以下、本発明のエルボ用カバーを実現する形態を、図面に基づき実施例を用いて説明する。
[実施例1]
[構成]
まず、構成を説明する。図1は、本実施例のエルボ用カバー1(以下、単に「カバー1」という。)の全体斜視図である。カバー1は、断熱材(保温・保冷材)によって包囲された配管の外周を覆うように装着され(取付けられ)、その内部に収容した上記断熱材を保護する保護カバーである。すなわち、建築物や設備において水道水や温水や熱媒体油や冷媒などの流体が流通する各種配管には、その内部の流体が外部(外気)の温度変化の影響を受けないように、断熱材を配管の周囲に設置して保温することが行われている。このような断熱材は、風雨や物理的衝撃に対する耐久性が比較的低い。よって、断熱材が巻き付けられた配管をカバー1で覆うことで、カバー1の内部への水の浸入を抑制する等により断熱材を保護すると共に、断熱材の機能をより効果的に発揮させる。なお、断熱材に防水紙や保護テープを巻いた場合には、防水紙等の上からカバー1で覆うことで、防水紙等が劣化して剥がれてしまうことを回避することができる。以下、断熱材(や防水紙等)が巻き付けられた配管を、配管等7という。配管等7は略円筒状であり、その軸に対して直交する平面で切った断面形状は略円形である。
カバー1は板金(鈑金)製の外装材であり、鉄板、亜鉛鉄板(トタン)、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)等の材料により形成されている。カバー1は、配管等7が屈曲する箇所である屈曲部(エルボ部分)を覆うためのエルボ用カバーであり、配管等7の屈曲部に大まかに倣う形状に作製され、屈曲部に倣う形状に装着される。図2は、配管等7(屈曲部)の軸を含む平面に対して直交する方向からカバー1の全体を見た図である。図3は、屈曲部の内径側からカバー1の全体を見た図である。図4は、配管等7が延び出す開口部22の側から(2つの開口部22が重なるように)カバー1の全体を見た図である。カバー1は、カバー本体2と係合部3を有している。カバー本体2は、配管等7の軸を取り囲む方向(以下、これを周方向という。)に沿って湾曲する曲面状に形成されている。板金製のカバー本体2は、弾性変形可能であるため、配管等7に可及的に密着させることができる。
カバー本体2は、背甲部20と顎部21を備えている。背甲部20は、配管等7(屈曲部)の外径側の周面に沿うように湾曲する海老の背状であり、半円筒状の複数の短冊状の板材201〜205が、配管等7の軸方向につなぎ合わせられることにより形成されている。顎部21は、背甲部20から屈曲部の内径側に向って延び、屈曲部の内径側の周面に沿うように湾曲する2つの板材21a,21bにより形成されている。以下、顎部21の面に平行であって周方向に対し直交する方向を幅方向という。板材21a,21bは、屈曲部の内径側に向かうにつれて幅方向寸法が小さくなる銀杏の葉状ないし扇状である。板材21a,21bは、屈曲部の外径側に配置される基端部がスポット溶接により背甲部20に連結され、屈曲部の内径側に配置される先端部が周方向で互いに対向している。板材201〜205,21a,21bの連結部分にはロウ付けがなされ、隙間が生じないように設けられている。
カバー本体2は、周方向の一部が幅方向に切断された形状であり、一対の板状の端部2a,2bが周方向で対向するように配置される。端部2a,2bは、顎部21(板材21a,21b)の先端側の部分であり、屈曲部の内径側に配置されて互いに係合される。端部2a,2bを含む顎部21は、カバー外側(配管等7から遠ざかる側、ないし配管の径方向外側)に凸の曲面状に形成されている。配管等7への装着前(カバー1が弾性変形する前)の状態で、両端部2a,2b(顎部21)は、装着すべき配管等7に相当する仮想的な円筒の外周よりもカバー外側に延びるように設けられている。また、対向する両端部2a,2bの間には周方向で所定の隙間が設けられている。両端部2a,2bの互いに対向する部分の幅方向寸法は略等しく(W1に)設けられている(図5参照)。カバー1を配管等7に装着するときは、(両端部2a,2bを離間させてカバー本体2を拡開させ、配管等7をカバー本体2の内部に収容する。配管等7(屈曲部)は、その外径側が背甲部20に位置するように、カバー本体2の内部に収容される。その後、両端部2a,2bを接近させてカバー本体2を縮閉させ、両端部2a,2bを係合させる。これにより、カバー本体2が配管等7を覆って収容した状態を維持する。カバー本体2の幅方向寸法が最小となる屈曲部の内径側に端部2a,2bを配置することで、両端部2a,2bを係合するための機構の小型化・簡素化を図ることができる。
カバー1は、両端部2a,2bを係合するための機構(係合部3)として、一方の端部2aの延長部分を折り曲げて溝4を形成し、この溝4内に他方の端部2bの延長部分を差し込んで係止させる、所謂雄雌構造を採用している。以下、溝4が形成される側の上記一方の端部2aを雌側端部といい、上記他方の端部2bを雄側端部という。雌側端部2aに雌側係合部3aが設けられると共に、雄側端部2bに雄側係合部3bが設けられている。図5は、カバー1に対して配管等7の側、すなわちカバー1の内側から両係合部3a,3bを見た図である。図6は、配管等7(屈曲部)の軸に対し直交する平面で両係合部3a,3bを切った断面図であり、図5のI-I視断面を示す。図7は、雌側係合部3aの断面図であり、図5のII-II視断面を示す。配管等7を併せて示す。図8は、カバー1の開口部22の側から、係合した状態の両係合部3a,3bを見た図である。
雌側係合部3aは、板状片31〜33と溝4と雌側突起5とを有している。第1板状片31は、雌側端部2aに連続して雌側端部2aから周方向に延長された板状部分が雌側端部2aに対向するように折り返されることで形成されており、上記折り返された部位から周方向一方側に延びる。第1板状片31は、雌側端部2aに対しカバー内側(配管等7の側)へ折り返されている。これにより、雌側係合部3aが雌側端部2aの内側に配置される。図5に示すように、第1板状片31における周方向他方側で雌側端部2aと連続する接続部分(折り返し部位)の幅方向寸法は、雌側端部2aの周方向他方側の先端部位の幅方向寸法W1と略等しい。第1板状片31の幅方向寸法は、雌側端部2aとの接続部分から周方向一方側に向うにつれて徐々に小さくなり、周方向一方側の端部でW1より若干小さいW2となる。
第2板状片32は、第1板状片31に連続して第1板状片31から周方向に延長された板状部分が、第1板状片31に対向するように、第1板状片31を挟んで雌側端部2aとは反対側(カバー内側)へ折り返されることで形成されており、折り返された部位から周方向他方側に延びる。図5に示すように、上記延長された板状部分(第2板状片32)の幅方向寸法は、第1板状片31の周方向一方側の上記端部の幅方向寸法W2よりも小さいW3に設けられている。なお、第1板状片31には、周方向一方側の上記端部であって幅方向両端縁と第2板状片32との間の角部に、テーパ状の切り欠き310が設けられている。第2板状片32の折り返し部位は、第1板状片31の周方向一方側の上記端部から周方向一方側に若干の距離をおいた位置にある。第2板状片32には、上記折り返し部位に周方向他方側で隣接する部位に湾曲部320が設けられている。図6に示すように、湾曲部320は、上記折り返し部位から周方向他方側に向かうにつれて、第1板状片31との間の距離が徐々に大きくなった後、上記距離が徐々に小さくなるS字状に形成されている。
第2板状片32の周方向他方側の端部が小さく折り返されることで第3板状片33が形成されている。第3板状片33は、第2板状片32に連続して第2板状片32から周方向に延長された板状部分が、第2板状片32に対向するように、第2板状片32を挟んで第1板状片31とは反対側へ折り返されることで形成されており、折り返された部位から周方向一方側に延びる。図5に示すように、第3板状片33の幅方向寸法は、第2板状片32の幅方向寸法W3と略等しい。第3板状片33の上記折り返し部位は、第1板状片31の雌側端部2aとの接続部分(折り返し部位)から周方向一方側に若干の距離をおいた位置にある。雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)および雌側端部2aにはアールが付けられており、これらはカバー外側に向って凸の曲面状に形成されている。
溝4は、対面する第1板状片31と第2板状片32との間の隙間(スリット)である。第1板状片31と第2板状片32との接続部分(折り返し部位)が溝4の底部40を構成している。底部40は閉じられており、穴等が設けられていない。第1板状片31と雌側端部2aとの接続部分(折り返し部位)の側で溝4が開口し、開口部41を構成している。雌側突起5は係合受歯であり、第2板状片32に複数設けられている。雌側突起5は、第2板状片32の面内から溝4内に突出する凸形状である。図5〜図7に示すように、雌側突起5は、第2板状片32がその面内で局所的に幅方向に延びる切れ目(切り込み)500を付けられ、この切れ目500に周方向他方側で隣接する部分が溝4内(カバー外側)に持ち上げられ(押し出され)ることで、形成されている。雌側突起5は、溝4の底部40に向って開口するポケット状(ドーム状)に形成されている。
雌側突起5は、後背部501と当接面502を備えている。後背部501は、第2板状片32の面内から溝4内に突出しつつ周方向に延びるドーム状の部分であり、周方向一方側で開口し周方向他方側が閉じられている。後背部501は、その開口部から周方向他方側に向かうにつれて徐々に第2板状片32からの高さが低くなり、周方向他方側の端で第2板状片32と一体化する。後背部501は、その幅方向中央から幅方向両側に向かうにつれて徐々に上記高さが低くなり、幅方向両端で第2板状片32と一体化する。当接面502は、後背部501の開口部を縁取る端面(端縁)であり、周方向で溝4の底部40に対向する(周方向一方側に面する)。図7に示すように、当接面502は、幅方向における両端部503と、両端部503に連続する中間部504とを有している。中間部504は両端部503よりも溝4内に突出している。このように、雌側突起5は、第2板状片32の一部分を、その厚さが第2板状片32とあまり変わらない状態で、幅方向における両端が(突出元となる)第2板状片32の面に連続すると共に溝4内に突出する山形に変形させることで、形成されている。
雌側突起5は、第2板状片32の面内に複数、周方向に(溝4の開口部41の側から底部40の側に向って)並んで設けられている。すなわち、係合受歯が複数段、形成されている。図5に示すように、これらの雌側突起5は、千鳥状に(斜めに互い違いに入り交じって)配置されている。周方向に並ぶ4つの雌側突起5m1〜5m4からなる列が5つ(mは列を表す自然数1〜5)、幅方向に並んでいる。隣り合う列は、雌側突起5の略1つ分ずつ周方向で互い違いにずれている。雌側突起5は、周方向から見たとき、幅方向に並んで5つ設けられている。また、幅方向に並ぶ3つの雌側突起51n,53n,55nからなる段と、幅方向に並ぶ2つの雌側突起52n,54nからなる段とがそれぞれ4つ(nは段を表す自然数1〜4)、周方向に交互に並んでいる。3つの雌側突起51n,53n,55nからなる段における隣接する2つの雌側突起5の略中間に、周方向で隣接する(2つの雌側突起52n,54nからなる)段の各雌側突起5がそれぞれ位置する。図8に示すように、雌側突起5は、幅方向から見たとき、周方向に並んで8つ(8段)設けられている。
