、TiO2, Co3O4, NiO, ZrO2, CeO2, ZnO, GdO, CoAl2O4, Al2O3, MnO2, Y2O3, InO, SiO2, MgO, SnO2, Nb2O5などを挙げることができる。
ナノ粒子の表面を修飾するのに使用される修飾剤としては、有機修飾剤が利用でき、該有機修飾剤としては、微粒子の表面に有機分子残基を結合せしめることのできるもので、好ましくはリンカーを提供するものであれば特には限定されず、好適には、微粒子の表面に有機分子残基を化学結合せしめることのできるもので、有機化学の分野、無機材料分野、高分子化学の分野を含めてナノ粒子の応用が期待されている分野で広く知られている有機物質(又は有機分子)から選択することができる。該有機修飾剤としては、ナノ粒子の表面にアンカーを形成するもの、すなわち、例えば、エーテル結合、エステル結合などを含むO原子を介した結合、アミノ結合又はアミド結合を含むN原子を介した結合、S原子を介した結合、金属-C-を介した結合、金属-C=を介した結合、金属-(C=O)-を介した結合、P原子を介した結合、-O-P-を介した結合、リン酸エステル結合、亜リン酸結合、ホスホン酸結合、亜ホスホン酸結合、ホスフィン酸結合、亜ホスフィン酸結合などの化学結合を形成することを許容するものが挙げられる。好ましいものとしては、亜リン酸エステルを使用して形成される結合をナノ粒子表面に形成するものが挙げられる。有機残基(有機分子残基)としては、リンカーを提供するものであれば特には限定されず、当該分野で知られたもの、及び/又は、有機合成の分野で知られたものが挙げられ、例えば、官能基を有する炭化水素基、あるいはそれを含有する基などが挙げられる。
有機残基としては、リンカー供与基を有し、且つ、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキニル基、置換されていてもよく且つ飽和又は不飽和の環式アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよい飽和又は不飽和の複素環式基などが挙げられる。該炭化水素基としては、その炭素数は特に限定されず、炭素数1や2のものも使用できるが、本発明の特徴を生かす観点からは、炭素数3あるいはそれ以上の鎖を有する長鎖炭化水素であるものは好ましく、例えば、炭素数3〜30の直鎖又は分岐鎖、あるいは環状の炭化水素などが挙げられる。該炭化水素は、リンカー供与基を有することに加えて、置換されていてもよいし、また、非置換のものであってもよい。該置換基としては、有機化学の分野、無機材料分野、高分子化学の分野などで広く知られた官能基の中から選択されたものであってよく、該置換基は1又はそれ以上が存在していてもよいし、複数の場合互いは同じでも異なっていてもよい。
該置換基としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、直鎖又は分岐鎖のアルキニル基、環式アルキル基、アリール基、アラルキル基、飽和又は不飽和の複素環式基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アミド基、イミノ基、アシルアミノ基、ケトン基、ホルミル基、エーテル基、水酸基、アシロキシ基、スルフヒドリル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、アジド基などが挙げられる。該置換基としては、-O-、-S-、-N-、-P-などの結合を含有するものを挙げることもできる。
有機修飾剤としては、例えば、アミン類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、アミド類、オキシム類、ホスゲン、エナミン類、アミノ酸類、ペプチド類、糖類、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、亜ホスフィン酸エステル、ホスフィンホスフィンオキシドなどの有機リン化合物類、チオール類、チオカルボン酸などのそれらの硫黄類縁体などが挙げられる。とりわけ、カルボキシル基を有する炭化水素基をエステルとして少なくとも一つ含有する亜リン酸エステル、高価カルボン酸などは好ましく使用される。
本発明において、ナノ粒子合成の反応場に添加する有機修飾剤としては、生成されるナノ粒子に化学結合し、有機配位子として無機ナノ粒子の表面の少なくとも一部を覆うものであれば、特に限定されることはなく、例えば、当該分野で知られたものを使用できる。好適には、該修飾剤は、リンカー部を提供する有機分子であり、形成するナノ粒子を安定化する作用のあるものを好適に使用できるし、高温高圧の水相で有機修飾剤として機能するものを好適に使用できる。
該カルボン酸類としては、例えば、有機カルボン酸類あるいはそれらの硫黄類縁体などが挙げられる。有機カルボン酸類としては、本発明の目的効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、例えば、脂肪族カルボン酸類、脂環式カルボン酸類、芳香族カルボン酸類などが挙げられ、好適には脂肪族カルボン酸類から選択されて使用でき、好適には分子の一旦に2価のカルボン酸構造を有し、別の端に官能基を有するものが挙げられる。カルボン酸類の炭素数は、本発明の目的効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5以上、ある場合には8以上、あるいは14以上、別の場合には16以上、また、通常24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下であってよい。カルボン酸類としては、例えば、ヘキサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、エルカ酸などの誘導体が挙げられる。
該アルコール類としては、例えば、上記有機カルボン酸類に対応するものが挙げられる。
該有機リン化合物類としては、例えば、リン酸エステル類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、トリアルキルホスフィン類、亜リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、亜ホスホン酸エステル類、ホスフィン酸エステル類、亜ホスフィン酸エステルなどを包含していてよい。当該有機リン化合物類としては、上記した炭化水素基から選択されたものを有機基として含有しているものが挙げられる。有機リン化合物類としては、分子中に炭素−リン単結合を有する化合物を、好適に使用することもできる。亜リン酸エステルとしては、P原子に結合する基が、上記カルボン酸類の残基に相当するものが挙げられる。当該基としては、例えば、カルボキシ置換オレイル基、カルボキシ置換ラウリル基、カルボキシ置換ミリスチル基、カルボキシ置換パルミチル基、カルボキシ置換ステアリル基、カルボキシ置換オクチル基、カルボキシ置換デシル基、カルボキシ置換ドデシル基、カルボキシ置換テトラデシル基、カルボキシ置換ヘキサデシル基、カルボキシ置換オクタデシル基、カルボキシ置換ジオクチル等のカルボキシ置換アルキル基などが挙げられる。
本明細書中、用語「ナノ粒子」とは、上記したように、ナノメーターサイズの粒子を指しており、例えば、その平均粒子径が1 μm(1,000 nm)以下のサイズのものを指しており、好ましくはその平均粒子径が 200 nm 以下のサイズのものを指し、また、好ましくは150 nm以下のサイズのものが挙げられる。ある場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が100 nm以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が50 nm 以下のサイズのものであってよい。また好適な場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が20 nm 以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が10 nm 以下のサイズのものあるいは5 nm以下のサイズのものであってよい。該ナノ粒子は、0.1〜50nmの粒子、1〜50nmの粒子、好ましくは1〜25nmの粒子、さらに好ましくは1〜20nmの粒子、より好ましくは5〜20nmの粒子、さらにより好ましくは5〜10nmの粒子である。
