この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具(以下、この発明に係る保持治具と称することがある。)は、支持孔が形成された平坦部及びこの平坦部の周縁に鍔部を有する補強部材と電子部品を保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、保持孔が支持孔の内部を通るように補強部材が弾性部材に埋設されて成る。そして、この発明に係る保持治具は弾性部材の弾性力で保持孔に挿入された電子部品を弾発的に保持する。この保持治具は、後述する電子部品の保持用として好適であり、例えば、少なくとも二箇所に電極形成用の導電性ペーストを塗布する必要のある電子部品の保持用としてさらに好適である。
この発明に係る保持治具の一例である保持治具1を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1及び図2に示されるように、支持孔11を有する補強部材5と保持孔15を有する弾性部材6とを備え、保持孔15それぞれが支持孔11それぞれの内部を通るように補強部材5の一部が弾性部材6に埋設されている。
補強部材5は、図2に示されるように、支持孔11が形成された平坦部12が少なくとも後述する弾性部材6に埋設され、弾性部材6が平坦になるように弾性部材6を補強支持する。この補強部材5は、図2及び図3に示されるように、多数の支持孔11が穿設された矩形の平坦部12と、平坦部12の少なくとも1つの周縁、この例においては、平坦部12の4つの周縁に平坦部12の厚さ方向すなわち上面方向及び下面方向に突出した鍔部13とを備えている。鍔部13は、平坦部12を囲繞するように形成され、平坦部12の上面方向及び下面方向における突出量が一定になるように調整されている。換言すると、鍔部13は、図3に明確に示されるように、平坦部12を囲繞する長方形の枠を成し、その厚さ方向の略中央部で鍔部13よりも薄い平坦部12に連結している。この鍔部13は、フランジ部と称することもでき、平坦部12の強度を補強し、また、保持治具1としたときの優れた取扱性を確保する。鍔部13の厚さは、例えば、8.9〜10.0mmの範囲内に設定される。平坦部12は、図2及び図3に示されるように、厚さ方向に貫通する支持孔11が形成される矩形の領域であり、その厚さが一定で平坦に形成されている。平坦部12の厚さは、適宜に調整され、例えば、5.9〜7mmの範囲内に設定される。
支持孔11は、図3に示されるように、平坦部12内のほぼ全域に、その厚さ方向に貫通するように、多数、例えば、5000個以上、好ましくは少なくとも6000個、より好ましくは少なくとも7000個、特に好ましくは少なくとも7500個形成されている(図3において支持孔11の一部を図示していない。)。補強部材5特に平坦部12のほぼ全域に多数の支持孔11が形成されると保持治具1を用いた電子部品の製造方法における生産性を大きく向上させることができる。支持孔11は、通常、後述する保持孔15が形成されるパターンと同一のパターンで形成され、この例においては碁盤目状に穿孔されている。支持孔11の開口は円形であるが多角形等であってもよい。なお、この支持孔11の内径は後述する保持孔15よりも大きくなっている。
この補強部材5は、図3に示されるように、特許文献3とは異なり、平坦部12のほぼ全体にわたって支持孔11が形成されており、この平坦部12内に支持孔11の形成されない領域例えば特許文献3の「強度補強部形成部」を有していない。
平坦部12及び鍔部13を備えて成る補強部材5は、電子部品の生産性、支持孔11の形成数、電子部品の寸法及び保持治具1の強度等を考慮して、鍔部13及び平坦部12の寸法が調整される。補強部材5は、弾性部材6を平坦な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。補強部材5は、加工性、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのが好ましく、特にアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されるのが好ましい。
弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、多数の保持孔15が穿孔され、平坦部12を内部に収容可能な空隙を有している。そして、図2に示されるように、弾性部材6は、補強部材5の平坦部12を埋設し、換言すると、平坦部12の両面を被覆すると共に補強部材5の支持孔11に貫入し、補強部材5の鍔部13と面一になるように、形成されている。すなわち、弾性部材6は、平坦部12の表面に配置され、補強部材5の鍔部13によって囲繞されている。ここで、弾性部材6は、図2に示されるように、その保持孔15が支持孔11の内部を通るように平坦部12を埋設し、好ましくは保持孔15が支持孔11の軸線Cと共通する軸線Cを有するように平坦部12を埋設している。このように弾性部材6が形成されると、弾性部材6と補強部材5との密着性に優れるうえ電子部品の挿入及び抜取りが容易になる。
弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、その厚さ方向に貫通し、自身に挿入又は貫入された電子部品をその弾性力で弾発的に保持する多数の保持孔15を有している。弾性部材6は、保持孔15を多数、例えば、5000個以上、好ましくは少なくとも6000個、より好ましくは少なくとも7000個、特に好ましくは少なくとも7500個有している(図1において保持孔15の一部を図示していない。)。弾性部材6に多数の保持孔15が形成されると保持治具1を用いた電子部品の製造方法における生産性を大きく向上させることができる。弾性部材6の厚さ(両外表面間の距離)は、保持治具1の厚さと同じ厚さに調整され、通常、8.9〜10.0mmに調整される。
保持孔15は、図1に示されるように縦横に整列された碁盤目状に穿孔されている。保持孔15の配列間隔は、支持孔11の配列間隔と同じであり、保持治具1に挿入保持する電子部品のサイズ等によって任意に調整することができる。保持孔15の開口は円形になっているが多角形等であってもよい。この保持孔15は、その軸線に垂直な断面形状に外接する仮想外接円の直径が、電子部品の、保持孔15に挿入される部分における軸線に垂直な断面形状に外接する仮想外接円の直径よりの小さくなっている。
弾性部材6は、電子部品の生産性、電子部品の寸法及び発揮される弾性力等を考慮して、鍔部13と面一になるように、その寸法及び厚さが調整される。弾性部材6は、弾性変形し、電子部品を挿入保持することのできる材料で形成される。このような材料として、例えば、ゴム及びエラストマー等が挙げられ、より具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムとなる液状シリコーンゴム組成物として、例えば、「KE−1950−60A/B」(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとなるシリコーンゴム組成物として、例えば、商品名「KE−1950−50」(信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
