JP5628284B2 - 混合希土類化合物およびモリブデン化合物からの緑色着色料の製造およびその表面コーティング方法 - Google Patents

混合希土類化合物およびモリブデン化合物からの緑色着色料の製造およびその表面コーティング方法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、混合希土類化合物およびモリブデン化合物からの一般式RE2MoO6(REは混合希土類金属であり、Moはモリブデン金属である)を有する新たな無機緑色着色剤およびその表面コーティング方法に関する。57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の炭酸塩から選択され、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合希土類化合物、ならびにモリブデン酸アンモニウム。より詳細には、本発明は、混合希土類化合物から緑色無機緑色着色剤を製造するための製品および方法であって、その中に存在する個々の希土類元素を分離することなく、それにより非常に費用効果の高い緑色着色剤を製造する製品および方法を提供する。本発明は、着色剤産業において、表面コーティング用途のための、環境にやさしく、非常に費用効果が高く、経済的に実施可能な緑色着色剤を製造する潜在用途を有する。
発明の背景
無機着色剤は、種々の用途、たとえば塗料、プラスチック、セラミックス、ゴム、エナメルおよびガラスで広く用いられている。これらの顔料は、色特性を与え、コーティングを可視光さらには紫外光および赤外光の影響から保護することができる。このような用途のために、化学的および熱的安定性、分散性、色度、着色力および染色力またはマスキング力などのそれらの性質が、好適な着色剤の選択において考慮に入れるべき特に重要な判断基準である。残念ながら、このような用途に好適であり、今日工業規模で実際に用いられている無機顔料は、一般に、毒性金属(カドミウム、鉛、クロムおよびコバルト)を含んでいる("High Performances Pigments"、H. M. Smith, Wiley-VCH, Weinheim編、2002年を参照されたい)。赤色および黄色の無機顔料のカラースケールは、カドミウムスルホセレナイドによって完全に網羅される。群青色顔料に加えて青色および緑色の範囲では、コバルトおよびクロム顔料が主に提供される。上記顔料の使用は、非常に高いと広く知られているそれらの毒性のせいで、多くの国において法律によりますます厳しく規制されるようになってきている、またはさらには禁止されている。したがって、上述の利点および欠点のない代わりの無機顔料について、重大な経済的および産業的必要性が存在し続けている。
希土類元素は、環境学的に制約を受けている着色剤の多くに代わる環境的に安全な代替品の開発に大きな機会を与える。希土類は、部分的に埋まったf軌道というそれらの独特な電子配置のおかげで、珍しい磁気的および光学的性質を示す。希土類系材料の非常に強い呈色は、ドナーとアクセプターとの間の電荷移動相互作用から主に生じることがあり、金属イオンがアクセプターの役割を一般に果たす。混合酸化物系中の希土類元素をベースにしたドーパントは、エネルギーギャップの操作ならびに伝導帯および価電子帯における非局在化現象によって色応答を調整する機会を与える。したがって、この現象は、具体的な用途のための着色剤の設計範囲を提供する。
しかしながら、希土類の分離は、それらの類似した物理化学的性質の点で、分離科学の分野における大変な課題を与える。これは、純粋な個々の希土類を得るための高いコストをもたらすこととなる。したがって、本発明は、混合希土類化合物の使用のおかげで経済的な緑色着色剤を製造する選択肢を希土類産業に提供する。
純粋な希土類酸化物/化合物は、顔料産業において、広範な着色剤の製造に広く用いられてきた。2003年6月24日付けの米国特許第6,582,814号は、従来の顔料組成物に優る種々の利点を有する、プラスチック、塗料、コーティング、ガラスエナメルおよび他の材料での使用のための、一般式(RExTm)Oy(ここでREは希土類であり、Tmは遷移金属であり、xは0.08ないし12の範囲にあり、yはx+1ないし2x+2の範囲にある)を有する希土類−遷移金属酸化物顔料の新規の合成方法を記載している。しかしながら、この方法では、毒性の金属、たとえばクロムを使用して、緑色顔料を得ている。
熱的/化学的に安定で非毒性の無機顔料/着色剤であって、特徴的に緑色でありかつ広範な材料および基体、たとえばプラスチック、セラミックスなどの着色によく適し、式Y2BaCuO5、Sm2BaCuO5およびYb2BaCuO5のうちの少なくとも1種の混合酸化物を含む無機顔料/着色剤が、2001年9月4日の米国特許第6,284,033号に報告されている。