また好適な場合には、該ナノ粒子の粒子サイズは均一なものが好ましいが、一定の割合でその粒子サイズの異なるものの混合しているものが好ましい場合もある。本発明の技術では、5 nmの粒子サイズのもの、2〜7 nmの粒子サイズのもの、2〜2.5 nmの粒子サイズのもの、さらにはナノ粒子集団の70%又はそれ以上、80%又はそれ以上、90%又はそれ以上、95%又はそれ以上が、5 nmの粒子サイズのもの、2〜7 nmの粒子サイズのもの、あるいは、2〜2.5 nmの粒子サイズのものであるものが得られる。本発明の手法で得られるナノ粒子集団としては、1〜5nmの粒子、5〜10nmの粒子、10〜15nmの粒子、15〜20nmの粒子、20〜30nmの粒子、30〜50nmの粒子、1〜3nmの粒子、3〜5nmの粒子、5〜7nmの粒子、7〜10nmの粒子、10〜13nmの粒子、13〜16nmの粒子、16〜20nmの粒子、又は、20〜25nmの粒子であって、且つ、ナノ粒子集団の70%又はそれ以上、80%又はそれ以上、90%又はそれ以上、95%又はそれ以上が当該サイズのものとして含んでいるものが挙げられる。
上記サイズは、ナノ粒子の形状が、棒体、円柱体、直方体、楕円柱体などの場合は、短軸のサイズが上記粒子サイズの小さな値とし、長軸のサイズをその短軸のサイズより大きな値としものであってよい。ナノ粒子は、球体、立方体、六面体、八面体などの多角形立方体、棒体、円柱体、卵形状体、正方晶、六方晶、三方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶、ウルツ鉱型結晶、単一壁または複数壁ナノチューブの形状、あるいはその他のナノスケールの形状であってもよい。それらは、非常に興味深い磁気的・電気的・光学的特性を現わすものである。
粒子径の測定は当該分野で知られた方法によりそれを行うことができ、例えば、TEM、吸着法、光散乱法(DLSを含む)、SAXSなどにより測定できる。TEMでは電子顕微鏡で観察するが、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N2吸着などによりBET 表面積を評価するものである。
本発明の技術を利用すれば、高い結晶性のナノ粒子で、有機修飾されたものを得ることが可能である。
高い結晶性は、電子回折法、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)、走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope: STEM)などの電子顕微鏡写真の解析、エックス線回折(XRD)、熱重量分析などにより確認できる。例えば、電子回折では、単結晶であれば回折干渉像としてドットが得られ、多結晶ではリング、そしてアモルファスではハローが得られる。電子顕微鏡写真では、単結晶であれば結晶面がしっかり出ており、粒子の上からさらに結晶が現れるような形状であれば、多結晶である。多結晶の一次粒子が小さく多くの粒子が凝集して二次粒子をつくっている場合球状になる。アモルファスであれば必ず球状である。エックス線回折では単結晶であればシャープなピークが得られる。Sherreの式を利用してX 線のピークの1/2 高さの幅から結晶子サイズを評価できる。該評価により得られた結晶子サイズが電子顕微鏡像から評価される粒子径と同一であれば、単結晶と評価される。
熱重量分析では、熱天秤により、乾燥不活性ガス中で加熱すると、100℃付近で吸着していた水分の蒸発による重量減少が、また、さらに250℃程度までで粒子内からの脱水による重量減少がみられる。有機物質を含む場合には、250〜400℃においてさらに大きな重量減少が観察される。本発明の技術で得られた粒子の場合、400℃まで昇温しても、結晶内部からの脱水による重量減少は最大10% 以下であり、低温で合成されたナノ粒子の場合と大きく異なる。かくして、本発明にしたがって得られる有機修飾金属微粒子の微粒子の特徴としては、高い結晶性、例えば、X 線回折でシャープなピークを有している、電子線回折でドットあるいはリングが観察される、熱重量分析で結晶水の脱水が乾粒子あたり10% 以下、及び/又は電子顕微鏡写真で一次粒子が結晶面を持っているなどが挙げられる。本発明のナノ粒子は、結合の強さが、熱重量分析において有機分子の沸点よりも高く、熱分解温度と同程度以上である。
本発明で利用されるリンカーとしては、超臨界水中での分解に抵抗性のものが挙げられる。例えば、粒子への高分子グラフト法を適用する場合には、Grafting to法では高分子とのリンカー、Grafting from法では重合開始剤とのリンカーあるいは開始点と機能するものが好適である。リンカーは、1)他の有機化合物とできる限り穏やかな条件下で結合を形成し得る、2)入手が容易であること、3)in-situ 合成に利用できるものであること、そして4)超臨界水中で安定であるものであるべきである。リンカーとしては、例えば、エステル結合、アミド結合、さらには-O-、-S-、-N-、-P-などの結合を含有するものが挙げられる。該リンカーとしては、高分子を結合するのに利用することが知られているものあるいは当該分野で知られたものから選択して使用でき、所定の結合を達成できれば、特に限定されることはない。リンカーは、例えば、カルボキシル基が好適であり、脱水縮合エステル化やアミド化により容易に他の分子と結合を形成することができる。
本発明では、コア粒子の表面に結合している修飾基のリンカー部をキャッピング剤で部分的に遮蔽することができ、そうしたキャッピングされた修飾ナノ粒子が使用されていることにも特有の構造的な特徴がある。
該キャッピング剤としては、当該分野で知られたものから選択して使用でき、所定の結合を達成できれば、特に限定されることはない。例えば、リンカー部が、カルボキシル基の場合、該キャッピング剤としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール類が挙げられる。
高分子としては、特に限定されず、当該分野で知られたものから選択して使用でき、所定の結合を達成できれば、特に限定されることはない。高分子としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂などが挙げられる。
高分子を修飾されたナノ粒子に導入するには、Grafting to法、Grafting from法などを利用できる。
典型的には、コア粒子の修飾基に存在するリンカー部に重合開始剤を結合し、重合開始剤から高分子鎖を伸張することができる。該重合開始剤としては、当該分野で知られたものあるいはそれから誘導されたものから選択して使用でき、所定の結合を達成できれば、特に限定されることはない。好ましいものとしては、2-ヒドロキシエチル2-ブロモイソブチレートが挙げられる。
高分子鎖の伸張は、当該分野で知られたものあるいはその改変法を使用でき、所定の目的を達成できれば、特に限定されることはないが、例えば、Grafting from 法を適用でき、原子移動ラジカル重合(ATRP)を利用できる。また、高分子の合成は、当該分野で知られた手法を適用でき、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを使用できる。
本発明の無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子では、粒子当たりに導入される高分子の鎖の本数を制御できる。本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子では、無機材料ナノ粒子(金属酸化物ナノ粒子を包含する)の表面に、当該粒子一個あたりで、高分子化合物の分子の数が、例えば、50個以下、ある場合には30個以下、典型的な場合では20個以下、好適には、10個以下、あるいは1〜5個有するものである。
また、本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、例えば、無機ナノ粒子が重量分率で15wt%以上、ある場合には40wt%以上、典型的な場合では45wt%以上であるもの、さらには50wt%以上であるもの、高分子鎖の数平均分子量(Mn)が、例えば、3,000〜300,000、ある場合には30,000〜150,000、典型的な場合では35,000〜100,000であるものなどが包含される。
