以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1乃至図4は、本発明の一実施形態にかかる串供給装置を示す図で、図1は、正面図、図2は、外観構成を示す右側面図、図3は、内部構造を示す左側面図、図4は、平面図である。なお、図4では、後述するベース板2や上部モータ5及び下部モータ6などは、図示を省略している。本実施形態にかかる串供給装置1は、焼鳥や串焼などの串刺食品の製造に用いるための串刺装置(図示せず)における串刺用のアクチュエータで肉や野菜などの食品に差し込む串を押し出す前の所定位置へ一本ずつ串を供給するための装置である。この串供給装置1は、串刺装置における串刺食品に差し込む串を押し出す前の所定位置(串セット位置)の近傍に設置して使用される。なお、以下の説明では、手前側又は前側というときは、串供給装置1における図1に示す正面の側を指し、奥側又は後側というときは、その反対側を指すものとする。また、幅方向というときは、串供給装置1の正面から見た両側方向(搬送される串の長手方向でもある。)を指し、左右というときは、同じく串供給装置1の正面から見た左右を指すものとする。
図17は、本実施形態の串供給装置1で供給可能な串の種類を説明するための図で、同図(a),(b)は、丸串201を示す図、(c),(d)は、角串202を示す図、(e),(f)は、平串203を示す図、(g)は、鉄砲串204を示す図である。なお、同図(a),(c),(e),(g)は、各串の側面図であり、(b),(d),(f)は、各串の断面図である。また、断面図は、側面図よりも若干拡大して図示している。本実施形態の串供給装置1では、丸串201、角串202、平串203、鉄砲串204を供給することが可能である。丸串201は、同図(a),(b)に示すように、断面が丸形状の串であり、角串202は、同図(c),(d)に示すように、断面が正方形の串であり、平串203は、同図(e),(f)に示すように、断面が平たい偏平形状(長方形状)の串であり、鉄砲串204は、同図(g)に示すように、根元部分に把持用の突出片204aが形成された串である。
本実施形態の串供給装置1は、上記の丸串201、角串202、平串203、鉄砲串204など各種形状の串を供給可能であるが、それらの中でも特に鉄砲串204の供給に適している。また、搬送する串の長さ寸法としては、通常の焼鳥や串焼用の串と比較して短い寸法の短串を供給するのに適している。ここでいう短串とは、一例として、長さ寸法が105mm〜70mm程度の串である。したがって、以下の説明で短串というときは、上記の長さ寸法の串を含むものとする。
図1乃至図4に示すように、串供給装置1は、ベース板2の上に所定間隔で平行に立設された一対の側板3,3を備え、全体が箱型の外形を有している。一対の側板3,3は、複数の連結軸4で連結されている。そして、一対の側板3,3の内側には、奥側の上部に設けた串を投入するためのホッパー20を有する串投入部110と、串投入部110から串供給装置1の手前側の下端に設けた串排出部130まで延びる搬送路40を有する串搬送部120と、搬送路40の下流端の排出口40aに設けた分離排出機構60とが設置されている。この串供給装置1は、ホッパー20に収容された多数の串を搬送路40で順次に排出口40aへ搬送し、当該串を分離排出機構60で一本ずつ分離して排出口40aから排出し、外部へ供給するように構成されている。以下、串供給装置1の各部の構成及び動作を詳細に説明する。
串投入部110は、上部に開口する投入口21から投入された多数の串を収容するホッパー20と、ホッパー20内に収容された多数の串を掻き揚げて攪拌すると共にホッパー20の下端部20aを開閉する攪拌開閉機構(攪拌開閉手段)30とを備えて構成されている。攪拌開閉機構30は、ホッパー20内で支軸31を中心に揺動可能に設置された掻き揚げ板32を備えている。
ホッパー20は、一対の側板3,3の間で前面側の掻き揚げ板32と後面側の背板22との間に形成された有底容器状の部分である。このホッパー20は、投入口21から投入された多数の串をその長手方向が幅方向に延びるように横置き(横積み)状態で収容するようになっている。背板22は、ホッパー20内の後側に立設されており、下端側が若干手前に向かって傾斜する傾斜部22bになっている。なお、この傾斜部22bの搬送方向の長さ寸法(高さ寸法)は、搬送する串のうち最短寸法の串の長さ寸法よりも短い寸法に設定するとよい。これにより、ホッパー20内で掻き揚げ板32によって掻き揚げられた串の長手方向が掻き揚げ板32の下端辺32dと傾斜部22bとの隙間で傾斜部22bの面に沿って縦向き(搬送方向の向き)になることを防止できる。また、ホッパー20の下端部20aから串供給装置1の手前側の下端に向かって斜めに傾斜する平板状のスライド板41が設置されている。スライド板41の上面は、ホッパー20内の串を排出口40aに向けて滑落させるためのスライド面41aになっている。
一方、ホッパー20内に設置した掻き揚げ板32は、上端辺32cから下端辺32dに向かって前側から後側へ若干傾斜した状態で立設されている。掻き揚げ板32は、その上端辺32c側が支軸31に揺動(回動)自在に支持されており、該支軸31を支点として下端辺32dが上下方向(前後方向)に揺動するようになっている。支軸31は、一対の側板3,3の間に架け渡されて、串供給装置1の幅方向に延びている。一方、掻き揚げ板32の裏面(ホッパー20とは反対の正面側の面)32aにおける幅方向の中央には、ローラー33が設置されている。ローラー33は、図1に示すように、掻き揚げ板32の裏面32aに断面略コ字型のブラケット33aで回転自在に取り付けられている。
掻き揚げ板32の裏面32a側には、側板3,3の間に架け渡された回転軸(第1回転軸)35が設置されており、第1回転軸35には、カム(以下、「掻き揚げ用カム」という。)36が固定されている。掻き揚げ用カム36は、図1に示すように、第1回転軸35に固定した円筒状のカム座35aの端面に固定されている。また、図3に示すように、掻き揚げ用カム36の外周面36aはローラー33に当接している。掻き揚げ用カム36は、その外周面36aにおける回転方向の一箇所に段部36bを有しており、段部36bの周りを一周する間に回転方向に沿って次第に拡径する形状になっている。
また、図1に示すように、一方の側板3の外側には、第1回転軸35を回転駆動するための上部モータ(第1モータ)5が設置されている。上部モータ5は、側板3にモータブラケット5aを介して固定されている。上部モータ5の駆動軸5bは、モータブラケット5a及び側板3を貫通して第1回転軸35に連結されている。上部モータ5の駆動は、後述する制御部(図示せず)によって制御されるようになっている。
