JP5633751B2 - 二次電池 - Google Patents
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Description
また、本明細書において「正極合材」とは、二次電池において電荷担体となる化学種(例えばリチウム電池の場合、リチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な正極活物質を含む合材をいう。
さらに、本明細書において「負極合材」とは、二次電池において電荷担体となる化学種(例えばリチウム電池の場合、リチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な負極活物質を含む合材をいう。
このように、合材層の表面において、捲回方向に対する幅方向の中央部に相互に独立した複数の凹部が形成されていることによって、凹部内にて、捲回電極体の捲回方向に対する幅方向の中央部に残留した空気と浸入してきた電解液との置換が行われる。この点で、凹部は残留空気と電解液とを置換するための部分と言い換えることができる。これにより、電解液の浸透性が向上し、電解液の浸透時間(ひいては電池の製造時間)を短縮することができる。また、凹部は相互に独立して形成されているため、連続して形成された溝と異なり、合材層の破断の起点とならない。
従って、本発明によると、破断の虞がなく、かつ電解液の浸透性が向上した二次電池を提供することができる。
また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、捲回電極体の構成および製造方法、二次電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、セパレータシート50は、ここでは正極合材層34および負極合材層44の積層部分の幅より大きく、該電極体20の幅より小さい幅を備えるものが用いられ、正極集電体32と負極集電体42が互いに接触して内部短絡を生じさせないように正極合材層34および負極合材層44の積層部分に挟まれるように配されている。
図4は、第1の実施形態に係る正極合材層の表面を拡大して示す模式図であり、図5は、図4の合材層の表面の一部をさらに拡大して示す模式図であり、図6は、図5のVI−VI線断面図である。
上記実施形態に係る正極の正極合材層を構成する正極活物質としては、本発明の目的を実現し得る性状の正極活物質である限りにおいて、その組成や形状に特に制限はない。典型的な正極活物質として、リチウムおよび少なくとも1種の遷移金属元素を含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルトリチウム複合酸化物(LiCoO2)、ニッケルリチウム複合酸化物(LiNiO2)、マンガンリチウム複合酸化物(LiMn2O4)、あるいは、ニッケル・コバルト系のLiNixCo1−xO2(0<x<1)、コバルト・マンガン系のLiCoxMn1−xO2(0<x<1)、ニッケル・マンガン系のLiNixMn1−xO2(0<x<1)やLiNixMn2−xO4(0<x<2)で表わされるような、遷移金属元素を2種含むいわゆる二元系リチウム含有複合酸化物、あるいは、遷移金属元素を3種含むニッケル・コバルト・マンガン系のような三元系リチウム含有複合酸化物でもよい。
まず、正極活物質と導電材と結着材等とを適当な溶媒(水系溶媒または非水系溶媒)で混合して、ペーストまたはスラリー状の正極合材層形成用組成物を調製する。各構成材料の配合比率としては、例えば、正極合材層に占める正極活物質の割合は、凡そ50質量%以上(典型的には50〜95質量%)であることが好ましく、凡そ70〜95質量%(例えば75〜90質量%)であることがより好ましい。また、正極合材層に占める導電材の割合は、例えば凡そ2〜25質量%とすることができ、通常は凡そ2〜20質量%とすることが好ましい。さらに、結着材を使用する組成では、正極合材層に占める結着材の割合を例えば凡そ1〜10質量%とすることができ、通常は凡そ2〜5質量%とすることが好ましい。こうして各構成材料を混合して調製したペースト状組成物を正極集電体に塗布し、溶媒を揮発させて乾燥させた後、圧縮(プレス)する。これにより正極合材層が正極集電体上に形成されたリチウム二次電池の正極が得られる。
上記負極集電体の表面に形成された負極合材層には、電荷担体となるリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質が含まれる。負極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の1種または2種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、カーボン粒子が挙げられる。中でも、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が好ましく用いられる。また、いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもののいずれの炭素材料も好適に使用され得る。その中でも特に、黒鉛粒子を好ましく使用することができる。黒鉛粒子(例えばグラファイト)は、電荷担体としてのリチウムイオンを好適に吸蔵することができるため導電性に優れる。また、粒径が小さく単位体積当たりの表面積が大きいことからより高出力充放電に適した負極活物質となり得る。
