A.第1実施形態:
図1は、本発明の一実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図である。印刷装置1000は、インクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部1100と、回動自在なカバー1200と、操作部1300とを有する。この印刷装置1000は、ポスターなどの大判の用紙(A2〜A0サイズ等)に印刷を行う大型のインクジェットプリンター(Large Format Ink Jet Printer)である。カートリッジ装着部1100を「カートリッジホルダー」又は単に「ホルダー」とも呼ぶ。図1に示す例では、カートリッジ装着部1100には、4つのインクカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のインクカートリッジが装着される。なお、カートリッジ装着部1100に装着されるインクカートリッジとしては、これ以外の任意の複数種類のインクカートリッジを採用可能である。図1には、説明の便宜上、互いに直交するXYZ軸が描かれている。+X方向は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入される方向(以下、「挿入方向」又は「装着方向」と呼ぶ)である。カートリッジ装着部1100には、カバー1200が開閉可能に取り付けられている。カバー1200は省略可能である。操作部1300は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、また、ユーザーに各種の通知を行うための表示部を備えている。なお、この印刷装置1000は、印刷ヘッドや、印刷ヘッドの走査を行うための主走査送り機構及び副走査送り機構、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるヘッド駆動機構等を有しているが、ここでは図示を省略する。この印刷装置1000のように、ユーザーにより交換されるカートリッジが、印刷ヘッドのキャリッジ以外の場所に設けられたカートリッジ装着部に装着される印刷装置のタイプを、「オフキャリッジタイプ」と呼ぶ。
図2は、インクカートリッジ100の外観を示す斜視図である。図2のXYZ軸は、図1のXYZ軸に対応している。なお、インクカートリッジを単に「カートリッジ」とも呼ぶ。このカートリッジ100は、扁平な略直方体の外観形状を有しており、3方向の寸法L1,L2,L3のうちで、長さL1(挿入方向のサイズ)が最も大きく、幅L2が最も小さく、高さL3が長さL1と幅L2の中間である。但し、印刷装置のタイプによっては、長さL1が高さL3よりも小さいカートリッジも存在する。
カートリッジ100は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc,Sdとを備えている。先端面Srは、挿入方向Xの先頭に位置する面である。先端面Sfと後端面Srは、6つの面のうちで最も小さく、互いに対向している。先端面Sfと後端面Srのそれぞれは、天井面Stと底面Sbと2つの側面Sc,Sdとに交わっている。カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に装着された状態では、天井面Stが鉛直方向の上端に位置し、底面Sbが鉛直方向の下端に位置する。2つの側面Sc,Sdは、6つの面の中で最も大きな面であり、互いに対向している。カートリッジ100の内部には、可撓性材料で形成されたインク収容室120(「インク収容袋」とも呼ぶ)が設けられている。インク収容室120は、可撓性材料で形成されているので、インクが消費されてゆくにつれて次第に収縮し、主に厚み(Y方向の幅)が小さくなってゆく。
先端面Sfは、2つの位置決め穴131,132と、インク供給口110とを有している。2つの位置決め穴131,132は、カートリッジ装着部1100内におけるカートリッジの収容位置を定めるために用いられる。インク供給口110は、カートリッジ装着部1100のインク供給管と接続されて、カートリッジ100内のインクを印刷装置1000に供給する。天井面Stには、回路基板200が設けられている。図2の例では、回路基板200は、天井面Stの先端(挿入方向Xの最も奥側の端部)に設けられている。但し、回路基板200は、天井面Stの先端近傍の他の位置に設けても良く、さらに、天井面St以外の位置に設けても良い。回路基板200には、インクに関する情報を格納するための不揮発性の記憶素子が搭載されている。なお、回路基板200を単に「基板」とも呼ぶ。底面Sbは、カートリッジ100を収容位置に固定するために用いられる固定溝140を有している。第1の側面Scと第2の側面Sdは互いに対向しており、また、先端面Sf,天井面St、後端面Sr,及び,底面Sbと直交する。第2の側面Sdと先端面Sfが交わる位置には、凹凸嵌合部134が配置されている。この凹凸嵌合部134は、カートリッジ装着部1100の凹凸嵌合部と共に、カートリッジの誤装着を防止するために用いられる。
このカートリッジ100は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジであり、個人向けの小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べて、カートリッジ寸法が大きく、また、収容されているインク量も多い。例えば、カートリッジの長さL1は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは100mm以上であるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは70mm以下である。また、未使用時のインク量は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは17ml以上(典型的には100ml以上)であるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは15ml以下である。また、多くの場合に、大型インクジェットプリンター用のカートリッジは、先端面(挿入方向の先頭の面)においてカートリッジ装着部と機械的に連結されるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは底面においてカートリッジ装着部と機械的に連結される。大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは、このような寸法、重量、又は、カートリッジ装着部との連結位置に関する特徴点に起因して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べて回路基板200の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。この点については更に後述する。
ところで、従来は、カートリッジに設けられている多数の端子のうちの1つ又は2つの端子を用いて装着状態の検出が行われるのが普通であった。しかし、カートリッジが正しく装着されていることが検出された場合にも、装着検出に使用されていない他の端子については、印刷装置の端子との接触が不十分な場合がある。特に、記憶装置用の端子の接触が不十分な場合には、記憶装置からのデータの読み出し時や記憶装置へのデータの書き込み時にエラーが発生するという問題が生じる。
このような端子の接触不良の問題は、ポスターなどの大判の用紙(A2〜A0サイズ等)に印刷を行う大型インクジェットプリンター用のインクカートリッジにおいて特に重要である。すなわち、大型インクジェットプリンターでは、インクカートリッジの寸法が小型インクジェットプリンターに比べて大きく、また、カートリッジに収容しているインク重量も多い。発明者らは、このような寸法及び重量の違いから、大型インクジェットプリンターでは、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易い傾向にあることを見いだした。また、大型インクジェットプリンターでは、インクカートリッジとカートリッジホルダー(「カートリッジ装着部」とも呼ぶ)との連結位置がインクカートリッジの側面に設けられていることが多く、一方、小型インクジェットプリンターではインクカートリッジの底面に連結位置が設けられていることが多い。このような連結位置の相違点からも、大型インクジェットプリンターは、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易い傾向にあることが判明した。このように、大型インクジェットプリンターでは、種々の構成に起因して、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易く、この結果、基板の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。そこで、発明者らは、特に大型インクジェットプリンターに関して、記憶装置用の端子の接触状態が良好であることをより確実に検出したいという要望を持つに至ったものである。
図3(A)は、基板200の表面の構成を示している。基板200の表面は、カートリッジ100に基板200が装着されたときに外側に露出している面である。図3(B)は、基板200を側面から見た図を示している。基板200の上端部には、ボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
図3(A)における矢印SDは、カートリッジ装着部1100へのカートリッジ100の装着方向を示している。この装着方向SDは、図2に示すカートリッジの装着方向(X方向)と一致する。基板200は、裏面に記憶装置203を有しており、表面には9つの端子210〜290からなる端子群が設けられている。記憶装置203は、カートリッジ100のインクに関する情報(例えばインク残量)を格納する。端子210〜290は、略矩形状に形成され、装着方向SDと略垂直な列を2列形成するように配置されている。2つの列のうち、装着方向SDの手前側の列(図3(A)における上側に位置する列)を上側列R1(第1列)と呼び、装着方向SDの奥側の列(図3(A)における下側に位置する列)を下側列R2(第2列)と呼ぶ。なお、これらの列R1,R2は、複数の端子の接触部cpによって形成される列であると考えることも可能である。
上側列R1を形成する端子210〜240と、下側列R2を形成する端子250〜290は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<上側列R1>
(1)装着検出端子210
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)装着検出端子240
<下側列R2>
(5)装着検出端子250
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)装着検出端子290
4つの装着検出端子210,240,250,290は、対応する装置側端子との電気接触の良否を検出する際に使用されるものであり、「接触検出端子」と呼ぶことも可能である。また、装着検出処理を「接触検出処理」と呼ぶことが可能である。他の5つの端子220,230,260,270,280は、記憶装置203用の端子であり、「メモリー端子」とも呼ぶ。
複数の端子210〜290のそれぞれは、その中央部に、複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列R1を形成する端子210〜240の各接触部cpと、下側列R2を形成する端子250〜290の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列R1を形成する端子210〜240と、下側列R2を形成する端子250〜290も、互いの端子中心が装着方向SDに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
上側列R1の2つの装着検出端子210,240の各接触部は、上側列R1の両端部、すなわち、上側列R1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列R2の2つの装着検出端子250,290の各接触部は、下側列R2の両端部、すなわち、下側列R2の最も外側にそれぞれ配置されている。メモリー端子220、230、260、270、280の接触部は、複数の端子210〜290の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。また、4つの装着検出端子210,240,250,290の接触部は、メモリー端子220、230、260、270、280の集合の四隅に配置されている。
図3(C)は、図3(A)に示した9個の端子210〜290の接触部210cp〜290cpを示している。9個の接触部210cp〜290cpは、ほぼ一定の間隔で略均一に配置されている。記憶装置用の複数の接触部220cp,230cp,260cp,270cp,280cpは、接触部210cp〜290cp全体が配置されている領域内の中央の領域(第1領域810)に配置されている。4つの装着検出端子の接触部210cp,240cp,250cp,290cpは、第1領域810よりも外側に配置されている。また、4つの装着検出端子の接触部210cp,240cp,250cp,290cpは、第1領域810を包含する4角形の第2領域820の4隅に配置されている。第1領域810の形状は、4つの装着検出端子の接触部210cp,240cp,250cp,290cpを包含する最も面積の小さな4角形とすることが好ましい。あるいは、第1領域810の形状を、4つの装着検出端子の接触部210cp,240cp,250cp,290cpに外接する四角形としてもよい。第2領域820の形状は、接触部210cp〜290cpのすべてを包含する最も面積の小さな4角形とすることが好ましい。また、図2(B)の鉛直下方向(―Z方向)に見たときに、記憶装置用の複数の接触部220cp,230cp,260cp,270cp,280cpを含む第1領域810の中心は、カートリッジ100のインク供給口110(図2)の中心線上に位置するように配置されていることが好ましい。
図4A〜図4Cは、カートリッジ装着部1100の構成を示す図である。図4Aは、カートリッジ装着部1100を斜め後方から見た斜視図であり、図4Bは、カートリッジ装着部1100の内部を、その正面(カートリッジを挿入する口)から見た図である。図4Cは、カートリッジ装着部1100の内部を断面から見た図である。なお、図4A〜図4Cでは、図示の便宜上、一部の壁部材などを省略している。図4A〜図4CのXYZ軸は図1,図2のXYZ軸に相当する。カートリッジ装着部1100は、カートリッジを収容するための4つの収容スロットSL1〜SL4を備えている。図4Bに示すように、カートリッジ装着部1100の内部には、1スロット毎に、インク供給管1180と、一対の位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140と、接点機構1400とが設けられている。図4Cに示すように、インク供給管1180と、一対の位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140は、カートリッジ装着部の奥壁部材1160に固定されている。インク供給管1180と、位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140とは、スライダー部材1150に設けられた貫通孔1181,1111,1121,1141に挿入され、カートリッジの装着方向とは逆向きに突出して配置されている。図4Aは、奥壁部材1160をはずして、スライダー部材1150を裏側からみた図である。図4Aでは、位置決めピンを省略して図示している。図4Aに示すように、スライダー部材1150の裏側には、一対の位置決めピン1110,1120に対応した一対の付勢バネ1112,1122が設けられている。図4Cに示すように、一対の付勢バネ1112,1122は、スライダー部材1150と奥壁部材1160に固定して配置されている。
インク供給管1180は、カートリッジ100のインク供給口110(図2(A))に挿入されて、インクを印刷装置1000内部の印刷ヘッドに供給するために用いられる。位置決めピン1110,1120は、カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入される際に、カートリッジ100に設けられた位置決め穴131,132に挿入されて、カートリッジ100の収容位置を定めるために用いられる。凹凸嵌合部1140は、カートリッジ100の凹凸嵌合部134の形状に対応する形状を有しており、各収容スロットSL1〜SL4毎に異なる形状を有している。これにより、各収容スロットSL1〜SL4には、予め決定された一種類のインクを収容するカートリッジのみが収容可能となり、他の色のカートリッジは収容できないこととなる。