また、図3に示すように、掻き揚げ板32の裏面32a側には、掻き揚げ板32の下方への揺動を規制するためのストッパー37が設置されている。ストッパー37は、ウレタンゴムなどのクッション性を有する円筒状の部材であり、側板3,3間に架け渡したストッパー軸37aの外周に設置されている。また、掻き揚げ板32の裏面32a側から突出する細片状の固定片38aと、串供給装置1内に設置したガイド板ブラケット52に固定したピン38bとの間には、スプリング(付勢手段)38が架け渡されている。また、該掻き揚げ板32の下端辺32d側の裏面32aには、掻き揚げ板32の揺動方向に沿って延びる細片状の差込片32eが固定されている。差込片32eは、後述するガイド板51に設けた切込部51dに差し込まれるもので、その面が垂直方向を向いて搬送方向に沿って延びている。
掻き揚げ板32は、スプリング38の付勢力(引張力)によって、裏面32aがストッパー37に当接するホッパー20内の下限位置P1へ付勢されている。したがって、掻き揚げ板32は、掻き揚げ用カム36でローラー33が押し上げられていない状態では、スプリング38の付勢力でストッパー37に当接した下限位置P1で停止している。この下限位置P1では、掻き揚げ板32の下端辺32dがホッパー20の底面(スライド面41a)に対して僅かな離間寸法(串の断面が容易に通らない程度の離間寸法)で対向している。したがって、掻き揚げ板32によって、搬送路40の入口であるホッパー20の下端部20aが閉じられた状態になっている。
そして、第1回転軸35の回転に伴い、掻き揚げ用カム36の外周面36aがローラー33上を転動し、ローラー33が掻き揚げ用カム36の段部36bを乗り越えるようになっている。この際、掻き揚げ用カム36の外周面36aがローラー33上を転動する間、掻き揚げ板32が下限位置P1から図3の一点鎖線で示す上限位置P2まで揺動し、その後、ローラー33が段部36bを乗り越えることで、掻き揚げ板32が上限位置P2から下限位置P1に落下する。こうして、第1回転軸35及び掻き揚げ用カム36が一回転するごとに、掻き揚げ板32が下限位置P1から一回上下に揺動して下限位置P1に戻る動作が行われ、掻き揚げ板32によって閉じられていたホッパー20の下端部20aが一回だけ開かれるようになっている。
図5は、掻き揚げ板32の構成部品を示す図で、(a)は、掻き揚げ板32が備える下板27を示す平面図、(b)は、掻き揚げ板32が備える上板28を示す平面図、(c)は、掻き揚げ板32の上面側に取り付ける傾斜板29を示す平面図、(d)は、傾斜板29の側断面図である。また、図6は、掻き揚げ板32を示す側断面図であり、(a)は、搬送方向の側方から見た側断面図((b)のN−N矢視断面図)、(b)は、搬送方向から見た側断面図((a)のM−M矢視断面図)である。これらの図に示すように、掻き揚げ板32は、上下に重ね合わされた下板27と上板28とを備えている。上板28の先端側には、断面が略くの字型に屈曲する屈曲部28aが設けられている。また、上板28の上面側には、傾斜板29が設置されている。傾斜板29の上面は、串の搬送方向に対する幅方向の一端側から他端側に向かって傾斜する傾斜状の平面からなる傾斜面29aになっている。傾斜板29は、搬送方向の上流側の端辺に一体形成した固定片29bを備えており、ボルト29cの締結によって、該固定片29bを下板27の端辺に固定することで、掻き揚げ板32の上面側に取り付けるようになっている。
図7は、傾斜板29を取り付けた掻き揚げ板32を示す図で、図3のJ−J矢視に対応する断面図である。同図(a)は、長さ寸法が比較的長い鉄砲串204を搬送する状態を示しており、同図(b)は、長さ寸法が比較的短い鉄砲串204を搬送する状態を示している。本実施形態の串搬送装置1では、同図に示すように、掻き揚げ板32の上面側に取り付ける傾斜板29を備えたことで、鉄砲串204の突出片204aが傾斜板29によって形成された傾斜面29aの低い側に配置される。これにより、多数本の鉄砲串204をホッパー20内に積み重ねて導入した場合でも、当該鉄砲串204が突出片204aによって先端側を中心に扇型に傾斜した状態で積み重ならずに済む。したがって、各鉄砲串204をそれらの長手方向の傾斜が比較的少ない状態(比較的水平に近い状態)でホッパー20内に積み重ねることが可能となる。このことによって、ホッパー20内の鉄砲串204が掻き揚げ板32の揺動でホッパー20の下端部20aから搬送路40に導入される際、当該鉄砲串204の先端が搬送路40の下流側(下側)を向くような縦向きになることを効果的に防止できる。特に、長さ寸法が短い鉄砲串204の場合には、掻き揚げ板32に傾斜板29を取り付けていないと、串の長手方向が搬送方向を向くことが頻繁に起こってしまい串の搬送がままならないおそれがあるが、上記の傾斜板29を取り付けることで、長さ寸法が短い短串の鉄砲串204に対する搬送の安定性を飛躍的に向上させることが可能である。したがって、短串の鉄砲串204の向きを横向きに保った状態で安定的に搬送することが可能となる。
また、本実施形態の串供給装置1では、傾斜板29として、あらかじめ傾斜面29aの傾斜角度や傾斜方向の長さ寸法、配置などが異なる複数種類が用意されている。そして、ボルト29cを取り外すことによって、掻き揚げ板32に取り付けていた傾斜板29をそれら複数種類から選択した一の傾斜板29に付け替えることが簡単に行えるようになっている。すなわち、比較的長い寸法の串を搬送する場合には、図7(a)に示すように、掻き揚げ板32には、傾斜角度が小さく、かつ、傾斜方向における傾斜面29aの長さが長いタイプの傾斜板29を取り付けるようにする。一方で、長さ寸法が短い短串を搬送する場合には、図7(b)に示すように、掻き揚げ板32には、傾斜角度が大きく、かつ、傾斜面29aの長さが短いタイプの傾斜板29を取り付けるようにする。また、搬送する串の長さ寸法に応じて後述する幅板7の設置位置も適宜に変更する。これにより、搬送する鉄砲串204が比較的長い串と短い串のどちらであっても、常に、ホッパー20内に積み重なる鉄砲串204の長さ方向の傾斜角度を比較的水平に近い角度にできる。したがって、掻き揚げ板32の揺動でホッパー20内の鉄砲串204がホッパー20の下端部20aから搬送路40に導入される際、当該鉄砲串204の先端が搬送路40の下流側(下側)を向くような縦向きになることを効果的に防止できる。なお、図7に示す傾斜板29の形状は一例であり、傾斜板29の傾斜面29aの角度や大きさは、図示する以外のものであってもよい。
