ところで、静電噴霧装置は、机の上や床面などの設置面に載置された状態で使用されるように設計される場合も有り得る。ところが、静電噴霧装置を机の上に置いた状態で使用する場合は、使用者が誤って静電噴霧装置を倒してしまうことが想定される。そして、転倒した姿勢(即ち、使用時の姿勢として想定していない姿勢)で静電噴霧装置が作動し続けると、静電噴霧装置が故障するおそれがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、転倒に起因して静電噴霧装置が故障する可能性を小さくし、静電噴霧装置の信頼性を向上させることにある。
第1の発明は、噴霧用液体を貯留する容器部材(71,74)と、上記容器部材(71,74)に取付けられた管状のノズル部材(72)と、上記ノズル部材(72)の先端から上記噴霧用液体が噴霧されるように該ノズル部材(72)の先端付近の空間に電界を形成する電界形成器(6)と、上記容器部材(71,74)及び上記電界形成器(6)を収容するケーシング(10)とを備える静電噴霧装置を対象とする。そして、上記ケーシング(10)、上記容器部材(71,74)、及び上記電界形成器(6)が装置本体(5)を形成し、上記装置本体(5)は、設置面(200)上に正立姿勢で載置されると共に、転倒した場合には一定の転倒時姿勢となるように構成され、上記装置本体(5)が転倒時姿勢になると上記ノズル部材(72)からの上記噴霧用液体の噴霧を停止させる制御器(60)を備えるものである。
第1の発明では、ケーシング(10)と、そこに収容された容器部材(71,74)及び電界形成器(6)とが装置本体(5)を形成する。この装置本体(5)は、設置面(200)の上に正立姿勢で載置される。装置本体(5)が正立姿勢となっている状態において、電界形成器(6)によってノズル部材(72)の先端付近の空間に電界が形成されると、容器部材(71,74)内の噴霧用液体が、ノズル部材(72)の先端から微細な液滴となって放出される。設置面(200)上で装置本体(5)が倒れると、装置本体(5)は、一定の転倒時姿勢となる。つまり、装置本体(5)は、使用者の手が当たる等の原因によって様々な方向に倒される可能性があるが、転倒した装置本体(5)は、例えば転がったりして最終的には一定の転倒時姿勢となって静止する。制御器(60)は、装置本体(5)が転倒して転倒時姿勢になると、ノズル部材(72)からの噴霧用液体の噴霧を停止させる。
また、上記第1の発明は、上記の構成に加えて、上記ケーシング(10)は、円筒状に形成されており、上記装置本体(5)が正立姿勢のときは上記ケーシング(10)の一方の端部が設置面(200)に接し、上記装置本体(5)が転倒時姿勢のときは上記ケーシング(10)の側面の特定部位(18)が設置面(200)に接するものである。
第1の発明では、ケーシング(10)が円筒状に形成される。装置本体(5)が転倒時姿勢になると、ケーシング(10)の端部が設置面(200)から離れ、ケーシング(10)の側面の特定部位(18)が設置面(200)と接する。装置本体(5)が転倒した直後は、ケーシング(10)の側面の特定部位(18)以外の部位が設置面(200)と接することも有り得る。しかし、ケーシング(10)が円筒状であるため、その場合でも、転倒した装置本体(5)は転がって転倒時姿勢となり、ケーシング(10)の特定部位(18)が設置面(200)と接する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記装置本体(5)は、その重心(CG)の位置が上記ケーシング(10)の中心軸(CA)からずれており、上記転倒時姿勢は、上記装置本体(5)の重心(CG)が上記ケーシング(10)の中心軸(CA)の下方に位置する姿勢であるものである。
第2の発明では、装置本体(5)の重心(CG)の位置が、円筒状に形成されたケーシング(10)の中心軸(CA)からずれている。装置本体(5)が転倒時姿勢となった状態では、装置本体(5)の重心(CG)がケーシング(10)の中心軸(CA)の下方に位置する。転倒直後において、装置本体(5)は、その重心(CG)がケーシング(10)の中心軸(CA)の上側に位置する姿勢となる場合も有り得る。このような場合、装置本体(5)は、ケーシング(10)の側面が設置面(200)と接した状態で転がり、その重心(CG)がケーシング(10)の中心軸(CA)の下方に位置する転倒時姿勢となって静止する。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、正立姿勢となっている上記装置本体(5)の下端部に配置され、上記装置本体(5)が転倒時姿勢のときに設置面(200)に接する特定部位(18)とは反対側に向かって上記ケーシング(10)の側面から突出する突出部(3a)を備えるものである。
第3の発明では、静電噴霧装置(1)に突出部(3a)が設けられる。突出部(3a)は、正立姿勢となっている装置本体(5)の下端部に配置され、ケーシング(10)の側面から突出している。このため、装置本体(5)が突出部(3a)の突出方向へ倒れようとすると、突出部(3a)が設置面(200)と接することとなり、その方向への装置本体(5)の転倒が制限される。突出部(3a)は、ケーシング(10)の側面の特定部位(18)とは反対側に向かって、ケーシング(10)の側面から突出している。このため、突出部(3a)の突出方向への装置本体(5)の転倒が制限され、転倒後の装置本体(5)が転倒時姿勢となり易くなる。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記装置本体(5)に電力を供給するための電源コード(3a)を備えており、上記電源コード(3a)は、上記ケーシング(10)の側面から該ケーシング(10)の外部へ延び、上記突出部を兼ねているものである。
第4の発明では、電源コード(3a)が突出部としても機能する。つまり、装置本体(5)が電源コード(3a)の延びる方向へ倒れようとすると、電源コード(3a)が設置面(200)と接することとなり、その方向への装置本体(5)の転倒が制限される。
