以下、本発明のマイクロ波加熱装置の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては電子レンジについて説明するが、電子レンジは例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置は電子レンジに限定されるものではなく、オーブンレンジ、解凍装置などの調理器具や、各種誘電体の加熱装置、木材などの乾燥装置、陶芸における加熱・焼結装置など誘電加熱を利用した各種加熱装置を含むものである。また、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本発明に含まれるものである。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、当該電子レンジを正面側から見た断面図である。図1に示す電子レンジにおいては、被加熱物を加熱室から出し入れするための扉(図示無し)が手前側に設けられている。図2は実施の形態1のマイクロ波加熱装置における導波管近傍を示す断面図である。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン31が設けられており、マグネトロン31から放射されたマイクロ波が導波管32を伝送して、2つの回転アンテナ38,38を介して加熱室33内に放射されるよう構成されている。加熱室33の内部には代表的な被加熱物である食品34を載置する載置台35が設けられている。載置台35の下側には2つの回転アンテナ38,38が配置されるアンテナ空間36が形成されている。アンテナ空間36の底面側で導波管32の磁界面(H面)も兼ねる底板50には回転アンテナ38,38の駆動軸が挿入される結合孔37,37が形成されている。結合孔37,37は、加熱室33の中心から略等距離の位置に形成され、回転アンテナ38,38の各駆動軸が結合孔37,37の中心に配置されている。各回転アンテナ38,38の駆動手段としてのモータ39,39が駆動軸を介して回転させるよう構成されている。モータ39,39の回転動作は、使用者により設定部41において設定された条件に応じて制御部40により制御されている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置は、設定部41において、使用者が被加熱物である食品34に応じて、またはその食品34の調理内容に応じて調理メニューを選択することができる。この選択結果に基づき、制御部40はマグネトロン31を制御してマイクロ波の発生や停止を行うとともに、モータ39を制御して回転アンテナ38,38の回転および停止を制御する。この結果、載置台35に載置された食品34の加熱および調理を行うことができる。
次に、実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいて用いられる導波管32について説明する。
導波管32は、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられてマイクロ波が導入されるマイクロ波入力部分の伝送方向と、回転アンテナ38,38が設けられてマイクロ波が加熱室33に放出されるマイクロ波出力部分の伝送方向が、導波管32において略直角となるよう構成されている。導波管32は、磁界面である対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、電界面である対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)とを持つ構成である。
図2に示すように、第1のH面は、マグネトロン31のアンテナ42が挿入される鉛直面43と、斜面44と、アンテナ空間36の底板50の一部とにより構成される。第2のH面は、マグネトロン31のアンテナ42の先端に対向する部分が膨らんだ形状を有する鉛直面52と、回転アンテナ38,38を駆動するモータ39,39が接合された水平面54とにより構成されている。
実施の形態1における導波管32においては、図2に示すように、第1の板46により第1のH面の鉛直面43および斜面44が形成されており、底板50により第1のH面の水平面47が形成されている。第1の板46において斜面44から延びる加熱室側の端部45は底板50と平行になるように水平に折り曲げられており、その端部45が底板50に対して、例えばスポット溶接加工、カシメ加工などの接合手段により固着されるように構成されている。
一方、第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32の両端面であるショート面55,56を形成している。
斜面44は、導波管32の第1のH面におけるマグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分との間を繋ぐコーナー部分に形成されている。実施の形態1における導波管32は、前述の図29および図30において示した導波管1A,1Bの構成と比べると、導波管におけるコーナー部分を斜めにカットした形状であり、マイクロ波の伝送経路を短縮するものである。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における導波管32において、第1のH面における斜面44の曲げ開始位置Y(図2参照)は、アンテナ42の中心から鉛直方向への距離mを約25mmとした。当該電子レンジにおいて使用されるマイクロ波の波長(約120mm)と比べると、距離mは約1/4波長(約30mm)の距離である。なお、ここで、約1/4波長とは、使用するマイクロ波の波長の1/4±20%の範囲内である。また、曲げ開始位置Yから加熱室33の底面を形成する底板50までの距離nも同様に約25mmとした。実施の形態1の導波管32において、斜面44の加熱室33の底面に対する角度を、約45度としたが、この角度は30度から60度の範囲内が好ましい角度であった。
第2の板51は、第1のH面に対向する第2のH面を形成している。第2のH面は、アンテナ42の先端に対向する位置に外側に膨らんだ凸部59が形成された鉛直面52と、加熱室33の底面と平行な水平面54とにより構成されている。
なお、導波管の変形例として鉛直面52と水平面54との間に、第1のH面の斜面44に対向する斜面を形成してもよい。このように第2のH面にも第1のH面に対向して斜面を形成することにより、コーナー部分におけるマイクロ波の伝送損失をより低減することが可能となる。
図3は、上記のように第1のH面の斜面に対向するように第2のH面に斜面を形成した導波管32Aを示す断面図である。図3に示すように、導波管32Aにおいては、対向する第1のH面および第2のH面のそれぞれの面に、対向して斜面44A,44Bが形成されている。このように構成された導波管32Aは、マイクロ波の伝送がよりスムーズとなり、伝送損失を大幅に低減することが可能となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における導波管32の具体的な寸法は、図1および図2がともに導波管32のH面のセンターで切断した断面図であるため図示していないが、幅(図28において幅aで示す寸法)は約85mmとした。また、導波管32の高さ(図28において幅bで示す寸法)は、マグネトロン31のアンテナ42が設けられているマイクロ波入力部分の高さ(図2においてbLにて示す高さ)が約31mm、回転アンテナ38が設けられているマイクロ波出力部分の高さ(図2においてbSにて示す高さ)が約16.5mmとしている。
導波管32における鉛直面52に形成されている凸部59は、シボリ加工により形成されており、導波管32の高さbLが低い場合でも、アンテナ42の先端と対向する導波管壁面との距離を確保して、放電が生じないように外向きに膨らませている。
なお、図1および図2に示す導波管32において、屈曲部分の形状を鋭角に描いているが、実際の導波管においては放電の発生を防止するために滑らかな曲面により構成してもよい。
以上のように構成された実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、導波管32内をマイクロ波が伝搬するとき、コーナー部分に斜面44が形成されているため、マグネトロン31から放射されたマイクロ波がコーナー部分で複雑な反射を繰り返すことがなく、大きな伝送損失を防止している。また、導波管32を用いることにより、マグネトロン31からのマイクロ波が導波管32のマイクロ波出力部分までマイクロ波をスムーズに伝送できるので、加熱効率を高めて、省エネルギー性能を向上させている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、導波管32における斜面44の曲げ開始位置Yが、アンテナ42の中心から鉛直方向に距離m(約25mm)となっており、マイクロ波の波長と距離mとを比べると、距離mは波長の1/4±20%の範囲内の長さとなっている。
このように構成されたマイクロ波加熱装置において、導波管32と加熱室33とを合わせた空間で考えると、この空間はマイクロ波にとって閉空間であるため、共振器として作用し、導波管32内にも定在波が生じる。定在波はアンテナ42の中心の位置で常に振幅最大(定在波の腹)になり、波長の1/2毎に振幅最大(定在波の腹)が繰り返される。このためアンテナ42の近傍において、アンテナ42の中心の位置の次に振幅最大となる位置は、アンテナ42の中心から1/2波長だけ離れた位置となる。
一方、共振時において、振幅最大の位置では電界や磁界の強さが最大であるため、その位置で、鉛直面43から斜面44への曲げ開始位置Yが存在すると伝送損失が大きくなると考えられる。実施の形態1において、導波管32の第1のH面において配置角度が変わるコーナー部分となる曲げ開始位置Yは、アンテナ42の中心から約1/4波長(波長の1/4±20%範囲内の長さ)だけ離れた位置である。したがって、曲げ開始位置Yは、アンテナ42の中心とアンテナ42中心から1/2波長離れた位置の丁度中間の位置である。すなわち、曲げ開始位置Yは、振幅最大の位置の丁度中間の位置となり、振幅最小の定在波の節の位置となるので、伝送損失を効率高く抑えることができる。
なお、曲げ開始位置Yは、アンテナ42の中心から約1/4波長の位置でなくてもよく、曲げ開始位置Yはアンテナ42の中心から1/8波長から3/8波長までの範囲内の距離だけ離れた位置とすれば、伝送損失を大幅に抑える効果がある。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、導波管32の第1のH面を、鉛直面43と斜面44とを構成する第1の板46と、加熱室33の一部を構成する底板50とを接続することにより構成し、第2のH面と第1のE面と第2のE面とを、第2の板体51により構成した。しかし、本発明はこのような構成のみに限定されるものではなく、一対のH面、一対のE面、およびショート面は、その形状および構成を考慮して適宜所望の板材を加工することにより構成される。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置における導波管32は、コーナー部分に斜面44を設けることにより導波管における伝送損失の低減を図ると共に、屈曲した形状でありながらも、少ない部品で容易に実現することが可能である。
特に、第1の板46の加熱室側の端部45を、斜面44の傾斜角度よりさらに傾斜させて、加熱室33の底面を形成する底板50と平行にすることにより、端部45と底板50とのスポット溶接加工或いはカシメ加工などの接合手段により接合処理を容易にしている。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける、具体的な省エネルギーの効果について説明する。本願発明者は、前述の図29に示した導波管1Aのような斜面のない屈曲した導波管を用いた電子レンジと、図1に示した斜面のある導波管を用いた実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジとをそれぞれ定量的に評価するために年間消費電力量を調べた。その結果、斜面のない導波管を用いた電子レンジの場合には年間消費電力量63.73kWh/年であり、斜面のある導波管を用いた電子レンジの場合には年間消費電力量は58.53kWh/年となり、5kWh/年以上も消費電力量を低減できることが分かった。
なお、実施の形態1における導波管32のコーナー部分の斜面44形状は、実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては面取りのような平面でカットした構成で示したが、本発明はこのような形状に限定されるものではなく、曲面形状でも良い。
図4は、導波管32のコーナー部分に形成される斜面を曲面で形成した例を示す断面図である。図4に示すように、第1のH面における曲面状の斜面44Cは、鉛直面43と水平面47とを連続させるように滑らかな曲面で形成されており、導波管32Bにおける伝送経路を短縮するように構成されている。このように構成された導波管32Bは、マイクロ波の伝送がよりスムーズとなり、伝送損失を大幅に軽減することが可能となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置の導波管32においては、第1のH面における幅方向の全幅に至る領域に斜面44を形成した例で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、第1のH面の幅方向の一部の領域に斜面を形成してもよい。図5は、導波管32Cにおける第1のH面の幅方向の一部に斜面44Dを形成した例を示す断面図である。このように構成された導波管32Cにおいては、斜面部分における構造上の強度が高くなり、加熱室33と導波管32Cとの間の構造的な一体化が容易となり信頼性の高い加熱装置となる。
実施の形態1のマイクロ波加熱装置においては、回転アンテナ38が二つの場合について説明したが、本発明は回転アンテナの個数を限定するものではない。また、回転アンテナは無くてもよく、その場合には導波管と加熱室との間に設けた開口からマイクロ波が直接的に放射されるように構成される。
(実施の形態2)
図6は、本発明に係る実施の形態2のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管近傍を示す断面図である。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、実施の形態1のマイクロ波加熱装置と異なる点は、回転アンテナが一つの場合であり、導波管の伝送方向の長さが短いことと、斜面44に整合部60を設けた点である。