本発明の無機骨格を有する高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、優れた性状・機能を有しており、特異な利点を有しているから、セラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などの産業・工業材料、医薬品・化粧品材料などの高機能・高性能・高密度・高度精密化を可能にするものとして有用である。本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、ナノ粒子の量子サイズ効果による超高機能性や新しい物性の発現などに有用である。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
参考例1
〔超臨界水熱合成法による表面修飾チタニアナノ粒子合成〕
〔A.水溶性チタン錯体TiGe21の合成〕
水溶性Ti錯体の合成はKakihanaらの方法(K. Tomita, V. Petrykin, M. Kobayashi, M. Shiro, M. Yoshimura, M. Kakihana: Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 2378; M. Kakihana, M, Tada, M, Shiro, V. Petrykin, M. Osada, Y, Nakamura|: Inorg. Chem., 2001, 40, 891; M. Kakihana, K. Tomita, V. Petrykin, M. Tada, S. Sasaki, Y. Nakamura: Inorg. Chem., 2004, 43, 4546)に準じた。簡単に工程を示すと次の通りである。
200 mLナスフラスコにTiパウダー250 mg(5.21 mmol)を入れ、0℃で30%NH4OH水溶液5 mL、30%H2O2水溶液20 mLを加え攪拌した後、室温まで昇温し、さらに撹拌する。Tiパウダーが全て溶けた後、0℃で5.2 Mグリセリン酸水溶液を0.5mL(2.6 mmol, 0.5 eq.)加え、10 min撹拌する。次に、50℃に昇温してゆっくりと水を留去し、得られた黄色透明の固体を水で再溶解して、これをTi錯体ストック溶液とした。得られたTi錯体は、チタンに対して0.5等量となっているチタングリセリン酸錯体(Titaniym:glyceric acid=2:1)で、「TiGe21」と称する。チタンに対するグリセリン酸の量は、1等量、1.5等量、さらには3等量などにでき、対応するTi錯体を得ることができる。
他の錯体、例えば、シュウ酸、グリオキサル酸、グリコール酸などとのTi錯体の合成は添加する配位子の種類、量を変化させることで、同様に合成できる。
〔B.エチル11-(ジエチルスホノ)ウンデカネート(ethyl 11-(diethylphosphono)undacanate: EDPU)の合成〕
EDPUは、Michaelis-Arbuzou反応により合成した。100 mLのナスフラスコにエチル11-ブロモウンデカネート(ethyl 11-bromoundecanate) 10 g(34.1 mmol)と亜リン酸トリエチル(triethyl phosphite) 14.2 g(85.3 mmol)を加え、150℃で16時間加熱還流を行った。反応液を90℃で減圧乾燥後、カラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 2:1)により、EDPUを90%の収率で得た。純度は1H-NMRにより確認した (up to 98%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.25 (t, J = 7.08, 3H), 1.32 (t, J = 7.08, 6H),
1.20-1.40 (m, 12H), 1.52-1.77 (m, 6H), 2.28 (t, J = 7.56, 2H), 4.12 (q, J = 7.08, 2H), 4.01-4.16 (m, 4H).
〔C.TiO2-PUの合成〕
EDPUを表面修飾剤とするTiO粒子をTiO2-PU(TiO2-PhosphonoUndecanic acid)と称する。
TiO2-PU の合成は次のように行った。内容量5 mLのオートクレーブに0.025 M Ti錯体ストック溶液2 mL(水密度0.4 g/mL 到達時CTi = 0.01M)とEDPU 175.2 mg(0.5 mmol、CEDPU = 0.1M、10 equiv.)を入れ、加熱震盪機を用いて400℃で5 min反応を行った。反応後、純水で粒子を回収し遠心分離を行った。さらに、酢酸を5v%含む純水/MeOH = 2/1の溶液を加え粒子以外の固形物を溶解する(この時点で300 rpmで10 min程度遠心分離し、上清をパスツールピペット等で慎重に回収すると不純物 (MoS、磁性黒色粉末)をある程度除くことができる)。酢酸を5v%含む純水/MeOH = 2/1の溶液で洗浄、遠心分離(12000 rpm, 20 min, 15℃)を3サイクル、さらに純水で洗浄、遠心分離を3サイクル行った。得られた粒子は純水に再分散させた後凍結乾燥した。
〔D.TiO2-PUの構造及び物性〕
得られた粒子の解析は、Transmission Electron Microscope (TEM)、High Resolution Transmission Electron Microscope (HRTEM) 、X-Ray Diffraction (XRD)、Fourier Transform Infrared Absorption Spectrometry (FT-IR)、Thermo-Gravimetry (TG)を用いて行った。得られた粒子の粒径及び分散度は、同条件で3度粒子を合成し、それぞれのTEM 画像から200粒子づつ粒径を測定、計600粒子の粒径から求めた。TiO2-PU のXRD スペクトルを図2に示す。TiO2-PUはTiO2アナターゼ単相であった。TiO2-PUのTEM像と粒形分布を図3に示す。TiO2-PU は平均粒形6.7 nm程度の比較的単分散な粒子であった。また、TiO2-PU を高分解能投下型電子顕微鏡(HR-TEM)により観察した像を図4に示す。観察の結果、TiO2-PU が高い結晶性を有していることが明らかとなった。図4中ではTiO2アナターゼの(101)面(格子面間隔 3.5Å)(図4の左上方)及び(200)面(格子面間隔 1.9Å)(図4の左下方)に対応する結晶格子が確認できる。
TiO2-PUの特徴としては溶媒に対する分散性が挙げられる。すなわち、TiO2-PUは極性溶媒に対して高い親和性を示し、特にDMFに分散させた場合に完全分散を達成した。この分散系においてTiO2-PUは一次粒径を保っている(DLS測定により確認)。図5にはヘキサン(上相)/DMF(下相)にTiO2-PUを分散させ、バイアルの真下からレーザーを当てた様子を示す。尚、分散濃度はDMFに対して0.1wt%程度である。レーザーによるチンダル現象が下相のDMF中でのみ起こっているのが確認できる。DMF以外でTiO2-PUが完全分散する有機媒体としては2-ヒドロキシエチルメチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methylmethacrylate: HEMA)、2-アセトキシエタノール、ピリジンが挙げられる。エタノール、メタノール等の一般的な極性溶媒に対しては比較的よく分散はするものの白濁し、沈殿を生じる。このような有機溶媒に対する完全分散は未修飾のTiO2では見られないことから、修飾剤は間違いなくTiO2に結合していると考えられる。TiO2-PUの構造は、FT-IR及びζ電位測定を用いて特定できる。図6には、TiO2-PU、EDPU、未修飾TiO2のFTIR スペクトルを示す。
TiO2-PU: 3300〜2500 cm-1(δs OH)、2923 cm-1(νas CH2)、2852 cm-1(νs CH2)、1738 cm-1(ν カルボン酸単量体C=O)、1705 cm-1(ν カルボン酸二量体C=O)、1635 cm-1(TiO2, O-H、または水)、1464 cm-1(δs CH2)、1410 cm-1(δs OH)、1371 cm-1(δs CH3)、1155〜925 cm-1(1090 cm-1(νas PO3 2-)、1020 cm-1(νs PO3 2-))、900 cm-1以降 (TiO2).