この発明に係る保持治具の別の一例である保持治具2を、図面を参照して、説明する。この保持治具2は、図4に示されるように、支持孔(図4に図示しない。)を有する補強部材5と保持孔15を有する弾性部材6とを備え、保持孔15それぞれが支持孔それぞれの内部を通るように補強部材5の一部が弾性部材6に埋設されている。保持治具2は支持孔及び保持孔15が穿孔される配列及び数が異なること以外は保持治具1と基本的に同様である。
弾性部材6が有する保持孔15は、図4に示されるように、所謂「千鳥状」に配列されている。具体的には、保持孔15は、図4に図示した補強部材5の短辺方向である第1配列方向に沿って奇数行に配列された第1保持孔15Aと偶数行に配列された第2保持孔15Bとからなる。さらに具体的には、保持孔15は、第1配列方向及びこの第1配列方向に交差する第2配列方向すなわち補強部材5の長辺方向に沿って配列された第1保持孔15Aと、第1配列方向に沿って隣接する2つの第1保持孔15A、並びに、第2配列方向の同じ側に前記2つの支持孔に隣接する2つの第1保持孔15Aで囲繞される領域に、好ましくはその中心に配列された第2保持孔15Bとからなる。そして、第1配列方向の最外列に第1保持孔15Aが配列され、第2配列方向の最外列に第2保持孔15Bが配列されている。このような所謂「千鳥状」の配列において、対角に位置する第1保持孔15A及びこれらの間に配列された第2保持孔15Bはそれらの軸線が同一直線上にあって、これらの直線と第1配列方向及び第2配列方向それぞれとの角度は約45°になっている。このように多数の保持孔15が所謂「千鳥状」に配列されていると、前記のような所謂「千鳥状」の配列は同じ領域であれば例えば図3に示す碁盤目状の配列等に対してより多数の、すなわち、高密度で保持孔15を形成することができるので、保持治具2の生産性を大きく向上させることができる。したがって、より多数の電子部品を保持するには保持孔15は所謂「千鳥状」に配列されているのが好ましい。
平坦部12に形成される支持孔11は、図4に図示されないが、保持孔15と基本的に同様に第1配列方向及び第2配列方向に沿って所謂「千鳥状」に配列されている。
保持治具1及び2は、例えば、電子部品の軸線が保持孔15の軸線と略平行となる状態、好ましくは一致する状態に電子部品を保持孔15に挿入して、その弾性力で弾発的に保持する。そして、電子部品を保持した保持治具1及び2は、電子部品の製造工程、搬送工程等に供される。保持治具1及び2に電子部品を保持するには、例えば、保持孔15と同数の貫通孔が保持孔15と同じ間隔で同様に整列された整列板を準備し、貫通孔と保持孔15とが一致するように整列板を保持治具1の上に重ね合わせる。次いで、整列板の貫通孔それぞれに電子部品を挿入し、電子部品を平坦な板状部材で均一に保持治具側に押圧する。そうすると、電子部品は保持孔15に前記状態となるように挿入され、弾発的に保持される。このような方法の例として、例えば特許第4337498号明細書には、従来の各種方法(例えば0004欄〜0009欄及び図9〜14参照。)と、これらの各種方法を改良した方法(特許請求の範囲及び図1及び図2等参照。)とが記載されている。
この発明に係る保持治具に保持される電子部品は、電子部品の製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、電子部品を製造可能な電子部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられ、通常、小型であるから小型電子部品とも称される。また、電子部品の製造には電子部品の搬送工程等も含まれるから、電子部品は、電子部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、電子部品と電子部品用部材とは明確に区別される必要はなく、「電子部品」と称しても「電子部品及び電子部品用部材」を意味することがある。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、チップコンデンサ、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。このような電子部品は、例えば、その軸線長さが1.0〜3.2mmで、保持孔に挿入される部分の、軸線に垂直な断面形状に外接する仮想外接円の直径が0.5〜1.6mmの寸法を有している。
この発明によれば、電子部品の生産性向上という要望を実現するために、支持孔11及び保持孔15の形成数を大幅に増加させても補強部材5の平坦性を維持できるから、図4に示される保持治具2のように、電子部品の保持数が大幅に増加する一方で補強部材5の強度が低下する所謂「千鳥配列」に支持孔11及び保持孔15の配列することもできる。
この発明に係る成形金型は、前記した、この発明に係る保持治具を成形する成形金型であって、第1金型及び第2金型と第1成形ピン及び第2成形ピンと押進部材とを備えていることを特徴とする。この発明に係る成形金型における第1金型及び第2金型は互いに対向配置されて補強部材が配置される配置空間を形成する。この発明に係る成形金型における第1成形ピン及び第2成形ピンは保持治具の保持孔を形成するピンであり、配置空間に縦立するように第1金型及び第2金型それぞれに立設されている。この発明に係る成形金型における押進部材は、配置空間における第1金型及び第2金型の少なくとも一方の金型側すなわち前記配置空間の表面側に他方の金型側すなわち他方の表面側に向かって相対的に前進可能に配置されている。そして、この押進部材は配置空間内に配置された補強部材の鍔部に対向する第1押進部と他方の金型に立設された成形ピンに対向する第2押進部とを有している。このような構成を有するこの発明に係る成形金型は、配置空間内で成形された一体成形体の鍔部と弾性部材とを第1押進部と第2押進部とを押進して補強部材の平坦性を維持した状態のままで一体成形体を容易かつ速やかに成形金型から脱型させることができる。したがって、この発明に係る成形金型は、後述する、この発明に係る保持治具の製造方法における成形金型として好適に用いられる。
この発明に係る成形金型の一例としての成形金型(以下、この発明に係る第1成形金型と称することがある。)21を、図面を参照して、説明する。この発明に係る第1成形金型21は、図5に示されるように、第1金型22と第2金型23と押進部材24と第1成形ピン34と第2成形ピン35とを備え、第1金型22と第2金型23とを重ね合わせたときに形成される配置空間36を有している。この第1成形金型21は、例えば図7に示されるように配置空間36に補強部材5を収納するから、この配置空間36は収納凹部とも称される。なお、図5は第1成形金型21をその垂直面で切断したときの概略断面図である。
