以上の目的を達成するために、第1発明に係る2線式電磁流量計によれば、被検出流体の流量を検出し、検出された流量の信号伝送と電源供給を共通の2本の伝送線で行う2線式電磁流量計において、被検出流体を通過させる流路を構成する測定管と、前記測定管の流路と直交するように配置された少なくとも一対の励磁コイルと、前記励磁コイルを励磁するための励磁回路と、前記一対の励磁コイル間を結ぶ直線、及び前記測定管の流路と相互に直交するように配置される少なくとも一対の電極と、前記電極で検出された電圧信号を検出可能な検出回路と、2本の伝送線を接続可能な1次側入力と、前記1次側入力と絶縁された2次側出力とを備え、伝送線から供給される直流電力を所定の電力に変換して2次側出力から出力可能な電源部と、前記検出回路で検出された電圧信号に基づいて、前記測定管の流路を通過する被検出流体の流量を演算すると共に、前記励磁回路の駆動状態を制御するための励磁制御信号を前記励磁回路に、及び前記電源部の駆動状態を制御する電源制御信号を前記電源部に、それぞれ出力可能な演算手段と、を備えており、前記電源部の2次側出力に、前記励磁回路、検出回路を接続しており、前記演算手段が、演算された被検出流体の流量に応じて前記電源部の1次側入力に供給される伝送線からの電流量を制御するよう構成できる。これにより、被検出流体の流量に応じて1次側入力電流値を変化させる一方で、1次側出力と絶縁された電源部の2次側出力で励磁回路を駆動するため、励磁回路の駆動電流を1次側入力電流値と個別に調整でき、電源電圧を高くすることなく駆動電流を大きくして検出される電圧信号を高め、高精度な検出を実現できる。
また第2発明に係る2線式電磁流量計によれば、さらに、前記電源部の1次側入力と前記演算手段との間のコモン電位を分離しつつ、前記演算手段から前記電源部への電源制御信号を送出するための制御信号絶縁回路を備え、前記演算手段が、前記電源部の2次側出力に配置されて、前記検出回路の出力側に接続できる。これにより、検出回路で検出されたアナログの電圧信号を絶縁することなく演算手段に入力できるようになり、この間の絶縁回路を不要にできる。また演算手段と励磁回路が同じ2次側出力に配置されるため、演算手段から励磁回路への励磁制御信号も、絶縁回路を介さずに出力でき、この間の絶縁回路も不要となる。この結果、絶縁回路は演算手段と電源部との間にのみ配置すれば足り、必要な電源部数を削減でき、回路構成の簡素化が図られる。
さらに第3発明に係る2線式電磁流量計によれば、前記電源部が、前記演算手段からの電源制御信号に基づいて、伝送線を通電する1次側入力電流値を制御可能な電流出力回路と、前記電流出力回路で制御され該伝送線から供給される1次側入力電流の直流電力を所定の電力に変換して2次側に出力可能なスイッチング回路と、を備えることができる。これにより、スイッチング回路によって1次側と絶縁された2次側の出力電流を任意に設定でき、従来の2線式電磁流量計のように励磁コイルの励磁電流を4mA−20mAの範囲内とする制約を受けることなく、より高い励磁電流を供給できるため、高い電圧信号を得ることが可能となり、正確な流量検出が実現できる。
さらにまた第4発明に係る2線式電磁流量計によれば、前記スイッチング回路がさらに、2次側出力として、前記励磁回路を駆動する駆動電力を生成するための励磁回路用出力と、前記演算手段を駆動する駆動電力を生成するための演算手段用出力とを備えることができる。これにより、励磁回路と演算手段に対して個別に適切な駆動電力を供給でき、同時にこれらとの間の絶縁も図ることができる。
さらにまた第6発明に係る2線式電磁流量計によれば、さらに、前記励磁回路と並列に、前記励磁コイルと直列に接続されて、前記励磁コイルを励起する出力電圧値を調整して供給可能な定電圧電源と、前記定電圧電源で前記励磁回路に励磁電流を供給するために必要な電圧を指示するためのチャージ電荷モニタ回路とを備えることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための2線式電磁流量計を例示するものであって、本発明は2線式電磁流量計を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
図1〜図5に、本発明の実施例1に係る2線式電磁流量計100を示す。これらの図において、図1は2線式電磁流量計の外観斜視図、図2は図1の2線式電磁流量計の正面図、図3は側面図を、図4はブロック図を、図5は2線式電磁流量計100を外部電源に接続した状態の回路図を、それぞれ示す。この電磁流量計は、非接液式の容量式としている。
(外観)
図1〜図3に示す2線式電磁流量計は、2線式電磁流量計本体を構成する本体110と、表示ユニット50とで構成される。この2線式電磁流量計は、本体110の両端面に開口された流路口111から被検出流体を内部に通過させ、その流量を検出して伝送線DLを通じて出力し、また必要に応じて表示ユニット50に表示する。この本体110は金属製とする他、PPS樹脂等で構成してもよい。本体110は、円筒状の端面に鍔状のフランジ部を設けており、パイプ等の配管と螺子で螺号するための螺子孔を開口している。螺合により配管する際の機械的強度を確保するために、好ましくはフランジ部を本体110と金属で一体形成する。またフランジ部に開口された流路口111は、本体110に内蔵される測定管10とで流路を構成する。流路の口径は、流路口111の一端から他端までほぼ同じ直径として、この流路に被検出流体を一方向に流す際の損失を低減する。また本体110の上面には、図1に示すように表示ユニット50を直交させるように固定される。表示ユニットの表示面を、円筒状本体と直交姿勢で固定することで、パイプ状の測定管10に被検出流体を流す側面から、流量を視認し易くできる。
(表示ユニット50)
表示ユニット50は被検出流体の流量等の情報を表示するための部材であり、図4に示すように表示部51として表示画面52を備える。図2の例では表示画面52に数値を表示する数値表示領域として、7セグメント式表示器を使用しており、流量等を数値で表示する。7セグメント式表示器には、検出した流量について、瞬時流量や積算流量等の数値を表示する。この図に示す表示画面52は、7セグメント式表示器を2段備えており、積算流量と設定値とを同時に表示可能としている。ただ、7セグメント式表示器を1画面のみ設けて、積算流量や瞬時流量、設定値等の表示を切り替え可能としてもよい。さらに、LED等を使用したセグメント式の表示画面52に代わって、液晶や有機EL等を使用した表示画面とすることも可能である。このように表示画面52には、流量等の数値のみならず矢印等の図形やイメージを併せて、あるいは択一的に表示させることができ、検出した流量等の情報をユーザに視認しやすい形で表示できる。
また表示ユニット50は、各種の設定を行う設定部80として操作パネル54を備えている。操作パネル54は、各種の設定を行うためのキーやボタンを備えている。図2等の例では、表示画面52に4桁の7セグメント式表示器を2段に配置し、さらに下方に操作パネル54を設け、ボタン類を配置している。この設定部80は、積算流量の初期値や所定のリセット値を設定するためのリセット設定部等として機能する。
なお、この例では表示画面52を表示する表示回路に、検出回路34及び励磁回路24と接続されてこれらを制御する演算手段40を組み込んでいる。ただ、演算手段を個別の部材で構成し、本体110内に組み込むことも可能であることは言うまでもない。また演算手段や検出回路、励磁回路等を統合することも可能である。
さらに表示ユニット50は入力部を備えることもできる。入力部は、温度センサ等の外部機器からの入力信号や、積算値をリセットするためのリセット信号、各種設定情報等を入力するためのインターフェースである。入力部としては、データ通信可能な通信ユニットやI/O端子、メモリカード等が利用できる。また図1の例では、表示ユニット50を本体110と別体としているが、表示ユニット50を本体110に組み込んだ一体型とすることもできる。また、表示ユニットは、本体ケース110と固定する必要はなく、別の位置に表示ユニットを配置する分離型としてもよい。
この2線式電磁流量計は、伝送線DLの電流値をアナログ出力として、測定された瞬時流量や積算流量等に応じたアナログ電流を出力できる。この例では、瞬時流量が0〜定格値の範囲で変化すると、4mA〜20mAの範囲でアナログ電流を出力する。このため出力部として、アナログ電流の電流出力回路16を備える。アナログ電流は電圧信号に比べてノイズ耐性に優れており、これを外部に出力することで、データの記録や解析に利用できる。
(ブロック図)
次に2線式電磁流量計の構成を、図4のブロック図に基づいて説明する。この図に示すように、2線式電磁流量計100は、被検出流体を通過させる測定管10と、ポールピースの周囲に巻回され、測定管10の外部から被検出流体に磁場を印加する励磁コイル22と、励磁コイル22で交番磁界を発生させるための励磁回路24と、励磁コイル22で発生される磁界中を被検出流体が通過して発生される起電力を検出するための電極30と、電極30を介して起電力を検出する検出回路34と、励磁回路24及び検出回路34を駆動制御し、さらに検出された信号から流量を演算するための演算手段40と、演算手段40で演算された流量を表示する表示部51とを備える。この演算手段40は、流量検出手段を構成する本体ケース110で検出された被検出流体の流量に基づき、積算流量を演算可能な流量演算部として機能する。また演算手段40は、流量演算値で演算された瞬時流量を加算あるいは積算して積算流量を保持するためのメモリ部42を備えている。新たに測定された瞬時流量を順次積算流量に加算することで積算流量を更新し、更新された積算値をメモリ部42に随時保持する。さらに必要に応じて、出力信号を出力するための出力部60や、外部からのリセット信号等の各種入力信号を入力するための入力部70、各種設定を行うための設定部80等を設けてもよい。これら演算手段40、表示部51、出力部60、入力部70、設定部80等は、表示ユニット50として、本体ケース110と別部材のユニット状に構成される。
(測定管10)
測定管10は、管状の内部に被検出流体を通過させる絶縁性ライニングである。測定管10には、被検出流体を通過させるパイプとしての優れた耐薬品性能と、コンデンサを構成するための電気的特性とが要求される。機械的特性の面からは、測定管10は、被検出流体の圧力、温度変化による配管の伸縮に基づく引張又は圧縮の力を担う強度母体とし、かつそれに耐える所要の内径、肉厚、長さを有する剛構造部材とする。一方、電気的特性の面からは、測定管10は非磁性の絶縁性部材として誘電体材料であることが望まれる。特に測定管10の周囲に貼付される電極30と被検出流体との静電容量結合を高めS/N比を改善するために、誘電率の高い材質で構成する。このような材質としてはセラミックスやプラスチックや、セラミックスを混入したPPS樹脂で構成できる。特に後者は、比較的強度があり、且つ成形精度と高誘電性を確保できる。PPS樹脂は、耐油、耐薬品性等に優れる。また測定管10の内面には必要に応じてライニングが施工される。