各収容スロットの奥の壁面に配置されたスライダー部材1150は、カートリッジの装着方向(X方向)及び排出方向(−X方向)にスライド可能に構成されている。各収容スロットに設けられた一対の付勢バネ1112,1122(図4A)は、スライダー部材1150を排出方向に付勢している。カートリッジ100は、収容スロットに挿入される際に、スライダー部材1150とともに一対の付勢バネ1112,1122を装着方向に押してゆき、付勢バネ1112,1122の付勢力に抗しつつ押し込まれる。従って、カートリッジ100は、カートリッジ装着部1100に収容された状態において、一対の付勢バネ1112,1122によって排出方向に付勢される。また、この収容状態では、各収容スロットSL1〜SL4の底部に設けられた固定部材1130(図4B)が、カートリッジ100の底面Sbに設けられた固定溝140(図2(A))に係合する。この固定部材1130と固定溝140の係合によって、付勢バネ1112,1122の付勢力によりカートリッジ100がカートリッジ装着部1100から排出されてしまうことが防止される。
カートリッジ100を排出する場合には、ユーザーによりカートリッジ100が一旦装着方向に押し込まれると、これに応じて固定部材1130と固定溝140との間の係合が外れる。この結果、カートリッジ100は、一対の付勢バネ1112,1122の付勢力により排出方向(−X方向)に押し出される。従って、ユーザーはカートリッジ100をカートリッジ装着部1100から容易に取り出すことができる。
接点機構1400(図4B)は、カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入された場合に、回路基板200の端子210〜290(図3)と接触して導通する複数の装置側端子を有する。印刷装置1000の制御回路は、この接点機構1400を介して、回路基板200との間で信号の送受信を行う。
図5(A)は、カートリッジ装着部1100内にカートリッジ100が適正に装着された状態を示している。この状態では、カートリッジ100は傾いておらず、その上面や底面がカートリッジ装着部1100の上端部材や下端部材と平行な状態にある。カートリッジ装着部1100のインク供給管1180は、カートリッジ100のインク供給口110に連結され、カートリッジ装着部1100の位置決めピン1110,1120は、カートリッジ100の位置決め穴131,132に挿入される。さらに、カートリッジ装着部1100の底部に設けられた固定部材1130は、カートリッジ100の底面に設けられた固定溝140に係合する。そして、カートリッジの先端面Sfが、カートリッジ装着部1100の一対の付勢バネ1112,1122によって排出方向に付勢されている。カートリッジ100が適正に装着された状態では、カートリッジ装着部1100の接点機構1400と、カートリッジ100の基板200の端子210〜290(図3)とが互いに良好な接触状態で接触する。
ところで、カートリッジ装着部1100は、カートリッジ100の装着を容易にするために、その内部に多少の遊びがある。このため、カートリッジ100は、図5(A)に示すような傾いていない正立した適正な状態で収納されるとは限らず、カートリッジの幅方向(Y方向)に平行な軸を中心として傾く場合がある。具体的には、図5(B)に示すようにカートリッジの後端がやや下がった状態に傾斜したり、逆に、図5(C)に示すようにカートリッジの後端がやや上がった状態に傾斜したりする場合が生じる。特に、インクが消費されてゆき、インク界面LLが低下してくると、収容されているインク重量の変化に応じた重心の変化や、付勢バネ1112,1122による付勢力とインク重量を含むカートリッジ重量とのバランスが変化する。そして、この重量バランスの変化に応じてカートリッジが傾きやすくなる傾向がある。カートリッジが傾くと、カートリッジの基板200に設けられた複数の端子の中のいくつかの端子に接触不良が発生する可能性がある。特に、図5(B),(C)の状態では、基板200(図3)の上側列R1の端子群210〜240と、下側列R2の端子群250〜290のうちの一方の1つ以上の端子に接触不良が発生する可能性がある。
また、カートリッジが傾く際には、図5(B),(C)とは垂直な方向の傾き(装着方向Xに平行な軸を中心とした傾き)も併せて発生する場合がある。このときには、図3に示す基板200も、その装着方向SDに平行な軸を中心として左右に傾き、基板200の左側にある端子群210,220,250,260と、右側にある端子230,240,280,290群と、のうちの一方の1つ以上の端子に接触不良が発生する可能性がある。
このような接触不良が発生すると、カートリッジの記憶装置203と印刷装置1000との間の信号の送受信を正常に行うことができないという不具合が生じる。また、インク滴やほこりなどの異物が基板200の端子付近に付着すると、端子同士に意図しない短絡やリークが発生する場合もある。以下で説明する各種の実施形態における装着状態の検出処理では、このようなカートリッジの傾きに起因する接触不良を検出したり、異物に起因する意図しない短絡やリークを検出したりするために実行される。
ところで、大型のインクジェットプリンター用のカートリッジは、個人向けの小型のインクジェットプリンター用のカートリッジと比較して、以下のような特徴点を有している。
(1)カートリッジ寸法が大きい(長さL1が100mm以上)。
(2)収容されているインク量が多い(17ml以上であり、典型的には100mL以上である)。
(3)先端面(装着方向の先頭の面)においてカートリッジ装着部と機械的に連結される。
(4)インク収容室内の空間が区切られておらず、単一のインク収容室(インク収容袋)を構成している。
大型インクジェットプリンターの種類によっては、これらの特徴点(1)〜(4)のうちのいくつかを有さないカートリッジも利用されるが、これらのうちの少なくとも1つの特徴点を有するものが普通である。
大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは、このような寸法、重量、カートリッジ装着部との連結位置、又はインク室構成の特徴点を有するために、小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べてカートリッジが傾き易く、この結果、基板200の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。従って、特に大型インクジェットプリンター及びそのカートリッジについて、以下で説明するような端子の接触不良、意図しない短絡、リーク等の検出処理を行う意義が大きいものと考えられる。
図6は、第1実施形態におけるカートリッジの基板200と印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。印刷装置1000は、表示パネル430と、電源回路440と、主制御回路400と、サブ制御回路500とを備えている。表示パネル430は、ユーザーに印刷装置1000の動作状態や、カートリッジの装着状態などの各種の通知を行うための表示部である。表示パネル430は、例えば、図1の操作部1300に設けられる。電源回路440は、第1の電源電圧VDDを生成する第1電源441と、第2の電源電圧VHVを生成する第2電源442とを有している。第1の電源電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。第2の電源電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)である。これらの電圧VDD、VHVは、サブ制御回路500に供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。主制御回路400は、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500は、メモリー制御回路501と、装着検出回路600とを有している。なお、主制御回路400と、サブ制御回路500とを含む回路を、「制御回路」と呼ぶことも可能である。
カートリッジの基板200(図3)に設けられた9つの端子のうち、リセット端子220と、クロック端子230と、電源端子260と、接地端子270と、データ端子280は、記憶装置203に電気的に接続されている。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子から入力されるクロック信号SCKのパルス数と、データ端子から入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリセルが決定され、クロック信号SCKに同期して、データ端子よりデータを受信し、もしくは、データ端子からデータを送信する不揮発性メモリーである。クロック端子230は、サブ制御回路500から記憶装置203にクロック信号SCKを供給するために用いられる。電源端子260と接地端子270には、印刷装置1000から記憶装置を駆動するための電源電圧(例えば定格3.3V)と接地電圧(0V)がそれぞれ供給されている。この記憶装置203を駆動するための電源電圧は、第1の電源電圧VDDから直接与えられる電圧か、第1の電源電圧VDDから生成されるもので第1の電源電圧VDDよりも低い電圧でもよい。データ端子280は、サブ制御回路500と記憶装置203との間で、データ信号SDAをやり取りするために用いられる。リセット端子220は、サブ制御回路500から記憶装置203にリセット信号RSTを供給するために用いられる。4つの装着検出端子210,240,250,290は、カートリッジ100の基板200(図3)内で配線を介して互いに接続されており、また、すべて接地されている。例えば、装着検出端子210,240,250,290は、接地端子270と接続されることによって接地される。但し、接地端子270以外の経路で接地するようにしてもよい。この説明からも理解できるように、装着検出端子210,240,250,290は、メモリー端子のうちの一部(又は記憶装置203)に接続されていても良いが、接地端子以外のメモリー端子や記憶装置に接続されていないことが好ましい。特に、装着検出端子がメモリー端子や記憶装置に全く接続されていなければ、装着検査信号以外の信号や電圧が装着検出端子に印加されないので、装着検出をより確実に行える点で好ましい。なお、図6の例では4つの装着検出端子210,240,250,290は配線により接続されているが、これらを接続する配線の一部を抵抗に置き換えてもよい。なお、2つの端子が配線により接続されている状態を、「短絡接続」又は「導線接続」とも呼ぶ。配線による短絡接続は、意図しない短絡とは異なる状態である。
図6において、装置側端子510〜590と、基板200の端子210〜290とを接続する配線経路には、配線名SCK,VDD,SDA,RST,OV1,OV2,DT1,DT2が付されている。これらの配線名のうち、記憶装置用の配線経路のものは、信号名と同じ名称が使用されている。なお、装置側端子510〜590は、図4B及び図5に示した接点機構1400に設けられている。
図7は、基板200と装着検出回路600との接続状態を示している。基板200の4つの装着検出端子210,240,250,290は、対応する装置側端子510,540,550,590を介して装着検出回路600に接続されている。また、基板200の4つの装着検出端子210,240,250,290は接地されている。装置側端子510,540,550,590と装着検出回路600とを接続する配線は、プルアップ抵抗を介してサブ制御回路500内の電源VDD(定格3.3V)にそれぞれ接続されている。
図7の例では、基板200の4つの装着検出端子210,240,250,290のうちの3つの端子210,240,250は、対応する装置側端子510,540,550と良好な接続状態にある。一方、4番目の装着検出端子290は、対応する装置側端子590と接触不良の状態にある。接続状態が良好な3つの装置側端子510,540,550の配線の電圧はLレベル(接地電圧レベル)になり、一方、接続状態が不良である装置側端子590の配線の電圧はHレベル(電源電圧VDDレベル)となる。従って、装着検出回路600は、これらの各配線の電圧レベルを調べることによって、4つの装着検出端子210,240,250,290のそれぞれについて、接触状態の良否を判定することが可能である。
基板200の4つの装着検出端子210,240,250,290の各接触部cpは、記憶装置用の端子220,230,260,270,280の接触部cpの集合領域810の周囲の四隅に配置されている。4つの装着検出端子210,240,250,290の接触状態がすべて良好な場合には、カートリッジに大きな傾きが無く、記憶装置用の端子220,230,260,270,280の接触状態も良好である。一方、4つの装着検出端子210,240,250,290のうちの1つ以上の端子の接触状態が不良である場合には、カートリッジに大きな傾きがあり、記憶装置用の端子220,230,260,270,280のうちの1つ以上の端子の接触状態も不良である可能性がある。装着検出回路600は、4つの装着検出端子210,240,250,290のうちの1つ以上の接触状態が不良である場合には、表示パネル430にその未装着状態を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
なお、記憶装置用の端子の接触部cpの集合領域810の周囲の四隅全部に装着検出端子の接触部cpを設けた理由は、カートリッジ100をカートリッジ装着部1100に装着した状態においても、カートリッジ100がある程度傾く自由度があるために、カートリッジ100の基板200と、カートリッジ装着部1100の接点機構1400(図5)とが相互に傾く場合があるからである。例えば、カートリッジ100の後端が図5(B)に示すように傾いて、基板200の上側列R1の端子群210〜240(その接触部群)が下側列R2の端子群250〜290(その接触部群)よりも接点機構1400から離れると、上側列R1の端子群210〜240の接触が不良となる可能性がある。逆に、カートリッジ100の後端が図5(C)に示すように傾いて、基板200の下側列R2の端子群250〜290が上側列R1の端子群210〜240よりも接点機構1400から離れると、基板200の下側列R2の5つの端子250〜290の接触が不良となる可能性がある。また、カートリッジ100が、図5(B),(C)とは異なり、X方向に平行な軸を中心として傾いて、図7における基板200の左端が右端よりも接点機構1400から離れると、基板200の左側にある端子210,220,250,260,270の接触が不良となる可能性がある。逆に、基板200の右端が左端よりも接点機構1400から離れると、基板200の右側にある端子230,240,270,280,290の接触が不良となる可能性がある。このような接触不良が生じると、記憶装置203からのデータの読み出しや、記憶装置203へのデータの書き込み時にエラーが発生する可能性がある。そこで、上述のように、メモリー端子220,230,260,270,280の接触部cpの集合領域810の周囲の四隅に配置されている4つの装着検出端子210,240,250,290の接触部cpの接触状態がすべて良好か否かを確認するようにすれば、このような傾きに起因する接触不良及び記憶装置のアクセスエラーを防止することが可能である。
このように、第1実施形態では、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の集合領域の周囲の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。特に、大型のインクジェットプリンター用のカートリッジでは、図5において説明したように、カートリッジ装着部内においてカートリッジが傾きやすい傾向にある。従って、複数の記憶装置用端子の接触部が配置された領域の周囲の領域(複数の記憶装置用端子の接触部が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する領域)四隅に4つの装着検出端子の接触部を配置するとともに、これらの4つの装着検出端子の接触状態がすべて良好か否かを確認することの必要性と意義は、大型のインクジェットプリンター用のカートリッジにおいて特に大きいものと考えられる。ここで、複数の記憶装置用端子とは、印刷装置の制御回路が、カートリッジに設けられている記憶装置にデータを書き込んだり、データを読み出したりするために必須の2つの電源端子(接地端子、電源端子)と2つの信号端子(リセット端子、クロック端子、データ端子)である。
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における基板の構成を示す図である。端子210〜290の配列は、図3(A)に示したものと同じである。但し、各端子の機能(用途)は以下の通りであり、第1実施形態と若干異なっている。
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210(リーク検出/装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)過電圧検出端子240(リーク検出/装着検出兼用)