図8は、搬送路40を示す図で、図3のC−C矢視断面における概略構成を示す図である。搬送路40の下面(底面)を構成するスライド面41aの上方には、下面側に平面状のガイド面51aを有するガイド板51が設置されている。搬送路40は、互いに平行であるスライド面41aとガイド面51aとの間に形成された隙間に設けられている。ガイド板51は、一対の側板3,3間に架け渡した平板状のガイド板ブラケット52の下面側に固定されている。
搬送路40の高さ寸法(スライド板41とガイド板51の離間寸法)Hは、搬送路40を串が一本ずつのみ通過可能な寸法に設定されている。これにより、搬送路40を搬送される串が一本ずつ順番に搬送されるようになっている。なお、搬送路40の高さ寸法Hは、ガイド板ブラケット52の高さ位置を調節するための高さ調節機構80(図1、図2参照)によって微調整することが可能であってよい。高さ調節機構80の詳細な構造については、図示及び説明を省略するが、高さ調節機構80は、ガイド板51の高さを二段階以上の多段階に設定できる機構であることが望ましい。
図9は、スライド板41を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、(a)のD−D矢視断面を示す図である。スライド板41は金属製の薄板状の部材からなり、その上面は串を滑落させて搬送するためのスライド面41aになっている。また、スライド面41aにおける幅方向の一部には、後述する幅板7,7(図3、図7等参照)を差し込むためのスリット11bが形成されている。スリット11bは、幅方向の一端の近傍で搬送方向に沿って延びる直線状の細溝からなり、複数本が所定間隔で幅方向に並べて形成されている。このスライド面41aに形成したスリット11bは、後述する背板22の上端部22aに形成したスリット11aと、掻き揚げ板32に形成したスリット11cと、ストッパー軸37aに形成した円周溝14とに対応して設けられており、それらと幅方向の同じ位置に一直線状に設けられている。
また、図8及び図9に示すように、スライド面41aの幅方向の端部(右側の端部)には、鉄砲串204の突出片204aを収容するための所定深さの窪み42が形成されている。窪み42は、スライド面41aの他の部分よりも一段低くなった部分であって、搬送方向に沿って直線状に延びている。これにより、スライド面41aを滑落しながら搬送される串が鉄砲串204である場合、図8に示すように、該鉄砲串204の突出片204aが窪み42内に配置されるようになっている。
図10は、ガイド板51を示す図で、(a)は、平面図、(b)は、側面図、(c)は、(a)のE−E矢視断面を示す図である。ガイド板51は、断面が下向きに凸の略コ字型に形成された支持部51bを有しており、該支持部51bを介してガイド板ブラケット52の下面側に固定されている(図8参照)。ガイド板51は、支持部51bの下端において搬送方向に延びる細板状の部分を有しており、当該部分の下面がガイド面51aになっている。また、ガイド板51の後端部(搬送方向の後端部)51cは、上方に向かって若干屈曲しており、その部分には、搬送方向に延びる直線状の切り込みからなる切込部51dが形成されている。切込部51dは、図3に示すように、掻き揚げ板32が下限位置P1にある際、該掻き揚げ板32に固定された差込片32eを差し込ませるための部分である。このように、ガイド板51の切込部51dに差込片32eが差し込まれることで、串がホッパー20の下端部20aから搬送路40に導入される際、当該串がガイド板51の後端部51cからその上面側に乗り上げることを防止できる。なお、図8に示すように、ガイド板51及びガイド面51aは、搬送路40の幅方向における中央付近の一部のみに設置されており、スライド面41aにおける窪み42以外の部分に対向している。
また、図3に示すように、搬送路40における串の有無を検出するための検出手段として、第1センサ(第1串検出手段)55と第2センサ(第2串検出手段)56が設置されている。第1センサ55は、搬送路40のX位置(第1の位置)において串の有無を検出するように設置されており、第2センサ56は、搬送路40におけるX位置よりも下流側のY位置(第2の位置)において串の有無を検出するように設置されている。第1センサ55及び第2センサ56はいずれも、一体に構成された投光部及び受光部からなる検出部55a,56aを備えた光反射型のセンサである。
図8に示すように、第1センサ55及び第2センサ56は、断面が略コ字型の支持具57で側板3の内面に固定されており、ガイド板ブラケット52の上方に配置されている。そして、図3に示すように、第1センサ55の検出部55aは、ガイド板ブラケット52に設けた貫通穴52aを介して搬送路40のX位置に対向して(面して)おり、第2センサ56の検出部56aは、ガイド板ブラケット52に設けた貫通穴52bを介して搬送路40のY位置に対向して(面して)いる。これにより、第1センサ55で搬送路40のX位置における串の有無を検出可能であり、第2センサ56で搬送路40のY位置における串の有無を検出可能である。
図3に示すように、搬送路40を搬送された串を排出する串排出部130は、串供給装置1の手前側の下端に設けられており、排出口40aから出た串を串供給位置1の手前側下方に落下させるようになっている。なお、ベース板2における排出口40aから出た串が落下する箇所には、略矩形状の切込部2aが設けられている。そして、串排出部130には、搬送路40を搬送されてきた串を一本ずつ分離して排出するための分離排出機構60が設けられている。分離排出機構60は、搬送路40に並ぶ多数の串Lから最先の一本の串Lのみを分離するための分離部材61と、排出口40aを開閉するための開閉部材71とを備えている。
図11及び図12は、分離排出機構60を示す図で、図11(a)は、図3のF矢視を示す図、図11(b)は、図11(a)のG−G矢視を示す図である。また、図12は、搬送路40の側方から見た分離排出機構60を示す概略図で、(a)は、分離部材61と開閉部材71を示す図、(b)は、分離部材61及びその周辺構造を示す図、(c)は、開閉部材71及びその周辺構造を示す図である。
分離排出機構60は、搬送路40の下流端近傍の上方に設置した回転軸(以下、「第2回転軸」という。)62を備えている。第2回転軸62の中央部には、カム(以下、「分離用カム」という。)63が固定されており、第2回転軸62と搬送路40との間に設置した保持板(保持部材)65には、分離用カム63が当接する分離部材61が取り付けられている。また、第2回転軸62上の分離用カム63の両側にはそれぞれ、他のカム(以下、「開閉用カム」という。)73が固定されており、保持板65上の分離部材61の両側にはそれぞれ、開閉用カム73が当接する開閉部材71が取り付けられている。分離用カム63及び開閉用カム73はいずれも薄板状の部材であって、第2回転軸62に対する固定は、円柱状のカム座69,79を介して行われている。すなわち、分離用カム63及び開閉用カム73は、カム座69,79の軸方向の一端面に固定されている。