被検出流体は、水や非腐食性の液体であり、所定の導電率を備える液体である。非接液式の電磁流量計は、接液式の電磁流量計と異なり、電極30を被検出流体に直接接触させないため、従来は使用できなかった電極を腐食するような液体であっても測定できる。また、測定管10の材質を選択することによって、様々な被検出流体に対応できる。特に、測定精度等に対応して要求される誘電率と、被検出流体に対する耐性に応じて、測定管10の材質を選択できる。特に本実施の形態に係る2線式電磁流量計は、測定管10を本体110と別部材としているので、測定管10のみを変更し、他の構成部品を共通化して様々な仕様の2線式電磁流量計を構成でき、製品仕込みの上で有利なものとなる。
測定管10は、本体ケース110と別部材とする。これにより、測定管10を構成する部材にはコンデンサに適した材質を選択できる。一方で本体110は、複雑な形状にも容易に成型可能な樹脂が使用できる。このように、測定管10を本体110と別部材とすることにより、各々に適した部材で構成できる。特に測定管を構成する高誘電材料は一般に高価であるため、必要な部分のみを高価な部材で構成し、他の部材はより安価な材質として全体のコストを低減できる。また、2線式電磁流量計に要求される精度等に応じて、適切な材質の測定管10を選定できる。さらに、口径の異なる測定管に交換することもできる。このように、2線式電磁流量計の検出目的や用途、求められる仕様やコストに応じて、適切な材質の測定管を選定することができる。また、複数の測定管を一の2線式電磁流量計にセット可能とすることで、多品種の2線式電磁流量計の部材を共通化して、安価に提供できる。
(電極30)
測定管10の周囲には電極30が配置される。電極30は、ポリイミド等の絶縁テープに銅箔をコーティングしたものが使用できる。この電極30は、円筒状の測定管10の外周に沿うように湾曲された面状の導電体であり、一対の電極30を測定管10を挟んで対向するように配置する。このように一対の電極30と被検出流体との静電結合により、流体中に発生した起電力を測定管10から外部に取り出して、流量を検出できる。各電極30は、測定管10の外周に隙間なく貼付される。貼付にはテープや接着剤等が利用できる。電極30は、好ましくは可撓性部材で構成することにより、測定管10の外面に隙間なく固定できる。
また面状の導電体である電極の腐食や結露による一対の電極間の導通を防止するために、導電体は絶縁層で被覆することが好ましい。なおこの例では一対の電極を使用したが、2組以上の電極を使用することも可能である。複数組の電極を使用する場合、各電極で検出する電界が磁界と直交するように、電極の位置は調整される。
この2線式電磁流量計100の動作原理を、図4に基づいて説明する。被検出流体を導く測定管10は、測定管10の左右に配置された一対の励磁コイル22により発生し、ポールピースに導かれたほぼ平行な磁界と直交するよう配置されている。また、測定管10の上下面に対向して配置された一対の電極30は、励磁コイル22で発生される磁界及び被検出流体の通過方向と直交する方向に発生する起電力を検出するよう配置されている。この構成において、測定管10内に被検出流体が流れる、すなわち磁界と直交する方向に導電性流体が移動すると、ファラデーの電磁誘導の法則に従い被検出流体中には、その移動速度(流速)に比例した起電力が発生する。このとき起電力はファラデーの法則により磁束密度、流速及び測定管径の積に比例する。電極30は、誘導体からなる測定管10の管壁を介して被検出流体と対向し、静電容量結合されており、流体内部に発生した起電力を電気的に取り出す働きをする。取り出された起電力は、演算手段40に伝達され、流量信号に変換されて表示部51に表示され、あるいは電気信号として出力される。
この2線式電磁流量計は、一対の励磁コイル22を離間して配置し、励磁回路24で励磁コイル22に通電して励磁して、励磁コイル間に磁界を生じさせる。これにより、測定管10に対して、被検出流体として導電率を有する液体を流すと、液体の運動方向と直交する方向に起電力を生じさせる。なお図4の例では、励磁コイル22を2つ使用し、測定管10の左右に設けているが、励磁コイルを一とすることもできる。
出力部60は積算値出力部や瞬時値出力部として機能できる。なお出力部は、上記の制御出力、アナログ出力、タイムアウト出力のいずれかを省略したり、あるいはさらに別の出力端子を備えてもよい。さらに、各出力端子の出力状態を示す出力表示灯を設けてもよい。
次に図5に基づいて、2線式電磁流量計の動作の詳細について説明する。この図に示す2線式電磁流量計100は、測定管10と、電極30と、励磁コイル22と、励磁コイル22を励磁するための励磁回路24と、電極30で検出されるアナログ信号を検出する検出回路34と、検出回路34で検出されたアナログ信号をA/D変換するA/D変換器38と、演算手段40と、制御信号絶縁回路12と、電源部14とを備える。上述した部材と同一名称の部材は基本的に同一のものが利用できるため、詳細説明を省略する。また励磁コイル22は、説明を簡略化するため一のみ図示しているが、上記と同様1対もしくはそれ以上を使用できることは言うまでもない。
電源部14の変圧器20の2次側出力には、電源部14からの電荷をチャージするチャージ手段としてチャージコンデンサCCが並列に接続されている。さらに電源部14は、演算手段40からの電源制御信号に基づいて、伝送線DLを通電する1次側入力電流値(出力電流IO)を制御可能な電流出力回路16と、電流出力回路16で制御され該伝送線DLから供給される1次側入力電流の直流電力を所定の電力に変換して2次側に出力可能なスイッチング回路18とを備える。これにより、スイッチング回路18によって1次側と絶縁された2次側の出力電流IOを任意に設定でき、従来の2線式電磁流量計のように励磁コイル22の励磁電流IEを出力電流IO以下とする制約を受けることなく、より高い励磁電流IEを供給できるため、高い電圧信号を得ることが可能となり、正確な流量検出が実現できる。
(電源部14)
電源部14は、外部電源に対する2本の伝送線DLと接続されている。この電源部14は、2本の伝送線DLを接続可能な1次側入力と、1次側入力と絶縁された2次側出力とを備える。電源部14は、伝送線DLから供給される直流電力を所定の電力に変換して2次側出力から出力する。電源部14の2次側出力には、励磁回路24、検出回路34等が接続される。すなわち、電源部14により励磁回路24や検出回路34は、1次側入力側に配置された電流出力回路16と絶縁されており、電源部14で絶縁回路を兼用できる。
2本の伝送線DLは、図5に示すようにHIGH側の第1電源ラインと、LOW側の第1コモンラインとの対で構成される。2線式とすることで、数kmといった遠距離に電磁流量計を配置することも可能となる。
電源部14の2次側には、被検出流体を通過させる測定管10と、ポールピースの周囲に巻回され、測定管10の外部から被検出流体に磁場を印加する励磁コイル22と、励磁コイル22で交番磁界を発生させるための励磁回路24と、励磁コイル22で発生される磁界中を被検出流体が通過して発生される起電力を検出するための電極30と、電極30を介して起電力を検出する検出回路34と、検出回路34で得られたアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器38と、A/D変換器38のデジタル信号を入力して、検出された信号から流量に対応する1次側入力電流値となるよう、電源部14に対して電源制御信号を送出するための演算手段40が配置される。
電源部14は、外部電源から伝送線DLを介して供給される電力をDC/DC変換する絶縁型スイッチング電源であり、出力電流検出抵抗Roと、電流出力回路16と、スイッチング回路18で構成される。電流出力回路16は、演算手段40からの電源制御信号に基づいて、伝送線DLを通電する1次側入力電流値を制御する。またスイッチング回路18は、スイッチング制御回路19と変圧器20を含み、電流出力回路16で制御され該伝送線DLから供給される1次側入力電流から得られる直流電圧を所定の電圧にDC/DC変換回路17でDC/DC変換して、変圧器20の2次側に出力する。これにより、2次側に接続された励磁回路24および演算手段40、検出回路34等の駆動電力が供給される。特に図5に示す電源部14は、変圧器20の2次側出力として、励磁回路24と接続する励磁回路用出力と、演算手段40と接続する演算手段用出力とを個別に設けている。これにより、1次側巻き線に対する巻数を調整し、励磁回路24及び演算手段40の駆動に必要な電力に個別に調整できる。ただ、2次側出力を共通として、励磁回路24と演算手段40とを回路上で並列に接続して駆動させる構成としてもよい。この場合は、同一の第2電源ラインに励磁回路24と演算手段40を接続するため、同じ電位で両部材が駆動できるような設計としたり、抵抗で分圧する等の方法が利用できる。
またDC/DC変換回路17を使用して必要最小限度の出力電圧を生成し、電力損失の極めて少ない励磁回路24を構成できる。特にDC/DC変換回路17は、スイッチング動作する降圧コンバータであり、電圧変換する際の電力損失が少なく、電力損失を極減できる利点が得られる。
この構成は、従来の2線式電磁流量計のように1次側にCPU等の演算手段40や励磁回路24、アナログ信号増幅回路等の検出回路34を配置する構成と異なり、これらを2次側、すなわち入力電流と絶縁された励磁コイル22側に配置することで、様々な利点を有する。具体的には、アナログ信号増幅回路で検出された起電力を、絶縁することなく流量アナログ信号としてそのままCPUに入力できる。よって、従来は必要とされていたこの間の絶縁回路が不要となり、また絶縁によって生じていた信号化けの問題も回避できる。
また、従来より必要であったアナログ信号検出回路用の絶縁電源と、励磁回路用の電源とを一体に統合した電源部14とすることで、電源回路の個数を低減できる。換言すると、本質的に必要となるアナログ信号増幅回路用の絶縁電源を励磁回路用にも共用することで、電源回路数を少なくした構成に簡素化できる。
さらに励磁回路24とCPUとの間でも絶縁が不要となり、励磁回路24の駆動制御を行う励磁制御信号をCPUから直接出力できる。よって、この構成では絶縁回路は、CPUと電源部14の電流出力回路16との間でコモン電位(グラウンド)を分離する制御信号絶縁回路12のみで足りる。このように絶縁回路の数を低減できる点においても、回路構成を一層簡素化できる。
さらにまた、図5の構成で変圧器20の1次側に存在するのは、スイッチング回路18と電流出力回路16のみであるため、入力側の外部電源に対して幅広い範囲の電源電圧に対応できる利点も得られる。例えば、外部電源の電圧が低い場合でも、スイッチング回路18のデューティ比を大きくしたり、変圧器20の巻き数を大きくすることで2次側の電圧を昇圧できる。よって、例えば励磁回路24の駆動に要する電圧が外部電源電圧よりも高いような、従来では動作させることが困難であった場合でも、本実施の形態によれば絶縁型スイッチング電源によって昇圧して動作させることができる。