雌側係合部3aを作製する方法の一例としては、板材21aの先端側を雌側係合部3a(第1〜第3板状片31〜33)に必要な長さだけ延長し、適宜成形したものを用意しておく。まず、第3板状片33を折り返す。この状態で、第2板状片32となることが予定されている部位(第2板状片32に相当する部位)に、工具や機械を用いてパンチやプレス加工を施すことによって、複数の雌側突起5を切り起こし(抜き起こし)形成する。上記工具や機械は、第2板状片32(に相当する部位)を両面から挟み込んで切れ目500を入れる歯と、切れ目500に隣接する部分を面の片側一方へ押圧して持ち上げる突起とを有する。その後、第1板状片31と第2板状片32を折り返すことで溝4を形成する。そして、例えばプレス加工を施すことによって、雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)およびこれに対向する雌側端部2aを含む板材21a(顎部21)にアール形状を付け、これらをカバー外側に凸の曲面状に形成する。なお、図5に示すように、第3板状片33に重なって雌側突起5を形成することは妨げられない。また、第3板状片33を折り返す前に雌側突起5を形成してもよい。
雄側係合部3bは、雄側係合片30と雄側突起6を有している。雄側係合片30は、雄側端部2bに連続して雄側端部2bから(雄側端部2bと同様に)周方向一方側に延びるように延長された板状部分であって、溝4内に挿入される(差し込まれる)。雄側係合片30および雄側端部2bを含む板材21b(顎部21)は、ローラによってアールが付けられており、カバー外側に凸の曲面状に形成されている。雄側係合片30の周方向一方側の端部が小さく折り返されることで雄側突起6が形成されている。雄側突起6は係合歯であり、雄側係合片30が溝4内から抜き取られる方向(周方向他方側)で雌側突起5に当接可能に設けられている。すなわち、雄側突起6および雌側突起5は、両係合部3a,3bが互いに離隔する方向へ移動するに際し、互いに当接して係止する当接部である。
雄側突起6は、基端部60と突起部61を有している。基端部60は、雄側係合片30に連続して雄側係合片30から周方向に延長された板状部分が、雄側係合片30に対向するように、雄側係合片30に対しカバー内側すなわち配管等7の側へ折り返されることで、形成されている。基端部60は、上記折り返された部位から(カバー外側へ向って)雄側係合片30に近づくように、周方向他方側に延びる。基端部60は、雄側係合部3bの先端側の幅方向全範囲にわたって設けられている。基端部60の幅方向寸法は、雄側端部2bの周方向一方側の先端部位の幅方向寸法W1と略等しい。
突起部61は、基端部60に連続して基端部60から周方向に延長された板状部分が、基端部60に対し雄側係合片30とは反対の側へ折り曲げられることで、幅方向に延びる直線状に形成されている。突起部61は、上記折り曲げられた部位から(カバー内側へ向って)雄側係合片30から遠ざかるように、周方向他方側に延びる。上記延長された板状部分(突起部61)の幅方向寸法は、雌側突起5の当接面502の幅方向寸法よりも大きく、基端部60の幅方向寸法W1よりも小さく、第2板状片32の幅方向寸法と略等しいW3に設けられている。突起部61の幅方向寸法W3は、第1板状片31の幅方向寸法W1〜W2よりも小さい。突起部61は、幅方向で第2板状片32の幅方向全範囲と略重なるように設けられている。
幅方向から見て周方向に並ぶ8つの雌側突起5の略中間位置で雄側突起6が係合したとき(具体的には周方向他方側から数えて4段目の雌側突起5の当接面502に雄側突起6の突起部61が突き当たったとき)のカバー本体2の寸法が、装着すべき配管等7の寸法に適合するように、折り返し前の板材21a,21b等の寸法が設計され、カバー1が作製される。また、配管等7への装着前(カバー1が弾性変形する前)の状態で、雄側係合部3bの周方向先端が、雌側係合部3aの溝4の開口部41の近傍に位置するように、望ましくは開口部41に周方向で対向するように、位置関係が調整される。
[作用]
次に、作用を説明する。
(顎部21の形状による作用)
雌側係合部3aの溝4内へ雄側係合部3bが挿入されると、雄側突起6(の突起部61)が雌側突起5の後背部501を通過するのに伴って溝4が弾性的に若干拡開し、通過後には弾性力により溝4が縮閉する。雄側突起6(の突起部61)が後背部501を乗り越えた状態でこの雌側突起5の当接面502に当接することにより、両突起5,6が係合する。すなわち、顎部21は、外力や自身の弾性力等により、その先端部(端部2a,2b)がカバー外側へ拡開し、離間しようとする。これにより雌側係合部3aの溝4内から雄側係合部3bが引き抜かれる方向へ移動しようとする。その際、周方向に並ぶ雌側突起5(の当接面502)のいずれかに雄側突起6(の突起部61)が突き当たると、上記移動が制限され、両係合部3a,3bの係合状態が維持される。このように所謂雄雌構造の係合部3を採用したことにより、装着作業がワンタッチで済み、簡単な作業で比較的強固に両端部2a,2bを係合させることができるため、施工性を向上することができる。
端部2a,2bを含む顎部21は、カバー外側に凸の曲面状に湾曲形成されている。よって、顎部21が、例えば平面状である場合に比べ、装着前から配管等7に大まかに倣う形状となっているため、配管等7をカバー本体2の内部に収容した後、両端部2a,2bを接近させて係合させる作業を容易化でき、より容易にカバー本体2と配管等7との密着度を向上することができる。また、配管等7への装着前の状態で、カバー1の両端部2a,2b(顎部21)は、装着すべき配管等7に相当する仮想的な円筒の外周よりもカバー外側に延びるように設けられている。よって、端部2a,2bを含む顎部21に付けるべきアールの曲率を比較的小さくして作製を容易化できる。また、両端部2a,2bが上記円筒の外周よりもカバー内側に延びている場合に比べ、両端部2a,2bを離間させてカバー本体2を拡開させる量や力を低減できるため、配管等7へカバー1を装着する作業を容易化できる。
また、カバー1が弾性変形する前の状態で、対向する両端部2a,2bの間には周方向で所定の隙間が設けられている。よって、上記状態で両端部2a,2bが周方向で互いに重なっていた場合に比べ、配管等7をカバー本体2の内部に収容した後、両端部2a,2bを係合させる際、両端部2a,2bを周方向でいったん離間させてから接近させる必要がなく、(元々周方向で離間している)両端部2a,2bを接近させるだけでよいため、係合作業を容易化できる。また、カバー1が弾性変形する前の状態で、雄側係合部3bの周方向先端が雌側係合部3aの溝4の開口部41の近傍に位置する(望ましくは開口部41に周方向で対向する)ように調整されている。よって、雄側係合部3bを溝4内へ挿入するのに適当な角度を維持することが可能であるため、両係合部3a,3bを係合させる作業をより容易化できる。
配管等7への装着前の状態で、両端部2a,2b(顎部21)が上記円筒の外周よりもカバー外側に延びるように設けられているため、両係合部3a,3bが係合する際、または係合した状態で、顎部21はその弾性力によりカバー外側へ広がろうとする。これに対し、上記のように両突起5,6が突き当たることで、両係合部3a,3bの係合状態が維持される。一方、両係合部3a,3bを係合させる際、または係合させた後、カバー1に作用する外力(風による振動等)や、カバー1自身の弾性力や、寒暖差によるカバー1の膨張・縮小等により、溝4の幅(第1板状片31と第2板状片32との間の距離)を広げる力が雌側係合部3aに作用し、溝4の幅が広がるように雌側係合部3aが変形する場合がある。
すなわち、カバー本体2の一方の端部2aに連続する板状部分を繰り返し折り返すだけで雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32、溝4)を形成することができる。よって、係合部3を容易に作製することができる。この場合、溝4を構成する第1板状片31と第2板状片32のうち、溝4の開口側における第1板状片31の端部はカバー本体2(雌側端部2a)に接続された固定端となっているのに対し、溝4の開口側における第2板状片32の端部はカバー本体2(雌側端部2a)に接続されない自由端となっている。よって、第1板状片31と第2板状片32のうち主に第2板状片32に入力される力が、溝4の幅を広げる方向に作用する。第2板状片32には雄側係合部3bを介して力が作用する。外力やカバー1自身の弾性力等により雄側係合部3bを介して第2板状片32に力が作用した場合、この力のうち溝4の幅を広げる方向の成分により雌側係合部3aが弾性変形または塑性変形すると、溝4の幅が広がる。
上記のように、端部2a,2bを含む顎部21は、カバー外側に凸の曲面状に形成されている。このため、端部2a,2bがカバー外側へ拡開し、離間しようとする力が低減される。よって、雄側係合部3bが溝4内から引き抜かれる方向へ移動しようとする力や、溝4の幅を広げようとする力を低減することができる。これにより雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合を外れにくくすることができる。
(雌側突起5を溝4の内部に設けたことによる作用)
雌側係合部3aにおける第1板状片31と第2板状片32との接続部分、すなわち溝4の底部40、および底部40に隣接する部位は、その弾性力により、第1板状片31と第2板状片32が雄側係合部3bを挟み込むための力を発生する。溝4の幅が広がる方向に第1板状片31と第2板状片32が離間しても、ばね鋏やトングの支点のように、底部40、および底部40に隣接する部位が弾性力を発生することで、第1板状片31と第2板状片32を元の位置に戻そうとする。第1板状片31と第2板状片32が(雌側突起5に係合する)雄側突起6を挟み込む力は、溝4の底部40から上記雄側突起6までの距離L1が短いほど大きくなる。仮に、雌側突起5が、溝4の開口部41に(例えば第2板状片32の周方向先端部分を折り曲げることにより)設けられた場合には、溝4の底部40から(雌側突起5に係合する)雄側突起6までの距離L1が長くなるおそれがある(図12、図13参照)。この場合、この雄側突起6が第1板状片31と第2板状片32とにより挟み込まれる力が弱くなる。これに対し、雌側突起5が、溝4を構成する板状片(第2板状片32)の面内に設けられている。よって、上記距離L1が長くなるおそれを抑制できるため、この雄側突起6が第1板状片31と第2板状片32とにより挟み込まれる力を強くすることができる。よって、雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合が外れにくい。したがって、カバー1による保護機能(信頼性)を向上することができる。
ここで、底部40は閉じられている。すなわち、底部40に穴等が設けられていない。よって、この底部40が発生する挟み込み力の低下が抑制されるため、雄側係合部3bないし雄側突起6が第1板状片31と第2板状片32とにより挟み込まれる力が強くなる。よって、雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合が外れにくい。