また、図12(b)に示すように、分離用カム63は、その回転方向における外周面の一部が他の部分よりも外径側に突出した突出部63aになっている。そして、分離用カム63の外周面に当接する分離部材61のローラー61bは、分離用カム63の回転に伴い、その外周面に沿って突出部63aとそれ以外の部分とを交互に転動するようになっている。そして、ローラー61bが突出部63a以外の部分から突出部63aに乗り上げる際には傾斜面を経る一方、ローラー61bが突出部63aから突出部63a以外の部分に落下する際には、急な段差を経るようになっている。また、図12(c)に示すように、開閉用カム73も、その回転方向における外周面の一部が他の部分よりも外径側に突出した突出部73aになっている。そして、開閉用カム73の外周面に当接する開閉部材71のローラー71bは、開閉用カム73の回転に伴い、その外周面に沿って突出部73aとそれ以外の部分とを交互に転動するようになっている。そして、ローラー71bが突出部73a以外の部分から突出部73aに乗り上げる際には傾斜面を経る一方、ローラー71bが突出部73aから突出部73a以外の部分に落下する際には、急な段差を経るようになっている。
図13は、保持板65を示す図で、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、側面図である。同図及び先の図11に示すように、保持板65は略平板状の部材であって、搬送路40の上方で側板3,3の間に架け渡された細板状の本体部65aを有している。保持板65は、本体部65aの前面を搬送路40の手前側(下流側)に向けた状態で設置されている。本体部65aの幅方向の中央には、該本体部65aの上端辺から手前側に向かって直角に突出する上片65bと、本体部65aの下端辺から手前側に向かって直角に突出する下片65cとが設けられている。上片65bと下片65cは、本体部65aの上下端辺から手前側に向かって互いに平行に突出している。また、本体部65aの幅方向の両端には、本体部65aを側板3,3に固定するための固定片65d,65dが設けられている。固定片65d,65dは、本体部65aの両端から本体部65aに対して手前側で直交する方向に突出している細片状の部分である。
図12(b)に示すように、分離部材61は、保持板65の上片65bと下片65cとの間に設置したガイド軸68によって、搬送路40の上方で該搬送路40に対して上下方向に直線状にスライド移動可能な状態でガイドされている。また、分離部材61の上端部には、分離用カム63の外周に当接するローラー61bが設置されており、分離部材61の下端部には、搬送路40に上方から侵入する棒状の押えピン(押え部材)61aが設置されている。押えピン61aは、搬送路40を搬送されてきた多数の串L(図3参照)における最下端(最先端)より一本手前側の串Lを押えて保持するためのものである。各々の押えピン61aは、先端(下端)が尖状に形成されている。
図11(a)に示すように、押えピン61aは、分離部材61の下面側で搬送路40の幅方向において2本が並べて設置されている。また、分離部材61は、保持板65の下片65cとの間に介在させたスプリング66の付勢力で搬送路40から上方に離間するように付勢されている。したがって、分離部材61及び押えピン61aは、回転する分離用カム63からローラー61bに対して押圧力が作用することで、スプリング66の付勢力に抗して搬送路40に向かって下降するようになっている。なお、押えピン61aは、分離部材61に対して若干上下動が可能な状態で取り付けられており、押えピン61aの下端近傍と分離部材61の下面との間に介在させたスプリング64によって、押えピン61aの先端が搬送路40内の串Lに当接する際に緩衝作用を有するようになっている。
また、図12(c)に示すように、開閉部材71は、保持板65の上片65bと下片65cとの間に設置したガイド軸78によって、搬送路40の上方で該搬送路40に対して上下方向に直線状にスライド移動可能な状態でガイドされている。開閉部材71の上端部には、開閉用カム73の外周に当接するローラー71bが設置されており、開閉部材71の下端部には、搬送路40に上方から侵入することで搬送路40を開閉するための開閉棒(開閉体)71aが設置されている。図11(a)に示すように、開閉部材71は、両側の分離部材61それぞれに1個ずつ設置されており、各々の開閉部材71が備える開閉棒71aの間には、連結板72が架け渡されている。連結板72は、両側の開閉棒71aの下端同士を連結する細板状の小片からなり、長手方向が搬送路40の幅方向に延びており、その面が搬送路40のスライド面41aと平行に設置されている。
また、図11(a)に示すように、両側の開閉部材71には、搬送路40の幅方向の外側に突出する突出片71cが固定されており、該突出片71cと保持板65の下片65cとの間に介在させたスプリング76の付勢力で、開閉部材71及び開閉棒71aが搬送路40に対して上方に付勢されている。したがって、連結板72で連結された左右の開閉棒71aは、回転する開閉用カム73から開閉部材71のローラー71bに対して押圧力が作用すると、スプリング76の付勢力に抗して搬送路40に向かって一体に下降するようになっている。なお、開閉棒71aは、開閉部材71に対して若干上下動が可能な状態で取り付けられており、開閉棒71aの下端近傍と開閉部材71の下面との間に介在させたスプリング74によって、開閉棒71aの下端に取り付けた連結板72が搬送路40の下面(スライド面41a)に当接する際に緩衝作用を有するようになっている。
本実施形態では、分離部材61及び開閉部材71は、搬送路40の上方で第2回転軸62との間に設置した保持板65に取り付けられてユニット化されたユニット部品70を構成している。ユニット部品70は、保持板65に取り付けられた分離部材61と、分離部材61に取り付けられた押えピン61aと、分離部材61を付勢するスプリング66と、保持板65に取り付けられた開閉部材71と、開閉部材71に取り付けられた開閉棒71a及び連結板72と、開閉部材71を付勢するスプリング76と含んで構成されている。また、このユニット部品70として、押えピン61aと開閉棒71a及び連結板72との搬送方向の離間寸法Q(図12(a)参照)を互いに異ならせてなる複数種類のユニット部品が用意されている。そして、図11(b)に示すように、串供給装置1に対するユニット部品70の固定は、保持板65の固定片65d,65dをボルト65e,65eの締結で側板3,3に固定することで行われている。したがって、ユニット部品70の付け替えは、ボルト65e,65eの締結を取り外すことだけで行えるようになっている。