第1金型22は、収納凹部36を形成する第1凹部41と、第1凹部41に、すなわち、第1凹部41の底面41aから第1凹部41の開口に向かって立設された第1成形ピン34とを有している。この第1凹部41は、図5に示されるように、収納凹部36が補強部材5を収納可能な形状及び寸法となるように形成され、具体的には、補強部材5の厚さ方向の略半分から上方を収納可能な形状及び寸法に形成されている。そして、第1凹部41は、その底面41aが全体にわたって平坦で隆起部及び陥没部がなく、一定の深さを有している。底面41aは鏡面処理されていてもよい。
第1成形ピン34は、収納凹部36に補強部材5を配置したときに支持孔11を貫通するように立設されており、保持孔15とほぼ同様の断面形状を有する棒体に形成されている。この第1成形ピン34は、収納凹部36の高さと略同一の高さで多数が立設されている。換言すると、多数の第1成形ピン34それぞれは、収納凹部36の相対面する内面の一方すなわち第1凹部41の底面41aから第2金型23の第2凹部42の底面42a、第1押進部材45及び第2押進部材46の先端面まで延在するように、形成されている。第1成形金型21において、多数の第1成形ピン34は、図5に示されるように、隣接する支持孔11に貫通する複数本の第1成形ピン34が林立した第1成形ピン林立部34aを含んでいる。具体的には、縦横5列に配列された25本の第1成形ピン34が集合した第1成形ピン林立部34aが縦横に等間隔で偏在又は散在する所謂「海島構造」となるように、多数の第1成形ピン34が第1凹部41に立設されている。
このように、第1金型22は第1成形ピン34の立設状態が異なること以外は保持治具を形成するための公知の金型、例えば、特許第4007587号明細書に記載された「保持プレート金型」と基本的に同様である。この第1金型22は、図示しない加熱部材等に固定されていてもいなくてもよく、加熱部材等に固定されている場合には固定型と称することもでき、加熱部材等に固定されることなく第2金型23に向かって前後進可能に構成されている場合には可動型と称することもできる。
第2金型23は、第1成形金型21とされたときにすなわち第1金型22を積重したときに、補強部材5が収納される収納凹部36を第1凹部41と共に形成する第2凹部42と、第2凹部42に、すなわち、第2凹部42の底面42aから第2凹部42の開口に向かって立設された第2成形ピン35と、押進部材24とを有している。この第2凹部42は、図5に示されるように、収納凹部36が補強部材5を収納可能な形状及び寸法となるように形成され、具体的には、補強部材5の厚さ方向の略半分から下方を収納可能な形状及び寸法に形成されている。そして、第2凹部42は、その底面42a(第1押進部材45及び第2押進部材46の先端面を含む。)が全体にわたって平坦で隆起部及び陥没部がなく、一定の深さを有している。底面42aは鏡面処理されていてもよい。
第2成形ピン35は、収納凹部36に補強部材5を配置したときに支持孔11を貫通するように立設されており、保持孔15とほぼ同様の断面形状を有する棒体に形成されている。この第1成形ピン35は収納凹部36の高さと略同一の高さで多数が立設されている。換言すると、多数の第2成形ピン35それぞれは、収納凹部36の相対面する内面の一方すなわち第2凹部42の底面42aから第1金型22における第1凹部41の底面41aまで延在するように、形成されている。
第2成形金型32において、多数の第2成形ピン35は、図5に示されるように、隣接する支持孔11に貫通する複数本の第2成形ピン35が林立した第2成形ピン林立部35aを含んでいる。具体的には、縦横5列に配列された25本の第2成形ピン35が集合した第2成形ピン林立部35aが縦横に等間隔で偏在又は散在する所謂「海島構造」となるように、かつ、第1金型22と第2金型23とを積重したときに第1成形ピン34換言すると第1成形ピン林立部34aに対向しないように、多数の第2成形ピン35が第2凹部42に立設されている。このように、第1成形ピン34及び第2成形ピン35は、図5に示されるように、第1成形ピン林立部34aと第2成形ピン林立部35aとが縦横に交互に配列され、第1金型22と第2金型23とを積重したときに、全体として、収納空間36に収納される補強部材5の支持孔11の配列状態及び配列数と同一の配列状態及び配列数で収納空間36に林立するように、第1金型22及び第2金型23それぞれに立設されている。したがって、第1成形金型21を用いて製造される保持治具の保持孔はすべて第1成形ピン34及び第2成形ピン35で形成される。ここで、第1成形ピン34と第2成形ピン35との立設比(第1成形ピン34:第2成形ピン35)は3〜6:7〜4の割合であるのが、第1金型22を一体成形体から脱型する際及び第2金型23から一体成形体を脱型する際に補強部材5の湾曲及び変形を高度に防止できる点で好ましい。
この第2金型23は第2成形ピン35の立設状態が異なること、また、後述する押進部材24を有すること以外は保持治具を形成するための公知の金型、例えば、特許第4007587号明細書に記載された「保持プレート金型」と基本的に同様である。この第2金型23は、図示しない加熱部材等に固定されていてもいなくてもよく、加熱部材等に固定されている場合には固定型と称することもでき、加熱部材等に固定されることなく第1金型22に向かって前後進可能に構成されている場合には可動型と称することもできる。
押進部材24は、図5に示されるように、収納空間36の第2金型23側の表面側に配置され、具体的には第2金型23の第2凹部42に設けられ、この第2凹部42から第1金型22側に向かって第2金型23に対して相対的に前進及び後進可能になっている。そして、この押進部材24は、収納空間36内に配置された補強部材5の鍔部13に対向するように配置された第1押進部45と、第1金型22に立設された第1成形ピン34具体的には第1成形ピン林立部34aに対向するように配置された第2押進部46とを有している。この第1押進部45は鍔部13と鍔部13の近傍で第1成形ピン林立部34aが貫通した部分(最外列林立部とも称する。)とに接触して一体成形体を収納空間36から押し出し、第2押進部46は弾性部材6における第1成形ピン林立部34aが貫通した部分(最外列林立部を除く。)に接触して一体成形体を収納空間36から押し出す。したがって、この押進部材24は一体成形体を離型させるので離型部材とも称される。なお、この押進部材24は、図5に示されるように、成形ピンを有していない。
押進部材24は、具体的には、図5に示されるように、第2金型23の第2凹部42にその厚さ方向に貫通形成された第1通路37及び第2通路38と、第1通路37と同一の形状及び寸法を有する筒状体又は壁状体であり、自身の軸線方向に第1通路37内を前後進可能に配置された第1押進部45と、第2通路38と同一の形状及び寸法を有する筒状体又は壁状体であり、自身の軸線方向に第2通路38内を前後進可能に配置された第2押進部46と、第2金型23から突出した第1押進部45及び第2押進部46を連結する連結部47とを備えている。第1通路37は収納空間36内に配置された補強部材5の鍔部13に対向する位置に穿孔され、第2通路38は収納空間36内に林立する第1成形ピン林立部34aに対向する位置に穿孔されている。第1押進部45及び第2押進部46は軸線長さが同一になっており、その先端面が鏡面処理されていてもよい。第1押進部45及び第2押進部46それぞれは少なくとも1つ設けられていればよいが、この発明の目的をよく達成できる点で複数設けられているのが好ましく、例えば、図5に示されるように縦横それぞれに、2つの第1押進部45と4つの第2押進部46を形成することもできる。連結部47は第1押進部45及び第2押進部46の後端を連結する板体とされ、第1押進部45及び第2押進部46を同期して前進及び後進させる。この押進部材24の第1押進部45及び第2押進部46は後進してその先端面が第2凹部42の底面42aと実質的に面一となり、収納凹部36に向かって前進して底面42aから突出し、収納凹部36内で成形体された一体成形体を脱型させる。