第2板状片32における底部40に隣接する部位にS字状の湾曲部320が設けられている。よって、湾曲部320がばねとして機能することで、上記弾性力をより効果的に発生することができる。また、溝4の幅が広がった状態に雌側係合部3aが塑性変形することを抑制することができるため、雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合が外れにくい。第1板状片31と第2板状片32を折り返した状態で雌側端部2aと第1板状片31と第2板状片32とが周方向で重なる部分にプレスによりアールを付ける工程において、底部40に連続したS字状の湾曲部が自然にできる場合がある。これを上記湾曲部320として利用すれば、特別な工程が不要となる。なお、第1板状片31における底部40に隣接する部位に(も)、同様の湾曲部を設けることとしてもよい。
雄側係合部3bを雌側係合部3aの溝4に挿入することを容易にするため、又は加工の都合上、溝4の内部の幅よりも開口部41の幅のほうが大きくなる(溝4がV字状になる)ように元々設けられている場合がある。[特に、雌側突起5が、溝4を構成する第1板状片31または第2板状片32の面内から突出するのではなく、溝4の開口部41に(例えば第2板状片32の周方向先端部分を折り曲げることにより)設けられた場合には、溝4の開口部41の幅は、雄側係合部3bが挿入される分に加え、雌側突起5の分だけ、余計に必要となる。よって、溝4の内部の幅よりも開口部41の幅のほうが大きくなりやすい。]また、上記のように、溝4の幅を広げる力が作用することにより、両係合部3a,3bを係合させた後、溝4の内部の幅よりも開口部41の幅のほうが大きくなるように雌側係合部3aが変形する場合もある。これに対し、雌側突起5が、溝4を構成する板状片(第2板状片32)の面内に設けられている。よって、上記のように溝4の内部の幅よりも開口部41の幅のほうが大きい(溝4がV字状になる)場合でも、雄側突起6は、幅が大きい溝4の開口部41ではなく、幅が小さい溝4の内部で、雌側突起5と係合する。したがって、雄側突起6は、雌側突起5との係合部位において、より確実に、第1板状片31と第2板状片32との間に挟まれるように保持されるため、雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合が外れにくい。
(アール形状による作用)
雄側係合部3b(雄側係合片30)、雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)、および第1板状片31に対向する(周方向で溝4と重なる)雌側端部2aを、カバー外側に凸の曲面状とした(アールを付けた)。よって、カバー1において雄側係合部3bと雌側係合部3aが係合する部位を配管等7の外周面に沿った曲面形状とすることができる。よって、カバー1の密着度をより高めることができる。具体的には、係合部3の近傍を含めたカバー1の開口部22の形状を、カバー1が覆う対象物(配管等7)の外周形状に倣った円筒状にすることが容易となる。また、雌側係合部3aを雌側端部2aに沿った曲面形状とすることで、雄側係合部3bと係合する雌側係合部3aがカバー内側に突出する(膨らむ)ことを抑制することができる。
また、雄側係合部3b(雄側係合片30)と雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)にアールを付けた。よって、例えば雌側係合部3a(第1板状片31または第2板状片32)にアールが付けられていない場合に比べ、雄側係合部3bの溝4内での移動がスムースになる。このように溝4内での雄側係合部3bの移動を案内することにより、カバー1の装着作業を容易化することができる。また、溝4を構成する第1板状片31及び第2板状片32と、溝4に挿入される雄側係合部3bとの密着度が向上する。このため、雄側突起6は、雌側突起5との係合部位において、より確実に、第1板状片31と第2板状片32との間に挟まれる。よって、雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合が外れにくい。また、雄側係合片30と第1,第2板状片32との密着度を高めることで、これらの間の隙間内に外部から水が浸入したり溜まったりすることを抑制できる。また、雄側係合片30と雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)を同じ方向(カバー外側)に凸の曲面状としたことで、雄側係合片30から雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)に入力される力の作用点が分散され、力が逃げやすい。よって、溝4の開口部41が広がりにくくなるため、雌側係合部3aと雄側係合部3bの係合が外れにくくなる。
(雌側突起5を複数設けたことによる作用)
カバー1は板金を加工することで形成されているため、高精度に作製することが困難である。よって、配管等7とカバー1との間の隙間が生じやすい。隙間が大きくなると、断熱材による保温の効果を低下させてしまう。これに対し、係合用の突起を周方向(雄側係合部3bが溝4へ挿入され又は抜き取られる方向)に複数設けて多段化した。具体的には、周方向に複数並ぶ雌側突起5のいずれに雄側突起6が係合するかに応じて、雌側係合部3aに対する雄側係合部3bの係合位置(雌側端部2aに対する雄側端部2bの周方向位置)を任意に調節することができる。よって、事後的に(カバー1の作製後、装着時に)、カバー1が覆う対象(配管等7)の寸法に合わせてカバー本体2の寸法を適宜調整することが可能となる。これにより、寸法精度に余裕を持たせてカバー1を安価に作製できると共に、カバー本体2を配管等7の外周面に接近させて密着度を高め、配管等7をより高品質に覆って、カバー1による保護機能を向上することができる。
なお、カバー1は、配管等7の直線部(直管部分)を覆うための直管用カバー(周方向の一部が切れて拡開可能な円筒形状のラッキングカバー)であってもよい。本実施例のカバー1は、配管等7の屈曲部を覆うためのエルボ用カバーである。配管等7の直線部のカバーよりも屈曲部のカバー1のほうが、高精度に作製することが困難である。また、配管に巻き付けられた状態の断熱材の径が予め設定されたサイズからズレる可能性は、屈曲部のほうが高い。よって、屈曲部用のカバー1の寸法を、対応する屈曲部の寸法に合わせて予め設定しても、実際にカバー1を配管等7に装着したときに、配管等7とカバー1との間の隙間が大きくなるおそれが高い。[なお、直線部用のカバーによって覆われた配管等7の直線部(直管部分)の端部が屈曲部用のカバー1の開口部22に嵌合する場合には、この開口部22を構成する屈曲部用のカバー本体2と、直線部用のカバーとの間の隙間が問題となる。よって、本実施例で「配管等7とカバー1との間」という場合の「配管等7」には、上記直線部用のカバーを含めるものとする。]
これに対し、屈曲部用のカバー1に上記位置調整機能を設けることで、カバー1が覆う実際の配管等7の径に合わせてカバー本体2の開口部22の径を適宜調整することが可能となる。これにより、開口部22その他の部位におけるカバー1と配管等7との間の隙間を小さくして、カバー1の密着度を高めることができる。よって、断熱材による保温の効果を向上できると共に、開口部22におけるカバー1の配管等7に対する密着度を高めることで、開口部22における隙間を介してカバー1の内側へ水が浸入すること等を抑制できる。したがって、より効果的に、カバー1による保護機能を向上することができる。
仮に、雌側係合部3aではなく雄側係合部3bに複数の突起を周方向に並んで設けた場合、これらの雄側突起6の少なくとも一部が溝4内に収容されず(雌側端部2aまたは第2板状片32によって覆われず)カバー1の外周面(カバー外側)や内周面(カバー内側)に露出する可能性が高まる(図12、図13参照)。特に、雄側突起6を雌側係合部3aの浅い位置(溝4の開口側)で係合させたときや、雄側突起6の周方向に並ぶ数(実現可能な係合の段数)を増やしたときには、上記可能性がより高くなる。また、係合用の突起(またはこれを形成するための切れ目)がカバー1の外周面に露出した状態であると、美観が悪化するおそれがある。また、突起がカバー1の外周面に突出した状態であると、カバー1の販売や梱包や取付けなどの取扱い時に、突起が人の手等の身体に触れてこれを傷付ける(怪我をする)おそれがある。さらに、突起がカバー1の内周面に突出した状態であると、突起がカバー1の内部の断熱材等に干渉する(引っ掛って邪魔になったり傷つけたりする)おそれがある。
これに対し、雌側係合部3a(溝4を構成する第2板状片32)に複数の雌側突起5を周方向に並んで設けた。よって、実現可能な係合の段数を増やしても、雄側係合部3bと雌側係合部3aのいずれについても、その突起がカバー1の外周面や内周面に露出したり突出したりすることを抑制することができる。すなわち、複数の雌側突起5により複数の段数を実現できるため、雄側突起6を複数設けることは不要となる。これにより、係合させる位置(実現される係合の段数)に関わらず、雄側突起6を雌側係合部3aによって容易に覆い隠すことができる。本実施例のように雌側係合部3aをカバー1の内側に配置した(第1板状片31を雌側端部2aの内側に折り返した)場合には、複数の雌側突起5を溝4内に設けることで、これらをカバー1の外周面(周方向で溝4と重なる雌側端部2a)により覆い隠すことが可能である。よって、美観が悪化するおそれを抑制することができる。また、複数の雌側突起5は溝4内に突出するように設けられているため、雌側突起5が人の手等に触れて傷付けたりカバー1の内部の断熱材等に干渉したりするおそれはない。
ここで、仮に、雄側係合部3bに複数の突起(雄側突起6)を周方向に並んで設けた場合、これら雄側突起6の上記露出を回避するために、雄側係合部3bを収容する雌側係合部3aの溝4を深く設定する(溝4を構成する第1板状片31や第2板状片32の長さを長くする)ことも考えられる。しかし、この場合、材料が余分に必要となって無駄が発生したりコスト高となったりする。また、雌側係合部3aが大型化することで、美観が悪化したり、雌側係合部3aが人の手等に触れて傷付けたりカバー1の内部の断熱材等に干渉したりするおそれが高くなる。これに対し、本実施例では、雌側係合部3aの溝4を構成する第1板状片31や第2板状片32の長さは、少なくとも複数の雌側突起5を周方向に並んで設けるための長さがあれば足りる。すなわち、上記場合のような、溝4を深くして突起の露出を回避するための分が不要である。よって、材料を余分に必要とせずに無駄を削減してコストを抑制できる。また、雌側係合部3aを小型化することで、これが人の手等に触れて傷付けたりカバー1の内部の断熱材等に干渉したりすることを抑制できる。
言換えると、仮に、雄側係合部3bに複数の突起(雄側突起6)を周方向に並んで設けた場合、雌側係合部3aの大型化を抑制しつつ、雄側突起6を雌側係合部3aの浅い位置(溝4の開口側)で係合させても雄側突起6がカバー1の外周面や内周面へ露出しないようにしようとすると、雄側突起6の数(実現可能な係合の段数)を減らす必要がある。しかし、実現可能な係合の段数を減らすと、カバー1の寸法の調整代が限定されるだけでなく、雌側係合部3aの溝4に挿入される雄側係合部3bの長さが短くなりやすい。よって、雄側係合部3bが雌側係合部3aの溝4内に十分に支持されにくくなるため、係合が外れやすい。また、顎部21の弾性力等によりカバー外側へ広がろうとする雌側端部2aおよび雄側端部2bに起因して、雌側係合部3aには、これに係合する雄側係合部3bから力が作用する。本実施例のように雌側係合部3aをカバー1の内側に設けた場合、図8に示すように、溝4内における雄側係合部3bの先端と第1板状片31との接触部位Pを支点とし、溝4の開口部41における第2板状片32の先端近傍と雄側係合片30との接触部位Qを作用点として、第2板状片32を第1板状片31から引き離して溝4の幅を広げる方向に、第2板状片32に力が作用する場合がある。上記のように雌側係合部3aの溝4に挿入される雄側係合部3bの長さが短くなると、支点Pから作用点Qまでの距離L3が短くなり、溝4が広がり(開き)やすくなる。よって、係合が外れやすい。