また、図1に示すように、一方の側板3の外側には、第2回転軸62を回転駆動するための下部モータ(第2モータ)6が設置されている。下部モータ6は、側板3にモータブラケット6aを介して固定されている。下部モータ6の駆動軸6bは、モータブラケット6a及び側板3を貫通して第2回転軸62に連結されている。下部モータ6の駆動は、図示しない制御部で制御されるようになっている。下部モータ6の駆動による第2回転軸62の回転で、第2回転軸62に固定された分離用カム63と開閉用カム73が一体に回転する。
また、第2回転軸62には、該第2回転軸62の回転を検出するための回転検出センサ(回転検出手段)67が設けられている。回転検出センサ67は、第2回転軸62に固定した円形平板状のセンサ板67aと、該センサ板67aに設けた切り込み(図示せず)の有無を検出する検出部67bとを備えており、検出部67bでセンサ板67aの切り込みを検出することで、第2回転軸62が一回転したことを検出するように構成されている。
図11(a)及び図12(b)に示すように、分離部材61は、通常、スプリング66の付勢力で、押えピン61aが搬送路40の上方に退避した位置(以下、この位置を「退避位置」という。)に配置されている。そして、第2回転軸62の回転に伴い分離用カム63の突出部63aが分離部材61のローラー61bに当接してこれを押圧することで、スプリング66の付勢力に抗して分離部材61の押えピン61aが上記の退避位置から搬送路40内に下降した位置(以下、この位置を「分離位置」という。)へ移動するようになっている。
また、図11(a)及び図12(c)に示すように、開閉用カム73の突出部73aが開閉部材71のローラー71bに当接してこれを押圧している状態では、開閉部材71がスプリング76の付勢力に抗して搬送路40側に下降した位置(以下、この位置を「閉位置」という。)にある。この閉位置では、開閉部材71に設けた開閉棒71a及び連結板72が搬送路40内に進入していることで、搬送路40の排出口40aが閉じられた状態になっている。その一方で、開閉用カム73の突出部73a以外の部分が開閉部材71のローラー71bに当接している状態では、開閉部材71がスプリング76の付勢力で搬送路40から上昇した位置(以下、この位置を「開位置」という。)にある。この開位置では、開閉部材71に設けた開閉棒71a及び連結板72が搬送路40の排出口40aから上方に退避していることで、搬送路40の排出口40aが開かれた状態になっている。
次に、上記構成の分離排出機構60の動作を詳細に説明する。図14は、分離排出機構60の動作を説明するための図で、同図の(a)と(b)、(c)と(d)、(e)と(f)はそれぞれ、第2回転軸62が同一の角度位置にある状態(同一のタイミング)での分離部材61と開閉部材71を示す図である。なお、同図(a),(c),(e)では、開閉棒71aを点線で併記しており、同図(b),(d),(f)では、押えピン61aを点線で併記している。まず、第2回転軸62が所定の角度位置にある状態では、同図(a),(b)に示すように、分離部材61のローラー61bが分離用カム63の突出部63a以外の部分に当接し、かつ、開閉部材71のローラー71bが開閉用カム73の突出部73aに当接する。この状態で、分離部材61が退避位置にあり、かつ、開閉部材71が閉位置にあるので、分離部材61の押えピン61aが搬送路40から上方に退避しており、搬送路40の排出口40aが開閉棒71a及び連結板72で閉じられている。したがって、搬送路40を滑落した多数の串Lが開閉棒71a及び連結板72に当接してその上に積み上がり、搬送路40に沿って整列する。
この状態から、下部モータ6の駆動により第2回転軸62が所定角度だけ回転したとき、同図(c),(d)に示すように、開閉部材71のローラー71bが開閉用カム73の突出部73aに当接した状態のまま、分離部材61のローラー61bが分離用カム63の突出部63aに乗り上げる。そうすると、分離部材61がスプリング66の付勢力に抗して分離位置へ下降することで、押えピン61aが搬送路40に進入する。これにより、押えピン61aの先端が搬送路40に並ぶ最先端から2番目の串Lに突き刺さり、当該串Lが押えられる。一方、この状態では、開閉部材71はまだ閉位置にある。
この状態から、第2回転軸62がさらに所定角度だけ回転したとき、同図(e),(f)に示すように、分離部材61のローラー61bが分離用カム63の突出部63aに乗り上げた状態のまま、開閉部材71のローラー71bが開閉用カム73の突出部73a以外の部分に当接した状態となる。これにより、押えピン61aが搬送路40内で2番目の串Lに突き刺さってこれを押え付けたまま、開閉部材71がスプリング76の付勢力で閉位置から開位置へ移動する。これにより、開閉棒71a及び連結板72が搬送路40から上方へ退避するので、搬送路40の排出口40aが開かれる。したがって、搬送路40の最下端に位置する一本の串Lが排出口40aから落下して所定の供給位置へ供給される。
その後、第2回転軸62がさらに所定角度だけ回転したとき、再び、同図(a),(b)に示すように、分離部材61のローラー61bが分離用カム63の突出部63a以外の部分に当接し、かつ、開閉部材71のローラー71bが開閉用カム73の突出部73aに当接する。これにより、搬送路40を滑落した多数の串Lが再び開閉棒71a及び連結板72に当接してその上に積み上がり、搬送路40に沿って整列する。ここまでの動作が終了した時点で第2回転軸62が一回転する。以降、第2回転軸62の回転に伴い、上記一連の動作が繰り返して行われる。
このように、分離排出機構60では、下部モータ6の駆動で第2回転軸62が一回転する間に、分離部材61が搬送路40を搬送された多数の串Lから最下端に位置する1本目の串Lを分離し、その状態で、開閉部材71が開位置へ揺動して排出口40aが開かれることで、該一本の串Lのみが排出口40aから排出されるようになっている。
また、上記の分離排出機構60では、分離部材61で1本目の串Lを分離する際、押えピン61aが2番目の串Lを押え付けて保持する動作が行われる。その際、押えピン61aを先尖状に形成していることで、2番目の串Lに押えピン61aの先端が突き刺さるようになっている。これにより、押えピン61aで2番目の串Lを確実に押え付けて保持することが可能となるので、串Lが短い寸法で重量の軽い串であっても、搬送路40を搬送された串を一本ずつ分離して順番に排出することが確実に行えるようになる。