加えて、間欠励磁方式で励磁する場合の回路構成が簡単になる利点も得られる。すなわち、1次側に励磁回路を配置した従来の2線式電磁流量計で励磁電流を増やそうとすれば、連続励磁でなく間欠励磁を行うことが考えられる。この場合は、流量に応じた1次側入力電流値の変動が大きいため、励磁回路での消費電流の変動も大きくなり、出力電流を一定に保つために大容量のコンデンサが必要になったり、電流出力回路の負担が大きくなる問題があった。これに対して図5の構成では、1次側に消費電流の変動が大きい回路がないため、内部の消費電力が変動しても出力電流IOの変動が大きくなったり、出力電流IOの変動を抑えるために大容量のコンデンサを設ける必要がない。よって2次側平滑化部分に大容量のチャージコンデンサCCを用い、そのチャージ電荷量をモニタすることで、励磁に必要な電荷が蓄えられたタイミングで励磁を行い、無駄のない高効率な間欠励磁が可能となる(詳細は後述)。このように、励磁電流を増やすために間欠励磁方式の回路とする場合の回路構成を非常に簡素化でき、電流を無駄にする部分がなく高効率にできる利点が得られる。
(電流出力回路16)
電流出力回路16は、図5に示すように2本の伝送線DLの間、すなわちHIGH側の第1電源ラインとLOW側の第1コモンラインとの間で、スイッチング回路18と並列に接続されている。このような電流出力回路16の回路例を、図6に示す。この図に示す電流出力回路16は、ローパスフィルタLPFと、演算増幅器162と、加算器164と、出力電流調整回路166を直列に接続している。また出力電流調整回路166は演算増幅器167とトランジスタ168、抵抗で構成され、演算増幅器167の+入力端子をグランドとし、出力をトランジスタ168のベース側に接続している。トランジスタ168のエミッタを第1コモンラインに接地し、第1コモンラインで出力電流検出抵抗Roと接続される。出力電流検出抵抗Roは、第1コモンラインを通じて外部電源に返される出力電流IOを出力電流検出電圧Vo(負電圧)に変換する。よってVo=−IORoの関係が成立する。
この電流出力回路16の動作を図6に基づいて説明する。まず演算手段(図6に図示せず)が電源制御信号として出力電流指示信号をPWM方式で、制御信号絶縁回路12を介して電流出力回路16に送る。電流出力回路16は、そのPWM信号をローパスフィルタLPFと演算増幅器162で出力電流指示電圧Vpに変換する。さらに加算器164と出力電流調整回路166で、出力電流IOを指示された電流値に調整する。ここでは、加算器164と出力電流調整回路166はVp/R1+Vo/R2=0となるように動作する。上式において、Vo=−IoRoであるから、Io=−Vo/Ro={R2/(RoR1)}×Vpとなる。
(スイッチング回路18)
図5の電源部14のスイッチング回路18は、スイッチング制御回路19と変圧器20で構成される。スイッチング制御回路19の回路例を図7に示す。この図に示すスイッチング制御回路19は、変圧器20の1次側に並列に接続された平滑コンデンサCS1と、平滑コンデンサCS1と変圧器20の間で第1コモンライン側に接続されたスイッチング素子181と、スイッチング素子181に接続された発振回路182とを備える。スイッチング素子181にはパワーMOSFET等が使用できる。発振回路182は、演算増幅器と抵抗とコンデンサで構成される。このスイッチング回路18は発振回路182で駆動パルスを生成し、この駆動パルスをトランジスタTrのゲートに入力してON/OFFスイッチングすることで変圧器20を駆動し、2次側の出力を調整する。このようにスイッチング制御回路19でスイッチング素子181を駆動して電力をON/OFF制御し、出力を安定化させる電源部14は、小型、軽量に構成できる。
(測定管10)
測定管10は被検出流体を通過させる流路を構成する。この測定管10の流路と直交するように、一対の励磁コイル22及び電極30が各々配置される。励磁コイル22と電極30は、間に測定管10を挟むように一対の励磁コイル22及び電極30が互いに対向姿勢で固定される。また電極30は、測定管10の外部に固定され、被検出流体と隔離されて接触しない。これら励磁コイル22、電極30、測定管10とが相互に直交するように配置されることで、上述の通り起電力が発生し流量の検出が可能となる。検出回路34は、電極30で検出された起電力の電圧信号を検出する。
(演算手段40)
演算手段40は、検出回路34で検出された電圧信号に基づいて、測定管10の流路を通過する被検出流体の流量を演算する。また演算手段40は、励磁回路24の駆動状態を制御するための励磁制御信号を励磁回路24に出力し、さらに電源部14の駆動状態を制御する電源制御信号を電源部14に出力する。これらの信号によって演算手段40は、演算された被検出流体の流量に応じて電源部14の1次側入力に供給される伝送線DLからの電流量を制御する。この演算手段40は、CPU等で構成される。
(制御信号絶縁回路12)
制御信号絶縁回路12は、1次側入力と演算手段40との間のコモン電位を分離しつつ、演算手段40から電源部14への電源制御信号を送出する。一方で演算手段40が、電源部14の2次側出力に配置されているので、検出回路34の出力側に接続できる。これにより、励磁回路24と演算手段40を2次側出力に配置して、伝送線DLのある1次側入力と絶縁できるため、従来必要であった検出回路34と演算手段40との間の絶縁回路を不要にできる。また演算手段40を電源部14とコモン電位を絶縁した状態で、信頼性高く演算手段40から電源部14を制御できる。さらに絶縁すべき箇所を低減できるので、必要な絶縁回路の数も低減できる。
(検出回路34)
図5に示す検出回路34は、電極30で検出される電圧信号を増幅するアナログ信号増幅回路で構成される。アナログ信号増幅回路は、各電極30に各々接続されるバッファ回路341と、バッファ回路341の出力を入力する差動増幅器342と、差動増幅器342の出力を入力する増幅器343を備える。バッファ回路341は、電極30で検出された信号を増幅するプリアンプを構成する。2線式電磁流量計においては、電極30と被検出流体との静電容量結合が一般に数十pF程度と小さいため、電気信号を通すためのフィルタを設ける際の抵抗のインピーダンスが極めて高くなる。このため、各電極30にバッファ回路341を接続してインピーダンスを下げている。各電極30で検出された電気信号は、バッファ回路341を介して差動増幅器342の入力に各々入力され、差分を増幅器343で増幅された後、A/D変換器38を介して演算手段40に出力される。なおアナログ信号増幅回路には、演算手段40から周期的に送られるリセット信号を受けて検出された電圧をリセットするための回路として、周期性リセット回路を必要に応じて設けてもよい。
(励磁回路24)
励磁コイル22を励磁して交番磁界を発生させるためには、励磁回路24を利用する。電源部14は、励磁回路24を駆動するための定電圧電源として、低電圧VLと高電圧VHを備えている。励磁回路24は、励磁コイル22に励磁極性切替回路を介して、定電圧電源の低電圧VL、高電圧VHと励磁定電流回路29(後述)を接続している。低電圧VL、高電圧VHから供給される直流定電圧により、励磁定電流回路29で定電流を発生させると共に、ブリッジ状にスイッチを接続した励磁極性切替回路でスイッチングして交流化し、励磁コイル22に交流電流を通電する。
励磁回路24は、電源部14の2次側出力の第2電源ラインに接続される。図8に、励磁回路24の一例を示す。この図に示す励磁回路24は、ブリッジ状に接続されたトランジスタTr1〜4と、ブリッジの中央に接続された励磁コイル22と、励磁コイル22に通電されるコイル電流ILを一定値とするための励磁定電流回路29とを備える。ここで、コイル電流ILとは、励磁コイル22に通電される電流であって交番電流であり、励磁電流IEとは励磁コイル22からブリッジ回路を経て励磁定電流回路29に通電される電流であり、直流電流である。すなわち励磁電流IEはコイル電流ILの絶対値と等しい。なお図8では、説明のため励磁コイル22はブリッジの中央に配置しているが、実際の装置では図5に示すように励磁コイル22は測定管10の近傍に配置される。
(励磁定電流回路29)
励磁定電流回路29は、トランジスタTr5と、演算増幅器A2と、基準電圧Vref1と、励磁電流検出抵抗REで構成される。演算増幅器A2の反転入力(−)は励磁電流検出抵抗REと、非反転入力(+)は基準電圧Vref1と、それぞれ接続され、また出力側はトランジスタTr5のゲートに入力されている。この励磁定電流回路29では、励磁電流検出抵抗REで励磁電流IEを検出し、これを励磁電流検出電圧VREに変換して演算増幅器A2の反転入力(−)に入力している。この励磁電流検出電圧VREが基準電圧Vref1と等しくなるよう、演算増幅器A2がトランジスタTr5を制御する。すなわち励磁電流検出電圧VREと基準電圧Vref1との差分がトランジスタTr5のゲートに入力され、トランジスタTr5の出力を調整することで、励磁電流IEを調整するフィードバック制御を行っている。またブリッジトランジスタTr1〜Tr4のゲートは、それぞれ演算手段40に接続されており(図8に図示せず)、演算手段40から送られる励磁制御信号として励磁タイミング信号SETにより、各ブリッジトランジスタTr1〜Tr4がON/OFF駆動される。演算手段40は、励磁タイミング信号SETによりブリッジトランジスタTr1〜Tr4で励磁コイル22にコイル電流ILを流すタイミングを制御する。そして励磁電流検出電圧VREが基準電圧Vref1と等しくなるよう、演算増幅器A2がトランジスタTr5を制御することで、励磁電流IEを定電流とする。
図9に、励磁コイル22に流れるコイル電流IL及び励磁電流IEの波形パターンの一例を示す。図9において(a)はブリッジトランジスタTr1、Tr4、(b)はブリッジトランジスタTr2、Tr3、(c)はコイル電流IL、(d)は励磁電流IEの波形パターンをそれぞれ示している。この図に示すように、ブリッジ状に配置した図8のブリッジトランジスタTr1、Tr4及びTr2、Tr3を交互にON/OFFすることで、励磁コイル22を流れるコイル電流ILの向きを図8に示すA、Bの方向に変化させ、交番磁界を生成できる。これにより直流の励磁電流IEから交流のコイル電流ILを得ることができる。
なお一般に、励磁コイルには電圧を印加しても直ちにはコイル電流が流れず、これが定電流域に達するまでにある程度の時間を要する。よって、図9に示すように、コイル電流ILの向きを切り替える際にはなだらかな電流変化が生じる。この部分を改善するためには、励磁コイル22にコイル電流ILを通電する際には励磁コイル22に高電圧VHを印加し、定電流になった後には低電圧VLに切り替えるよう、図8に示す第2電源ラインを切替制御することが好ましい(詳細は後述)。
(実施例2)
以上の図5では、電源部14の2次側出力に励磁回路24と演算手段40を並列に接続する例を説明した。ただ、この構成に限られず、2次側に配置した励磁回路24及びその他の回路は、直列接続とすることもできる。このような回路例を、実施例2に係る2線式電磁流量計200として図10に示す。この図に示す2線式電磁流量計200も、1次側は図5と同様の構成が利用できる。また2次側の部材も、図5と同様の部材が利用できるため、これらの詳細説明を省略する。図10の2線式電磁流量計200は、電源部14の2次側出力の第2電源ラインである励磁回路電源ラインに励磁回路24を接続する。さらに励磁回路24と直列に演算手段40及びA/D変換器38を接続した上で、2次側出力の回路コモンラインと接続している。また演算手段40とA/D変換器38とは並列とし、励磁回路24を経て励磁回路コモンラインと接続される。よって励磁回路コモンラインが、演算手段40やA/D変換器38等、励磁回路以外の回路電源ラインとなる。