第1押進部45は、その先端面が、鍔部13と鍔部13の近傍で第1成形ピン林立部34aが貫通した部分(最外列林立部とも称する。)とに対向するように配列され、第2押進部46は、その先端面が、第1成形ピン林立部34aが貫通した部分(最外列林立部を除く。)に対向するように配列されている。具体的には、第1押進部45は、鍔部13に対向するように配置された枠状部と、縦横各方向に沿って後述する第2押進部46と交互になるように枠状部に連設された連設部とから成る。第2押進部46は、第1押進部45の枠状部の内部に第1押進部45と共に市松模様を形成するように、第1押進部45と縦横に交互になるように配置されている。第1押進部45の連設部及び第2押進部46は軸線に垂直な断面形状が略正方形の筒体となっている。
この発明に係る成形金型の別の一例としての成形金型(以下、この発明に係る第2成形金型と称することがある。)26を、図面を参照して、説明する。この発明に係る第2成形金型26は、図6に示されるように、第1金型27と第2金型28と押進部材29と第1成形ピン34と第2成形ピン35とを備えている。この第1成形金型26は、第1金型27と第2金型28とを押進部材29を介して重ね合わせたときに補強部材5を配置する配置空間39が形成される。そして、この押進部材29は第1金型27及び第2金型28の少なくとも一方、この例においては第1金型27と共にこれらの間に配置空間39を形成する。このように、この第2成形金型26は、第2金型28、押進部材29及び第1金型27の順に配置され、押進部材29と第1金型27との間に配置空間39が形成される。この押進部材29は第1金型27と第2金型28との間に介装されるので中子と称することもでき、また、後述するように一体成形体を離型させるので離型部材と称することもできる。このように、第1成形金型26において、配置空間39は補強部材5を挟持するから挟持空間とも称される。なお、図6(a)は第1成形金型26をその垂直面で切断したときの概略断面図であり、図6(b)は押進部材29の上面図である。この例において、第1金型27及び押進部材29は第2金型28に対して前後進するように可動になっており、移動型と称することができ、第2金型28は図示しない成形機の基板等に固定されており、固定型と称することができる。
第1金型27は、図6に示されるように、第2成形金型とされたときに挟持空間39を形成する平坦な内表面51を有する板状金型である。第1金型27は挟持空間39及びこの挟持空間39に配置される補強部材5と略同一寸法の矩形になっている。この内表面51には、挟持空間39に林立する第1成形ピン34が立設されている。第1成形ピン34は、挟持空間39に補強部材5を配置したときに支持孔11を貫通するように立設されており、保持孔15とほぼ同様の断面形状を有する棒体に形成されている。この第1成形ピン34は、挟持空間39の高さと略同一の高さで多数が立設されている。換言すると、多数の第1成形ピン34それぞれは、挟持空間39を形成する相対面する内面の一方すなわち第1金型27の内表面51から押進部材29の表面58まで延在するように、形成されている。第1成形金型26において、多数の第1成形ピン34は、図6に示されるように、隣接する支持孔11に貫通する複数本の第1成形ピン34が林立した第1成形ピン林立部34aを含んでいる。具体的には、周囲を一巡する枠状に縦又は横5列に配列された第1成形ピン林立部34a(最外列林立部とも称する。)と、この最外列林立部に囲繞された領域内に縦横5列に配列された25本の第1成形ピン34が集合した第1成形ピン林立部34a(内部林立部とも称する。)が縦2列横4行に等間隔で偏在又は散在する所謂「海島構造」となるように、多数の第1成形ピン34が内表面51に立設されている。内表面51は鏡面処理されていてもよい。このように、第1金型27は第1成形ピン34がこのように立設された板状金型であること以外は第1成形金型21の第1金型22と基本的に同様である。
第2金型28は、図6に示されるように、第2成形ピン35の立設位置及び軸線長さが異なること以外は第1金型27と基本的に同様である。すなわち、第2金型28は、第2成形金型26とされたときに押進部材29を載置する平坦な内表面52を有する板状金型である。第2金型28はその内表面52に載置する押進部材29と略同一寸法の矩形になっている。内表面52には挟持空間39に林立する第2成形ピン35が立設されている。第2成形ピン35は、挟持空間39に補強部材5を配置したときに支持孔11を貫通するように立設されており、保持孔15とほぼ同様の断面形状を有する棒体に形成されている。この第2成形ピン35は後述する押進部材29の厚さ及び挟持空間39の高さの和と略同一の高さで多数が立設されている。換言すると、多数の第2成形ピン35それぞれは、内表面52から押進部材29を貫通して第1金型27の内表面51まで延在するように、形成されている。この内表面52は鏡面処理されていてもよい。
第2成形金型28において、内表面52に立設された多数の第2成形ピン35は、図6に示されるように、隣接する支持孔11に貫通する複数本の第2成形ピン35が林立した第2成形ピン林立部35aを含んでいる。具体的には、縦横5列に配列された25本の第2成形ピン35が集合した第2成形ピン林立部35aが縦3列横5行に等間隔で偏在又は散在する所謂「海島構造」となるように、かつ、第1金型27と第2金型28とを押進部材29を介して積重したときに前記最外列林立部に囲繞された領域内に第1成形ピン34換言すると内部林立部の第1成形ピン林立部34aに対向しないように、多数の第2成形ピン35が内表面51に立設されている。このように、第1成形ピン34及び第2成形ピン35は、図6に示されるように、最外列林立部の第1成形ピン林立部34aに囲繞された領域内に内部林立部の第1成形ピン林立部34aと第2成形ピン林立部35aとが縦横に交互に配列され、第1金型27と第2金型28とを積重したときに、全体として、挟持空間39に収納される補強部材5の支持孔11の配列状態及び配列数と同一の配列状態及び配列数で挟持空間39に林立するように、第1金型27及び第2金型28それぞれに立設されている。したがって、第2成形金型26を用いて製造される保持治具の保持孔はすべて第1成形ピン34及び第2成形ピン35で形成される。ここで、第1成形ピン34と第2成形ピン35との立設比(第1成形ピン34:第2成形ピン35)は3〜6:7〜4の割合であるのが、第1金型27を一体成形体から脱型する際及び第2金型28から一体成形体を脱型する際に補強部材5の湾曲及び変形を高度に防止できる点で好ましい。この第2金型28は前記したこと以外は例えば保持治具を形成するための公知の金型と基本的に同様である。