上記負極集電体の表面に負極合材層を形成するため、まず、負極活物質を、結着材等と共に上記適当な溶媒(水系溶媒または非水系溶媒)で混合して、ペーストまたはスラリー状の負極合材層形成用組成物を調製する。各構成材料の配合比率としては、例えば、負極合材層に占める負極活物質の割合が、凡そ50質量%以上であることが好ましく、凡そ85〜99質量%(例えば90〜97質量%)であることがより好ましい。また、負極合材層に占める結着材の割合を例えば凡そ1〜15質量%とすることができ、通常は凡そ3〜10質量%とすることが好ましい。こうして調製したペースト状組成物を負極集電体に塗布し、溶媒を揮発させて乾燥させた後、圧縮(プレス)する。これにより該ペースト状組成物を用いて形成された負極合材層を負極集電体上に有するリチウム二次電池の負極が得られる。なお、塗布、乾燥および圧縮方法は、上述の正極の製造方法と同様に従来公知の手段を用いることができる。また、負極合材層の表面に凹部を形成する場合、上述の正極における凹部の形成方法と同様にして凹部を形成することができる。
例えば、上記の実施形態は、二次電池の典型例としてリチウム二次電池について説明したが、この形態の二次電池に限定されない。例えば、リチウムイオン以外の金属イオン(例えばナトリウムイオン)を電荷担体とする非水電解液型二次電池や、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池であってもよく、また、上述した捲回電極体を備えるリチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ(物理電池)であってもよい。
(1)正極シートの作製
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粉末と、導電材としてのアセチレンブラックと、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、これらの材料の質量比が87:10:3となり、且つ固形分濃度が約50質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)と混合して、正極合材層形成用組成物を調製した。この正極合材層形成用組成物を長尺状のアルミニウム箔(正極集電体32、厚み15μm)の両面に帯状に塗布して乾燥させた。乾燥後、表面に多数の凸部が設けられた平板プレス機で、正極集電体32の両面に形成された2つの正極合材質層34のそれぞれの表面をプレスし、各正極合材質層34の表面に、図5および図6に示すような平行四辺形状の凹部5を形成した。このようにして、表面に凹部5を形成した正極合材層34を設けた正極シート30を作製した。得られた正極合材層34の厚みは片面56.7μm(両面で113μm)であり、正極合材層の密度は2.81g/cm3であった。また、形成された平行四辺形状の凹部5は、長辺が200μm、短辺が約50μmであり、捲回電極体20の捲回方向に対する幅方向の両端である電解液の浸入方向から見て突出する角(コーナー部)の内角が30度であった。凹部5の最大深さは20μmであり、これは正極合材層34の厚みの18%に相当する。捲回電極体20の捲回方向に対する幅方向と凹部5の長辺との角度θ1は85度であった。
負極活物質としてのグラファイト粉末と、結着剤としてのスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)と、増粘材としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの材料の質量比が98:1:1となるように水に分散させて負極合材層形成用組成物を調製した。この負極合材層用組成物を長尺シート状の銅箔(負極集電体42、厚み10μm)の両面に帯状に塗布して乾燥(乾燥温度100℃)させた。乾燥後、負極合材層44の表面をロールプレスし、負極合材層44が設けられた負極シート40を作製した。得られた負極合材層44の厚みは片面62μm(両面で124μm)であり、負極合材層の密度は1.36g/cm3であった。