ただこの構成では、演算手段40等励磁回路以外の回路コモンラインと、励磁回路コモンラインが異なることになる。このため、演算手段40から励磁回路24に送出する励磁制御信号すなわち励磁タイミング信号SETのレベルが異なるため、これらの間を回路上絶縁する必要がある。このため、励磁回路24と演算手段40との間の励磁タイミング信号線に、励磁信号絶縁回路12Bを設けている。
(電源部14)
次に、電源部14の構成例を図11に基づいて説明する。この図に示す2線式電磁流量計は、電源部14の2次側出力の構成を簡素化して図示している。ここでは絶縁型スイッチング電源として、DC/DC変換回路17と、電流出力回路16が統合されており、2次側出力と出力電流IOが調整される。この図に示す電源部14は、スイッチング素子181と、スイッチング素子181のON/OFFを制御する発振回路182と、出力電流検出抵抗Roと、変圧器20と、平滑コンデンサCS1を備える。この電源部14は、スイッチング素子181を用いてスイッチング動作を行い、これを平滑コンデンサCS1で平滑化する。スイッチング素子181はMOSFET等のパワートランジスタTrが利用できる。発振回路182は、発振周波数とデューティを調整して、スイッチング素子181のスイッチングパターンを変化させることができる。発振回路182でスイッチング素子181のスイッチングパターンを変化させることで、出力電流IOを調節する。
この電源部14は、従来のように回路内部で消費し切れない余剰電流をトランジスタに通電して熱として消費することで帳尻を合わせる構成としない。これに代わって、指示された出力電流IOになるよう、発振回路182がトランジスタTrのデューティを調整し、スイッチング電源の2次側に送出する電力を可変にすることで、出力電流IOを調整している。これにより、電源電圧、出力電流IOの変動に強く、広い電源電圧・出力電流で高効率に維持できる。特に、どのような電源電圧あるいは出力電流であっても、最大限スイッチング電源で2次側に電力を送出するようにDC/DC変換させるため、余分な電力等が発生せず、熱として消費させる必要がない利点が得られる。また電源電圧が上昇した場合であっても、その上昇分の電力を無駄に消費することなく内部回路で有効活用できる利点は、他の回路形式では得られない優れた特長である。また2線式電磁流量計の場合、最も消費電力が大きいのは励磁回路であるため、励磁電流を一定にして間欠励磁を行う場合(後述)や、励磁電流を動的に変化させる場合の回路構成においても、高効率な動作が実現できる。
なお、図11の例では変圧器を用いた絶縁型スイッチング電源を説明したが、これに限定されるものでなく、例えば変圧器を使用しない非絶縁型の電源でも利用できる。このような2線式電磁流量計を変形例として図12に示す。この図に示す2線式電磁流量計の電源部は、平滑コンデンサCS1と、スイッチング素子181Bと、コイルLと、チャージコンデンサCCと、発振回路182Bとを備える。この2線式電磁流量計の回路動作は、上述した絶縁型スイッチング電源とほぼ同じであり、出力電流IOが出力電流指示信号で指示された値になるよう発振回路182Bを動作させることで、出力電流IOを調整する。
次に、発振回路182を用いて、トランジスタTrのスイッチング速度を変化させる様子を、図13〜図16の波形パターンに基づいて説明する。これらの図において、図13は出力電流IOを小さくする場合の動作、図14は出力電流IOを大きくする場合の動作、図15は電源電圧が上がった場合の動作、図16は下がった場合の動作を、それぞれ示している。また各図において、VAI3は図11に示すトランジスタTrのゲート電圧、VT1は同じく変圧器20の1次側電圧を、それぞれ示している。
まず、出力電流IOを小さくする場合は、演算手段40から出力される出力電量指示信号としての出力電流指示電圧VIOを低くする。充電時間Tonを一定とした場合、VAI3の休止時間のみが長くなってデューティが相対的に小さくなるため、トランジスタTrのスイッチングデューティが小さくなり、出力電流IOは減少する。
一方、出力電流IOを大きくする場合は、出力電流指示電圧VIOを高くする。すると図14に示すようにVAI3のデューティが大きくなるため、トランジスタTrのスイッチングデューティが大きくなり、出力電流IOは増加する。
このように、変圧器20の1次側をスイッチングするデューティ比を変化させることで、出力電流IOを変化させている。なお、出力電流を変化させる方式はこの構成に限られず、例えばスイッチングの周波数を変化させることでも同様の変化を実現できる。
またスイッチング電源は、外部電源の電源電圧が変動しても安定した出力を維持する安定化電源としても機能する。例えば、図15に示すように電源電圧が上がると、変圧器20の1次側電圧VT1も増加し、振幅値が大きくなる。この場合は、1回の変圧器20のスイッチングで伝送できる電力が増加する。いいかえると、1回の変圧器20のスイッチングでの消費電流が増加することになる。そこで、変圧器20をスイッチングするオフ時間Toffを長くするように発振回路182が働くことで、相対的に電流を低下させ、出力電流IOを指示値に維持することができる。
逆に電源電圧が低下した場合は、1回の変圧器20のスイッチングで伝送できる電力が減少することになる。いいかえると、1回の変圧器20のスイッチングでの消費電流が減少する。このため、図16に示すように変圧器20のスイッチングのオフ時間Toffを短くするように発振回路182が働くことで、相対的にオン時間を長く、すなわち電流値を大きくして、出力電流IOを指示値に維持することができる。
このように、出力電流IOを所望の指示値に維持するように、スイッチングのデューティや周波数を変化させる方式を採用することで、電源電圧が変化した場合でもスイッチング電源がその変化分に対応して出力電流IOを一定に維持することができ、出力の安定化と信頼性の向上が図られる。これによりスイッチング電源は、現在供給されている電源電圧や、現在出力する出力電流IOにおける最大限のスイッチングを行い、常時スイッチング電源の出力側に高効率に電力伝送ができる利点が得られる。
以上のように、検出された流量に応じて決定される出力電流値となるように発振回路182がスイッチングを行っているため、無駄な消費電流を排除して、指示された出力電流値で効率よくスイッチングを行うことができる。このため、従来の方式と比べて、電力を熱に変換して消費させる部分がなく、効率面で優れる。特に2線式の電磁流量計は元来利用可能な電力が少ないため、この特長は有益である。また電源電圧の変動に強い利点も得られ、電源電圧が変動しても、その電源電圧で指示電流値になるようにスイッチングのデューティが調整できる。
(余剰電流調整回路185)
なお、デューティや周波数を可変としたスイッチング電源においても、変動できる消費電力には制限がある。すなわち、スイッチング電源で伝送できる消費電力が上限に達すると、残りの電力を消費することができない。そこで、このような場合にも対応できるよう、余剰の電流を消費するための余剰電流調整回路を付加した2線式電磁流量計の例を、変形例として図17に示す。この2線式電磁流量計は、絶縁型スイッチング電源としてDC/DC変換回路17と、デューティ調整回路を含む発振回路182と、トランジスタTr6と抵抗で構成される余剰電流調整回路185と、トランジスタTr6を制御するトランジスタ制御回路184と、出力電流検出抵抗Roと、制御信号絶縁回路12とを備える。この図に示す2線式電磁流量計は、上述したスイッチング電源に、従来と同様の電流出力回路16Bを併用している。すなわち、スイッチング電源で伝送できる消費電力が上限に達した場合に、余剰分の電流をトランジスタTr6に通電して消費するため余剰電流調整回路185を、変圧器20の1次側に設けている。また余剰電流調整回路185は、スイッチング電源の出力側に配置することもできる。図18に、流量と出力電流IOの関係を示したグラフを示す。この図に示すように、出力電流IOを4mAから20mAの範囲で変化させる際、電流値がスイッチング電源で伝送できる上限までの範囲では、スイッチング電源で伝送し、回路内部で電流を消費する。一方、図18にクロスハッチングで示すスイッチング電源伝送上限以上の範囲では、余剰分の電流を余剰電流調整回路185にて消費する。すなわちトランジスタTr6をONとし、抵抗とトランジスタTr6で余剰分を消費する。
(実施例3 間欠励磁を行う励磁回路)
さらに、スイッチング電源の出力側に、電力可変とした励磁回路を用いることもできる。このような励磁回路を用いた2線式電磁流量計を実施例3として図19に示す。この図に示す2線式電磁流量計300は、DC/DC変換回路17を含む電源部14と、電源部14の2次側に接続される励磁回路24と、励磁回路24に供給するチャージ電圧Vcをモニタするチャージ電荷モニタ回路26と、チャージ電荷モニタ回路26からチャージ完了信号を受信して励磁回路24の励磁開始を指示する励磁タイミング信号SETを励磁回路24に出力するための演算手段40と、演算手段40への電源供給と信号増幅を行うための定電圧電源25と、測定管10と、電極30と、検出回路34と、A/D変換器38とを備える。各部材の内、上述した部材と同一名称の部材は、基本的に上記実施例のものと同様であり、詳細説明を省略する。
この励磁回路24は、励磁コイル22を励磁するためのコイル電流ILをほぼ一定に維持している。従来の電磁流量計のようにコイル電流を変更すると、信号の直線性が悪くなることがあるが、コイル電流を変化させず適切な値で一定に保つことにより、直線性を高め高精度な流量検出が実現できる。また、出力電流値を一定にする場合は、その値の設定が重要となる。すなわち電流値を低く設定すると、該低い電流値で励磁コイルを励磁できるように励磁回路を設計する必要があるが、この設計において出力電流値が高い場合は、励磁回路で消費されない電流が増えて熱等で無駄に消費されることとなる。そこで本実施例においては、電流値を最低の電流値に設定せず、これよりも高い電流値としている。この場合、電流値が低い流量範囲では励磁できないので、この範囲では励磁を一時的に休止する間欠励磁を行っている。具体的な電流値の設定は、流量50%での電流値に設定している(出力電流IOの範囲が4−20mAの場合は12mA)。これにより、50%以上の電流範囲では連続励磁を行え、高精度の流量検出を安定して行える。また50%以下の電流範囲では、上記の通り間欠励磁を行うことで、コイル電流ILを一定値に維持している。さらに、50%以上の領域においても余剰電流を捨てることなく、後述する励磁コイル22の立ち上がり電圧(高電圧VH)の充電に利用して立ち上がり特性を改善している。