上述の用途でのCa−Nd/Y−S系に基づく新たな環境にやさしい緑色顔料が、それらに続けて、プラスチックおよび塗料への用途について、他のところで十分に実証されてきた(M.D. Hernandez-Alonsoa, A. Gomez-Herrerob, A.R. Landa-Canovas, A. Duran, F. Fernandez-Martinez, L.C. Otero-Diaz, J. Alloys Compounds. 2001年, 323-324, 297-302; E. U. Garrote, F. F. Martinez, A. R. L. Canovas, L. C. O. Diaz, J. Alloys Compounds. 2006年, 418, 86-89; 米国特許第5,501,733号(1996年3月26日)を参照できる)。
従来技術において今まで報告されてきた緑色無機顔料の製造方法のほとんどは、純粋な希土類化合物を利用する。しかしながら、最近Sreeramらは、WO2006/067799、2006年6月29日を参照すると、混合希土類化合物(40−45重量%の範囲内のセリウム、4−6重量%の範囲内のプラセオジム、15−25重量%の範囲内のランタン、15−20重量%のネオジムおよび最大5%の他の希土類)および炭酸ニッケルを用いる、緑色無機着色剤の製造方法を開示している。しかしながら、この方法の主な欠点は、それらが毒性元素としてのニッケルを含有するので、経済的でなく、環境に優しくないことにある。
混合希土類化合物をモリブデンと適切に組み合わせて緑色顔料の合成のために使用することに関しての入手可能な情報は以前にはなかった。
発明の目的
本発明の主たる目的は、57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の炭酸塩から選択され、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合希土類化合物と、モリブデン酸アンモニウムとからの、一般式RE2MoO6(ここで、REは混合希土類金属であり、Moはモリブデン金属である)を有する新たな無機緑色着色剤を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、経済的に実施可能であり、希土類産業の制限を回避する緑色顔料を提供することにある。
本発明のさらにもう1つの目的は、現存の毒性緑色着色剤の代替品としての、毒性金属を含まない緑色着色剤であって、それにより環境に優しい緑色着色剤を提供することにある。
本発明のさらにもう1つの目的は、塗料、プラスチック、ガラス、セラミックスなどでの使用によって着色物品またはコーティングを形成するのに使用できる着色剤を提供することにある。
発明の概要
したがって、本発明は、混合希土類化合物およびモリブデン化合物から緑色無機着色剤を製造する方法を提供し、この方法は:
a)混合希土類炭酸塩およびモリブデン酸アンモニウムを均質にする工程と、
b)工程a)で得られた均質物を空気雰囲気中でか焼して、緑色無機着色剤の粒子を得る工程と、
c)冷却および続けて粒径を低減する工程と
を含む。
本発明のある実施形態では、使用する混合希土類炭酸塩は、57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合物であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合物である。
本発明のもう1つの実施形態では、か焼温度は900℃−1100℃の範囲内にある。
本発明のもう1つの実施形態では、か焼時間は3−6時間の範囲内にあり、加熱速度は10℃/分である。
本発明のもう1つの実施形態では、緑色無機着色剤は、複数種の希土類元素およびモリブデンの混合酸化物を含む。得られる前記緑色無機着色剤は、一般式RE2MoO6(ここで、REは混合希土類金属であり、Moはモリブデン金属である)を有する。
本発明のもう1つの実施形態では、緑色無機着色剤において、混合希土類金属含有量は、式RE2MoO6の化合物の全金属含有量の66.66mol%であり、モリブデン金属含有量は33.34%molである。
本発明のある実施形態では、緑色無機着色剤は、式がRE2MoO6である。混合希土類金属含有量は、式RE2MoO6の化合物の全金属含有量の66.66mol%であり、モリブデン金属含有量は33.34mol%であり、様々な温度で、CIE 1976カラースケールによる以下の色度座標を有する:
900℃、L*=79.54、a*=−7.16、b*=20.90;
1000℃、L*=83.79、a*=−9.58、b*=29.97;
1100℃、L*=82.44、a*=−10.13、b*=36.44。
