JP5636314B2 - エステル結合を有するテトラカルボン酸類、それを用いたポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド、ならびにこれらの製造法 - Google Patents
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例えば、照明用反射材、LED実装用プリント配線板などにおいては、主にセラミック基板が用いられ、一部、白色顔料を含有する熱硬化性樹脂をシート状ガラス基材に含浸させたプリプレグと金属箔とを加熱プレス成型して得たリジッド金属張積層板が主に用いられていたが、電子機器は、携帯性などを向上させるために、薄型化・軽量化が進んでいる。それに応じて、使用されるこれらもさらに軽量化、薄型化が求められている。
(iii)下記の一般式(3)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸誘導体。
(vi)上記(i)〜(iii)のいずれかに記載される一般式(1)〜(3)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類と、ジアミン類とを溶媒中で重合することを特徴とする上記(iv)に記載されるフルオレニル基含有ポリエステルイミド前駆体の製造方法。
本発明によれば、フルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類(テトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸誘導体)、すなわち後述する一般式(1)〜(3)と、ジアミン類を重合反応させることにより産業上有用なフルオレニル基含有ポリエステルイミドを提供することができる。その原料であるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類(以下、「テトラカルボン酸類」と略記する。)において、嵩高いフルオレン構造をもち、かつエステル基が直接芳香環と結合していない(かつσ結合を骨格とする基がトリメリット酸とエステル結合をなす)構造上の特徴によりフルオレニル基とトリメリット酸基との間での電子的な相互作用が十分に抑制され、ポリエステルイミドとした際に高透明性、高有機溶媒溶解性という従来のポリエステルイミドでは得ることができなかった物性を有する材料が得られる。
本発明のフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類とは下記の一般式(1)〜(3)で表される化合物であり、一般式(1)のテトラカルボン酸二無水物、一般式(2)のテトラカルボン酸および一般式(3)のテトラカルボン酸誘導体を含む総称である。該テトラカルボン酸類は、一般式(1)〜(3)のテトラカルボン酸類である。
2.フルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類の製造方法
(1)テトラカルボン酸二無水物
上記の一般式(1)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物(本発明において、「テトラカルボン酸二無水物」と略称する場合もある。)の製造方法は、特に限定されない。たとえば下記の一般式(6)(R1、R2、X1およびX2の定義は一般式(1)と同様である。)と、トリメリット酸無水物との直接脱水反応による方法、一般式(6)のジアセテートと、トリメリット酸無水物とを高温で脱酢酸反応する方法、一般式(6)と、トリメリット酸ハライドを脱酸剤(塩基)の存在下で反応させる方法(以下、この方法を「酸ハライド法」と称する。)、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水剤を用いて一般式(6)とトリメット酸無水物とを脱水縮合させる方法、トシルクロライド/N,N−ジメチルホルムアミド/ピリジン混合物を用いてトリメリット酸無水物を活性化して一般式(6)をエステル化する方法等が挙げられる。
一般式(6)の具体的な構造を例示すれば次のようになる。
一般式(2)で表される該フルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸の製造方法は、特に限定されない。例えば、一般式(2)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸(本発明において、「テトラカルボン酸」と略称する場合もある。)は、一般式(1)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物の加水分解により容易に製造できる。具体的には、該フルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物、例えば、9H−フルオレン−9,9−ジメタノールのトリメリット酸エステルのテトラカルボン酸二無水物をアセトニトリル等の水溶性溶媒に溶解し、これを、室温〜100℃に保持したpH7〜10の希アルカリ水溶液に攪拌しながら滴下する。生成した沈殿を濾別・水洗し、これをアセトニトリル等の水溶性溶媒に再溶解し、室温〜100℃に保持したpH3〜7の希酸性水溶液に攪拌しながら滴下する。生成した沈殿を濾別・水洗し、40〜100℃で真空乾燥することで目的の9H−フルオレン−9,9−ジメタノールのトリメリット酸エステルのテトラカルボン酸が得られる。
一般式(3)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸誘導体の製造方法は、特に限定されない。例えば、一般式(3)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸誘導体(本発明において、「テトラカルボン酸誘導体」と略称する場合もある。)は、一般式(1)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物から容易に製造できる。具体的には、該フルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物、例えば、9H−フルオレン−9,9−ジメタノールのトリメリット酸エステルのテトラカルボン酸二無水物に過剰量の脱水アルコール類を加えて1〜12時間加熱還流することで定量的に9H−フルオレン−9,9−ジメタノールのトリメリト酸エステルのテトラカルボン酸のジアルキルエステル、すなわち、フルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸のジアルキルエステルが得られる。該脱水アルコールとしては、該エステル化反応後の留去のしやすさの点からメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが好適である。