第5の発明は、上記第1〜第4の何れか一つの発明において、上記噴霧用液体を上記ノズル部材(72)の先端へ送るために上記容器部材(71,74)の内部空間へ空気を供給する空気供給器(41,42)と、上記容器部材(71,74)の内部空間の圧力を計測する圧力センサ(43)とを備える一方、上記容器部材(71,74)の内部空間において、上記ノズル部材(72)の基端(72b)は、上記装置本体(5)が転倒時姿勢になっているときは常に液面(9)よりも上方となる位置に配置され、上記制御器(60)は、上記圧力センサ(43)の計測値に基づいて、上記ノズル部材(72)からの上記噴霧用液体の噴霧を継続させるか停止させるかを判断するものである。
第5の発明では、空気供給器(41,42)によって容器部材(71,74)の内部空間へ空気が供給される。ノズル部材(72)の基端(72b)が容器部材(71,74)内の噴霧用液体の液面(9)より下方に位置する状態において、容器部材(71,74)の内部空間へ空気が供給されると、容器部材(71,74)の内部空間の圧力が上昇して噴霧用液体がノズル部材(72)の先端まで送られる。この発明において、装置本体(5)が転倒時姿勢になると、容器部材(71,74)の内部空間では、ノズル部材(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置する状態となる。この状態では、容器部材(71,74)の内部空間へ供給された空気が、ノズル部材(72)を通って容器部材(71,74)の外部へ流出してゆく。つまり、装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になると、ノズル部材(72)を流れる流体が噴霧用液体から空気へと変化し、その結果、容器部材(71,74)の内部空間の圧力が低下する。容器部材(71,74)の内部空間の圧力は、圧力センサ(43)によって計測される。そこで、制御器(60)は、圧力センサ(43)の計測値に基づいて、ノズル部材(72)からの噴霧用液体の噴霧を継続させるか停止させるかを判断する。
第6の発明は、上記第5の発明において、上記制御器(60)は、所定時間内における上記圧力センサ(43)の計測値の変化量が所定の基準変化量を上回ると、上記ノズル部材(72)からの上記噴霧用液体の噴霧を停止させるものである。
第6の発明において、制御器(60)は、圧力センサ(43)の計測値の変化量を監視し、その変化量が所定の規準変化量を上回ると、ノズル部材(72)からの噴霧用液体の噴霧を停止させる。つまり、正立姿勢の装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になると、ノズル部材(72)を流れる流体が噴霧用液体から空気へ変化し、比較的短い時間内に容器部材(71,74)の内部空間の圧力が比較的大幅に低下する。そこで、制御器(60)は、所定時間内における圧力センサ(43)の計測値の変化量が基準変化量を上回ると、ノズル部材(72)からの噴霧用液体の噴霧を停止させる。
第7の発明は、上記第5又は第6の発明において、上記容器部材(71,74)の内部空間において、上記ノズル部材(72)の基端(72b)は、上記装置本体(5)が正立姿勢になっているときは該内部空間の底部となり、且つ上記装置本体(5)が転倒時姿勢となっているときは該内部空間の上部となる位置に配置されるものである。
第7の発明において、装置本体(5)が正立姿勢となっている状態では、ノズル部材(72)の基端(72b)が容器部材(71,74)の内部空間の底部に位置する。このため、容器部材(71,74)の内部空間に貯留された噴霧用液体は、その大部分がノズル部材(72)へ供給され得る。一方、装置本体(5)が転倒時姿勢になっている状態では、ノズル部材(72)の基端(72b)が容器部材(71,74)の内部空間の上部に位置する。従って、この状態では、ノズル部材(72)の基端(72b)が容器部材(71,74)の内部空間における噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置する。
本発明において、静電噴霧装置(1)の装置本体(5)は、転倒したときに一定の転倒時姿勢となる。つまり、装置本体(5)は、どちらの方向に向かって倒れた場合でも、最終的には転倒時姿勢となる。このため、転倒した際の装置本体(5)の姿勢が一定でない場合に比べ、装置本体(5)が転倒したことを制御器(60)が検知できる可能性が高まり、その結果、装置本体(5)の転倒時に噴霧用液体の噴霧を停止できる可能性が高くなる。
装置本体(5)が転倒して異常な姿勢(つまり、使用時の姿勢として想定されていない姿勢)となったまま噴霧用液体が噴霧され続けると、それに起因して静電噴霧装置(1)が故障するおそれがある。それに対し、本発明によれば、装置本体(5)が転倒した際に噴霧用液体の噴霧を停止できる可能性が高まり、静電噴霧装置(1)が故障する危険性を低くできる。従って、本発明によれば、静電噴霧装置(1)の信頼性を向上させることができる。
また、本発明では、ケーシング(10)が円筒状に形成されている。このため、装置本体(5)は、転倒した後に転がることができる。従って、本発明によれば、転倒した装置本体(5)が転倒時姿勢となる可能性を高めることができる。
上記第2の発明では、装置本体(5)の重心(CG)の位置がケーシング(10)の中心軸(CA)からずれており、装置本体(5)の重心(CG)がケーシング(10)の中心軸(CA)の下方となる姿勢が転倒時姿勢となっている。従って、この発明によれば、装置本体(5)の重心(CG)の位置を適切に設定することによって、転倒した装置本体(5)が転倒時姿勢で静止する可能性を一層高めることができる。
上記第3の発明において、突出部(3a)は、正立姿勢となっている装置本体(5)の下端部に配置され、ケーシング(10)の側面から突出している。このため、装置本体(5)の転倒方向を、突出部(3a)によって制限することができる。また、突出部(3a)は、ケーシング(10)の側面の特定部位(18)とは反対側に向かって、ケーシング(10)の側面から突出している。従って、この発明によれば、転倒時姿勢となり易い方向へ装置本体(5)を倒すことができ、転倒後の装置本体(5)の姿勢が転倒時姿勢となる可能性を高めることができる。