本発明のもう1つの実施形態では、式RE2MoO6の緑色無機着色剤の粒径は、9−11ミクロンの範囲内にある。
本発明のもう1つの実施形態では、式RE2MoO6の緑色無機着色剤は正方晶構造を含む。
本発明のさらにもう1つの実施形態では、緑色無機着色剤の製造方法は、混合希土類炭酸塩(72.88重量%)およびモリブデン酸アンモニウム(27.12重量%)の混合物を、1−2時間にわたり、通常のボールミルによって均質にする工程と、900℃−1100℃の範囲内にある温度での空気雰囲気における約3−6時間の期間にわたるか焼の行程とを含む。加熱速度は10℃/分に維持した。
本発明のさらにもう1つの実施形態は、基体材料を着色する方法であって、前記材料に、着色量の緑色無機着色剤を5重量%の量で添加する工程を含む方法である。
本発明のもう1つの実施形態では、材料は、ポリメタクリラート、有機ポリマー、たとえばプラスチック、ガラス、セラミックス、塗料、織物からなる群より選択される。
本発明のもう1つの実施形態は、現存の毒性を持つ緑色着色剤の代替品としての、毒性金属を含まず、そのため環境に優しい無機緑色着色剤である。
本発明のよりよい理解のために、例示的な実施形態を、図面を共に考慮に入れて以下に説明する。
混合希土類モリブデン酸塩の粉末X線回折パターン。 混合希土類モリブデン酸塩の拡散反射スペクトル。 RE2MoO6緑色顔料の熱重量変化の記録。 PMMA基体中の5%緑色顔料の熱重量変化の記録。
発明の詳細な説明
本発明は、混合希土類化合物およびモリブデン化合物から緑色無機着色剤を製造する新規の方法を提供する。この方法は、混合希土類化合物を均質にすることを含み、この化合物は、57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合希土類炭酸塩であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有し、固体状態ルートを介して金属イオン、好ましくはモリブデン酸アンモニウムと混合されている混合希土類炭酸塩を含む。
混合希土類炭酸塩(72.88重量%)およびモリブデン酸アンモニウム(27.12重量%)は、化学量論比で混合され、900℃−1100℃の範囲内にある温度で3−6時間にわたって加熱され、35℃まで冷却される。加熱速度は10℃/分に維持される。乳鉢および乳棒で粉砕して50ミクロン以下に粒径を低減したあとのか焼物を、その相純度および光学特性について特性評価した。
NiでフィルタしたCuKα放射線を使用するPhilips X'pert Pro回折計でのX−線粉末回折(XRD)によって、得られた粉末を試験した。JEOL JSM-5600LV SEMでの走査電子顕微鏡によって、形態分析を行った。紫外可視分光光度計(Shimadzu, UV-2450)を用い、参照として硫酸バリウムを使用して、粉末の光反射率を測定した。
L*a*b*で表されるCIE(国際照明委員会)スケールに基づいて、色度を測定した。値a*(赤色から緑色への軸)およびb*(黄色から青色への軸)が色相を表す。値L*は、ニュートラルグレースケールに関連して、色の明暗度を表す。
ある態様では、本発明は、毒性でなく、比較的安価であり、および複雑な合成方法を使用しない原料を使用することによる、緑色着色剤の製造を提供する。
本発明は、プラスチックまたは有機コーティング組成物、織物、ガラスおよびセラミックスコーティング組成物などに対する着色剤として使用できる希土類モリブデン酸塩緑色顔料を提供する。本発明のさらなる態様は、基体を着色する方法を提供することにある。この方法は、ポリ(メチルメタクリラート)である基体を準備する工程と、希土類モリブデン酸塩緑色顔料を基体に添加する工程とを含む。この用途では、使用する顔料の量は基体に対して5重量%であった。
以下の例は、本発明の方法を例示するために示したものであって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
例1
57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合希土類炭酸塩であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合希土類炭酸塩(72.88gms.)(Indian Rare Earths Limited, Mumbaiによって、商標Didymium Carbonateで供給されている)と、純度99.9%の七モリブデン酸アンモニウム(27.12gms.)(Sigma Aldrichによって供給されている)とを、メノウ乳鉢中で乳棒を用いて十分に混合した。混合物を、900℃で3時間にわたり空気中でか焼した。加熱速度は10℃/分に維持した。次に、加熱した混合物を35℃まで冷却し、乳鉢および乳棒で50ミクロン未満の粒径に粉砕して、明るい緑色顔料を得た。図1に示すこの化合物のXRDパターンは、この温度での反応の不完全を表している。希土類モリブデン酸塩緑色顔料は、正方晶構造を有する。走査電子顕微鏡を用いて行った形態分析は、得られた着色剤の均質な性質を示す。粉末の光反射率は、紫外可視分光光度計(Shimadzu, UV-2450)を用い、硫酸バリウムを参照として使用して測定し、図2に示している。CIE-LAB 1976カラースケールによって決定した色度座標は、L*=79.54、a*=−7.16、b*=20.90である。