押進部材29は、挟持空間39と第2金型28との間に配置すなわち介装され、第2金型28に立設された第2成形ピン35が貫通する貫通部57を有している。より具体的には、押進部材29は、図6に示されるように、第2金型28の内表面52に重ね合わされ、第1金型27と共に挟持空間39を形成する。押進部材29は、第2金型28から第1金型27に向かって相対的に前進及び後進可能になっている。そして、この押進部材29は、図6に示されるように、挟持空間39に配置される補強部材5と略同一寸法の矩形の板状をなし、挟持空間39の上面となる平坦な表面58と、厚さ方向に貫通する貫通部57とを有している。この表面58は鏡面処理されていてもよい。この貫通部57は、第2金型28の第2成形ピン林立部35aそれぞれを独立に貫通させて第2成形ピン35を挟持空間39に縦立させる。このように、貫通部57は、第2成形ピン林立部35aを貫通させることができる幅を有する矩形をなし、第2成形ピン林立部35aと同様の配列で同数穿孔されている。したがって、押進部材29は、図6(b)に示されるように、その表面58の周縁部が挟持空間39内の鍔部13及び前記最外列林立部に対向する第1押進部55となり、表面58のうち隣接する貫通部57間の表面が第1金型27に立設された第1成形ピン34に対向する第2押進部56となる。すなわち、押進部材29は格子状に形成された第2押進部56と第2押進部56の外縁を囲繞する第1押進部55とを有し、第1押進部55及び第2押進部56が一体に形成された板状部材である。この第1押進部55は鍔部13と鍔部13の近傍で第1成形ピン林立部34aが貫通した部分(最外列林立部とも称する。)とに接触して一体成形体を挟持空間39から押し出し、第2押進部56は弾性部材6における第1成形ピン林立部34aが貫通した部分に接触して一体成形体を収挟持空間39から押し出す。したがって、この押進部材29は一体成形体の離脱部材とも称される。なお、この押進部材29は、図6に示されるように、成形ピンを有していない。
このように、押進部材29は、第2成形ピン35の集合体である第2成形ピン林立部35aそれぞれを独立かつ一体的に貫通させる複数の貫通部57を有していることを特徴とする。したがって、第2成形ピン林立部35aを貫通させる貫通部57を第2成形ピン35と同寸法で同数形成しなくてもよく、押進部材29すなわち第2成形金型26の製造コストは低く、メインテナンス性は高く、場合によっては、配列が異なる第2成形ピン35が立設された第2金型28にも適用できることがあり汎用性も高くなることがある。そして、この押進部材29は、後述するように、一体成形体に部分的に接触して、具体的には、補強部材5の鍔部13と第1成形ピン林立部34aの前記最外列林立部に対応する位置に形成された弾性部材6とを押出して一体成形体を第2成形金型26すなわち第2金型28から押出し、第1成形ピン林立部35aに対応する位置に形成された弾性部材6には接触せず押出すこともない。
第1成形金型21及び第2成形金型26は、例えば、金属、耐熱性樹脂等で作製できる。第2成形金型26の押進部材29は、一体成形体を脱型させるときに、一体成形体の弾性部材6と共に補強部材5の鍔部13を押し進める板状とされているから、この押進部材29は比較的肉薄にできる。したがって、押進部材29の貫通部57で形成される一体成形体の突出部は比較的低くでき、弾性材料のロスを低減できる。
この発明に係る保持治具の製造方法は、保持治具例えば前記保持治具1及び2を、補強部材の鍔部及び弾性部材を押進する押進部材を備えた成形金型で一体成形して、製造する製造方法であって、成形金型内で成形された一体成形体の鍔部と弾性部材とを押進部材で押進して一体成形体を成形金型から離型することを特徴とする。すなわち、この発明に係る保持治具の製造方法は、成形金型の押進部材で一体成形体の鍔部と弾性部材とを押進して一体成形体すなわち補強部材の平坦性を維持しつつ補強部材と弾性部材との一体成形体を成形金型から離型する方法である。したがって、この発明に係る保持治具の製造方法は、成形金型の押進部材で一体成形体の鍔部と弾性部材とを押進して一体成形体を成形金型から離型する工程(離型工程とも称する。)を有している。
この発明に係る保持治具の製造方法において、一体成形体の鍔部と弾性部材とは押進部材で押進されればよく、複数の押進部材で一体成形体の鍔部と弾性部材とが独立かつ同期して押進されてもよく、単一の押進部材で一体成形体の鍔部と弾性部材とが一体的に押進されてもよい。
この発明に係る保持治具の製造方法の一例(以下、この発明に係る第1製造方法と称することがある。)として図5に示される第1成形金型21を用いた製造方法を説明する。
この発明に係る第1製造方法においては、まず、第1成形金型21、補強部材5及び弾性部材6を形成する弾性材料を準備する。図7はこの発明に係る保持治具の製造方法の一例を説明する概略説明図であり、図7(a)は第1成形金型21に補強部材5を配置した状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図であり、図7(b)は第1成形金型21の第1金型22を開いた状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図であり、図7(c)は第1成形金型21の押進部材24を前進させて一体成形体を押出した状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図である。
準備する第1成形金型21は前記した通りである。この第1成形金型21は、トランスファー成形法及びインジェクション成形法(射出成形法)等に用いられる公知の成形機(図7に図示しない。)に、第2金型23が固定され、第1金型22及び押進部材24が独立して可動となるように、装着される。
この発明に係る第1製造方法においては、補強部材5を準備する。例えば、鍔部13の厚さと同じ又はそれよりも厚い金属又は樹脂等製の板体から、支持孔11が形成されていない平坦部とその周囲に鍔部13とを有する板状体を所望寸法に切り出す。又は、支持孔11が形成されていない平坦部と鍔部13とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって、平坦部と鍔部13とを所望の位置に接合して、前記板状体を作製する。このようにして作製された板状体の平坦部に所定形状及び直径を有する多数の支持孔11を研削、切削、やすり仕上げ等によって所定の間隔で穿設して補強部材5を作製する。なお、平坦部12の表面に弾性部材6との密着を高めるために接着剤又はプライマー等を塗布してもよい。
この発明に係る第1製造方法においては、弾性部材6を形成する弾性材料を準備する。この弾性材料は、ゴム組成物、エラストマー組成物等が挙げられ、例えば、前記した液状シリコーンゴム組成物等が挙げられる。
