JP2011201740A - 無機粒子と無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体及び無機粒子分散液並びに光学部材 - Google Patents

無機粒子と無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体及び無機粒子分散液並びに光学部材 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に水分吸着の原因となる水酸基や分極部位が少なく、水分吸着が抑制されることで低吸水性化が可能な無機粒子、この無機粒子とポリ(メタ)アクリレートとを複合化した場合に相分離や凝集等の不具合が生じる虞が無く、低吸水性で透明な複合体を得ることができる無機粒子と無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体及び無機粒子分散液並びに光学部材を提供する。
【解決手段】本発明の無機粒子は、無機化合物からなる粒子の表面が、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する質量比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾され、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下であり、この無機化合物としては、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機粒子と無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体及び無機粒子分散液並びに光学部材に関し、特に詳しくは、ポリ(メタ)アクリレートの屈折率やアッベ数等の光学特性の制御、あるいは膨張係数や硬度等の機械的特性の制御を行う際に用いて好適な無機粒子、この無機粒子とポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを複合化した無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体、この無機粒子を有機溶媒や(メタ)アクリレートモノマー中に分散した無機粒子分散液、この無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を備えた光学部材に関するものである。
ポリ(メタ)アクリレートは、高透明性、低光散乱性、耐候性、高屈折率、高アッベ数に加えて加工性が良いこと等から、光学レンズや光学膜として用いられているが、吸水性が高いという欠点がある。
吸水性が高い場合、例えば、光学レンズに用いた場合には、吸水による体積変化から光の焦点距離が変化するという問題点が生じる。また、積層膜とした場合、吸水による反り、体積変化に伴う膜割れ、基材からの剥離という問題点が生じる。
さらに、このような問題点を有するポリ(メタ)アクリレートと無機粒子とを複合化した複合体の場合、無機粒子の表面に存在する水酸基、結晶水、吸着水、あるいは表面修飾剤の官能基の分極部位に水分の吸着が生じ、ポリ(メタ)アクリレート単体よりもさらに吸水性が高くなるという問題点が生じる。
特に、この複合体では、透明性を保持するために、無機粒子の粒子径に起因する散乱を抑える必要があり、そのために粒子径がナノメートルオーダーの無機粒子を用いることが多いが、この場合においても、無機粒子の粒子径が小さくなると、無機粒子の比表面積が大きくなり、水分の吸着量が大きくなるという問題点がある。
一般に、低吸水性の無機粒子−樹脂複合体を得るためには、炭素数が多く飽和炭化水素系に近い樹脂と、表面修飾剤により表面を有機化合物で修飾した無機粒子と、を用いることが好ましい。しかしながら、表面修飾剤中に分極性を有する部分がある場合には、樹脂原料モノマーの極性が非常に小さいため、無機粒子の樹脂原料モノマーへの分散安定性が確保できないという問題点がある。
例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂と無機粒子との複合体において、(メタ)アクリレートのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が多いポリ(メタ)アクリレート樹脂と、表面を(メタ)アクリルシラン化合物のみで表面修飾した無機粒子と、を組み合わせた場合には、表面修飾剤の(メタ)アクリルシラン化合物にはエステルの分極が存在するため、より極性の低い樹脂原料モノマーである(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーへの分散安定性が確保できない。
また、この組み合わせでは、無機粒子の表面が(メタ)アクリルシラン化合物のみで表面修飾されているため、樹脂原料である(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーに対して(メタ)アクリルシラン化合物中の(メタ)アクリル基が過剰に存在する。このため、無機粒子−樹脂複合体が得られた場合においても、未重合の表面修飾(メタ)アクリル基が残存して分極部位を形成する。さらには、アクリル基のエステルが無機粒子の近傍に多く存在して分極部位を形成することとなり、これらの分極部位が水分吸着の原因となる。
そこで、低吸水性の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を得る方法として、(メタ)アクリレート中の金属脂肪族アクリルアルコキシド化合物を加水分解して、この(メタ)アクリレート中に極めて微小な金属酸化物粒子を分散させ、この金属酸化物粒子を分散させた(メタ)アクリレートを重合させることにより吸水性の低いハイブリッド材料を得る方法が提案されている(特許文献1)。
また、無機粒子の表面をアルキルシランやシラザン化合物で疎水化した後、さらにマイクロ波により加熱処理して脱水化した無機粒子を樹脂と混合させることで、疎水性に優れた複合樹脂材料が提案されている(特許文献2)。
また、異なる官能基でそれぞれ30%以上かつ70%以下の表面被覆率で修飾した少なくとも2種類の微粒子を、ポリ(メタ)アクリレート中に分散させることにより、これら2種類の微粒子の表面の一部は、それ自体が反発しあい、隣り合う微粒子は、分子間力により引き付けあう、という加成性の範囲を逸脱することで、分散性を向上させるとともに吸水率も低減させた複合体が提案されている(特許文献3)。
また、金属酸化物超微粒子の表面を、酸性基及び塩基性基の両方で複合修飾することにより、この金属酸化物超微粒子のポリ(メタ)アクリレート中への高充填が可能で、かつ可視光に対する透明性が良好で無着色の複合体が提案されている(特許文献4)。
また、酸化化合物粒子の表面を、疎水基、水酸基及び水酸基と異なる極性基としてアミノ基、エーテル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基から選ばれた少なくとも1種を用いて修飾し、この表面修飾酸化化合物粒子をポリ(メタ)アクリレート中に分散した複合体が提案されている(特許文献5)。
特開2004−83669号公報 特開2008−280443号公報 特開2007−126636号公報 特開2003−73558号公報 特許第3791502号公報
ところで、特許文献1記載のハイブリッド材料では、アルコキシ基が加水分解した際に生成する水酸基が材料中に残存しているので、この残存する水酸基が水分吸着の原因となるために、ハイブリッド材料の低吸水性化が難しいという問題点があった。
また、金属酸化物を粒子化する加水分解反応温度が50〜100℃と低いので、得られた金属酸化物粒子の結晶性が低く、特に、この金属酸化物粒子をハイブリッド材料の屈折率向上を目的として用いた場合、屈折率を上昇させる効果が弱いという問題点もあった。