上記第4の発明では、電源コード(3a)に突出部としての機能を果たさせている。従って、この発明によれば、静電噴霧装置(1)の構造の複雑化を抑えることができる。
上記第5の発明では、容器部材(71,74)の内部空間へ空気を供給することによって、容器部材(71,74)内の噴霧用液体がノズル部材(72)の先端まで送られる。また、装置本体(5)が転倒時姿勢になると、容器部材(71,74)の内部空間では、ノズル部材(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置する状態となる。このため、正立姿勢の装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になると、ノズル部材(72)を流れる流体が噴霧用液体から空気へ変化し、容器部材(71,74)の内部空間の圧力が低下する。従って、この発明によれば、容器部材(71,74)の内部空間の圧力を監視することによって、装置本体(5)が転倒時姿勢になったことを確実に検知して噴霧用液体の噴霧を停止させることが可能となる。
上記第6の発明において、制御器(60)は、圧力センサ(43)の計測値の変化量を監視し、装置本体(5)が転倒時姿勢になったか否かを判断している。従って、この発明によれば、正立姿勢の装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になったことを、圧力センサ(43)の計測値に基づいて確実に判断できる。
上記第7の発明において、ノズル部材(72)の基端(72b)は、装置本体(5)が正立姿勢になっているときは容器部材(71,74)の内部空間の底部となり、且つ装置本体(5)が転倒時姿勢となっているときは容器部材(71,74)の内部空間の上部となる位置に配置されている。従って、この発明によれば、容器部材(71,74)に貯留された噴霧用液体の大部分をノズル部材(72)の先端から噴霧可能としつつ、装置本体(5)が転倒時姿勢となったときは、ノズル部材(72)の基端(72b)を容器部材(71,74)内における噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置させることが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態は、卓上型の静電噴霧装置(1)である。この静電噴霧装置(1)は、オフィスのデスク上に置いて使用することを想定して設計されている。つまり、この静電噴霧装置(1)は、後述するケーシング(10)の底カバー(10b)が設置面(200)と接する正立姿勢で使用することを想定して設計されている。
図1〜図3に示すように、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、装置本体(5)と、ACアダプタ(2)と、電源コードであるUSBケーブル(3a)とを備えている。装置本体(5)は、ケーシング(10)と、噴霧用液体を貯留する噴霧カートリッジ(70)と、搬送ユニット(40)と、高電圧電源ユニット(50)と、制御器であるコントローラ(60)とを備えている。噴霧カートリッジ(70)、搬送ユニット(40)、高電圧電源ユニット(50)、及びコントローラ(60)は、ケーシング(10)に収容されている。
ケーシング(10)は、両端が閉塞された中空円筒状に形成されている。ケーシング(10)は、本体カバー(10a)と、底カバー(10b)と、トップカバー(11)とから構成されている。底カバー(10b)及びトップカバー(11)は、本体カバー(10a)に取り付けられている。尚、本実施形態では、噴霧用液体の噴霧方向を前面側とし、噴霧方向の背後方向を背面側としている。
本体カバー(10a)は、両端が開口した縦長の円筒状に形成されている。また、本体カバー(10a)は、その長手方向の中央部が僅かにくびれた形状となっている。底カバー(10b)は、概ね円板状に形成され、本体カバー(10a)の下端を塞いでいる。トップカバー(11)は、円形のキャップ状に形成され、本体カバー(10a)の上端を塞いでいる。このトップカバー(11)は、装置本体(5)の前側(即ち、噴霧用液体の噴霧方向)に向かって傾斜した姿勢で、本体カバー(10a)に固定されている。
トップカバー(11)には、噴霧カートリッジ(70)の噴霧ノズル(72)を露出させるための噴霧開口部(14)が形成されている。また、トップカバー(11)には、噴霧開口部(14)を開閉するためのシャッタ(13)が取り付けられている。このシャッタ(13)は、スライドすることによって噴霧開口部(14)を開閉する。図示しないが、トップカバー(11)には、電源スイッチが取り付けられている。この電源スイッチは、シャッタ(13)によって操作される。つまり、使用者がシャッタ(13)を操作して噴霧開口部(14)を開くと電源スイッチがON状態となり、使用者がシャッタ(13)を操作して噴霧開口部(14)を閉じると電源スイッチがOFF状態となる。
トップカバー(11)と本体カバー(10a)との間には、周方向に亘って帯状の対向電極(12)が設けられている。この対向電極(12)は、噴霧ノズル(72)の先端との間で電界を発生させるためのものである。対向電極(12)は、高電圧電源ユニット(50)と電気的に接続されている。
本体カバー(10a)の背面側には、リアカバー(17)が着脱可能に取り付けられている。このリアカバー(17)は、後述する上部機器室(28)を塞ぐための部材であって、やや湾曲した矩形板状に形成されている。リアカバー(17)は、噴霧カートリッジ(70)を交換する際に着脱される。
ケーシング(10)は、その内部に下側ベース(21)と上側ベース(22)と仕切板(23)とを備えている。下側ベース(21)はケーシング(10)内の底部寄りに設けられている。上側ベース(22)はケーシング(10)の長手方向の概ね中央に設けられている。各ベース(21,22)は、水平方向に延びてケーシング(10)内を上下に区画している。仕切板(23)は、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間に亘って設けられている。ケーシング(10)の内部における下側ベース(21)と上側ベース(22)との間の空間は、仕切板(23)によって前後に区画される。