一般的に、導波管は直方体形状であり、その伝送方向が直線的であり、且つ伝送方向の長さが長い場合には、伝送損失を低減するために、導波管の任意の位置に整合部である凸部を形成する場合がある。しかし、導波管が非常に短く、且つ曲げられているような形状の場合には、整合部を導波管に形成することが困難である。
整合部は導波管のいずれの場所に形成しても良いものではない。マイクロ波を生成するマグネトロン31のアンテナ42や、マイクロ波を放射する回転アンテナ38に近い位置に整合部を形成した場合には、放電のおそれがあり、導波管を形成するための板材と板材との接合部分の近傍に整合部を形成する場合には、導波管の加工が困難であるという問題がある。また、回転アンテナの駆動手段であるモータに近い場所に整合部を形成する場合、モータ取り付けの邪魔にならないように設計する必要がある。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、整合部を導波管の斜面部分に形成するものである。図6に示すように、整合部60が第1のH面における斜面44に形成されている。整合部60は、導波管32Dの内側に突出するように凹部形状である。なお、整合部60の形状は、導波管32Dと加熱室33との状態に応じて適宜変更されるものであり、導波管32Dの外側に突出するように凸部形状とする場合もある。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、整合部60を導波管32Dの斜面44に形成するものである。導波管32Dにおいて、斜面44は接合部分に相当せず、アンテナ42および回転アンテナ38から離れた位置にあるため、整合部60を容易に形成することが可能であり、整合部60と各アンテナ間の放電の心配もない。さらに、整合部60を斜面44に設けても、マイクロ波加熱装置において整合部が邪魔になることがない。
また、整合部60を斜面44に形成しているため、加熱室33に影響を与えることがない。例えば、図30に示したような導波管1Bの構成には、加熱室33の底面を構成する底板50に整合部を形成する必要がある。しかし、このように底板50に整合部60を形成した場合には、加熱室33の底面形状が変形するため、加熱室内の加熱分布が変化するという問題が生じる。加熱室33を設計する場合、加熱室内の加熱分布は加熱室形状により決定することができ、導波管32Dの整合状態は整合部の形状により決定することができるほうが設計は容易である。即ち、加熱室形状と整合部形状とが互いに影響しない独立した構成とした方が設計は容易となる。図30に示した導波管1Bの構成では整合部21の形状によって整合状態だけを変えようとしても、加熱室内の加熱分布まで変化してしまい、設計が非常に困難である。しかし、実施の形態2のマイクロ波加熱装置においては、整合部60を斜面44に形成しているため、整合部形状が加熱室33の形状を変えることがなく、加熱分布に影響を与えない構成である。したがって、実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、加熱分布と整合状態を独立して最適化することができ、非常に設計が容易な構成を有する。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置は、斜面44の一部にシボリ加工により整合部60を形成するものである。したがって、整合部60の構成自体は複雑なものではなく、極めて簡単に整合部60を形成することができる。
なお、実施の形態2のマイクロ波加熱装置における導波管32Dの整合部60の形成方法はシボリ加工により凹部形状としたが、本発明はこのような加工方法による凹部形状に限定されるものではなく、半球状や円筒状の金属を溶接などにより導波管に接合して構成しても良い。
実施の形態2のマイクロ波加熱装置において、第2の板51の鉛直面52は平坦な面で構成されている。この鉛直面52には、実施の形態1において図2に示した外側に膨らんだ凸部59が形成されていない。これは、鉛直面52がアンテナ42の先端からの距離が放電しない距離を確保しているためである。
なお、第2のH面は、鉛直面52と、加熱室33の底面に対して平行な水平面54とにより構成されているが、鉛直面52と水平面54との間に、第1のH面の斜面44に対向するように斜面を形成してもよい。このように第2のH面にも第1のH面に対向して斜面を形成することにより、マイクロ波の伝搬におけるエネルギー損失を低減することが可能となる。
また、図6に示す導波管32Dにおいて、屈曲部分の形状を鋭角に描いているが、実際の導波管においては放電の発生を防止するために滑らかな曲面により構成してもよい。
(実施の形態3)
図7は、本発明に係る実施の形態3のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す正面断面図である。図7に示す電子レンジにおいては、被加熱物を加熱室から出し入れするための扉(図示無し)が手前側に設けられている。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、導波管32Eが加熱室33の右側に配置されており、導波管32Eから加熱室33へのマイクロ波放射は、回転アンテナではなく加熱室33の側面48に形成された開口58により行われる構成である。なお、実施の形態3のマイクロ波加熱装置においては、回転アンテナが設けられていない代わりに、食品を回転させるためのターンテーブル49が設けられている。
図7において、実施の形態3のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン31と、マグネトロン31から放射されるマイクロ波を伝送する導波管32Eと、導波管32Eの左側に接続された加熱室33と、加熱室33内に装着され、上面に食品34を載置するターンテーブル49と、ターンテーブル49を回転駆動する駆動手段としてのモータ57を備える構成である。導波管32Eから加熱室33へは比較的大きな開口58を介してマイクロ波が放射される構成である。
次に、実施の形態3のマイクロ波加熱装置における導波管32Eについて説明する。
導波管32Eは、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分の伝送方向と、開口58が形成されたマイクロ波出力部分の伝送方向が、導波管32Eにおいて略直角となるよう構成されている。導波管32Eは、磁界面である対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、電界面である対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)とを有している。
図7に示すように、第1のH面は、マグネトロン31のアンテナ42が挿入される水平面53と、この水平面53に対して所定角度を有して斜めに配置された斜面44と、この斜面44に対して所定角度を有して形成され鉛直方向に延びる端部45の鉛直面と、加熱室33の側面48の一部である鉛直面とにより構成される。第2のH面は、マグネトロン31のアンテナ42の先端に対向する水平面61と、その水平面61に対して直交し、加熱室33の側面と平行な鉛直面62とにより構成される。
実施の形態3における導波管32Eにおいては、図7に示すように、第1の板46により第1のH面の水平面53、斜面44、および端部45の鉛直面が形成されている。第1のH面の鉛直面は、第1の板46において加熱室33の側面48と平行に形成された端部45の鉛直面と、加熱室33の側面48の一部の鉛直面が含まれる。
第1の板46において、斜面44の加熱室側の端部45は、加熱室33の側面48と平行になるように鉛直方向に折り曲げられており、その端部45が側面48に対して、例えばスポット溶接加工、カシメ加工などの接合手段により固着される。
一方、第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32Eの両端面であるショート面55,56を形成している。
斜面44は、導波管32Eの第1のH面におけるマグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分と、開口58が形成されたマイクロ波出力部分との間を繋ぐコーナー部分に形成されている。実施の形態3における導波管32Eは、前述の図29および図30において示した導波管1A,1Bの構成と比べると、導波管32Eにおけるコーナー部分を斜めにカットした形状であり、マイクロ波の伝送経路を短縮するものである。
実施の形態3のマイクロ波加熱装置は、導波管32Eの斜面44に整合部60を形成した構成である。実施の形態3における導波管32Eにおいては、整合部60は導波管32Eの外側に突出する凸部形状で構成されている。実施の形態3のマイクロ波加熱装置に構成においては、斜面44の上方に空きスペースがあるため、シボリ加工で凸部形状に形成された整合部60を確実に、且つ容易に配置することができる。
上記のように、屈曲した導波管32Eの第1のH面にマグネトロンのアンテナ42と、加熱室33へのマイクロ波の放射口となる開口58が形成された構成において、導波管32Eの壁面の一部を変形して所望の形状を有する整合部60を、加熱室33の加熱分布に影響を与えることなく容易に、且つ確実に形成することができる。
(実施の形態4)
実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、前述の図1および図2を用いて説明した実施の形態1のマイクロ波加熱装置の構成と実質的に同じ構成を有するものであり、導波管を構成する技術的思想を具体的な数値を用いて説明するものである。
前述の図29に示した構成の導波管1Aにおいては、マイクロ波発生手段としてのマグネトロン14から放射されたマイクロ波が、コーナー部分で複雑な反射を起こして伝送損失を生じさせて、加熱効率が低下するため、省エネルギー性能は良くならなかった。マグネトロン14のアンテナ2が導波管内に挿入されている場合、一般的なアンテナ2の導波管内の長さcは25〜30mm程度である。導波管1Aにおいてアンテナ2の先端から、アンテナ2の先端に対向する面(第2のH面)までの距離dは、放電等の発生を防止するため約5mm以上を確保することが多い。本願発明者が図29に示すような構成の導波管を形成する場合、マグネトロン14のアンテナ2が設けられているマイクロ波入力部分の高さbL(第1のH面と第2のH面との間の距離(=c+d))を約37mmとしていた。
また、本願発明者は、図29に示す導波管1Aの構成において、回転アンテナ11が設けられているマイクロ波出力部分の高さbSを、モータ4を配置するスペースを確保するため、約16mmとしていた。このため、本願発明者が製作していた導波管においては、マイクロ波出力部分の高さbSとマイクロ波入力部分の高さbLとの比率が、16mm:37mm=1:2.3となっていた。この比率で形成された導波管を用いた電子レンジにおいては、800W出力時のマイクロ波の省エネルギー性能(年間消費効率あるいは年間消費電力量とも呼ばれる)は、65.02kWh/年であった。この数値は、あまり好ましいものではなかった。
本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、屈曲した導波管を用いた場合であっても、伝送損失の低減、および加熱効率と省エネルギー性能の向上を達成するものである。
図8は、本発明に係る実施の形態4のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す正面断面図である。図8に示す電子レンジにおいては、被加熱物を加熱室から出し入れするための扉(図示無し)が手前側に設けられている。図9は、実施の形態4のマイクロ波加熱装置における導波管近傍の構成を示す断面図である。図10は実施の形態4のマイクロ波加熱装置における導波管のみを示す斜視図である。
なお、実施の形態4においては、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置において用いた構成要素と実質的に同様の機能を有するものには同じ符号を付し、特徴的な部分について詳細に説明する。
図8において、実施の形態4のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、マイクロ波発生手段であるマグネトロン31と、マグネトロン31から放射されるマイクロ波を伝送する導波管32Fと、導波管32Fの上部に設けられ、導波管32Fからのマイクロ波が放射される加熱室33と、加熱室33内に固定されて食品34などを載置する載置台35と、載置台35より下方に形成されたアンテナ空間36に配置された回転アンテナ38,38と、回転アンテナ38,38を駆動するための駆動手段としてのモータ39,39と、このモータ39,39の回転および停止を制御する制御部40と、使用者が加熱条件等を設定する設定部41とを備える。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、前述の実施の形態1のマイクロ波加熱装置である電子レンジの構成と実質的に同じ構成であるため、詳細な構成は省略する。
以下、実施の形態4のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいて用いられる導波管32Fについて説明する。
導波管32Fは、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分の伝送方向と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分の伝送方向が、略直角である。導波管32Fは、対向して配置された一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、H面に直交するとともに対向して配置された一対のE面(第一のE面、第二のE面)とを有している。
図9に示すように、導波管32Fにおける第1のH面は、マグネトロン31のアンテナ42が挿入される鉛直面43と、斜面44と、端部45の水平面とを形成する第1の板46、および加熱室33におけるアンテナ空間36の底面を構成する底板50とを接合することにより構成される。実施の形態4における導波管32Fは、前述の図29および図30において示した導波管1A,1Bの構成と比べると、導波管のコーナー部分を斜めにカットした形状であり、マイクロ波の伝送経路を短縮するものである。
第1の板46において斜面44の加熱室側の端部45は底板50と平行になるように水平に折り曲げられており、その端部45が底板50に対して、例えばスポット溶接加工、カシメ加工などの接合手段により接合されるように構成されている。