間欠励磁の実行中は、励磁の休止期間中に、回路の駆動に必要な電力を超える電力を蓄えておき、励磁可能な電力が得られた時点で休止期間から励磁期間に移行し、励磁を開始する。また励磁開始後、電力が消費されて励磁の継続が不能となった時点で、再び励磁期間から休止期間に移行して放電から充電に切り替える。具体的には、励磁電流がOFFされたタイミングで、電力のチャージコンデンサへのチャージを開始する。図19の例では、励磁回路24と並列に、定電圧電源25とチャージ電荷モニタ回路26とが接続される。定電圧電源25は電源部14から受けた電力をDC/DC変換して、演算手段40を駆動する電圧値に調整して供給する。一方チャージ電荷モニタ回路26は、励磁回路24にコイル電流ILを供給するために必要な電圧をモニタする。具体的には、間欠励磁の際に励磁回路24からチャージ電荷モニタ回路26にチャージ電圧指示信号が指示されると、チャージコンデンサCCへのチャージを開始して、所定の電圧がチャージされた時点で励磁回路24に対しチャージ電圧Vcを供給する。
次に、このような励磁回路を構成した2線式電磁流量計を図20に示す。この図に示す2線式電磁流量計は、電源部14の2次側部分の励磁回路24及びその周辺回路を示している。この2線式電磁流量計は、スイッチング制御回路19と、変圧器20と、チャージ手段として、電源回路の2次側で励磁コイル22を励磁する電圧を生成するチャージコンデンサCCと、チャージコンデンサCCに蓄えられたチャージ電荷をモニタするチャージ電荷モニタ回路26と、チャージ電荷モニタ回路26のモニタ結果に基づいて励磁のタイミングを指示する励磁タイミング信号SETを送出する演算手段40と、励磁回路24として、励磁コイル22と、励磁コイル22の励磁の極性を切り替える励磁極性切替回路28と、励磁コイル22に流れるコイル電流ILを一定に維持する励磁定電流回路29と、残留電圧検出回路180とを備える。
図20の回路では、スイッチング電源である電源部14の2次側に、チャージ電荷モニタ回路26を用いた励磁回路24を備えており、間欠励磁を行う。チャージ電荷モニタ回路26は励磁休止期間中に電源部14からチャージコンデンサCCにチャージされる電荷をモニタし、規定の電力がチャージできた時点で、演算手段40に対しチャージ完了信号CHG_COMPを送出する。演算手段40は、チャージ完了信号CHG_COMPを受領すると、ブリッジ状の励磁極性切替回路28を構成する各ブリッジスイッチSWB1〜SWB4に励磁タイミング信号SETを送り、励磁を開始する。
また一方で演算手段40は、残留電圧検出タイミング信号SRVを残留電圧検出回路180に送出し、励磁コイル22の残留電圧を一定に維持する。励磁定電流回路29には、トランジスタTr5と励磁電流検出抵抗REの電圧降下により残留電圧が生じる。特にトランジスタTr5の電圧降下分は電力損失となって発熱の原因となる。この残留電圧を残留電圧検出回路180で検出して、残留電圧が小さくなるように制御する。
このようにして残留電圧検出回路180は、励磁定電流回路29内の消費電流が少なくなるようにチャージ電圧Vcを指示するチャージ電圧指示信号をチャージ電荷モニタ回路26に送る。チャージ電荷モニタ回路26は、チャージコンデンサCCに蓄えられる電荷量をチャージ電圧Vcでモニタする。また、励磁を開始できると判断するチャージ電圧Vcは、励磁コイル22の残留電圧が一定になるように設定される。これにより、励磁コイル22に応じたチャージ電圧Vcに設定され、どのようなサイズ、特性の励磁コイルを使用しても適切な電力に調整されるため、無駄な電流消費を極減できる。なお、ここでのチャージ電圧Vcは、上述した低電圧VLと同様のものである。
(間欠励磁)
図20の励磁極性切替回路28は、中央の励磁コイル22を挟んでブリッジ状に接続された4つのブリッジスイッチSWB1-B4を備える。励磁コイル22に対して斜めに位置するブリッジスイッチSWB1とSWB4及びSWB2とSWB3の対を一組として同時にON/OFFさせると共に、これらの組を交互にON/OFFすることで、励磁コイル22にコイル電流ILを正逆方向に交互に通電する。なおコイル電流ILの通電方向を区別するために、コイル電流ILが順方向(図8において右向き)の励磁をP側励磁、逆方向の励磁をN側励磁と呼ぶ。ここで図21〜図23に基づいて、連続励磁及び間欠励磁のパターンを説明する。図21は連続励磁のパターンを示しており、交互にP側励磁、N側励磁を繰り返している。一方図22はP側励磁、N側励磁を一組として連続して励磁した後、休止期間を設け、再度P側励磁、N側励磁を行う動作を繰り返している。また間欠励磁はこのパターンに限られず、例えば図23に示すように、P側励磁、N側励磁、P側励磁、N側励磁、P側励磁という奇数回の励磁を連続させた後、休止期間を設け、再開時にはN側励磁から開始している。これにより、励磁の度に最初に行われる励磁の極性を交互に入れ替えることができ、バランス良く励磁を行うことができる。
さらに、図20の回路で励磁コイル22の間欠励磁を行う場合の動作例を、図24の波形パターンに示す。この図において図24(a)は励磁の基本周期を示し、図24(b)は励磁コイル22の両端電圧、図24(c)はコイル電流IL、図24(d)は励磁電流検出電圧VRE、図24(e)は演算手段40が出力する電源切替信号SVH、図24(f)は低電圧VL、図24(g)はチャージ電荷モニタ回路26から出力されるチャージ完了信号CHG_COMP、図24(h)は残留電圧検出タイミング信号SRVの波形を、それぞれ示している。図24(a)は、休止期間を設けた間欠励磁でP側励磁とN側励磁を交互に行うタイミングを示している。図20に示す励磁コイル22を設けた励磁極性切替回路28の4つのブリッジスイッチSWB1-B4の内、SWB1とSWB4、SWB2とSWB3を対にして交互に、図20右下に示す演算手段40からの励磁タイミング信号SETでON/OFFさせることで、励磁コイル22に交流電流を交互に通電し、交番磁界を発生させる。図24では、P側励磁を1回行った後、休止期間を挟んでN側励磁を1回行うという、励磁期間を1回(奇数回)とする励磁を繰り返す例を説明している。
励磁の開始は、演算手段40から励磁タイミング信号SETをブリッジスイッチSWB1〜SWB4に指示して行われる。励磁コイル22への電圧印加時は、コイル電流ILを流れ易くするために高い電圧を印加することが好ましい。よって図24(e)に示すように演算手段40の出力(電源切替信号SVH)をHIGHとし、電源切替スイッチ192をONとして、図24(b)に示すように励磁コイル電源の高電圧VHを印加する。その後励磁コイル22にコイル電流ILが流れ始めると、図24(d)に示すように励磁定電流回路29の励磁電流検出電圧VREが次第に高くなる。そして励磁電流検出電圧VREが所定の閾値を超えると、図24(e)に示すように電源切替信号SVHがOFFとなり、電源切替スイッチ192がOFFとなる結果、図24(b)に示すように低電圧VLに切り替えられて励磁コイル22に印加される。この状態で、コイル電流ILは図24(c)に示すようにほぼ一定値となる。なお図24(c)に示す破線は、当初から低電圧VLを印加した場合にコイル電流ILが増加する様子を示している。破線で示すように励磁コイル22は立ち上がり特性が悪いため、電圧投入時の投入電圧を高くすることで、立ち上がりを急峻にして安定した励磁を短時間で得ることができるようになる。
一方、低電圧VLについては図24(f)に示すように、励磁コイルの立ち上げから通常の定電流に移行した際の励磁コイル残留電圧が所定値となるように、残留電圧検出回路180が調整している。また図24(g)のチャージ電荷モニタ回路26のチャージ完了信号CHG_COMPが演算手段40に入力されると、演算手段40から励磁極性切替回路28に励磁タイミング信号SETが出力されて、図24(a)に示すように励磁が開始される。
以上のように実施例3では、間欠励磁の際の休止期間は一定ではなく、休止期間ができるだけ少なくなるよう回路が判断して励磁を行っている。これにより供給されている電力内で最も効率的な励磁が行える。また、休止期間中には流量演算等が必要ないため、演算手段40を構成するCPUも消費電力を減らし、最低限の動作のみを行う。CPUの消費電力を減らす方法は、クロック分周、メインクロックとは別にサブクロックを持つ等、動作周波数を低くする方法が利用できる。
図20の回路を構成する具体例を、図25に示す。励磁極性切替回路28の各ブリッジスイッチSWB1-B4はブリッジトランジスタTr1〜Tr4で構成され、図示しない演算手段40からの励磁タイミング信号SETでON/OFFを制御される。
(チャージ電荷モニタ回路26)
間欠励磁の際にチャージ電荷モニタ回路26で休止期間を制御する波形パターンを図26に示す。この図において図26(a)は励磁タイミング、図26(b)はチャージ電圧Vc、図26(c)はチャージ完了信号CHG_COMPの波形を、それぞれ示している。励磁期間においては、励磁電流IEが流れると共に、チャージコンデンサCCの放電によりVcは低下する。励磁が終了し休止期間になると、励磁電流IEが停止され、チャージコンデンサCCへのチャージが開始される。そしてVcが上昇して、チャージ電圧指示電圧V2に達すると、図20に示す演算手段40から励磁タイミング信号SETがブリッジスイッチSWB1-B4に出力されて、再び励磁電流IEが励磁コイル22に通電される。このようにしてチャージコンデンサCCに蓄えられた電力は、励磁期間に励磁コイル22で消費され、休止期間に電源部14からチャージされる。
この励磁回路24は、休止期間を一定とせず、チャージ電圧指示電圧V2 及びチャージコンデンサCCの電荷量に応じて動的に変化する。すなわち、指示されたチャージ電圧指示電圧V2 に達した時点で速やかに励磁が開始されるので、チャージコンデンサCCへの充電が早く完了すると、その分だけ休止期間も短くなる。休止期間が短い程、励磁される期間が相対的に長くなり、流量検出の精度向上及び安定動作に貢献できる。
またこの回路では、チャージコンデンサCCへの供給電荷量が十分であれば、間欠励磁に移行することなく連続励磁を維持できる。出力電流IOが増え連続励磁を維持できる場合の動作例を図27に示す。この図も上記図26と同様、(a)は励磁タイミング、(b)はチャージ電圧Vc、(c)はチャージ完了信号CHG_COMPの波形を、それぞれ示している。図27に示すように、チャージコンデンサCCにチャージされる電力が、励磁回路24で消費する電力を上回る場合は、Vcが指示されたチャージ電圧指示電圧V2 を下回らないため、励磁電流IEの通電を維持する連続励磁が可能となる。このため、後述するアンプモードにおいて出力電流を付加することで、間欠励磁を行うことなく連続励磁を維持して、高精度な流量検出が可能となる。
このように間欠励磁のタイミングは、チャージ電荷モニタ回路26が決定する。間欠励磁の周期は、出力電流値で規定することも考えられるが、この方法ではオフセット等を考慮する必要があり、どうしても電流の無駄が生じてしまう。これに対して本実施例では、チャージ電荷モニタ回路26がチャージコンデンサCCに蓄えられた電荷量をモニタし、チャージ可能な電圧になった時点で放電する構成としているため、現実の電荷量に即した動作ができ、電流を無駄に消費しない高効率の駆動が可能となる。またこの方式では、現実の電圧値をモニタするため、励磁コイル等の特性を変更しても、常に実際の電荷量をモニタして励磁可能なタイミングを決定できるので、異なる励磁コイルにも対応できるという利点も得られる。
