JP5804491B2 - 超臨界水中における金属酸化物表面修飾処理方法 - Google Patents
超臨界水中における金属酸化物表面修飾処理方法 Download PDFInfo
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Description
こうした問題を解決する技術として、本発明者等のグループの阿尻らは、超臨界水熱合成場が、有機修飾剤と原料水溶液との均一相を形成することに着目し、超臨界水中で反応を行えば、有機修飾を行いつつナノ粒子合成が可能であることを示してきた。本手法(金属酸化物無機ナノ粒子の有機修飾技術)によれば、高温安定相も合成でき、また単に有機修飾剤が吸着しているのではなく、高温反応のため化学結合も生じている〔特開2005-194148号(特許文献1):特許第3925932号(特許文献2)、特許第3925936号(特許文献3
)及び特許第4336856号(特許文献4)〕。
技術を発展利用することを念頭に鋭意研究を行った。その結果、低環境負荷媒質である水を利用し、表面修飾剤の存在下でナノ粒子を高温高圧の水が存在する条件下、例えば、超臨界水又は亜臨界水条件下、特には、亜臨界水条件下での前処理後、超臨界水条件下に置くことにより、より高いナノ粒子修飾に成功し、本発明を完成した。例えば、本発明では、低環境負荷媒質である水を利用し、既に合成されているナノ粒子を出発物質として、亜臨界水条件下で前処理し、ついで、超臨界水条件下の表面修飾剤の存在下で表面が有機修飾された無機ナノ粒子の合成を実現することに成功している。
〔1〕亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水が存在する条件下に無機ナノ粒子から有機修飾剤を反応させて有機修飾された無機ナノ粒子を製造する方法であって、出発物質である無機ナノ粒子を亜臨界状態にある高温高圧水存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水存在の条件下で無機ナノ粒子と有機修飾剤とを反応させて、有機修飾された無機ナノ粒子を製造することを特徴とする有機修飾無機ナノ粒子の製造方法。
〔2〕該無機ナノ粒子が、金属酸化物無機ナノ粒子であることを特徴とする上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕有機修飾剤が、カルボン酸類から選択されたものであることを特徴とする上記〔1〕又は〜〔2〕に記載の方法。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
れた金属・金属酸化物ナノ粒子(有機・無機ハイブリッドナノ粒子)の合成と有機溶媒中への高濃度分散に成功している。超臨界水とは、臨界温度374℃・臨界圧力22.1 MPa以上の
状態にある水のことである。超臨界水は金属・金属酸化物に対する高い過飽和度や、常温常圧の水には溶けない有機物と同一相を形成するなどの特性を有している。この特性を利用して、有機・無機ハイブリッドナノ粒子は、粒子核生成と粒子表面修飾が同一系内で起こるin-situ修飾により合成されている。一方で、様々な手法であらかじめ合成されたナ
ノ粒子に対するex-situ修飾技術の開発も進められている。こうした中、あらかじめ合成
された酸化セリウムナノ粒子などの金属酸化物無機ナノ粒子を超臨界水中でカルボン酸などの有機修飾剤でもって修飾し、pHや反応温度などの影響を見ることで、超臨界水中における表面修飾機構について解析した。
かくして、本発明は、亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水が存在する条件下に無機ナノ粒子から有機修飾剤を反応させて有機修飾された無機ナノ粒子を製造する方法であって、出発物質である無機ナノ粒子(出発ナノ粒子)を亜臨界状態にある高温高圧水存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水存在の条件下で無機ナノ粒子と有機修飾剤とを反応させて、有機修飾された無機ナノ粒子を製造することを特徴とする有機修飾無機ナノ粒子の製造方法を提供する。本発明は、金属酸化物ナノ粒子の表面有機修飾を行う際、亜臨界条件にて表面処理を行うことにより、有機修飾剤との結合力・結合量を増やす方法を提供する。本発明の方法で、媒質への分散性に優れた無機ナノ粒子を、極めて簡単な手法で効率よく合成できる。かくして、様々な形状のナノ粒子であって、その表面が有機基で修飾せしめられているナノ粒子を、工業的に利用可能な規模で合成することを可能にする。
性について研究が行われており、様々な特性が見出されている。最も特徴的なものには、誘電率の低下(図2)、および水のイオン積の変化(図3)が挙げられる。
図5(K Arai, et al , J. Chem. Eng. Data, 44, 1422 (1999))に酸化銅と酸化鉛の溶