実施の形態4のマイクロ波加熱装置における導波管32Fにおいて、第1のH面における斜面44の曲げ開始位置Yは、アンテナ42の中心から鉛直方向への距離mを25mmとした位置である。当該電子レンジにおいて使用されるマイクロ波の波長(約120mm)と比べると、距離mは約1/4波長の距離である。ここで、約1/4波長とは、使用するマイクロ波の波長の1/4±20%の範囲内である。
また、曲げ開始位置Yから加熱室33の底面を形成する底板50までの距離nも同様に25mmとした。なお、実施の形態4の導波管32Fにおいて、斜面44の加熱室33の底面に対する角度を、45度としたが、この角度は30度から60度の範囲内であればよい。
導波管32Fにおける第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32Fの端面であるショート面を形成している。
実施の形態4における導波管32Fの基本的な寸法について、図10に示す斜視図を用いて説明する。
導波管32Fにおいて、マグネトロン31のアンテナ42が設けられているマイクロ波入力部分の高さbLは、32mmであり、回転アンテナ38が設けられているマイクロ波出力部分の高さbSは、16mmである。
第2のH面の鉛直面にシボリ加工により形成された凸部59は、アンテナ42の先端と対向する鉛直面52との間に所望の距離を確保して、放電の発生を防止するために、導波管32Fの外向きに突出させた形状である。凸部59は、アンテナ42の先端から少なくとも5mm以上の距離を有するように形成されている。
実施の形態4における導波管32Fにおいては、幅a(図10参照)を85mmとしている。導波管32Fの第2のH面においては、マグネトロン31のアンテナ42の先端に対向する部分に凸部59が、導波管32Fの幅方向の中央に形成されている。このため、実施の形態4における導波管32Fは、アンテナ42が設けられているにもかかわらず、アンテナ42が設けられているマイクロ波入力部分の高さbLを小さく設定することができる。
以下、実施の形態4における導波管32Fの実際の主要な寸法について図9および図10に示した寸法符号a、bL、bS、bA、e、fおよびgを用いて説明する。a=85mm、bL=32mm、bS=16mm、bA=37mm、e=70mm、f=45mm、およびg=32mmである。これらの寸法により導波管32Fにおけるコーナー部分65(図9において破線にて囲まれた領域)の形状が特定される。
以上のように構成された実施の形態4のマイクロ波加熱装置における導波管32Fは、マグネトロン31のアンテナ42と回転アンテナ38が設けられている第1のH面を外側とし、第1のH面に対向する第2のH面を内側となるように曲げられたコーナー部分65を有する構成である。そして、コーナー部分65よりも加熱室側(マイクロ波出力部分)の高さbSと、コーナー部分65よりもマイクロ波発生手段側(マイクロ波入力部分)の高さbLの比率は、16mm:32mm=1:2である。
前述したように、図29に示した導波管1Aの構成においては、マイクロ波出力部分の高さbSとマイクロ波入力部分の高さbLとの比率が、16mm:37mm=1:2.3となっていたが、実施の形態4における導波管32Fの場合の比率は、1:2であり、異なる比率となっている。この比率で構成された導波管32Fを用いた実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、800W出力時のマイクロ波の省エネルギー性能(年間消費効率あるいは年間消費電力量とも呼ばれる)が58.98kWh/年であった。比率が1:2.3である導波管1Aを用いたマイクロ波加熱装置における800W出力時のマイクロ波の省エネルギー性能が、65.02kWh/年であったことと比べて、実施の形態4のマイクロ波加熱装置は格段に良くなっていた。したがって、導波管においては、マイクロ波出力部分の高さbS/マイクロ波入力部分の高さbLの比率は、1/1から1/2の範囲内とすることが好ましいことが分かった。
上記のように導波管32Fにおいてコーナー部分65の前後部分におけるE面の高さの比率(マイクロ波出射部分の高さbS:マイクロ波入射部分の高さbLの比率)を1:1〜2の範囲内とすることにより、マイクロ波発生手段から放射されたマイクロ波がコーナー部分65において複雑な反射を起こすことなく、伝送損失の低減を図ることができ、マイクロ波がスムーズに導波管32Fの末端まで伝送する構成となる。この結果、前記比率で形成された導波管32Fをマイクロ波加熱装置に用いることにより加熱効率の低下を防ぎ、省エネルギー性能を向上させることができる。
特に、実施の形態4における導波管32Fにおいては、マイクロ波出力部分の高さ(E面の高さ)bS:マイクロ波入力部分の高さ(E面の高さ)bLの比率を略1:2とすることにより、マイクロ波発生手段から放射されたマイクロ波がコーナー部分65においてスムーズに伝送されて、伝送損失の低減を図ることができると共に、マイクロ波入力部分の高さ(E面の高さ)bLを前記比率(1:1から1:2)の範囲内において最大長さに設定できるため、アンテナ42の先端と対向するH面までの距離を大きく設定することができ、アンテナ42近傍での損失を防ぐことができる。この結果、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、前記比率を1:1とした場合に較べて、さらなる加熱効率の低下を防ぎ、省エネルギー性能をさらに向上させることができる。
実施の形態4における導波管32Fにおいて、マイクロ波出力部分の高さ(E面高さ)bSは、16mmに設定されており、この16mmの長さは当該電子レンジのマイクロ波の波長λ=120mmの略1/8である。また、導波管32Fにおけるマイクロ波入力部分の高さ(E面高さ)bLは、32mmに設定されており、この32mmは波長λ=120mmの略1/4である。
実施の形態4における導波管32Fにおいては、上記の寸法で構成することにより、導波管32FのE面高さbS:導波管32FのE面高さbLの比率を1:1から1:2の範囲内にすることができるとともに、導波管32FのE面高さbSの条件である、bS<λ/2、および導波管32FのE面高さbLの条件である、bL<λ/2、をともに満たしている。このため、導波管32Fによるマイクロ波の伝送に関して最もコンパクトな構成となるTE10モードと呼ばれる形態でマイクロ波を確実に伝送することができる。
また、導波管32Fにおける第2のH面において、アンテナ42の先端が対向する部分に外向きに突出した凸部59が形成されており、その凸部59における第1のH面からの最大高さbAは、37mmとなっている。この高さは、前述のように図29に示した導波管1Aにおけるマイクロ波入力部分のE面高さbLと同じである。このように、実施の形態4における導波管32Fにおいては、アンテナ42の先端と、その先端に対向する導波管壁面との間に所望の距離を確保しつつ、導波管32Fのマイクロ波入力部分のE面高さbLが大きくなるのを防ぐことができる構成である。
このように構成された実施の形態4における導波管32Fにおいては、アンテナ42の先端に対向するH面の壁面までの距離を大きくとりながらも、導波管32Fのマイクロ波入力部分のE面高さbLを32mmにまで小さくすることができる。このため、導波管32Fのマイクロ波出力部分のE面高さbS:導波管32Fのマイクロ波入力部分のE面高さbLを容易に1:1から1:2の範囲内とすることができる。
以上のように、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、マイクロ波を導入するアンテナ42における損失を防ぎつつ、コーナー部分65の伝送損失も防ぐことができる。この結果、実施の形態4のマイクロ波加熱装置は、屈曲した導波管32Fを用いても加熱効率が低下することを防止することができ、省エネルギー性能を向上させることができる。
また、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、コーナー部65に伝送経路を短縮する斜面44を設けているため、コーナー部分65におけるE面の大きさが大きくなるのを防いでいる。例えば、前述の図29に示したコーナー部分におけるE面の最大長さbT(第1のH面のコーナーから第2のH面のコーナーまでの長さ)は、実際には40mmであった。実施の形態4における導波管32Fにおけるコーナー部分65のE面の長さbTは小さく、導波管32Fのマイクロ波入力部分のE面高さbLより小さく設定することが可能である。
このように構成された導波管32Fにおいては、直角に曲げたコーナー部分65における最大E面長さ(bT)の増大を防止することができ、コーナー部分65における最大E面長さ(bT)をコーナー部分65の前後のE面高さbS、bLに近づけることができる。このため、導波管32Fを用いた実施の形態4のマイクロ波加熱装置において、マイクロ波発生手段から放射されたマイクロ波がコーナー部分65で複雑な反射を起こして伝送損失することを防止し、スムーズに導波管出力部分までマイクロ波を伝送できる。このため、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、加熱効率の低下を防ぎ、省エネルギー性能を向上させることができる。
導波管32Fにおける第1のH面の斜面44は、実施の形態4においては面取りのような平面でカットした構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、アール加工の曲面形状でも良い。また、導波管32Fにおける他の屈曲部分においても、アール加工の曲面形状により構成して、さらなる放電現象の抑制を図ってもよい。
なお、実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては回転アンテナが二つの場合の例について説明したが、回転アンテナは一つであっても良く、あるいは回転アンテナが無く、導波管と加熱室との間に設けた開口からマイクロ波が放射される構成の場合でも、実施の形態4において説明した導波管32Fの構成を用いることにより、同様の効果を奏する。
(実施の形態5)
図11は、本発明に係る実施の形態5のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管近傍を示す断面図である。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置は、1つの回転アンテナを設けた場合の構成である。また、実施の形態5におけるマイクロ波加熱装置においては、導波管における斜面形状を小さい形成して、マグネトロン31を加熱室の方向へ近づける構成である。以下の実施の形態5の説明において、前述の実施の形態1から4のマイクロ波加熱装置と同様の機能、構成を有するものには同じ符号を付してその説明を省略する。
実施の形態5のマイクロ波加熱装置の導波管32Gにおいて、前述の実施の形態4のマイクロ波加熱装置の導波管32Eと比べて異なる主要な寸法は、加熱室の底面に接合される導波管32Gの上面(外側面)と導波管32Gの一方の端面55(ショート面)である下面(内側面)との間の長さeを、e=54mmとしている。この寸法は、前述の図29に示した導波管1Aと同じ長さである。また、斜面44の水平方向の長さgを、g=10mmとしている。斜面44の水平方向の長さgとは、導波管32Gの内面における曲げ開始位置Yから斜面44の傾斜が終了し、水平となる曲げ終了位置Zまでの水平距離である。
上記のように構成された実施の形態5のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、800W出力時のマイクロ波の省エネルギー性能(年間消費効率あるいは年間消費電力量とも呼ばれる)は57.54kWh/年であった。前述の図29に示した構成の導波管1Aを用いた電子レンジの場合には前述の省エネルギー性能が65.02kWh/年であり、図30に示した構成の導波管1Bを用いた電子レンジの場合には省エネルギー性能が63.73kWh/年であった。また、前述の実施の形態4のマイクロ波加熱装置においては、省エネルギー性能が58.98kWh/年であった。このように、実施の形態5のマイクロ波加熱装置においては、優れた省エネルギー性能を示している。
(実施の形態6)
一般に省エネルギー化を図るためには、導波管の小型化が導波管壁面での損失を低減するための重要な課題である。また、導波管壁面形状も省エネルギー化を図るためには重要な課題である。前述の実施の形態1から5における導波管のように導波管壁面のフラットな部分に開口である結合孔37が形成されていると、導波管から加熱室内へ伝送されるマイクロ波の向きが微妙に変化していた。この結果、導波管から加熱室内に回転アンテナおよび結合孔を介して放射されるマイクロ波の分布が変化していた。特に、回転アンテナが1つの場合などの導波管が短い場合には、短くなるほどその傾向は強かった。したがって、例えば、回転アンテナが1つの場合などに導波管を安易に短く設計することができなかった。
そこで、開口である結合孔の外周部分を加熱室側に突出させるように形成して、放射されるマイクロ波をガイドするように構成して、導波管から加熱室へ放射されるマイクロ波の損失を少なくする形状が考えられる。図12は前述の実施の形態1における導波管32の構成において、第1のH面における結合孔37の外周部分を加熱室側に突出するように膨らませた放射ガイド63を形成した例を示す断面図である。図12に示すように、結合孔37の外周部分に放射ガイド63を形成した場合には、導波管内において伝送するマイクロ波が結合孔37に到達する前に放射ガイド63において整えられると考えられる。このように、結合孔37の外周部分に放射ガイド63が形成されている場合には、結合孔37においてマイクロ波の向きがあまり変化せず、導波管形状の違いによる加熱室内のマイクロ波分布の変化は少ないものである。
しかしながら、図12に示した導波管32Hの構成では結合孔37の外周部分に大きな放射ガイド63を形成する構成であるため、第1のH面を構成する加熱室33の底板50と第1の板46との接合部分が、放射ガイド63のさらに外側にしか配置できないという問題がある。図13は、導波管32Hを設けた加熱室33の底板50の平面図であり、回転アンテナ38の駆動軸64を断面で示している。図13において、加熱室33の底板50と第1の板46との接合部分を領域Aで示しており、底板50と第2の板51との接合部分を領域B,C,Dで示している。図13に示すように、加熱室33の底板50および第1の板46または第2の板51との接合部分(領域A,B,C,D)は、結合孔37より外側の放射ガイド63のさらに外側に配置する必要がある。このように放射ガイド63を形成することは、導波管の小型化に逆行して導波管を大きくするものである。この結果、導波管壁面における伝送損失の低減を図り、省エネルギー性能をさらに高めることは、放射ガイドを有する導波管の場合には難しいものであった。