これに対し、本実施例では、雌側係合部3aの大型化を抑制しつつ、雄側突起6を雌側係合部3aの浅い位置(溝4の開口側)で係合させても突起5がカバー1の外周面や内周面へ露出しないようにすることができるため、実現可能な係合の段数を増やすことができる。これにより、カバー1の寸法の調整代を増大することができる。また、段数を増やす分だけ、雌側係合部3aの溝4に挿入される雄側係合部3bの長さを長くすることが可能である。よって、雄側係合部3bが雌側係合部3aの溝4内に十分に支持されやすくなる。また、上記距離L3が長くなり、溝4が広がりにくくなる。よって、係合が外れにくい。
(雌側突起5等の形状や配置による作用)
なお、第2板状片32に切れ目500を伴うことなく雌側突起5を付加してもよい。本実施例では、雌側突起5は、第2板状片32がその面内で局所的に切れ目500を付けられ、この切れ目500に隣接する部分が溝4内に持ち上げられるように塑性変形することで、形成されている。具体的には、板材21a(第2板状片32に相当する部位)にパンチやプレス加工を施すことにより、雌側突起5を切り起こし(抜き起こし)形成することができる。よって、雌側突起5の形成が容易であり、また追加的な材料や部品が不要であるため、製造コストを低減できる。また、1つの型を用いて複数の突起5を形成する場合には、これらの突起5を一度に形成できるため、製造コストをより低減できる。
雌側突起5は、溝4の底部40に向って開口するポケット状(ドーム状)に形成されている。雌側突起5の上記開口部を囲む端面である当接面502に雄側突起6が当接することにより、雄側係合部3bの溝4内からの抜き取られる方向での変位が規制され、係合が実現する。仮に、雌側係合部3aではなく雄側係合部3bに複数の突起を周方向に並んで設けた場合、これらの雄側突起6の形状をポケット状に形成したときは、雄側係合片30の曲げ方向の剛性が高くなる(図12、図13参照)。よって、雄側係合部3bを雌側係合部3aの溝4に挿入する際、溝4が広がりやすくなる。又は、両者3a,3bが係合した状態で、溝4の幅を広げる方向に作用する上記力が大きくなり、溝4が広がりやすくなる。また、複数の雄側突起6の形状をポケット状に形成したときは、雄側係合部3b(雄側係合片30)にアールを付けることが難しくなる。これに対し、本実施例では、複数の突起5を雌側係合部3aに設けたことで、雄側係合部3bに複数の突起を設けることが不要となるため、雄側係合片30の曲げ方向の剛性が高くなることが抑制される。よって、溝4が広がりにくくなる。また、雄側係合部3b(雄側係合片30)にアールを付けることが容易となる。
切れ目500を付けるとその部分の剛性が低下するおそれがある。仮に、第2板状片32の面内において幅方向に延びる単一の切れ目500を付けることで雌側突起5を1つだけ形成した場合、第2板状片32の剛性を確保しつつ幅方向で雌側突起5が占める範囲を広げることが困難である。これに対し、第2板状片32の面内において雌側突起5を複数、幅方向に並んで設けたため、切れ目500を付けることで雌側突起5を形成しても、雌側係合部3aの剛性を確保しつつ、幅方向で(複数の)雌側突起5が全体として占める範囲を広げることができる。雌側突起5が幅方向で占める範囲を広げることで、雌側突起5と雄側突起6との係合を外れにくくすることができる。また、個々の雌側突起5の切れ目500の開口面積を小さくすることができる。このように開口面積を小さくすることで、水の表面張力と相俟って、水が切れ目500を通ってカバー1の内側へ浸入することを抑制することができる。
複数の雌側突起5は、幅方向で一直線上に並ぶのではなく幅方向で蛇行し、斜めに互い違いに入り交じるように配置されている。よって、雌側係合部3a(複数の雌側突起5)に対して雄側係合部3b(雄側突起6)が若干斜めの状態であっても、すなわち同じ周方向位置で幅方向に並ぶ複数の雌側突起5に対して、(幅方向に延びる)雄側突起6が若干の角度をもって配置されていても、雄側突起6が、複数の異なる周方向位置の雌側突起5に跨って係合することが可能となる。よって、溝4に雄側係合部3bを挿入して係合する作業を容易化できる。また、一旦実現された係合を外れにくくすることができる。また、第2板状片32に切れ目500を付けることで雌側突起5を形成した場合でも、この雌側突起5を斜めに互い違いに複数設けることで、第2板状片32の剛性を確保しつつ、第2板状片32の面内における雌側突起5の(周方向および幅方向での)密度を高めることができる。よって、剛性を確保しつつ雌側突起5の数を周方向で増やすことが容易となる。言換えると、第2板状片32の周方向寸法の増大を抑制して雌側係合部3aの小型化を図りつつ、実現可能な係合の段数を増やすことができる。また、周方向で隣接する雌側突起5間の距離を縮めることで、雌側係合部3aに対する雄側係合部3bの係合位置(周方向位置)をより細かく調節することができる。したがって、カバー1の密着度を高め、カバー1による保護機能を向上することができる。
第2板状片32の先端部分が第2板状片32の本体に対向するように折り返され、第3板状片33を構成している。よって、第2板状片32の周方向先端側の強度を向上できる。また、第2板状片32の周方向先端側が丸みを帯びることとなる。このため、第2板状片32の周方向先端側が人の手等を傷つけたり、カバー1の内部の断熱材等に干渉したりするおそれを低減できる。また、雌側係合部3aの溝4内への雄側係合部3bの挿入を容易にし、カバー1の取付け作業性を向上することができる。第3板状片33は、第2板状片32を挟んで、第1板状片31とは反対側に折り返されている。よって、溝4の開口部41の幅が、雄側係合部3bが挿入される分に加え、第3板状片33が折り返された分だけ余計に必要となることを回避し、これにより溝4の幅をより小さく設定することが可能である。
(雌側係合部3aをカバー内側に配置したことによる作用)
雌側係合部3aをカバー1の内側に配置した。よって、両係合部3a,3bを係合させた状態でも、雌側係合部3aがカバー1の外側に露出しない。これにより、装着後の仕上がり体裁を良くし、美観を向上することができる。また、雌側係合部3aの角部がカバー1の外側に露出しないため、カバー1の取扱い時に上記角部が人の手等に触れてこれを傷付けるおそれがない。また、雌側係合部3a(第1板状片31)と雌側端部2aとの間の隙間がカバー1の外側に開口しないため、この隙間に水が溜まって錆びが発生し、美観が損なわれるといったおそれもない。
雌側係合部3aをカバー1の内側に配置した場合、外力やカバー1自身の弾性力等により雄側係合部3bを介して雌側係合部3aに作用する力は、雌側係合部3aの溝4内(第1板状片31の中間側の部位P)を支点として第2板状片32の先端(溝4の開口部41)側の部位Qを作用点としがちとなる。この場合、溝4の幅を広げようとする力の作用部位が第2板状片32の先端(溝4の開口部41)側の部位Qとなるため、第1板状片31と第2板状片32との接続部分Oから力の作用部位Qまでの距離L2が長くなる。よって、溝4の幅が広がりやすくなり、係合が外れやすくなるという課題が発生しやすい。したがって、「雌側突起5を溝4の内部に設けること等により溝4が広がりにくくなり係合が外れにくくなる」という上記作用効果を、雌側係合部3aをカバー1の外側に配置した場合よりも、効果的に得ることができる。
また、雌側係合部3aをカバー1の内側に配置した場合、溝4が広がると、第2板状片32のカバー内側への突出量が増えるため、雌側係合部3a(第2板状片32)とカバー内側の断熱材等との干渉が起きやすい。これに対し、上記のように溝4の幅を広がりにくくすることにより、上記干渉を抑制することができる。
本実施例のカバー1は配管等7の屈曲部用である。両係合部3a,3bは配管等7の屈曲部の内径側に配置される。この屈曲部の内径側において、カバー本体2の開口部22は、雄側端部2b(雄側係合片30)の幅方向両端および雌側端部2aの幅方向両端で、配管等7の外周面と密着することにより、カバー1の内側を保護する。仮に、カバー1の開口部22で第2板状片32の幅方向両端が屈曲部の外周面に干渉した場合、カバー本体2を屈曲部の外周面から離間させ、雄側端部2b(雄側係合片30)の幅方向両端および雌側端部2aの幅方向両端と配管等7の屈曲部の外周面との間の隙間が大きくなる。これにより、カバー1の密着度が低下し、開口部22における隙間を介してカバー1の内側へ水が浸入する等のおそれもある。また、カバー1の開口部22に段差ができて美観が損なわれるおそれがある。また、雌側端部2aが配管等7によりカバー外側へ押圧されることで、雄側係合部3bを雌側係合部3aの溝4内へ挿入して係合させる際に適当な挿入角度を維持できなくなり、両係合部3a,3bを係合させる作業が繁雑になるおそれがある。
これに対し、第2板状片32の幅方向寸法W3を第1板状片31の幅方向寸法W1〜W2よりも小さくしたため、カバー内側に向うほど雌側係合部3aの幅方向寸法が小さくなる(幅狭となる)。よって、図7に示すように、雌側係合部3aのカバー内側の形状が、配管等7の屈曲部の外周面と干渉しにくい形状となる。具体的には、雄側係合部3bの係合により溝4が多少広がったとしても、雌側係合部3aにおける周方向のいずれの部位でも、雌側端部2aの幅方向両端と第2板状片32の幅方向両端とを通る曲面の曲率が、配管等7の外周面の曲率よりも小さくなるように設けられている。よって、第2板状片32の幅方向両端が屈曲部の外周面に干渉することを抑制し、上記のおそれを抑制することが可能である。
また、第1板状片31の幅方向寸法W1〜W2を雌側端部2aの幅方向寸法W1よりも若干小さくした。よって、第2板状片32と同様、第1板状片31の幅方向両端が屈曲部の外周面に干渉することを抑制することができる。また、上記のように第2板状片32の幅方向寸法を第1板状片31の幅方向寸法よりも小さくした場合、カバー内側から見て、第1板状片31の幅方向両端側が第2板状片32によって覆われないで露出する。よって、第1板状片31の幅方向両端縁が人の手等を傷つけるおそれがある。これに対し、第1板状片31の幅方向両端縁を雌側端部2aの面内に収めたことで、これらの端縁が人の手等を傷つけるおそれを抑制できる。さらに、第1板状片31において第2板状片32と接続する側の幅方向両端の角部を切り欠いてテーパ状とした(切り欠き310)。上記のように第2板状片32の幅方向寸法W3を第1板状片31の幅方向寸法W1〜W2よりも小さくした場合、カバー内側から見て、第2板状片32の第1板状片31と接続する側の幅方向両端の角部が第1板状片31によって覆われないで露出する。よって、この角部が人の手等に触れて傷付けたりカバー1の内部の断熱材等に干渉したりするおそれがある。これに対し、この角部を切り欠いてテーパ状としたことで、上記おそれを抑制できる。
なお、カバー内側に設けられた溝4の底部40は閉じられており、穴等が設けられていない。よって、溝4の開口部41から溝4内へ水が浸入したとしても、この溝4内の水が底部40を通ってカバー1の内側へ至ることは抑制される。よって、カバー1による保護機能を向上することができる。