解度を示す。図より定圧下において金属酸化物の溶解度は臨界点近傍から超臨界状態にかけて大幅に減少することがわかる。また、定温下では圧力の上昇にともなって溶解度も増
加している。これは圧力が増加することで誘電率や水密度が増加するためである。加えて金属種の種類によって超臨界水中での溶解度も大きく異なることもわかる。溶解度は反応場中で溶存している金属種の総濃度であり、粒子合成技術においては核生成・粒子成長に関わる大変重要なパラメータである。このように、超臨界水中での金属酸化物粒子の生成機構などを解析する上では、金属種の溶解度についても検討を行う必要があることがわかる。
この曲線の右側、すなわちより高温の領域では、水とガスもしくは有機物の2 成分が任意の組成で均一に混合することを示す。本発明者等のグループの阿尻らは、超臨界水が極性の低い有機物と均一層を形成するという性質に着目し、超臨界水を反応場として用い、金属酸化物粒子の合成と有機分子によるin-situ修飾に成功している(T. Adschiri, et al., J. Mater. Sci., 41, 1445, (2006); T. Adschiri, et al., Adv. Mater., 19, 203, (2007))。有機表面修飾された粒子は未修飾の粒子と比べて、均一なサイズ・形状を有す
る。図7に酸化セリウムナノ粒子のTEM像を示す。未修飾粒子は球状になる一方で、カル
ボン酸で表面修飾された粒子は立方体になる。立方体の粒子は(001)面が露出した構造を
とっており、表面エネルギーが高い(001)面に優先的にカルボン酸が結合して、成長抑制
が行われたと考察されている。また、この有機・無機ハイブリッドナノ粒子は有機溶媒への高い分散性を達成している。超臨界水中における粒子のin-situ修飾で得られる粒子形
状と異なる形状の粒子について、粒子核生成とは別の工程で表面修飾を施すex-situ修飾
を行って、外形形状の異なる修飾されたナノ粒子を得ることは非常に重要である。
オキシ塩酸塩、燐酸塩、硼酸塩、亜硫酸塩、弗酸塩、酸素酸塩等の無機酸塩及び蟻酸、醋酸、クエン酸、蓚酸、乳酸等の有機酸塩が挙げられる。これらの金属塩は、2種以上組み合わせて使用することも可能である。更にこれらの金属の錯体も使用可能である」。ここで、上記IB族金属とは、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)に基づく元素の周期表では第11族金属で、以下同様にして、上記IIA族金属とは同第2族金属で、上記IIB族金属とは同第12族金属で、IIIA族金属とは同第3族金属で、IIIB族金属とは同第13族金属で、IVA族金属とは同第4族金属で、IVB族金属とは同第14族金属で、VA族金属とは同第5族金属で、VB族
金属とは同第15族金属で、VIB族金属とは同第16族金属で、VIIB族金属とは同第17族金属
で、遷移金属とは同第6族〜第10族の金属である。
子としては、金属酸化物を主要な粒子の構成としているものが挙げられ、以下これを「金属酸化物微粒子」と称する。該金属酸化物微粒子に含まれる金属酸化物中の「金属」としては、典型的にはナノ粒子を製造することが可能なものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できる。代表的な金属としては、長周期型周期表で第IIIB族のホウ素(B)-第IVB族のケイ素(Si)-第VB族のヒ素(As)-第VIB族のテルル(Te)の線を境
界としてその線上にある元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものが挙げられ、例えば、第VIII族の元素ではFe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、第IB族の元素ではCu, Ag, Auなど、第IIB族の元素ではZn, Cd, Hgなど、第IIIB族の元素ではB, Al, Ga, In, Tlなど、第IVB族の元素ではSi, Ge, Sn, Pbなど、第VB族
の元素ではAs, Sb, Biなど、第VIB族の元素ではTe,Poなど、そして第IIIA〜VIIA族の元素などが挙げられる。金属酸化物としては、Fe, Co, Ni, Cu, Ag, Au, Zn, Cd, Hg, Al, Ga, In, Tl, Si, Ge, Sn, Pb, Ti, Zr, Mn, Eu, Y, Nb, Ce, Baなどの酸化物が挙げられ、
例えば、SiO2, TiO2, ZnO2, SnO2, Al2O3, MnO2, NiO, Eu2O3, Y2O3, Nb2O3, InO, ZnO, Fe2O3, Fe3O4, Co3O4, ZrO2, CeO2, BaO・6Fe2O3, Al5(Y+Tb)3O12, BaTiO3, LiCoO2, LiMn2O4, K2O・6TiO2, AlOOHなどが挙げられる」。ここで、上記長周期型周期表の第IIIB族