TiO2-PU(図6、最上段)とEDPU(図6、中段)のIRスペクトルを比較した場合、TiO2-PUには、P=Oに由来する吸収の消失、ホスホン酸エステルのO-C-Cに由来する吸収の消失が見られ、また、1000 cm-1付近にTridentateでチタニア表面と結合していると推測されるPO3 2-に由来する吸収が確認された。加えて、2980 cm-1付近のCH3に対応する吸収が完全に消失している点、C=O伸縮由来する吸収が1734 cm-1(エステル)から1710 cm-1(カルボン酸二量体)に変化している点、1410 cm-1にC-O-H面内変角の吸収が観測される点などから、カルボン酸エステルについても問題なく加水分解され、且つイオン化していないカルボン酸として存在していることが示唆される。TiO2にカルボン酸がアンカーとして作用している場合、1550 cm-1及び1430 cm-1に逆対称及び対称伸縮振動に由来する幅の広い吸収を持つ。TiO2-PUにおいてこれらの吸収が観測されないということは、修飾剤であるEDPUの有するホスホン酸とカルボン酸のうち、ホスホン酸のみがアンカーとして作用していることを示している。
〔E.TiO2-PUのゼータ電位測定〕
TiO2-PUにつきそのゼータ電位を測定した。TiO2-PUのゼータ電位のpH依存性を測定することでその表面状態に関する情報が得られると考えられる。そこでTiO2-PU 及び比較として修飾剤を添加せずに合成したTiO2のゼータ電位のpH 依存性を測定した。未修飾の粒子は、0.01M HCl、0.01M KOH でそれぞれpH2、pH12 から通常通り測定した。TiO2-PUは酸性溶液中における分散性が著しく低いため、酸性側から測定することが叶わなかった。よって、TiO2-PU 5mgを10 mLの0.01M KOH水溶液に分散させ、一晩震盪した後、塩基性側からのみ測定した。結果を図7に示す。未修飾TiO2のゼータ電位のpH依存性を測定した結果、pH 2から測定した場合(□)とpH 12から測定した場合(△)で差異は見られたものの、pH2.5で+30 mV前後、pH11.5で-30 mV前後のζ電位を有しており、その等電点はpH6付近であった。これはこれまで報告されている実測値とほぼ一致する。また、懸濁状態の安定性については既存の報告にあるように、pH 2及び12付近では比較的安定な懸濁状態を保っていたものの中性付近では速やかに凝集体を形成し沈降する様子が観察された。
一方、TiO2-PU の場合、そのゼータ電位は未修飾のTiO2とまったく異なったものであった。図7からはカルボン酸のpKaに相当するpH5付近で急激に変化し、それ以下のpHでも0 mV以上にはならないのが見て取れる(●)。これは、粒子表面にカルボキシル基が存在しているという予想を支持するものである。すなわち、粒子表面が修飾剤によって完全に遮蔽され、TiO2表面に由来するζ電位変化が粒子表面を覆うカルボン酸に由来するものによって取って代わられたためであると考えられる。このゼータ電位の挙動はTiO2-PUの水分散特性に影響を与え、pH5付近を境に酸側ではゼータ電位が0となって凝集する一方、アルカリ側ではゼータ電位が大きな負の値を示し、静電反発力により分散する(図8)。
また、ホスホン酸のpka1およびpka2に対応するpH(2.5〜3及び8.5〜9)ではとくに表面電位の変化は見られなかったことから、ホスホン酸が外側に配向している可能性は否定される。
以上の結果はホスホン酸がアンカーとして粒子表面と結合し、カルボン酸が外部に向かって配向しているというIR測定の結果を支持するものであると共に、粒子表面が修飾剤によりほぼ完全に被覆されていることを示唆している。TiO2-PUはpH変化による度重なる凝集分散や、pH12の水中で長時間震盪し続けても分散状態、ゼータ電位に目に見える影響を受けなかった。これは、TiO2-ホスホン酸系のpH変化に対する耐性の高さを裏付けるものであり、TiO2-PUの安定性を示している。
〔F.TiO2-PUの熱重量測定〕
熱重量測定(TG)によりTiO2-PU の表面被服率を評価した。TiO2-PU(1)、未修飾TiO2(2)及び11-(ホスホノ)ウンデカン酸(3)の空気中におけるTG チャートを図9に示す。TiO2-PUでは未修飾のチタニアと差し引きで16.0%の重量減が測定された。被覆率を、ホスホン酸の占有面積を0.24 nm2)として、粒子の平均粒径 (6.7 nm2)より求めた面積との比較により算出した。計算の結果、修飾量311本/粒子、被覆率50.0%、修飾密度2.08分子/nm2であることが明らかとなった。しかしながら、修飾剤のみのTGチャートでは図中破線で示した450〜750℃で大きな重量減がある一方で、粒子ではこの温度領域ではほとんど重量減は見られなかった。これは、粒子と修飾剤の相互作用の結果、修飾剤の一部が粒子表面に残存していることが考えられる。これを確かめるためにTG測定後のサンプルのFTIR 測定を行った(図10)。TG測定後の粒子(図10、中段)とTiO2-PU(図10、最上段)を比較した場合、C-H結合やC=O結合に由来する吸収がTG測定後には観察されない(1500 cm-1付近のピークは表面吸着水に由来)のに対し、P-Oに由来する1000 cm-1付近の吸収は残存している。このピークは未修飾のTiO2(図10、最下段)には見られない。これらの結果は粒子表面の修飾剤の一部が高温の空気中でC-P結合が切断され、粒子表面にアンカー部のみを残して側鎖が揮発または燃焼していることを示唆している。また、ホスホン酸の耐酸化性を考えると粒子表面に残っているのはホスホン酸ではなくリン酸であると考えるのが妥当であると考えられる。
仮に全ての表面修飾剤が、リン酸を残して揮発または燃焼していると考えた場合、修飾剤の分子量(266.26 g/mol)、リン酸の分子量(98.00 g/mol)及び側鎖の分子量(185.28 g/mol)から、測定値は実際粒子表面についている修飾剤重量の65.41%に相当すると推算できる。これを用いて先の計算結果を補正すると修飾量454本/粒子、被覆率78.6%、修飾密度3.28分子/nm2 程度であるという結果が得られる。TGによる解析からも、ζ電位測定により導き出されたTiO2-PUの表面はほぼ完全に覆われているという結果は支持されている。これ以降TiO2-PU に高分子を導入するに当り、表面のCOOH密度をおおよそ3.3本/nm2と見積もる。
〔G.TiO2-PUの中和〕
0.01M KOHエタノール溶液にTiO2-PUを投入し、3 h攪拌した後遠心分離で粒子を回収、純水で3回洗浄を行った粒子をTiO2-PU-N(TiO2-PhosphonoUndecanic acid-Neutralization)と呼ぶ。TiO2-PU、TiO2-PU-NそれぞれのIR スペクトルを図11に示す。
TiO2-PU-N の判別可能なピークの帰属を以下に示す。
TiO2-PU-N: 3300〜2500 cm-1(δs OH)、2922 cm-1(νas CH2)、2852 cm-1(νs CH2)、1738 cm-1(ν カルボン酸単量体C=O)、1705 cm-1(ν カルボン酸二量体C=O)、1635 cm-1(TiO2, O-H、または水)、1561 cm-1(νas COO-)、1464 cm-1(δs CH2)、1407 cm-1(νas COO-)、1155〜925 cm-1(1090 cm-1(νas PO3 2-)、1020 cm-1(νs PO3 2-))、900 cm-1以降 (TiO2).