下側ベース(21)と上側ベース(22)との間には、中央機器室(24)が区画されている。そして、中央機器室(24)は、上述した仕切板(23)により、前面側の第1中央機器室(25)と背面側の第2中央機器室(26)とに区画されている。また、下側ベース(21)の下方に下部機器室(27)が区画され、上側ベース(22)の上方に上部機器室(28)が区画されている。
下部機器室(27)には、温湿度センサ(29)と、人検知センサ(30)と、USB基板(31)とが収容されている。
温湿度センサ(29)は、静電噴霧装置(1)が設置された部屋の空気の温度と湿度を検知するセンサである。この温湿度センサ(29)は、コントローラ(60)に接続され、計測値をコントローラ(60)に送信する。
人検知センサ(30)は、静電噴霧装置(1)の噴霧対象となる使用者の有無を検知するためのものである。人検知センサ(30)は、例えば焦電型赤外線センサに構成されている。人検知センサ(30)は、下部機器室(27)内の前面側に収容されている。そして、人検知センサ(30)は、そのセンサ面をケーシング(10)の開口を介して前面側の斜め上方向を向くように配置されている。人検知センサ(30)は、コントローラ(60)に接続され、検知信号をコントローラ(60)に送信する。
USB(Universal Serial Bus)基板(31)は、USBケーブル(3a)のコネクタ(3)が挿入されるものである。このUSB基板(31)は、下部機器室(27)の底部に配置されている。USB基板(31)には、コネクタ(3)が接続される接続部(32)を備えている。USB基板(31)は、ケーシング(10)の本体カバー(10a)の背面に露出している。USBケーブル(3a)のコネクタ(3)は、本体カバー(10a)の背面側からUSB基板(31)に挿入され、ケーシング(10)の側方へ突出する。そして、コネクタ(3)を有するUSBケーブル(3a)が、突出部を構成している。
ACアダプタ(2)は、家庭用の商用電源のコンセントに接続され、電圧100Vの交流を電圧5Vの直流に変換する。ACアダプタ(2)は、USBケーブル(3a)を介して装置本体(5)に接続されている。なお、本実施形態の静電噴霧装置(1)を構成する装置本体(5)は、USBケーブル(3a)を介して例えばパソコンのUSBポートに接続され、パソコンから供給される電力によって駆動されてもよい。
搬送ユニット(40)は、図3及び図4に示すように、後述する噴霧カートリッジ(70)のタンク(71)内に空気を送り込むことで、空気圧によってタンク(71)内の噴霧用液体を押し出すためのものである。搬送ユニット(40)は、エアポンプ(41)と、圧力センサ(43)と、空気管(42)とを備えている。エアポンプ(41)及び空気管(42)は、空気供給器を構成している。
エアポンプ(41)は、タンク(71)内に空気を送り込むためダイアフラムポンプである。エアポンプ(41)は、下部機器室(27)内に収容されている。下部機器室(27)内では、エアポンプ(41)が下側ベース(21)の下面に固定されている。
空気管(42)は、エアポンプ(41)の空気をタンク(71)内に送るためのものである。空気管(42)は、下部機器室(27)から上部機器室(28)まで延びるチューブに構成されている。空気管(42)は、一端がエアポンプ(41)に接続され、他端がタンク(71)の吸入口(79)に接続されている。
圧力センサ(43)は、空気管(42)に接続され、空気管(42)内を流れる空気の圧力を計測する。この圧力センサ(43)は、コントローラ(60)に接続され、計測値をコントローラ(60)に送信する。上述したように、空気管(42)は、タンク(71)に接続されている。このため、空気管(42)を流れる空気の圧力は、タンク(71)内の圧力と実質的に等しくなる。従って、圧力センサ(43)は、実質的にはタンク(71)内の圧力を計測している。
高電圧電源ユニット(50)は、電極部材(84)を介してタンク(71)内の噴霧用液体に正極性または負極性の高電圧を印加するためのものである。図3に示すように、高電圧電源ユニット(50)は、出力部(51)と接地部(55)とを備えている。
出力部(51)は、ACアダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を高電圧に昇圧して出力する。この出力部(51)は、第1中央機器室(25)内に収容された基板(52)上に形成されており、図外のトランジスタ及びダイオードや、トランス(53)等の電子部品を備えている。出力部(51)は、ACアダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を+3kVから+5kVの間、又は−4kVから−7kVの間の高電圧に昇圧させる。出力部(51)の出力端子には、高圧ライン(54)の他端が電気的に接続されている。そして、出力部(51)は、高圧ライン(54)及び電極部材(84)を介してタンク(71)内の噴霧用液体に高電圧を印加する。尚、出力部(51)は出力させる電圧の極性を切換可能に構成されている。接地部(55)は、接地されており、出力部(51)に対するグランドを構成している。接地部(55)は、接地ライン(56)を介して対向電極(12)に電気的に接続されている。
コントローラ(60)は、静電噴霧装置(1)の噴霧動作を制御するものである。コントローラ(60)は、第2中央機器室(26)に収容された制御基板(61)上に形成され、電源制御部(62)と搬送制御部(63)とを備えている(図3を参照)。コントローラ(60)には、圧力センサ(43)、人検知センサ(30)、温湿度センサ(29)、及び電源スイッチが接続されている。
電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)から出力される電圧を制御するためのものである。具体的に、電源制御部(62)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、電源制御部(62)は、各検知データに基づいて出力部(51)から出力される高電圧を調節する。