<下側列R2>
(5)センサー端子250(装着検出兼用)
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)センサー端子290(装着検出兼用)
上側列R1の両端にある端子210,240とその接触部は、過電圧の検出(後述)と、端子間のリーク検出(後述)と、装着検出(接触検出)とに使用される。また、下側列R2の端子250,290とその接触部は、カートリッジ100に設けられたセンサーを使用したインク残量の検出と、装着検出(接触検出)の両方に使用される。なお、この端子群210〜290の接触部を含む四角形の領域の四隅にある端子210,240,250,290の4つの接触部が装着検出(接触検出)に使用される点は、第1実施形態と同じである。なお、第2実施形態において、上側列R1の両端に配置された2つの端子210,240の接触部には、記憶装置を駆動するための第1電源電圧VDDと同じ電圧、又は、第1電源電圧VDDから生成された電圧が印加され、下側列R2の両端に配置された2つの端子250,290の接触部には、印刷ヘッドを駆動するために用いられる第2電源電圧VHVと同じ電圧、又は、第2電源電圧VHVから生成された電圧が印加される。ここで、「第2電源電圧VHVから生成された電圧」としては、第1電源電圧VDDよりも高く、第2電源電圧VHVよりも低い電圧を使用することが好ましい。
ところで、印刷材カ―トリッジの装着状態や接触検出の検出の一態様として、カートリッジの端子同士に意図しない短絡が生じていないか否かを調べる短絡検出が行われる場合がある。短絡検出では、例えば、通常の電源電圧(3.3V)よりも高い電圧が印加される高電圧用端子に隣接した位置に短絡検出用端子を設け、この短絡検出用端子に過剰な電圧が発生するか否かが調べられる。そして、短絡検出用端子に過剰な電圧が検出された場合には、高電圧用端子への高電圧の印加が停止される。しかしながら、短絡検出用端子に過剰な電圧が発生したときに直ちに高電圧の印加を停止したとしても、その停止前に発生していた過剰な電圧に起因して、カートリッジや印刷装置に何らかの不具合が発生する可能性を否定できないという問題がある。以下に説明する第2実施形態や第3実施形態は、このような従来の問題点を解決するための工夫も含んでいる。
図9は、第2実施形態におけるカートリッジの基板200aと印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。基板200aは、記憶装置203と、9つの端子210〜290の他に、インク残量の検出に使用されるセンサー208を備えている。センサー208としては、例えば、ピエゾ素子を使用した周知のインク残量センサーを使用することができる。なお、ピエゾ素子は、電気的には容量素子として機能する。
主制御回路400は、第1実施形態と同様に、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500aは、メモリー制御回路501と、センサー関連処理回路503とを有している。センサー関連処理回路503は、カートリッジ装着部1100におけるカートリッジの装着状態の検出と、センサー208を用いたインク残量の検出とを行うための回路である。センサー関連処理回路503は、カートリッジの装着状態の検出を行うために使用されるので、センサー関連処理回路503を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。センサー関連処理回路503は、カートリッジのセンサー208に、記憶装置203に印加又は供給される電源電圧VDDに比べて高い電圧を印加又は供給する高電圧回路である。なお、センサー208に印加する高い電圧としては、印刷ヘッドの駆動に用いる電源電圧VHV(定格42V)そのものを利用するか、もしくは、印刷ヘッドの駆動に用いる電源電圧VHVから生成したやや低い電圧(例えば36V)を利用することが可能である。
図10は、第2実施形態におけるセンサー関連処理回路503の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジがカートリッジ装着部に装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。センサー関連処理回路503は、非装着状態検出部670と、過電圧検出部620と、検知パルス発生部650と、センサー処理部660とを有している。センサー処理部660は、接触検出部662と、液量検出部664とを含んでいる。接触検出部662は、カートリッジのセンサー208を用いてセンサー端子250,290の接触状態の検出を行う。液量検出部664は、カートリッジのセンサー208を用いてインク残量の検出を行う。検知パルス発生部650と非装着状態検出部670は、全カートリッジが装着されているか否かの検出(非装着状態の検出処理)と、端子210/250間、及び、端子240/290間のリーク状態の検出と、を行う。過電圧検出部620は、過電圧検出端子210,240に過大な電圧が印加されているか否かの検出を行う。
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線を介して互いに接続されている。図10の例では、過電圧検出端子210,240は配線により短絡接続されているが、その接続配線の一部を抵抗としても良い。1番目のカートリッジIC1の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介してセンサー関連処理回路503内の配線651に接続されており、この配線651は、非装着状態検出部670に接続されている。n番目(n=1〜3)のカートリッジの第2の過電圧検出端子240と、n+1番目のカートリッジの第1の過電圧検出端子210とは、対応する装置側端子540,510を介して互いに接続される。また、4番目のカートリッジIC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して検知パルス発生部650に接続される。すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部内に正しく装着されていれば、各カートリッジの過電圧検出端子240,210を順次経由して、検知パルス発生部650と非装着状態検出部670とが互いに接続される。一方、1つでも未装着のカートリッジがある場合や装着不良がある場合には、装置側端子510,540もしくはカートリッジIC1〜IC4の端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が生じて、検知パルス発生部650と非装着状態検出部670とが非接続状態となる。従って、非装着状態検出部670は、検知パルス発生部650から送られる検査信号DPinsに対応する応答信号DPresを受信できるか否かに応じて、カートリッジIC1〜IC4の過電圧検出端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が存在するか否かを判定することができる。このように、第2実施形態では、すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部内に装着されたときには各カートリッジの過電圧検出端子240,210が順次直列に接続されるので、その接続状態を調べることによって、カートリッジIC1〜IC4の過電圧検出端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が存在するか否かを判定することができる。このような未接触や接触不良が発生する典型的な場合は、1つ以上のカートリッジが未装着の場合である。従って、非装着状態検出部670は、検査信号DPinsに対応する応答信号DPresを受信できるか否かに応じて、1つ以上のカートリッジが未装着か否かを直ちに判定することが可能である。検査信号DPinsは、第1の電源電圧VDDから供給される電圧をもとに生成すればよい。
4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介して、ダイオード641〜644のアノード端子に接続される。また、4つのカートリッジIC1〜IC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して、ダイオード642〜645のアノード端子に接続される。なお、第2のダイオード642のアノード端子は、第1のカートリッジIC1の第2の過電圧検出端子240と、第2のカートリッジIC2の第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。ダイオード643,644も同様に、1つのカートリッジの第2の過電圧検出端子240と隣接するカートリッジの第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。これらのダイオード641〜645のカソード端子は、過電圧検出部620に並列に接続されている。これらのダイオード641〜645は、過電圧検出端子210,240に異常な高電圧が印加されていないか否かを監視するために使用される。このような異常な電圧値(「過電圧」と呼ぶ)は、各カートリッジの過電圧検出端子210,240のいずれかと、センサー端子250,290のいずれかとの間に意図しない短絡が生じている場合に発生する。例えば、インク滴やゴミなどの異物が基板200(図3(A))の表面に付着すると、第1の過電圧検出端子210と第1のセンサー端子250の間、又は、第2の過電圧検出端子240と第2のセンサー端子290の間に意図しない短絡が発生する可能性がある。このような意図しない短絡が発生すると、ダイオード641〜645のいずれかを介して過電圧検出部620に電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無、及び、意図しない短絡の発生の有無を判定することが可能である。また、一般に、意図しない短絡の原因となる異物は、基板200の上方から下方に、かつ、外側から内側に向けて進入しやすい。従って、過電圧検出端子210,240の接触部が基板200の上側列R1上に配置される接触部の両端(図3)の接触部となるように配置しておけば、過電圧検出端子210,240が、センサー端子250,290の近くに配置されるので、センサー端子250、290に印加される高電圧がメモリー端子220,230,260,270,280に印加される可能性を低減することが可能である。
図11は、接触検出部662及び液量検出部664と、カートリッジのセンサー208との接続状態を示すブロック図である。センサー208は、切換スイッチ666を介して、接触検出部662と液量検出部664の一方に選択的に接続される。センサー208が接触検出部662に接続された状態では、接触検出部662が、センサー端子250,290とこれらに対応する装置側端子550,590とが良好な接触状態にあるか否かを検出する。一方、センサー208が液量検出部664に接続された状態では、液量検出部664が、カートリッジ内のインク残量が所定量以上あるか否かを検出する。接触検出部662は、比較的低い電源電圧VDD(例えば3.3V)を用いて動作する。一方、液量検出部664は、比較的高い電源電圧HV(例えば36V)を用いて動作する。
なお、接触検出部662と液量検出部664は、個々のカートリッジ毎に個別に設けられていてもよく、あるいは、複数のカートリッジに共通に、1つの接触検出部662と1つの液量検出部664が設けられていても良い。後者の場合には、個々のカートリッジのセンサー端子250,290と、接触検出部662及び液量検出部664との接続状態を切り換えるための切り換えスイッチがさらに設けられる。
図12は、第2実施形態におけるカートリッジの装着検出処理(「接触検出処理」とも呼ぶ)に用いられる各種の信号を示すタイミングチャートである。カートリッジの装着検出処理には、第1の装着検出信号SPins,SPresと、第2の装着検出信号DPins,DPresとが使用される。なお、信号名の末尾に「ins」が付された信号SPins,DPinsは、センサー関連処理回路503からカートリッジの基板200に出力される信号であり、「装着検査信号」と呼ぶ。また、信号名の末尾に「res」が付された信号SPres、DPresは、カートリッジの基板200からセンサー関連処理回路503に入力される信号であり、「装着応答信号」と呼ぶ。
以下に示すように、第2実施形態では、以下の3種類の装着状態検出処理が実行される。
(1)第1の装着検出処理:第1の装着検出信号SPins,SPresを用いた個々のカートリッジのセンサー端子250,290の接触状態の検出
(2)第2の装着検出処理:第2の装着検出信号DPins,DPresを用いた1つ以上のカートリッジの非装着状態の検出(全カートリッジの過電圧検出端子210,240の接触状態の検出)
(3)リーク検出処理:第2の装着検出信号DPins,DPresを用いた端子210/250間、及び、端子240/290間のリーク状態の検出
第1と第2の装着検出処理では端子の接触状態が検出されるので、これらの処理を「接触検出処理」と呼ぶことも可能である。また、第1と第2の装着検出信号を「第1の接触検出信号SPins,SPres」、「第2の接触検出信号DPins,DPres」とも呼ぶことも可能である。
第1の装着検出信号SPins,SPresは、接触検出部662が、個々のカートリッジのセンサー端子250,290の接触状態を検出するために使用される。図10に示すように、第1の装着検査信号SPinsは、接触検出部662から一方のセンサー端子290に供給される信号であり、第1の装着応答信号SPresは、他方のセンサー端子250から接触検出部662に戻る信号である。第1の接触検査信号SPinsは、図12の第1の期間P11にハイレベルH1になり、その後の第2の期間P12にローレベルになる信号である。なお、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1の電圧は、例えば3.0Vに設定されている。端子250,290の両方が正常な接触状態にある場合には、第1の装着応答信号SPresは、第1の装着検査信号SPinsと同じレベル変化を示す。
第2の装着検査信号DPinsは、図10に示すように、検知パルス発生部650から第4のカートリッジIC4の過電圧検出端子240に供給される信号であり、第2の装着応答信号DPresは、第1のカートリッジIC1の過電圧検出端子210から非装着状態検出部670に入力される信号である。図12に示すように、第2の装着検査信号DPinsは、7つの期間P21〜P27に区分される。すなわち、第2の装着検査信号DPinsは、期間P21ではハイインピーダンス状態になり、期間P22,P24,P26ではハイレベルH2になり、他の期間P23,P25,P27ではローレベルになる。第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2の電圧は、2.7Vに設定されており、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1(3.0V)と異なる電圧レベルに設定されている。なお、第2の装着検査信号DPinsの第1と第2の期間P21,P22は、第1の装着検査信号SPinsの第1の期間P11の一部に相当する。また、第2の装着検査信号DPinsの第4〜第7の期間P24〜P27は、第1の装着検査信号SPinsの第2の期間P12の一部に相当する。全カートリッジの端子210,240が正常な接触状態にある場合には、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21でローレベルとなり、第2の期間P22以降は第2の装着検査信号DPinsと同じレベルを示す信号となる。なお、第2の装着応答信号DPresが第1の期間P21でローレベルとなる理由は、第1の期間P21の直前の状態において、第2の装着応答信号DPresが(すなわち非装着状態検出部670への入力配線651が)ロ―レベルとなっているからである。
図13(A)は、端子250,290の少なくとも一方の接触が不良である場合の信号波形を示している。この場合には、第1の装着応答信号SPresは、期間P11,P12を通じてローレベルになる。接触検出部662は、期間P11内の予め定められたタイミングt11で装着応答信号SPresのレベルを調べることによって、端子250,290の接触の良否を判定することができる。端子250,290に接触不良のあるカートリッジが検出された場合には、主制御回路400が、表示パネル430に、そのカートリッジの装着状態が不良である旨を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