また、上記の分離排出機構60では、分離用カム63及び開閉用カム73の回動で分離部材61及び開閉部材71が直線状に往復動作する構成であるため、搬送される串の分離供給動作を行う際に、発生する動作音が非常に小さくて済むという利点がある。また、スプリング74によって連結板72がスライド面41aに当接する際に緩衝作用を有するので、そのことによっても分離排出機構60の動作音が小さく抑えられている。
また、本実施形態の串供給装置1は、第1センサ55及び第2センサ56による串の有無の検出や回転検出センサ67による第2回転軸62の回転検出などに基づいて、上部モータ5や下部モータ6の動作を制御する制御部(図示せず)を備えている。制御部は、第1センサ55及び第2センサ56、及び回転検出センサ67から信号を受けると共に、上部モータ5及び下部モータ6に信号を送ることが可能なコントローラなどで構成されている。また、この制御部は、串刺装置からの串供給指令を受けて、それに基づいて下部モータ6の動作を制御するようになっている。
上記の制御部は、第1センサ55がX位置の串を検出し、かつ第2センサ56がY位置の串を検出している間は、上部モータ5による第1回転軸35の回転駆動を停止して、下部モータ6による第2回転軸62の回転駆動のみを行う。その一方で、第1センサ55が搬送路40におけるX位置の串Lを検出せず、第2センサ56のみがY位置の串を検出している間は、上部モータ5による第1回転軸35の回転駆動を行うと共に、下部モータ6による第2回転軸62の回転駆動を行う。これにより、搬送路40に並ぶ複数本の串Lの最後端がX位置とY位置の間にある間は、第1回転軸35の回転が継続するので、掻き揚げ板32の上下動によるホッパー20の下端部20aの開閉動作が繰り返して行われる。その一方で、搬送路40の串Lの最後端がX位置よりも上流側になったときには、第1回転軸35の回転による掻き揚げ板32の上下動が停止し、第2回転軸62の回転による分離排出機構60の動作のみが行われる。これにより、搬送路40に串Lが十分ある状態では、ホッパー20の下端部20aが開かれないので、搬送路40への串の供給が過多になることを防止できる。したがって、搬送路40に串Lが溢れてホッパー20の下端部20aなどに詰まりや引っ掛かりを生じることを防止できる。また、第1回転軸35の回転及び掻き揚げ板32の上下動を最小限に抑えることができるので、串供給装置1の耐久性を向上させることができ、かつ、消費電力を低減することができる。
さらに、制御部は、第1センサ55と第2センサ56の両方が串Lを検出しなくなった時点から予め設定した所定時間が経過した時点で、上部モータ5による第1回転軸35の回転駆動を停止すると共に、下部モータ6による第2回転軸62の回転駆動を停止する。これにより、搬送路40の串が完全に無くなる前に串供給装置1による串の供給動作を停止することができる。したがって、ホッパー20に串を補充して次回の串の供給を再開する際、搬送路40に最初から全部の串を入れ直す必要がないので、串の供給を簡単かつ迅速に再開することが可能となる。なお、上記以外にも、第1センサ55と第2センサ56の両方が串Lを検出しなくなった時点で、上部モータ5による第1回転軸35の回転駆動を停止すると共に下部モータ6による第2回転軸62の回転駆動を停止するように設定してもよい。
また、制御部は、回転検出センサ67の検出に基づいて、第2回転軸62の回転を適当なタイミングで1回転ずつ間欠的に行わせることができる。これにより、串を当該タイミングで排出口40aから外部の供給位置へ供給することができる。そして、串供給装置1の制御部は、串刺装置から受けた串供給の指令に基づいて、第2回転軸62を回転駆動する(一回転させる)ことで、串刺装置における串刺工程のタイミングに合わせて串を供給することができる。
次に、ホッパー20及び搬送路40に設置した幅板7について説明する。図1乃至図4に示すように、ホッパー20及び搬送路40の幅方向の両側(側板3,3の内側)には、一対の幅板7,7が設置されている。なお、図3では、幅板7を点線で示している。図15は、一方の幅板7を示す図で、(a)は、側面図、(b)は、正面図である。幅板7は、ホッパー20の断面に沿う幅広の本体部7aと、該本体部7aの下端に連接された搬送路40の断面に沿う細片部7bとを有する薄板状の部材である。本体部7aは、ホッパー20内に配置され、細片部7bは、搬送路40に配置されるようになっている。一対の幅板7,7は、互いが略同一の形状で、供給する串の長さ寸法に応じて設定された所定の間隔で並べて設置される。これにより、ホッパー20に投入されて搬送路40を搬送される串は、幅板7,7によってその長さ寸法が規定されるようになっている。
図3,図4,図5,図9などに示すように、ホッパー20の内面を構成している背板22の上端部22a及びスライド板41及び掻き揚げ板32には、スリット11(11a,11b,11c,11d)が形成されている。また、ストッパー軸37aには、円周溝14が形成されている。スリット11は、搬送方向に延びる直線状の細溝からなり、背板22の上端部22aに設けたスリット11aと、スライド板41に設けたスリット11bと、掻き揚げ板32の上板28及び下板27に設けたスリット11cと、傾斜板29に設けたスリット11dとで構成されている。そして、スリット11とストッパー軸37aの円周溝14とは、互いが搬送方向で対応する位置(一直線上に並ぶ位置)に形成されている。さらに、スリット11及び円周溝14は、ホッパー20及び搬送路40の幅方向において複数本(図では、左右に3本ずつ)が所定間隔で並べて形成されている。図4に示すように、掻き揚げ板32のスリット11cに差し込まれた幅板7の端辺は、ストッパー軸37aの円周溝14に差し込まれて位置決めされるようになっている。
図16は、幅板7,7の設置位置によって異なる長さの串が搬送路40を搬送される状態を示す図である。本実施形態の串供給装置1では、左右の幅板7,7の設置位置を変更することで、同図(a)〜(d)に示すように、長さの異なる複数種類(図では4種類)の串を供給することができる。なお、搬送する串の長さ寸法の具体例(一例)として、同図(a)〜(d)に示す幅板7,7の設置位置で搬送可能な鉄砲串204の長さ寸法をそれぞれ、105mm,90mm,80mm,70mmmに設定することが可能である。