なお本実施の形態のチャージ電荷モニタ回路26では、励磁コイルの励磁電圧を一のみとしているが、図20、図24等に示したように、励磁電圧を複数設けることもできる。特に励磁コイルは、電圧印加時の立ち上がりが遅いため、電流投入時には通常電圧よりも高い電圧を印加することが好ましい。図28に、コイル立ち上げ時の電圧として通常の低電圧VLよりも高電圧VHを生成するチャージ手段の例を示す。このチャージ手段は、高電圧VHと低電圧VLを供給するよう、電源部14の2次側に巻数の異なる複数のコイルと整流ダイオード、チャージコンデンサCCを各々備えている。この回路では、チャージ電圧Vcの上にさらに第2チャージコンデンサCC2を積み上げて、高電圧VHを得ている。この構成では、高電圧VHがチャージ電圧VCを基準に作られるため、Vcの上下変動と合わせてVHも上下変動する。
次に図25の回路の詳細について、図29の波形パターンを参照しながら説明する。図25に示す励磁コイル22の電源は2種類設けられており、通常電圧(低電圧VL)であるチャージ電圧Vcと、励磁コイル立ち上げ時用の高電圧VHである。通常はチャージ電圧Vcで励磁するが、電圧印加時には、高電圧を印加した方が励磁電流IEの立ち上がりが速くなるため、これらを電源切替スイッチ192で切り替えて使用する。励磁極性切替回路28のブリッジスイッチSWB1-B4を構成するブリッジトランジスタTr1〜Tr4は、Tr1・Tr4とTr2・Tr3を組とし、励磁コイル22に正負両方の励磁電圧を印加することができ、この結果励磁コイル22には交流電流が流れる。図29は連続励磁動作時の波形パターンを示しており、(a)はブリッジトランジスタTr1・Tr4のON/OFFタイミング、(b)はブリッジトランジスタTr2・Tr3のON/OFFタイミング、(c)は励磁コイル22に印加される励磁電圧、(d)は励磁電流IE、(e)は励磁電流検出電圧VRE、(f)は電源切替信号SVH、(h)は残留電圧検出タイミング信号SRVの波形を、それぞれ示している。なお(c)においては、VC、VHはチャージコンデンサの放電であるため、若干傾斜を示す。
(励磁定電流回路29)
励磁定電流回路29は、演算増幅器A2とトランジスタTr5、励磁電流検出抵抗RE、基準電圧Vref1で構成される。演算増幅器A2の非反転入力は基準電圧Vref1と、反転入力は励磁電流検出抵抗REとトランジスタTr5との間と、それぞれ接続され、また出力側はトランジスタTr5と接続される。演算増幅器A2の反転入力(励磁電流検出抵抗REとトランジスタTr5との間)の電圧を励磁電流検出電圧VREとすると、演算増幅器A2はVref1=励磁電流検出電圧VREとなるようにトランジスタTr5を駆動する。その結果、励磁電流IE=VRE(≒Vref1)/R2になるように制御される。
励磁定電流回路29は、励磁電流検出電圧VREが基準電圧Vref1に近づくようにトランジスタTr5を制御している。具体的には、励磁電流検出電圧VREが所定の基準値よりも低いときは、電源切替スイッチ192を構成するトランジスタTr6をONすることで励磁コイル22は高電圧VHで駆動される。逆に高い場合はトランジスタTr6はOFFとなり、励磁コイル22はチャージ電圧Vcで駆動される。
またこれとは逆に、チャージ電荷モニタ回路26から出力するチャージ完了信号CHG_COMPを演算手段40に出力し、演算手段40で励磁タイミング信号SETを発生させる構成に変えて、演算手段を介さずに専用の回路を設けることもできる。ただ、この場合は休止期間中に演算手段の動作周波数を変更する等して消費電力を低減するメリットを享受できない。
(実施例4 アンプモード)
また電磁流量計は、出力電流IOを4−20mAで動作させるノーマルモードの他、測定精度を向上させるために、出力電流を増して動作させるアンプモードに切り替えるアンプモード切替機能を備えることもできる。アンプモードでは、例えば4−20mAの消費電流に20mAの付加電流(ベース電流)を加えた24−40mAで動作させることで、励磁電流IEを増加させ起電力を大きくしてより安定な性能が得られるようになる。この結果、間欠励磁の休止期間を低減或いは排除し、連続励磁で安定した測定を実現できる。
このようなアンプモード切替機能を備える電磁流量計を、実施例4として図30に示す。この図に示す電磁流量計400は、演算手段40がモード切替手段の機能を果たす他は、図19の電磁流量計300とほぼ同じ構成であり、図19と同一の部材については詳細説明を省略する。演算手段40は、ノーマルモードから、出力電流に所定の付加電流を付加して出力するアンプモードへの切替を指示するアンプモード指示信号SAPを、電源部14及び励磁回路24に出力する。電源部14及び励磁回路24は、アンプモード指示信号SAPを受けると、付加電流を付加したアンプモードの動作に移行する。またアンプモードにおいては、出力電流IOを増加させるため、出力電流を受ける外部機器においても、電流増加分に対応して流量を検出する機構が必要となる。例えば、アンプモードに対応した変換器を接続して、電流増加分を加味した流量に適切に変換する。またアンプモード切替手段も、このような変換器等のアンプモード対応型外部機器と接続されたことを自動的に検出して、アンプモードに切り替えるよう構成してもよい。
次にアンプモード切替機能を備える電磁流量計の出力電流調整回路の例を図31に、示す。この図に示す電磁流量計は、絶縁型スイッチング電源であるDC/DC変換回路17と、DC/DC変換回路17のスイッチング制御を行うスイッチング制御回路19として、デューティ調整回路を含む発振回路182と、ローパスフィルタLPFと、演算手段40と、演算手段40からの電源制御信号を絶縁して電流出力回路16に送出する制御信号絶縁回路12と、アンプモード切替手段33を備える演算手段40からのアンプモード指示信号SAPでON/OFFを切り替えられるアンプモード切替スイッチと、アンプモード指示信号SAPを絶縁する指示信号絶縁回路12Cと、分解能を下げることなく付加電流を付加可能な電流出力回路として、付加した消費電流をアンプモード時に有効に活用できるように出力電流Ioとアンプモード時の基準電圧Vaを加算する加算回路31とを備える。加算回路31は、演算増幅器A2と、抵抗Ra、Rb、Rcで構成される。
この演算手段40は、アンプモード切替手段33を兼用しており、アンプモード指示信号SAPで基準電圧を切り替える。具体的には、基準電圧の変化により励磁電流IEと励磁電圧を引き上げて電磁流量計の動作を安定させるよう、2つの制御を切り替えている。すなわち、(A)励磁コイル22の励磁電圧をVHからVLに切りかえるタイミングの閾値を切り替える。(B)励磁電流IEのレンジを切り替えて、付加電流を加えた分励磁電流IEを大きくする。
この電磁流量計は、アンプモード切替手段33からのアンプモード指示信号SAPで、アンプモード切替スイッチのON/OFFを切り替える。ここではアンプモード切替スイッチがOFFのときはノーマルモード、ONのときはアンプモードとなる。アンプモード時に出力電流に対して単純に付加電流を付加する場合、例えば20mAの電流を付加すると、電流範囲が4−20mAから4−40mAに拡大する結果、分解能が相対的に低下してしまう虞がある。そこで、この出力電流調整回路ではアンプモード時には演算手段40が加算回路31にアンプモード指示信号SAPを送出して、電流範囲を24−40mAにシフトさせることで、分解能を維持したまま消費電流のベースアップができるよう構成している。
図31の回路図に基づいて、出力電流調整回路がアンプモード時に付加電流を付加する動作例を説明する。デューティ調整回路に入力される電圧はVpであり、ローパスフィルタLPFを通じてデューティ調整回路のPWM制御に適した電圧としている。一方、デューティ調整回路の電圧Vnは、ノーマルモード時にはアンプモード切替スイッチがOFFであるため、Vn=Rb/Ra×IoRoとなる。一方、アンプモード時にはアンプモード切替スイッチがONとなり、加算回路31が働く結果、Vn=Rb/Ra×IoRo−Rb/Rc×Vaとなる。そして、デューティ調整回路がVp=Vnとなるように作動すると、出力電流IOはノーマルモード時には、Io=Ra/Ro×Vp/Rbアンプモード時には、Io=Ra/Ro×(Vp/Rb+Va/Rc)となる。すなわち、ノーマルモード時の出力電流IOに加え、アンプモード時はアンプモード切替スイッチのON/OFF切り替えにより、付加電流IaddとしてRa/Ro×Va/Rcの電流を加算して通電することができる。この出力電流調整回路により、ノーマルモードとアンプモードとで任意にスパンを設定できるため、デューティ調整回路でのPWM制御の分解能を低下させることなく、4−20mA又は24−40mAの電流出力に切り替え可能とできる。
このように、より安定した動作を要求する場合はアンプモードに設定して動作を行う。なお、得られる信号は20mAの付加電流が付加しているために信号の受け側にて20mAの減算を行う必要がある。あるいは、アンプモード動作に対応した専用の変換器を使用する。このような専用の変換器では、得られた信号を例えば250Ωの抵抗で受けて6−10Vの電圧信号とする。すなわち付加電流20mAに相当する電圧5V分を減算することにより、1−5Vの電圧信号に変換することが可能となる。この1−5Vの電圧信号は通常良く使われる電圧信号であって、処理も容易である。
アンプモードを利用することで、出力電流に関係なく励磁電流をある程度の大きさに確保できる利点が得られる。ノーマルモードでは、例えば流量が小さく出力電流IOが4mAで動作している時でも、30mAの励磁電流IEを間欠的に流すことができる。すなわち、励磁電流はどんな値にでも設定できるが、間欠励磁を行うと一定時間での励磁回数が連続励磁に比べて少なくなるため、アンプモードの使用される頻度が高く、高精度が要求される出力電流値で連続励磁ができるように励磁電流を設定する。ノーマルモードでは、例えば12mA以上の出力電流IOで使われる頻度が高く、高精度が要求される場合、12mAの出力電流IOで連続励磁できるように励磁電流IEを定めるのが望ましい。
(リファレンス励磁機能)
間欠励磁においては、A/D変換の回数をなるべく増やさず、低周波オフセット成分を除去するために、オフセット補償回路を利用し、アナログ回路でオフセット補償を行う。この際、図32に示すようにリファレンスをセットするための半周期励磁を付加するリファレンス設定機能を設けることもできる。これにより、ゼロ点の変動分を除去するオフセット補償が実現できる。従来利用されているオフセット補償回路は、間欠励磁では精度が悪くなるため、そのまま利用できない。これに対して本実施の形態では、奇数回の半周期励磁を行い、最初の1回の励磁でサンプリングを行わずオフセット補償回路のみ駆動させることで、精度を低下させることなくオフセット補償を可能としている。