また、特許文献2記載の複合樹脂材料では、低吸水性の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を得るためには、樹脂として(メタ)アクリレートのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が多いポリ(メタ)アクリレートを用いる必要があるが、無機粒子をアルキルシランやシラザン化合物のみで疎水化した場合、この無機粒子は樹脂原料である(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中での分散安定性は確保できるものの、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーが重合する際にポリマーと無機粒子との間に引き合う相互作用が無く、したがって、無機粒子とポリマーが相分離して、無機粒子が凝集してしまい、その結果、複合体が濁ってしまい、透明な複合体が得られないという問題点があった。
また、特許文献3記載の加成性の範囲を逸脱した複合体では、互いに異なった官能基で表面修飾された微粒子を2種類作製する必要があり、しかも、これら2種類の微粒子のそれぞれの被覆率を独立して制御し、また2種類の微粒子間の混合比率を最適化する必要があり、製造工程が煩雑になり、製造コストも高くなるという問題点があった。
また、微粒子の被覆率を70%以下とすることにより分子間力の最適化を図っているが、被覆されていない30%以上の領域には無機粒子の水酸基、結晶水、吸着水が存在しており、水分吸着の原因となる。
また、特許文献4記載の金属酸化物超微粒子の表面を酸性基及び塩基性基の両方で複合修飾した複合体では、酸性基は総炭素数1〜20の飽和カルボン酸あるいは不飽和カルボン酸であり、ポリマーとの溶解性、光硬化を目的としたものであるから、表面修飾剤中に分極性を有する部分があるために、極性が小さい樹脂原料モノマーに対して金属酸化物超微粒子の分散安定性が確保できないほか、特許文献2記載の複合樹脂材料と同様の問題点がある。
また、特許文献5記載の表面修飾酸化化合物粒子をポリ(メタ)アクリレート中に分散した複合体では、酸化化合物粒子の表面を、水酸基、あるいはアミノ基、エーテル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基から選ばれた少なくとも1種の水酸基と異なる極性基により修飾しているが、極性基の割合を水酸基と水酸基と異なる極性基との合計量の80〜90%としているので、極性基による修飾の割合が水酸基と水酸基と異なる極性基による修飾の割合よりも少なくなり、したがって、透明な複合体が得られる場合もあるものの、極性基への水分吸着が著しくなり、複合体の吸水率が増大するという問題点があった。
また、極性基の割合が少ないことにより、低吸水性の(メタ)アクリレートモノマーやポリマー中では表面修飾酸化化合物粒子の分散安定性が確保できず、透明性が得られないという問題点がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面に水分吸着の原因となる水酸基や分極部位が少なく、かつマトリックス樹脂を形成する(メタ)アクリレートモノマーとの重合性を有する無機粒子、この無機粒子とポリ(メタ)アクリレートとを複合化した場合に、相分離や凝集等の不具合が生じる虞が無く、低吸水性であり、かつ透明な複合体を得ることができる無機粒子と無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体及び無機粒子分散液並びに光学部材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、無機化合物からなる粒子の表面を、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する質量比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾すれば、表面に水分吸着の原因となる水酸基や分極部位が少ないことから水分吸着が抑制され、かつ、マトリックス樹脂と複合体を形成する際に、マトリックス樹脂の原料となる(メタ)アクリレートモノマーと結合することにより、マトリックス樹脂であるポリ(メタ)アクリレートと分相することなく一体化することができる無機粒子が得られることを見出すとともに、この無機粒子を低吸水性であるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートと複合化すれば、低吸水性であり、かつ相分離や凝集等の不具合が生じる虞が無い透明な複合体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の無機粒子は、無機化合物からなる粒子の表面が、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する質量比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾され、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下であることを特徴とする。
前記無機化合物は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることが好ましい。
本発明の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体は、本発明の無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーをポリマー化してなるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを、複合化してなることを特徴とする。
この無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体では、吸水率は、前記ポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート単体の吸水率以下であることが好ましい。
本発明の無機粒子分散液は、本発明の無機粒子を有機溶媒中に分散してなることを特徴とする。
本発明の無機粒子分散液は、本発明の無機粒子を、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に分散してなることを特徴とする。
本発明の光学部材は、本発明の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を備えていることを特徴とする。
本発明の無機粒子によれば、無機化合物からなる粒子の表面を、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する質量比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾し、かつ一次粒子径を1nm以上かつ20nm以下としたので、粒子の表面には水分吸着の原因となる水酸基や分極部位が少なく、粒子の表面への水分吸着を抑制することができる。さらに、マトリックス樹脂と複合体を形成する際に、マトリックス樹脂の原料となる(メタ)アクリレートモノマーのエステル部分の(シクロ)アルキル基と特性が類似した第1の表面修飾剤の存在により、無機粒子を(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させることができる。
さらには、(メタ)アクリレートモノマーとの重合性を有する第2の表面修飾剤の存在により、(メタ)アクリレートモノマーが重合してポリ(メタ)アクリレートを形成する際に、この第2の表面修飾剤が(メタ)アクリレートモノマーと結合することにより、無機粒子がマトリックス樹脂であるポリ(メタ)アクリレートと相分離することなく一体化した複合体を得ることができる。
また、無機粒子の一次粒子径を1nm以上かつ20nm以下とナノ粒子化したので、この無機粒子を用いて複合体を形成した際にも、透明性に優れた複合体を得ることができる。