図13(B)は、全カートリッジの端子210,240のうちの少なくとも一つの端子が接触不良にある場合の信号波形を示している。この場合には、第2の装着応答信号DPresは、期間P21〜P27を通じてローレベルになる。従って、非装着状態検出部670は、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルとなる期間P22,P24,P26の予め設定されたタイミングt22,t24,t25において、第2の装着応答信号DPresのレベルを調べることによって、1つ以上のカートリッジが正常に装着していない状態を検出することが可能である。なお、この判定は、3つのタイミングt22,t24,t25の少なくとも1カ所で行えば十分である。1つ以上のカートリッジが正常に装着されていないと判定された場合には、主制御回路400が、表示パネル430に装着状態が不良である旨を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
上述した非装着状態の検出処理(第2の装着検出処理)の目的だけであれば、第2の装着検査信号DPinsを、第1の装着検査信号SPinsと類似した単純なパルス信号としても良い。第2の装着検査信号DPinsが図12のような複雑な波形形状を有している理由は、主に、以下で説明するリーク状態の検出(第3の装着状態検出処理)のためである。
図14(A)は、過電圧検出端子240とセンサー端子290の間がリーク状態にある場合の信号波形を示している。ここで、「リーク状態」とは、意図しない短絡と言えるほどの極低抵抗状態では無いが、ある程度以下の抵抗値(例えば10kΩ以下の抵抗値)で接続されている状態を意味している。この場合には、第2の装着応答信号DPresが特有の信号波形を示す。すなわち、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21でローレベルから第1のハイレベルH1に立ち上がり、第2の期間P22で第2のハイレベルH2に低下する。第1のハイレベルH1は、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1とほぼ同じ電圧である。このような波形は、以下に説明する等価回路から理解できる。
図15(A)は、基板200aと、接触検出部662と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670との接続関係を示している。この状態は、隣接する端子間にリークが無い状態である。図15(B)は、端子240,290の間にリークがある場合の等価回路を示している。ここでは、端子240,290の間のリーク状態が、抵抗RLで模擬されている。センサー208は、容量素子としての機能を有する。図15(B)のセンサー208の容量と、端子240,290間の抵抗RLとを含む回路は、第1の接触検査信号SPinsに対してローパスフィルタ回路(積分回路)として機能する。従って、非装着状態検出部670に入力される第2の装着応答信号DPresは、図14(A)に示すように、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1(約3V)にまで徐々に立ち上がる信号となる。非装着状態検出部670は、期間P21内の1つ以上の(好ましくは複数の)タイミングt21において第2の装着応答信号DPresの電圧レベルを調べることによって、端子240,290の間にリークがあることを識別することができる。あるいは、第2の装着応答信号DPresの第1と第2の期間P21,P22における第2の装着応答信号DPresのハイレベルH1,H2の電圧の差から、端子240/290間がリークしていると判定することも可能である。
なお、図14(A)の第1の期間P21における第2の装着応答信号DPresの変化は、期間P21における第2の装着検査信号DPinsのレベルを、第1のハイレベルH1よりも低いレベルに設定したときにも得られる。従って、例えば、第2の装着検査信号DPinsを期間P21においてローレベルに維持するようにしても、端子240,290の間のリーク状態を検出することが可能である。また、第2の装着検査信号DPinsを期間P21〜P23に渡ってローレベルに維持するようにしても良い。
端子240,290間にリークがある場合には、更に、第1の装着応答信号SPresが特有の変化を示す。すなわち、第1の装着応答信号SPresは、期間P24,P26において、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルに立ち上がるのに応じて立ち上がる。従って、これらの期間P24,P26の所定のタイミングt24,t25で第1の装着応答信号SPresを調べることによっても、リークが発生しているか否かを判定することが可能である。
図14(B)は、他の過電圧検出端子210とセンサー端子250がリーク状態にある場合の信号波形を示している。この場合にも、第2の装着応答信号DPresが特有の信号波形を示す。すなわち、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21において、ローレベルから急激に立ち上がった後にやや緩やかに低下する。このときのピークの電圧レベルは、第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2よりも高く、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1に近いレベルにまで達する。
図15(C)は、端子210,250の間にリークがある場合の等価回路を示している。ここでは、端子210,250の間のリーク状態が、抵抗RLで模擬されている。センサー208の容量と、端子210,250間の抵抗RLとを含む回路は、第1の装着検査信号SPinsに対するハイパスフィルタ回路(微分回路)として機能する。従って、第2の装着応答信号DPresは、図14(B)に示すように、第1の期間P21でピーク形状を示す信号となる。但し、第2の期間P22以降は、第2の装着応答信号DPresは、第2の装着検査信号DPinsの変化と同様の変化を示す。非装着状態検出部670は、期間P21内の任意の1つ又は複数のタイミングt21における第2の装着応答信号DPresの電圧レベルを調べることによって、端子210,250の間にリークがあることを識別することができる。なお、端子240,290間にリークがある場合(図14(A))と、端子210,250の間にリークがある場合(図14(B))では、第1の期間P21の中央から終端までのタイミングにおける信号DPresの電圧レベルと、第2の期間P22における信号DPresの電圧レベルの関係が逆転している。従って、これらの2つのタイミングにおける信号DPresの電圧レベルを比較することによって、端子240,290間と端子210,250の間のいずれにリークがあるかを正確に識別することが可能である。
なお、図14(B)のような第2の装着応答信号DPresの変化は、期間P21において第2の装着検査信号DPinsの出力端子(すなわち、検知パルス発生部650の出力端子)をハイインピーダンス状態に設定したときに得られる。従って、例えば、第2の装着検査信号DPinsを、期間P21ではハイインピーダンス状態に設定すれば、期間P22,P23でローレベルに設定するようにしても、端子210,250の間のリーク状態を検出することが可能である。
端子210,250間にリークがある場合にも、第1の装着応答信号SPresが特有の変化を示す。すなわち、第1の装着応答信号SPresは、期間P24,P26において、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルに立ち上がるのに応じて立ち上がる。従って、これらの期間P24,P26の所定のタイミングt24,t25で第1の装着応答信号SPresを調べることによっても、リークが発生しているか否かを判定することが可能である。但し、第1の装着応答信号SPresの変化は、端子240,290間にリークがある場合(図14(A))と、端子210,250間にリークがある場合(図14(B))とでそれほど大きな違いが無い。従って、タイミングt24,t25における第1の装着応答信号SPresの検査では、2組の端子のいずれにリークが発生しているのかを識別することはできない。但し、この識別をする必要が無い場合には、第1の装着応答信号SPresの検査でも十分である。
上述した図12〜図14の説明から理解できるように、2つの装着検査信号SPins,DPinsのうちの少なくとも一方を調べることによって、隣接する端子同士がリーク状態にあるか否かを検出することが可能である。
図16は、図15に示すリーク状態を判定するために使用可能なリーク判定部の構成例を示すブロック図である。リーク判定部は、非装着状態検出部670内に設けることができる。図16(A)のリーク判定部672は、複数のダイオードの直列接続で構成された電圧障壁部674と、電流検出部675とを有している。電圧障壁部674のしきい値電圧Vthは、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1よりも低く、第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2よりも高い値に設定される。従って、第2の装着応答信号DPresの電圧レベルが第2のハイレベルH2以上になったときに、電圧障壁部674から電流検出部675に電流が流れる。従って、電流検出部675は、図14の期間P21において電圧障壁部674から電流が入力されるか否かに応じて、端子240/290間と,端子210/250間の少なくとも一方でリークが発生しているか否かを検出することができる。但し、この回路では、端子240/290間と,端子210/250間のいずれでリークが発生しているのかを識別することはできない。
図16(B)のリーク判定部672は、AD変換部676と波形分析部677とを有している。この回路では、第2の装着応答信号DPresの変化が、AD変換部676でデジタル化されて波形分析部677に供給される。波形分析部677は、波形の形状を分析することによって、リーク状態を判定することができる。例えば、図14の期間P21における第2の装着応答信号DPresがローパスフィルタを通過した信号(緩やかに上昇する上に凸の信号)である場合には、端子240/290間にリークがあるものと判定できる。一方、第2の装着応答信号DPresがハイパスフィルタを通過した信号(鋭いピークを示す信号)である場合には、端子210/250間にリークがあるものと判定できる。なお、AD変換部676の動作クロック周波数は、このような波形分析のために十分に高い周波数に設定される。波形分析部677は、更に、第2の装着応答信号DPresの変化の時定数を求め、リーク状態における等価回路の抵抗値及び容量値を算出することが可能である。例えば、図15(B),(C)の等価回路では、リークしている端子間の抵抗RLのみが未知であり、他の抵抗の抵抗値や容量素子208の容量値は既知である。従って、第2の装着応答信号DPresの変化の時定数から、リークしている端子間の抵抗RLを算出することが可能である。なお、リーク判定部の構成としては、これら以外の種々の回路構成を採用可能である。
以上の図12〜図16の説明から理解できるように、(i)第2の装着応答信号DPresが第1の装着検査信号SPinsの影響を受けているか否か(図14(A),(B)のDPres)、及び、(ii)第1の装着応答信号SPresが第2の装着検査信号DPinsの影響を受けているか否か(図14(A),(B)のSPres)、のうちの少なくとも一方を調べることによって、端子250/290間又は端子210/240にリークがあるか否かを判定することが可能である。2つの装着検査信号SPins、DPinsとしては、電圧レベルが一定の信号(例えば常にローレベルまたはハイレベルに維持される信号)ではなく、電圧レベルがそれぞれ変化する異なる信号波形を有する信号を使用することが好ましい。なお、図12〜図14の信号波形は簡略化して描かれていることに注意すべきである。
2つの過電圧検出端子210,240のうちの少なくとも一方でリークが検出された場合には、そのリーク発生箇所を印刷装置内の図示しない不揮発性メモリーに記録しておくようにしてもよい。こうすれば、印刷装置のメインテナンスの際に、リークが発生しやすい端子位置を調べ、印刷装置内の接点機構1400(図4B)の端子の接点やバネの調整を行うことによって、リークを発生し難くする対策を施すことが可能である。
図17は、4つのカートリッジIC1〜IC4に対する装着検出処理のタイミングチャートである。ここでは、個々のカートリッジに個別に供給される第1の装着検査信号SPins_1〜SPins_4と、全カートリッジの端子240,210の直列接続に対して供給される第2の装着検査信号DPinsとが示されている。このように、4つのカートリッジに関する装着検査が1カートリッジ毎に順次行われ、また、個々のカートリッジに対しては、第1と第2の装着検査信号SPins,DPinsが同じ期間に供給されて上述した3種類の装着検出処理が実行される。これらの検査において、装着不良(接触不良)やリークが検出された場合には、表示パネル430にその旨を表示することによって、カートリッジの再装着をユーザーに勧告することが好ましい。一方、これらの装着検査の結果、装着不良やリークが検出されなかった場合には、その後に、各カートリッジのインク残量の検出や、記憶装置203からのデータの読み出しなどが行われる。
図18は、液量検出処理のタイミングチャートである。液量検出処理では、液量検査信号DSが一方のセンサー端子290に供給される。この液量検査信号DSは、センサー208を構成する圧電素子の一方の電極に供給される。液量検査信号DSは、液量検出部664(図10)によって生成されるアナログ信号である。この液量検査信号DSの最大電圧は例えば約36Vであり、最小電圧は約4Vである。センサー208の圧電素子はカートリッジ100内のインクの残量に応じて振動し、振動によって発生した逆起電圧が液量応答信号RSとして圧電素子から他方のセンサー端子250を介して液量検出部664に送信される。液量応答信号RSは、圧電素子の振動数に対応する周波数を有する振動成分を含んでいる。液量検出部664は、液量応答信号RSの周波数を測定することによって、インク残量が所定量以上であるか否かを検出することができる。このインク残量検出処理は、上述したリーク検査(リーク検出処理)で使用された第1の装着検査信号DPinsよりも高い電圧レベルを有する高電圧信号DSを、端子250,290を介してセンサー208に供給する高電圧処理である。
このように、インク残量の検出時には、高電圧の液量検査信号DSがセンサー端子250,290に印加される。仮に、センサー端子250,290と過電圧検出端子210,240との間の絶縁が不十分な場合には、端子210,240に異常な高電圧(「過電圧」)が生じる。この場合には、ダイオード641〜645(図10)を介して過電圧検出部620に電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無を判定することが可能である。過電圧が検出されると、過電圧検出部620から液量検出部664に過電圧の発生を示す信号が供給され、これに応じて液量検出部664が液量検査信号DSの出力を直ちに停止する。これは、過電圧によって生じ得るカートリッジや印刷装置の損傷を防止するためである。すなわち、センサー端子250(又は290)と過電圧検出端子210(又は240)との間の絶縁が不十分な場合には、センサー端子と記憶装置用端子との間の絶縁も不十分になっている恐れがある。このとき、過電圧検出端子210,240に過電圧が発生すると、記憶装置用端子にもその過電圧が印加されて、その記憶装置用端子に接続されている記憶装置や印刷装置の回路に損傷が生じる可能性がある。従って、過電圧が検出されたときに液量検査信号DSの出力を直ちに停止すれば、過電圧によって生じ得るカートリッジや印刷装置の損傷を防止することができる。
なお、図12〜図17で説明したように、インク残量の検出に先立って、複数種類の装着状態検出処理が実行される。このうちのリーク状態検出処理では、図14〜図16で説明したように、端子240/290間、又は、端子210/250間に低抵抗なリーク状態が発生しているか否かが検出される。すなわち、これらのリーク状態の検出処理では、比較的低い電圧レベル(約3V)の装着検査信号SPins,DPinsを用いて、端子240/290間、又は、端子210/250間が、或る抵抗値(例えば10kΩ)以下の低抵抗状態にあるか否か検出することができる。また、これらの端子間にリークが無いと判定された場合には、端子240/290間、又は、端子210/250間の抵抗値は、上記の抵抗値(約10kΩ)以上であることが保証される。従って、このリーク状態の検出処理の後に、より高い電圧レベル(約36V)の信号を用いてインク残量の検出処理を実行しても、過電圧検出端子210,240に懸かる過電圧が極めて大きな値になることが無い。このように、第2実施形態では、相対的に低い電圧レベルの信号を用いて端子240/290間、又は、端子210/250間のリーク状態を検査し、その結果、リークが無い場合にのみ、相対的に高い電圧レベルの信号を端子250,290に印加している。従って、リーク状態の検査を行わない場合に比べて、印刷装置やカートリッジに生じうる過電圧のレベルをより低下させることが可能である。
