JP5636868B2 - 合成樹脂製保持器 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受用の合成樹脂製保持器に関し、より詳細にはウエルド部の強度低下を防止する技術に関する。
各種機械や装置に組み込まれる転がり軸受の保持器として、軽量で柔軟性に優れる合成樹脂製保持器が使用されることが多くなっている。この合成樹脂製保持器は射出成形法で製造されており、1ないし複数のゲートから熱可塑性樹脂、もしくは熱可塑性樹脂に補強繊維材を配合した樹脂組成物の溶融物を金型に注入し、冷却固化させて得られる。
しかし、保持器は円環状であるため、ゲートから注入された溶融物は金型内で分流され、ある地点(例えばゲートと対向する位置)で合流し(以下「ウエルド位置」)、保持器には、このウエルド位置に相当するウエルド部が必ず生じる。このウエルド部は、溶融物が融着一体化しただけであるため、溶融物の均一な混合が起こらず、他の部位よりも強度が低くなる。特に、補強繊維材を配合した樹脂組成物を用いた場合は、ウエルド部において補強繊維材が流動方向に対し垂直に配向するため、補強効果が発現しないばかりでなく、他の部位では補強繊維材が流動方向に対し水平に配向しているため、ウエルド部と他の部位との強度差がより大きくなる。
そこで、キャビティに樹脂溜りを連結し、樹脂溜りに溶融物を流入させて溶融物の流動を乱すことでウエルド部を増強することが提案されている。例えば特許文献1では、樹脂溜りをウエルド位置に対応して設けることを提案している。しかしながら、保持器の種類によって樹脂溜りの位置が変更されており、例えば玉軸受用保持器では樹脂溜りの開口をキャビティの内周側に設けているのに対し、ころ軸受用保持器では樹脂溜りの開口をキャビティの外周側に設けており、ウエルド部の補強に必ずしも最適とは言えない。
また、特許文献2では、キャビティの分流流路の少なくとも一方にピストンを内蔵した樹脂溜りを設け、溶融物が合流した後にピストンを作動させて溶融物を移動させることを提案している。また、特許文献3では、分流流路の少なくとも一方に、入口に開閉バルブを設けた樹脂溜りを設けて、合流した溶融物を樹脂溜りに流入させることを提案している。しかしながら、何れの方法も金型が複雑で高価になり、金型の動作制御も難しくなる。しかも、樹脂溜りがウエルド位置と一致しておらず、溶融物の移動が少ないという問題もある。
また、特許文献4では、合流部から外れた周縁部に、溶融物の一部が流入可能な樹脂溜まりを設けると共に、樹脂溜りとキャビティとを連通する連通部でキャビティから樹脂溜りに流入する溶融物の流入量を制限し、溶融物をキャビティ内に充填された後に樹脂溜り内に充填させることを提案している。しかしながら、樹脂溜りがウエルド位置と一致しておらず、溶融物の移動が少ないという問題がある。
また、特許文献5では、溶融物が合流する地点を中心として、その近傍の外周側と内周側とに樹脂溜りを設けることを提案している。しかしながら、樹脂溜りがウエルド位置と一致しておらず、溶融物の移動が少ないという問題がある。
特開平10−318263号公報 特開平6−8293号公報 特開平4−310715号公報 特開2002−301742号公報 特開2006−205580号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、従来よりもウエルド部の強度を高めた合成樹脂製保持器を提供することを目的とする。
本発明者らは、合成樹脂製保持器のウエルド部の増強を検討した結果、軸受回転時に保持器には、その外周側よりも内周側に高い引張応力が発生することを見出した。具体的には、円筒ころ軸受用合成樹脂製保持器について軸受回転時に作用する最大引張応力を有限要素法により求めたところ、下記表1に示すように内周側を1とすると、外周側では0.8程度になることを知見した。
Figure 0005636868
そこで、保持器の内周側で、補強繊維材をよりランダムに分散させることがウエルド部の増強に有効になると考え、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の合成樹脂製保持器を提供する。
(1)補強繊維材を含有する保持器成形用樹脂組成物を成形してなり、回転時に、その外径側よりも内径側に高い引張応力が発生する転がり軸受用合成樹脂製保持器であって、