下記の一般式(4)(R1、R2、X1およびX2の定義は一般式(1)と同じである。R3は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。構造単位Aは2価の芳香族あるいは脂環族基を表す。R1を含むエステル基およびR2を含むエステル基は、それぞれ、アミド基に対してパラ位およびメタ位のいずれであってもよい。)で表される繰返し単位を有するフルオレニル基含有ポリエステルイミド前駆体(以下、「ポリエステルイミド前駆体」と略称する。)を製造する方法は特に限定されず、公知のポリイミド前駆体の製造方法を適用することができる。
第一に、ジアミンを脱水した重合溶媒に溶解し、これに実質的に等モルの一般式(1)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し、攪拌機を用い、室温で0.5〜100時間攪拌することにより、該ポリエステルイミド前駆体を製造することができる。モノマー濃度は5〜50質量%、好ましくは20〜35質量%とする。
まずジアミンを重合溶媒に溶解し、これに一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物粉末を徐々に漆加し、攪拌機を用い、0〜100℃、好ましくは5〜40℃で、0.5〜100時間、好ましくは20〜30時間攪拌する。モノマー濃度は5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。このモノマー濃度範囲で重合することにより均一で高重合度のポリエステルイミド前駆体溶液を得ることができる。ポリエステルイミドの膜靭性の観点からポリエステルイミド前駆体の重合度はできるだけ高いことが好ましい。前記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ポリエステルイミド前駆体の重合度が充分高くならず、最終的に得られるポリエステルイミド膜が脆弱になることが懸念される。ジアミンとして脂環族ジアミンを用いた場合、前記範囲より高濃度のモノマー濃度では、形成された塩が溶解、消失するまでにより長い重合時間を必要とし、生産性の低下を招く恐れがある。
特に限定されない。
重合反応に使用される溶媒は、原料モノマーであるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類とジアミン類とが溶解できればよいので、その種類は特に限定されないが、プロトン性溶媒が好ましい。貝体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N一ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、∂−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフエノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、すなわちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルプ、ブチルセロソルプ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルプアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒等も使用できる。
下記の一般式(5)(R1、R2、X1およびX2の定義は一般式(1)と同じである。R3および構造単位Aの定義は一般式(4)と同じである。)は2価の芳香族あるいは脂環族基を表す。)で表される繰返し単位を有するフルオレニル基含有ポリエステルイミドのGPC測定による重量平均分子量はMwが50×103〜400×103である。Mwが50×103未満であるとポリエステルイミド膜の靭性が著しく低下する恐れがある。
本発明のフルオレニル基含有ポリエステルイミド前駆体溶液(ワニス)をピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸などの脱水剤を含有する溶液に浸漬することによって可能である。ピリジンはポリエステルイミド前駆体1ユニットに対し2mol倍〜50mol倍、好ましくは10mol倍〜40mol倍である。無水酢酸はポリエステルイミド前駆体1ユニットに対し2mol倍〜50mol倍、好ましくは10mol倍〜30mol倍である。
ミドを粉末として単離することもできる。またポリエステルイミド粉末を前記重合溶媒に再溶解してポリエステルイミドワニスとすることができる。
また、前記ポリエステルイミド粉末を200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱圧縮することによりポリエステルイミド成型体を製造することができる。
テトラカルボン酸類、ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミドの分子構造を確認するために、NMR分光光度計(日本電子(株)、JNM−ECS400)を用いて、ジメチルスルホキシド−D6中で各構造の1H−プロトンNMRスペクトルを測定した。
テトラカルボン酸類の分子量を確認するために、ガスクロマトグラフ質量分析計((株)島津製作所、GCMS−QP2010)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
テトラカルボン酸類の融点および融解曲線は、示差走査熱量分析装置((株)リガク、Thermoplus DSC8230)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分で測定した。
ポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミドの重量平均分子量を確認するために、ゲルパーミエーションクロマトグラム:GPC(日本分光(株)、Ic−2000)を用いて、次の条件で測定した。
溶離液:ジメチルホルムアミド(10mMの臭化リチウム+10mMリン酸)、
流量:0.6mL/min、
検出器:RI(示差屈折計)、
カラム温度:40℃。
<ガラス転移温度:Tg>