図19(A)は、第2実施形態の装着検出処理で使用される信号の第1の変形例を示すタイミングチャートである。図12との違いは、第2の装着検出信号DPins,DPresのハイレベルの値が、第1の装着検出信号SPins,SPresと同じに設定されている点であり、他は図12の信号と同じである。これらの信号を使用しても、図13〜図16で説明した各種の装着状態検出処理をほぼ同様に行うことが可能である。但し、この場合には、図14(A)の第2の期間P22における第2の装着応答信号DPresのレベルは、第1の期間P21におけるレベルH1と同じになるので、第1と第2の期間P21,P22における第2の装着応答信号DPresのレベルの差から、端子240/290間がリークしていると判定することはできない。但し、図14(A)と図14(B)に示したように、第1の期間P21における第2の装着応答信号DPresのレベル変化から、端子240/290間と、端子210/250間のいずれがリークしているかを区別することは依然として可能である。
図19(B)は、第2実施形態の装着検出処理で使用される信号の第2の変形例を示すタイミングチャートである。図12との違いは、第2の装着検査信号DPinsが、第2の期間P22と第4の期間P24でローレベルに設定されている点と、これに応じて第2の装着応答信号DPresが期間P21〜P25を通じてローレベルに維持されている点であり、他は図12の信号と同じである。これらの信号を使用しても、図13〜図16で説明した各種の装着検出をほぼ同様に行うことが可能である。この場合には、図13(B)のタイミングt22,t24における判定ができなくなるが、図13と図14で説明した他のタイミングでの判定は依然として可能である。
図12及び図19の各種の信号の例から理解できるように、装着検出信号(接触検出信号)の電圧レベルや波形としては、種々の変形が可能である。但し、端子240/290間及び端子210/250間のリーク状態の検出を行う場合には、第1の装着検出信号SPinsがハイレベルとなる際に、第2の装着検出信号DPins(又はその信号線)をローレベルからハイインピーダンス状態に変更するか、又は、ローレベルに維持することが好ましい。
以上のように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の周囲の四隅、より具体的には、基板の複数の記憶装置用端子が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。また、第2実施形態では、基板の一対の端子250,290に関する第1の装着応答信号SPresと、他の一対の端子210,240に関する第2の装着応答信号DPresとの少なくとも一方を調べることによって、全カートリッジが装着されているか否かの装着検出処理と、端子間にリークがあるか否かのリーク状態検出処理とを同時に実行することができる。さらに、第2実施形態では、端子250,290に対して相対的に高い電圧(約36V)を印加する高電圧処理に先だって、相対的に低い電圧(約3V)を用いて上記リーク状態の検出処理を行うので、極めて高い過電圧が端子250,290からリークしてカートリッジや印刷装置に損傷を与えることを防止できる。
C.第3実施形態:
図20は、第3実施形態における基板の構成を示す図である。端子210〜290の配列は、図3(A)に示したものと同じである。但し、各端子の機能(用途)は以下の通りであり、第1、第2実施形態と若干異なっている。
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210(装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)過電圧検出端子240(装着検出兼用)
<下側列R2>
(5)装着検出端子250
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)装着検出端子290
上側列R1の端子210〜240の機能及び用途は、第2実施形態とほぼ同じである。下側列R2の端子250,290は、カートリッジ100に設けられた抵抗素子を使用した装着検出に使用される点で第2実施形態と異なっている。なお、この端子群210〜290の接触部の四隅にある端子210,240,250,290の接触部が装着検出(接触検出)に使用される点は、第1及び第2実施形態と同じである。なお、第3実施形態においても、上側列R1の両端に配置された2つの端子210,240の接触部には、記憶装置を駆動するための第1電源電圧VDDと同じ電圧、又は、第1電源電圧VDDから生成された電圧が印加され、下側列R2の両端に配置された2つの端子250,290の接触部には、印刷ヘッドを駆動するために用いられる第2電源電圧VHVと同じ電圧、又は、第2電源電圧VHVから生成された電圧が印加される。ここで、「第2電源電圧VHVから生成された電圧」としては、第1電源電圧VDDよりも高く、第2電源電圧VHVよりも低い電圧を使用することが好ましい。
図21は、第3実施形態におけるカートリッジの基板200bと印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。基板200bは、記憶装置203と、9つの端子210〜290の他に、個々のカートリッジの装着検出に使用される抵抗素子204を備えている。
主制御回路400は、第1、第2実施形態と同様に、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500bは、メモリー制御回路501と、カートリッジ検出回路502とを有している。
カートリッジ検出回路502は、カートリッジ装着部1100におけるカートリッジの装着検出を行うための回路である。従って、カートリッジ検出回路502を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。カートリッジ検出回路502とカートリッジの抵抗素子204とは、記憶装置203に比べて高い電圧(本実施形態では、定格42V)で動作する高電圧回路である。抵抗素子204は、カートリッジ検出回路502から高い電圧が印加されるデバイスである。
図22は、第3実施形態におけるカートリッジ検出回路502の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジ100がカートリッジ装着部に装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。カートリッジ検出回路502は、検出電圧制御部610と、過電圧検出部620と、個別装着電流値検出部630と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670とを有している。これらの回路のうち、過電圧検出部620と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670は、図10に示したこれらの回路とほぼ同じ構成及び機能を有している。検出電圧制御部610は、カートリッジの端子250に供給する電圧を制御する機能を有する。
カートリッジ検出回路502には、装着検出用の高い電源電圧VHVが供給されている。この高電源電圧VHVは、印刷ヘッド駆動用の電圧であり、第2電源442(図21)から検出電圧制御部610に供給されている。検出電圧制御部610の出力端子は、各カートリッジIC1〜IC4の装着位置に設けられた4つの装置側端子550に並列に接続されている。なお、高電源電圧VHVを、「高電圧VHV」と呼ぶ。検出電圧制御部610の出力端子の電圧値VHOは、個別装着電流値検出部630にも供給されている。各装置側端子550は、対応するカートリッジの第1の装着検出端子250に接続される。各カートリッジ内では、第1と第2の装着検出端子250,290の間に、抵抗素子204がそれぞれ設けられている。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線により短絡接続されている。また、これらの過電圧検出端子210,240は、装置側端子510,540と、カートリッジ検出回路502内に設けられたダイオード641〜645とを介して、過電圧検出部620に接続されている。これらの端子210,240,510,540及びダイオード641〜645と、過電圧検出部620との接続関係及び機能は、第2実施形態(図10)で説明したものと同じである。
図23(A),(B)は、第3実施形態におけるカートリッジの装着検出処理の内容を示す説明図である。図23(A)では、印刷装置のカートリッジ装着部1100に装着可能なカートリッジIC1〜IC4がすべて装着された状態を示している。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。これらの抵抗素子631〜634の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子631〜634のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子63nの抵抗値は、(2
n―1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の抵抗素子63nとの直列接続によって、2
nRの抵抗値を有する抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2
nRの抵抗は、個別装着電流値検出部630に対して互いに並列に接続される。なお、以下では、直列接続抵抗701〜704を、「装着検出用抵抗」又は単に「抵抗」とも呼ぶ。個別装着電流値検出部630で検出される検出電流I
DETは、これらの4つの抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧VHVを除した値VHV/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジがすべて装着されている場合には、検出電流I
DETは以下の式で与えられる。
1つ以上のカートリッジが未装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流I
DETは低下する。
図23(B)は、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。なお、これらの個々の組み合わせを「サブセット」とも呼ぶ。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着されているか否かを検出することが可能である。なお、個別装着検出のために、通常のロジック回路の電源電圧(約3.3V)よりも高い電圧VHVを使用する理由は、検出電流IDETのダイナミックレンジを広くとることによって、検出精度を高めるためである。
個別装着電流値検出部630は、検出電流IDETをデジタル検出信号SIDETに変換して、CPU410(図21)にそのデジタル検出信号SIDETを送信する。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETの値から、16種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。1つ以上のカートリッジが未装着であると判定された場合には、CPU410は、表示パネル430にその未装着状態を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知する。
上述したカートリッジの装着検出処理は、N個のカートリッジに関する2
N種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流I
DETが一意に決まることを利用している。ここで、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差をεと仮定する。また、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態の第1の合成抵抗値をR
c1とし、4番目のカートリッジIC4のみが非装着である状態の第2の合成抵抗値をR
c2とすると、R
c1<R
c2が成立する(図23(B))。この関係R
c1<R
c2は、各抵抗701〜704の抵抗値が許容誤差±εの範囲内で変動する場合にも成立することが好ましい。このとき、最悪条件は、許容誤差±εを考慮した場合に、第1の合成抵抗値R
c1がその最大値R
c1maxを取り、第2の合成抵抗値R
c2がその最小値R
c2minを取る場合である。これらの合成抵抗値R
c1max,R
c2minを識別できるようにするためには、R
c1max<R
c2minという条件が満足されていれば良い。この条件R
c1max<R
c2minから、以下の式が導かれる。
すなわち、許容誤差±εが(3)式を満足すれば、常にN個のカートリッジの装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを保証することができる。但し、実際の設計上の抵抗値の許容誤差は、(3)式の右辺の値よりも小さな値に設定することが好ましい。また、上述のような検討を行わずに、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差を十分に小さな値(例えば1%以下の値)に設定するようにしてもよい。
図24は、個別装着電流値検出部630の内部構成を示す図である。個別装着電流値検出部630は、電流−電圧変換部710と、電圧比較部720と、比較結果記憶部730と、電圧補正部740とを有している。
電流―電圧変換部710は、オペアンプ712と帰還抵抗R11とで構成される反転増幅回路である。オペアンプ712の出力電圧V
DETは、以下の式で与えられる。
ここで、VHOは検出電圧制御部610(図22)の出力電圧、Rcは4つの抵抗701〜704(図23(A))の合成抵抗である。この出力電圧V
DETは、検出電流I
DETを表す電圧値を有する。
なお、(4)式で与えられる電圧VDETは、検出電流IDETによる電圧(IDET・R11)を反転した値を示す。そこで、電流―電圧変換部710に反転増幅器を追加し、この追加の反転増幅器で電圧VDETを反転した電圧を、電流―電圧変換部710の出力電圧として出力してもよい。この追加の反転増幅器の増幅率の絶対値は、1とすることが好ましい。
電圧比較部720は、しきい値電圧生成部722とコンパレーター724(オペアンプ)と切換制御部726とを有している。しきい値電圧生成部722は、参照電圧Vrefを複数の抵抗R1〜Rmで分圧して得られる複数のしきい値電圧Vth(j)の一つを、切換スイッチ723で選択して出力する。これらの複数のしきい値電圧Vth(j)は、図23(B)に示した16種類の装着状態における検出電流IDETの値を識別するしきい値に相当する。コンパレーター724は、電流―電圧変換部710の出力電圧VDETと、しきい値電圧生成部722から出力されるしきい値電圧Vth(j)とを比較して、2値の比較結果を出力する。この2値の比較結果は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを示している。すなわち、電圧比較部720は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを調べ、その比較結果を順次出力する。典型的な例では、電圧比較部720は、まず、最も大きな抵抗701(図23(A))に対応付けられた第1のカートリッジIC1が装着されているか否かを調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。その後、第2〜第4のカートリッジIC2〜IC4が装着されているかを順次調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。切換制御部726は、各カートリッジに対する比較結果に基づいて、次のカートリッジの装着検出のためにしきい値電圧生成部722から出力すべき電圧値Vth(j)を切り換える制御を行う。
比較結果記憶部730は、電圧比較部720から出力される2値の比較結果を、切換スイッチ732で切り換えてビットレジスター734内の適切なビット位置に格納する。この切換スイッチ732の切り換えタイミングは、切換制御部726から指定される。ビットレジスター734は、印刷装置に装着可能な個々のカートリッジの装着の有無を示すN個(ここではN=4)のカートリッジ検出ビットと、異常な電流値が検出されたことを示す異常フラグビットとを有している。異常フラグビットは、すべてのカートリッジが装着されている状態での電流値Imax(図23(B))に比べて有意に大きな電流が流れている場合にHレベルとなる。但し、異常フラグビットは省略可能である。ビットレジスター734に格納された複数のビット値は、デジタル検出信号SIDET(検出電流信号)として主制御回路400のCPU410(図21)に送信される。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETのビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを判定する。前述したように、第3実施形態では、デジタル検出信号SIDETの4つのビット値は、個々のカートリッジが装着されているか否かを示している。従って、CPU410は、デジタル検出信号SIDETの個々のビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを直ちに判定することが可能である。
