以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図9は、本発明の一実施の形態における体積型ホログラムおよび体積型ホログラムの製造方法を説明するための図である。このうち、図1〜図4は、主として、体積型ホログラムおよびその作用を説明するための図であり、図5〜図9は、主として、体積型ホログラムの製造方法を説明するための図である。
以下に説明する体積型ホログラム(単に、ホログラムとも呼ぶ)10は、異なる波長の光L1a,L1b、すなわち互いに異なる色の光L1a,L1bを、それぞれ、同一方向へ回折する反射型ホログラム(リップマンホログラム)として構成されている。反射型の体積型ホログラムは干渉縞が記録されており、この干渉縞の間隔、入射光の波長および入射角度に関するブラッグの反射条件(ブラッグ条件)が満たされた場合、当該入射光を高い回折効率で回折(反射)するようになる。そして、以下に説明するホログラム10は、このような入射光に対する波長選択性および角度選択性によって、当該ホログラムが貼付された物品の意匠性を向上させることや、物品の真正性を標示することが可能であり、物品、とりわけ、包装材料、カード、証明書、有価証券、商品券等に貼付されて使用され得る。
なお、以下において、干渉縞の数に言及することがあるが、本明細書において、干渉縞の数とは、概ね平行に延びる複数の筋(立体的に捉えると、複数の面)からなる筋群(立体的に捉えると、面群)の数のことであり、干渉縞に含まれる筋の数を指すものではない。
なお、以下において、干渉縞の数に言及することがあるが、本明細書において、干渉縞の数とは、概ね規則的に構成されたパターンの数のことであって、パターンを構成する要素の数のことではない。例えば、概ね平行に延びる複数の筋(立体的に捉えると、複数の面)からなる筋群(立体的に捉えると、面群)によって干渉縞が構成される場合には、干渉縞の数とは、筋群の数を指し、筋群に含まれる筋の数を指すものではない。
図3および図4に示すように、ホログラム10は、ホログラム10へ入射する第1波長の第1再生照明光L1aを高い回折効率で回折する第1干渉縞11a(図3参照)と、第1波長とは異なる第2波長の第2再生照明光L1bを高い回折効率で回折する第2干渉縞11b(図4参照)と、を有している。また、図1に示すように、第1波長の第1再生照明光L1aが第1干渉縞11aで回折される方向と、第2波長の第2再生照明光L1bが第2干渉縞11bで回折される方向と、は同一方向となっている。そして、図2に示すように、ホログラム10は、第1干渉縞11aによって第1再生照明光L1aを回折してなる第1再生光L3aと、第2干渉縞11bによって第2再生照明光L1bを回折してなる第2再生光L3bと、の加法混色によって、色を再現するようになっている。
なお、本実施の形態において、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bは、第1再生照明光L1aおよび第2再生照明光L1bを散乱反射光として回折する。したがって、第1再生光L3aおよび第2再生光L3aは主として互いに同一の方向に進む散乱光となる。
また、本実施の形態においては、図1に示すように、第1干渉縞11aによって回折される第1波長の第1再生照明光L1aおよび第2干渉縞11bによって回折される第2波長の第2再生照明光L1bは、共に、第1方向d1に沿ってホログラム10へ入射する。つまり、図3に示すように、第1方向d1からホログラム10へ入射する第1波長の光L1aは、第1干渉縞11aのブラッグの反射条件を満たすようになり、同様に、図4に示すように、第1方向d1からホログラム10へ入射する第2波長の光L1bは、第2干渉縞11bのブラッグの反射条件を満たすようになる。
ここで、ブラッグの反射条件が満たされるとは、次の式(1)が満たされることに相当する。
2×d×sinθ=λ ・・・ 式(1)