本発明の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体によれば、本発明の無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーをポリマー化してなるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを、複合化したので、無機粒子表面の第1の表面修飾剤の効果により、無機粒子を(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させることができる。また、無機粒子表面の第2の表面修飾剤の効果により、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーが重合してポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートが形成する際に、無機粒子がポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートと相分離することがないので、無機粒子をポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート中に均一に分散させることができ、相分離や粒子凝集等の不具合が生じる虞がない。
また、水分吸着を抑制させた無機粒子と、低吸水性である(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上のポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを用いて複合体を形成したことから、ポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート単体本来の低吸水特性を阻害することなく、無機粒子を分散、複合化することができる。
また、この無機粒子の表面には水分吸着の原因となる水酸基や分極部位が少なく、したがって、この無機粒子のポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート中における分散状態を安定させることができ、さらには、無機粒子の一次粒子径を1nm以上かつ20nm以下とナノ粒子化したので、この複合体の透明性を向上させることができる。
以上により、無機粒子とポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを、良好な複合状態が保たれ、かつ低吸水性で高透明性の状態で複合化することができる。
本発明の無機粒子分散液によれば、本発明の無機粒子を有機溶媒中、あるいは(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中、に分散したので、この無機粒子表面の第1の表面修飾剤の疎水性の効果により、有機溶媒中、あるいは(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中における無機粒子の分散性を向上させ、安定した分散液を得ることができる。
本発明の光学部材によれば、本発明の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を備えたので、複合体における吸水性が低く、さらには相分離や凝集等の不具合に起因する光散乱を極めて低く抑えることができ、可視光線に対する透明性を向上させることができる。
したがって、吸水による寸法変化、積層体とした時の反り、積層基材からの剥離等の特性劣化を起こすことのない光学部材を提供することができる。
本発明の無機粒子と無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体及び無機粒子分散液並びに光学部材を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[無機粒子]
本実施形態の無機粒子は、無機化合物からなる粒子の表面が、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する質量比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾された無機粒子であり、しかも、一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下の粒子である。
ここで、無機粒子を構成する無機化合物としては、金属酸化物、無機酸化物、金属窒化物、無機窒化物、金属炭化物、無機炭化物等が挙げられ、複合体を構成するポリ(メタ)アクリレートに付与する機能により適宜選択される。
例えば、金属酸化物としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化クロム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化スズ、酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化エルビウム、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化ニッケル、酸化ストロンチウム、酸化イッテルビウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。また、無機酸化物としては、酸化ケイ素等が挙げられる。
また、金属窒化物としては、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ等が、無機窒化物としては、窒化ケイ素等が挙げられる。
また、金属炭化物としては、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ等が、無機炭化物としては、炭化ケイ素等が挙げられる。
その他、SiGe等のIV族半導体、CdS、CdSe、ZnSe、CdTe、ZnS、HgSe等のII−VI族半導体、GaAs、InP、InSb等のIV−VI族半導体、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、ニオブ等の金属も適宜使用可能である。
特に、光学レンズ等の光学部材に適用する場合には、屈折率制御、屈折率の波長依存性の制御等が必要になる場合が多く、これらの制御の容易性を考慮すると、酸化ジルコニウム、酸化チタンが好適である。
この無機粒子の一次粒子径は、1nm以上かつ20nm以下が好ましい。
ここで、一次粒子径が1nm未満であると、粒子の結晶性が低くなり、目的とする機能が発現し難い場合があったり、あるいは粒子中における表面原子数の割合が高くなることから、粒子の表面活性が高くなり、その結果、粒子同士が凝集したり、あるいはポリ(メタ)アクリレートと複合化した場合にポリ(メタ)アクリレートの劣化を招くので好ましくない。一方、一次粒子径が20nmを超えると、分散させた際の分散粒径が大きくなり、したがって、レイリー散乱の影響が顕著となり、分散液やポリマーとの複合体の透明性を阻害するので好ましくない。
この無機粒子の表面は、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する重合比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾されていることが好ましい。
なお、この修飾部分の厚みは、表面修飾剤の分子の長さによって決まり、表面を十分に疎水化されれば特に制約はない。
ここで、第1の表面修飾剤としては、無機粒子と反応し、かつ(シクロ)アルキル基等の疎水基を確保することができればよく、特に制限されないが、無機粒子と反応性のあるアルコキシ基、クロロ基、シラザンを分子中に含有するもの、あるいは、これらの加水分解により生成するシラノール基等を分子中に含有するもの、無機粒子と反応性のあるカルボキシル基を分子中に含有するもの等が挙げられる。
この第1の表面修飾剤の具体例としては、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、アダマンタンカルボン酸、アダマンタン酢酸等が挙げられる。