電圧比較部720と比較結果記憶部730の両者は、いわゆるA−D変換部を構成している。A−D変換部としては、図24に示した電圧比較部720と比較結果記憶部730の代わりに、周知の他の種々の構成を採用することが可能である。
電圧補正部740は、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)を、装着検出用の高電圧VHV(図22)の変動に追従して補正するための回路である。電圧補正部740は、オペアンプ742と2つの抵抗R21,R22で構成された反転増幅回路として構成されている。オペアンプ742の反転入力端子には、入力抵抗R22を介して図22の検出電圧制御部610の出力端子電圧VHOが入力されており、非反転入力端子には参照電圧Vrefが入力されている。このとき、オペアンプ742の出力電圧AGNDは以下の式で与えられる。
この電圧AGNDは、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDとして使用される。例えば、Vref=2.4V,VHO=42V,R21=20kΩ,R22=400kΩとすれば、AGND=0.42Vとなる。上述した(4)式と、(5)式とを比較すれば理解できるように、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDは、検出電圧値VDETと同様に、検出電圧制御部610の出力電圧VHO(すなわち装着検出用の高電圧電源VHV)の値に応じて変化する。これらの2つの電圧AGND、VDETの差異は、抵抗比R21/R22、R11/Rcの差から生じている。このような電圧補正部740を使用すれば、装着検出用の電源電圧VHVが何らかの原因で変動しても、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)が、電源電圧VHVの変動に追従して変化する。この結果、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)の両方が、電源電圧VHVの変動に追従して変化するので、電圧比較部720において正確な装着状態を表す比較結果を得ることができる。特に、抵抗比R21/R22と抵抗比R11/Rc1(Rc1は全カートリッジ装着時の合成抵抗値)の値を等しく設定すれば、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)を、電源電圧VHVの変動に対してほぼ同じ変化幅で変化するように正確に追従させることが可能である。但し、電圧補正部740は省略してもよい。
図25は、カートリッジ検出回路502によって行われる装着検出処理の全体手順を示すフローチャートである。この装着検出処理は、カートリッジ装着部1100のカバー1200(図1)が開かれると開始される。この処理では、各カートリッジの記憶装置203は非通電状態(電源電圧VDDが供給されない状態)に維持される。
ステップS110,S120では、図25で説明した非装着状態の検出処理が実行される。この結果、すべてのカートリッジが装着されていれば、ステップS120から後述するステップS140に進む。一方、1つ以上のカートリッジの未装着が検出された場合には、ステップS130において、主制御回路400が、非装着エラー処理を実行する。非装着エラー処理は、例えば、表示パネル430に「カートリッジが正しく装着されていません」のような通知(未装着カートリッジがある旨の通知)を表示する処理である。ステップS140では、カートリッジ検出回路502の検出電圧制御部610(図22)が、装着検出用の高電圧VHV(42V)をカートリッジの装着検出用デバイス(本実施形態では抵抗素子204)に印加する。ステップS150、S160では、過電圧検出部620が、過電圧が発生しているか否かを検出する。過電圧が発生している場合には、ステップS200において、過電圧検出部620が検出電圧制御部610に過電圧の発生を通知し、高電圧VHVの供給を停止させる。この場合には、表示パネル430に、過電圧が発生した旨や、カートリッジを一度脱着して再度挿入する操作を行うことなどの指示を表示させてもよい。一方、過電圧が生じていない場合には、ステップS160からステップS170に進み、図23及び図24で説明したカートリッジの個別装着検出処理が実行される。この個別装着検出処理は、記憶装置用の電源電圧(3.3V)よりも高い電圧レベルを有する高電圧信号(42V)を、端子250,290を介して抵抗素子204に供給する高電圧処理である。なお、ステップS170の個別装着検出処理において、1つ以上のカートリッジが非装着の場合には、表示パネル430に判定結果(未装着のカートリッジの種類)を表示するようにしてもよい。例えば、判定結果として、複数のカートリッジの装着位置のうちの未装着位置と、その未装着位置に装着すべきカートリッジの種類(例えばイエローカートリッジ)とを表示するようにしてもよい。
個別装着検出処理が終了すると、図8のステップS180に戻り、カートリッジ装着部1100のカバー1200が閉じられたか否かが判断される。カバー1200が閉じられていなければ、ステップS180からステップS110に戻り、上述したステップS110以降の処理が再度実行される。一方、カバー1200が閉じられると、ステップS190において、検出電圧制御部610が高電圧VHVの供給を停止して、処理が完了する。
以上のように、第3実施形態においても、第1、第2実施形態と同様に、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の周囲の四隅、より具体的には、基板の複数の記憶装置用端子が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。
更に、第3実施形態では、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの未装着状態が表示パネル430に表示されるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換を実行することが可能である。特に、カートリッジを交換するときに、そのカートリッジが未装着から装着に変わったことが表示パネル430に表示されるので、カートリッジ交換作業に不慣れなユーザーでも安心して次の操作に進むことが可能である。また、第3実施形態では、カートリッジの記憶装置203が非通電の状態でカートリッジの装着検出を行うことができるので、いわゆる記憶装置の活線挿抜(印刷装置のメモリー制御回路が、カートリッジの記憶装置が印刷装置の装置側端子に接続されているか否かにかかわらず、カートリッジの記憶装置にアクセスし、そのアクセス中に、カートリッジが装着されたり、カートリッジがはずされたりすること。)によって生じるビット誤りの発生を防止することが可能である。
D.第4実施形態:
図26は、第4実施形態における個別装着検出部630bの構成を示す図である。この個別装着検出部630bは、図24に示した第3実施形態の個別装着検出部630に、入力切換スイッチ750を追加したものである。この入力切換スイッチ750は、複数の入力端子751〜754から入力される検出電流IDET1〜IDET4のいずれかを選択して電流−電圧変換部710に入力するためのものである。第1の入力端子751には、図23(A)に示したものと同じ抵抗701〜704の並列接続を流れる検出電流IDET1が入力される。他の入力端子752〜754にも、同様に、それぞれ4個以下のカートリッジに対応する抵抗の並列接続を流れる検出電流IDET2〜IDET4がそれぞれ入力される。なお、他の回路要素710〜740は図24と同じなので、図26ではそれらの内部構成の図示が省略されている。
このような入力切換スイッチ750を設けるようにすれば、多数のカートリッジが装着される印刷装置においても、上述と同様に、個々のカートリッジの装着検出を行うことが可能である。
E.他の実施形態:
図27は、本発明の他の実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図である。図27には、図示の便宜上、直交するXYZ軸が描かれている。この印刷装置2000は、個人向けの小型インクジェットプリンターであり、副走査送り機構と、主走査送り機構と、ヘッド駆動機構を有している。副走査送り機構は、図示しない紙送りモータを動力とする紙送りローラ2010を用いて印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。主走査送り機構は、キャリッジモータ2020の動力を用いて、駆動ベルト2060に接続されたキャリッジ2030を主走査方向に往復動させる。ヘッド駆動機構は、キャリッジ2030に備えられた印刷ヘッド2050を駆動してインクの吐出およびドット形成を実行する。印刷装置2000は、更に、上述した各機構を制御するための制御回路2040を備えている。制御回路2040は、キャリッジ2030とフレキシブルケーブル2070を介して接続されている。制御回路2040は、上述した第1実施形態ないし第3実施形態における主制御回路400とサブ制御回路500とを含む回路である。
キャリッジ2030は、カートリッジ装着部2100と、印刷ヘッド2050とを備えている。カートリッジ装着部2100は、複数のカートリッジを装着可能に構成されており、印刷ヘッド2050の上側に配置されている。カートリッジ装着部2100を「ホルダー」とも呼ぶ。図27に示す例では、カートリッジ装着部2100には、4つのカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のカートリッジが1つずつ装着される。カートリッジの装着方向は、−Z方向(鉛直下向き方向)である。なお、カートリッジ装着部2100としては、これ以外の任意の複数種類のカートリッジを装着できるものを利用可能である。カートリッジ装着部2100には、カバー2200が開閉可能に取り付けられている。カバー2200は省略可能である。印刷ヘッド2050の上部には、カートリッジから印刷ヘッド2050にインクを供給するためのインク供給管2080が配置されている。この印刷装置2000のように、ユーザーにより交換されるカートリッジが、印刷ヘッドのキャリッジ上のカートリッジ装着部に装着される印刷装置のタイプを、「オンキャリッジタイプ」と呼ぶ。
図28は、実施形態に係るカートリッジ100aの構成を示す斜視図である。図28のXYZ軸は、図27のXYZ軸に対応している。このカートリッジ100aは、インクを収容する筐体101aと、基板200(「回路基板」とも呼ぶ)と、を備えている。基板200としては、前述した図3,図8,図20に示されたものと同一のものを利用可能である。筐体101aの内部には、インクを収容するインク室120aが形成されている。筐体101aは、全体として略直方体の形状を有している。筐体101aの第1の側面102aには、レバー160aが設けられている。このレバー160aは、カートリッジ装着部2100にカートリッジ100aを着脱する際に使用される。すなわち、ユーザーがレバー160aを押すことによって、カートリッジ100aとカートリッジ装着部2100を機械的に係合させたり、その係合を解除したりすることができる。レバー160aには、係合突起162aが設けられている。筐体101aの底面104aには、カートリッジ装着部2100に装着されたときに、印刷装置のインク供給管2080と接続されるインク供給口110aが形成されている。使用前の状態では、インク供給口110aの開口はフィルムによって封止されていてもよい。第1の側面102aと底面104aとが交わる位置(すなわち筐体101aの下端のコーナー部)には、斜面状の基板設置部105aが形成されており、この基板設置部105aに基板200が設置されている。なお、基板設置部105aは、第1の側面102aの下端近傍に設けられていると考えることも可能である。第1の側面102aに対向する第2の側面103aには、係合突起150aが設けられている。なお、カートリッジ100aとカートリッジ装着部2100には、カートリッジ100a内のインク残量を電気的又は光学的に検出するためのセンサー機構が設けることが好ましいが、ここでは図示が省略されている。第1の面102aは、印刷装置2000(図27)に装着する際に、手前側(−Y方向)を向く面である。従って、第1の側面102aを「前端面」又は「前面」とも呼ぶ。また、第2の側面103aを「後端面」又は「背面」とも呼ぶ。
このカートリッジ100aは、カートリッジ装着部2100に装着されたときには、インク供給口101aの開口面(Y軸と平行な面)に垂直な方向がZ軸方向(鉛直方向)となる。ここで、斜面に設けられた回路基板200について、回路基板200の面と平行でインク供給口101aに向かう方向を斜面方向SDとする。回路基板200に関して、斜面方向SDが、図3、図8、図20に示した基板の装着方向SDと同一の方向であると仮定すると、図3、図8、図20で装着方向SDを基準とした基板の上側列端子群および上側列端子接触部群と下側列端子群および下側列接触部群との区分けは、図28のインクカートリッジ100aの基板200にもそのまま当てはめて理解できる。したがって、斜面方向SDの奥側列、つまり、回路基板200のインク供給口101aにより近い列が下側列端子群250〜290および下側列端子接触部群である。斜面方向SDの手前側の列、つまり、回路基板200のインク供給口101aからより離れている列が上側列端子群210〜240および上側列端子接触部群である。
図29は、カートリッジ装着部2100内に設けられている接点機構2400の斜視図である。接点機構2400には、複数の電気接触部材510〜590が設けられている。これらの複数の電気接触部材510〜590は、基板200の端子210〜290に対応する装置側端子に相当する。装置側端子510〜590のそれぞれは、弾性変形可能な部材(弾性部材)で形成されており、カートリッジが装着された状態で回路基板200を上方に付勢している。なお、下端列の中央の端子570は、他の端子よりも上方への突出高さが大きい。従って、カートリッジ100aがカートリッジ装着部2100内に装着される際には、この端子570が他の装置側端子よりも早く基板の端子に接触する。換言すれば、基板200の端子210〜290(図3)のうちで、接地端子270が他の端子よりも早く装置側端子に接触する。
図30は、カートリッジ装着部2100内にカートリッジ100aが装着された状態を示している。この状態では、接点機構2400の装置側端子510〜590(図29)が、カートリッジ100aの基板200によって押し下げられており、装置側端子510〜590全体がカートリッジ100aを上方に付勢している。また、カートリッジ100aの第2の側面103aに設けられた係合突起150aは、カートリッジ装着部2100の係合穴2150に挿入されている。更に、カートリッジ100aの第1の側面102aに設けられたレバー160aの係合突起162aが、カートリッジ装着部2100の係合部材2160の下面に係合している。なお、レバー160aは、弾性材料で形成されており、図30の右側に向かってレバー160aを戻すような曲げ応力が生じている。この係合突起162aと係合部材2160との係合により、カートリッジ100aが上方に押し出されることが防止されている。通常の挿入時には、まず、カートリッジ100aの第1の面102aに設けられた係合突起150aがカートリッジ装着部2100の係合穴2150に挿入される。その後、この係合突起150aを支点としてカートリッジ100aの前端側(前端面102aの側)が下方に押し下げされると、カートリッジ100aの前端面102aに設けられたレバー160aの係合突起162aがカートリッジ装着部2100の係合部材2160の下面に係合して、挿入が終了する。
カートリッジ100aが適正に装着された状態では、接点機構2400の装置側端子510〜590(図29)と、カートリッジ100aの基板200の端子210〜290とが互いに良好な接触状態で接触する。また、カートリッジ100aのインク供給口110aは、印刷ヘッド2050のインク供給管2080に連結される。但し、カートリッジ100aの装着を容易にするために、カートリッジ装着部2100内には多少の遊びがあり、カートリッジ100aは多少傾いた状態で挿入される場合も多い。カートリッジが傾くと、いくつかの端子に接触不良が発生する可能性がある。