TiO2-PU-N ではカルボン酸のC=O 伸縮に由来する吸収 (1705 cm-1)が減少し、1561 cm-1、及び1407 cm-1にカルボン酸アニオンの吸収が新規に生じているのが分かる。カルボン酸のC=O 伸縮が完全に消滅しないのは純水で洗浄によりイオン交換が起こっているためと思われる。また、TiO2-PU-N では1300〜1200 cm-1付近の吸収がTiO2-PU と比較すると弱いが、TiO2-PU ではこの付近にC-O 伸縮吸収帯があり、中和によりこれが消失したと考えるのが妥当である。
〔H.TiO2-PUのエステル化〕
TiO2-PUに対してアルコールを触媒量の無機酸の存在下加熱するという古典的なエステル合成法を適用した。アルコールとしてメタノール、無機酸として濃硫酸を使用し、3h還流した。反応の進行をFTIRで確認した(図12)。反応前(図12、下段)と比較して、反応後(図12、上段)ではC=O 伸縮振動が低端数側に、移動しており、エステル化が進行しているのが分かる。また、TiO2のピークやホスホン酸のピークはそのまま残っているのでホスホン酸はTiO2に担持されたままであることが分かる。この結果は、粒子表面のカルボン酸が反応性を維持したままであることを示すと共に、この粒子が激しい反応条件にも耐えうる安定性を有していることを示している。
〔高分子修飾ハイブリッドナノ粒子の作製〕
PMMA-TiO2ナノ粒子ハイブリッド中の無機材料の割合をTiO2 50wt%となるよう設定して高分子修飾ハイブリッドナノ粒子の作製を図った。尚、これには表面修飾剤を含まない。
コアとなる粒子が直径6.7 nm程度のTiO2ナノ粒子で表面に3.3分子/nm2程度の11-(phosphono)undecanic acidを有するものであることが明らかとなっている。これを元に導入するPMMAの分子量を計算すると、高分子鎖の分子量60,000とした場合、1粒子当りの導入量を5本程度に制限することにより50wt%を達成できる。これはもちろん分子量30,000を10本でも、分子量300,000を1本でも構わないが、ある程度粒子の全方位を高分子が覆う方がよいと思われるので、ここでは分子量50,000程度高分子鎖を5〜6本導入することを目標とした。
〔Grafting to法による高分子-ナノ結晶複合体の作成〕
Grafting to法は高密度のグラフトが困難である一方で、手順の簡便さと自由な高分子設計が可能であることを特徴とするグラフト法である。本新規高分子修飾ハイブリッドナノ粒子複合体は、自由に設計可能な高分子を比較的容易に低密度でグラフトすることを得意とするGrafting to法が向いていると考えられる。Grafting to法による高分子-ナノ結晶複合体の作成の手順は以下に示す通りである。
1) Grafting to 法に利用可能なナノ粒子及び高分子の作成
2)粒子表面への高分子のグラフト
3)ナノ粒子表面の濡れ性制御
〔高分子設計〕
Grafting to法を用いた高分子のグラフトには粒子と高分子にそれぞれ対応した官能基を導入することが求められる。ナノ粒子については既にカルボキシル基を導入することに成功している。よって、高分子にはカルボキシル基と反応し結合を生じる官能基を導入すればよい。カルボキシル基と反応する官能基はいくつかあり、またカルボキシル基を他の官能基に変換することもできるため高分子に導入する官能基としては様々な選択肢があるが、ここでは高分子にヒドロキシル基を導入し、脱水縮合剤を用いた脱水エステル化反応を利用することとした。この反応は非常に温和な条件下(室温、ほぼ中性、多少の水、空気は可)で高収率を得られ、医療用ナノ粒子の合成などにもしばしば利用されている。作成すべき高分子は、一方の末端に選択的にヒドロキシル基を有する高分子である。
このような高分子を作成するために有効であると考えられる合成法の一つに、原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization, ATRP)がある。ATRPにより主となる高分子と2、3のヒドロキシル基を有する残基からなるブロック共重合体を合成する。本実施例では主となる高分子はポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate: PMMA)を使用した。また、ヒドロキシル基を有するポリマーには2-ヒドロキシエチルメチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methylmethacrylate: HEMA)を用いた。
〔PMMA-b-PHEMAの合成〕
PHEMA-b-PMMA合成の概略は次式で示される。
エチル2-ブロモイソブチレート(ethyl 2-bromoisobutyrate: EBIB)は重合開始剤であり、これとモノマー(MMA)の仕込み比で重合度を調節する。錯体濃度は重合速度にのみ関係し、最終的な高分子の分子量には影響しない。リビングラジカル重合では転化率が上がるほどサイズ制御が悪くなるのことがあるので反応は40%程度で止めるのが望ましい。
PMMA-b-PHEMAの合成は次のように行った。グローブボックス中で重合禁止剤を除去したMMA、Cu(I)Cl、4,4’-dinonyl-2,2’-bipyridine (DNBPy) (溶液5 mL につき、Cu(I)Cl 15 mg、DNBPy 131 mg程度が目安)を任意の割合で混合し、Cu(I)Cl が溶けきるまで攪拌する。濃茶色の反応混合物にエチル2-ブロモイソブチレート(ethyl 2-bromoisobutylate: EBIB)を添加しよく攪拌した後、70℃で3 h 重合を行った。1H NMR によりメチルエステルの面積比で重合度を算出した。反応終了後2 mL 程度のCH2Cl2に反応物を溶解し、さらに3mL のCH2Cl2で洗い込みをしつつ、MeOH 50 mL に強攪拌下滴下する。しばらく静置した後上澄みを捨てMeOH で洗浄する。これを一度乾燥させ再びCH2Cl2に溶解し、同様に再沈を計3 サイクル行う。こうして銅錯体を完全に除去し乾燥させた。得られたPMMA 500 mg をグローブボックス内でトルエン5 mL に再溶解し、Cu(I)Cl 30 mg、DNBPy 272 mg、HEMA 20μLを加え、室温で12h 反応を行った。反応終了後2 mL 程度のCH2Cl2に反応物を溶解し、さらに3 mLのCH2Cl2で洗い込みをしつつ、MeOH 50 mLに強攪拌下滴下する。しばらく静置した後上澄みを捨てMeOHで洗浄する。これを一度乾燥させ再びCH2Cl2に溶解し、同様に再沈を計3サイクル行う。こうして銅錯体を完全に除去し乾燥させたものを次の反応に利用した。
本実施例では何種類か大きさの違うものを合成し、1H NMRにより収率を求め分子量を見積もった。また、末端のPHEMAブロックは主鎖と比較して非常に小さく、FT-IR、1H NMRのいずれでも確認することはできなかった。