なお、搬送路40の左右に設置する一対の幅板7、7のうち、窪み42側に設置する幅板7は、搬送する鉄砲串204の突出片204aが窪み42内の幅方向において余分な隙間が無い状態で収容される位置に設置される。これにより、搬送される鉄砲串204が短串であっても、当該鉄砲串204の搬送路40内での幅方向(鉄砲串204の長さ方向)の位置がずれることを防止できるので、当該鉄砲串204の幅方向の位置を一定に保つことができる。これにより、短串の鉄砲串204を一定の位置に保った状態で安定的に搬送することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の串供給装置1によれば、ホッパー20内の串を掻き揚げて攪拌すると共にホッパー20の下端部20aを開閉する攪拌開閉機構30を備えたことで、ホッパー20内に投入した多数の串を攪拌して一定の本数ずつ順番に下流側の搬送路40へ導くことができる。これにより、下流側の搬送路40を搬送される串に詰まりや引っ掛かりが生じることを効果的に防止できる。また、ホッパー20に投入された串を該ホッパー20の下端部20aからスライド面41aに沿って斜め下方に向けて滑落させながら搬送するように構成したことで、串を搬送するための複雑な構造やそれを駆動するための動力などを用いることなく、ホッパー20内の串を排出口40aへ向けてスムーズに搬送することが可能となる。また、スライド面41aとガイド面51aとの隙間に串を一本ずつ並べて搬送可能な搬送路40を形成したので、簡単な構成でありながら、ホッパー20内の多数の串を同じ向きに揃えた状態で一本ずつ順番に排出口40aへ送ることが可能となる。さらに、串排出部130において搬送路40を搬送されてきた多数の串を一本ずつ分離して該一本の串を適当なタイミングで排出口40aから排出する分離排出機構60を設けたことで、串刺装置による串刺工程のタイミングに合わせて、串を一本ずつ所定の供給位置へ供給することが可能となる。したがって、串を供給する作業が完全に自動で行えるようになり、串刺食品の製造作業の効率を向上させることができる。
また、この串供給装置では、掻き揚げ板32の裏面32a側に設置した第1回転軸35と、第1回転軸35を回転駆動するための上部モータ5と、該第1回転軸35と一体に回転する掻き揚げ用カム36とを備え、掻き揚げ板32は、掻き揚げ用カム36の回転に伴い支軸31を中心にホッパー20内で上下方向に揺動するようになっており、第1回転軸35が一回転する間に、掻き揚げ板32がホッパー20の下端部20aを閉じる下限位置P1から一回上下に揺動して再度下限位置P1に戻る動作が行われるように構成している。
この構成によれば、第1回転軸35及び掻き揚げ用カム36の回転で掻き揚げ板32を上下に揺動させるという簡単な構成でありながら、ホッパー20に収容した多数の串を効果的に攪拌でき、かつ、ホッパー20の下端部20aの開閉を一定の間隔で行うことができるので、ホッパー20内の串を一定量ずつ順番に搬送路40へ導くことが可能となる。したがって、ホッパー20に多数の串を投入した場合でも、当該串を詰まりや引っ掛かりを生じることなくホッパー20の下端部20aから搬送路40へスムーズに導くことが可能となる。
また、この串供給装置1では、分離排出機構60は、排出口40aの近傍に設置した第2回転軸62と、第2回転軸62を回転駆動するための下部モータ6と、第2回転軸62と一体に回転する分離用カム63と、搬送路40の上方に配置され、分離用カム63の押圧で該搬送路40に対する往復動作が可能な分離部材61と、該分離部材61に設けた搬送路40内の串Lを押えるための押えピン61aと、押えピン61aが搬送路40から上方へ退避するように分離部材61を付勢するスプリング66と、第2回転軸62と一体に回転する開閉用カム73と、分離部材61よりも下流側の搬送路40の上方に配置され、開閉用カム73の押圧で該搬送路40に対する往復動作が可能な開閉部材71と、該開閉部材71に設けられて排出口40aを開く開位置と排出口40aを閉じる閉位置との間で移動する開閉棒(開閉体)71a及び連結板72と、開閉部材71を開位置へ付勢するスプリング76と、を備え、第2回転軸62が一回転する間に、分離用カム63で押圧された分離部材61がスプリング66の付勢力に抗して搬送路40の方へ移動することで、押えピン61aが搬送路40を搬送されてきた多数の串Lのうち最先から2番目の串Lを押えて保持し、その状態で、開閉用カム73で押圧された開閉部材71が閉位置から開位置へ移動して排出口40aが開かれることで、最先の一本の串Lのみが排出口40aから排出されるように構成している。さらに、先尖形状の押えピン61aは、最先から2番目の串Lに突き刺さることで該串Lを押えて保持するようになっている。
この構成によれば、第2回転軸62と一体に回転する分離用カム63及び開閉用カム73で分離部材61及び開閉部材71を移動させるという簡単な構成でありながら、第2回転軸62が一回転する間に、分離部材61で最先の一本の串Lを分離し、開閉部材71で該最先の一本の串Lのみを適当なタイミングで排出口40aから排出できる。したがって、第2回転軸62を回転駆動するだけで、搬送路40を搬送される串を一本ずつ確実に分離して、串刺装置から要求されたタイミングで供給位置へ供給することが可能となる。
また、この構成によれば、搬送路40を搬送されてきた多数の串のうち最先から2番目の串Lを押えピン61aによって押えて保持するようにしたことで、長さ寸法が短く重量が軽い短串を搬送する場合にも、2番目の串Lを搬送路40上に停止させた状態で確実に保持することが可能となる。さらに、先尖形状の押えピン61aが最先から2番目の串Lに突き刺さることで該串Lを保持するようになっているので、当該2番目の串Lを確実に停止させて保持できるようになる。したがって、搬送する串の長さ寸法に関わらず、搬送路40に並ぶ多数の串Lから最先の串Lを1本ずつ分離して供給することが確実に行えるようになる。
また、この場合、分離部材61及び開閉部材71は、搬送路40の上方で第2回転軸62との間に設置した保持板65に取り付けられてユニット化されたユニット部品70を構成している。そして、このユニット部品70として、押えピン61aと開閉棒71a及び連結板72との搬送方向の離間寸法Qを互いに異ならせてなる複数種類のユニット部品70を備えている。したがって、本実施形態の串供給装置1では、複数種類のユニット部品70を付け替えて交換することで、搬送方向の寸法又は形状が異なる複数種類の串の供給が可能である。
この構成によれば、分離部材61と開閉部材71がユニット化されてなるユニット部品70を付け替えて交換するだけで、寸法又は形状が異なる複数種類の串の搬送が可能となるので、搬送する串の種類の切り替えを簡単な作業で迅速に行うことが可能となる。したがって、串刺食品の多品種製造にも容易に対応できる。
また、本実施形態の串供給装置1では、掻き揚げ板32には、搬送方向に対する幅方向に沿ってその上面を傾斜させてなる傾斜板29を取り付け可能であって、ホッパー20に投入されて搬送路40を搬送される串がその一端に把持用の突出片204aを有する鉄砲串204である場合、掻き揚げ板32に傾斜板29を取り付けることで、該鉄砲串204の突出片204aが傾斜板29によって形成された傾斜面29aの低い側に配置されるようになっている。