温度変調示差走査熱量計(TA instruments、DSC2910型)を用いて、昇温速度2℃/分における変調温度に同期するシグナル(RevHeatFlow)と変調温度に同期しないシグナル(NonRevHeatFlow)の差から生じるピークからポリエステルイミドのガラス転移温度を求めた。
紫外可視分光光度計(日本分光社(株)、UV−1700)を用いて、ポリエステルイミド膜の400nmにおける光透過率を測定した。下記のランベルト−ベールの法則を用いて膜厚を補正した透過率I1/I0とした。透過率が高い程、ポリエステルイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
I0:透過前の光の強度
I1:透過後の光の強度
α:吸光係数
L:フィルムの膜厚
フィルム膜厚Lが20μmの場合における(またはLが20μm換算での)透過率が80%以上であるときに、そのフィルムは高透明性を備えるといえる。
無水トリメリット酸クロライド22g(102mmol)とアセトニトリル63g(無水トリメリット酸クロライドの3.0重量倍)とを、還流冷却器、温度測定管および攪拌機を備えた500mlのガラス製反応容器に窒素雰囲気下仕込み、溶解して内温を10℃に冷却した。ついで、アセトニトリル30g(9H−フルオレン−9,9−ジメタノールの3.0重量倍)およびピリジン10g(無水トリメリット酸クロライドの1.2mol倍)からなる液体に9H−フルオレン−9,9−ジメタノール10g(44mmol)を溶解し、得られた溶液を、反応容器内のアセトニトリル溶液に内温を15℃以下に保ちながら15分かけて滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、内温15℃〜25℃で2時間攪拌して得られた反応液中の固体生成物を濾過し、この固形物を酢酸35g、アセトニトリル15gの混合液で洗浄し更に5mmHgの減圧下、100℃で1時間乾燥して白色固体を得た。
(実施例2)
<9H−フルオレン−9,9−ジメタノールのトリメリト酸エステルのテトラカルボン酸二無水物を用いたポリエステルイミド前駆体の製造>
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中で、2,2’−ビス(トリフロオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル(本発明において、「TFMB」と略称される場合もある。)3mmolをN,N−ジメチルアセトアミド6.3gに溶解し、得られた溶液に式(7)で表される(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビス(メチレン)ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボキシレート)(TMMF)3mmolを除々に加え、室温で30時間攪拌しながら重合反応を行い、透明で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。このポリエステルイミド前駆体溶液にN,N−ジメチルアセトアミドを追加し、ポリエステルイミド前駆体の溶液中の質量濃度を20質量%にした。得られたポリエステルイミド前駆体のGPC測定による重量平均分子量は159×103であった。また、1H−NMRスペクトルを図4に示した。このNMRスペクトルから、得られたポリエステルイミド前駆体は、R1およびR2がいずれもメチレン基であり、X1、X2およびR3はいずれも水素であることが確認された。
<9H−フルオレン−9,9−ジメタノールのトリメリト酸エステルのテトラカルボン酸二無水物を用いたポリエステルイミドの製造>
実施例2により得られたポリエステルイミド前駆体の質量濃度が20質量%である溶液にピリジン30mmolを徐々に加え、続いて無水酢酸20mmolを除々に加え、室温で24時間攪拌しながら化学イミド化反応を行い微黄色のポリエステルイミド溶液を得た。このポリエステルイミド溶液をホモジナイザーで攪拌された1Lのメタノール中に滴下を行い、得られた析出物をろ過・乾燥することにより粉末化した。この粉末を200℃の真空乾燥機で5時間乾燥することにより、ポリエステルイミド1.86gを得た。得られたポリエステルイミド前駆体のGPC測定による重量平均分子量は179×103であった。
膜物性は、ガラス転移温度(Tg)が188℃、20μmに補正した400nmにおける透過率(T)は81%であった。いずれも特許文献3の実施例に開示される、エステル結合が芳香環で結合したフルオレン含有酸二無水物とTFMBとをモノマーとするポリイミドから得られるフィルムの20μm厚換算の透過率(44%)、およびこのポリイミドにおいてジアミンが脂環ジアミンCHDAである場合のフィルムの20μm厚換算の透過率(70%)に比べて、透明性が高いポリイミド得られた。また試験管に各種溶媒を1mL入れ、実施例3のポリエステルイミド膜20mgを入れ、溶解性を試験した。加熱が必要な場合、テトラヒドロフランは60℃、その他は100℃に加熱した。表1に結果を示した。各種有機溶媒に対し高い溶解性を示した。
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
++:室温で速やかに溶解
+:加熱溶解後、室温に冷却しても均一性保持
±:加熱溶解後、室温に冷却すると沈殿生成またはゲル化
−:不溶
Claims (8)
- GPC測定による重量平均分子量Mwが50×103以上400×103以下であって、下記の一般式(4)で表される反復単位を含有することを特徴とするポリエステルイミド前駆体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載される一般式(1)〜(3)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類と、ジアミン類とを溶媒中で重合することを特徴とする請求項4に記載されるフルオレニル基含有ポリエステルイミド前駆体の製造方法。
- 請求項4に記載されるフルオレニル基含有ポリエステルイミド前駆体を、加熱し、または脱水剤を用いて、環化反応によりイミド化することを特徴とする請求項5に記載されるフルオレニル基含有ポリエステルイミドの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載される一般式(1)〜(3)で表されるフルオレニル基およびエステル基を含有するテトラカルボン酸類とジアミン類とを、溶媒中180℃以上220℃以下で重合することを特徴とする請求項5に記載されるフルオレニル基含有ポリエステルイミドの製造方法。
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