保持器の周方向の任意の部位において、保持器内周側に向かって狭くなるハ字状に配向する補強繊維材が存在していることを特徴とする転がり軸受用合成樹脂製保持器。
(2)前記部位がウエルド部であり、キャビティのウエルド位置に一致する位置の内周側に設けられた開口と、前記開口に通じる樹脂溜りを備える金型を用い、保持器成形用樹脂組成物を射出成形して獲られ、
前記補強繊維材が、保持器内周側端縁にある地点に向かって両側から漸次傾斜角が大きくなるようにハ字状に配向していることを特徴とする上記(1)記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
(3)前記部位が、保持器の径方向の厚みをaとするとき、保持器の内周側半領域で、かつ、保持器中心に向かうウエルドラインの両側a/4の幅で区画される領域であり、
前記ウエルドラインに対し10°〜60°の角度で配向している前記補強繊維材の割合が50%以上であることを特徴とする上記(2)記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
(4)前記樹脂溜りの体積(V)が、前記ウエルド部の断面積(D)に対して下記関係式(I)式を満足し、かつ、前記開口の断面積が前記ウエルド部の断面積の0.5%以上40%以下であることを特徴とする上記(3)記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
(D/2)×1.0mm×2≦V≦(D/2)×10mm×2 ・・・(I)
(5)ころ軸受用保持器であることを特徴とする上記(1)〜()の何れか1項に記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
本発明では、キャビティのウエルド位置の内周面に樹脂溜りを連結した金型を用いる。そのため、この樹脂溜りに溶融物が流れ込んで強制的に流動が乱され、それに伴って補強繊維材も保持器内周側に向かって狭くなるハ字状に配向し、外周側で補強繊維材を同様に配向させた場合に比べてウエルド部の増強効果が高まる。従って、耐久性や信頼性により優れる合成樹脂製保持器が得られる。換言すれば、保持器の肉厚を薄くすることができ、保持器の軽量化及び原料コストを低減することができる。また、肉厚を薄くした分、転動体のサイズを大きくすることもでき、軸受の定格荷重を上げることができ、軸受の長寿命化を図ることもできる。更には、このような合成樹脂製保持器を備える転がり軸受もまた耐久性に優れたものとなる。
本発明に係る合成樹脂製保持器の一例である冠型保持器を示す斜視図である。 (A)は冠型保持器の基部を、保持器軸線に直交する面で切断して示す模式図であり、(B)は領域Aを拡大して示す模式図である。 本発明で用いる金型をキャビティ上方から見た図である。 溶融物が樹脂溜りに流入する様子を示す模式図である。 領域Aの一例を示す拡大図である。 本発明に係る合成樹脂製保持器の他の例である円筒ころ軸受用保持器を示す斜視図である。 本発明に係る合成樹脂製保持器の他の例である円錐ころ軸受用保持器を示す斜視図である。 本発明に係る合成樹脂製保持器の他の例である針状ころ軸受用保持器を示す斜視図である。 本発明に係る合成樹脂製保持器の他の例であるアンギュラ玉軸受用保持器を示す斜視図である。 アンギュラ玉軸受用保持器の他の例を示す斜視図である。 円環引張試験の試験方法を説明するための図である。 樹脂溜りの体積とガラス繊維の配向割合との関係を示すグラフである。 樹脂溜りの体積と引張強度との関係を示すグラフである。 試験2において、ウエルド部内径側の強度の測定方法を説明するための模式図である。
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る合成樹脂製保持器の一例である冠型保持器1を示す斜視図であるが、円環状の基部10の一方の側に、柱部11が等間隔で立設しており、隣接する一対の柱部11,11により、転動体(図示せず)を保持するためのポケット12が形成されている。