そこで、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置は、結合孔の外側部分に放射ガイドを形成する導波管の構成においても、導波管をできるだけ小型化して、導波管壁面における伝送損失を低減して、省エネルギー性能を向上させる構成を提案するものである。
図14は、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す断面図である。図14において、手前側が被加熱物である食品34を加熱室33から出し入れするための扉が設けられている正面側である。図15は加熱室33の底板50の平面図である。図15においては、回転アンテナ38を省略しており、その駆動軸64を断面で示している。また、図15において、加熱室33の底板50と第1の板46との接合部分を領域Aで示しており、底板50と第2の板51との接合部分を領域B,C,Dで示している。
図14に示すように、実施の形態6のマイクロ波加熱装置である電子レンジは、前述の実施の形態1と同様にマイクロ波発生手段であるマグネトロン31から放射されるマイクロ波が導波管32Jを伝送し、導波管32Jの上部に接続された加熱室33内に導かれている。加熱室33内には載置台35が固定されており、載置台35上には食品34などが載置される。載置台35より下方には2つの回転アンテナ38,38が設けられたアンテナ空間36が形成されている。加熱室33において、加熱室33の中心から略等距離の底板50には2つの結合孔37,37が形成されており、アンテナ空間36内部の2つの回転アンテナ38,38は駆動手段であるモータ39,39の駆動により結合孔37,37を中心に回転する。回転アンテナ38,38を駆動するモータ39,39の回転、および停止は、制御部40により制御される。
また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置である電子レンジには、設定部41が設けられており、使用者が食品や調理内容に応じて調理メニューを選択することができる構成である。当該電子レンジにおいては、使用者の選択結果に基づき、制御部40はマグネトロン31を制御してマイクロ波の発生や停止を行うとともに、モータ39,39を制御して回転アンテナ38,38の回転や停止を制御する。
以下、実施の形態6のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいて用いられる導波管32Jについて説明する。
実施の形態6における導波管32Jは、前述の実施の形態1における導波管32に特殊な形状を有する放射ガイドを設けたものである。したがって、実施の形態6における導波管32Jの説明において、実施の形態1における導波管32と異なる構成について詳細に説明し、重複する構成については実施の形態1の説明を援用する。
実施の形態6における導波管32Jは、実施の形態1における導波管32と同様に、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分の伝送方向と、2つの回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分の伝送方向が、略直角となるよう構成されている。導波管32Jは、磁界面である対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、電界面である対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)とを有している。
実施の形態6における導波管32Jにおいては、第1の板46により第1のH面の鉛直面43および斜面44が形成されており、加熱室33の底板50により第1のH面の水平部分(放射ガイド部分を含む)が形成されている。第1の板46において斜面44の加熱室側の端部45は、底板50に接合されるように水平に折り曲げられており、その端部45が底板50に対して、例えばスポット溶接加工、カシメ加工などの接合手段により固着されるように構成されている。
一方、第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32Jの端面であるショート面55,56を形成している。
実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、加熱室33の底板50の結合孔37,37の外側には放射ガイド63,67が形成されている。図15において、右側の結合孔37の外側に形成されている第1の放射ガイド63は、結合孔37の全周囲の外側に形成されており、加熱室側に突出し、結合孔37を中心として円環形状に膨らんだ形状である。一方、図15における左側の結合孔37の外側に形成されている第2の放射ガイド67は、円環形状の一部が欠落した形状であり、加熱室33の底板50と第1の板46との接合部分の領域Aに近い部分が欠落した形状である。
第1の放射ガイド63および第2の放射ガイド67は、結合孔37より大きな外形を有しており、導波管32J内のマイクロ波を加熱室33へと伝送するためのガイドの機能を有する。導波管32Jに第1の放射ガイド63および第2の放射ガイド67を形成することにより、導波管32Jから加熱室33へのマイクロ波の伝送がスムーズに行なえる構成となる。導波管32Jにおいては、マイクロ波が各結合孔37,37に到達する前に第1の放射ガイド63および第2の放射ガイド67において一旦整えられるため、結合孔37,37におけるマイクロ波の伝送方向の変化が少なく安定している。このため、導波管の形状が多少変更されても加熱室33内のマイクロ波分布の変化が少なく、導波管の形状変更を容易に、且つ信頼性高く行うことができる。
実施の形態6におけるマイクロ波加熱装置においては、導波管32Jを構成する各板がスポット溶接加工あるいはカシメ加工により接合される構成であるため、図15においては、各板の接合部分を接合領域A,B,C,Dで示している。なお、図15の底板50の平面図においては、図を簡単にするために回転アンテナ38を省略し、駆動軸64の断面を結合孔37,37の中心に示している。
図15に示すように、加熱室33の底板50における接合領域B,C,Dに囲まれた右側の第1の放射ガイド63は、結合孔37の外周部分が加熱室側に持ち上がるように膨らんだ形状を有し、結合孔37を中心とした略円環形状である。即ち、第1の放射ガイド63の外周部分に接合領域B,C,Dが形成されている。
一方、接合領域Aに近い第2の放射ガイド67にはカット面68が形成されており、第2の放射ガイド67は円環形状において欠落部分が形成された形状である。図15に示すように、第2の放射ガイド67は、円環形状ではなく、結合孔37の左側となる第2の放射ガイド67の一部分が欠落した形状であり、平面視略D字形状を為すものである。このように、第2の放射ガイド67はカット面68を有しており、そのカット面68により、結合孔37の近くで水平面となっている。このため、第1の板46と底板50との接合領域Aを結合孔37に近づけることができる。前述の図12に示した構成に較べて導波管の小型化を達成することができる。また、このように構成した場合には、斜面44の傾斜を緩くすることが可能となり、マイクロ波がスムーズに伝送されるとともに、マイクロ波の伝送経路を短縮して、導波管の小型化を図ることができる。
上記のように、第2の放射ガイド67は平面視円環形状の一部がカットされ欠落した形状であっても、導波管32J内のマイクロ波を加熱室33へと伝送するためのガイド機能は維持されている。
以上のように、本発明に係る実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、加熱室33の底板50の結合孔37の外側部分に変形の放射ガイドを形成することにより、接合領域Aを結合孔37に近づけることが可能となる。その結果、導波管32Jの小型化を図ることができるため、導波管壁面における伝送損失の低減、および省エネルギー性能の向上を図ることができる。
また、実施の形態6のマイクロ波加熱装置においては、第2の放射ガイド67の形状を平面視略D字状に形成したので、D字形状の直線部分の際のところまで接合領域Aを近づけることができる。一般的に電子レンジ用の導波管の伝送方向に直交する断面は長方形であるため、当該長方形の一辺を延設して接合部分とする接合領域は略長方形となり、容易にD字の直線部分の際まで近づけることができる。
なお、実施の形態6のマイクロ波加熱装置の変形例として、放射ガイドに複数のカット面を対称的に形成すると、導波管におけるマイクロ波分布の均一化を図ることが可能な場合がある。例えば、図15に示した第2の放射ガイド67において結合孔37の左側部分にカット面68を形成した例で示したが、さらに結合孔37の右側部分にカット面を形成してもよい。このように、接続領域が近くに無い場合であっても、放射ガイドにカット面を形成してマイクロ波分布の調整および整合部としての機能を持たすことも可能である。このように対称位置に複数のカット面を形成することは、導波管内の結合孔近傍のマイクロ波分布や加熱室内の結合孔近傍のマイクロ波分布が対称的となりやすく、マイクロ波分布を偏りにくくする効果がある。
(実施の形態7)
図16は、本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管の近傍を示す断面図である。図17は、実施の形態7のマイクロ波加熱装置における底板の平面図である。図17においては、回転アンテナを省略しその駆動軸を断面で示している。実施の形態7の説明において、前述の実施の形態における要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付してその説明は省略する。
実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、1つの回転アンテナ38が設けられて場合である。したがって、回転アンテナ38が配置される加熱室33の底板50における結合孔37は一つである。
実施の形態7のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態6のマイクロ波加熱装置と同様に、底板50の結合孔37の外側には放射ガイド70が形成されている。図16および図17に示すように、放射ガイド70は、結合孔37を中心として加熱室側に突出して膨らんだ形状であるが、対称的な位置に2つのカット面71,72を有するものである。図17において、加熱室33の底板50と第1の板46との接合部分を領域Aで示しており、底板50と第2の板51との接合部分を領域B,C,Dで示している。
図17に示すように、実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、底板50の放射ガイド70において対向する位置に2つのカット面71,72が形成されている。図17において、放射ガイド70における右側の第1のカット面71が、第2の板51におけるマイクロ波出力部分の回転アンテナ38に近い端面(ショート面)56に繋がる部分と、加熱室33の底板50とを接合する領域Cに近接するように形成されている。一方、図17において、放射ガイド70における左側の第2のカット面72が、第1の板46における斜面44に繋がる端部45と、底板50とを接合する領域Aに近接するように形成されている。
図17に示すように、放射ガイド70は、円環形状ではなく、結合孔37の周りに形成された放射ガイド70の右側部分および左側部分にカット面71,72が形成された形状である。このように、放射ガイド70は、左側部分および右側部分においては結合孔37の近くで水平面となっているため、第1の板46と底板50との接合領域Aおよび第2の板と底板50との接合領域Cを結合孔37に近づけることができる。
上記のように、放射ガイド70は平面視円環形状の一部がカットされ欠落した形状であっても、導波管32K内のマイクロ波を加熱室33へと伝送するためのガイド機能は維持されている。
実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、前述の図6に示した実施の形態2のマイクロ波加熱装置と同様に、斜面44の少なくとも一部にシボリ加工により変形した整合部60を設けている。このように、実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、整合部60を導波管32Kの斜面44に形成する構成であるため、整合部60を他の構成物に影響を与えることなく設けることができる。また、実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、整合部60を斜面44に形成しているため、加熱室33の形状を変えることがなく、加熱分布に影響を与えない構成である。
以上のように、本発明に係る実施の形態7のマイクロ波加熱装置においては、加熱室33の底板50の結合孔37の外側部分に変形の放射ガイド70を形成することにより、接合領域A,Cを結合孔37に近づけることが可能となる。その結果、導波管32Kの小型化を図ることができるため、導波管壁面における伝送損失の低減、および省エネルギー性能の向上を図ることができる。さらに、実施の形態7のマイクロ波加熱装置は、加熱分布と整合状態を独立して最適化することができ、設計が容易な構成となる。
(実施の形態8)
以下に説明する実施の形態8から実施の形態13のマイクロ波加熱装置においては、導波管における省エネルギー化を図ると共に、導波管内における放電現象発生の更なる抑制を図り、安全性および信頼性の高いマイクロ波加熱装置を提供するものである。
先ず、従来のマイクロ波加熱装置において導波管において生じる放電現象を低減するための機構について説明する。
図18は、前述の図29に示した導波管に対して冷却機構を設けたマイクロ波加熱装置の導波管近傍を示した断面図である。
図18に示すように、導波管1AにおけるE面(図18の紙面と平行な面)にパンチング孔23を設け、1つの冷却ファン22からの送風がマグネトロン14を冷却すると共に、パンチング孔23から導波管1A内部へも風を送ってマグネトロン14のアンテナ2を直接冷却している。アンテナ2を直接冷却することにより、強電界が集中しやすいアンテナ2の温度上昇を抑制して、局部的な異常加熱による放電現象の発生を抑制するものである。