〔TiO2-PUに対するPMMA-b-PHEMAのグラフト〕
カルボン酸とアルコールからエステルを合成する方法はいくつか選択肢があるが、本実施例では脱水縮合剤を用いる方法を使用した。その反応条件は非常に温和であり、湿気や空気による影響も少なく、さらには高収率である。脱水縮合剤にはカルボジイミド系、アミニウム系、ホスホニウム系、ジヒドロキノン系があるが、エステル合成にもっとも広く使われているカルボジイミド系縮合剤を用いた。この系に属する代表的なものとしては、N,N’-ジシクロへキシルカルボジイミド(N,N’-dicyclohexylcarbodiimide: DCC)とN-エチルN’-(3-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド塩酸塩(N-ethyl N’-(3-dimethylamino)propylcarbodiimide hydrochloride: EDAC)が挙げられる。TiO2-PU に PHEMA-b-PMMA をグラフトさせるため、脱水縮合EDACと補助剤N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いてTiO2-PU のカルボキシル基とPHEMA-b-PMMAのヒドロキシル基を脱水エステル化により結合させることを試みた。
ここで用いたPHEMA-b-PMMAは、分子量が小さいものの方がグラフト反応が進行しやすいことが明らかであるため、主鎖であるPMMA重合度が300、分子量30000 g/mol 程度と小さいものである。しかし、これには限定されず様々なサイズのものを適用できる。PHEMA-b-PMMA はその合成法の関係から明らかに複数のOHを有するが、上式では省略して書いてある。
粒子表面へのHEBIBの付加は次のように行った。乾燥したナスフラスコに攪拌子、TiO2-PU 5〜10mg、EDAC 1 g、N,N-ジメチルアミノピリジン100 mgを加え、30 min真空引きを行った後、脱水DMF10 mLを0℃で加え攪拌する。10 min後これに、分子量推定30,000のPMMA-b-PHEMAを100 mg加え、さらに10 min攪拌した後室温とし、48 h 反応させる。反応終了後MeOHを1 mL加え固形物を溶かし、1 h 攪拌、粒子を遠心分離(テフロン(登録商標)チューブ、12000 rpm, 20 min, 15℃)で回収した。さらにこの粒子をCH2Cl2で洗浄、遠心分離を3サイクル繰り返し、得られた粒子を回収した。反応後の粒子をTiO2-gt-PMMA(TiO2-grafting to-PMMA)と呼ぶ。反応の進行はFTIR により確認した。
図13には、TiO2-gt-PMMAのFT-IRスペクトルを示す。TiO2-gt-PMMAがエステルと思われるピーク(1735 cm-1)とカルボン酸と思われるピーク(1698 cm-1)を有すること、1100〜1300 cm-1にPMMAのメチルエステルに由来する吸収のような凹凸を有する程度である。仮に、これがPMMAのC=Oと未反応のカルボン酸のC=Oだとすれば、その強度から修飾密度は1粒子につき多くて1高分子程度しかないと推測される。また、TiO2-gt-PMMAが疎水的であることは、PMMAが導入されたことを示唆する証拠と考えられる。
〔TiO2-gt-PMMAの濡れ性制御〕
残存カルボキシル基へのメタノールの付加は次のように行った。乾燥したナスフラスコに攪拌子、TiO2-gt-PMMA 5〜10mg、EDAC 1 g、N,N-ジメチルアミノピリジン100 mg、を加え30 min真空引きを行った後、脱水DMF10 mL を0℃で加え攪拌する。10 min 後これに、MeOH を100μL加え、さらに10 min 攪拌した後室温とし48 h反応させる。反応終了後MeOH をさらに1 mL 加え固形物を溶かし、1 h 攪拌、粒子を遠心分離 (テフロン(登録商標)チューブ、12000 rpm, 20 min, 15℃)で回収した。さらにこの粒子をCH2Cl2で洗浄、遠心分離 を3 サイクル繰り返し、得られた粒子を回収した。反応の進行はFTIRにより確認した。
〔高分子修飾ハイブリッドナノ粒子の作製〕
Grafting from 法は「〜からグラフトする」という意味の通り、基盤や粒子表面等に固定化した重合開始剤から高分子鎖を伸張する方法である。重合法には実施例と同様に原子移動ラジカル重合(ATRP)を利用する。重合された高分子は一端を固定されたものとなる。粒子表面の官能基の数に比べて遥かに少ない量しかグラフトできなかったGrafting to法はとは異なり、高密度のグラフトが可能、つまり、表面に導入した重合開始剤に対する反応の効率が良い。従ってグラフトする高分子鎖の量を導入する重合開始剤の量で調節することが可能である。本合成法においては表面の濡れ性制御はグラフト重合以前に行う。そこで、粒子表面に導入する重合開始剤にヒドロキシル基を導入し、これをメタノールと任意の割合で混合したものをTiO2-PUと脱水縮合することで粒子への重合開始剤導入量の制御と濡れ性制御を一度に行うことを計画した。よって作成の手順は以下に示す通りとなる。
1)ヒドロキシル基を有する重合開始剤の合成
2)粒子表面へ重合開始剤導入及び濡れ性制御
3)MMA のグラフト重合
〔2-ヒドロキシエチル2-ブロモイソブチレート(2-hydroxyethyl 2-bromoisobutylate: HEBIB)の合成〕
重合開始剤EBIBはカルボキシル基を有しており、これをエチルエステルから、2-ヒドロキシエチルエステルとすれば、重合開始剤の性質をあまり変化させることなくヒドロキシル基を導入できると考え、商業的に入手可能な2-ブロモイソ酪酸の酸ハロゲン化物、2-ブロモイソブチリルブロマイドにエチレングリコールを求核置換反応させることにより、HEBIBを合成した
HEBIBの合成は以下のように行った。乾燥させた二口フラスコに攪拌子、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、脱水エチレングリコール5mL、CH2Cl2 10mLを加えアイスバスで0℃とした後、2-ブロモイソブタノイルブロマイド5 gを滴下し、0℃で3 h攪拌する。反応終了後0.01M HCl水溶液、CH2Cl2を加え、有機層と水層に分けた後、水相をCH2Cl2で3 回抽出し、合わせた有機層を重曹水、ついで塩水(brine)で洗浄する。Na2SO4で乾燥させた後、溶媒を留去し、フラッシュカラムクロマトグラフィー (Hexane:AcOEt = 5:1)で精製した。副生成物はジアシル化体である。収率は90%、純度は1H NMR により確認した。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.91 (t, J = 6.32, 1H O-H), 1.96 (s, 6H CH3), 3.85-3.92 (m, 2H COO-CH2-C), 4.30-4.35 (m, 2H C-CH2-OH).