また、第2の表面修飾剤としては、無機粒子と反応し、かつ(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有していればよく、特に制限されないが、無機粒子と反応性のあるアルコキシ基、クロロ基、シラザンを分子中に含有するもの、あるいは、これらの加水分解により生成するシラノール基等を分子中に含有するもの、無機粒子と反応性のあるカルボキシル基を分子中に含有するもの等が挙げられる。
ここで、マトリックスとなる(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、シアノ基等が挙げられ、これらの中でも、マトリックスとなる(メタ)アクリレートの硬化重合と同様に反応する(メタ)アクリル基が特に好ましい。
この第2の表面修飾剤の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピル(ジイソプロピル)ジメチルトリメトキシシラン、(3−シアノブチル)メチルジクロロシラン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、2−メタクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、フタル酸水素アクリロイルオキシプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸化合物が挙げられる。
ここで、第1の表面修飾剤と第2の表面修飾剤の2種類の表面修飾剤を、その比率を規定して組み合わせ使用する理由は,次のとおりである。
まず、本発明の目的は、低吸水性の無機粒子を得るとともに、この無機粒子と低吸水性のマトリックス樹脂とを組み合わせることにより、低吸水性かつ透明な複合体を得ることである。
無機粒子を低吸水化するためには、無機粒子表面に疎水性を有する表面処理層を形成することが好適である。そこで、無機粒子の表面を、疎水基を有する第1の表面修飾剤で表面処理することで、無機粒子を低吸水化することができる。疎水基としては、炭素数3以上の飽和炭化水素を好適に用いることができる。
次に、マトリックス樹脂を低吸水化するためには、マトリックス樹脂中の極性基を減らし、飽和炭化水素系樹脂ないしは飽和炭化水素系に近い状態の樹脂とすることが好ましい。そこで、本発明に用いるマトリックス樹脂であるポリ(メタ)アクリレートにおいては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーをポリマー化してなるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを、好適に用いることができる。
ここで、疎水基を有する第1の表面修飾剤で表面処理された無機粒子の表面、すなわち無機粒子表面の疎水基と、マトリックス樹脂原料となる(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーとは、いずれも分極性が低く、特性が類似している。したがって、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に、第1の表面修飾剤で表面処理された無機粒子を、均一に、かつ無機粒子の凝集を起こすことなく分散させることができる。
一方、無機粒子表面の第1の表面修飾剤における疎水基は飽和炭化水素系であるため、反応基を有していない。また、マトリックス樹脂であるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートも、反応性をもつ部位を有していない。すなわち、無機粒子表面の第1の表面修飾剤とマトリックス樹脂との間には、反応性がほとんど無い。このため、マトリックス樹脂原料となる(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中には、第1の表面修飾剤で表面処理された無機粒子が均一に分散できるにもかかわらず、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合が進行すると、生成するポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートから第1の表面修飾剤で表面処理された無機粒子が追い出される形となり、相分離が発生してしまう。
この相分離を防ぐためには、無機粒子表面を(メタ)アクリレートモノマーとの重合性を有する第2の表面修飾剤で修飾しておくことが好ましい。このようにすれば、マトリックス樹脂原料である(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーが重合する際に、第2の表面修飾剤を含めて重合させることで、無機粒子とマトリックス樹脂が第2の表面修飾剤を介して化学的に結合するため、両者は一体に固定化され、相分離を起こすこと無く、一体化した複合体を得ることができる。
そこで、無機粒子を低吸水化し、マトリックス樹脂原料モノマー中に分散させるための、疎水基を有する第1の表面修飾剤と、マトリックス樹脂と無機粒子とを結合して相分離を防止するための、(メタ)アクリレートモノマーとの重合性を有する第2の表面修飾剤とを、共に用いて無機粒子を修飾させる。これにより、無機粒子表面に、疎水基と(メタ)アクリレートモノマーとの重合性とが共存されることとなり、無機粒子における低吸水化、マトリックス樹脂原料モノマー中への良好な分散性、マトリックス樹脂との相分離の防止、のいずれの効果も得ることができる。
ただし、第1の表面修飾剤と第2の表面修飾剤との比率には好適な範囲があり、この範囲から外れた場合には、良好な結果が得られない。すなわち、第2の表面処理剤が少なすぎる(第1の表面処理剤が多すぎる)場合には、(メタ)アクリレートモノマーが重合する過程で、生成するポリ(メタ)アクリレートと無機粒子との結合固定が不十分なために相分離が発生して無機粒子が凝集し易くなり、その結果、得られる無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体が白濁する虞がある。一方、第2の表面処理剤が多すぎる(第1の表面処理剤が少なすぎる)場合には、無機粒子に十分な低吸水性を付与することができず、また、この無機粒子を(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に分散した場合に良好な分散性が得られなくなり、その結果、得られる無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体の吸水性が高くなり、さらに複合体が白濁する虞もあるため好ましくない。
これらの理由から、第1の表面修飾剤と第2の表面修飾剤との比率を規定すると、第2の表面修飾剤の第1の表面修飾剤に対する質量比率として、5質量%以上かつ40質量%以下が好ましい範囲である。
この表面を修飾する方法としては、特に制限されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。
例えば、無機粒子に、表面修飾剤の加水分解、電離に必要な量の水が存在する反応場にて、攪拌等の機械的エネルギー、加熱等の熱的エネルギーのうちいずれか一方あるいは双方を加えることにより、この無機粒子の表面を修飾する方法が好適に用いられる。特に、アルコキシ基を有する表面修飾剤と、酸またはアルカリ等の触媒とを用いて無機粒子の表面を修飾する場合には、無機粒子の表面の水酸基と表面修飾剤のアルコキシ基が加水分解して生じるシラノール基とが脱水縮合することが一般に知られている。
この無機粒子を表面修飾する場合、この表面における第1の表面修飾剤と第2の表面修飾剤の反応順序は特に制限されず、例えば、第1の表面修飾剤と第2の表面修飾剤とを適当な割合で投入し、同時に無機粒子の表面と反応させてもよく、第1の表面修飾剤及び第2の表面修飾剤のいずれか一方にて無機粒子を表面修飾した後、第1の表面修飾剤及び第2の表面修飾剤のいずれか他方にてさらに表面修飾してもよい。
なお、無機粒子を分散液の状態で反応修飾させる場合、修飾状態によっては無機粒子と分散媒との分離ができなくなったり、逆に修飾が不十分な状態のうちに、無機粒子が凝集、沈降する可能性もあるため、分散媒の種類と反応順序との関係は十分に考慮する必要がある。