尚、保持器材料には、例えばポリアミドやポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂に、ガラス繊維や炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の補強繊維材を配合した樹脂組成物が用いられる。補強繊維材の含有量は、樹脂組成物全量の40質量%以下が好ましく、これより多量になると樹脂量が少なすぎて成形の際の流動性が十分ではなく、後述する樹脂溜まりに流入し難くなり、ウエルド部の発生を抑制する効果が十分に得られない。また、成形時及び使用時の熱劣化を抑えるために、ヨウ化物系熱安定剤やアミン系熱安定剤を単独で、あるいは両方を添加してもよい。更に、耐衝撃性を改善するために、エチレンプロピレン非役ジエンゴム(EPDM)等のゴム系材料を配合してもよい。
図2(A)は、冠型保持器1の基部10を、保持器軸線に直交する面で切断した模式図である。本発明では、基部10の内周面10Aと外周面10Bとの中心を通る中心線10Cから内周側半領域の任意の領域Aにおいて、図2(B)に拡大して示すように、補強繊維剤50が、保持器内周側端縁のある地点に向かって両側から漸次傾斜角が大きくなるようにハ字状、もしくは逆V字状に配向している。好ましくは、領域Aに存在する補強繊維材50の中で、保持器軸線に向かう線分Sに対して10°〜60°で交差している補強繊維材50の割合が50%以上、好ましくは60%以上となる。尚、領域Aは、保持器の径方向の厚みをaとするとき、中心線10Cと、線分Sの両側(a/4)の位置を通る2本の平行線K,Lで囲まれる略正方形とするのが適当である。
補強繊維材50の配合割合を検証するには、冠型保持器1を保持器軸線に直交する面で切断し、その切断面を光学顕微鏡等で観察して補強繊維材50の配向角度を測定すればよい。但し、補強繊維材50が湾曲している場合は、直線となる仮想線と、線分Sとの交差角度を求める。
補強繊維材50がこのように配向する領域Aを形成するには、図3に示すように、円環状で、内周側に樹脂溜り130を有するキャビティ110を備える金型100を用いて射出成形する。尚、図3は、金型100のキャビティ110を上方から見た図であり、簡単のために冠型保持器1の柱部11及びポケット12に相当する部分は省略してある。また、ゲート120を単一にしてある。
この金型100に、ゲート120から樹脂組成物の溶融物を注入すると、溶融物は図のようにキャビティ110を左右に分かれて流動し、ゲート120と対向する位置にて合流する。尚、この合流地点がウエルド部となり、ウエルドラインWを仮想線で表す。そして、溶融物は、合流に際して樹脂溜り130に流入し、図4に示すように補強繊維材50は、開口部130aに近づくほどウエルドラインWとの交差角θが小さくなるように樹脂溜り130に流入する。このような補強繊維材50の傾斜は、ウエルドラインWを中心にハ字状を呈する。
この場合、図2に示した領域Aは、図5に示すように、ウエルドラインWと平行で樹脂溜り130の開口部130aの一方の端部から延出する平行線Mと、他方の端部から延出する平行線Nと、基部10の中心線10Cとで囲まれた領域(符号Bで示す)とすることができる。
尚、樹脂溜り130の無い金型100を用いて射出成形すると、補強繊維材50は上記のようなハ字状に配向せず、ウエルドラインWに対しほぼ平行に、即ち交差角度θが10°未満に配向するようになり、強度的には大きく低下する。
金型100において、樹脂溜り130の体積(V)は、保持器のウエルド部の断面積(D)に対して以下の関係式(I)を満足することが好ましい。尚、ウエルド部の断面積(D)とは、保持器をウエルドが発生した部分にて保持器軸線に沿って切断した切断面の断面積である。体積(V)が下限を下回ると、溶融物の移動量、流動量が少なすぎて補強繊維材の配向の乱れが不足して十分な強度改善効果が得られないおそれがある。一方、体積(V)が上限を上回っても樹脂の使用量が増すだけで、強度改善効果は変わらない。
(D/2)×1.0mm×2≦V≦(D/2)×10mm×2 ・・・(I)
また、開口部130aの断面積(Da)は、ウエルド部の断面積(D)の0.5%以上40%以下にすることが好ましい。断面積(Da)が下限を下回ると、樹脂溜り130への溶融物の流入が制限されすぎて十分な強度改善効果が得られないおそれがある。一方、断面積(Va)が上限を上回ると、溶融物が合流前に樹脂溜り130に流入してしまい、この場合も十分な強度改善効果が得られないおそれがある。