この発明に係る第1製造方法においては、図7(a)に示されるように、成形機に固定された第2金型23の上方に第1金型22を配置して、第1金型22と第2金型23との間に形成される収納凹部36に、第1成形ピン34及び第2成形ピン35が支持孔11を貫通するように、補強部材5を配置する配置工程を実施する。具体的には、第2金型23における第2凹部42に補強部材5を収納して、第2金型23から突出している補強部材5が第1凹部41に収納されるように第1金型22を第2金型23上に載置する。このようにして、配置工程が終了する。配置工程が終了すると、図7(a)に示されるように、補強部材5が収納凹部36に収納され、第1成形ピン34及び第2成形ピン35が支持孔11すべての内部に貫通した状態になり、第1成形ピン34及び第2成形ピン35と第1金型22と第2金型23と補強部材5とで弾性部材6に対応するキャビティ61が形成される。
次いで、この発明に係る第1製造方法においては、図7(a)に示されるように、第1成形金型21内に形成されたキャビティ61に準備した弾性材料を充填した後にこの弾性材料を加熱して、補強部材5と弾性部材6との一体成形体を成形する成形工程を実施する。具体的には、キャビティ61に弾性材料を充填、注入又は配置して、図示しない加熱手段等により第1成形金型21ごと弾性材料を加熱硬化する。弾性材料の成形方法は、特に限定されず、例えば、トランスファー成形法及びインジェクション成形法(射出成形法)等の成形方法を採用することができる。成形温度及び成形時間等は、使用する弾性材料が硬化成形する温度及び時間であればよく、弾性材料に応じて任意に調整される。このようにして成形工程が終了すると、補強部材5の平坦部12を弾性部材6で埋設した一体成形体が得られる。
この発明に係る第1製造方法においては、所望により、このようにして成形した一体成形体を第1成形金型21ごと放冷し、次いで、成形した一体成形体を第1成形金型21から離型する離型工程を実施する。この離型工程は、一体成形体を第1成形金型21から離型するために第1金型22を開く第1離型工程と、図7(c)に示されるように、一体成形体の鍔部13と弾性部材6とを押進部材24で押進して一体成形体を第2金型23から離型する第2離型工程とを有する。
第1離型工程は、図7(a)に示されるように成形工程が終了した後に、第1金型22を第2金型23から相対的に引き離す。このように第1金型22を第2金型23から離間させると、第1成形ピン34は第1金型22の移動と共に配置空間36から後退して弾性部材6から抜脱する。このとき、収納凹部36内に収容されている一体成形体は第2金型23に立設された第2成形ピン35が挿通した状態にあるから、第1金型22に立設した第1成形ピン34が一体成形体から抜脱するときの摩擦応力等が吸収、相殺されて、補強部材5を実質的に湾曲も変形もさせることなく、すなわち、補強部材5が第1金型22の移動に追従することなく、第1金型22が一体成形体から離脱する。このように、補強部材5を変形も損傷もさせることなく一体成形体から第1成形ピン34を一段階で一挙に抜脱することができる。このようにして第1金型22を引き離した状態が図7(b)に示されている。
この発明に係る第1製造方法においては、第1離型工程に次いで、押進部材24を一体成形体に向かって前進させて、一体成形体を第2金型23から離型する第2離型工程を実施する。この第2離型工程は、図7(c)に示されるように、収納凹部36に収納されている補強部材5の鍔部13及び最外列林立部を第1押進部45で押進すると共に、一体成形体の弾性部材6における第1成形ピン林立部34aが貫通した部分(最外列林立部を除く。)を第2押進部46で押進して、一体成形体を収納空間36から押し出す。このとき、押進部材24は、図5及び図7(c)に示されるように、その第1押進部45が鍔部13及び最外列林立部に接触し、その第2押進部46が最外列林立部を除く弾性部材6に接触した状態にある。そして、第1押進部45及び第2押進部46は板状の連結部47で連結されているから、第1押進部45及び第2押進部46の押進速度及び押進状態はほぼ同一となり、一体成形体の鍔部13と弾性部材6とを押進部材24で同期して押進できる。ここで、「同期」とは、補強部材5を変形させない程度のわずかなずれがあってもよく、正確な同期のみを意味するものではない。
押進部材24は、第2押進部46で弾性部材6を押出すと共に、第1押進部45で鍔部13をも同期して押出すことができるので、補強部材5を収納する収納凹部36を有する成形金型を用いると一体成形体を補強部材5の平坦性を維持しつつ離型しにくいことがあるが、第1成形金型21を用いる、この発明に係る第1製造方法においては、補強部材5の平坦性を維持しつつ容易に離型させることができる。また、押進部材24は、第2押進部46で弾性部材6を押出すと共に、第1押進部45で鍔部13をも同期して押出すことができるので、押進部材24の押進力は弾性部材6と鍔部13と分散されるから、例えば、大型化された保持治具又は製造可能な電子部品数を増大させた保持治具を製造するために補強部材5の強度が低下していても、この第2離型工程において、補強部材5が第2成形ピン35の抜脱に追従することなく、補強部材5の平坦性を維持することができる。また、このように押進部材24の押進力が分散されるから、補強部材5の平坦性を維持するために、小さな押進力で徐々に一体成形体を押出さなくてもよく、比較的大きな押進力で比較的高速で一体成形体を押出すことができる。さらに、押進部材24の押進力が分散されるから、第2押進部46による弾性部材6の損傷を抑えることができるので、弾性部材6における第2押進部が接触する部分を肉厚にしなくてもよく、弾性材料を低減することができる。したがって、第1押進部45及び第2押進部46を有する押進部材24で一体成形体を第2金型23から押出すと、補強部材5の平坦性を維持した状態のままで容易かつ速やかに一体成形体の弾性層に浸入している複数の第2成形ピン35を一段階で一挙に抜脱させることができ、一体成形体を第2金型23から脱型させることができる。
また、このようにして押進部材24で一体成形体を第2金型23から押出すと、一体成形体は収納凹部36に収納された状態で第2金型23から離型されるから、一体成形体に対する第2成形ピン35の軸線の相対的な位置は大きく変化せず、第2成形ピン35の軸線と形成された保持孔15の軸線とが同軸となっている。したがって、形成される複数の保持孔15はそれらの開口径がほぼ一定となる。このように、第1成形金型21を用いる、この発明に係る第1製造方法によれば、補強部材5の平坦性を維持した状態のままで一体成形体を容易かつ速やかに脱型させることができるから、成形時及び離型時に多数の第2成形ピン35が補強部材5に対して均一に縦立しており、開口径のほぼ均一な多数の保持孔15を有する保持治具を製造できる。
この発明に係る第1製造方法において、このようにして形成された一体成形体の弾性部材6には成形バリが生じていることがあるので必要に応じて成形バリを取り除くための研削等の表面処理が行われてもよく、また、形成された弾性部材6の表面を鏡面加工することもできる。このような表面処理として、例えば、面研削、フライス研削、ラッピング、鏡面加工処理等が挙げられる。
このようにして、保持治具1を製造することができる。なお、前記保持治具2もこの発明に係る第1製造方法と同様にして製造できる。