図18に示す導波管1Aにおいては、第1のH面5は、マグネトロン14が取り付けられアンテナ2が挿入された第1の板15と、加熱室底面を形成する底板13とを接続することにより構成されている。また、導波管1Aの第2のH面6は、第2の板16により構成されている。第2の板16は、折り曲げることにより、第2のH面6だけでなく、導波管1Aの両端面となるショート面9,10、第1のH面5と第2のH面6と間を繋ぐ両側面となる第1のE面および第2のE面も形成している。加熱室底面の底板13、第1の板15および第2の板16は、スポット溶接加工あるいはカシメ加工により接合されており、例えば図18においては符号17、18、19で示す部分が接合部分である。底板13と第1の板15とを接合する接合部分19は、接合が容易となるように、第1の板15の上端を図18に示すように導波管1Aの外側となるように左側に折り曲げて、加熱室底面を形成する底板13と平行になるよう形成されている。
導波管1Aにおいて、マイクロ波出力部分となる端面であるショート面9近傍の底板13には結合孔20が形成されている。この結合孔20には回転可能な回転アンテナ11の駆動軸が挿入されており、駆動軸を介して接続された駆動手段であるモータ4により回転アンテナ11が回転するよう構成されている。
上記のように構成されたマイクロ波加熱装置において、マグネトロン14のアンテナ2から導波管内に入力されたマイクロ波は、導波管1A内を伝送して、回転アンテナ11から加熱室内へと放射される。
図18において、冷却ファン22が破線で示されているが、紙面において導波管1Aの奥側に配置されたプロペラファンである。冷却ファン22はマグネトロン14の全体を冷却するとともに、導波管1Aの第1のE面(紙面において導波管1Aの奥側に配置され、紙面と平行な面)に設けたパンチング孔23を通って導波管1Aにも風を送り、アンテナ2を直接冷却している。導波管1A内に送られた冷却空気は、第1のE面に対向する第2のE面、若しくは導波管1Aにおける一方の端面であるショート面10にパンチング孔を設けて排気される。
図18に示す導波管1Aの構成は、一般的なものであり、導波管1Aの幅a(図28参照)が85mm、アンテナ2の先端部分の直径が14mmである。アンテナ2は導波管1Aの幅方向の中央に配置されているため、アンテナ2の先端部分の外面からE面(パンチング孔が形成されている面)までの距離は35.5mm(=(85−14)/2)となり、使用するマイクロ波の波長(約120mm)の1/4(約30mm)よりも大きくなっている。
上記のように構成された従来のマイクロ波加熱装置においては、冷却条件が悪い場合には、マイクロ波発生手段であるマグネトロン14のアンテナ2と、アンテナ2から波長の1/4以内の距離に位置する導波管壁面との間で放電現象が起る危険性がある。例えば、図18に示す導波管1Aにおいては、第2のH面6の曲げ部分Pと、その曲げ位置Pに対向する第1のH面5における第1の板15の対向位置Kあたりなどでスパークが起こりやすい。このようなスパークが発生しやすい箇所は、本願発明者が実験で検証したところ、アンテナ2、特にアンテナ2の先端部分にある金属製のキャップ26から約28mmの距離の位置であった。この実験によれば、図18に示す導波管構造において、矢印27および矢印28にて示す距離が約28mmであった。矢印27が示す距離は、キャップ26から第1のH面5における対向位置Kまでの最短距離である。矢印28が示す距離は、キャップ26から第2のH面5における対向位置Pまでの最短距離である。したがって、放電現象であるスパークは、アンテナ2からマイクロ波の波長(約120mm)の1/4(約30mm)よりもやや短い距離離れた位置で発生していた。このようなスパークを回避するためには、冷却ファン22の能力を上げて冷却条件を高くするか、マグネトロン14の出力を下げるなどの方法が考えられる。しかし、このような対処方法では、コストアップに繋がり、また性能がダウンするなど別の問題が生じて、好ましい対処方法ではない。
本発明に係る実施の形態8から実施の形態13においては、導波管の省エネルギー化を図ると共に、マイクロ波発生手段であるマグネトロンのアンテナと、このアンテナからマイクロ波の波長の1/4以内の距離に位置する導波管壁面との間での放電現象の発生を抑制して、安全性が高く、設計が容易なマイクロ波加熱装置を説明する。
図19は、本発明に係る実施の形態8のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す図であり、当該電子レンジを正面側から見た断面図である。図19に示す電子レンジにおいては、被加熱物を加熱室から出し入れするための扉(図示無し)が手前側に設けられている。図20は実施の形態8のマイクロ波加熱装置における導波管近傍を示す断面図である。なお、以下の実施の形態8の説明において、前述の実施の形態のマイクロ波加熱装置と実質的に同様の機能、構成を有するものには同じ符号を付して説明する。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波発生手段であるマグネトロン31から放射されたマイクロ波が導波管32Lを伝送して、2つの回転アンテナ38,38を介して加熱室33内に放射されるよう構成されている。加熱室33の内部には食品34などを載置する載置台35が設けられている。載置台35の下側には回転アンテナ38,38が配置されるアンテナ空間36が形成されている。アンテナ空間36の底面側で導波管32LのH面となる底板50には回転アンテナ38,38の駆動軸が挿入される結合孔37,37が形成されている。各回転アンテナ38,38の駆動手段としてのモータ39,39が駆動軸を介して回転させるよう構成されている。モータ39,39の回転動作は、使用者により設定部41において設定された条件に応じて制御部40により制御されている。
以下、実施の形態8のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいて用いられる導波管32Lについて説明する。
導波管32Lは、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分の伝送方向と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分の伝送方向が、略直角となるよう構成されている。導波管32Lは、磁界面である対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、電界面である対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)とを有している。
図20に示すように、第1のH面は、マグネトロン31のアンテナ42が挿入される鉛直面43と、斜面44と、アンテナ空間36の底板50の一部とにより構成される。第2のH面は、マグネトロン31のアンテナ42の先端にあるキャップ81に対向する部分が膨らんだ凸部59を有する鉛直面52と、回転アンテナ38,38を駆動するモータ39,39が接続された水平面54とにより構成されている。
実施の形態8における導波管32Lにおいては、図20に示すように、第1の板46により第1のH面の鉛直面43および斜面44が形成されており、底板50により第1のH面の水平面47が形成されている。第1の板46において斜面44の加熱室側の端部45は底板50と平行になるように水平に折り曲げられており、その端部45が底板50に対して、例えばスポット溶接加工、カシメ加工などの接合手段により固着されるように構成されている。
一方、第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32Lの両端面であるショート面55,56を形成している。
斜面44は、導波管32Lの第1のH面におけるマグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分との間を繋ぐコーナー部分に形成されている。実施の形態8における導波管32Lは、前述の図29および図30において示した導波管1A,1Bの構成と比べると、導波管におけるコーナー部分を斜めにカットした形状であり、マイクロ波の伝送経路を短縮するものである。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における導波管32Lにおいて、第1のH面における斜面44の曲げ開始位置Y(図20参照)は、アンテナ42の中心から鉛直方向への距離mを約25mmとした。当該電子レンジにおいて使用されるマイクロ波の波長(約120mm)と比べると、距離mは約1/4波長の距離である。なお、ここで、約1/4波長とは、使用するマイクロ波の波長の1/4±20%の範囲内である。また、曲げ開始位置Yから加熱室33の底面を形成する底板50までの距離nも同様に約25mmとした。実施の形態8の導波管32Lにおいて、斜面44の加熱室33の底面に対する角度を、約45度としたが、この角度は30度から60度の範囲内が好ましい角度であった。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置における導波管32Lの具体的な寸法は、図19および図20がともに導波管32LのH面のセンターで切断した断面図であるため図示していないが、幅(図28において幅aで示す寸法)は約85mmとした。また、導波管32Lの高さ(図28において幅bで示す寸法)は、マグネトロン31のアンテナ42が設けられているマイクロ波入力部分の高さ(図20においてbLにて示す高さ)が約31mm、回転アンテナ38が設けられているマイクロ波出力部分の高さ(図20においてbSにて示す高さ)が約16.5mmとしている。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、図20に示すように、第1のH面を構成する斜面44に複数の放電防止用孔であるパンチング孔80A,80B,80Cが形成されている。最もアンテナ42に近いパンチング孔80Aとアンテナ42との間の距離が、使用するマイクロ波の波長の1/4より短い距離となるように、斜面44におけるパンチング孔80Aは配置されている。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、アンテナ42の先端部分に金属製のキャップ81が設けられている。このため、アンテナ42とパンチング孔80A,80B,80Cとの最短距離は、実質的にキャップ81からパンチング孔80Aまでの最短距離となる。実際の電子レンジにおける具体的な寸法には、キャップ81からパンチング孔80Aまでの最短距離(図20において矢印82)は27mm、キャップ81からパンチング孔80Bまでの最短距離(図20において矢印83)は29mm、キャップ81からパンチング孔80Cまでの最短距離(図20において矢印84)は32mmであった。したがって、この電子レンジにおいて、アンテナ42とパンチング孔80A,80B,80Cとの間における最短距離は27mmであり、波長の1/4(約30mm)以内である。また、パンチング孔80A,80B,80Cは、波長の1/4±10%の範囲内に形成されており、波長の1/4±20%の範囲内であれば好ましい。
上記のように構成された実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、マグネトロン31のアンテナ42の上方の位置に放電防止用孔であるパンチング孔80A,80B,80Cが形成されている。パンチング孔80A,80B,80Cは第1の板46のプレス加工時に形成されており、その加工時に生じるバリの突出方向は、導波管32Lの外方向(図20においては左上方向)を向くように導波管32Lが構成されている。
なお、図20の断面図においては、斜面44に3個のパンチング孔を図示しているが、本発明においてはこの個数に限定されるものではない。また、導波管32Lの幅方向(図20における紙面と直交する方向)においても、複数のパンチング孔が形成されている。実施の形態8の導波管32Lにおいては、図示しないが7列配置しているため、斜面44には3個×7列=21個のパンチング孔が形成されている。また、実施の形態8の導波管32Lにおいては、パンチング孔の直径を2.5mmとしたが、マイクロ波が外部に漏れない程度に小さな形状であればよく、直径10mm程度にまで大きくすることが可能である。
以上のように、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、アンテナ42から使用周波数の波長(約120mm)の1/4以内の距離にある導波管壁面の斜面44に放電防止用のパンチング孔を形成している。マイクロ波を伝送する導波管32L内において定在波が生じると考えると、アンテナ42の位置が定在波の腹(電界強度最大の位置)となり、アンテナ42から波長の1/4離れた位置が定在波の節(電界強度最小の位置)となろうとする。このため、両者の間の電位差は常に大きいためスパークが起きやすい位置関係であるにも関わらず、アンテナ42から波長の1/4以内の位置にパンチング孔を形成することにより、そのパンチング孔の位置には電界が立たないため、スパーク発生が起りにくい構成となる。この結果、実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、放電現象が抑制された安全性の高い加熱装置となり、安全性確保のための設計が容易な構成となる。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、アンテナ42の先端部分に金属製のキャップ81が設けられているが、このキャップ81から波長の1/4以内の距離に放電防止用孔を形成するだけで、特に、金属製のキャップ81と導波管壁面との間のスパークが起りにくい構成となる。したがって、実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、安全性の高い加熱装置を容易に設計することができる構成である。
上記のように、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、マグネトロン31のアンテナ42よりも上方の位置に放電防止用孔が配置された構成である。一般に、放電現象のスパークが発生する前にその部分に電界が集中して温度上昇することが考えられ、その温度上昇を防ぐことによりスパークの発生を抑制できるものである。したがって、実施の形態8のマイクロ波加熱装置の構成においては、アンテナ42の温度上昇による導波管内の熱が放電防止用孔から外部へ放出されるため、導波管内の熱が放射アンテナより上方にこもることがなく、導波管内部の局部が異常に高温度となることを防ぎ、放電現象が発生しにくい構成となる。この結果、実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、放電現象の発生が抑制されており、安全性が高く、省エネルギー化が図られた加熱装置となる。