[無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体]
本実施形態の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体は、上述した無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーをポリマー化してなるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを、複合化した無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体である。
この(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、無機粒子との複合体を形成する際に母材であるマトリックス樹脂となるもので、得られた複合体の吸水性を低くするためには、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
このような(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また、2種以上組合わせて用いてもよい。
この(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、必要により活性水素を持つ官能基を有するモノマーを添加してもよい。
この活性水素を持つ官能基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルヒドロキシアルキルエステル;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等が挙げられる。
これらは、本実施形態の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体の効果が阻害されなければ、単独で添加してもよく、または2種以上組合わせて添加してもよい。また、これらの共重合体を添加してもよい。さらに、このモノマーの一部を重合したオリゴマー状態のものを添加してもよい。
この(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーをポリマー化する方法としては、この(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーに予め光開始重合剤を添加しておき、この光開始重合剤添加モノマーに所望の光エネルギーを照射し、このモノマーを重合する方法が好適である。また、このモノマーを十分に重合させるために、加熱エネルギーを加えてもよい。
この光重合開始剤としては、本実施形態の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体としての効果が阻害されなければよく、特に制限されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また、2種以上組合わせて用いてもよい。
さらに、本実施形態の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体では、この無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体としての効果が阻害されない範囲で、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の樹脂改質剤、染料等の着色剤等を含有してもよい。
本実施形態の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体は、上述した無機粒子を乾燥状態で(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーに攪拌等の機械的エネルギーにより分散させた後、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー同士を重合させてポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを形成させるとともに、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーと無機粒子表面に修飾された第2の表面修飾剤とをも重合させて、ポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートと無機粒子を固定化することにより、作製することができる。
また、後述するように、無機粒子を有機溶媒中に分散させた無機粒子分散液と(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーとを混合して分散体とし、この分散体に減圧乾燥処理を施して有機溶媒を除去した後に重合する方法、あるいは基材上に上記の分散体を塗布し、その後乾燥することにより有機溶媒を除去した後に重合する方法等によっても、作製することができる。
この無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体の吸水率は、ポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート単体の吸水率以下であることが好ましい。
その理由は、この無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体の吸水率がポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート単体の吸水率より高いと、ポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート単体が本来有する低吸水特性、寸法安定性が失われるからである。また、吸水率の増加分は無機粒子表面自体および無機粒子の表面修飾剤の水酸基や分極部位に起因するものであり、特に無機粒子表面自体の水酸基や表面修飾剤の分極部位への水分吸着は水素結合により強固に結びついており、環境変化による水分の脱離が難しく、吸水状態を持続させるとともに、吸着した水分がさらに水分を吸着させるために吸着水量が経時的に増大するという不都合が生じるからである。
[無機粒子分散液]
本実施形態の無機粒子分散液は、次の(1)または(2)のいずれかの分散液である。
(1)上述した無機粒子を有機溶媒中に分散した無機粒子有機溶媒分散液。
この有機溶媒としては、表面修飾された無機粒子が均一分散することができる溶媒であればよく、特に限定されないが、第1の表面修飾剤が疎水基を有しており、かつ極性が低いことを考慮すると、トルエン、キシレン、酢酸n−ブチル、シクロヘキサン等の低極性有機溶媒が好適である。
この有機溶媒の他の例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
この無機粒子有機溶媒分散液中の無機粒子の濃度は、無機粒子の分散性が十分に確保できれば、特に制限はないが、この無機粒子有機溶媒分散液を用いて(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に無機粒子を流動性のある状態で簡便かつ短時間に均一分散させること、また、分散後の有機溶媒の除去量及び除去時間を考慮すると、5質量%以上かつ85質量%以下が好ましく、10質量%以上かつ90質量%以下がより好ましい。
(2)上述した無機粒子を(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に分散した無機粒子(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー分散液。
この(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーについては、既に説明してあるので、説明を省略する。