式(1)中のdは、光の進行方向と、当該光が入射する領域において干渉縞を構成する各筋状模様(各面状模様)への法線方向と、の両方に平行な断面での、干渉縞を構成する各筋(各面)の間隔(濃淡の筋のピッチ)である。また、式(1)中のθは、前記断面において、光の入射方向(または光の干渉縞での回折方向)が干渉縞をなす各筋が延びる方向に対してなす角度である。さらに、式(1)中のλは、干渉縞への入射光の波長である。
本実施の形態では、第1方向d1からホログラム10へ入射する第1波長の光L1aが、第1干渉縞11aのブラッグ条件を満たすことから、次の式(2)が満たされる。同様に、第1方向d1からホログラム10へ入射する第2波長の光L1bが、第2干渉縞11bのブラッグ条件を満たすことから、次の式(3)が満たされる。
2×da×sinθa=λa ・・・ 式(2)
2×db×sinθb=λb ・・・ 式(3)
式(2)および(3)におけるdaおよびdbは、式(1)におけるdに相当するものであり、各干渉縞の間隔である。また、式(2)および(3)におけるθaおよびθbは、式(1)におけるθに相当するものであり、各干渉縞へ入射する光(または各干渉縞で回折された光)の進行方向が各干渉縞の延びる方向に対してなす角度である。さらに、式(2)および(3)におけるλaおよびλbは、式(1)におけるλに相当するものであり、各干渉縞へ入射する光の波長である。
なお、ブラッグ反射条件を示す式(1)は、入射光の波長λに対して適宜入射光の入射角度θが調節されることによって、あるいは、入射光の入射角度θに対して適宜入射光の波長λが設定されることによって、満たされるようになる。すなわち、ある体積型ホログラムの干渉縞によって高効率の回折効率で回折されるようになるのは、所定の特定波長の光が所定の特定入射角度でホログラムへ入射する場合だけではない。例えば、図4に示すように、第1波長λaおよび第2波長λbの両方と異なる第3波長λcの光L2bも、第1方向d1とは異なる第2方向d2からホログラム10へ入射した場合に次の式(4)が満たされるようになり、つまりブラッグ条件が満たされるようになり、第2干渉縞11bで高い回折効率で回折されるようになる。
2×db×sinθc=λc ・・・ 式(4)
この際、図4に示すように、第1方向d1からの第2波長の光L1bが第2干渉縞11bで第3方向d3に回折されていたとすると、第2方向d2からの第3波長の光L2bは、第2干渉縞11bで、第3方向d3とは異なる方向(第4方向d4)に回折されるようになる。なお、式(4)におけるθcは、式(1)におけるθに相当するものであり、第2干渉縞11bへ入射する光L2bが第2干渉縞11bの延びる方向に対してなす角度である。
ところで、本実施の形態においては、第1方向d1に沿ってホログラム10の第1面10aへ入射する第1波長の第1再生照明光L1aが第1干渉縞11aで回折されてなる第1再生光L3aは、ホログラム10の第1面10aの側から観察され得る第1像12aを再生する。同様に、本実施の形態において、第1方向d1に沿ってホログラム10の第1面10aへ入射する第2波長の再生照明光L1bが第2干渉縞11bで回折されてなる第2再生光L3bは、ホログラム10の第1面10aの側から観察され得る第2像12bを再生する。
図2に示すように、第1像12aおよび第2像12bは、それぞれ、二次元パターンとして構成されている。ここで二次元パターンとは、平面状のパターンのことであり、例えば、文字、数字、記号および模様からなる群より選択される一以上を配列して構成され得る。ただし、ここでいう平面状の二次元パターンとは、ホログラム10の表面上に位置する、例えば、ホログラム10の表面上に記載または貼付されているかのように観察されるパターンだけでなく、ホログラム10の表面から浮き上がった位置や、ホログラム10の表面から潜り込んだ位置に観察される、平面状のパターンも含まれる。したがって、ここでいう二次元パターンには、三次元空間内に再生される平面状のパターンも含まれている。