とはIUPAC無機化学命名法改訂版(1989)に基づく元素の周期表では第13族で、以下同様に
、上記第IVB族とは同第14族で、上記第VB族とは、第15族で、上記第VIB族とは同第16族で、上記第VIII族の元素とは同第8族〜第10族の元素で、上記第IB族の元素とは同第11族の
元素で、上記第IIB族の元素とは同第12族の元素で、上記第IIIB族の元素とは同第13族の
元素で、上記第IVB族の元素とは同第14族の元素で、上記第VB族の元素とは同第15族の元
素で、上記第VIB族の元素とは同第16族の元素で、そして上記第IIIA〜VIIA族の元素とは
同第3族〜第7族の元素である。
の周期表で第3族〜第17族の元素、さらに好適には、第11族金属、第12族金属、第3族金属(ランタノイド、アクチノイドを包含する)、第13族金属、第4族金属、第14族金属、第5族金属、第15族金属、第16族金属、第17族金属、第6族〜第10族の遷移金属などからなる
群から選択された金属の金属酸化物や金属水酸化物から構成されるものが挙げられる。
属-(C=O)-を介した結合、P原子を介した結合、-O-P-を介した結合、リン酸エステル結合
、亜リン酸結合、フォスフォン酸結合、亜フォスフォン酸結合、フォスフィン酸結合、亜フォスフィン酸結合などの化学結合を形成することを許容するものが挙げられる。有機残基(有機分子残基)としては、特には限定されず、当該分野で知られたもの、及び/又は、有機合成の分野で知られたものが挙げられ、例えば、炭化水素基、あるいはそれを含有する基などが挙げられる。
、炭素数1や2のものも使用できるが、本発明の特徴を生かす観点からは、炭素数3あるいはそれ以上の鎖を有する長鎖炭化水素であるものは好ましく、例えば、炭素数3〜30の直鎖又は分岐鎖、あるいは環状の炭化水素などが挙げられる。該炭化水素は、置換されていてもよいし、非置換のものであってもよい。該置換基としては、有機化学の分野、無機材料分野、高分子化学の分野などで広く知られた官能基の中から選択されたものであってよく、該置換基は1又はそれ以上が存在していてもよいし、複数の場合互いは同じでも異なっていてもよい。
本発明において、ナノ粒子との反応場に添加する有機修飾剤としては、生成されるナノ粒子に化学結合し、有機配位子として金属(合金)ナノ粒子の表面の少なくとも一部を覆うものであれば、特に限定されることはなく、例えば、当該分野で知られたものを使用できる。好適には、該修飾剤は、有機分子であり、形成するナノ粒子を安定化する作用のあるものを好適に使用できるし、高温高圧の水相で有機修飾剤として機能するものを好適に使用できる。
アミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン類、アニリン等の芳香族アミン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水酸基含有アミン類、さらにそれらの誘導体などが挙げられる。
等が挙げられる。オキシム類として、例えば、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる
。アミド類ないしは尿素類として、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、N,N'-ジメチルエチレン尿素、N,N'-ジメチルプロピレン尿素、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。アミン類として、例えば、キノリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。スルホキシド類として、例えば、スルホラン等が挙げられる。リン酸エステル類として、ヘキサメチレンフォスホリックアシッド等が挙げられる。カルボン酸類又はエステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、プロピレンカーボネート等が挙げられる。還元剤であるギ酸を有機溶媒として使用してもよい。エーテル類としては、例えば、ジグライム、ジエチルエーテル、アニソール等が挙げられる。
り評価され、単なる吸着結合やイオン結合、疎水性結合、水素結合より強く結合しており、共有結合と同等と評価されるものを意味すると解してよい。
わずかながら温度及び/又は圧力が低い状態にある水を指しており、例えば、温度でいうと150℃以上の領域から臨界温度374℃までというように、その温度が水の臨界温度より低く、且つ、圧力が水の臨界圧力22MPa又はそれ以上の圧力である領域が挙げられる。
一つの具体的な態様では、反応を行う系(例えば、恒温ゾーンにあるリアクター(反応器))に供給する原料混合物液の圧力を、水の臨界圧力22.12MPa又はそれ以上のもの(例えば、30MPaあるいは35MPaなど)とし、おおよそ150℃にまで加温されたといったように
所定反応温度近傍にまで加熱せしめられた原料混合物液を、反応温度として250℃になる