搬送制御部(63)は、搬送ユニット(40)の噴霧用液体の搬送力を制御するためのものである。具体的に、搬送制御部(63)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、搬送制御部(63)は、各検知データに基づいてエアポンプ(41)から送られる空気の圧力を調節する。
また、コントローラ(60)は、圧力センサ(43)の計測値に基づいて、噴霧用液体の噴霧を継続させるか停止させるかを判断する。このコントローラ(60)の動作については後述する。
噴霧カートリッジ(70)は、図5及び図6に示すように、貯留した噴霧用液体に電荷を付与して噴霧させるためのものである。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)と、電極部材(84)と、噴霧ノズル(72)と、ノズルベース(74)と、把手部(86)とを備えている。噴霧カートリッジ(70)は、分解不能に構成されている。従って、タンク(71)内の噴霧用液体を使い切った場合、空(カラ)になった噴霧カートリッジ(70)は、噴霧用液体が充填された新しい噴霧カートリッジ(70)に交換される。
タンク(71)は、噴霧用液体を内部に貯留するための容器であって、ノズルベース(74)と共に容器部材を構成している。タンク(71)には、例えばヒアルロン酸を含んだ水溶液が噴霧用液体として貯留されている。具体的に、タンク(71)は、略矩形状の箱体に形成されて噴霧カートリッジ(70)の下部を構成している。このタンク(71)は、その底部が背面側に向かって下方に傾斜する底板(71b)に形成されている。このため、タンク(71)の内部空間は、その背面側の部分が最深部となっている。
ノズルベース(74)は、噴霧ノズル(72)を保持するための部材である。ノズルベース(74)は、略円筒状に形成され、タンク(71)の首部材(71a)を介してタンク(71)と一体に形成されている。ノズルベース(74)は、内側凹部(75)と外側凹部(82)とが形成されている。
内側凹部(75)は、ノズルベース(74)の内側端に形成された凹部である。内側凹部(75)は、底部の中央に軸方向の内側に突出した保持部(77)が形成されている。保持部(77)には、噴霧ノズル(72)が挿通される貫通孔(78)が形成されている。保持部(77)の周囲には、シール部材(81)が取り付けられている。このシール部材(81)は、内側凹部(75)の内壁(76)と保持部(77)との間の隙間(85)の一部を埋めるものであって、本発明に係るスペーサ部材を構成している。隙間(85)の一部をシール部材(81)が埋めることで、タンク(71)内の噴霧用液体が隙間(85)に侵入するのを防止している。内側凹部(75)の内壁(76)には、空気管(42)の他端が接続される吸入口(79)が形成されている。
外側凹部(82)は、ノズルベース(74)の外側端に形成された凹部である。外側凹部(82)の内壁(83)は、後述する噴霧ノズル(72)の露出部(72c)の周囲を囲むように形成されている。外側凹部(82)は、その内壁(83)が噴霧ノズル(72)の先端と一定の距離を保つことで、噴霧ノズル(72)の露出部(72c)の周りに空気層を形成している。この空気層は絶縁材として機能し、これによって、噴霧ノズル(72)の先端に安定した電界が形成される。噴霧ノズル(72)の先端(72a)は、外側凹部(82)の内壁(83)の先端から僅かに突出している。
噴霧ノズル(72)は、樹脂製の細径管である。噴霧ノズル(72)は、外径が0.3mm以上0.4mm以下であり、内径が0.1mm以上0.2mm以下となっている。噴霧ノズル(72)は、ノズルベース(74)の貫通孔(78)に挿通されている。噴霧ノズル(72)の先端(72a)は、ノズルベース(74)の外部に露出している。噴霧ノズル(72)の基端(72b)は、タンク(71)内の最深部に位置している。つまり、タンク(71)の内部空間において、噴霧ノズル(72)の基端(72b)は、底部側で且つ背面側の隅角部に位置している。また、噴霧ノズル(72)では、ノズルベース(74)の外側に位置する部分が露出部(72c)となっている。
電極部材(84)は、金属製の棒状に形成された部材である。電極部材(84)は、一端がタンク(71)内の底部に挿通されて噴霧用液体内と接触する。電極部材(84)の他端は、タンク(71)の外部に露出し、高圧ライン(54)の一端と電気的に接続される。つまり、電極部材(84)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)と電気的に接続され、タンク(71)内の噴霧用液体に高電圧を印加するように構成されている。電極部材(84)、対向電極(12)、高電圧電源ユニット(50)、高圧ライン(54)、及び接地ライン(56)は、噴霧ノズル(72)の先端(72a)付近の空間に電界を形成する電界形成器(6)を構成している。
図2に示すように、装置本体(5)では、仕切板(23)の前面側にトランス(53)が配置されている。このトランス(53)は、装置本体(5)に収容された構成部品の中で最も重い部品である。このため、図7に示すように、装置本体(5)の重心(CG)の位置は、ケーシング(10)の中心軸(CA)に対して、装置本体(5)の前面側にずれている。
静電噴霧装置(1)の装置本体(5)が机の上に置かれている場合には、使用者が誤って装置本体(5)を倒してしまう可能性がある。上述したように、装置本体(5)では、ケーシング(10)の下端から側方に向かって、USBケーブル(3a)のコネクタ(3)が突出している。装置本体(5)がその背面側へ倒れようとすると、コネクタ(3)が設置面(200)に当たるため、装置本体(5)の背面側への転倒は規制される。しかし、装置本体(5)が背面側以外の方向(例えば右側、左側、あるいは前面側)へ転倒する可能性は残る。