この無機粒子(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー分散液中の無機粒子の濃度は、無機粒子の分散性と分散液の流動性が十分に確保できれば、特に制限はないが、この無機粒子を(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に均一分散させ、重合硬化後の複合体に無機粒子起因の光学特性や機械的特性などの機能を発現させることを考慮すると、5質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、10質量%以上かつ85質量%以下がより好ましい。
[光学部材]
本実施形態の光学部材は、本実施形態の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を備えた光学部材である。
この光学部材では、無機粒子とポリ(メタ)アクリレートとを複合化した無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体自体が低吸水性であり、また、無機粒子とポリ(メタ)アクリレートとの相分離や無機粒子の凝集等の不具合が生じる虞が無く、透明性が高く、しかも加工性に優れている。
この光学部材としては、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、複写機やプリンター等の光学レンズ、ブルーレイディスク、DVD、CD等の再生/録画装置のピックアップレンズ、CMOSやCCD等のオンチップマイクロレンズや光導波路、液晶ディスプレイ(LCD)のバックライト集光マイクロレンズ、一眼レフカメラ等の回折光学素子、ディスプレイ用の反射防止膜やハードコート膜等の光学膜等が好適である。
以下、実施例1〜5及び比較例1〜12により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
(酸化ジルコニウム微粒子の作製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、濃度が28%のアンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンの酸化ジルコニア換算値に対して30質量%であった。
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
得られた酸化ジルコニウム微粒子の一次粒子径を電界放射型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて測定したところ、4nmであった。
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
上記の酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエンを75g、第1の表面修飾剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)15g、及び第2の表面修飾剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)3.75gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にシクロヘキシルメタクリレート56.25gを加えて混合し、酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液に光重合開始剤としてイルガキュアー184(長瀬産業(株)製)をシクロヘキシルメタクリレートモノマーに対して0.4質量%加えて混合し、得られた混合物をテフロン(登録商標)製容器に入れ、この混合物に高圧水銀灯を用いて紫外線2000mJ/cmを照射し、酸化ジルコニウムポリシクロヘキシルメタクリレート透明複合体を得た。
「実施例2」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート56.25gを加えて混合し、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート透明複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリイソボルニルメタクリレート透明複合体を作製した。
「実施例3」
(酸化チタン微粒子の作製)
四塩化チタン16.14gと、塩化スズ(IV)5水和物7.46gとを、5℃の純水100gに投入し、撹拌して混合溶液を作製した。
次いで、この混合溶液を加温して温度を25℃に調整し、次いで、この混合溶液に濃度が10質量%の炭酸アンモニウム水溶液を加えてpHを1.5に調整し、その後、25℃にて24時間熟成し、過剰の塩化物イオンを取り除いた。次いで、エバポレータを用いて、この混合溶液から水分を除去し、その後乾燥させ、酸化チタン微粒子を作製した。
得られた酸化チタン微粒子の一次粒子径を電界放射型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて測定したところ、5nmであった。
(酸化チタンメタクリレートモノマー分散液の作製)
上記の酸化チタン微粒子を用いた他は、実施例1に準じて酸化チタントルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化チタントルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート56.25gを加えて混合し、酸化チタンイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化チタンポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化チタンイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化チタンポリイソボルニルメタクリレート透明複合体を作製した。
「実施例4」
(酸化ジルコニウムトルエン分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
次いで、この酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエン75g、第1の表面修飾剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)15g、及び第2の表面修飾剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.78gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート59.22gを加えて混合し、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート透明複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリイソボルニルメタクリレート透明複合体を作製した。
「実施例5」
(酸化ジルコニウムトルエン分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
次いで、この酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエン75g、第1の表面修飾剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)15g、及び第2の表面修飾剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)5.97gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート54.03gを加えて混合し、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート透明複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリイソボルニルメタクリレート透明複合体を作製した。
「比較例1」
(酸化ジルコニウムトルエン分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