例2
57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合希土類炭酸塩であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合希土類炭酸塩(72.88gms.)(Indian Rare Earths Limited, Munbaiによって、商標Didymium Carbonateで供給されている)と、純度99.9%の七モリブデン酸アンモニウム(27.12gms.)(Sigma Aldrichによって供給されている)とを、メノウ乳鉢中で乳棒を用いて十分に混合した。混合物を、1000℃で3時間にわたり空気中でか焼した。加熱速度は10℃/分に維持した。次に、加熱した混合物を35℃まで冷却し、乳鉢および乳棒で50ミクロン未満の粒径に粉砕して、明るい緑色顔料を得た。得られた粉末を、NiフィルタしたCuKα1放射線を使用するPhilips X'pert Pro 回折計でのX線粉末回折(XRD)によって試験した。得られた顔料は、例1に示した顔料よりも、遥かに優れた安定性(図1)および色特性を示した。粉末の光反射率は、紫外可視分光計(Shimadzu, UV-2450)を用い、硫酸バリウムを参照として使用して測定した。得られた着色剤は、L*a*b*値が、それぞれCIE-LAB 1976カラースケールに基づいて、83.79、−9.58、29.97であった。
例3
57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合希土類炭酸塩であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合希土類炭酸塩(72.88gms.)(Indian Rare Earths Limited, Mumbaiによって、商標Didymium Carbonateで供給されている)と、純度99.9%の七モリブデン酸アンモニウム(27.12gms.)(Sigma Aldrichによって供給されている)とをメノウ乳鉢中で乳棒を用いて十分に混合させた。混合物を、1100℃で6時間にわたり空気中でか焼させた。加熱速度は10℃/分に維持した。次に、加熱した混合物を35℃まで冷却し、乳鉢および乳棒で50ミクロン未満の粒径に粉砕して、明るい緑色顔料を得た。加熱は10℃/分の速度で行い、加熱した混合物をその後35℃まで冷却した。か焼物を、乳鉢および乳棒を用いてボールミル粉砕して、粒径を低減した。生成物は、XRDおよび拡散反射率試験によって分析すると、優れた相純度および色特性を示した。図1に示すこの化合物のXRDパターンは、粉末X線回折ファイル:PDF no.24-550とよく一致する。得られた濃い緑色顔料は、正方晶構造を有している。顔料の粒径を、水中で、分散剤としてカルゴンを使用し、粒径分布分析器(CILAS 930 Liquid)によって分析した。顔料の粒径は、9−11ミクロンの範囲内で多様である。粉末の光反射率を、紫外可視分光光度計(Shimadzu, UV-2450)で、硫酸バリウムを参照として使用して測定し、図2に示している。得られた着色剤は、緑色の色相と、それぞれCIE-LAB 1976カラースケールに基づく、82.44、−10.13および36.44のL*a*b*値とを有していた。この顔料は、プラスチック、塗料、セラミックスなどに適用できる。
典型的な顔料RE2MoO6の熱重量分析を、50−1000℃の温度範囲で、Pyris Diamond TG/DTA Perkin Elmer makeを使用して行った。熱重量分析から、この顔料は1000℃まで熱的に安定であることが明らかである(図3)。
典型的な顔料RE2MoO6をその酸およびアルカリ耐性について試験した。予め秤量した量の顔料を、3%のHCl/H2SO4/HNO3およびNaOHで処理し、30分間にわたり電磁攪拌子を使用して一定攪拌しながら浸した。その後、顔料を、ろ過し、水で洗浄し、乾燥させ、秤量した。試験した全ての酸およびアルカリについて、重量減少は認められなかった。酸およびアルカリ耐性試験後の典型的なL*a*b*値は、(HNO3およびNaOHそれぞれについて、L*=83.96;a*=−9.15;b*=35.95およびL*=82.09;a*=−9.22;b*=36.10)であり、顔料粉末試料のそれと同様であることが判明した。このように、設計した緑色顔料は、化学的および熱的に安定であることが明らかである。