一方、ケーシング(10)は、円筒状に形成されている。このため、横倒し状態になった装置本体(5)は、ケーシング(10)の側面が設置面(200)に接した状態で転がることができる。上述したように、装置本体(5)の重心(CG)の位置は、ケーシング(10)の中心軸(CA)に対して、装置本体(5)の前面側にずれている。従って、横倒し状態になって転がっている装置本体(5)は、やがて、装置本体(5)の重心(CG)の位置がケーシング(10)の中心軸(CA)の実質的に鉛直下方に位置する転倒時姿勢となって静止する。
図8及び図9に示すように、装置本体(5)が転倒時姿勢となっている状態では、ケーシング(10)の前面側の部分である特定部位(18)が設置面(200)と接する。つまり、ケーシング(10)では、その前面側の部分のうち、ケーシング(10)の長手方向の一端側の領域と他端側の領域とが、特定部位(18)となっている。
図8に示すように、装置本体(5)が転倒時姿勢となった状態において、噴霧ノズル(72)の基端(72b)は、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の液面(9)よりも常に上方に位置する。つまり、装置本体(5)に設置された噴霧カートリッジ(70)が未使用の新品であって、噴霧カートリッジ(70)における噴霧用液体の貯留量が最大である状態であっても、装置本体(5)が転倒時姿勢となった場合には、噴霧ノズル(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置する。
−運転動作−
本実施形態の静電噴霧装置(1)の動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、噴霧用液体が液糸(リガメント)状態で噴出され、液滴に分裂し、拡散されて使用者に到達する。この静電噴霧装置(1)は、噴霧カートリッジ(70)がケーシング(10)内に収容された状態で運転可能な状態となる。
まず、使用者がシャッタ(13)を開くと、シャッタ(13)が移動することによって電源スイッチがON状態となる。電源スイッチがON状態となると、コントローラ(60)の搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)を作動させる。エアポンプ(41)は、空気管(42)を通じてタンク(71)の内部空間へ空気を供給する。タンク(71)内では、空気圧が上昇し、この空気圧が噴霧用液体の液面(9)に作用する。このため、タンク(71)内の噴霧用液体は、噴霧ノズル(72)へ流入し、噴霧ノズル(72)の先端(72a)まで押し上げられる。
また、電源スイッチがON状態になると、コントローラ(60)の電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)から高電圧を出力する。高電圧は、電極部材(84)を介してタンク(71)内の噴霧用液体に印加される。
噴霧ノズル(72)の先端(72a)では、電荷を帯びた噴霧用液体と対向電極(12)との間に電位差が生じる。その結果、噴霧ノズル(72)の先端(72a)付近の空間に電界が形成される。噴霧ノズル(72)の先端(72a)からは、噴霧用液体が電界に引っ張られて細長い液糸(リガメント)状態となって流出する。液糸状態となった噴霧用液体は、その後、概ね数十μmから300μm程度の大きさの液滴に分裂する。噴霧用液体には電荷が付与されているため、分裂した液滴同士の間には、電気的な斥力が作用する。このため、噴霧ノズル(72)から噴霧された噴霧用液体の液滴は、互いに反発し合って拡散する。拡散した噴霧用液体の液滴は、実質的に接地電位となっている使用者に向かって飛散し、使用者の顔面に付着する。
また、コントローラ(60)は、電源スイッチがON状態であっても、人検知センサ(30)からの検知信号に基づいて噴霧動作を制御することもできる。具体的に、噴霧用液体の噴霧中において、コントローラ(60)は、人検知センサ(30)の検知信号に基づいて使用者が不在であると判断すると、高電圧電源ユニット(50)に高電圧の出力を停止させ、エアポンプ(41)を停止させる。その後、コントローラ(60)は、人検知センサ(30)の検知信号に基づいて使用者が在席していると判断すると、高電圧電源ユニット(50)に高電圧の出力を再開させ、エアポンプ(41)を再び作動させる。これによって、使用者の不在時における無駄な噴霧を防止できる。
また、コントローラ(60)は、温湿度センサ(29)の計測値に基づいて適切な噴霧動作に制御することもできる。具体的には、部屋の空気の温度および湿度によって、噴霧における液糸(リガメント)の形成条件は異なる。そこで、コントローラ(60)は、噴霧ノズル(72)から噴霧用液体が安定して噴霧されるように、温湿度センサ(29)の計測値に基づいて、高電圧電源ユニット(50)からの出力の電圧値を調節したり、エアポンプ(41)からの空気の吐出量を調節する。
上述したように、静電噴霧装置(1)の装置本体(5)が机の上に置かれている場合には、例えば使用者の手が当たったりして装置本体(5)が転倒することも有り得る。噴霧用液体の噴霧中に装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になると、コントローラ(60)は、噴霧用液体の噴霧を停止させる動作を行う。
具体的に、設置面(200)上で横倒しになった装置本体(5)は、図8に示す転倒時姿勢となって静止する。転倒時姿勢となった装置本体(5)では、装置本体(5)の重心(CG)の位置がケーシング(10)の中心軸(CA)の実質的に鉛直下方に位置し、ケーシング(10)の側面における特定部位(18)が設置面(200)と接する。
図2に示すように、装置本体(5)が正立姿勢となっている状態では、噴霧ノズル(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも下方に位置し、噴霧ノズル(72)の内部を噴霧用液体が流れる。一方、図8に示すように、装置本体(5)が転倒時姿勢となっている状態では、噴霧ノズル(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置し、噴霧ノズル(72)の内部を空気が流れる。