この発明に係る第1製造方法によれば、この発明に係る成形金型の一例である第1成形金型21を用いて、第2押進部46で弾性部材6を押出すと共に第1押進部45で鍔部13をも同期して押出すことができるので、この第2離型工程において補強部材5の平坦性を維持することができる。したがって、この発明によれば、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造できる保持治具の製造方法、及び、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することができる。
この発明に係る保持治具の製造方法の別の一例(以下、この発明に係る第2製造方法と称することがある。)として、図6に示される第2成形金型26を用いた製造方法を説明する。
この発明に係る第2製造方法においては、まず、第2成形金型26、補強部材5及び弾性部材6を形成する弾性材料を準備する。なお、補強部材5及び弾性材料は、この発明に係る第1製造方法と基本的に同様である。図8はこの発明に係る保持治具の製造方法の別の一例を説明する概略説明図であり、図8(a)は第2成形金型26に補強部材5を配置した状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図であり、図8(b)は第2成形金型26の第1金型27を開いた状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図であり、図8(c)は第2成形金型26の押進部材29を前進させて一体成形体を押出した状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図である。
準備する第2成形金型26は前記した通りである。この第2成形金型26は、トランスファー成形法及びインジェクション成形法(射出成形法)等に用いられる公知の成形機(図8に図示しない。)に第2金型28が固定され、第1金型27及び押進部材29が独立して可動となるように、装着される。
この発明に係る第2製造方法においては、図8(a)に示されるように、成形機に固定された第2金型28の上方に押進部材29及び第1金型27をこの順に配置して、第1金型27と押進部材29との間に形成される挟持空間39に、第1成形ピン34及び第2成形ピン35が支持孔11を貫通するように、補強部材5を配置する配置工程を実施する。具体的には、第2成形ピン35が貫通部57を貫通するように第2金型28の内表面51上に押進部材29を載置し、押進部材29から突出する第2成形ピン35が支持孔11を貫通するように押進部材29の上に補強部材5を載置し、さらに、補強部材5の支持孔11に第1成形ピン34が貫通するように補強部材5の上に第1金型27を載置する。このようにして配置工程が終了する。配置工程が終了すると、図8(a)に示されるように、第1成形ピン34が支持孔11を貫通し、第2成形ピン35が押進部材29の貫通部及び支持孔11を貫通するように、補強部材5が押進部材29と第1金型27とで挟持され、第1成形ピン34及び第2成形ピン35と第1金型27と第2金型28と押進部材29と補強部材5とで弾性部材6に対応するキャビティ62が形成される。なお、補強部材5の平坦部12は鍔部13でその周囲が密閉されている。
この発明に係る第2製造方法においては、次いで、図8(a)に示されるように、補強部材5と弾性部材6との一体成形体を成形する成形工程を実施する。この成形工程はこの発明に係る第1製造方法における成形工程と基本的に同じである。
この発明に係る第2製造方法においては、所望により、このようにして成形した一体成形体を第2成形金型26ごと放冷し、次いで、成形した一体成形体を第2成形金型26から離型する離型工程を実施する。この離型工程は、一体成形体を第2成形金型26から離型するために第1金型27を開く第1離型工程と、図8(c)に示されるように、一体成形体の鍔部13と弾性部材6とを押進部材29で押進して一体成形体を第2金型28から離型する第2離型工程とを有する。
第1離型工程は、図8(a)に示されるように成形工程が終了した後に、第1金型27を第2金型28及び押進部材29から相対的に引き離す。このように第1金型27を第2金型28及びび押進部材29から離間させると、第1成形ピン34は第1金型27の移動と共に挟持空間39から後退して弾性部材6から抜脱する。このとき、挟持空間39内に収容されている一体成形体は第2金型28に立設された第2成形ピン35が挿通した状態にあるから、第1金型27に立設した第1成形ピン34が一体成形体から抜脱するときの摩擦応力等が吸収、相殺されて、補強部材5を実質的に湾曲も変形もさせることなく、すなわち、補強部材5が第1金型22の移動に追従することなく、第1金型27が一体成形体から離脱する。このように、補強部材5を変形も損傷もさせることなく一体成形体から第1成形ピン34を一段階で一挙に抜脱することができる。このようにして第1金型27を引き離した状態が図8(b)に示されている。
この発明に係る第2製造方法においては、第1離型工程に次いで、押進部材29を第2金型28から離間するように前進させて、一体成形体を第2金型28から離型する第2離型工程を実施する。この第2離型工程は、図8(c)に示されるように、挟持空間39に配置されている補強部材5の鍔部13及び最外列林立部を第1押進部55で押進すると共に、一体成形体の弾性部材6における第1成形ピン林立部34aが貫通した部分を第2押進部56で押進して、一体成形体を挟持空間39から押し出し、すなわち第2金型28から離間させる。このとき、押進部材29は、図6及び図8(c)に示されるように、その第1押進部55が鍔部13及び最外列林立部に接触し、その第2押進部56が内部林立部における弾性部材6に接触した状態にある。そして、第1押進部55及び第2押進部56は板状の押進部材29の表面であるから、第1押進部55及び第2押進部56の押進速度及び押進状態はほぼ同一となり、一体成形体の鍔部13と弾性部材6とを押進部材29で同期して押進できる。ここで、「同期」とは、補強部材5を変形させない程度のわずかなずれがあってもよく、正確な同期のみを意味するものではない。
押進部材29は、第2押進部56で弾性部材6を押出すと共に、第1押進部55で鍔部13をも同期して押出すことができるので、押進部材29の押進力は弾性部材6と鍔部13と分散されるから、例えば、大型化された保持治具又は製造可能な電子部品数を増大させた保持治具を製造するために補強部材5の強度が低下していても、この第2離型工程において、補強部材5が第2成形ピン35の抜脱に追従することなく、補強部材5の平坦性を維持することができる。また、このように押進部材29の押進力が分散されるから、補強部材5の平坦性を維持するために、小さな押進力で徐々に一体成形体を押出さなくてもよく、比較的大きな押進力で比較的高速で一体成形体を押出すことができる。さらに、押進部材29の押進力が分散されるから、第2押進部56による弾性部材6の損傷を抑えることができるので、弾性部材6における第2押進部56が接触する部分を肉厚にしなくてもよく、弾性材料を低減することができる。したがって、第1押進部55及び第2押進部56を有する押進部材29で一体成形体を第2金型28から押出すと、補強部材5の平坦性を維持した状態のままで容易かつ速やかに一体成形体の弾性層に浸入している複数の第2成形ピン35を一段階で一挙に抜脱させることができ、一体成形体を第2金型28から脱型させることができる。