(雌側突起5を第2板状片32に配置したことによる作用)
第1板状片31ではなく第2板状片32の側に雌側突起5を設けたため、この雌側突起5に雄側突起6が係合すると、この係合部位Rを介して第2板状片32に力が作用する。この力は、溝4の幅を広げる方向の成分を含む。仮に、第2板状片32における溝4の開口側に雌側突起5を設けた場合、(溝4の幅が広がる際の支点となる)第1板状片31と第2板状片32との接続部分Oから、上記力の作用点Rまでの距離L1が長くなる(図12、図13参照)。これにより、溝4の幅が広がりやすくなる。このため、雌側係合部3aと雄側係合部3bの係合が外れやすくなる。例えば、雄側係合部3bに周方向に並んで複数の雄側突起6を設けた場合、加工の容易性等から、雌側係合部3aの第2板状片32の先端部を折り曲げて溝4の開口側に(1つの)雌側突起5を設けることが通常である。しかし、この場合、雌側突起5に複数の雄側突起6(のいずれか)が係合すると、常に溝4の開口側から第2板状片32に力が作用することになり、溝4の幅が広がりやすい。これに対し、第2板状片32の面内に複数の雌側突起5を設けているため、この雌側突起5(のいずれか)に雄側突起6が係合しても、上記係合部位Rを介して第2板状片32に入力される力(溝4の幅を広げる方向の成分を含む)の作用点が、溝4の開口側ではなく溝4の内部側となりやすい。よって上記距離L1が短くなるため、溝4の幅が広がりにくくなる。これにより、雌側係合部3aと雄側係合部3bの係合が外れにくくなる。すなわち、第2板状片32における溝4の開口側だけでなく底部側にも雌側突起5が設けられており、両突起5,6の係合部位が溝4の開口側になる場合は限られている。よって、溝4の開口側から第2板状片32に力が作用する確率は低いため、溝4の幅が広がりにくい。
また、雌側突起5を第2板状片32の側に設けたため、雌側突起5を第1板状片31の側に設けた場合(図9参照)に比べ、各突起5,6のスペースの分だけ、溝4内において雄側係合片30がカバー外側に位置する。すなわち、雄側係合片30が第1板状片31に近づくと共に、第2板状片32から遠ざかる。よって、溝4の開口部41の側でも、雄側係合片30が第2板状片32と接触しにくくなる。言換えると、溝4内(第1板状片31の中間側の部位P)を支点として第2板状片32の先端(溝4の開口部41)側の部位Qを作用点とする力が作用しにくくなる。よって、溝4の幅が広がりにくい。仮に、溝4の開口部41の側の部位Qで雄側係合片30が第2板状片32と接触し、溝4内の部位Pを支点とし部位Qを作用点とする力が作用する場合でも、雌側突起5を第1板状片31の側に設けた場合(図9参照)に比べ、溝4内の部位Pの近傍において雄側突起6のスペースの分だけ雄側係合片30が第2板状片32から離れてカバー外側に位置する(すなわち、雄側係合片30が第1板状片31に近づくと共に、第2板状片32から遠ざかる)。よって、溝4の開口部41の側の部位Qにおいて第2板状片32に対し雄側係合片30がなす角度が大きくなる。これにより、部位Qにおいて溝4の幅を広げる方向の力の成分が減少する。よって、溝4の幅が広がりにくい。また、雌側突起5を第1板状片31の側に設けた場合(図9参照)と異なり、支点Pが移動可能である(雄側係合片30の周方向先端部分が第1板状片31に対してスライド可能である)。上記力の作用に伴い支点Pが移動することで、部位Qにおける上記角度が大きくなるため、部位Qにおいて溝4の幅を広げる方向の力の成分が減少する。よって、溝4の幅が広がりにくい。したがって、雌側係合部3aと雄側係合部3bの係合が外れにくくなる。なお、雌側突起5を第1板状片31の側に設けた場合に対する雌側突起5を第2板状片32の側に設けた場合の上記各作用効果は、雄側突起6に突起部61を設けた場合、すなわち雄側係合片30に対する雄側突起6の高さh3(図6参照)がある程度高い場合に、顕著となる。
なお、第2板状片32に雌側突起5をポケット状に複数形成した場合、第2板状片32の曲げ方向の剛性が高まり、第2板状片32が曲げられ難くなる。このため、雌側係合部3aの溝4の開口部41が広がりにくくなる。よって、溝4が広がった状態で係合することを抑制し、係合を外れにくくすることができる。一方、ポケット状の雌側突起5が設けられていない第1板状片31にアールを付けることが容易となる。
また、第2板状片32の面内に局所的に切れ目500を付けることで雌側突起5を形成した場合、この切れ目500がカバー1の外側に露出していると、この切れ目500を通って外部からカバー1の内側に水が浸入するおそれがある。これに対し、上記のように、雌側突起5(切れ目500)がカバー1の外側に露出することを抑制できる。具体的には、複数の雌側突起5は雌側端部2aおよび第1板状片31により覆い隠され、カバー1の外側に露出しない。よって、両端部2a,2bの係合部位において、切れ目500からカバー1の内側に水が浸入することを抑制することができる。したがって、カバー1による保護機能を向上することができる。
なお、カバー1を配管等に設置した状態で、溝4の開口部41にコーキング剤(シール剤)を充填してこれを塞ぐ(シールする)ことは可能であるが、経年劣化したり剥がれたりする等によりコーキング剤の防水機能には限界がある。また、溝4の開口部にそもそもコーキング剤を充填しない場合もある。よって、水が溝4内を通ってカバー1の内側に浸入するおそれもある。本実施例では、雌側係合部3aをカバー1の内側に配置している。このため、溝4内に浸入した水が第2板状片32の面内に形成された切れ目500を通ってカバー1の内側に浸入することも考えられる。しかし、上記のように、雌側突起5を溝4の内部に設けること等により、溝4の幅が広がりにくい。よって、開口部41から溝4内への水の浸入が抑制される。また、雄側係合片30と第1板状片31との密着度が高く、雌側突起5と雄側突起6との係合部位の近傍における溝4の幅が広がりにくい。よって、雄側係合片30と第1板状片31との間の隙間を通った水の浸入が抑制される。また、第1板状片31と第2板状片32が雄側係合部3b(雄側突起6)を挟み込む弾性力に加えて、カバー外側に広がろうとする顎部21の弾性力により、溝4の内部において、雄側係合部3b(周方向先端部分)のカバー外側の面と、(溝4内に面する)第1板状片31のカバー内側の面との接触が強化される。よって、この接触部位Pで両者が密着してシール性が担保される。これにより、溝4の開口部41から雄側係合片30と第1板状片31との間の隙間に浸入した水が上記接触部位Pにおける隙間を通って溝4の底部40側に浸入したり第2板状片32の側へ回り込んだりすることが抑制される。よって、第2板状片32の面内に形成された切れ目500を通ってカバー1の内側へ水が浸入することが抑制される。
すなわち、雄側係合片30や第1板状片31に切れ目が形成されていないため、溝4の開口部41から雄側係合片30と第1板状片31との間の隙間に浸入した水が第2板状片32の切れ目500へ向う経路は、上記接触部位Pにおける隙間か、または雄側係合片30と雌側端部2aとの間の隙間であって第1板状片31が設けられていない部位(図5のγに示す、幅方向で第1板状片31の両端より外側)を通るものに限られる。よって、上記接触部位Pにおける接触が強化されることで、上記経路が効果的に遮断されるため、シール性が担保される。なお、第1板状片31の幅方向寸法W1〜W2は、雄側係合部3b(周方向先端部分)の幅方向寸法W1より若干小さいだけである。よって、雄側係合片30と雌側端部2aとの間の隙間であって第1板状片31が設けられていない部位γ(幅方向で第1板状片31の両端より外側)を通る水の浸入も抑制されるため、シール性が担保される。
(雄側突起6の形状や配置による作用)
雄側係合片30に周方向一方側で連続する板状部分が折り返されることで雄側突起6が形成されている。すなわち、雄側係合部3bの周方向先端側に雄側突起6が設けられている。仮に、雄側係合部3bの周方向先端側に雄側突起6を設けず、例えば雄側係合部3bの周方向中間側に雄側突起6を設けた場合、雌側係合部3aの溝4を構成する第1板状片31や第2板状片32の周方向長さは、周方向に複数の雌側突起5を設けるための長さに加え、雄側係合部3bにおける雄側突起6よりも周方向先端側に延びる分(例えば溝4の底部40に雄側係合部3bの周方向先端が突き当たった状態における雄側係合部3bの周方向先端(溝4の底部40)から雄側突起6までの距離の分)だけ、余計に必要となる。これに対し、雄側係合部3bの周方向先端側に雄側突起6を設けたため、第1板状片31や第2板状片32の長さとして、複数の雌側突起5を周方向に設けるために必要な長さ以外の分を削減可能である。よって、材料を余分に必要とせずにコストを抑制できると共に、雌側係合部3aを小型化することができる。
雄側係合部3bの周方向先端部分が折り返されることで雄側突起6(基端部60)が形成されている。よって、雄側係合部3bの周方向先端側の強度を向上できる。また、雄側係合部3bの周方向先端側が丸みを帯びた曲面状になる。このため、カバー1の取扱い時に、雄側係合部3bの周方向先端側が人の手等を傷つけるおそれを低減できる。また、雄側係合部3bを雌側係合部3aの溝4の開口部41から溝4内に挿入しやすくなる。よって、カバー1の取付け作業性を向上することができる。また、上記のように、雄側係合部3bの周方向先端部分のカバー外側の面と第1板状片31のカバー内側の面とが接触する場合、雄側係合部3bの周方向先端が丸みを帯びた曲面状になることで、上記接触部位Pにおける両者の密着性が向上する。よって、シール性を向上することができる。ここで、基端部60は、幅方向で雄側係合部3bの先端側の全範囲にわたって設けられている。よって、上記作用効果を向上できる。
雌側突起5は、第2板状片32の一部分を、溝4内に突出する山形に変形させることで、形成されている。この場合、雌側突起5の幅方向における両端が(突出元となる)第2板状片32の面に連続することになるため、加工の都合上、雌側突起5の高さ(溝4内に突出する当接面502の中間部504の高さ)を一定以上高くする(当接面502の突出量をある程度以上増やす)ことが困難である。よって、溝4内において雄側突起6(の先端)を雌側突起5(の当接面502)に十分に近づけることが困難となり、両突起5,6の係合が外れやすくなるおそれがある。特に、雌側係合部3aをカバー1の内側に配置すると共に、雌側突起5を第2板状片32に配置した場合には、雌側端部2aないし雄側端部2bがカバー外側に広がろうとすることにより、溝4内において、雄側係合部3bの周方向先端部分(雄側突起6の先端)が第2板状片32(雌側突起5の当接面502)から離れてカバー外側へ変位しがちである。よって、上記おそれが高い。