溶媒には塩化メチレンを用いたが、これは純度、水分含有率等考えてのことで、脱水されたエーテルまたはTHFを用いることもできる。DMAPに代えてジイソプロピルエチルアミンなどを使用することもできる。
〔TiO2-HEBIBの合成〕
重合開始剤導入及び濡れ性制御を行った。合成したHEBIB とMeOH を1:100 〜 100:0 までの割合で混合し、これとTiO2-PU の脱水縮合を行った。HEBIB 導入後の粒子をTiO2-HEBIB と呼ぶ。
粒子表面へのHEBIB の付加は次のように行った。乾燥したナスフラスコに攪拌子、凍結乾燥させたTiO2-PU 5〜10mg、N-ethyl N’-3-dimethylaminopropylcarbodiimide hydrochloride (EDAC) 1 g 、N,N-ジメチルアミノピリジン100 mg、を加え30 min真空引きを行った後、脱水DMF10 mL を0℃で加え攪拌する。10 min後これに、任意の濃度のHEBIB MeOH 溶液100μL加え、さらに10 min 攪拌した後室温とし24 h 反応させる。反応終了後MeOHを1 mL加え固形物を溶かし、1 h 攪拌、粒子を遠心分離 (テフロン(登録商標)チューブ、12000 rpm, 20 min, 15℃)で回収した。さらにこの粒子をCH2Cl2で洗浄、遠心分離を3サイクル繰り返し、得られた粒子を5v%EtOH 添加シクロヘキサンに再分散させ、次に続く高分子のグラフトを行う反応器中で凍結乾燥した。
HEBIB の導入をIRにより確認した。導入量の少ないものはメチルエステル化体とほぼ変わらず、IRによる導入確認はできなかった。ここでは最もIRスペクトルの変化が顕著なHEBIBのみを表面に導入したものを例として図14に示す。また比較対照としてHEBIBではなく、EBIBのIR スペクトルを示す。これはHEBIB のヒドロキシル基は脱水縮合により変化を受けるため、EBIBの方がTiO2-HEBIBにより近いスペクトルを示すためである。
判別可能なピークの帰属を以下に示す。
TiO2-HEBIB: 3300〜2500 cm-1(δs 水)、2922 cm-1(νas CH2)、2851 cm-1(νs CH2)、1735 cm-1(ν エステルC=O)、1704 cm-1(ν カルボン酸二量体C=O)、1635 cm-1(TiO2, O-H、または水)、1465 cm-1(δs CH2)、1389 cm-1(δ イソプロピルCH3)、1370 cm-1(δ イソプロピルCH3)、1276 cm-1(C-Br)、1161 cm-1(νas C-(C=O)-O)、1107 cm-1(νas カルボン酸エステルO-C-C)、1155〜925 cm-1(1090 cm-1(νas PO3 2-)、1020 cm-1(νs PO3 2-))、900 cm-1以降 (TiO2).
TiO2-HEBIBではイソプルピル基に由来する1388 cm-1、及び1370 cm-1に由来する吸収や、1276 cm-1のC-Brに由来すると思われる特徴的な吸収が観測され、粒子表面にHEBIBが導入されたことを示している。
〔TiO2-gf-PMMAの合成〕
高分子のグラフト重合は、TiO2-HEBIBをEBIB・Cu(I)Cl・DNBPyのMMA溶液に分散させ、反応を行った。反応後の粒子をTiO2-gf-PMMA(TiO2-Grafting from-PMMA)と呼ぶ。
Grafting from 法による高分子の付与は次のように行った。グローブボックス中で重合禁止剤を除去したMMA、Cu(I)Cl、4,4’-dinonyl 2,2’-bipyridine (DNBPy) (溶液5 mL につき、Cu(I)Cl 15 mg、DNBPy131 mg 程度が目安)を任意の割合で混合し、Cu(I)Clが溶けきるまで攪拌する。濃茶色の反応混合物にEBIBを添加しよく攪拌した後、1 mL程度を凍結乾燥させたTiO2-HEBIBの入った反応容器に加える。容器に厳重に封をした後、オイルバスで50℃、6 h 反応を行った。この時点で色が茶→緑となっていた場合、反応器がリークしている。反応終了後2 mL 程度のCH2Cl2に反応物を溶解し、さらに3 mLのCH2Cl2で洗い込みをしつつ、MeOH 50 mL に強攪拌下滴下する。しばらく静置した後上澄みを捨てMeOHで洗浄する。これを一度乾燥させ再びCH2Cl2に溶解し、同様に再沈を計3サイクル行う。こうして銅錯体を完全に除去した後、CH2Cl2に溶解、遠心分離 (テフロン(登録商標)チューブ、12000 rpm, 20 min, 15℃)を3サイクル繰り返し、粒子を回収した。
添加したEBIBの量は粒子表面に存在するHEBIBより大過剰であるため、グラフトされる高分子の分子量は粒子が存在しない場合と変わらないものと考えられる。よって、共存EBIBを反応開始剤として得られたPMMAの分子量をGPCで測定し、グラフとされた高分子の大きさとした。図15にTiO2-gf-PMMA、TiO2-PU及びPMMAのIRスペクトルを示す。
図15から、TiO2-gf-PMMAは2993 cm-1のCH3逆対象伸縮に由来する吸収、1330 cm-1〜1090 cm-1のメチルエステルの吸収等PMMA由来の吸収と、2929 cm-1、2851 cm-1のCH2逆対象及び対象伸縮振動、1000 cm-1付近のP-O伸縮振動、900 cm-1より高波数側のTiO2に由来する吸収等のTiO2-PUから引き継がれた吸収の両方が観察される。また、TiO2-gf-PMMAでもHEBIB:MeOH = 5:100で合成されたものと、HEBIB:MeOH = 100:0で合成されたものとでは、PMMA由来の吸収とTiO2-PU(正確にはその表面修飾剤)に由来する吸収の比がまったく異なっており、HEBIBとMeOHの仕込み比を変えることで濡れ性の制御とHEBIB導入量の制御を同時に行うという試みが功を奏していることを示している。
〔高分子修飾ハイブリッドナノ粒子TiO2-gf-PMMA〕
TiO2-gf-PMMAはPMMAの良溶媒、例えばTHF、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン等に良好な分散性を示すなど、その挙動はPMMAの影響を色濃く受けたものであった。特筆すべきことには、TiO2-gf-PMMAが単体で形成した集合体は可視光透明である。図16にPMMAグラフト量を変えて作製した三つのTiO2-gf-PMMAのTGチャートを示し、図17にそれぞれを薄膜状にして乾燥させたものの写真を示す。
50wt%、43wt%、12wt%のTiO2-gf-PMMAをここでは便宜上Sample A、Sample B、Sample Cと呼ぶ。重量分率の数値とグラフの最終的な重量減の数値が一致していないのは、粒子表面にホスホン酸部が取り残されているとして計算したためである。また、表1に各TiO2-gf-PMMAの重量分率、体積分率、高分子鎖の数平均分子量Mn、重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mn、グラフト密度をまとめて示す。
各SampleのHEBIB/MeOHとグラフト密度のを比較すると、HEBIBの比率の増加にほぼ比例して重合密度が増加しており、本合成法でグラフト量を制御可能であることを示している。また、Sample Cは、グラフト密度、高分子分子量から考えて、ポリマーブラシとなっていると考えられ、そのグラフト密度は、既知の金/PMMAハイブリッド(0.3本/nm2)と同等である。本発明で作製したTiO2-gf-PMMAの中でも、特にSample Aは50wt%を越える高濃度でTiO2を含有しているにもかかわらず、透明性を保ったままである(図17の写真の薄膜は数十μm)。計算による理論値ではSample Aの屈折率は1.75程度にまで達していると考えられる(PMMAとアナターゼの屈折率は、それぞれ1.49、2.52)。
本発明で得られた高分子修飾ハイブリッドナノ粒子により、ハイブリッド中の無機材料の割合を高めることが可能となる。