ように設定されたリアクター(亜臨界水下での反応)に供給、あるいは、反応温度として390℃になるように設定されたリアクター(超臨界水下での反応)に供給するといった手
法で、反応場である亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水が存在する条件を達成できる。
域、あるいは、250℃以上の温度から臨界温度374℃の領域、300℃以上の温度から臨界温
度374℃の領域などが挙げられる。もちろん、亜臨界水の領域は、10.0 MPa以上の圧力か
ら臨界圧力22MPaの領域、あるいは、15.0 MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaび領域、あるいは、18.0 MPa以上の圧力から臨界圧力22MPaの領域、あるいは、20.0 MPa以上の圧力か
ら臨界圧力22MPaの領域なども含まれてよい。
また、本発明の表面修飾型ナノ粒子の形成反応(表面修飾反応)においては、その反応温度としては、例えば、375〜500℃、好ましくは375〜450℃、より好ましくは375〜420℃、さらに好ましくは375〜400℃であり、ある場合には、例えば、375〜395℃、好ましくは375〜390℃、より好ましくは375〜385℃、または、375〜380℃で、その反応圧力としては、例えば、20〜50MPa、好ましくは21〜45MPa、より好ましくは22〜40MPa、さらに好まし
くは22〜35MPaである。
本発明の合成法で利用される典型的なフロー型リアクターの概略構成図を、図21に示す。図21に示すように、当該装置は、蒸留水、脱イオン水、あるいは純水を予め加温した上で溜めておく予熱水槽(熱水供給源槽(脱イオン熱水供給槽))から亜臨界水又は超臨界水となる水を供給する水供給路と、出発ナノ粒子原料である高圧ナノ粒子スラリー溶液を供給する原料供給路を備えており、該ナノ粒子スラリー液は、ヒーター部を通ることにより、前処理を受けた後、水供給路に合流する。次に、加熱せしめられた高圧ナノ粒子スラリー液と高温高圧水との混合体は、修飾部で修飾剤溶液(有機修飾剤溶液あるいは有機配位子分子溶液)と合流し、高温高圧下での修飾反応がなされることとなる。
上記合流部で混合せしめられて得られた混合物は、修飾部の等温ゾーンに配置されたリ
アクターに導入されることになる。リアクターは、溶融塩浴ジャケットなどで覆われて、恒温ゾーンとなっており、所定の反応温度となるようにされている。温度は、例えば、熱電対を備えた温度センサなどによりモニターできる。次に、反応混合物は、冷却部(水冷ジャケット)、回収部、圧力調整弁、例えば、背圧弁を通り、粒子溜、すなわち、生成物受槽へと移動する。
得られた表面修飾型ナノ粒子を含む生成物は、適宜、必要に応じて、ろ過処理することにより、凝集物を除去することができるし、さらに、遠心処理、デカンテーション処理、蒸留水、純水などによる洗浄処理、希KOH水溶液などの希アルカリ水溶液などを使用し再
分散化処理と遠心分離処理を繰り返すなどしてナノ粒子を洗浄できる。こうして得られる本発明のナノ粒子は、それ自体既知の方法で乾燥し、例えば、好ましくは凍結乾燥することにより、粉末の形で取得することもできる。
、好ましくはその平均粒子径が 500 nm 以下のサイズのものを指し、また、好ましくは300 nm以下のサイズのものが挙げられる。ある場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が250 nm以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が150 nm 以下のサイズの
ものであってよい。また好適な場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が100 nm 以下
のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が50 nm 以下のサイズのものあるいは30 nm以下のサイズのものであってよい。該ナノ粒子は、0.1〜250nmの粒子、1〜150nmの粒子、好ましくは1〜100nmの粒子、さらに好ましくは1〜50nmの粒子、より好ましくは5
〜30nmの粒子、さらにより好ましくは5〜20nmの粒子であってよい。
るナノ粒子集団としては、1〜500nmの粒子、5〜100nmの粒子、10〜50nmの粒子、15〜200nmの粒子、20〜300nmの粒子、30〜500nmの粒子、1〜30nmの粒子、3〜50nmの粒子、5〜70nmの粒子、7〜100nmの粒子、10〜130nmの粒子、3〜100nmの粒子、10〜20nmの粒子、又は、2
0〜250nmの粒子であって、且つ、ナノ粒子集団の70%又はそれ以上、80%又はそれ以上、90%又はそれ以上、95%又はそれ以上が当該サイズのものとして含んでいるものが挙げられる。