実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔であるパンチング孔を形成するときに生じるバリの突出方向を導波管32Lの外向き(図20における左上方向)となるように構成している。一般に、電界はエッジに集中しやすいが、パンチング孔を形成するときにその孔の外周に生じるバリによるエッジが導波管32Lの外側にしかないため、導波管内においてパンチング孔の近傍で電界が集中することはない。したがって、この点においても、実施の形態8のマイクロ波加熱装置は、放電現象の発生が抑制された構成となり、設計が容易な安全性の高い加熱装置となる。
なお、実施の形態8のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔は、複数配列した例で説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、斜面44に1つの孔を形成した場合でも、放電現象抑制の効果は期待できる。ただし、導波管32Lから外部への電波漏れを防止するためには、パンチング孔の直径をあまり大きくすることは問題である。したがって、複数のパンチング孔を有する列を複数列並べたほうが広範囲にわたって導波管内の熱を効果的に放出することができる効果を有する構成となる。
例えば、1個のパンチング孔の直径については、導波管壁面の厚みが1mm以下の場合、最大でも直径10mm以下とした方が好ましい。ただし、バリが外向きに形成されている場合には、実質的に板厚が厚くした場合と同じ効果が得られるため、バリの突出高さが5mm程度の場合には、パンチング孔の直径を最大20mm程度大きくすることが可能である。実施の形態8においては、直径2.5mmの円形のパンチング孔を形成した例で説明したが、本発明においてはパンチング孔の形状を円形に限定する必要はなく、四角孔形状、スリットのような細長い孔形状でもよく、熱気を通す貫通孔でさえあればよく、形状を限定するものではない。
実施の形態8においては、斜面44に形成した放電防止用孔をパンチング孔と表現しているが、孔の形成工程を限定するものではない。このパンチング孔には、孔の無い板金にプレス加工を施して機械的に孔を作成するものだけでなく、導波管壁面に形成できる孔であれば、どのような工法で形成された孔であっても同様の効果が得られ、本発明に含まれるものである。
(実施の形態9)
図21は、本発明に係る実施の形態9のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管近傍を示す断面図である。実施の形態9のマイクロ波加熱装置は、回転アンテナ38が1つの場合であり、導波管32Mにおける伝送距離が短い構成である。実施の形態9のマイクロ波加熱装置においては、マグネトロン31のアンテナ42が設けられている第1のH面の鉛直面43に複数の放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85Cが形成されている。また、第1のH面に対向する第2のH面における屈曲部分である曲げ位置Pに放電防止用孔であるパンチング孔86が形成されている。
なお、実施の形態9のマイクロ波加熱装置において、前述の実施の形態における構成要素と実質的に同じ機能を有するものには同じ符号を付して説明する。以下、実施の形態9のマイクロ波加熱装置の詳細構成について説明する。
図21においては、冷却ファン22を破線で示しているが、この冷却ファン22は紙面において導波管32Mの奥側に配置されたプロペラファンである。冷却ファン22はマグネトロン31の全体を冷却するとともに、導波管32Mの第1のE面(図21の紙面において導波管32Mの奥側に配置され、紙面と平行な面)に設けたパンチング孔23を通って導波管32M内にも冷却空気を送り、アンテナ42およびそのキャップ81を直接冷却する。導波管32M内に送られた冷却空気は、第1のE面に対向する第2のE面(図21の紙面において導波管32Mの手前側にあり、紙面と平行な面)に形成したパンチング孔において排気される。また、実施の形態9のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Mにおける第2のH面の屈曲部分である曲げ位置Pにも通気孔としてのパンチング孔86が形成されており、冷却後の空気が排気される構成である。なお、導波管32Mにおけるマイクロ波入力部分の端面であるショート面55にパンチング孔を設けて冷却空気を排気する構成としてもよい。
図21に示すように、実施の形態9のマイクロ波加熱装置における導波管32Mにおいて、パンチング孔85A,85B,85Cはマグネトロン31が接続されている第1の板46の鉛直面43に形成されている。実施の形態9のマイクロ波加熱装置における導波管32Mにおける具体的な寸法は以下の通りである。
マグネトロン31のアンテナ42の先端に設けられたキャップ81から最も近いパンチング孔85Aまでの距離は24mmであった。キャップ81からパンチング孔85Bまでの距離は26mmであり、キャップ81からパンチング孔85Cまでの距離は28mmであった。このように、キャップ81からパンチング孔85A,85B,85Cまでの距離は、いずれの場合にも、波長(約120mm)の1/4以内の距離であった。また、第2のH面に形成したパンチング孔86は、第2のH面における曲げ位置Pに形成されており、キャップ81からパンチング孔86までの距離は28mmであり、波長(約120mm)の1/4以内の距離にある。
実施の形態9のマイクロ波加熱装置における導波管32Mにおいては、冷却ファン22による冷却空気がE面に形成された多数のパンチング孔23から導波管32M内に入る構成である。しかし、導波管32Mの第1のH面における鉛直面43に形成されたパンチング孔85A,85B,85Cは、マグネトロン31により塞がれているため、これらのパンチング孔85A,85B,85Cを介して冷却空気が出入りすることはない。
第1のH面における鉛直面43において、アンテナ42から波長の1/4以内の距離に複数の放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85Cを形成することにより、第1のH面におけるアンテナ42から波長の1/4以内にある鉛直面43が凹凸形状となり、この領域において、より一層放電現象が起りにくい構成となる。したがって、実施の形態9のマイクロ波加熱装置は、安全性が高く、設計が容易な加熱装置となる。
(実施の形態10)
図22は、本発明に係る実施の形態10のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す正面断面図である。図22に示す電子レンジにおいては、被加熱物を加熱室から出し入れするための扉(図示無し)が手前側に設けられている。図23は実施の形態10のマイクロ波加熱装置における導波管近傍を示す断面図である。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、前述の図19および図20を用いて説明した実施の形態8のマイクロ波加熱装置の構成と実質的に同じ構成を有している。実施の形態10のマイクロ波加熱装置において、図22および図23に示すように、第1のH面を構成する斜面に複数の放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cが形成されており、前述の実施の形態8の構成と実質的に同じ構成である。実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、パンチング孔87A,87B,87Cを形成する位置に関する観点が実施の形態8のマイクロ波加熱装置と異なっている。したがって、実施の形態10においては、前述の実施の形態8のマイクロ波加熱装置において用いた構成要素と実質的に同様の機能を有するものには同じ符号を付し、特徴的な部分について詳細に説明する。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、マグネトロン31から放射されたマイクロ波が導波管32Nを伝送して、2つの回転アンテナ38,38を介して加熱室33内に放射されるよう構成されている。加熱室33の内部には食品34などを載置する載置台35が設けられており、載置台35の下側には回転アンテナ38,38が配置されるアンテナ空間36が形成されている。アンテナ空間36の底面側で導波管32NのH面となる底板50の水平面47に回転アンテナ38,38の駆動軸が挿入される結合孔37,37が形成されている。各回転アンテナ38,38の駆動手段としてのモータ39,39が駆動軸を介して回転させるよう構成されている。モータ39,39の回転動作は、使用者により設定部41において設定された条件に応じて制御部40により制御されている。
以下、実施の形態10のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおいて用いられる導波管32Nについて説明する。
導波管32Nは、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分の伝送方向と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分の伝送方向が、略直角となるよう構成されている。導波管32Nは、磁界面である対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、電界面である対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)とを有している。
図23に示すように、第1のH面は、マグネトロン31のアンテナ42が挿入される鉛直面43と、斜面44と、加熱室33のアンテナ空間36の底板50の一部とにより構成される。第2のH面は、マグネトロン31のアンテナ42の先端に対向する部分が膨らんだ凸部59を有する鉛直面52と、回転アンテナ38を駆動するモータ39が接続された水平面54とにより構成される。
実施の形態10における導波管32Nにおいては、図23に示すように、第1の板46により第1のH面の鉛直面43および斜面44が形成されており、底板50により第1のH面の水平面47が形成されている。
一方、第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32Nの両端面であるショート面55,56を形成している。
斜面44は、導波管32Nの第1のH面におけるマグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分との間を繋ぐコーナー部分に形成されている。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置における導波管32Nにおいて、第1のH面における斜面44の曲げ開始位置Yは、アンテナ42の中心から鉛直方向への距離mを約25mmとした位置である。当該電子レンジにおいて使用されるマイクロ波の波長(約120mm)と比べると、距離mは約1/4波長の距離である。ここで、約1/4波長とは、使用するマイクロ波の波長の1/4±20%の範囲内である。また、曲げ開始位置Yから加熱室33の底面を形成する底板50までの距離nも同様に約25mmとした。なお、実施の形態10の導波管32Nにおいて、斜面44の加熱室33の底面に対する角度を、45度としたが、この角度は30度から60度の範囲内であればよい。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置における導波管32Nの具体的な寸法は、幅(図28において幅aで示す寸法)は約85mmとした。また、導波管32Nの高さ(図28において幅bで示す寸法)は、マグネトロン31のアンテナ42が設けられているマイクロ波入力部分の高さ(図23においてbLにて示す高さ)が約31mm、回転アンテナ38が設けられているマイクロ波出力部分の高さ(図23においてbSにて示す高さ)が約16.5mmとしている。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置において、導波管32Nにおけるマイクロ波入力部分の伝送方向とマイクロ波出力部分の伝送方向が直交する構成であり、そのコーナー部分に放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cが形成されている。実施の形態10のマイクロ波加熱装置において、導波管32Nのコーナー部分の定義は以下の通りである。
導波管32Nにおけるコーナー部分は、第1のH面を構成する鉛直面43と斜面44との間の屈曲部分である第1の曲げ位置Yを中心として半径がマイクロ波の波長(約120mm)の1/4の長さの円で囲まれた第1領域内(図23において破線円Eで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。また、導波管32Nにおけるコーナー部分には、第1のH面を構成する斜面44と底板50に接合される端部45と間の屈曲部分である第2の曲げ位置Zを中心として半径がマイクロ波の波長(約120mm)の1/4の長さの円で囲まれた第2領域内(図23において破線円Fで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。さらに、導波管32Nにおけるコーナー部分には、第2のH面を構成する鉛直面52と水平面54と間の屈曲部分である第3の曲げ位置Pを中心として半径がマイクロ波の波長(約120mm)の1/4の長さの円で囲まれた第3領域内(図23において破線円Gで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。そして、導波管32Nにおけるコーナー部分には、第2のH面における第3の曲げ位置Pから対向する斜面44におろした垂線と交差した位置Qを中心として半径がマイクロ波の波長(約120mm)の1/4の長さの円で囲まれた第4領域内(図23において破線円Hで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。