尚、成形条件には制限はなく、従来の合成樹脂製保持器を射出成形する際の成形条件をそのまま採用できる。
本発明は種々の変更が可能であり、上記は単一ゲートの場合であるが、ゲート120が複数の場合は、ゲート数に応じて複数生じるウエルド部と対向するように複数の樹脂溜まり130を形成する。
また、保持器の種類も冠型保持器に限らず、図6に示すような円筒ころ軸受用保持器、図7に示すような円錐ころ軸受用保持器、図8に示すような針状ころ軸受用保持器、図9及び図10に示すようなアンギュラ玉軸受用保持器等にも応用でき、製造に際し、それぞれの保持器に対応する金型100のキャビティ110の内周側に樹脂溜り130を付加すればよい。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
〔試験1〕
円環状のキャビティの内周側に1個の樹脂溜りを有し、樹脂溜りと対向する位置にゲートを形成した金型を用意し(図3参照)、成形材料(ガラス繊維を25質量%の割合で含有するポリアミド66)をゲートから注入して射出成形し、円環試験片(内径58mm、外径66mm、幅5mm)を作製した。樹脂溜りの開口部は、断面積2mmとした。また、樹脂溜りの体積を変えて同様に射出成形し、円環試験片を作製した。
そして、円環試験片から、樹脂溜りの開口部と対向する部分を切り出し、切り出した部分を更に保持器軸線と直交する面で切断し、その内周側半領域(図5に示す領域A)について光学顕微鏡で観察し、ガラス繊維の全本数と、各ガラス繊維がウエルドラインと交差する角度とを測定した。そして、ウエルドラインに対し10°〜60°で交差するガラス繊維の割合(以下「ガラス繊維の配向割合」)を求めた。また、図11に示す試験装置を用いて円環引張試験を行い、円環試験片の引張強度を測定した。図示される試験装置では、上下一対の治具に円環試験片を、ウエルド部が治具の合わせ面と一致(図中水平)するように装着し、治具を上下方向に引っ張る構成になっている。
図12に、樹脂溜りの体積とガラス繊維の配向割合との関係を示すが、樹脂溜りの体積が増すほど、ガラス繊維の配向割合も高まっている。
また、図13に樹脂溜りの体積と、引張強度との関係(但し、樹脂溜りの無い金型を用いた試験片に対する相対値)を示すが、樹脂溜りの体積が増すほどガラス繊維の配向も乱され、引張強度も高まることがわかる。
〔試験2〕
(実施例2−1)
図6に示すような、内径106mmで外径120mmの円筒ころ軸受用保持器を作製するための金型を改良し、キャビティの内周面に樹脂溜りを形成した。尚、符号Gで示すようにゲートを一方の円環状の基部の各ポケット中央部の内径側に設け、符号Wで示すように他方の円環状の基部の各ポケット中央部の内径側に樹脂溜りの開口部を設けた。そして、成形材料(ガラス繊維を30質量%の割合で含有するポリフェニレンサルファイド)をゲートから注入して射出成形し、円筒ころ軸受用保持器を作製した。
(比較例2−1)
実施例2−1と同形で、樹脂溜りの無い金型を用いて同一成形材料を射出成形し、円筒ころ軸受用保持器を作製した。
(比較例2−2)
実施例2−1と同形で、樹脂溜りをキャビティの外周側に形成した金型を用いて同一成形材料を射出成形し、円筒ころ軸受用保持器を作製した。
各保持器から、樹脂溜りの開口部と対向する部分を切り出し、切り出した部分を更に保持器軸線と直交する面で切断し、その内周側半領域(図5に示す領域B)について光学顕微鏡で観察し、ガラス繊維の全本数と、各ガラス繊維がウエルドラインと交差する角度とを測定した。そして、ガラス繊維の配向割合を求めた。尚、樹脂溜りの無い金型を用いた比較例2−1については、ゲートと対向する他方の円環状の基部の任意のポケットから開口部に相当する部分を切り出し、測定した。その結果、ガラス繊維の配向割合は、実施例2−1では60%、比較例2−1では4%、比較例2−2では6%であった。
各保持器を組み込んだ試験軸受を作製し、耐久試験を行った。試験は、1時間毎に回転数を一定数ずつ上げていき、保持器が破損するまで試験軸受を連続回転させ、保持器が破損するまでの最高回転数を計測した。結果を表2に、比較例2−1の値を1とする相対値で示す。