この構成によれば、鉄砲串204の突出片204aが傾斜板29によって形成された傾斜面29aの低い側に配置されるので、多数本の鉄砲串204をホッパー20内に積み重ねて導入した場合でも、当該鉄砲串204が突出片204aによって先端側を中心に扇型に傾斜した状態で積み重ならずに済み、各鉄砲串204をそれらの長手方向の傾斜が比較的少ない状態(比較的水平に近い状態)で積み重ねることが可能となる。このことによって、ホッパー20内の鉄砲串204が掻き揚げ板32の揺動でホッパー20の下端部20aから搬送路40に導入される際、当該鉄砲串204の先端が搬送路40の下流側(下側)を向くような縦向きになることを効果的に防止できる。特に、短串の鉄砲串204の場合には、掻き揚げ板32に上記の傾斜板29を取り付けていないと、串の長手方向が搬送方向を向くことが頻繁に起こってしまい串の搬送がままならないおそれがあるが、傾斜板29を取り付けることで、短串の鉄砲串204に対する搬送の安定性を飛躍的に向上させることが可能である。したがって、把持用の突出片204aを有する短串の鉄砲串204の向きを一定に保った状態で安定的に搬送することが可能となる。
また、串供給装置1では、上記の傾斜板29として、異なる傾斜角度を有する複数の傾斜板29を備え、傾斜板29は、ボルト29cの締結で掻き揚げ板32に取り付けるようになっており、搬送する串の長さ寸法又は形状に応じて、異なる傾斜角度を有する複数の傾斜板29を付け替えて串を搬送することが可能であり、かつ、傾斜板29を取り外した状態でも串を搬送することが可能である。
上記のように、搬送する串の長さ寸法又は形状に応じて異なる傾斜角度を有する傾斜板29を付け替えて串を搬送することが可能であるため、搬送する鉄砲串204の長さ寸法又は形状に変更があった場合でも、ホッパー20内に積み重ねて導入した串を、常にそれらの長手方向の傾斜が比較的少ない状態(比較的水平に近い状態)で積み重ねることが可能となる。したがって、鉄砲串204を供給する際、当該鉄砲串204の長さ寸法に関わらず、その先端側が搬送路40の下流側(下側)を向くような縦向きになることを効果的に防止できる。また、上記のように、傾斜板29を取り外した状態で串を搬送することも可能であるため、鉄砲串204だけでなく、通常の丸串201などの搬送にも対応が可能となるので、搬送可能な串の種類を増やすことができる。
また、本実施形態の串供給装置1では、スライド面41aにおける串の進行方向に対する幅方向の一部に鉄砲串204用の窪み42を形成したことで、スライド面41aを滑落する鉄砲串204の突出片204aが窪み42内に配置されるようになる。これにより、本実施形態にかかる串供給装置1では、把持用の突出片204aを有する鉄砲串204の供給を安定的に行うことが可能である。
特に、本実施形態の串供給装置1では、搬送路40における傾斜状のスライド面41aに上記の窪み42を形成したことで、鉄砲串204がスライド面41aを滑落する際、鉄砲串204の突出片204aが自重で下側(スライド面41a側)を向くことで、当該突出片204aが自動的に窪み42内に収まるという作用がある。これにより、突出片204aが進行方向を向いた状態で鉄砲串204が搬送路40に並ぶことを防げるので、搬送路40の鉄砲串204が進行方向に対して扇形に積み上がるおそれがなくなり、互いに平行な状態で並ぶようになる。したがって、搬送する串が鉄砲串204である場合、当該鉄砲串204の向きを一定に揃えた状態で安定的に供給することが可能となる。よって、本実施形態の串供給装置1では、従来、安定した供給が非常に難しかった把持用の突出片204aを有する鉄砲串204をスムーズに供給することが可能となる。
また、本実施形態の串供給装置1が備える攪拌開閉機構30では、掻き揚げ用カム36の回転で掻き揚げ板32を上下に揺動させるという簡単な構成でありながら、ホッパー20に収容した串を効果的に攪拌でき、かつ、ホッパー20の下端部20aの開閉を一定の間隔で行えるので、ホッパー20内の串を一定量ずつ順番に搬送路40へ導くことが可能となる。したがって、ホッパー20に多数の串を投入した場合でも、当該串を詰まりや引っ掛かりを生じることなくホッパー20の下端部20aから搬送路40へスムーズに導くことが可能となる。
また、本実施形態の串供給装置1が備える分離排出機構60では、第2回転軸62と一体に回転する分離用カム63及び開閉用カム73で分離部材61及び開閉部材71を直線状に往復動させるという簡単な構成でありながら、第2回転軸62が一回転する間に、分離部材61で最先の一本の串Lを分離し、開閉部材71で該最先の一本の串Lのみを排出口40aから適当なタイミングで排出することができる。したがって、第2回転軸62を回転駆動するだけで、搬送路40を搬送される串Lを一本ずつ確実に分離して串刺装置が要求するタイミングで供給位置へ供給することが可能となる。
また、本実施形態の串供給装置1では、供給する串の長さ寸法を規定するための幅板7,7と、該幅板7,7を設置するための複数のスリット11(11a〜11d)とを設けたことで、幅板7,7を差し込むスリット11の幅方向の位置を変更する簡単な作業を行うだけで、供給する串の長さ寸法を複数種類から選択して設定可能である。これにより、一台の串供給装置1で複数種類の長さの串を供給できるので、製造可能な串刺食品の品種を増やすことができると共に、串刺食品の製造にかかるコストを効果的に低減することが可能となる。
また、本実施形態の串供給装置1では、第1センサ55及び第2センサ56として、一体に構成された投光部及び受光部からなる検出部55a,56aを備えた光反射型のセンサを用いている。これにより、投光部と受光部が検出位置の両側に分離している透過型のセンサを備えた場合と比較して、煩雑な光軸合わせの作業が不要となる。したがって、第1センサ55及び第2センサ56の組み付け作業を簡単かつ迅速に行えるようになる。また、第1センサ55及び第2センサ56による串の有無の検出精度を向上させることができる。また、第1センサ55及び第2センサ56として、比較的安価なセンサを使用できるので、串供給装置1の製造コストを低く抑えることができる。さらに、第1センサ55及び第2センサ56は、それらの検出部55a,56aがガイド板ブラケット52の貫通穴52a,52bを介してスライド面41a上の第1の位置Xと第2の位置Yそれぞれに対向して配置されているので、簡単な構成で、搬送路40を搬送される串の有無を正確に検出できるようになる。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。