次いで、この酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエン75g、第1の表面修飾剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)15gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にメチルメタクリレート60gを加えて混合したが、酸化ジルコニウム微粒子が沈降してしまい、酸化ジルコニウムメチルメタクリレートモノマー透明分散液が得られなかった。
「比較例2」
(酸化ジルコニウムトルエン分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
次いで、この酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエン75g、第2の表面修飾剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)15gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にメチルメタクリレート60gを加えて混合し、酸化ジルコニウムメチルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムメチルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリメチルメタクリレート透明複合体を作製した。
「比較例3」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にメチルメタクリレート56.25gを加えて混合したが、酸化ジルコニウム微粒子が沈降してしまい、酸化ジルコニウムメチルメタクリレートモノマー透明分散液を得ることができなかった。
「比較例4」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
比較例1に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にシクロヘキシルメタクリレート60gを加えて混合し、酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリシクロヘキシルメタクリレート複合体を作製したが、この複合体は白濁しており、透明な複合体を得ることができなかった。
「比較例5」
比較例1に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にシクロヘキシルメタクリレート60gを加えて混合し、酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリシクロヘキシルメタクリレート複合体を作製した。
「比較例6」
(酸化ジルコニウムトルエン分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
次いで、この酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエン75g、第1の表面修飾剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)15g、及び第2の表面修飾剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.625gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にシクロヘキシルメタクリレート59.375gを加えて混合し、酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリシクロヘキシルメタクリレート複合体を作製したが、この複合体は白濁しており、透明な複合体を得ることができなかった。
「比較例7」
(酸化ジルコニウムトルエン分散液の作製)
実施例1に準じて酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
次いで、この酸化ジルコニウム微粒子25gに、分散媒としてトルエン75g、第1の表面修飾剤としてデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)15g、及び第2の表面修飾剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)6.43gを加えて混合し、酸化ジルコニウム微粒子の表面を修飾した。その後分散処理を行い、表面修飾酸化ジルコニウムをトルエン中に分散させた酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にシクロヘキシルメタクリレート53.57gを加えて混合し、酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムシクロヘキシルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリシクロヘキシルメタクリレート複合体を作製した。
「比較例8」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
比較例1に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート60gを加えて混合し、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート透明複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリイソボルニルメタクリレート複合体を作製したが、この複合体は白濁しており、透明な複合体を得ることができなかった。
「比較例9」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
比較例2に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート60gを加えて混合したが、酸化ジルコニウム微粒子が沈降してしまい、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を得ることができなかった。
「比較例10」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
比較例6に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート59.375gを加えて混合し、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を作製した。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート透明複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリイソボルニルメタクリレート複合体を作製したが、この複合体は白濁しており、透明な複合体を得ることができなかった。
「比較例11」
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
比較例7に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート53.57gを加えて混合したが、酸化ジルコニウム微粒子が沈降してしまい、酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー透明分散液を得ることができなかった。
「比較例12」
(酸化ジルコニウム微粒子の作製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、濃度が28%のアンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンの酸化ジルコニア換算値に対して30質量%であった。