定したその平均粒子径が9〜500nmのサイズ又はそれ以下のもの、好ましくはその平均粒子径が10〜400nmのサイズ又はそれ以下のもの、あるいは、X線回折(X-Ray Diffraction, XRD)で測定したその平均粒子径が250nmのサイズ又はそれ以下のもの、又は、150nmのサイ
ズ又はそれ以下のものを指しているものでよい。さらに、該ナノ粒子は、XRDデータに基
づいた修飾無機ナノ粒子の平均粒子径が、約5〜250nmであるもの、好ましくは約7〜250nmであるもの、さらに好ましくは約8〜250nmであるもの、もっと好ましくは約8〜150nmであるものであってよい。ある場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が100nm以下のサイ
ズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が50 nm 以下のサイズのものであってよい。
粒子径の測定は当該分野で知られた方法によりそれを行うことができ、例えば、TEM、
吸着法、光散乱法(DLSを含む)、SAXSなどにより測定できる。TEMでは電子顕微鏡で観察するが、粒子径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N2吸着などによりBET 表面積を評価するものである。
強固なまた修飾化率の高い有機修飾ナノ粒子は、溶剤、ポリマー等の分散性を高め、ナノ粒子としての機能発揮に効果的である。またこの処理過程における粒子結晶面と有機修飾家財との相互作用をコントロールすることが可能となり、例えば触媒活性機能の高い表面を意図的に多くすることが出来、高活性触媒等の合成技術として応用できる。本発明の技術に従えば、有機修飾技術の改良(結合力、修飾化率)と有機修飾化に反応制御技術による結晶形状制御に有利に応用できる。本発明の方法で得られる表面修飾型ナノ粒子は、高機能樹脂フィラー(高熱伝導、高屈折率)、高活性触媒として期待できるものである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
超臨界水反応場を反応場として粒子合成と同時に表面修飾を行うin-situ修飾により金
属酸化物ナノ粒子を合成する技術については、数多くのナノ粒子についての技術的蓄積がなされつつある。一方、別の工程で合成したナノ粒子に、表面修飾を施すex-situ修飾に
ついてはあまり知見が得られていない。そこで、バッチ式反応器を用いて、あらかじめ合成した酸化セリウムナノ粒子を超臨界水中でカルボン酸修飾し、pHや反応温度の影響を見ることで、超臨界水中における表面修飾に影響を与える要素について検討した。
本実施例で用いた試薬を以下に示す。精製などは行わずに用いた。
酸化セリウムナノ粒子(CeO2、シーアイ化成株式会社)、硝酸(HNO3、和光純薬工業株式会
社、特級)、水酸化カリウム(KOH、株式会社高純度化学研究所)、ヘキサン酸(C5H11COOH
、和光純薬工業株式会社、特級99%以上)、シクロヘキサン(C6H12、和光純薬工業株式会
社、特級)、トルエン (C6H5CH3、和光純薬工業株式会社、特級)
本実施例では、内容積5 mlの高温高圧リアクター(ボトム:ハステロイ、キャップ:イ
ンコネル、株式会社AKICO製)を反応器として用いた。リアクターの加熱は電気式の振盪式加熱炉(株式会社AKICO製)を用いた。また、以下の装置を用いて粒子の評価を行った。
透過型電子顕微鏡 (TEM、HITACHI製 H-7650)、フーリエ変換赤外分光光度計 (FT-IR、日
本分光製 FT/IR-680Plus)及び熱重量示唆熱分析計 (TG-DTA、理学電機工業株式会社製 TG-8120)
本実施例では、バッチ式高温高圧リアクターを用いて、酸化セリウムナノ粒子を原料、ヘキサン酸を修飾剤として、超臨界水中で酸化セリウムナノ粒子を有機修飾した。
酸化セリウムナノ粒子を精製水に分散させ、0.1 M 酸化セリウムナノ粒子水スラリーを調製した。このスラリーのpHを測定すると、pH3.5であった。
このスラリーのpH調整を行った。pHメーターでスラリーの測定を行いながら、所定のpHになるように0.1M 硝酸水溶液、もしくは0.1M 水酸化カリウム水溶液を滴下した。それぞれ、pH2, pH6, pH8, pH10に調整した各ナノ粒子スラリーを得た。
高温高圧リアクターに酸化セリウムナノ粒子スラリーをよく分散した状態で投入し、ヘキサン酸を加えた。スラリーとヘキサン酸の投入量は、リアクター内を30 MPaの条件に保つために、反応温度によって変化させた。反応温度300℃の場合、スラリー3.75 ml、ヘキサン酸150 μlとした。反応温度390℃の場合は、スラリー2.5 ml、ヘキサン酸100 μlと
した。トルクレンチを用いて反応器を密封した後、あらかじめ加熱しておいた振盪式加熱炉にリアクターを投入し、10 min振盪した。加熱炉の温度は300℃と390℃の二つの条件に設定して実験を行った。反応終了後、リアクターを加熱炉から取り出し、冷水中に投入して急冷した。生成物を遠沈管に取り出し、トルエン1 mlで5回洗い出した。水相とトルエン相に分かれるまで遠沈管を静置し、水相のみを取り除いた。水相除去後のトルエン相を10100 rpm、20 minで遠心分離した。上澄みのトルエン相を除去し、沈殿物をシクロヘキ