得られた正極シート30および負極シート40を2枚のセパレータシート50(多孔質ポリエチレン製の単層構造のもの)を介して積層して捲回し、その捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平状の捲回電極体20を作製した。このようにして得られた捲回電極体20を非水電解液と共にニッケルメッキ鋼製の電池ケース(厚み1mm)に組み込んで、長さ60mm×幅138mm×高さ53mmの試験用リチウムイオン電池を構築した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させ、さらにシクロヘキシルベンゼン(CHB)を約2質量%の濃度で含有させた非水電解液を使用した。その後、常法により初期充放電処理(コンディショニング)を行って、試験用リチウムイオン二次電池を得た。なお、このリチウムイオン電池の理論容量は7Ahである。
例1で用いた平板プレス機とは凸部の配置角度が異なる平板プレス機を用いて、正極合材層34の表面に、図7に示すような凹部5を形成した。形成された凹部5の長辺と捲回電極体20の捲回方向に対する幅方向との角度θ2は30度であった。それ以外は、例1と同様の方法により試験用リチウムイオン二次電池を得た。
例2で用いた平板プレス機とは異なる大きさの凸部を一部に形成した平板プレス機を用いて、正極合材層34の表面に、図8に示すような凹部5を形成した。それ以外は、例2と同様の方法により試験用リチウムイオン二次電池を得た。形成された凹部5は、捲回電極体20の捲回方向に対する幅方向の両端側(正極合材層34の幅を該幅方向において5等分したときの両端から1/5の範囲内)に形成された大凹部5Lと、前記幅方向の中央部(正極合材層34の幅を該幅方向において5等分したときの中央側に位置する3/5の範囲内)に形成された小凹部5Sとから構成されていた。大凹部5Lは、長辺400μm×短辺100μmの平行四辺形状であり、小凹部5Sは、長辺200μm×短辺50μmの平行四辺形状であり、大凹部5Lおよび小凹部5Sの最大深さは共に20μmであった。
例3で用いた平板プレス機とは凸部の配置を変えた平板プレス機を用いて、正極合材層34の表面に、図9に示すような凹部5を形成した。それ以外は、例3と同様の方法により試験用リチウムイオン二次電池を得た。形成された凹部5は、捲回電極体20の捲回方向に対する幅方向の両端側に形成された小凹部5Sと、前記幅方向の中央部に形成された大凹部5Lとから構成されていた。大凹部5Lは、例3の大凹部5Lと同じサイズであり、小凹部5Sは、例3の小凹部5Sと同じサイズであった。
凸部のない平板プレス機を用いて正極合材層34を形成した他は、例1と同様の方法により試験用リチウムイオン二次電池を得た。
試験用リチウムイオン二次電池に電解液を注入し、その直後から1KHzでの交流抵抗(AC−IR)測定(電圧振幅5mV)を行った。抵抗値(Ω)を10分毎に測定し、抵抗値の変動が前回測定時の値から1%の範囲内となった時間を、抵抗値(Ω)が安定した時間(抵抗安定化時間)と判断して記録した。結果を凹部の条件と併せて表1に示す。
5 凹部
5L (大)凹部
5S (小)凹部
10 電池ケース
12 開口部
14 蓋体
20 捲回電極体
30 正極シート
32 正極集電体
34 正極合材層
35 正極集電体積層部
36 正極合材層非形成部
37 内部正極端子
38 外部正極集電端子
40 負極シート
42 負極集電体
44 負極合材層
45 負極集電体積層部
46 負極合材層非形成部
47 内部負極端子
48 外部負極集電端子
50 セパレータ(セパレータシート)
100 リチウム二次電池
Claims (6)
- シート状の正極とシート状の負極とを相互に捲回した捲回電極体を備え、前記正極が正極集電体と該正極集電体上に形成された正極合材層とを有し、前記負極が負極集電体と該負極集電体上に形成された負極合材層とを有する二次電池であって、
前記正極合材層と前記負極合材層の少なくとも一方の表面には、捲回方向に対する幅方向の少なくとも中央部において、相互に独立した複数の凹部が形成されており、
前記凹部は、その周縁が複数のコーナー部と該コーナー部間の辺部とから構成される略矩形状に形成されており、
前記幅方向のいずれか一端側から見たときに、該一端から最も近い位置に、前記コーナー部および前記辺部のうちのいずれか一つのコーナー部が配置されるように前記凹部が形成されている、二次電池。 - 前記凹部の深さが前記合材層の厚みの2%〜30%である、請求項1に記載の二次電池。
- 前記いずれか一端から最も近い位置のコーナー部の内角が、5〜85度に設定されている、請求項1または2に記載の二次電池。
- 前記凹部は、その周縁における前記辺部として長辺と短辺とを有する略平行四辺形状に形成されており、
前記長辺が前記幅方向に対して5〜45度になるように配置されている、請求項3に記載の二次電池。 - 前記凹部が、捲回方向に沿う凹部分の長さをL1とし、捲回方向に対する幅方向に沿う凹部分の長さをL2としたとき、L2>L1を満たす、請求項1から4のいずれかに記載の二次電池。
- 請求項1から5のいずれかに記載の二次電池を備える車両。
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