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、650℃にて1.5時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、酸化ジルコニウム微粒子を作製した。
得られた酸化ジルコニウム微粒子の一次粒子径を電界放射型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて測定したところ、25nmであった。
(酸化ジルコニウムメタクリレートモノマー分散液の作製)
上記の酸化ジルコニウム微粒子を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムトルエン透明分散液を作製した。
次いで、エバポレータを用いて、この酸化ジルコニウムトルエン透明分散液からトルエンを除去し、得られた乾燥物にイソボルニルメタクリレート56.25gを加えて混合したが、白濁した酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー分散液であった。
(酸化ジルコニウムポリメタクリレート複合体の作製)
上記の酸化ジルコニウムイソボルニルメタクリレートモノマー分散液を用いた他は、実施例1に準じて酸化ジルコニウムポリイソボルニルメタクリレート複合体を作製したが、この複合体は白濁しており、透明な複合体を得ることができなかった。
「無機粒子メタクリレートモノマー分散液の分散性評価」
分光光度計V−570(日本分光社製)を用い、実施例1〜3及び比較例1〜12各々の無機粒子メタクリレートモノマー分散液を光路長10mmの石英セルに投入し、波長550nmにおける透過率を積分球を用いて測定した。
ここでは、石英セルにそれぞれのメタクリレートモノマー単体を投入して測定した透過率を100%としたときの分散液の測定値が90%以上を「○」、90%未満を「×」とした。
「無機粒子ポリメタクリレート複合体の無機粒子の一次粒子径及び透明性の評価」
実施例1〜3及び比較例1〜12各々について、厚みが30μmの無機粒子ポリメタクリレート複合体を作製した。
各無機粒子ポリメタクリレート複合体について、この複合体中の無機粒子の粒子径を電界放射型透過電子顕微鏡JEM−2100F(日本電子社製)を用いて観察し、無作為に100個選び出した粒子の粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。ここでは、平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下の複合体を「○」(合格)とした。
次いで、この合格した複合体各々について、分光光度計V−570(日本分光社製)を用い、波長550nmにおける透過率を積分球を用いて測定した。
ここでは、実施例1〜3及び比較例1〜12各々に対応する厚みが30μmのポリメタクリレート単体の透過率を100%としたときの複合体の測定値が90%以上を「○」、90%未満を「×」とした。
「無機粒子ポリメタクリレート複合体の吸水性の評価」
ASTM(American Society for Testing and Materials)規格D570に準じて実施例1〜3及び比較例1〜12各々の無機粒子ポリメタクリレート複合体及びそれに対応したポリメタクリレート単体の吸水性を評価した。
ここでは、各々の無機粒子ポリメタクリレート複合体及びそれに対応したポリメタクリレート単体を23℃の純水に1週間浸漬し、浸漬前後の質量変化から各々の無機粒子ポリメタクリレート複合体及びそれに対応したポリメタクリレート単体の飽和吸水率を算出し、無機粒子ポリメタクリレート複合体の吸水率がそれに対応するポリマー単体の吸水率以下のものを「○」、ポリマー単体の吸水率より高いものを「×」とした。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2011201740
実施例1〜5の無機微粒子は、用いた(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させることができた。また、ポリ(メタ)アクリレートとの複合体においても、無機粒子がポリ(メタ)アクリレートに対して相分離や凝集を生じさせることなく、ポリ(メタ)アクリレート中に均一に分散しており、低吸水性かつ透明性に優れた複合体を得ることができた。
一方、比較例1、4、8では、第2の表面処理剤を用いていないので、(メタ)アクリレートモノマー中に分散させることができた場合であっても、透明性に優れた複合体を得ることができなかった。
また、比較例2、5、9では、第1の表面処理剤を用いていないので、(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させることができないか、または、できた場合であっても、低吸水性に優れた複合体を得ることができなかった。
また、比較例3では、用いた(メタ)アクリレートモノマーにおける(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分のアルキル基の炭素数が3未満であったので、(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させることができなかった。
また、比較例6、10では、第2の表面修飾剤が少なすぎるために、複合体形成時に相分離が発生し、透明性に優れた複合体を得ることができなかった。
また、比較例7,11では、第1の表面修飾剤が少なすぎるために、(メタ)アクリレートモノマー中に均一に分散させることができないか、できた場合であっても、低吸水性に優れた複合体を得ることができなかった。
また、比較例12では、無機微粒子の(メタ)アクリレートモノマー中への分散、およびポリ(メタ)アクリレート中への分散とも行うことができたが、無機微粒子の粒径が大きいために光散乱が発生し、透明性が不十分なものとなり、実用に供することができないものであった。

Claims (7)

  1. 無機化合物からなる粒子の表面が、疎水基を有する第1の表面修飾剤、及び、(メタ)アクリレートと重合性を有する官能基を有し、かつ前記第1の表面修飾剤に対する質量比率が5質量%以上かつ40質量%以下の第2の表面修飾剤、の双方により修飾され、
    一次粒子径が1nm以上かつ20nm以下であることを特徴とする無機粒子。
  2. 前記無機化合物は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の無機粒子。
  3. 請求項1または2記載の無機粒子と、
    (メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマーをポリマー化してなるポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとを、
    複合化してなることを特徴とする無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体。
  4. 吸水率は、前記ポリ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート単体の吸水率以下であることを特徴とする請求項3記載の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体。
  5. 請求項1または2記載の無機粒子を有機溶媒中に分散してなることを特徴とする無機粒子分散液。
  6. 請求項1または2記載の無機粒子を、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分の(シクロ)アルキル基の炭素数が3以上の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートモノマー中に分散してなることを特徴とする無機粒子分散液。
  7. 請求項3または4記載の無機粒子ポリ(メタ)アクリレート複合体を備えていることを特徴とする光学部材。
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