サン10 mlで回収した。この回収液を凍結乾燥させて粒子を得た。
酸化セリウムナノ粒子を反応温度300℃で反応させて得られた生成物粒子のFTIRスペク
トルの測定結果を図8に示す。図9には反応温度390℃で反応させて得られた生成物粒子
のFTIRスペクトルの測定結果を示す。
FTIRスペクトルを測定した結果、いずれの反応条件においてもC-H伸縮振動(3000〜2840
cm-1)とカルボキシルアニオンの逆対称伸縮振動および対称伸縮振動(1540 cm-1近傍、1440 cm-1近傍)のピークが確認できた。また、C=O伸縮振動のピーク(1710 cm-1近傍)も確認された。これより、ヘキサン酸はカルボキシルアニオンを介して表面に結合した状態と、C=O結合を残したまま遊離した状態の2種類が粒子表面上に存在するものと考えられる。
以上の結果より、粒子表面はヘキサン酸で有機修飾されていることが示された。
れた生成物粒子のTEM像を図10及び図11に示す。図10中、(a)は反応前の原料粒子(未反応粒子)、(b)は無修飾の粒子(pH3.5、修飾剤を用いずに300℃で反応させて得られた生成物粒子)、(c)は修飾剤存在下で反応の生成物粒子(pH2)、(d)は修飾剤存在下で反応の生成物粒子(pH3.5)で、図11中、(a)は修飾剤存在下で反応の生成物粒子(pH6)、(b)は修飾剤存在下で反応の生成物粒子(pH8)、(c)は修飾剤存在下で反応の生成物粒子(pH10)である。
未反応の原料粒子と修飾剤を用いずに300℃で反応させた未修飾粒子は、どちらも不定
形であり、粒径10 nm以下の微小粒子と粒径20〜30 nm程度の粒子が混在していた。両者からは明確な違いは観察されなかった。
一方、修飾剤を投入して反応させた粒子は、いずれのpH条件においても、丸みを帯びた粒径20〜30 nm程度の大きな粒子に変化していることが観察された。また、それぞれのpH
条件で、多くの粒子がTEMグリッド上に配列している様子が確認された。これより、粒子
には良好な有機修飾が施されたものと考えられた。
℃までの重量減少率を測定した。反応温度300℃の各pH条件におけるTG測定結果を図12に示す。
TG測定結果より、いずれのpH条件においても、200℃から400℃〜600℃の高温領域まで
重量減少が継続していた。300℃で反応させることで、カルボン酸と修飾剤が強固な相互
作用を持ったと考えられる。しかし、pHを変化させた影響については、明確な傾向は観察されなかった。
結果、300℃での反応と同様に、390℃での反応でも粒子は丸みを帯びた大きなものに変化している様子が観察された。これより、390℃の超臨界水反応場および、300℃の亜臨界水反応場によって、粒子の再溶解・再析出が生じている可能性が示唆された。
一方で、pH2の条件では300℃での反応と同様に粒子の一部がTEMグリッド上に配列して
いる様子が観察されたが、他のpH条件では多くの粒子が凝集しており、配列している様子はほとんど観察されなかった。これは、390℃の反応において、ヘキサン酸が粒子の形状
制御に対しては効果を発揮したが、粒子の凝集制御に対しては効果を発揮できなかったと考えられる。
pH2, 3.5, 6, 10の条件においては、200℃から400℃〜600℃の高温領域まで重量減少が継続していたが、pH8の条件においては200℃〜300℃の低温領域で重量減少がほぼ終結し
ていた。しかし、pH変化による明確な傾向は、300℃での実験結果と同様に観察されず、
本実験系における粒子修飾に対するpHの影響は小さいと推測される。
粒子のTEM像観察において、300℃で反応させた場合は多くの条件で、粒子が配列しており、粒子が良好に有機修飾されている様子が観察された。一方で、390℃で反応させた場
合は、pH2を除く多くの条件で、ほとんどの粒子が凝集しており、良好な有機修飾が施さ
れていなかった。
この結果から、本実験系における粒子修飾に対して大きな影響を及ぼす因子は、反応場の温度であると考えられた。超臨界水は温度条件によって誘電率が変化することから、それにともなって金属酸化物の溶解度も大きく変化する。定圧化において、300℃を含む亜
臨界条件では温度上昇に伴って金属酸化物の溶解度は上昇するが、臨界点近傍から超臨界状態にかけて溶解度は大幅に減少する傾向がある。300℃の反応では、亜臨界条件の高い
溶解度により、ナノ粒子が再溶解・再析出したと考えられる。その際の粒子の成長過程に対して、ヘキサン酸が作用し、結果として粒子の良好な有機修飾が施されたものと考えられた。
では金属酸化物の溶解度が高く、粒子が再溶解・再析出する際にヘキサン酸が有効に作用し、良好な修飾が施されたことが示唆された。