このように、装置本体(5)の姿勢が正立姿勢から転倒時姿勢に変化すると、噴霧ノズル(72)を流れる流体が噴霧用液体から空気に変化する。その結果、流体が噴霧ノズル(72)を通過する際の圧力損失が低下し、エアポンプ(41)から噴霧カートリッジ(70)へ供給される空気の流量が増加する。一般的に、ポンプは、吐出する流体の流量が増えるに従って揚程が低下する特性を有している。このため、装置本体(5)の姿勢が正立姿勢から転倒時姿勢に変化すると、エアポンプ(41)から吐出される空気の圧力が低下し、タンク(71)内の空気圧も低下する。
そこで、コントローラ(60)は、圧力センサ(43)の計測値に基づいて、装置本体(5)が転倒時姿勢になったことを検知する。具体的に、コントローラ(60)は、所定時間(例えば3秒間)内における圧力センサ(43)の計測値の低下量が所定の基準変化量(例えば、0.2kPa)を上回ると、装置本体(5)が転倒時姿勢になったと判断し、高電圧電源ユニット(50)からの電圧の出力と、エアポンプ(41)の運転とを停止させる。
ところで、噴霧用液体の噴霧を行うと、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量が減少し、噴霧用液体の液面(9)が次第に低下してゆく。そして、図10に示すように、噴霧用液体の液面(9)が噴霧ノズル(72)の基端(72b)と同じか僅かに低い位置にまで低下すると、噴霧ノズル(72)へは噴霧用液体ではなく空気が流入することとなる。従って、噴霧用液体の液面(9)が図10に示す状態にまで低下した場合には、装置本体(5)が転倒時姿勢になった場合と同様に、噴霧ノズル(72)の内部を噴霧用液体が流れる状態に比べて、圧力センサ(43)の計測値が低下する。
そこで、コントローラ(60)は、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量が実質的にゼロになったこと(即ち、噴霧用液体の量が噴霧ノズル(72)から噴霧できない程度にまで減少したこと)を、圧力センサ(43)の計測値に基づいて検知し、高電圧電源ユニット(50)からの電圧の出力と、エアポンプ(41)の運転とを停止させる。そして、コントローラ(60)は、噴霧カートリッジ(70)の交換が必要であることを使用者に知らせるため、例えばLEDを点灯させる。
−実施形態の効果−
本実施形態において、静電噴霧装置(1)の装置本体(5)は、転倒したときに一定の転倒時姿勢となる。つまり、本実施形態の装置本体(5)では、ケーシング(10)が円筒状に形成されている。このため、装置本体(5)は、転倒した後にケーシング(10)の側面が設置面(200)と接した状態で転がることができる。また、本実施形態の装置本体(5)では、装置本体(5)の重心(CG)の位置がケーシング(10)の中心軸(CA)からずれている。このため、装置本体(5)は、どちらの方向に向かって倒れても、最終的には装置本体(5)の重心(CG)がケーシング(10)の中心軸(CA)の実質的に鉛直下方に位置する転倒時姿勢となって静止する。装置本体(5)が転倒時姿勢になると、ケーシング(10)の側面の特定部位(18)が設置面(200)と接する。
このように、本実施形態の静電噴霧装置(1)の装置本体(5)は、どの方向へ倒れた場合でも、最終的には一定の転倒時姿勢となって静止する。このため、転倒した際の装置本体(5)の姿勢が一定でない場合に比べ、装置本体(5)が転倒したことをコントローラ(60)で検知できる可能性が高まり、その結果、装置本体(5)の転倒時に噴霧用液体の噴霧を停止できる可能性が高くなる。従って、本発明によれば、装置本体(5)の転倒時に噴霧用液体の噴霧が継続されることに起因して静電噴霧装置(1)が故障する危険性を低くでき、静電噴霧装置(1)の信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態の装置本体(5)では、ケーシング(10)の下端部へその背面側からUSBケーブル(3a)のコネクタ(3)が挿入される。つまり、使用状態の装置本体(5)では、ケーシング(10)の特定部位(18)とは逆側に向かってコネクタ(3)が突出した状態となる。そして、装置本体(5)がその背面側に倒れようとすると、コネクタ(3)が設置面(200)と接するため、背面側への装置本体(5)の転倒が制限される。従って、本実施形態によれば、転倒時姿勢となり易い方向へ装置本体(5)を倒すことができ、転倒後の装置本体(5)の姿勢が転倒時姿勢となる可能性を高めることができる。
ここで、本実施形態の静電噴霧装置(1)では、噴霧カートリッジ(70)の内部空間へ空気を供給することによって、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体がノズル部材(72)の先端まで送られる。また、装置本体(5)が転倒時姿勢になると、噴霧カートリッジ(70)の内部空間では、ノズル部材(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置する状態となる。このため、正立姿勢の装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になると、ノズル部材(72)を流れる流体が噴霧用液体から空気へ変化し、噴霧カートリッジ(70)の内部空間の圧力が低下する。
そこで、本実施形態のコントローラ(60)は、圧力センサ(43)の計測値の変化量を監視し、所定時間内における圧力センサ(43)の計測値の変化量が所定値以上になると、装置本体(5)が転倒時姿勢になったと判断する。従って、本実施形態によれば、正立姿勢の装置本体(5)が倒れて転倒時姿勢になったことを、圧力センサ(43)の計測値に基づいて確実に判断できる。
ところで、本実施形態の静電噴霧装置(1)では、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量が殆ど無くなった場合も、ノズル部材(72)の基端(72b)が噴霧用液体の液面(9)よりも上方に位置する状態となり、噴霧カートリッジ(70)の内部空間の圧力が低下する。そこで、コントローラ(60)は、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量が減少して噴霧を継続できなくなったことも、圧力センサ(43)の計測値に基づいて検知する。