次に、このようなオフセット補償回路を備える電磁流量計の例を、図33に示す。この図に示す電磁流量計は、励磁コイル22と、励磁回路24と、測定管10と、電極30と、信号増幅回路34Cと、A/D変換器38と、演算手段40とを備える。上述した部材と同一名称の部材については、ほぼ同様の構成が利用でき、詳細説明を省略する。この信号増幅回路34Cは、検出回路の差動増幅器342と差動増幅器343との間に、オフセット補償回路344を備えている。オフセット補償回路344は、スイッチSWO1、SWO2と、抵抗器RO1、RO2と、ホールドコンデンサCO1、CO2で構成される。このようにオフセット補償回路344が2つの充放電経路を有するのは、P側励磁とN側励磁にそれぞれ対応させるためである。差動増幅器343の反転入力には、差動増幅器342の出力VSが接続される。一方、オフセット補償回路344のスイッチSWO1が差動増幅器342の出力VSと、スイッチSWO2が差動増幅器343の非反転入力と、各々接続される。すなわち、オフセット補償回路344は、差動増幅器342の出力VSを入力してホールドコンデンサCO1、CO2のいずれかを充電し、差動増幅器343の非反転入力に対して放電するよう出力する。
演算手段40は、基準電圧切替信号Srefsをオフセット補償回路344に出力し、スイッチSWO1、SWO2を切り替える。スイッチSWO1、SWO2は、図33に示すように一方をホールドコンデンサCO1、他方をホールドコンデンサCO2に接続するようにON/OFFされる。これにより、差動増幅器342の出力がホールドコンデンサCO1、CO2のいずれ一方に充電されて保持されるサンプルホールド回路が構成され、前段の出力VSとの比較結果が差動増幅器343より出力される。
図32の例では、常にP側励磁→N側励磁の順序でサンプリングを行っている。好ましくは、リファレンス励磁は、励磁期間毎に極性を交互に変更する。本実施の形態では、図34に示すように、P側励磁→N側励磁の順で励磁されると、休止期間後に再開される次の励磁では、N側励磁→P側励磁の順に、すなわち開始される励磁の極性が逆になるように設定する。これによって、P側励磁とN側励磁を均等に扱うことができる。このような極性を交互に入れ替える励磁を行うため、半周期励磁は励磁期間で奇数回生じるようにする。この波形パターンの例を図34に示す。図34において(a)は励磁パターンのタイミングを、(b)は演算手段40が出力する基準電圧切替信号Srefsを、(c)は差動増幅器342の出力VS(すなわちオフセット補償回路344の入力)を、(d)は差動増幅器343の反転入力Vrefo(すなわちオフセット補償回路344の出力)を、(e)は差動増幅器343の出力VOSを、(f)は演算手段40が検出信号のサンプリングを行うタイミングを、それぞれ示している。この例では、アナログ回路である差動増幅器342の出力VSに、図34(c)に示すように直線状に傾斜したオフセット分が存在していると想定する。各励磁期間において、最初の半周期励磁がリファレンス励磁であり、図34(f)に示すように信号サンプリングを行わない。また、リファレンス励磁においては、オフセット補償回路344の出力Vrefoは、サンプルホールドのため、オフセット分が生じる。さらにオフセット補償回路344の出力Vrefoは、休止期間においても半周期前の最後の電圧が出力される。この様子を図35の表に示す。休止期間を除いて、PNP→NPN→PNP・・・の励磁期間を順に1,2,3・・・,2n,・・・と表現すると、以下の式で表せる。ここでk番目の状態のときの電圧Vsは、Vs(k)と表現する。
nが奇数のとき、コンデンサC01に充電すると、
VC01(2n)=VC01(2n−1)=Vs(2n−1)
VC02(2n+1)=VC02(2n)=Vs(2n)
Vref0(2n)=VC01(2n)=Vs(2n−1)
Vref0(2n+1)=VC02(2n+1)=Vs(2n)
となる。
このように、Nが偶数、奇数によらず、Vref0(N)=Vs(N−1)となる。よって、
Vos(N)=Gain×(Vs(N)−Vref0(N))=Gain×(Vs(N)−Vs(N−1))
となる。ここで、起電力をEs(N)、オフセット成分をEnとすると、
Vs(N)=Es(N)+En
と表現でき、この場合でも
VoS(N)=Gain×((Es(N)+En)−(Es(N−1)+En))=Es(N)−Es(N−1)
となり、オフセット成分によらず差動増幅が行える。
図34の例では、P側励磁、N側励磁の一組の信号に対して、最初にリファレンス励磁として半周期励磁を付加することで、全体として3回の半周期励磁を励磁期間内に行う。また、P→N→P→Nのように偶数回の纏まった励磁に対して半周期を付加すればよいので、全体で5回や7回等にしてもよい。なお、2n+1回の半周期励磁を行う場合、実際に信号サンプリングを行うのは最初のリファレンス励磁を除いた2n回であるため、1/(2n+1)の割合で信号サンプリングがなされない。よって、効率の面からはnを可能な限り大きく取ることが望ましい。よって、チャージコンデンサCCに蓄えられたチャージ分で可能な最大回数のサンプリングを行うことが好ましい。これにより、P側、N側いずれの側にオフセットが生じていても、効果的に排除できる。
ここで、オフセット補償すなわちアナログリセット動作について図36、図37に基づいて説明する。図36はアナログリセット回路の回路図、図37はこの回路で連続励磁を行った場合の動作波形を、それぞれ示している。また図37の(a)はアナログ検出信号の入力波形、(b)はリセット信号AN_RES_T1、(b)はリセット信号AN_RES_T2の波形を、それぞれ示している。図36の回路は図33と同様、P側励磁専用、N側励磁専用のサンプルホールド回路を各々有しており、各サンプルホールド回路はホールドコンデンサC01、C02を備え、スイッチを介して演算増幅器343の非反転入力と接続される。スイッチはリセット信号によりON/OFFを切り替えられる。図36では、各アナログスイッチはLow状態を示しており、演算増幅器343の非反転入力側にP側が接続されている。ホールドコンデンサC01、C02の充電は信号サンプリング中でも可能であり、P側波形の増幅時には半周期前のN側励磁の値をリファレンスに持ち、N側波形の増幅時には半周期前のP側励磁の値をリファレンスに持つ。この結果、図37に示すように各A/Dサンプリング区間中に一方のホールドコンデンサの充電が行われ、同時に他方のホールドコンデンサの電圧が維持されて、リファレンス動作が可能となる。(変形例)
上記の方法では、信号のサンプリングを行わない期間にも励磁電流を通電しているため、測定に寄与しない無駄な電力を消費しているため効率の面で劣る。そこで図33と同一の回路を使用しつつ、励磁をせずにオフセット補償回路の駆動のみを行うこともできる。図38に、このような駆動方法の一例を示す。図38(a)に示すようにP→N→休止→P→Nの間欠励磁を行う際に、図33の回路を用いて各々半周期前の信号を基準として信号のサンプリングを行うと、図38(b)に示すような出力が得られる。この方法であれば、励磁の回数と信号サンプリングの回数が同じになるため、無駄な励磁電流を無くして低消費で効率の良い励磁が行える。この方法で図34と同様に、P→N→P→休止→N→P→Nのような奇数回の半周期励磁を連続させる場合の波形パターンを、図39に示す。図39においても、(a)は励磁パターンのタイミングを、(b)は演算手段40が出力する基準電圧切替信号Srefsを、(c)は差動増幅器342の出力VSを、(d)は差動増幅器343の反転入力Vrefoを、(e)は差動増幅器343の出力VOSを、(f)は演算手段40が検出信号のサンプリングを行うタイミングを、それぞれ示している。この例でも、アナログ回路である差動増幅器342の出力VSに、図39(c)に示すように直線状に傾斜したオフセット分が存在している場合を想定している。
この方法では、図39(e)及び図38(b)に示すように、奇数回の半周期励磁のうち、最初の1回の信号が半減する。オフセット補償回路344がゲインを有するため、休止期間後の1回目の励磁では半周期前の信号が無いことからゲインが低くなる。そのため、最初の1回の信号のみゲインを持たせた演算を行ったり、あるいは最初の1回の信号をPとNでセットにして演算を行うといった処理を行うことで対応できる。例えば図40(a)に示すように、P→N→P→休止→N→P→Nのような奇数回の半周期励磁を連続させる際、図40(b)に示すように各励磁期間の最初に現れる低いゲインA、Bを合わせて一つの信号とするように演算する。これによって半減するゲインを補償でき、通常の半周期分の励磁信号と同様に扱うことができる。
またオフセット補償方法は上記の方法に限られず、例えばアンプ343の出力電圧をフィードバックして、入力のリファレンスとする方法でもオフセット補償を実現できる。
(変換器)
次に、このような2線式電磁流量計に変換器を接続した2線式電磁流量計システムの例を図41に示す。ここでは2線式電磁流量計と外部直流電源とを回路的に絶縁する絶縁型の変換器を説明する。この図に示す変換器500は、昇圧電源501と、絶縁トランス502と、絶縁型スイッチング制御回路503と、電流検出抵抗504と、電圧減算回路505と、絶縁型のパルストランス506と、出力回路507を備える。この変換器500は、外部直流電源DCから電力線PLを介して受けた電力をスイッチング方式により変換して、伝送線DLを介して2線式電磁流量計400に供給する一方、2線式電磁流量計400で検出した流量に応じた出力電流IOを出力電圧VOに変換して、出力回路から出力線OLを介して1−5Vの電圧信号として出力する。
また、図42に他の2線式電磁流量計システムの例を示す。この変換器600は、通常の電圧出力に加えて、流量の積算パルスを出力する積算パルス警報出力を備える高機能型である。この変換器600は、昇圧スイッチング電源601と、電流検出抵抗604と、電圧減算回路605と、A/Dコンバータ608と、演算部609と、DC/DC変換回路602と、F/V変換回路610と、積算パルス警報出力回路611とを備えている。この変換器600は、図41と同様に2線式電磁流量計400で検出した流量に応じた出力電流IOから、電圧減算回路605で付加電圧分を減算した後、A/Dコンバータ608でA/D変換した信号を演算部609に送出する。演算部609は、検出されたデジタル信号に基づいて流量を演算し、流量に応じて周波数を変化させたデジタル信号をF/V変換回路610及び積算パルス警報出力回路611に出力する。F/V変換回路610は、周波数/電圧変換を行い、流量に応じた1−5Vの電圧信号を出力する。一方で積算パルス警報出力回路611は、流量信号の積算値を、トランジスタ出力として出力する。これにより、流量信号の積算値に基づいて警報出力が得られる。
(アンプモード切替機能)
これらの2線式電磁流量計では、出力電流IOとして4−20mAで動作させるノーマルモード以外に、測定精度を向上させるために、付加電流を付加して動作させるアンプモードに切り替えることができる。ノーマルモードとアンプモードの切替は、アンプモード切替手段33で行う。アンプモード切替手段33はアンプモード指示信号SAPを出力して、ノーマルモードとアンプモードの切替を指示する。図41及び図42の例では、アンプモードにおいて出力電流に20mAの付加電流を加算する。これによりアンプモード時には出力電流IOとして24−40mAで動作できるので、流量が少ない場合でも励磁コイル22の連続励磁が可能となり、安定した流量測定が実現できる。