上記実施例1で、300℃の亜臨界水中での反応がナノ粒子のex-situ修飾に有効であることが示唆された。そこで、本実施例では反応場の急速昇温が可能な流通式反応器を用いて、粒子の修飾実験を行い反応温度による影響を検討した。
本実施例で用いた試薬を以下に示す。また、特に精製等は施さずに用いた。酸化セリウムナノ粒子(CeO2、シーアイ化成株式会社)、ヘキサン酸(C5H11COOH、和光純薬工業株式
会社、特級99%以上)、トルエン(C6H5CH3、和光純薬工業株式会社、特級99.5%以上)、
シクロヘキサン(C6H12、和光純薬工業株式会社、特級)
また、以下の装置を用いて粒子の評価を行った。
透過型電子顕微鏡(TEM、HITACHI製 H-7650)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR、日本分光製 FT/IR-680Plus)及び熱重量示唆熱分析計(TG-DTA、理学電機工業株式会社製 TG-8120)
実験は図16に示す流通式反応器を用いて行った。送液には高流量ポンプ(日本精密科学
株式会社製、NP-KX-540)を用いた。配管にはSUS 316製1/4、1/8インチチューブおよびSUS
316製高圧チューブ継ぎ手(swagelok社製)を用いた。混合部には内径2.3 mm の1/8インチT字型継手を用いた。予熱水の加熱にはカートリッジヒーターを使用し、温度コントロー
ラーによりPID制御した。修飾部の保温にはリボンヒーターを使用し、温度コントローラ
ーにより制御した。反応系内の温度の測定にはK-type熱電対を用いた。修飾部出口で反応を急速に停止させるため、管出口を冷却水循環器に接続し、反応液を速やかに冷却した。生成粒子は冷却部出口に設置されているシリンジ型回収容器(H.I.P社製、TOC5-20-P)により捕集した。反応器内の圧力は出口に取り付けた背圧弁(TESCOM社製、26-1762-24)を用いて調節した。
修飾剤投入部からの冷却部までの滞在時間を本実験の修飾反応における反応時間と定義した。次に反応時間の定義式を示す。
ρSCW:反応温度・圧力における水密度 [g/ml]
水密度により反応時間は変化するが、冷却部を上下させることで修飾部の長さを調節し、反応時間を一定に保って実験を行った。
精製水に酸化セリウムナノ粒子を分散させ、0.02 Mの酸化セリウムナノ粒子水スラリーを調製した。修飾剤として、ヘキサン酸のトルエン溶液(0.12 M)を調製した。予熱水、スラリー、修飾剤の流量は、それぞれ12 ml/min、3 ml/min、3 ml/minとした。次に背圧弁
により系内を30 MPaに設定した。このとき回収部のラインは三方コックによりシリンジ型回収容器とは反対のラインに接続しておく。単位時間当たりに各ポンプから送液される精製水の重量を測定することで、表示された流量と実際の流量が一致していることを確認した。カートリッジヒーターに通電し、予熱水を所定温度まで加熱した。通電と同時に、冷却水循環装置の電源を入れ、冷却を開始させた。各部の温度が安定したことを確認した後、精製水を送液していたポンプを、スラリー、修飾剤に切り替えて送液した。スラリー、修飾剤のラインが完全に満たされたことを確認し、回収部のラインをシリンジ型回収容器側に切り替えた。所定時間後、回収部のラインを反対側のラインに戻し、電気炉とフレキシブルヒーターの加熱を停止させた。その後、送液ポンプ2を硝酸セリウム水溶液から精
製水に切り替え、反応を終了させた。管内の温度が100℃以下になったことを確認し、背
圧弁を開放して系内の圧力を常圧に戻した。冷却水循環装置の電源を切り、冷却を停止させた。
生成物をシリンジ型回収容器からビーカーに移し、トルエン20 mlで容器内から生成物
を洗い出した。生成物を分液漏斗に移し、水とトルエンのエマルジョンが解消されるまで数時間静置した。その後、水相とトルエン相を分離した。トルエン相30 mlを10100 rpmで40 min遠心分離し、沈殿物をシクロヘキサン10 mlで回収した。シクロヘキサン回収液を
凍結乾燥し、生成物修飾粒子を得た。
FTIRにより、修飾状態を評価した。FTIRスペクトルの測定結果を図17に示す。図17中の温度は、流通式反応装置の修飾部での反応系内の温度を示す。
C-H伸縮振動(3000〜2840 cm-1)とカルボキシルアニオンの逆対称伸縮振動および対称伸縮振動(1540 cm-1近傍、1440 cm-1近傍)、微弱ながらもC=O伸縮振動のピーク(1710 cm-1
近傍)が観察された。バッチ式リアクターを用いた実験と同様に、ヘキサン酸はカルボキ
シルアニオンを介して表面に結合した状態と、C=O結合を残したまま遊離した状態の2種
類が粒子表面上に存在するものと考えられる。
いずれの修飾温度においても、10 nm以下の微小な粒子と数10 nmの粒子が混在している様子が観察され、バッチ式リアクターによる実験のような粒子形態の大幅な変化は観察されなかった。流通式反応器を用いた場合、反応時間は1 sとバッチの10 minと比較して大
幅に短いため、粒子の溶解ははっきりと観察されなかったと考えられる。