例4
5重量%の典型的な顔料試料RE2MoO6(例3で合成したもの)および95重量%のポリ(メチルメタクリラート)(Shigma Aldrich)を低温硬化液体(Cold Curing Liquid)(Asian Acrylates, Mumbaiによって供給されるAcralyn 'R')中に分散させ、得られた混合物に10分間にわたって超音波をかけ、完全な均質化を確実にした。次に、顔料分散液を30℃でゆっくりと蒸発乾燥させ、薄いペースト状にした。2時間の硬化後、このペーストを、液圧プレス(Lawrence & Maya, India)を使用して25MPaの圧力で一軸圧縮して、円筒形ディスクにした。着色ポリマーの両面を、ファイングレードのエメリーシートを使用して磨いて、研磨した表面を得た。製造した着色基体材料の光反射率を、紫外可視分光光度計(Shimadzu, UV-2450)により硫酸バリウムを参照として使用して測定した。得られた基体材料は、緑色の色相と、それぞれCIE-LAB 1976カラースケールに基づく、63.82、−7.76および35.56のL*a*b*値とを有していた。
典型的な着色基体材料の熱重量分析を、50−500℃の温度範囲で、Pyris Diamond TG/DTA Perkin Elmer makeを使用して行った。熱重量分析から、この着色基体材料は200℃まで熱的に安定であることが明らかである(図4)。
利点
本発明は、着色剤産業における、表面コーティング用途のための、環境に優しく、非常に費用効果が高く、経済的に実施可能な、緑色着色剤を製造するための潜在用途を有する。

Claims (10)

  1. 混合希土類化合物およびモリブデン化合物から緑色無機着色剤を製造する方法であって:
    a)混合希土類炭酸塩およびモリブデン酸アンモニウムを均質にする工程と、
    b)工程a)で得られた均質物を空気雰囲気中でか焼する工程と
    c)冷却および続けて粒径を低減する工程と
    を含み、工程a)で使用する混合希土類炭酸塩は、57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合物であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合物である方法。
  2. 工程b)でのか焼温度は900℃−1100℃の範囲内にある請求項1に記載の方法。
  3. 工程b)でのか焼時間は3−6時間の範囲内にあり、加熱速度は10℃/分である請求項1に記載の方法。
  4. 複数種の希土類元素およびモリブデンの混合酸化物を含む緑色無機着色剤であって、得られる前記緑色無機着色剤は、一般式RE2MoO6(ここで、REは混合希土類金属であり、Moはモリブデン金属である)を有し、前記着色剤は混合希土類炭酸塩から得られ、前記混合希土類炭酸塩は、57ないし66の範囲内にある原子番号を有する複数種の希土類元素の混合物であって、少なくとも、43−45重量%の範囲内にあるランタン、33−35重量%の範囲内にあるネオジム、9−10重量%の範囲内にあるプラセオジム、4−5重量%の範囲内にあるサマリウム、および最大で5重量%の他の希土類の組成を有する混合物である緑色無機着色剤。
  5. 前記混合希土類金属の含有量は、式RE2MoO6の化合物の全金属含有量の66.66mol%であり、モリブデン金属の含有量は33.34mol%である請求項4に記載の緑色無機着色剤。
  6. 前記着色剤は、様々な温度で、CIE 1976カラースケールによる以下の色度座標を有する請求項4に記載の緑色無機着色剤。
    900℃、L*=79.54、a*=−7.16、b*=20.90;
    1000℃、L*=83.79、a*=−9.58、b*=29.97;
    1100℃、L*=82.44、a*=−10.13、b*=36.44
  7. 前記着色剤の粒径は9−11ミクロンの範囲内にある請求項4に記載の緑色無機着色剤。
  8. 前記着色剤は正方晶構造を含む請求項4に記載の緑色無機着色剤。
  9. 基体材料を着色する方法であって、着色量の請求項4に記載の緑色無機着色剤を前記基体材料に添加する工程を含み、量が5重量%以下の方法。
  10. 前記基体材料は、ポリメタクリラート、有機ポリマーたとえばプラスチック、ガラス、セラミック、塗料、織物からなる群より選択される請求項9に記載の方法
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