これに対し、雄側突起6の突起部61は、雄側係合片30とは反対の側に(すなわち雄側係合片30から遠ざかるように)基端部60に対し折れ曲がっている。これにより、雄側係合部3bが溝4内に挿入された状態で、突起部61は、雄側係合片30に対向する第2板状片32へ向って延びることとなる。よって、雄側突起6の突起部61の先端を、溝4内に突出する雌側突起5の当接面502に近づけることができる。したがって、より確実に雄側突起6を雌側突起5に係合させることができるため、係合が外れにくい。なお、基端部60に対する突起部61の(折れ曲がり)角度は、突起部61の先端が雌側突起5の当接面502に当接可能な範囲であればよく、本実施例の角度に限定されない。また、突起部61は基端部60に対する折れ曲がり部位から必ずしも周方向の他方側に延びていなくてもよい。また、突起部61の先端を更に折り曲げる等によってその形状を変化させることは妨げられない。また、雄側係合部3bの周方向先端側ではなく周方向中間側に雄側突起6を設けたとしても、その突起部61の形状を本実施例のように設ければ、同様の作用効果を得ることができる。例えば、雄側係合片30の周方向中間側に切れ目を付けてこれを折り返し、基端部60と突起部61を形成することで、この部位に雄側突起6を設けることも可能である。
なお、雌側突起5は、周方向または幅方向で複数設けられていなくてもよい。雌側突起5(当接面502)は、第2板状片32の面内に局所的に切れ目500を付けて切り起こすことにより形成したものに限らず、例えば、第2板状片32の先端部を周方向から見たとき幅方向で蛇行する波形に加工し、この先端部を第2板状片32の本体に対向するよう折り返すことで幅方向に複数並んで形成したものでもよい。すなわち、第2板状片32に連続する板状片の一部分を山形に変形させることで、雌側突起5を形成することとしてもよい。また、幅方向に限らず、第2板状片32(に連続する板状片)の面に平行な所定方向において雌側突起5の両端が第2板状片32(に連続する板状片)の面に連続するように雌側突起5を形成することとしてもよい。言換えると、当接面502は幅方向に広がるものに限らず、幅方向に対し所定の角度を有していてもよい。
また、カバー1は、配管等の直線部を覆うためのラッキングカバーであってもよい。
本実施例のカバー1は、配管等の屈曲部を覆うためのエルボ用カバーであって、幅方向で係合部3が占める範囲が限定されているため、係合が外れるおそれが比較的高い。よって、雄側突起6(突起部61)の形状によって係合を外れにくくする上記作用効果を、より効果的に得ることができる。
ここで、雄側突起6の突起部61は、雌側突起5の当接面502よりも幅方向寸法が大きい直線状(板状)である。よって、雄側係合部3bが雌側係合部3aに対して幅方向で若干ズレても、雄側突起6の突起部61と雌側突起5の当接面502との当接が確保されるため、係合が外れにくい。また、突起部61は、幅方向で第2板状片32の全範囲と重なるように設けられている。よって、突起部61の幅方向寸法を大きくすることでその強度を向上できる。また、係合を外れにくくする上記作用効果を向上できる。また、突起部61の幅方向寸法を第1板状片31の幅方向寸法W1〜W2よりも小さくした。よって、両係合部3a,3bが係合した状態で、カバー1の開口部22において、第2板状片32の幅方向両端と同様、突起部61の幅方向両端が配管等7の屈曲部の外周面(断熱材等)に干渉しにくくなる。これにより、雄側端部2b(雄側係合片30)および雌側端部2aの幅方向両端と屈曲部の外周面との間に隙間ができる事態が抑制される。したがって、カバー1の密着度を高め、カバー1による保護機能を向上することができる。具体的には、突起部61の幅方向寸法を第2板状片32の幅方向寸法W3と略等しくした。よって、雄側突起6と雌側突起5とをより確実に係合させつつ、上記効果を得ることができる。
雌側突起5は、第2板状片32の面内に複数、周方向に並んで設けられている。雄側突起6の突起部61は、基端部60に対し雄側係合片30とは反対側へ折れ曲がっており、この折れ曲がり部位から周方向他方側に延びる。これにより、ある雌側突起5に雄側突起6が係合する際、この雌側突起5に周方向で隣接する雌側突起5と雄側突起6とが干渉することが抑制される。具体的には、ある雌側突起5の当接面502に雄側突起6の突起部61の先端が当接した状態で、この突起部61の周方向中間部が、上記雌側突起5に周方向一方側で隣接する雌側突起5の後背部501に乗り上げることが抑制されるため、上記干渉が抑制される。言換えると、雄側突起6の突起部61が当接する雌側突起5に周方向一方側で隣接する雌側突起5が、雄側突起6の突起部61と基端部60との間に形成される凹部内に部分的に収容されることで、上記干渉が抑制される。よって、雄側突起6の突起部61の先端は、雌側突起5の当接面502の先端側(第2板状片32から遠い側)でなく根元側(第2板状片32に近い側)に当接することができる。言換えると、雄側突起6は、周方向で隣接する雌側突起5間に形成される隙間における、より深い位置で係合することができる。よって、係合が外れにくい。
なお、より深い位置での係合を実現するために、図8に示すように、任意の係合段で、第2板状片32の面(雄側突起6が係合する雌側突起5における第2板状片32の接平面)に対する雄側突起6の突起部61の角度αが、第2板状片32の面に対する雌側突起5の後背部501の(望ましくは最大の)角度βよりも大きくなるように設定することが好ましい。また、第2板状片32の面に対する雌側突起5の高さh1(図6参照)よりも、雄側係合片30の(周方向先端側の)面に直交する方向における基端部60に対する突起部61の高さh2のほうを大きく設定することが好ましい。
基端部60は、雄側係合片30に対する折り返し部位から雄側係合片30に近づくように周方向他方側に延びる。これにより、雄側係合片30に対する、基端部60と突起部61とを含めた雄側突起6全体としての高さh3(図6参照)が増大することを抑制できる。よって、雄側係合部3bと雌側係合部3aが係合した状態での溝4の幅を狭くし、雌側係合部3a(第2板状片32)がカバー内側に突出する(膨らむ)ことを抑制することができる。言換えると、雄側突起6全体としての高さh3はそのままで、突起部61を長くする(高さh2を大きく設定する)ことができるため、溝4の幅が広がることを抑制しつつ、より深い位置での係合を実現できる。また、雌形突起との係合により雄側突起6に入力される力に対し、基端部60がばねとして機能し、雄側突起6(基端部60)の塑性変形を抑制する弾性力を発生する。よって、雄側突起6の強度を向上することができるため、雄側係合部3b(雄側突起6)と雌側係合部3a(雌側突起5)との係合が外れにくい。
[効果]
以下、本実施例のカバー1が奏する効果を列挙する。
(1)配管等7(断熱材が巻き付けられた配管)の屈曲部を覆うためのエルボ用カバー1であって、
配管の軸を取り囲む周方向で対向し互いに係合される一対の板状の端部2a,2bを備え、
雌側端部2a(一方の端部)に雌側係合部3aが設けられると共に、雄側端部2b(他方の端部)に雄側係合部3bが設けられ、
雌側係合部3aは、
雌側端部2aに連続する板状部分であって、雌側端部2aに対向するようにカバー内側(配管等7の側)へ折り返し、この折り返し部位から周方向の一方側に延びる第1板状片31と、
第1板状片31に連続する板状部分であって、第1板状片31に対向するように第1板状片31を挟んで雌側端部2aとは反対の側へ折り返し、この折り返し部位から周方向の他方側に延びる第2板状片32と、
第1板状片31と第2板状片32との間の隙間であって、第1板状片31と第2板状片32との接続部分が閉じられた底部40を構成する溝4と、
第2板状片32の面内に複数、周方向に並んで設けられ、溝4内に突出する雌側突起5とを有し、
雄側係合部3bは、
雄側端部2bに連続して周方向一方側に延びる板状部分であって溝4内に挿入される雄側係合片30と、
雄側係合片30が溝4内から抜き取られる方向で雌側突起5に係合可能に設けられた雄側突起6とを有している。
よって、配管等7の寸法に合わせてカバー1の寸法を調整可能であるため、カバー1による保護機能を向上することができる。また、雌側係合部3aをカバー内側へ配置したことで、美観を向上することができる。また、複数の雌側突起5の一部がカバー1の外周面や内周面に露出することを抑制することができる。また、雌側突起5の上記配置により、雄側突起6(雄側係合部3b)と雌側突起5(雌側係合部3a)との係合を外れにくくすることができる。特に、雌側突起5を第2板状片32の側に設けたことで、溝4の開口部41の側で第2板状片32に力が作用することを抑制できるため、溝4が広がりにくい。よって、係合を外れにくくし、カバー1による保護機能を向上することができる。
(2)雌側突起5は、第2板状片32の一部分を、溝4内に突出する山形に変形させた形状であり、
雄側突起6は、
雄側係合片30に連続する板状部分であって、雄側係合片30に対向するように折り返し、この折り返し部位から周方向他方側に延びる基端部60と、
基端部60に連続する板状部分であって、基端部60に対し雄側係合片30とは反対の側へ折れ曲がる突起部61とを有する。
よって、雄側突起6の上記形状により、雄側突起6(雄側係合部3b)と雌側突起5(雌側係合部3a)との係合を外れにくくすることができるため、カバー1による保護機能を向上することができる。
(3)配管等7(断熱材が巻き付けられた配管)の屈曲部を覆うためのエルボ用カバー1であって、
配管の軸を取り囲む周方向で対向し互いに係合される一対の板状の端部2a,2bを備え、
雌側端部2a(一方の端部)に雌側係合部3aが設けられると共に、雄側端部2b(他方の端部)に雄側係合部3bが設けられ、
雌側係合部3aは、
雌側端部2aに連続する板状部分であって、雌側端部2aに対向するように折り返し、この折り返し部位から周方向の一方側に延びる第1板状片31と、
第1板状片31に連続する板状部分であって、第1板状片31に対向するように第1板状片31を挟んで雌側端部2aとは反対側へ折り返し、この折り返し部位から周方向の他方側に延びる第2板状片32と、
第1板状片31と第2板状片32との間の隙間により構成される溝4と、
溝4内に突出する雌側突起5とを有し、
雌側突起5は、第2板状片32の一部分、または第2板状片32に連続する板状片の一部分を、溝4内に突出する山形に変形させた形状であり、
雄側係合部3bは、
雄側端部2bに連続して周方向一方側に延びる板状部分であって溝4内に挿入される雄側係合片30と、
雄側係合片30が溝4内から抜き取られる方向で雌側突起5に係合可能に設けられた雄側突起6とを有し、
雄側突起6は、
雄側係合片30に連続する板状部分であって、雄側係合片30に対向するように折り返し、この折り返し部位から周方向他方側に延びる基端部60と、
基端部60に連続する板状部分であって、基端部60に対し雄側係合片30とは反対の側へ折れ曲がる突起部61とを有する。
よって、雄側突起6の上記形状により、雄側突起6(雄側係合部3b)と雌側突起5(雌側係合部3a)との係合を外れにくくすることができるため、カバー1による保護機能を向上することができる。
(4)雌側突起5は、第2板状片32の面内に複数、周方向に並んで設けられている。
よって、上記(1)と同様の効果を得る。
(5)複数の雌側突起5は、第2板状片32がその面内で局所的に切れ目500を付けられ、この切れ目500に隣接する部分が溝4内に持ち上げられた形状である。
よって、雌側突起5を容易に形成することができる。また、カバー1の外周面に切れ目500が露出することが抑制されるため、切れ目500を通ってカバー1の内側に水が浸入することを抑制することができる。
(6)第1板状片31、第2板状片32、および雄側係合片30を、カバー外側(配管等7の径方向外側)に向って凸の曲面状とした。
よって、雄側突起6(雄側係合部3b)と雌側突起5(雌側係合部3a)との係合を外れにくくすることができるため、カバー1による保護機能を向上することができる。
[実施例2]