このように、本実施形態のコントローラ(60)は、装置本体(5)の姿勢を検知する動作と、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量を検知する動作の両方を、一つの圧力センサ(43)の計測値に基づいて行っている。従って、本実施形態によれば、これらの各動作を行うために個別のセンサ等を設ける場合に比べ、静電噴霧装置(1)の部品点数を削減することができ、静電噴霧装置(1)の製造コストを低減することができる。
−実施形態の変形例1−
本実施形態の変形例1について説明する。本変形例は、図5に示す噴霧ノズル(72)の構成を変更したものである。
図11に示すように、本変形例の噴霧ノズル(72)は、細管部(73a)とチューブ部(73b)とを備えている。なお、噴霧カートリッジ(70)における噴霧ノズル(72)の配置は、図5に示すものと同様である。
細管部(73a)は、樹脂製の細径管である。細管部(73a)は、外径が0.3mm以上0.4mm以下であり、内径が0.1mm以上0.2mm以下となっている。細管部(73a)の先端は、外側凹部(82)の内壁(83)の先端から僅かに突出しており、噴霧ノズル(72)の先端(72a)を構成している。また、細管部(73a)では、ノズルベース(74)の外側に位置する部分が、噴霧ノズル(72)の露出部(72c)を構成している。
チューブ部(73b)は、円管状に形成されており、その内径が細管部(73a)の外径よりも大きくなっている。チューブ部(73b)の先端は、細管部(73a)の基端に接続されている。チューブ部(73b)の基端は、タンク(71)内の最深部に位置しており、噴霧ノズル(72)の基端(72b)を構成している。つまり、本変形例においても、タンク(71)の内部空間では、噴霧ノズル(72)の基端(72b)が、底部側で且つ背面側の隅角部に位置している。
本変形例によれば、噴霧ノズル(72)に細管部(73a)とチューブ部(73b)を設けているため、噴霧ノズル(72)の基端(72b)から先端(72a)まで噴霧用液体を搬送する際の圧力損失を削減することができる。このため、図5に示す噴霧カートリッジ(70)を用いる場合に比べ、噴霧中における噴霧カートリッジ(70)内の空気圧を引き下げることができ、エアポンプ(41)の消費電力を削減することができる。
−実施形態の変形例2−
本実施形態の変形例2について説明する。本変形例は、装置本体(5)が転倒時姿勢になったことを検知するためのコントローラ(60)の動作を変更したものである。
具体的に、本変形例のコントローラ(60)は、圧力センサ(43)の計測値が所定の下限値未満になると、装置本体(5)が転倒時姿勢になったと判断し、高電圧電源ユニット(50)からの電圧の出力と、エアポンプ(41)の運転とを停止させる。
上述したように、装置本体(5)が転倒時姿勢になると、噴霧ノズル(72)を空気が流れる状態となる。このため、装置本体(5)が転倒時姿勢になると、圧力センサ(43)の計測値は、噴霧ノズル(72)を噴霧用液体が流れる状態では有り得ない低い値となる。そこで、本変形例のコントローラ(60)は、圧力センサ(43)の計測値の低下量ではなく、圧力センサ(43)の計測値そのものに基づいて、装置本体(5)が転倒時姿勢になったことを検知する。
−実施形態の変形例3−
本実施形態の変形例3について説明する。本変形例は、噴霧カートリッジ(70)とコントローラ(60)の構成を変更したものである。
図12に示すように、本変形例の噴霧カートリッジ(70)には、フロートスイッチ(90)が設けられている。フロートスイッチ(90)は、スイッチ部(91)とフロート部(92)とを備えている。スイッチ部(91)は、タンク(71)の側壁の内面に固定されている。フロート部(92)は、スイッチ部(91)に対して回動可能に取り付けられている。
図12(A)に示すように、噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量が多い状態では、フロート部(92)が噴霧用液体に浸かった状態となる。この状態では、フロート部(92)に浮力が作用するため、フロート部(92)の位置が同図に示す位置となり、スイッチ部(91)の接点が開いた状態となる。
噴霧カートリッジ(70)内の噴霧用液体の残量が減少し、噴霧用液体の液面(9)が低下すると、それに伴ってフロート部(92)の位置も次第に低くなる。そして、図12(B)に示すように、噴霧用液体の液面(9)が噴霧ノズル(72)の基端(72b)に達すると、フロート部(92)の位置が下限位置となり、スイッチ部(91)の接点が閉じる。そこで、コントローラ(60)は、スイッチ部(91)の接点が閉じたことを検知すると、噴霧用液体を噴霧できない状態になっていると判断し、高電圧電源ユニット(50)からの電圧の出力と、エアポンプ(41)の運転とを停止させる。
また、図12(C)に示すように、装置本体(5)が転倒時姿勢になった場合も、スイッチ部(91)に対するフロート部(92)の相対的な位置は、図12(B)に示す状態と同じになる。従って、装置本体(5)が転倒時姿勢になると、スイッチ部(91)の接点が閉じる。そこで、コントローラ(60)は、スイッチ部(91)の接点が閉じたことを検知すると、噴霧用液体を噴霧できない状態になっていると判断し、高電圧電源ユニット(50)からの電圧の出力と、エアポンプ(41)の運転とを停止させる。
−その他の実施形態−
上記の実施形態とその変形例では、噴霧用液体としてヒアルロン酸を含んだ水溶液を用いたが、噴霧用液体はこれに限定されるものではない。例えば温泉水やテアニンの水溶液を噴霧用液体として用いてもよいし、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水溶液を噴霧用液体として用いてもよい。
また、上記の実施形態とその変形例では、ケーシング(10)の側面における特定部位(18)の形状を平坦面や凹面としてもよい。ケーシング(10)をこのような形状にすると、転倒した装置本体(5)が転倒時姿勢で静止しやすくなる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。