図31は、カートリッジ100aの装着時に接点機構2400の装置側端子510〜590が基板200の端子に接触してゆく様子を示す説明図である。なお、図31(A)〜(C)よりも前の時点において、カートリッジ100aの後端面(図中の左端)に設けられた係合突起150a(図30)がカートリッジ装着部2100の係合穴2150に挿入されているが、ここでは図示が省略されている。図31(A)は、装置側端子510〜590のうちの1つの端子570のみが基板200の接地端子に接触した状態を示している。前述したように、この装置側端子570は、他の端子510〜560,580,590に比べて突出高さが高いので、この装置側端子570のみが基板200の端子に接触した状態では、他の装置側端子は基板200の端子と接触していない。この後、ユーザーがカートリッジ100aを更に押し下げてゆくと、図31(B)に示すように、他の装置側端子510〜560,580,590も基板200の端子と接触する。そして、ユーザーがカートリッジ100aを更に押し下げてゆくと、図31(C)に示すように、カートリッジ100aが完全に装着された状態となる。このとき、レバー160aの係合突起162aは、カートリッジ装着部2100の係合部材2160の下面と係合して、カートリッジ100aの上方への移動を防止する。
ところで、図31(A)から図31(B)に至るまでの状態では、9つの装置側端子510〜570のうちで、カートリッジ100aに上向きの力を及ぼすのは、1つの端子570だけである。この装置側端子570は、基板200の中央の端子270(図3)に接触するものであり、基板200の幅(斜面方向SDと垂直な方向の寸法)のほぼ中央の位置で接触する。しかしながら、カートリッジの装着容易性を向上させるためにホルダー(カートリッジ装着部)とカートリッジとの間には多少の遊びがあるため、中央にある装置側端子570が、基板200の幅の中央に正確に接触することは極めて稀であり、通常は、基板200の幅の中央からややずれた位置で接触する。装置側端子570が、基板200の幅の中央から多少でも左右にずれた場合には、図31(A)から図31(B)に至るまでの状態において、装置側端子570による上方への付勢力が、基板200及びカートリッジ100aの幅方向(図28の斜面方向SDとは垂直な方向で、端子列と平行な方向)に不均一に働くことになる。この結果、カートリッジ100aや基板200が、その幅方向に傾いてしまう。また、図31(B)から図31(C)に至るまでの状態において、装置側端子570の変位がほかの装置側端子の変位よりも大きいので、装置側端子510〜590の全てに同じバネ定数の素材が用いられる場合には、装置側端子570は他の装置側端子よりも大きな付勢力をカートリッジ100aに与える。この結果、上述と同じ理由により、カートリッジ100aや基板200が、その幅方向に傾いてしまう。このように、図27,図28に示した印刷装置2000及びカートリッジ100aにおいても、カートリッジ100a及び基板200が傾き易いという傾向がある。従って、上述した各種実施形態において説明した端子の接触不良の検出処理を行う意義が大きいことが理解できる。
図32は、カートリッジの前端面を先に係合させた後で後端面を係合させる様子を示す説明図である。図32(A)では、まず、カートリッジ100aの前端(図中の右側)が押し下げられて、前端面102aに設けられたレバー160aの係合突起162aが、カートリッジ装着部2100の係合部材2160の下面に係合した状態になる。その後、カートリッジ100aの後端が押し下げられてゆき、図32(B)に示すように、後端面103aに設けられた係合突起150aが、カートリッジ装着部2100の係合穴2150に挿入される。カートリッジ100a及びカートリッジ装着部2100の構成によっては、このように、図31とはカートリッジの前端と後端が逆の順序で挿入されてゆくことも可能である。この場合においても、図31の装着手順の場合と同様に、装置側端子510〜590からカートリッジ100aの基板に与えられる付勢力が均一では無いので、カートリッジ100a及び基板200が傾き易いという傾向がある。従って、この場合にも、上述した各種実施形態において説明した端子の接触不良の検出処理を行う意義が大きいことが理解できる。
図33は、他の実施形態における基板の構成を示す図である。これらの基板200c〜200eは、図3に示した基板200と端子210〜290の表面形状が異なるだけである。図33(A),(B)の基板200c,200dは、個々の端子の形状が略長方形ではなく、不規則的な形状を有している。図33(C)の基板200eでは、9つの端子210〜290が一列に配列されており、また、1組目の装着検出端子250,290(第2、第3実施形態では高電圧が印加される端子)がその両端に配置されている。また、2組目の装着検出端子210,240は、装着検出端子250,290と、メモリー端子260,280との間に配置されている。これらの基板200c〜200eにおいても、各端子210〜290に対応する装置側端子との接触部cpの配置は、図3の基板200と同じである。このように、個々の端子の表面形状としては、接触部cpの配置が同一である限り、種々の変形が可能である。なお、端子210〜290の役割(機能)としては、図3(第1実施形態)のものに限らず、図8(第2実施形態)や図20(第3実施形態)で説明したものを適用可能である。また、第1実施形態〜第3実施形態を適用することによって、第1実施形態〜第3実施形態とほぼ同一の効果を達成することが可能である。この点は、以下で説明する他の基板についても同様である。
図34(A)は、さらに他の実施形態における基板の構成を示す図である。この基板200fは、9つの端子210〜290とのそれらの接触部cpの配置は図3の基板200と同じであるが、9つの端子210〜290の他に2つの予備端子310,320が追加されている点が図3の基板200と異なる。2つの予備端子310,320は、接触部cpを有する下端列の端子250〜290の両端の端子250,290のさらに外側にそれぞれ配置されている。図34(B),(C)は、この基板200fを第2実施形態又は第3実施形態に適用した場合の接続例を示している。図34(B)では、予備端子310,320が、接触部cpを有するメモリー端子(例えば端子260,280)に接続されている。図34(C)では、予備端子310,320が、記憶装置203に直接接続されている。これらの予備端子310,320は、装置側端子との接触部を有していないため、印刷装置に装着された状態では特に機能を有さない。しかし、予備端子310,320は、カートリッジが装着されていない状態(又は基板200fの単体の状態)において、基板200fを検査するために使用することが可能である。また、予備端子310,320を、機能の無いダミー端子として設けておいてもよい。このような予備端子の機能については、以下に説明する他の基板でも同様である。
図35(A)は、さらに他の実施形態における基板の構成を示す図である。この基板200gも、9つの端子210〜290とそれらの接触部cpの配置は図3の基板200と同じであり、9つの端子210〜290の他に2つの予備端子310,320が追加されている点が図3の基板200と異なる。2つの予備端子310,320は、接触部cpを有する上端列の端子210〜240の両端の端子210,240のさらに外側にそれぞれ配置されている。図35(B),(C)は、この基板200gを第2実施形態又は第3実施形態に適用した場合の接続例を示している。図35(B)では、予備端子310,320が、接触部cpを有するメモリー端子(例えば端子260,280)に接続されている。図35(C)では、予備端子310,320が、記憶装置203に直接接続されている。
図36(A)は、さらに他の実施形態における基板の構成を示す図である。この基板200hも、9つの端子210〜290とそれらの接触部cpの配置は図3の基板200と同じであり、9つの端子210〜290の他に2つの予備端子310,320が追加されている点が図3の基板200と異なる。2つの予備端子310,320は、接触部cpを有する上端列の端子210〜240よりも更に上側(装着方向SDまたは斜面方向SDの手前側)に配置されている。図36(B),(C)は、この基板200gを第2実施形態又は第3実施形態に適用した場合の接続例を示している。図36(B)では、予備端子310,320が、接触部cpを有するメモリー端子(例えば端子260,280)に接続されている。図36(C)では、予備端子310,320が、記憶装置203に直接接続されている。
図37は、さらに他の実施形態における基板の構成を示す図である。この基板200jは、予備端子は有しておらず、接触部cpを有する9つの端子210〜290のみを有している。但し、9つの端子210〜290は、3列に分かれて配列されている点が図3の基板200と異なる。すなわち、最も上側(装着方向SDまたは斜面方向SDの最も手前側)の列には、3つの端子210,220,240が配置されており、中央の列には2つの端子230,260,270が配置されており、最も下側の列には、3つの端子250,280,290が配置されている。この例では、9つの端子が3×3のマトリクス状に配列されているが、他の配列を採用してもよい。図3に示した基板200と同様に、記憶装置用の複数の接触部cpは、9つの接触部cp全体が配置されている領域内の第1領域810に配置されている。4つの装着検出端子210,240,250,290の接触部は、第1領域810よりも外側に配置されている。また、4つの装着検出端子210,240,250,290の接触部は、第1領域810を包含する4角形の第2領域820の4隅に配置されている。第1領域810の形状は、4つの装着検出端子210,240,250,290の接触部を包含する最も面積の小さな4角形とすることが好ましい。あるいは、第1領域810の形状を、4つの装着検出端子210,240,250,290の接触部に外接する4角形としてもよい。第2領域820の形状は、すべての接触部を包含する最も面積の小さな4角形とすることが好ましい。
上述した図33〜図37に示した各種の基板に関しても、上側列R1の2つの装着検出端子210,240の各接触部は、上側列R1の両端部、すなわち、上側列R1の最も外側にそれぞれ配置されており、また、下側列R2の2つの装着検出端子250,290の各接触部は、下側列R2の両端部、すなわち、下側列の最も外側にそれぞれ配置されている。このため、第1〜第3実施形態で説明した接触不良、意図しない短絡、リーク等の検出処理を適用することによって、各実施形態で説明したものとほぼ同様の効果を得ることが可能である。
図38(A)は、他の実施形態において利用される共通基板を示す図である。この共通基板200nは、4個分のカートリッジに対応した4つの小基板部301〜304を、連結基板部300で連結した形状を有している。複数の小基板部301〜304の間にはギャップGが存在する。このギャップGの大きさは、典型的には約3mm以上である。なお、個々の小基板部内では、9つの端子210〜290のそれぞれと、最も近い他の端子との間のギャップは1mm未満である。また、個々の小基板内の9つの端子210〜290の接触部cpは、ほぼ一定の間隔で配置されている。換言すれば、個々の小基板部内の9つの端子210〜290は、ほぼ均一に配置されている。この共通基板200nを、図27に示したカートリッジ装着部2100に装着することにより、共通基板200nの4組の端子群と、カートリッジ装着部2100内の4カートリッジ分の装置側端子群とを同時に接続することが可能である。この場合には、インク収容体(インク収容容器)を、共通基板200nとは別個にカートリッジ装着部2100に装着してもよい。あるいは、カートリッジ装着部2100以外の位置に複数のインク収容体を設置し、これらのインク収容体からチューブを介してキャリッジ2030の印刷ヘッド2050にインクを供給してもよい。また、1つのインク収容体の内部が複数のインク色を収容する複数のインク収容室に分割されている複数色一体型カートリッジに、共通基板200nを利用してもよい。
共通基板200nの複数の小基板部301〜304のそれぞれは、図3の基板200と同じ複数の端子210〜290を有している。これらの端子210〜290及びそれらの接触部の配置は、図3,図8,又は図20の基板200と同じである。なお、共通基板200nの複数組の端子210〜290と、記憶装置や高電圧デバイスとの接続関係としては、種々のものを採用することが可能である。例えば、N組(Nは2以上の整数)の端子210〜290のうちのN組のメモリー端子220,230,260,270,280を、1つの記憶装置に共通に接続してもよく、あるいは、N個の記憶装置に個別に接続してもよい。また、この共通基板200nを第2実施形態や第3実施形態に適用する場合には、N組の端子250,290を、1つの高電圧デバイス(204又は208)に共通に接続してもよく、あるいは、N個の高電圧デバイスに個別に接続してもよい。なお、高電圧デバイスとしては、抵抗素子やセンサー以外の種々のデバイス(素子や回路)を利用可能である。例えば、静電容量、コイル、及び、これらを組み合わせた回路などの種々のデバイスを高電圧デバイスとして利用可能である。これは他の実施形態も同様である。
複数の小基板部301〜304のそれぞれにおいて、複数の端子210〜290の接触部の集合領域820の四隅には、装着検出端子210,240,250,290の接触部が配置されている。従って、複数の小基板部301〜304のそれぞれに関して、装着検出端子210,240,250,290で囲まれた複数のメモリー端子が確実に接触した正しい装着状態にあるか否かを検出することが可能である。
図38(B)は、比較例としての共通基板200pを示している。この比較例の共通基板200pでは、装着検出端子としては、複数の小基板部301〜304のそれぞれにおいて1つの装着検出端子210のみが設けられている。この比較例の共通基板200pでは、1つの小基板部に1つの装着検出端子のみしか設けられていないので、個々の小基板部内の複数のメモリー端子が確実に接触している正しい装着状態にあるか否かを検出することは不可能である。特に、複数の小基板部301〜304の間にはギャップGが存在するので、複数の小基板部301〜304における端子の接触状態は、小基板部毎に異なっている可能性が高い。従って、1つの小基板部に1つの装着検出端子のみしか設けられていない場合には、個々の小基板部内の複数のメモリー端子が確実に接触している正しい装着状態にあるか否かを検出することは不可能である。これは、1つの小基板部に2つの装着検出端子を設けた場合にも同様である。
このように、共通基板200nを利用する場合にも、個々の小基板部に設けられた端子群の接触部の四角形の集合領域の四隅に装着検出端子を設けることによって、個々の小基板部内の複数のメモリー端子が確実に接触するような正しい装着状態にあるか否かを検出することが可能である。本明細書において、単に「基板」という場合には、カートリッジ装着部における1個のカートリッジ装着位置(1つの収容スロット)に対応する基板部材を意味している。すなわち、図38の場合には、複数の小基板部301〜304のそれぞれが「基板」に該当する。
図39は、各色独立型カートリッジと、これらと互換性のある複数色一体型カートリッジ及び共通基板の構成を示す図である。なお、図39では、図示の便宜上、カートリッジや回路基板の構造が簡略化して描かれている。図39(A)のカートリッジ100qは、各色毎に独立したカートリッジであり、回路基板200が個々のカートリッジ100qの前面に設置されている。これらのカートリッジ100qは、カートリッジ装着部に独立して装着可能である。
図39(B)は、1つのインク収容体の内部が複数のインク色を収容する複数のインク収容室に分割されている複数色一体型カートリッジ100rと、この複数色一体型カートリッジ100r用の共通基板200rとを示している。複数色一体型カートリッジ100rは、4つの独立型カートリッジ100qと互換性を有しており、4つの独立型カートリッジ100qが装着されるカートリッジ装着部(ホルダー)に装着可能な形状を有している。共通基板200rは、複数色一体型カートリッジ100rに設置された状態で、複数色一体型カートリッジ100rと共にカートリッジ装着部に装着することができる。或いは、共通基板200rと、複数色一体型カートリッジ100rとを、別々にカートリッジ装着部に装着することも可能である。後者の場合には、例えば、最初に共通基板200rをカートリッジ装着部に装着し、その後に複数色一体型カートリッジ100rをカートリッジ装着部に装着する。
図39(C)は、共通基板200rの構成を示している。この共通基板200rは、図38(A)の共通基板200nと同様に、4個分の各色独立型カートリッジ100qに対応した4つの小基板部301〜304を、連結基板部300で連結した形状を有している。個々の小基板301〜304には、カートリッジの高電圧デバイスに接続された1組の装着検出端子250,290がそれぞれ配置されている。この点は、図38(A)の共通基板200nと同じである。図38(A)の共通基板200nと図39(C)の共通基板200rの相違点は以下の通りである。
<相違点1>図38(A)の共通基板200nでは、他の1組の装着検出端子210,240も個々の小基板301〜304にそれぞれ設けられていたのに対して、図39(C)の共通基板200rでは、1つの装着検出端子210が一端側の小基板301に配置され、他の1つの装着検出端子240が他端の小基板304に配置されており、これらの2つの装着検出端子210,240が配線SCLによって短絡接続されている。