図9は、実施例2のカバー1の係合した状態の両係合部3a,3bを開口部22の側から見た、図8と同様の図である。実施例2のカバー1は、実施例1と同様、雌側係合部3aを雌側端部2aに対しカバー外側に配置している。実施例1と異なり、雌側突起5を、第2板状片32ではなく第1板状片31の面内に複数、周方向に並んで設けている。第1板状片31の面内における複数の雌側突起5の配置は、実施例1の第2板状片32の面内における複数の雌側突起5の配置と同様である。雄側突起6は、カバー外側へ折り返されることで形成されている。他の構成は実施例1と同様であるため、対応する構成について実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
(雌側突起5を第1板状片31に配置したことによる作用)
雌側突起5(のいずれか)に雄側突起6が係合しても、係合部位Rを介して第2板状片32に力が入力されない。よって、その分だけ、溝4の幅を広げる力を抑制できるため、雌側係合部3aと雄側係合部3bの係合が外れにくい。なお、本実施例のように複数の雌側突起5をポケット状に形成した場合、雌側突起5が設けられていない第2板状片32にアールを付けることが容易となる。
第1板状片31の面内に局所的に切れ目500を付けることで雌側突起5を形成した場合、この切れ目500を通って外部からカバー1の内側に水が浸入するおそれがある。これに対し、実施例1と同様、雌側突起5(切れ目500)がカバー1の外側に露出することを抑制できる。具体的には、複数の雌側突起5は雌側端部2aにより覆い隠され、カバー1の外側に露出しない。よって、両端部2a,2bの係合部位において、切れ目500からカバー1の内側に水が浸入することを抑制することができる。
なお、溝4内に浸入した水が第1板状片31の面内に形成された切れ目500を通ってカバー1の内側に浸入することも考えられる。しかし、実施例1と同様、溝4の幅が広がりにくく、また雄側係合片30と第1板状片31との密着度が高い。よって、溝4の開口部41や雄側係合片30と第1板状片31との間の隙間を通った水の浸入が抑制されるため、上記のような切れ目500を通った水の浸入は抑制される。また、雌側係合部3aの第1板状片31、および第1板状片31に対向する雌側端部2aに、同様のアールを付けたことで、これらの密着度が高い。さらに、雄側突起6から第1板状片31に入力される力に加えて、カバー外側に広がろうとする顎部21の弾性力により、雌側端部2aのカバー内側の面と、(雌側突起5が突出しない)第1板状片31のカバー外側の面との間の隙間が縮められる。よって、仮に、溝4内に浸入した水が第1板状片31の面内に形成された切れ目500を通って雌側端部2aと第1板状片31との間の上記隙間に入り込んでも、この隙間の開口側(第1板状片31と第2板状片32との接続部分の側)に漏れ出してカバー1の内側へ浸入することが抑制される。
その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[実施例3]
図10は、実施例3のカバー1の係合した状態の両係合部3a,3bを開口部22の側から見た、図8と同様の図である。実施例3のカバー1は、雌側係合部3aを、雌側端部2aに対しカバー外側に配置している。第1板状片31は、雌側端部2aに連続する板状部分が雌側端部2aを挟んで配管等7とは反対側へ折り返されることで形成されている。第2板状片32の幅方向寸法は第1板状片31の幅方向寸法と略等しい。雌側突起5は、実施例2と同様、第1板状片31の面内に複数、周方向に並んで設けられている。雄側突起6は、実施例1と同様、カバー内側へ折り返されることで形成されている。雄側突起6の突起部61の幅方向寸法は基端部60(雄側係合片30の先端側)の幅方向寸法と略等しい。他の構成は実施例1と同様であるため、対応する構成について実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
(雌側係合部3aをカバー外側に配置したことによる作用)
雄側係合片30、雌側係合部3a(第1板状片31、第2板状片32)、および第1板状片31に対向する雌側端部2aを、カバー外側に凸の曲面状とした(アールを付けた)。雌側係合部3aを雌側端部2aに沿った曲面形状とすることで、雌側係合部3aがカバー1の外側に突出する(膨らむ)ことを抑制することができる。雄側係合部3bと第2板状片32との密着度や、第1板状片31と雌側端部2aとの密着度を高めることで、これらの間の隙間内に外部から水が浸入したり溜まったりすることを抑制できる。
雌側係合部3aをカバー1の外側に配置した場合でも、複数の雌側突起5は溝4内に突出し、カバー1の外側に突出することはない。よって、雌側突起5が人の手等に触れて傷付けるおそれはない。また、複数の雌側突起5を第1板状片31に設けることで、これらを第2板状片32により覆い隠すことが可能である。これにより、美観が悪化するおそれを回避することができる。
雌側係合部3aには、これに係合する雄側係合部3bを介して力が作用する。本実施例のように雌側係合部3aをカバー1の外側に設けた場合、溝4の開口部41における雌側端部2aと第1板状片31との接続部分近傍と雄側係合片30との接触部位P'を支点とし、溝4内における雄側係合部3bの先端と第2板状片32との接触部位Q'を作用点として、第2板状片32を第1板状片31から引き離して溝4の幅を広げる方向に、雄側係合部3bを介して第2板状片32に力が作用する場合がある。ここで、実施例1と同様に、雌側係合部3aの溝4に挿入される雄側係合部3bの長さを長くすることができる。よって、雄側係合部3bが雌側係合部3aの溝4内に十分に支持されやすくなる。また、上記支点P'から上記作用点Q'までの距離L3が長くなり、溝4が広がりにくくなる。よって、係合が外れにくい。
雌側係合部3aをカバー1の外側に配置したため、雄側係合部3bと係合する雌側係合部3aがカバー内側の配管等7と干渉するおそれはない。よって、カバー本体2(顎部21等)を配管等7の外周面に接近させて密着度を高め、カバー1による保護機能を向上することができる。言換えると、第2板状片32や雄側突起6の突起部61の幅方向寸法を第1板状片31の幅方向寸法より小さくしなくても、上記干渉を回避しつつ、カバー1の密着度を向上することができる。よって、雌側係合部3aをカバー1の内側に配置した場合に比べ、第2板状片32において雌側突起5が幅方向で占める範囲や、雄側突起6の突起部61が幅方向に延びる範囲を大きくすることができるため、係合の強度を向上することが可能である。
カバー外側へ広がろうとする顎部21の弾性力により雄側係合部3bを介して雌側係合部3aに作用する力は、雌側端部2aと第1板状片31との接続部分近傍の部位P'(溝4の開口部41)を支点として第2板状片32の中間側の部位Q'を作用点とする。雌側係合部3aをカバー1の内側に配置した場合に比べ、雄側係合部3bから雌側係合部3aに作用する力の作用部位Q'が溝4の内部(第2板状片32の面内)すなわち第2板状片32の中間側となり、第1板状片31と第2板状片32との接続部分Oから力の作用部位Q'までの距離L2が短くなる。よって、溝4が広がりにくいため、係合が外れにくい。
溝4の底部40は閉じられており、穴等が設けられていない。よって、外部から溝4の底部40を通って溝4内へ水が浸入し、カバー1の内周側へ至ることは抑制される。また、雌側端部2aと第1板状片31との接続部分は閉じられており、穴等が設けられていない。よって、雌側端部2aと第1板状片31との間の隙間へ水が浸入したとしても、この水が上記接続部分を通ってカバー1の内周側へ至ることは抑制される。よって、カバー1による保護機能を向上することができる。
(雌側突起5を第1板状片31に配置したことによる作用)
雌側突起5を第1板状片31に配置したことにより、実施例2と同様の作用効果を得る。第1板状片31の面内に局所的に切れ目500を付けることで雌側突起5を形成した場合、この切れ目500がカバー1の外側に露出していると、この切れ目500を通って外部からカバー1の内側に水が浸入するおそれがある。これに対し、上記のように、複数の雌側突起5(切れ目500)は第2板状片32により覆い隠され、カバー1の外側に露出しない。また、雌側係合部3aの第1板状片31、および第1板状片31に対向する雌側端部2aに、同様のアールを付けたことで、これらの密着度が高い。よって、これらの間の隙間に水が浸入することを抑制することができる。したがって、第1板状片31の面内に形成された切れ目500から溝4内に水が浸入することを抑制することができる。これにより、カバー1の内側に水が浸入することを抑制することができる。また、実施例1と同様、溝4の幅が広がりにくく、また、雄側係合部3bと第1板状片31および第2板状片32との密着度が高い。よって、溝4の開口部41から溝4内へ水が浸入したり、溝4内へ浸入した水が第1板状片31と雄側係合部3bとの間の隙間を通ってカバー1の内側に浸入したりすることが抑制される。
また、第1板状片31と第2板状片32が雄側係合部3bを挟み込む弾性力に加えて、カバー外側に広がろうとする顎部21の弾性力により、溝4内の部位Q'において、雄側係合部3b(周方向先端部分)のカバー外側の面と、(溝4内に面する)第1板状片31のカバー内側の面とが接触する。また、雄側係合部3bのカバー内側の面が、雌側端部2aと第1板状片31との接続部分近傍の部位P'に接触し、押付けられる。上記各弾性力により、上記各接触が強化され、これらの接触部位P', Q'で各部分が密着してシール性が担保される。よって、溝4の開口部41から浸入した水が上記各接触部位P', Q'における隙間を通ってカバー1の内側へ浸入することが抑制される。
その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[実施例4]
図11は、実施例4のカバー1の係合した状態の両係合部3a,3bを開口部22の側から見た、図8と同様の図である。実施例4のカバー1は、実施例3と同様、雌側係合部3aを雌側端部2aに対しカバー外側に配置している。雌側突起5は、実施例1と同様、第2板状片32の面内に複数、周方向に並んで設けられている。雄側突起6は、実施例2と同様、カバー外側へ折り返されることで形成されている。他の構成は実施例1,3と同様であるため、対応する構成について実施例1,3と同一の符号を付して説明を省略する。
雌側係合部3aをカバー外側に配置したことにより、実施例3と同様の作用効果を得る。
(雌側突起5を第2板状片32に配置したことによる作用)
雌側突起5を第2板状片32に配置したことにより、実施例1と同様の作用効果を得る。第2板状片32の面内に局所的に切れ目500を付けることで雌側突起5を形成した場合、この切れ目500がカバー1の外側に露出するため、この切れ目500を通って外部からカバー1の内側に水が浸入することも考えられる。しかし、実施例1と同様、溝4の幅(第1板状片31や第2板状片32と雄側係合部3bとの間の隙間)が広がりにくい。また、第1板状片31と第2板状片32が雄側係合部3bを挟み込む弾性力に加えて、カバー外側に広がろうとする顎部21の弾性力により、雄側係合片30のカバー内側の面が、雌側端部2aと第1板状片31との接続部分近傍の部位P'に対して押付けられる。よって、仮に、第2板状片32の面内に形成された切れ目500を通って水が溝4内に浸入しても、第1板状片31と雄側係合部3bとの間の隙間を通り、溝4の開口側(雌側端部2aと第1板状片31との接続部分の側)からカバー1の内側へ浸入することが抑制される。なお、複数の雌側突起5を第1板状片31に設けた場合と異なり、雄側係合部3bのカバー内側の面と、雌側端部2aと第1板状片31との接続部分近傍の部位P'との接触が、雌側突起5によって妨げられるおそれがないため、上記接触部位P'での両者の密着度を向上できる。よって、より確実に水の浸入を抑制することができる。