上記のように定義された導波管32Nにおけるコーナー部分の領域内に、実施の形態10における放電防止用孔の全てのパンチング孔87A,87B,87Cが配置されている。特に、実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、マグネトロン31のアンテナ42が設けられ、且つ回転アンテナ38のための結合孔37が形成された第1のH面において、その第1のH面を構成する斜面44に放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cが形成されている。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、パンチング孔を形成するときに生じるバリの突出方向を導波管32Nの外向き(図23における左上方向)となるように構成している。したがって、実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、放電現象の発生が抑制された構成となり、設計が容易な安全性の高い加熱装置となる。
なお、図23の断面図においては、斜面44に3個のパンチング孔87A,87B,87Cを図示しているが、本発明はこの個数に限定されるものではない。また、導波管32Nの幅方向(図23における紙面と直交する方向)においても、複数のパンチング孔が形成されている。実施の形態10の導波管32Nにおいては、図示しないが7列配置しているため、斜面44には3個×7列=21個のパンチング孔が形成されている。また、実施の形態10の導波管32Nにおいては、パンチング孔の直径を2.5mmとしたが、マイクロ波が外部に漏れない程度に小さな形状であれば良く、直径10mm程度にまで大きくすることが可能である。
以上のように、実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、屈曲した導波管32Nにおいて、そのコーナー部分に放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cを配置した構成である。実施の形態10における導波管32Nの構成においては、コーナー部分、特に第2のH面における第3の曲げ位置Pと、その対向位置(例えば、図23において符号Qで示す位置)との間に電界が集中して、スパークが起きやすい構造である。しかし、実施の形態10における導波管32Nは、そのような構造を有するにも関わらず、コーナー部分に複数の放電防止用孔が形成されているため、その孔部分には電界が立たないため、スパークが起りにくい構造となっている。したがって、実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、設計が容易にも関わらず高い安全性を確保することができる優れた構成を有する。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔が形成されるコーナー部分が、前述のように、曲げ位置Y,Z,Pおよび対向位置Qをそれぞれ中心として半径がマイクロ波の波長の1/4の長さの円で囲まれた領域であり、これらの領域内の放電防止用孔が形成されている。実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、スパークが起こりやすい導波管内壁のコーナー部分に放電防止用孔が形成されており、孔が形成されている部分には電界が立たないため、放電現象が発生しにくくなり、実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、安全性の高い加熱装置となる。
実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Nが、対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)を有しており、屈曲した導波管32Nにおいて第1のH面が外側部分となり、第2のH面が内側部分となるように折り曲げられた構成である。このように構成された屈曲した導波管32Nにおいては、内側部分となる第2のH面におけるコーナー部分よりも外側部分となる第1のH面におけるコーナー部分の方が、パンチング孔を開ける場所の選択の自由があり、設計がより容易となるという効果を有する。
さらに、このように構成された屈曲した導波管32Nにおいて、外側部分となる第1のH面に放電防止用孔を形成した構成である。TE10モードでマイクロ波を伝送する導波管において、第1のH面と第2のH面の間にしか電界は立たない。実施の形態10のマイクロ波加熱装置の構成においては、実際に電界が立つH面に放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cが形成されており、孔部分には電界が立たないため、スパークが起りにくい構成である。したがって、実施の形態10のマイクロ波加熱装置は、安全性確保のための設計が容易な構成である。
また、実施の形態10のマイクロ波加熱装置において、第1のH面はコーナー部分において伝送経路を短縮する斜面44を有しており、斜面44に放電防止用孔を形成した構成である。このように構成されたマイクロ波加熱装置においては、第1のH面の斜面44と第2のH面との間の距離が近づくため、スパークが発生しやすい構成となりやすい。しかし、実施の形態10における導波管32Nにおいては、斜面44に放電防止用孔を形成することにより、孔部分には電界が立たないため、スパークが起りにくくなり、安全性確保のための設計を容易にすることができる。
さらに、放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cのバリ方向を導波管32Nの外向き(図23の左上方向)に構成している。このため、導波管32N内部において電界が集中することを抑制しており、スパークを起こしにくい構造となっている。
なお、実施の形態10のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔としてのパンチング孔が、複数配列した例で説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、斜面44に1つの孔を形成した場合でも、効果が期待できる。ただし、導波管32Nから外部への電波漏れを防止するためには、パンチング孔の直径をあまり大きい場合には好ましくない。したがって、複数のパンチング孔を有する列を複数列並べたほうが広範囲にわたって導波管内の熱を効果的に放出することができる効果を有する構成となる。
実施の形態10においては、斜面44に形成した孔をパンチング孔と表現しているが、孔の形成工程を限定するものではない。このパンチング孔には、孔の無い板金にプレス加工を施して機械的に孔を作成するものだけでなく、導波管壁面に形成できる孔であれば、どのような工法で形成された孔であっても同様の効果が得られ、本発明に含まれるものである。
(実施の形態11)
図24は、本発明に係る実施の形態11のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管近傍を示す断面図である。実施の形態11のマイクロ波加熱装置は、回転アンテナ38が1つの場合であり、導波管32Pにおける伝送距離が短い構成である。
実施の形態11のマイクロ波加熱装置は、前述の図21を用いて説明した実施の形態9のマイクロ波加熱装置の構成と実質的に同じ構成を有している。実施の形態11のマイクロ波加熱装置において、図24に示すように、第1のH面を構成する鉛直面43に複数の放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85Cが形成されており、また第2のH面における曲げ位置Pに放電防止用孔であるパンチング孔86が形成されている。このように実施の形態11のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態9の構成と実質的に同じ構成である。実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、パンチング孔85A,85B,85Cを形成する位置に関する観点が実施の形態9のマイクロ波加熱装置と異なっている。したがって、実施の形態11においては、前述の実施の形態9のマイクロ波加熱装置において用いた構成要素と実質的に同様の機能を有するものには同じ符号を付し、特徴的な部分について詳細に説明する。
実施の形態11のマイクロ波加熱装置における特徴は、導波管32Pが直角に曲げられた構成において、コーナー部分に放電防止用のパンチング孔85A,85B,85C,86を形成した点である。実施の形態11のマイクロ波加熱装置における導波管32Pのコーナー部分の定義は以下の通りである。
導波管32Pにおけるコーナー部分は、第1のH面を構成する鉛直面43と斜面44との間の屈曲部分である第1の曲げ位置Yを中心として半径がマイクロ波の波長の1/4の長さの円で囲まれた第1領域内(図24において破線円Eで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。また、導波管32Pにおけるコーナー部分には、第1のH面を構成する斜面44と底板50に接合される端部45と間の屈曲部分である第2の曲げ位置Zを中心として半径がマイクロ波の波長の1/4の長さの円で囲まれた第2領域内(図24において破線円Fで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。さらに、導波管32Pにおけるコーナー部分には、第2のH面を構成する鉛直面52と水平面54と間の屈曲部分である第3の曲げ位置Pを中心として半径がマイクロ波の波長の1/4の長さの円で囲まれた第3領域内(図24において破線円Gで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。
そして、導波管32Pにおけるコーナー部分には、第2のH面における第3の曲げ位置Pから対向する第1のH面における水平面47におろした垂線と交差した対向位置Jを中心として半径がマイクロ波の波長の1/4の長さの円で囲まれた第4領域内(図24において破線円Lで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。さらに、導波管32Pにおけるコーナー部分には、第2のH面における第3の曲げ位置Pから対向する第1のH面における鉛直面43におろした垂線と交差した対向位置Kを中心として半径がマイクロ波の波長の1/4の長さの円で囲まれた第5領域内(図24において破線円Mで示す領域内)に存在する導波管壁面を含む。
上記のように定義された導波管32Pにおけるコーナー部分の領域内に、実施の形態11における放電防止用孔の全てのパンチング孔85A,85B,85Cが配置されている。特に、実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、マグネトロン31のアンテナ42が設けられた第1のH面の鉛直面43に放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85Cが形成されている。
実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔が、第2のH面の第3の曲げ位置Pを中心とした波長の1/4の長さの半径を持つ円で囲まれた第3領域。および第1のH面における鉛直面43にある対向位置Kを中心とした波長の1/4の長さの半径を持つ円で囲まれた第5領域の範囲内に形成されており、全てコーナー部分内に配置されている。上記のように、実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、放電現象が起こりやすい箇所からマイクロ波の波長の1/4の長さの半径を持つ領域内に、放電が起こりにくい孔部分である放電防止用孔が形成されている。特に、実施の形態11のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Pにおける第1のH面および第2のH面の両方に放電防止用孔が形成されているため、より一層放電現象が抑制されており、安全確保のための設計を容易なものとしている。
(実施の形態12)
図25は、本発明に係る実施の形態12のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す正面断面図である。図25に示す電子レンジにおいては、被加熱物を加熱室から出し入れするための扉(図示無し)が手前側に設けられている。図26は実施の形態12のマイクロ波加熱装置における導波管近傍を示す断面図である。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、前述の図19および図20を用いて説明した実施の形態8のマイクロ波加熱装置の構成と実質的に同じ構成を有している。実施の形態12のマイクロ波加熱装置において、図25および図26に示すように、第1のH面を構成する斜面に複数の放電防止用孔であるパンチング孔87A,87B,87Cが形成されており、前述の実施の形態8の構成と実質的に同じ構成である。実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、パンチング孔87A,87B,87Cを形成する位置に関する観点が実施の形態8のマイクロ波加熱装置と異なっている。実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、パンチング孔87A,87B,87Cを形成する位置を第1のH面の斜面に特定せず、少なくとも一方のH面に形成するという観点において異なっている。したがって、実施の形態12においては、前述の実施の形態8のマイクロ波加熱装置において用いた構成要素と実質的に同様の機能を有するものには同じ符号を付し、特徴的な部分について詳細に説明する。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管32Qについて説明する。
導波管32Qは、伝送方向に直交する断面が長方形であり、マグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分の伝送方向と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分の伝送方向が、略直角となるよう構成されている。導波管32Qは、磁界面である対向する一対のH面(第1のH面、第2のH面)と、電界面である対向する一対のE面(第1のE面、第2のE面)とを有している。
図26に示すように、第1のH面は、マグネトロン31のアンテナ42が挿入される鉛直面43と、斜面44と、加熱室33のアンテナ空間36の底板50の一部とにより構成される。第2のH面は、マグネトロン31のアンテナ42の先端に対向する部分が膨らんだ凸部59を有する鉛直面52と、回転アンテナ38を駆動するモータ39が接続された水平面54とにより構成される。