本発明で、有機溶媒や高分子材料に対して相溶性や分散性に優れ、より高い無機材料濃度を達成することを可能にする高分子修飾ハイブリッドナノ粒子及びその合成法が提供されているので、様々な無機材料ナノ粒子(金属酸化物ナノ粒子を包含する)に適用でき、その利用を進めることを可能にする。本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子は、セラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などのとして有用と期待でき、産業・工業材料、医薬品・化粧品材料などの高機能・高性能・高密度・高度精密化に資することができる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
本発明の高分子修飾ハイブリッドナノ粒子モデルの構造を模式的に示す。 超臨界水熱合成法で得られたTiO2-PUのXRD スペクトルを示す。 超臨界水熱合成法で得られたTiO2-PU のTEM像(図面代用写真)と粒形分布を示す。 超臨界水熱合成法で得られたTiO2-PU を高分解能投下型電子顕微鏡(HR-TEM)により観察した像(図面代用写真)を示す。 超臨界水熱合成法で得られたTiO2-PUをヘキサン(上相)/DMF(下相)の二相系に分散させ、バイアルの真下からレーザーを当てた様子を示す。 TiO2-PU、EDPU及び未修飾TiO2のFTIR スペクトルを示す。最上段は、TiO2-PUで、中段はEDPUで、最下段は未修飾TiO2である。 TiO2-PU及び未修飾TiO2のゼータ電位のpH依存性を示すグラフである。未修飾TiO2のゼータ電位のpH依存性をpH 2から測定した場合(□)とpH 12から測定した場合(△)と共に、TiO2-PUの測定結果(●)を示す。 pHとTiO2-PUの水分散性を観察したもの(図面代用写真)である。右側がpH2、左側がpH12である。 TiO2-PU(1)、未修飾TiO2(2)及び11-(ホスホノ)ウンデカン酸(3)の空気中におけるTG チャートを示す。 FTIR スペクトル(上からTiO2-PU、TG測定後の粒子、未修飾TiO2)を示す。 FTIRスペクトル (上からTiO2-PU-N、TiO2-PU) を示す。 TiO2-PUに対して、Fischerメチルエステル化を行った時のFTIRスペクトルを示す。 TiO2-gt-PMMAのFT-IRスペクトルを示す。上から、TiO2-gt-PMMA、PMMA、TiO2-PU。 TiO2-HEBIBのFT-IRスペクトルを示す。上から、TiO2-HEBIB、EBIB。 TiO2-gf-PMMA、TiO2-PU及びPMMAのFT-IRスペクトルを示す。上からPMMA、HEBIB:MeOH = 100:0で合成したTiO2-gf-PMMA、HEBIB:MeOH = 5:100で合成したTiO2-gf-PMMA、TiO2-PU。 PMMAグラフト量を変えて作製した三つのTiO2-gf-PMMAのTGチャートを示す。 PMMAグラフト量を変えて作製した三つのTiO2-gf-PMMAのそれぞれを薄膜状にして乾燥させたものの写真を示す。

Claims (10)

  1. TiO2無機ナノ粒子のコアの表面にアンカーを介して修飾剤由来の修飾基が結合し、該修飾基と(a)高分子及び(b)遮蔽キャッピング剤とがリンカーを介して結合しており、該ナノ粒子の表面に(a)高分子-リンカー-修飾基-アンカー及び(b)遮蔽キャッピング剤-リンカー-修飾基-アンカーが担持された構造を有すること、そして、上記修飾剤は、亜リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、亜ホスホン酸エステル類、ホスフィン酸エステル類及び亜ホスフィン酸エステルからなる群から選択されたもので、そのP原子に結合する基がカルボン酸類の残基から選択されたもので、上記修飾基はカルボキシ置換の炭素数3〜30の直鎖又は分岐鎖の炭化水素の残基であり、上記高分子は、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル及びエポキシ樹脂からなる群から選択されたもので、上記遮蔽キャッピング剤は、低級アルコール類から選択されたものであり、上記リンカーは、エステル結合又はアミド結合を含有するものであることを特徴とする高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  2. 単一の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子において、無機ナノ粒子-修飾基-高分子の構造と無機ナノ粒子-修飾基-遮蔽キャッピング剤の構造の両方を担持し、無機ナノ粒子-修飾基間の結合は、修飾剤の沸点よりも高い温度で安定なものであり、無機ナノ粒子-修飾基-高分子間の結合が高分子のガラス遷移点以上の温度で安定であることを特徴とする請求項1に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  3. アンカーが-0-P-結合であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  4. 修飾剤がホスホンエステルであり、そのP原子結合残基が11-カルボアルコキシウンデカニル基で、TiO2無機ナノ粒子に結合する修飾基が該修飾剤に由来するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  5. リンカーが、-(C=O)-O-結合であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  6. 高分子が、ポリメチルメタクリレートであり、遮蔽キャッピング剤が低級アルコール由来のものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  7. 高分子が、Grafting from法で高分子修飾ハイブリッドナノ粒子中に導入されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  8. 高分子用モノマーと遮蔽キャッピング剤とを使用して濡れ性を制御して高分子修飾ハイブリッドナノ粒子中に高分子が導入されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子。
  9. TiO2無機ナノ粒子のコアの表面にアンカーを介して修飾剤由来の修飾基が結合し、該修飾基に遊離のリンカー部と遮蔽キャッピング剤が担持された構造の該TiO2無機ナノ粒子に高分子を導入し、請求項1に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子を合成すること、そして、上記修飾剤は、亜リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、亜ホスホン酸エステル類、ホスフィン酸エステル類及び亜ホスフィン酸エステルからなる群から選択されたもので、そのP原子に結合する基がカルボン酸類の残基から選択されたもので、上記修飾基はカルボキシ置換の炭素数3〜30の直鎖又は分岐鎖の炭化水素の残基であり、上記高分子は、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル及びエポキシ樹脂からなる群から選択されたもので、上記遮蔽キャッピング剤は、低級アルコール類から選択されたものであり、上記リンカーは、エステル結合又はアミド結合を含有するものであることを特徴とする高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子の合成方法。
  10. 高分子用モノマーと遮蔽キャッピング剤とを使用して濡れ性を制御して高分子修飾ハイブリッドナノ粒子中に高分子が導入することを特徴とする請求項9に記載の高分子修飾ハイブリッドTiO2ナノ粒子の合成方法。
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