その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[参考例1]
まず、構成を説明する。図12は、参考例1のカバー1の係合した状態の両係合部3a,3bを開口部22の側から見た、図8と同様の図である。参考例1のカバー1は、係合位置調節用の複数の突起を雌側係合部3aではなく雄側係合部3bに設けている(複数の雄側突起6)。雌側突起5は、第2板状片32の先端部分が折り返されることで1つ形成されている。実施例1と同様、雌側係合部3aを、雌側端部2aに対しカバー内側に配置している。
雌側突起5は、実施例1の雄側突起6と同様の形状であり、基端部50と突起部51を有している。基端部50は、第2板状片32に連続して第2板状片32から周方向に延長された板状部分が第2板状片32に対向するように溝4内に折り返されることで形成されており、折り返された部位から周方向一方側に延びる。基端部50は、第2板状片32の周方向他方側の幅方向全範囲にわたって設けられている。突起部51は、基端部50に連続して基端部50から周方向に延長された板状部分が、基端部50に対し第2板状片32とは反対側へ折り曲げられることで形成されており、折り曲げられた部位から周方向一方側に第2板状片32から遠ざかるように延びる。突起部51は、幅方向で基端部50(第2板状片32の周方向先端側)の全範囲にわたって設けられている。
雄側突起6は、実施例1の雌側突起5と同様の形状であり、周方向他方側に面する当接面602と、当接面602から周方向一方側へ延びて雄側係合片30の面に連続する後背部601とを備えている。雄側突起6は、雄側係合片30の一部分を、幅方向における両端が雄側係合片30の面に連続すると共に雄側係合片30の面に直交する方向に突出する山形に変形させることで、形成されている。雄側突起6は、雄側係合片30の面内に複数、周方向に並んで設けられている。複数の雄側突起6は、実施例1の雌側突起5と同様、千鳥状に配置されている。複数の雄側突起6は、第2板状片32(雌側突起5)が占める幅方向範囲と略等しい幅方向範囲内に配置されている。他の構成は実施例1と同様であるため、対応する構成について実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
次に、作用を説明する。雄側係合片30の先端部分が雄側係合片30の本体に対向するように折り返されている。よって、実施例1雄側突起6と同様、雄側係合部3bの周方向先端側の強度を向上できる。また、雄側係合部3bの周方向先端側が人の手等を傷つけるおそれを低減できる。また、雌側係合部3aの溝4内への雄側係合部3bの挿入を容易にし、カバー1の取付け作業性を向上することができる。
(雌側突起5の形状や配置による作用)
第2板状片32の先端側に雌側突起5が設けられているため、第1板状片31や第2板状片32の長さとして、複数の雄側突起6を係合させるために必要な長さ以外の分を削減可能である。よって、材料を余分に必要とせずにコストを抑制できると共に、雌側係合部3aを小型化することができる。
第2板状片32の周方向先端部分が折り返されることで雌側突起5が形成されている。よって、実施例1の第3板状片33と同様、第2板状片32の周方向先端側の強度を向上できる。また、第2板状片32の周方向先端側が人の手等を傷つけるおそれを低減できる。また、雌側係合部3aの溝4内への雄側係合部3bの挿入を容易にし、カバー1の取付け作業性を向上することができる。
雄側突起6は、雄側係合片30の一部分を山形に変形させることで、形成されている。よって、実施例1の雌側突起5と同様、雄側突起6の高さ(雄側係合片30の面に直交する方向に突出する当接面602の中間部の高さ)を一定以上高くすることが困難である。よって、溝4内において雌側突起5(の先端)を雄側突起6(の当接面602)に十分に近づけることが困難となり、両突起5,6の係合が外れやすくなるおそれがある。これに対し、雌側突起5の突起部51は、第2板状片32とは反対の側に(すなわち第2板状片32から遠ざかるように)基端部50に対し折れ曲がっている。これにより、雄側係合部3bが溝4内に挿入された状態で、突起部51は、第2板状片32に対向する雄側係合片30へ向って延びることとなる。よって、雌側突起5の突起部51の先端を、雄側係合片30に対して突出する雄側突起6の当接面602に近づけることができる。したがって、より確実に雄側突起6を雌側突起5に係合させることができるため、係合が外れにくい。
なお、雄側突起6は、周方向または幅方向で複数設けられていなくてもよい。雄側突起6(当接面602)は、雄側係合片30の面内に局所的に切れ目を付けて切り起こすことにより形成したものに限らず、例えば、雄側係合部3bの先端部を周方向から見たとき幅方向で蛇行する波形に加工し、この先端部を雄側係合片30に対向するよう折り返すことで幅方向に複数並んで形成したものでもよい。すなわち、雄側係合片30に連続する板状片の一部分を山形に変形させることで、雄側突起6を形成することとしてもよい。また、当接面602は幅方向に対し所定の角度を有していてもよい。また、カバー1は、配管の直線部を覆うためのラッキングカバーであってもよい。
雄側突起6は、雄側係合片30の面内に複数、周方向に並んで設けられている。雌側突起5の突起部51は、基端部50に対し第2板状片32とは反対側へ折れ曲がっており、この折れ曲がり部位から周方向一方側に延びる。よって、実施例1と同様、ある雄側突起6に雌側突起5が係合する際、この雄側突起6に周方向他方側で隣接する雄側突起6と雌側突起5とが干渉することが抑制される。よって、雌側突起5の突起部51の先端は、雄側突起6の当接面602の根元側に当接することができるため、係合が外れにくい。なお、より深い位置での係合を実現するために、雄側係合片30の面(雌側突起5が係合する雄側突起6における雄側係合片30の接平面)に対する雌側突起5の突起部51の角度α'を、雄側係合片30の面に対する雄側突起6の後背部501の(望ましくは最大の)角度β'よりも大きく設定することが好ましい。また、雄側係合片30の面に対する雄側突起6の高さh1'よりも、第2板状片32の(周方向先端側の)面に直交する方向における基端部50に対する突起部51の高さh2'のほうを大きく設定することが好ましい。
基端部50は、第2板状片32に対する折り返し部位から第2板状片32に近づくように周方向一方側に延びる。これにより、第2板状片32に対する、基端部50と突起部51とを含めた雌側突起5全体としての高さh3' が増大することを抑制できる。よって、雄側係合部3bと雌側係合部3aが係合した状態での溝4(開口部41)の幅を狭くし、雌側係合部3a(第2板状片32)がカバー1の内側に突出する(膨らむ)ことを抑制することができる。また、雌側突起5の全体としての高さh3'はそのままで、突起部51を長くできるため、上記効果を向上できる。
その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。以下、本参考例のカバー1が奏する効果を記す。
(7)配管等7(断熱材が巻き付けられた配管)の屈曲部を覆うためのエルボ用カバー1であって、
配管の軸を取り囲む周方向で対向し互いに係合される一対の板状の端部2a,2bを備え、
雌側端部2a(一方の端部)に雌側係合部3aが設けられると共に、雄側端部2b(他方の端部)に雄側係合部3bが設けられ、
雌側係合部3aは、
雌側端部2aに連続する板状部分であって、雌側端部2aに対向するように折り返し、この折り返し部位から周方向の一方側に延びる第1板状片31と、
第1板状片31に連続する板状部分であって、第1板状片31に対向するように第1板状片31を挟んで雌側端部2aとは反対側へ折り返し、この折り返し部位から周方向の他方側に延びる第2板状片32と、
第1板状片31と第2板状片32との間の隙間により構成される溝4と、
溝4内に突出する雌側突起5とを有し、
雌側突起5は、
第2板状片32に連続する板状部分であって、第2板状片32に対向するように溝4内に折り返し、この折り返し部位から周方向一方側に延びる基端部60と、
基端部60に連続する板状部分であって、基端部60に対し第2板状片32とは反対の側へ折れ曲がる突起部61とを有し、
雄側係合部3bは、
雄側端部2bに連続して周方向一方側に延びる板状部分であって溝4内に挿入される雄側係合片30と、
雄側係合片30が溝4内から抜き取られる方向で雌側突起5に係合可能に設けられた雄側突起6とを有し、
雄側突起6は、雄側係合片30の一部分、または雄側係合片30に連続する板状片の一部分を、雄側係合片30の面に直交する方向に突出する山形に変形させた形状である。
よって、雌側突起5の上記形状により、雄側突起6(雄側係合部3b)と雌側突起5(雌側係合部3a)との係合を外れにくくすることができるため、カバー1による保護機能を向上することができる。
[参考例2]
図13は、参考例2のカバー1の係合した状態の両係合部3a,3bを開口部22の側から見た、図8と同様の図である。参考例2のカバー1は、参考例1と同様、複数の突起を雄側係合部3bに設けると共に、第2板状片32の先端部分を折り返すことで雌側突起5を形成している。実施例3と同様、雌側係合部3aを雌側端部2aに対しカバー外側に配置している。他の構成は実施例1と同様であるため、対応する構成について実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
雌側係合部3aをカバー外側に配置したことにより、実施例3と同様の作用効果を得る。また、複数の突起を雄側係合部3bに設けると共に、第2板状片32の先端部分を折り返すことにより雌側突起5を形成することで、参考例1と同様の作用効果を得る。
雌側係合部3aをカバー1の外側に配置すると共に、雌側突起5を第2板状片32の周方向先端側に設けた場合には、カバー外側に広がろうとする顎部21の弾性力により、溝4の開口部41において、雄側係合片30(雄側突起6)が第2板状片32の周方向先端部分(雌側突起5)から離間しやすくなる。よって、雌側突起5(の先端)を雄側突起6(の当接面602)に十分に近づけることが困難となり、両突起5,6の係合が外れやすくなるおそれが高い。よって、雌側突起5の突起部51が第2板状片32とは反対の側に(すなわち第2板状片32から遠ざかるように)基端部50に対し折れ曲がった形状とすることで、より確実に雄側突起6を雌側突起5に係合させることができるという上記作用効果を、より効果的に得ることができる。
その他、実施例1と同様の構成により実施例1と同様の作用効果を得る。
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、エルボ用カバーの材料は弾性変形可能なものであればよく、金属(板金)に限らず、例えば樹脂であってもよい。この場合、雌側係合部等を一体に成形する必要はなく、複数の部品を結合することで実施例と同様の形状を実現することとしてもよい。実施例では、エルボ用カバーの材料として金属(板金)を用いたため、十分な強度と良好な耐久性を実現することができる。