また、このようにして押進部材29で一体成形体を第2金型28から押出すと、一体成形体は挟持空間39に配置された状態で第2金型28から離型されるから、この発明に係る第1製造方法と同様に、第2成形ピン35の軸線と形成された保持孔15の軸線とが同軸となっている。したがって、第2成形金型26を用いる、この発明に係る第2製造方法によれば、成形時及び離型時に多数の第2成形ピン35が補強部材5に対して均一に縦立しており、開口径のほぼ均一な多数の保持孔15を有する保持治具を製造できる。
このようにして第2金型28から離型された一体成形体は押進部材29の貫通部57に対応する位置に弾性材料が硬化してなる突出部を有している。したがって、この発明に係る第2製造方法においては、第2成形金型28から脱型された一体成形体の突出部を除去する除去工程を実施する。除去工程としては、突出部を除去できる手段を採用することができ、このような手段として、例えば、平面研削、フライス研削、ラッピング等が挙げられる。
この発明に係る第2製造方法においては、所望により、この発明に係る第1製造方法と基本的に同様にして、一体成形体の成形バリを取り除くための研削等の表面処理が行われてもよく、また、形成された弾性部材6の表面を鏡面加工することもできる。
このようにして、保持治具1を製造することができる。なお、前記保持治具2もこの発明に係る第2製造方法と同様にして製造できる。
この発明に係る第2製造方法によれば、この発明に係る成形金型の別の一例である第2成形金型26を用いて、第2押進部56で弾性部材6を押出すと共に第1押進部55で鍔部13をも同期して押出すことができるので、この第2離型工程において補強部材5の平坦性を維持することができる。したがって、この発明によれば、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造できる保持治具の製造方法、及び、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することができる。
このように、この発明に係る成形金型及びこの発明に係る保持治具の製造方法によれば、補強部材を変形させることなく容易に離型させることができ、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造できる。例えば、近年の、電子部品の生産性向上という要望を実現するために保持治具の大型化及び/又は多孔化した変形及び損傷のしやすい補強部材であっても変形も損傷もさせることなく一体成形体を成形金型から離型することができる。したがって、この発明によれば、例えば6000個以上特に10000個以上の極めて多数の保持孔を有している保持治具であっても補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる保持治具の製造方法、並びに、保持治具の多孔化によって例えば6000個以上特に10000個以上の極めて多数の支持孔が穿孔された補強部材であっても補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することができる。また、この発明に係る成形金型及びこの発明に係る保持治具の製造方法によれば、保持治具の平坦性とより大多数の保持孔数とを高い水準で両立できる。さらに、この発明に係る成形金型は第1金型及び第2金型に凹陥部を設ける必要がないので、成形金型の構造を簡素化できるうえ、弾性材料の使用量を低減できる。
この発明に係る成形金型は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
第1成形金型21及び第2成形金型26において、第1成形ピン34及び第2成形ピン35は、第1成形ピン林立部34a(第2成形金型26においては内部林立部)と第2成形ピン林立部35aとが縦横に交互に配列されるように、立設されているが、この発明において、第1成形ピン及び第2成形ピンは、第1成形ピン林立部と第2成形ピン林立部とが配置される配列は縦横でなくてもよく、第1成形ピン林立部及び第2成形ピン林立部の一方が補強部材の鍔部近傍に配置され、他方が補強部材の平坦部中央近傍に配置されるように、立設されていてもよい。
第1成形金型21及び第2成形金型26において、第1金型22及び27は移動型とされ、第2金型23及び28は固定型とされているが、この発明において、第1金型及び第2金型の少なくとも一方が移動型とされていればよく、第1金型及び第2金型が共に移動型とされていてもよい。
第1成形金型21及び第2成形金型26において、第1成形ピン34及び第2成形ピン35は全体として、所謂「千鳥状」又は碁盤目状に配列されているが、この発明において、第1成形ピン及び第2成形ピンは全体として製造する保持治具の保持孔及び支持孔と同様に配列されていればよく、その配列は特に限定されない。第1成形ピン及び第2成形ピンの全体的な配列として、例えば、第1保持孔が第1配列方向の最外列となり、第2保持孔が第2配列方向の最外列となる所謂「千鳥状」配列、前記角度が15〜75°(45°を除く)である所謂「千鳥状」配列、碁盤目状の配列を45度回転した傾斜スクエア配列、正六角形が最密に配置されるハニカム状の配列、同心円状の配列等が挙げられる。
第1成形金型21において、押進部材24は第2金型23に設けられているが、この発明において、押進部材は第1金型及び第2金型の少なくとも一方に設けられていればよく、第1金型に設けられていてもよく、第1金型及び第2金型の双方に設けられていてもよい。
第2成形金型26において、押進部材29は配置空間39と第2金型28との間に配置されているが、この発明において、押進部材は配置空間と第1金型及び第2金型の少なくとも一方の金型との間に配置されていればよく、配置空間と第1金型との間に設けられていてもよく、配置空間と第1金型との間及び配置空間と第2金型との間の双方に設けられていてもよい。
第2成形金型26において、押進部材29の貫通部57は矩形に穿孔されているが、この発明において、貫通部は第2成形ピン林立部を貫通させることができればよく、例えば、円形、楕円形、矩形以外の多角形に穿孔されてもよい。
この発明に係る保持治具の製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。例えば、所望により、弾性部材の硬化を確実にするため、成形金型から離型する前に成形金型ごと又は成形金型から離型した後に、前記一体成形体を二次加熱又は熱処理してもよい。
この発明に係る第1製造方法及びこの発明に係る第2製造方法においては、いずれも、第1離型工程を実施した後に第2離型工程を実施しているが、この発明においては、第2離型工程を実施した後に第1離型工程を実施してもよく、第1離型工程と第2離型工程とを同時に実施してもよい。