また、図14に示すようにして、各保持器のウエルド部内径側の強度を測定した。即ち、保持器のウエルド部が形成されている側の基部から円弧状の試験片を切り出し、試験片200を外径側201が凸になるように試験台220の上に設置し、試験片200の中央に治具210を載置し、治具210を介して鉛直方向に荷重を加えた。治具210にはロードセル(図示せず)が接続しており、試験片200が破壊したときの荷重を求めた。結果を表2に、比較例2−1の値を1とする相対値で示す。
Figure 0005636868
表2に示すように、ガラス繊維の配向割合が10%未満である比較例2−1及び比較例2−2に対し、ガラス繊維の配向割合が50%以上である実施例2−1ではウエルド部の強度が高まっており、それにより軸受の耐久性も向上している。
〔試験3〕
(実施例3−1)
内径90mm、外径115mmの玉軸受用で、ポケットと柱部とが対向する構造の冠型保持器用の金型を改良し、ゲートを柱部の幅方向中心位置に1個設けるとともに、対向するポケットの中心直下の内径側に樹脂溜りを設けた。そして、成形材料(ガラス繊維を25質量%の割合で含有するポリアミド46)をゲートから注入して射出成形し、冠型保持器を作製した。
(比較例3−1)
実施例3−1と同形で、樹脂溜りの無い金型を用いて同一成形材料を射出成形し、冠型保持器を作製した。
(比較例3−2)
実施例3−1と同形で、樹脂溜りをキャビティの外周側に形成した金型を用いて同一成形材料を射出成形し、冠型保持器を作製した。
そして、試験2と同様にして各保持器のガラス繊維の配向割合測定と耐久試験を行い、試験1と同様にして円環引張試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005636868
表3に示すように、ガラス繊維の配向割合が10%未満である比較例3−1及び比較例3−2に対し、ガラス繊維の配向割合が50%以上である実施例3−1ではウエルド部の強度が高まっており、それにより軸受の耐久性も向上している。
1 冠型保持器
10 基部
11 柱部
12 ポケット
50 補強繊維材
100 保持器成形用金型
110 キャビティ
120 ゲート
130 樹脂溜り
W ウエルドライン

Claims (5)

  1. 補強繊維材を含有する保持器成形用樹脂組成物を成形してなり、回転時に、その外径側よりも内径側に高い引張応力が発生する転がり軸受用合成樹脂製保持器であって、
    保持器の周方向の任意の部位において、保持器内周側に向かって狭くなるハ字状に配向する補強繊維材が存在していることを特徴とする転がり軸受用合成樹脂製保持器。
  2. 前記部位がウエルド部であり、キャビティのウエルド位置に一致する位置の内周側に設けられた開口と、前記開口に通じる樹脂溜りを備える金型を用い、保持器成形用樹脂組成物を射出成形して獲られ、
    前記補強繊維材が、保持器内周側端縁にある地点に向かって両側から漸次傾斜角が大きくなるようにハ字状に配向していることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
  3. 前記部位が、保持器の径方向の厚みをaとするとき、保持器の内周側半領域で、かつ、保持器中心に向かうウエルドラインの両側a/4の幅で区画される領域であり、
    前記ウエルドラインに対し10°〜60°の角度で配向している前記補強繊維材の割合が50%以上であることを特徴とする請求項2記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
  4. 前記樹脂溜りの体積(V)が、前記ウエルド部の断面積(D)に対して下記関係式(I)式を満足し、かつ、前記開口の断面積が前記ウエルド部の断面積の0.5%以上40%以下であることを特徴とする請求項3記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
    (D/2)×1.0mm×2≦V≦(D/2)×10mm×2 ・・・(I)
  5. ころ軸受用保持器であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の転がり軸受用合成樹脂製保持器。
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