<相違点2>図38(A)の共通基板200nでは、複数のメモリー端子220,230,260,270,280が個々の小基板301〜304にそれぞれ設けられていたのに対して、図39(C)の共通基板200rでは、これらのメモリー端子220,230,260,270,280が共通基板200r全体で1組のみ設けられている。
なお、図39(C)の例では、上側列R1のメモリー端子220,230は第3の小基板303に設けられており、下側列R2のメモリー端子260,270,280は第1の小基板301に設けられている。なお、メモリー端子220,230,260,270,280の機能は、図3で説明したものと同じである。個々のメモリー端子220,230,260,270,280は、小基板301〜304のいずれに設けても同じである。このような構成は、以下で説明するように、複数の独立型カートリッジ100qの回路基板200の記憶装置が、印刷装置の制御回路にバス接続される場合に採用可能である。
図40は、図39のカートリッジに適した印刷装置の電気的構成を示す説明図である。ここでは、図39(A)に示した各色独立型カートリッジ100qが装着された状態を示している。個々のカートリッジ100qの記憶装置203は、複数の配線LR1、LD1、LC1、LCV、LCSによってサブ制御回路500にバス接続されている。一方、個々のカートリッジ100qの抵抗素子204は、信号線LDSN,LDSPによってカートリッジ検出回路502に個別に接続されている。また、個々のカートリッジ100qの装着検出端子210,240も、信号線LCON,LCOPによってカートリッジ検出回路502に個別に接続されている。なお、装着検出用の4つの端子210,240,250,290とカートリッジ検出回路502との接続関係は、例えば図22に示したものと同じ構成を採用可能である。この回路構成では、複数の各色独立型カートリッジ100qの記憶装置203がバス接続されている。従って、複数の各色独立型カートリッジ100qの代わりに図39(B)に示した複数色一体型カートリッジ100r及び共通基板200rを使用する場合には、少なくとも1つの記憶装置を共通基板200rに設ければよい。そこで、図39(C)に示した共通基板200rでは、メモリー端子220,230,260,270,280が共通基板200r全体で1組のみ設けられている。
図41は、カートリッジ検出回路502と図39(C)の共通基板200rとの接続状態を示す図である。カートリッジ検出回路502の回路構成は、図22と同じであり、図22における4つのカートリッジIC1〜IC4の代わりに共通基板220rを適用した場合の図に相当する。個々の小基板301〜304に設けられた抵抗素子204に接続された1組の装着検出端子250,290は、カートリッジ検出回路502の対応する装置側端子550,590とそれぞれ接続される。従って、この共通基板200rが装着された状態で個別装着電流値検出部630による個別装着検出処理が実行された場合には、すべてのカートリッジが装着されているものと判定される。また、前述したように、この共通基板200rでは、1つの装着検出端子210が一端側の小基板301に配置され、他の1つの装着検出端子240が他端の小基板304に配置されており、これらの2つの装着検出端子210,240が配線SCLによって短絡接続されている。従って、検知パルス発生部650及び非装着状態検出部670による非装着検出処理が実行された場合にも、正しい装着状態にあるものと判定される。なお、図22と図41とを比較すれば理解できるように、図41の回路では、図22の回路において順次直列に接続されていた複数組の端子240,210のうちの両端の端子240,210のみを共通基板200r上に設けて、これらを配線SCLによって短絡接続している。このような共通基板200rを使用した場合にも、カートリッジ検出回路502側で正しい装着状態にあると判定されるので、その後の印刷処理などの各種の処理を実行可能となる。なお、共通基板200rに使用する高電圧デバイスとしては、抵抗素子204以外の高電圧デバイス(例えばセンサー)なども利用可能である。
なお、図39(C)の共通基板200rには、1つ以上の記憶装置203を設ければ良く、各インク色毎に1つの記憶装置203を設けるようにしても良い。また、複数のメモリー端子220,230,260,270,280は、記憶装置203の個数に応じて1組以上設ければ良い。
図39(C)の共通基板200rにおいても、図3の回路基板と同様に、複数の端子の接触部cpは、上側列R1(第1列)と下側列R2(第2列)とに分かれている。すなわち、上側列R1には、装着検出端子210,240の接触部cpと、2つのメモリー端子220,230の接触部cpとが配置されている。また、下側列R2には、複数組の装着検出端子250,290と、3つのメモリー端子260,270,280とが配置されている。上側列R1の両端と、下側列R2の両端には、それぞれ装着検出端子の接触部cpが配置されているので、その間にあるメモリー端子の接触状態を正しく確認することが可能である。また、上側列R1に存在する複数の端子の接触部cpのうちの両端にある装着検出端子210,240の接触部cpの間の距離は、下側列R2に存在するメモリー端子260〜280の接触部cpのうちの両端にある2つの接触部cpの間の距離よりも長い。このような構成においても上述したように、4つの装着検出端子の接触部cp(上側列R1の両端にある装着検出端子210、240の接触部cpが2つと、下側列R2の両端にある小基板301の装着検出端子210および小基板304の装着検出端子290の接触部cpが2つ)が、メモリー端子の接触部が配置される領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の4隅に対応して配置されるので、カートリッジが正しく装着されているか否かを印刷装置側で正しく判定することが可能である。
図42は、他の実施形態におけるカートリッジの構成を示す斜視図である。このカートリッジ100bも、オンキャリッジタイプの小型インクジェットプリンターに使用されるものであり、インクを収容する略直方体の筐体101bと、基板200と、を備えている。このカートリッジ100b及び基板200の装着方向SD(カートリッジ装着部に装着する方向)は、鉛直下方である。筐体101bの内部には、インクを収容するインク室120bが形成されている。筐体101bの底面には、インク供給口110bが形成されている。使用前の状態では、インク供給口110bの開口はフィルムによって封止されている。このカートリッジ100bは、図28のカートリッジ100aとは形状が異なっている。特に、基板200が筐体101bの鉛直な側面に固定されており、この点で図28のカートリッジ100aと大きく異なっている。このようなカートリッジ100b及びその基板200に対しても、上述した種々の実施形態や変形例を適用可能である。
図43は、さらに他の実施形態におけるカートリッジの構成を示す斜視図である。このカートリッジ100cは、インク収容部100Bcと、アダプター100Acとに分離されている。このカートリッジ100cは、図28のカートリッジ100aと互換性を有するものである。インク収容部100Bcは、インクを収容するインク室120Bcと、インク供給口110cとを有している。インク供給口110cは、筐体101Bcの底面に形成されており、インク室120Bcに連通している。
アダプター100Acは、その上部に開口106cが設けられており、その内部にインク収容部100Bcを受け入れる空間が形成されている点で、図28のカートリッジ100aの外形と異なるだけであり、他の点では図28のカートリッジ100aとほぼ同じ外形を有している。すなわち、アダプター100Acは、全体として略直方体の形状を有しており、その外面は、直交する6面のうちの天井面(上端面)を除く5つの面と、下端のコーナー部に設けられた斜面状の基板設置部105cとで構成されている。アダプター100Acの第1の側面(前端面)102cには、レバー160cが設けられており、レバー160cには係合突起162cが設けられている。アダプター100Acの底面104cには、カートリッジ装着部2100に装着されたときに、カートリッジ装着部2100のインク供給管2080を通過させる開口108cが形成されている。インク収容部100Bcがアダプター100Acの中に収められた状態では、インク収容部100Bcのインク供給口110cが、カートリッジ装着部2100のインク供給管2080に接続される。アダプター100Acの第1の側面102cの下端近傍には、斜面状の基板設置部105cが形成されており、この基板設置部105cに基板200が設置されている。第1の側面102cに対向する第2の側面(後端面)103cには、係合突起150cが設けられている。
このカートリッジ100cを使用する場合には、インク収容部100Bcをアダプター100Acと組み合わせた状態で、両者をカートリッジ装着部2100に同時に装着する。あるいは、まずアダプター100Acをカートリッジ装着部2100に装着し、その後に、インク収容部100Bcをアダプター100Ac内に装着してもよい。後者の場合には、アダプター100Acをカートリッジ装着部2100に装着したままで、インク収容部100Bcのみの脱着が可能である。
図44は、さらに他の実施形態におけるカートリッジの構成を示す斜視図である。このカートリッジ100dも、インク収容部100Bdとアダプター100Adとに分離されている。このアダプター100Adは、第1の側面102dと、底面104dと、第1の側面102dに対向する第2の側面103dと、第1の側面102dの下端近傍に設けられた斜面状の基板設置部105dとで構成されている。図43に示したカートリッジとの主な差違は、図44のアダプター100Adでは、第1及び第2の側面102d、103dと底面104dとに交わる2つの側面(最も大きな側面)を構成する部材が存在しない点である。第1の側面102dには、レバー160dが設けられており、レバー160dには係合突起162dが形成されている。第2の側面103dにも係合突起150dが形成されている。インク収容部100Bdは、インクを収容するインク室120Bdと、インク供給口110dと、を有している。このカートリッジ100dも、図43のカートリッジ100cとほぼ同様の方法で使用可能である。
図45は、さらに他の実施形態におけるカートリッジの構成を示す斜視図である。このカートリッジ100eも、インク収容部101Beとアダプター100Aeとに分離されている。このアダプター100Aeは、第1の側面102eと、第1の側面102eに対向する第2の側面103eと、第1と第2の側面102e,103eの間に設けられた第3の側面107eと、第1の側面102dの下端近傍に設けられた斜面状の基板設置部105dとで構成されている。インク収容部100Beは、インクを収容するインク室120Beと、インク供給口110eと、を有している。インク収容部100Beの底面104eは、図28に示したカートリッジ100aの底面104aとほぼ同じ形状を有している。このカートリッジ100eも、図43及び図44のカートリッジ100c,100dとほぼ同様の方法で使用可能である。
上述した図43〜図45の例から理解できるように、カートリッジは、インク収容部(「印刷材収容体」とも呼ぶ)と、アダプターとに分離することも可能である。この場合には、回路基板は、アダプター側に設けられることが好ましい。なお、このようなインク収容部とアダプターとに分離されたカートリッジ構成は、図2に示したカートリッジ100にも適用可能である。図28のカートリッジ100aと互換性のあるアダプターは、係合構造を有するレバーが設けられた第1の側面102c(又は102d,102e)と、第1の側面に対向する第2の側面103c(又は103d,103e)と、第1及び第2の側面の間に設けられた他の面(底面104c,104d、又は、第3の側面107e)と、第1の側面の下端近傍に設けられた基板設置部105c(又は105d,105e)とを有することが好ましい。
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
上述した各種実施形態における基板の端子や接触部の配列は、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態の基板では、複数の端子やそれらの接触部が、カートリッジの装着方向に垂直な方向に沿った互いに平行な2つの列に配置されているが、この代わりに、カートリッジの装着方向に平行な方向に沿った2つの列に配置されていてもよい。また、2列でなく、3列以上に分かれて配置されていてもよい。
また、装着検出用の端子の数は任意であり、5つ以上配置してもよい。さらに、記憶装置用の複数の端子の種類や配列も、上記以外の種々の変形が可能である。例えば、リセット端子は省略可能である。但し、記憶装置用の複数の接触部は、他の端子(装着検出用の端子)の接触部が、記憶装置用端子の接触部同士の間に入らないような集合した状態で配置されていることが好ましい。
・変形例2:
上記各実施形態では、カートリッジに搭載される電気デバイスとして、記憶装置203の他に、センサー208(図9)や抵抗素子204(図21)が使用されているが、カートリッジに搭載される複数の電気デバイスは、これらに限られず、1つ以上の任意の種類の電気デバイスをカートリッジに搭載するようにしてもよい。例えば、インク量検出のためのセンサーとして、圧電素子を用いたセンサーの代わりに、光学的なセンサーをカートリッジに設けても良い。また、3.3Vよりも高い電圧が印加される電気デバイスとしても、センサー208(図9)や抵抗素子204(図21)以外のデバイスを使用してもよい。さらに、第3実施形態では、記憶装置203と抵抗素子204の両方が基板200に設けられているが、カートリッジの電気デバイスは、他の任意の部材上に配置することが可能である。例えば、記憶装置203は、カートリッジの筐体や、アダプター、あるいは、カートリッジとは別体の他の構造体上に配置されても良い。この点は、第2実施形態についても同様である。
・変形例3:
上記第3実施形態では、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の対応する抵抗素子63n(n=1〜4)とで4つの装着検出用抵抗701〜704が形成されているが、これらの装着検出用抵抗の抵抗値は、1つの抵抗素子のみで実現してもよく、また、3つ以上の抵抗素子で実現してもよい。例えば、2つの抵抗素子204,631で構成される装着検出用抵抗701を、単一の抵抗素子で置き換えるようにしてもよい。他の装着検出用抵抗も同様である。複数の抵抗素子で1つの装着検出用抵抗を構成する場合には、それらの抵抗素子の抵抗値の配分は任意に変更可能である。また、これらの単一の抵抗素子又は複数の抵抗素子は、カートリッジと印刷装置本体の一方のみに設けてもよい。例えば装着検出用抵抗をすべてカートリッジ上に設けるようにすれば、印刷装置本体には装着検出用抵抗を構成する抵抗素子は不要となる。
図46は、個別装着検出用の回路構成の変形例を示す回路図である。この回路は、図23の回路から、カートリッジ検出回路502の抵抗素子631〜634を省略し、また、抵抗素子204の抵抗値をカートリッジの種類に応じた異なる値にしたものある。すなわち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnの抵抗素子204の抵抗値は、2nR(Rは一定値)に設定されている。図46の回路においても図23と同様に、N個のカートリッジの2N種類の装着状態に応じて検出電流IDETが一意に決まる特性が得られる。
・変形例4:
上記各実施形態で記載されている各種の構成要素のうち、特定の目的・作用・効果に関係の無い構成要素は省略可能である。例えば、カートリッジ内の記憶装置203は、カートリッジの個別装着検出に使用されていないので、カートリッジの個別装着検出を主な目的とする場合には省略可能である。また、上述した各種の処理のうち、任意の一部の処理、及び、その処理に関連している構成要素を省略することも可能である。
・変形例5:
上記各実施形態では、インクカートリッジに本発明を適用しているが、他の印刷材、例えば、トナーが収容された印刷材収容体(印刷材収容容器)についても同様に本発明を適用可能である。
また、本発明は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置及びその液体収容容器にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置及びその液体収容容器に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレー等の画像表示装置用のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置
(6)潤滑油の噴射装置
(7)樹脂液の噴射装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。