実施の形態12における導波管32Qにおいては、図26に示すように、第1の板46により第1のH面の鉛直面43および斜面44が形成されており、底板50により第1のH面の水平面47が形成されている。第1の板46において斜面44の加熱室側の端部45は底板50と平行になるように水平に折り曲げられており、その端部45が底板50に対して、例えばスポット溶接加工、カシメ加工などの固定手段により固着されるように構成されている。
一方、第2のH面は、第2の板51を折り曲げて形成されている。また、第2の板51は、折り曲げることにより第2のH面の両側となるE面、および導波管32Qの両端面であるショート面55,56を形成している。
斜面44は、導波管32Qの第1のH面におけるマグネトロン31のアンテナ42が設けられたマイクロ波入力部分と、回転アンテナ38,38が設けられたマイクロ波出力部分との間を繋ぐコーナー部分に形成されている。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置における導波管32Qにおいて、第1のH面における斜面44の曲げ開始位置Yは、アンテナ42の中心から鉛直方向への距離mを約25mmとした。当該電子レンジにおいて使用されるマイクロ波の波長(約120mm)と比べると、距離mは約1/4波長の距離である。また、曲げ開始位置Yから加熱室33の底面を形成する底板50までの距離nも同様に約25mmとした。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置における導波管32Qの具体的な寸法は、幅(図28において幅aで示す寸法)は約85mmとした。また、導波管32Qの高さ(図28において幅bで示す寸法)は、マグネトロン31のアンテナ42が設けられているマイクロ波入力部分の高さ(図26においてbLにて示す高さ)が約31mm、回転アンテナ38が設けられているマイクロ波出力部分の高さ(図26においてbSにて示す高さ)が約16.5mmとしている。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Qにおけるマイクロ波入力部分の伝送方向とマイクロ波出力部分の伝送方向が直交する構成であり、導波管32Qは対向する2つのH面(磁界面)、およびH面に直交し、対向する2つのE面(電界面)を有している。屈曲した導波管32Qにおいては、H面において折れ曲がっている。また、実施の形態12における導波管32Qにおいては、対向する2つのH面における一方のH面にマイクロは発生手段からのマイクロ波が入射されるマイクロ波入力手段と、加熱室33へマイクロ波を放射するマイクロ波出力手段が設けられている。即ち、実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Qの第1のH面にマグネトロン31のアンテナ42が設けられ、且つ導波管32Qを伝送したマイクロ波を加熱室33に放射する回転アンテナ38が設けられている。その第1のH面において、アンテナ42より上方にある斜面44に放電防止用のパンチング孔87A,87B,87Cが形成されている。
なお、図26の断面図においては、斜面44に3個のパンチング孔87A,87B,87Cを図示しているが、この個数に限定されるものではない。また、導波管32Qの幅方向(図26における紙面と直交する方向)においても、複数のパンチング孔が形成されている。実施の形態12の導波管32Qにおいては、図示しないが7列配置しているため、斜面44には3個×7列=21個のパンチング孔が形成されている。また、実施の形態12の導波管32Qにおいては、パンチング孔の直径を2.5mmとしたが、マイクロ波が外部に漏れない程度に小さな形状であればよく、直径10mm程度にまで大きくすることが可能である。
以上のように構成された、本発明に係る実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、対向する2つのH面の少なくとも一方のH面(第1のH面)に放電防止用孔を形成することにより、TE10モードにおいてはアンテナ42と導波管32Qの第1のH面と第2のH面との間に電界が立つのでスパークが起きやすい構成になるにも関わらず、放電現象の発生が抑制された構成となる。これは、孔部分には電界が立たないため、放電防止用孔を形成することにより放電現象が起りにくい構成となるためである。このように、マイクロ波入力手段であるアンテナ42の位置より上方の位置であって、少なくとも一方のH面に放電防止用孔を形成することにより、放電現象の発生が抑制された構成となり、安全性の高い加熱装置となる。以上のように、実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波入力手段の位置より上方の位置において、少なくとも一方のH面に放電防止用孔を形成するという技術的思想により、安全性確保が確保された導波管を構築することができ、設計が容易な構造を有するものである。
また、実施の形態12のマイクロ波加熱装置において、導波管32Qには開口部88が形成されており、この開口部88にマグネトロン31のアンテナ42が挿入配置される構成である。開口部88は、対向する2つのH面における一方のH面である、(第1のH面)に形成されており、この第1のH面に放電防止用孔が形成されている。このように開口部88を有する第1のH面の領域はアンテナ42が挿入配置されるマイクロ波入力部分側の領域であるため、アンテナ42からマイクロ波が放射されており、確実に強い電界が生じている領域である。この領域に放電防止用孔を形成することによって、この領域において電界が立ちにくくなる。
実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔であるパンチング孔を形成するときに生じるバリの突出方向を導波管32Qの外向き(図26における左上方向)となるように構成している。一般に、電界はエッジに集中しやすいが、パンチング孔を形成するときにその孔の外周に生じるバリによるエッジが導波管32Qの外側にしかないため、導波管内においてパンチング孔の近傍で電界が集中することはない。したがって、実施の形態12のマイクロ波加熱装置は、放電現象の発生が抑制された構成となり、設計が容易な安全性の高い加熱装置となる。
なお、実施の形態12のマイクロ波加熱装置においては、放電防止用孔を複数配列した例で説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、アンテナ42の上方の位置で少なくとも一方のH面に1つの孔を形成した場合でも、放電現象の抑制の効果は期待できる。ただし、導波管32Qから外部への電波漏れを防止するためには、パンチング孔の直径をあまり大きくすることは好ましくない。したがって、複数のパンチング孔を有する列を複数列並べたほうが広範囲にわたって導波管内の熱を効果的に放出することができる効果を有する構成となる。
実施の形態12においては、第1のH面に形成した孔をパンチング孔と表現しているが、孔の作成工程を限定するものではない。このパンチング孔には、孔の無い板金にプレス加工を施して機械的に孔を作成するものだけでなく、導波管壁面に形成できる孔であれば、どのような工法で形成された孔であっても同様の効果が得られ、本発明に含まれるものである。
(実施の形態13)
図27は、本発明に係る実施の形態13のマイクロ波加熱装置である電子レンジにおける導波管近傍を示す断面図である。実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、回転アンテナ38が1つの場合であり、導波管32Rにおける伝送距離が短い構成である。
実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、前述の図21を用いて説明した実施の形態9のマイクロ波加熱装置の構成と実質的に同じ構成を有している。実施の形態13のマイクロ波加熱装置において、図27に示すように、第1のH面を構成する鉛直面43に複数の放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85Cが形成されており、また第2のH面における曲げ位置Pに放電防止用孔であるパンチング孔86が形成されている。このように実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、前述の実施の形態9の構成と実質的に同じ構成である。実施の形態13のマイクロ波加熱装置においては、パンチング孔85A,85B,85Cを形成する位置に関する観点が実施の形態9のマイクロ波加熱装置と異なっている。したがって、実施の形態13においては、前述の実施の形態9のマイクロ波加熱装置において用いた構成要素と実質的に同様の機能を有するものには同じ符号を付し、特徴的な部分について詳細に説明する。
実施の形態13のマイクロ波加熱装置における導波管32Rにおいては、マグネトロン31のアンテナ42が設けられている第1のH面の鉛直面43に複数の放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85Cが形成されている。そして、導波管32Rにおいて、パンチング孔85A,85B,85Cはアンテナ42より上方の位置に形成されている。また、第1のH面に対向する第2のH面における曲げ位置P、即ち鉛直面52と水平面54と交点位置にパンチング孔86が形成されている。
図27において、破線で示す冷却ファン22は紙面において導波管32Rの奥側に配置されたプロペラファンである。冷却ファン22はマグネトロン31の全体を冷却するとともに、導波管32Rの第1のE面(図27の紙面において導波管32Rの奥側に配置され、紙面と平行な面)に設けたパンチング孔23を通って導波管32R内にも冷却空気を送り、アンテナ42およびそのキャップ81を直接冷却する。導波管32R内に送られた冷却空気は、第1のE面に対向する第2のE面(図27の紙面において導波管32Rの手前側にあり、紙面と平行な面)に形成したパンチング孔(図示無し)において排気される。
実施の形態13のマイクロ波加熱装置においては、前述のように導波管32Rにおける第2のH面の屈曲部分にパンチング孔86が形成されており、冷却後の空気が排気される構成である。
図27に示すように、実施の形態13のマイクロ波加熱装置における導波管32Rにおいて、パンチング孔85A,85B,85Cはマグネトロン31が接続されている第1の板46の鉛直面43に形成され、その鉛直面43においてアンテナ42より上方の位置に形成されている。
実施の形態13のマイクロ波加熱装置における導波管32Rにおいては、E面に形成された多数のパンチング孔23から冷却ファン22による冷却空気が導波管32R内に入る構成である。しかし、導波管32Rの第1のH面における鉛直面43に形成されたパンチング孔85A,85B,85Cは、マグネトロン31により塞がれているため、これらのパンチング孔85A,85B,85Cを介して冷却空気が出入りすることはない。
上記のように、実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、第1のH面を構成する第1の板46と、第2のH面を構成する第2の板体51の両方に、放電防止用孔であるパンチング孔85A,85B,85C,86が形成されているため、もともとTE10モードにおいてはアンテナ42と導波管32Rの第1のH面と第2のH面の間に電界が立つのでスパークが起きやすい構成になるにも関わらず、放電現象の発生が抑制された構成となる。これは、孔部分には電界が立たないため、放電防止用孔を形成することにより放電現象が起りにくい構成となるためである。このように、導波管32Rにおける両方のH面でスパークが起りにくい構造となり、安全性の高い加熱装置となる。以上のように、実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波入力手段の位置より上方の位置において、H面における鉛直面に放電防止用孔を形成するという技術的思想により、安全性確保が確保された信頼性の高い導波管を構築することができ、設計が容易な構造を有するものである。
実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、対向する2つのE面にも放電防止用のパンチング孔23を複数有する構成としている。これらのパンチング孔23は、放電防止用のパンチング孔85A,85B,85C,86と同じようにスパークの発生を防止することが目的であっても、パンチング孔85A,85B,85C,86のように電界が立たなくするものではない。E面に形成されたパンチング孔23は、冷却ファン22からの冷却空気を導波管32Rの内部に送るものである。したがって、パンチング孔23により、冷却空気が導波管内部に流れて、導波管内部の温度上昇を防止し、放電現象の発生を抑制するものである。このように、実施の形態13のマイクロ波加熱装置は安全性の高い加熱装置を容易に設計することができる構造を有する。
具体的には、冷却ファン22からの冷却空気は、導波管32Rの第1のE面に設けたパンチング孔23から導波管32R内に送られ、アンテナ42やH面などの内壁面を直接冷却したのち、第2のE面に形成されたパンチング孔(図示無し)やパンチング孔86を介して導波管32Rの外部へ排出される。
なお、実施の形態13のマイクロ波加熱装置においては、対向する2つのE面の両方にパンチング孔を形成して冷却空気を流すように構成したが、設計上の都合により一方のE面に形成されたパンチング孔から入った冷却空気を、第2のH面に形成したパンチング孔により排気するように構成しても、同様の効果を有する。
また、実施の形態13のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Rにおけるマイクロ波発生手段が設けられたマイクロ波入力部分側の端面であるショート面55に放電防止孔を形成してもよい。このように構成すれば、導波管32Rにおけるショート面で放電防止用孔を介して導波管内部に冷却空気がスムーズに流れる構成となる。このように構成された実施の形態13のマイクロ波加熱装置は、導波管内部の温度上昇を抑制することができ、放電現象が起こりにくい構造とすることができる、より高い安全性を確保することができる。
さらに、実施の形態13のマイクロ波加熱装置においては、導波管32Rにおける加熱室側の端面であるショート面56にも放電防止用孔を形成することにより、このショート面56の放電防止用孔を介して導波管内部の冷却空気の流れがスムーズとなる。この結果、温度上昇を抑制して、放電現象が起こりにくい構造とすることができ、より安全性の高い加熱装置とすることができる。