また変換器は、アンプモードの有無もしくはON/OFFに応じて、出力信号を切り替える。図41の例では、変換器500が電流検出抵抗でアンプモードを検出すると、電圧減算回路で出力電圧を付加電圧分(例えば5V)だけ減算して、パルストランスを介して絶縁した後、出力回路から出力することにより、ノーマルモード時、アンプモード時のいずれにおいても流量に応じた1−5Vの電圧信号が出力される。
このようなアンプモード切替機能を備えた2線式電磁流量計の例を、図43に示す。この図に示す2線式電磁流量計は、外部直流電源DCと一対の伝送線DLで接続されており、伝送線DLの間に電流出力回路16を設けている。電流出力回路16は、演算増幅器A6とトランジスタで構成される。また電流出力回路16は、加減算指示回路41に接続される。加減算指示回路41は、演算増幅器A7と抵抗で構成される。演算増幅器A7の反転入力には、抵抗を介してスイッチSW7が接続される。スイッチSW7は、内部回路のアンプモード切替手段33から出力されるアンプモード指示信号SAPでON/OFFを切り替えられる。また演算増幅器A7の反転入力はさらに別の抵抗を介して内部回路と接続されている。これにより、内部回路から出力される出力電流指示信号SVOが抵抗を介して反転側入力側に入力される。
図43の内部回路は、ノーマルモード時には、流量レンジに合わせて4−20mAを消費させるように設計されている。一方、アンプモード時には、付加電流が付加される。この場合、例えば20mAを付加電流として単純に付加するのであれば、流量レンジに対して4−40mAを消費させる指示回路が必要となり分解能が下がることになる。これに対して、図43の例では、アンプモード時にはアンプモード指示信号SAPによりスイッチSW7がONまたはOFFされ、加減算指示回路41の基準電圧を変化させる。この結果、電流出力回路16の動作が切り替えられて、出力電流IOが4−40mAでなく、24−40mAの範囲で変化するように動作する。このようにして、アンプモード時に加減算指示回路41で出力電流指示信号SVOの分解能を低下させることなく、電流オフセット分を付加できる。
このような構成により、ノーマルモードとアンプモードを切り替えて動作できる。特に励磁電流IEと励磁電圧を引き上げて、電磁流量計として安定した動作が実現される。ユーザが流量測定により安定した動作を要求する場合は、アンプモードに設定する。ただ、この場合に得られる信号には20mAの付加電流が付加している。よって、信号の受け側で20mAの減算を行う必要がある。もしくは、アンプモード動作に対応した専用の変換器(又はディストリビュータ)を使用する。後者の例として、上述した図41では、変換器500は得られた信号を電流検出抵抗(例えば250Ωの抵抗)で受けて、6−10Vの電圧信号とする。ここで付加電流20mAに相当する付加電圧5Vを減算することにより、1−5Vの信号に容易に変換できる。この1−5Vの電圧信号は広く使用されている電圧信号であるため、処理も容易である。
(励磁コントロール機能付き励磁回路)
アンプモード時に利用可能な電流を増やすことで、励磁コイル22の連続励磁を可能にできる。このため、アンプモード時に付加される消費電流を有効に活用できるように、励磁電流と励磁電圧を上げる回路が必要となる。次に、このようなアンプモードに対応して励磁電流、電圧の制御が可能な励磁コントロール機能を備える励磁回路の例を図44に示す。この電磁流量計は、チャージ電荷モニタ回路26と、残留電圧検出回路180と、励磁極性切替回路28と、励磁定電流回路29と、アンプモード切替手段(図示せず)からアンプモード指示信号SAPを受けて、これら残留電圧検出回路180、励磁極性切替回路28、励磁定電流回路29が参照する基準電圧をVref3からVref4に切り替える基準電圧切替回路43とを備える。
この励磁回路24は、電磁流量計の安定動作を実現するために、3つの制御を切り替えている。すなわち、(1)励磁電流IEを切り替える。(2)励磁コイル22の励磁電圧を切りかえるタイミングを切り替える。ここでは、励磁電圧をVHからVLに切りかえるタイミングの閾値を、励磁定電流回路29で切り替えている。(3)励磁コイル22に供給する電圧を上げる。言い換えると、励磁電流IEを変更する。励磁電流IEを変更すると、残留電圧を変更する必要がある。残留電圧を変更した結果、残留電圧検出回路180からチャージ電荷モニタ回路26へのチャージ電圧指示信号Vrefが変わる。チャージ電荷モニタ回路26が制御し、チャージ電圧指示電圧V2が変わる。これによって、コイル電圧VLが上がることになる。このような構成により、アンプモードへの切り替え動作に加え、励磁のタイミングを調整して効率を一層改善できる。
(ダンピング機能)
またこの電磁流量計は、信号を安定化させるためのダンピング機能を備える。電磁流量計で検出される流速が低下すると、値のふらつきが大きくなって測定の安定性が低下する。そこで、ノイズ成分が大きくなる低流速でダンピング量を大きくして、安定性を向上させる。このようにダンピングは、移動平均化処理等における平均化の重み付けであり、ダンピング処理(平均化処理)の概要を図45に示す。図45(a)に示すように、入力値に対するダンピング処理後の出力値は、図45(b)に示すように入力がステップ状に変化したときの、図45(c)に示すように出力が63%に至るまでの時間で定義される。図45(c)に示すように、ダンピングを大きくするほど値の安定性が向上するが、入力の変化に対する応答時間が悪化する。逆に、ダンピングが小さいと入力変化に対する応答時間は早くなるが、値の安定性は低くなり、値のばらつきに対してふれやすくなる。
図46に、このようなダンピング機能を備える電磁流量計の例を示す。この図に示す電磁流量計700は、上述した構成に加え、演算手段がさらにダンピング手段44と、オートモード切替手段45とを備え、さらにこれらの設定を行う設定部80を接続している。ここでダンピング手段44は、設定されたダンピング量に基づいてダンピング演算を行うための部材である。オートモード切替手段45は、マニュアルモードとオートモードとを切り替えるための手段である。設定部80は、ダンピング量やオートモード切替タイミング等の設定を行う部材であり、必要に応じてコンソールや表示モニタ、通信ポート等を備える。その他の部材については、上述した実施例と同様であり、詳細説明を省略する。なお図46の例では、これらダンピング手段44及びオートモード切替手段45は、流量演算を行う演算手段40に統合されている。ただ、演算手段と別個にこれらダンピング手段44及び/又はオートモード切替手段45を設けることも可能であることは言うまでもない。
この電磁流量計は、ダンピング手段44でダンピング処理を行うと共に、オートモード切替手段45でマニュアルモードとオートモードとを切り替え可能としている。ここでマニュアルモードとは、ダンピング手段44がダンピング演算を行うダンピング量を予め定められた所定値に維持するモードであり、一方のオートモードとは、ダンピング手段44がダンピング量を流量に応じて変化させるモードである。これにより電磁流量計は、定められた条件に従ってオートモード切替手段45がマニュアルモードからオートモードに切り替えることで、ダンピング量を固定値から可変値に切り替えて、ダンピング量を大きくすることで安定した測定結果を得ることができる。以下、この処理について詳述する。
(ダンピング演算)
図47、図48に、ダンピング処理の一例を示す。これらの例では、流速の大きい領域では検出信号が安定しているため、ダンピング量を一定としつつ、流量の小さい領域ではダンピング量を大きくして、信号の安定化を図る。図47の例では、ダンピング量を直線的に大きく変化させており、一方の図48の例では、ダンピング量を指数関数的に変化させている。これらの変化は、要求される測定精度や応答性、また信号検出の安定度変化等に応じて設定される。
なおダンピング量は、典型的には平均化処理を行う時間を示すダンピング時定数であり、例えば0.5s〜30sの範囲で可変とする。
また、ダンピング量を可変とする基準、すなわちマニュアルモードからオートモードに切り替えるタイミングは、オートモード切替手段45により決定される。切替の基準としては、ダンピング処理を大きくする必要がある領域であり、流速や出力電流等を利用できる。例えば演算された流速が低流速の範囲(0m/s〜0.5m/s等)では、信号値が小さいため、安定化が必要となる。また出力電流IOのアナログ出力が4〜12mAとなる範囲でも、励磁電流が小さいため検出信号も小さくなり、同様にダンピング処理による安定化が必要となる。また、励磁コイルのコイル電流が連続電流から、休止期間を設けた間欠励磁に切り替わると、同様に信号の安定性が悪くなるため、間欠励磁への切り替えを基準とすることもできる。また、ユーザが指定する任意のタイミングでオートモードとマニュアルモードとを切り替えるように構成してもよい。
このように低速領域になるとオートモードに移行すると共に、流量が低くなるほどダンピング量を大きくすることで、安定性を高めることができる。また逆に流量が大きくなるほどダンピング量を抑えることで、平均化処理を低減して流量変化に対する応答性を高めることができ、測定精度の維持と安定性を向上を両立させることが可能となる。
また図49に、ダンピングの設定を行うイメージを示す。ここでは設定部80のモニタ上に表示される設定画面例を示しており、ユーザがコンソールから各項目の設定を行う。この画面から、ダンピング手段44がダンピング処理を行うダンピング量の設定として、マニュアルモード時のダンピング時定数を0.5s、1.0s、1.5sと切り替えることができる。このような固定値の選択に限られず、ユーザが任意の値を指定可能と構成してもよい。
またオートモード切替手段45の動作として、規定の条件(レベル1、2、3等)から選択する。各レベルは、例えば流速値、励磁電流値等で規定される。またオートモードのOFF、すなわちダンピング量を流速に限られず一定値に維持するマニュアルモードのみの動作を選択することもできる。
また、出力電流IOでオートモードに切り替える場合は、ユーザが指定するスパンに対して規定することもできる。スパンとは、出力電流IOのアナログ出力の最大値である20mAを出力するときの流速または流量である。このように、流量と出力電流値との関係をユーザが割り当てる構成とすれば、オートモード切替の閾値についても同様にユーザが割り当てることができる。図50に、このようなスパンの設定と、流速に対するアナログ出力の変化の例を示す。ここでは、流速0からスパン設定された流速値に向かって、アナログ出力が直線状に4mAから20mAに変化する。このようなスパンの設定は、流速(m/s)、流量(L/min)、質量流量(kg/s)等の単位で設定することができる。また、このようなスパンの設定例を図51に示す。この例でも図49と同様に設定部80の設定画面イメージを示している。ここでは、設定項目としてスパンを選択し、スパンの値を選択肢(例えば流量500L/min、流速2m/s、質量流量100kg/h)から、ユーザが所望の値を選択できる。