次に、粒子のTG測定を行い、修飾状態の評価を行った。図20に各反応温度におけるTG測定結果を示す。
は600℃まで重量減少が継続しており、バッチを用いた実験と同様に良好な修飾が施され
ていることが示唆された。
バッチを用いた実験では、反応場の設定温度への昇温には数分を要する。そのため、設定温度以下の温度の反応場による効果も生成物には含まれている可能性がある。しかし、
本実施例の流通装置を用いた実験では、反応場は瞬時に昇温されるため、設定温度以外の反応場による効果は非常に少ないと判断される。よって、300℃の亜臨界水による熱処理
が粒子修飾に有効であることが示唆された。
亜臨界水状態、例えば、300℃の亜臨界水条件での熱処理が粒子修飾に有効であること
を確かめるために、流通式反応装置を改造して実験を行った。粒子スラリーに亜臨界水による前処理を行った後で、超臨界水反応場での修飾を施せるように、粒子スラリーの供給ライン上にカートリッジヒーター(ヒーターB)を増設した。改造後の流通式反応装置の模
式図を図21に示す。
ヒーターBの出口温度を300℃に設定し、粒子スラリーを300℃まで加熱した。粒子スラ
リーは数分かけて300℃まで加熱され、その状態を数秒間保持する。この他の反応実験手
順は、実施例2と同様とし、修飾部温度が390℃となるようにヒーターAを調節して実験を行った。
回収した生成物粒子のFTIR測定結果を図22に示す。上記実施例1や2の実験と同様に、C-H伸縮振動(3000〜2840 cm-1)とカルボキシルアニオンの逆対称伸縮振動および対称伸縮振動(1540 cm-1近傍、1440 cm-1近傍)、微弱なC=O伸縮振動のピーク(1710 cm-1近傍)が観察された。ヘキサン酸はカルボキシルアニオンを介して表面に結合した状態と、C=O結合
を残したまま遊離した状態の2種類が粒子表面上に存在するものと考えられた。
次に、生成物粒子のTEM像を図23に示す。
本生成物粒子のTEM像から、微小な粒子と、20 nm程度の粒子が混在している様子が観察され、実施例2での流通式装置の実験と同様に、大幅な粒子形状の変化は確認されなかった。前処理を行った後に修飾反応に付して得られた生成物粒子のTG測定結果を図24に示す。また、実施例2において390℃に急速昇温させて修飾せしめて得られた生成物粒子のTG
測定結果も併記する。
熱処理を行わなかった場合と比べ、300℃で熱処理を行ったことで、300℃〜450℃の高
温領域まで重量減少が続くようになった。これより、本熱処理工程の付加された方法により、粒子とカルボン酸の強固な結合が形成されることがわかる。
まず、初期状態において金属酸化物の粒子表面は水酸基をあまり露出させておらず、この状態では粒子表面はカルボン酸で有効に修飾されることが出来ないと考えられる。しかし、金属酸化物の溶解度が高い亜臨界水で粒子を処理することで、粒子の一部が溶け、粒子表面に水酸基が露出した状態になるのではないかと考えられる。この粒子表面が活性化された状態ならば、カルボン酸との脱水反応により、修飾反応が進行すると推測される。この状態を維持したまま、有機物と水が同一相を組む超臨界水中で修飾反応を行うことで、効率的にカルボン酸が粒子表面と強固な結合を形成したと考えられる。
実施例2では、流通式反応器を用いて、酸化セリウムナノ粒子をヘキサン酸で修飾し、反応温度の影響を検討した。その結果、300℃の亜臨界水による熱処理が粒子修飾に対し
て有効であることが示唆された。そこで、流通式反応器を改造し、粒子に300℃の亜臨界
水で前処理を施した上で修飾反応を行えるようにした。その結果、前処理によって粒子とカルボン酸が強固に結合した。これは、金属酸化物の溶解度が大きい亜臨界水が粒子の一部を溶かし、粒子表面に水酸基が露出した状態を形成するためであると推察されるものであった。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (3)
- 亜臨界又は超臨界状態にある高温高圧水が存在する条件下に無機ナノ粒子から有機修飾剤を反応させて有機修飾された無機ナノ粒子を製造する方法であって、出発物質である無機ナノ粒子を亜臨界状態にある高温高圧水存在下で前処理した後、超臨界状態にある高温高圧水存在の条件下で無機ナノ粒子と有機修飾剤とを反応させて、有機修飾された無機ナノ粒子を製造すること、そして該無機ナノ粒子は金属酸化物及び金属水酸化物を包含する金属元素を含有するものからなる群から選択されたものであることを特徴とする有機修飾無機ナノ粒子の製造方法。
- 該無機ナノ粒子が、金属酸化物無機ナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 有機修飾剤が、カルボン酸類から選択されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
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