本実施の形態において、第1像12aをなす二次元パターンおよび第2像12bをなす二次元パターンは、ホログラム10の表面と平行な面上に再生される。とりわけ、第1像12aをなす二次元パターンおよび第2像12bをなす二次元パターンは、ホログラム10の表面の法線方向における同一の位置、つまり、ホログラム10の表面からの高さが同一である面上に再生される。さらに厳密には、第1像12aをなす二次元パターンおよび第2像12bをなす二次元パターンは、ホログラム10の表面上に位置している。
また、図2に示すように、第1干渉縞11aで再生される第1像12aとしての二次元パターンおよび第2干渉縞11bで再生される第2像12bとしての二次元パターンは、「GENUINE」との同一の文字列で構成されている。加えて、第1像12aをなす二次元パターンおよび第2像12bをなす二次元パターンは、ホログラム10の表面に沿っても同一の位置(つまり、表面上の同一位置)に再生される。
すなわち、本実施の形態において、第1像12aおよび第2像12bは重なって再生され、これにより、図2に示すように、第1像12aおよび第2像12bによってなされる「GENUINE」との一つの文字列(二次元パターンの像)12が、第1像12aをなす第1波長の第1再生光L3aと第2像12bをなす第2波長の第2再生光L3bとの加法混色により再現される色で、観察されるようになる。具体例として、第1波長の第1再生光L3aが、波長が476.5nmの青色光であって、第2波長の第2再生光L3bが、波長が570nmの黄色光である場合には、合成像12は、xy色度図上における青色と黄色との中間位置の色、すなわち白色の像として、観察されるようになる。
なお、ここでいう「ホログラムの表面上に位置する(形成される)」とは、二次元パターンが厳密な意味でホログラムの表面上に正確に位置している場合だけでなく、以下のように二次元パターンが厳密な意味でホログラムの表面上に位置している場合の光学的作用と同様の光学的作用が、目視での判断において、得られ得る範囲内であれば、二次元パターンがホログラムの表面上からわずかにずれている場合も含まれることとする。
すなわち、ホログラム10を白色光下に置くと、ブラッグ反射条件を満たす限りにおいて、異なる色で異なる方向に第2像12bが再生されるようになる。この結果、第2像12bは、ホログラム10の表面と平行な方向(すなわち、平面方向)にずれた位置に、異なる色で再生されるようになり、この異なる色で再生される像の平面方向での位置ずれに起因して、像の輪郭がぼやけて視認されるようにもなる。そして、異なる色の像の間での平面方向での位置ずれ量は、当該像の再生位置がホログラム10の表面上の位置から遠く離れるにしたがって、増していく。また、奥行きを持った立体物が再生される場合には、像のぼやけが顕著に現れる。その一方で、このように像がぼやけて観察される現象は、第2像12bが、二次元パターンの場合に緩和され、とりわけホログラム10の表面近傍に再生される場合に実質的に視認されなくなる。そして、ここでは、二次元パターンの輪郭がぼやけることなく明瞭に第2像12bが再生され得る程度であれば、ホログラム10の表面上に位置していると解釈することにする。
ところで、図1に示すように、本実施の形態において、第1像12aおよび第2像12bを構成する二次元パターンは、当該パターンをなす部分(例えば、文字列の部分)だけが、あるいは、当該パターンをなさない部分だけが、ホログラフィック散乱板として機能することにより、像を形成して観察者に観察され得るようになっている。ここでホログラフィック散乱板とは、ホログラム(ホログラフィック光学素子)の一種であり、そのブラッグ条件を満たす入射光を散乱させて、主として透過または反射させる光学素子である。本実施の形態においては、第1再生光L3aおよび第2再生光L3bは、主として、第3方向d3に進む散乱光となる。
しかしながら、この例に限られず、第2像12bを構成する二次元パターンが、当該パターンをなす部分(例えば、文字列の部分)だけが、あるいは、当該パターンをなさない部分だけが、ホログラフィックミラーとして機能することにより、像を形成して観察者に観察され得るようになっていてもよい。ここでホログラフィックミラーとは、ホログラム(ホログラフィック光学素子)の一種であり、そのブラッグ条件を満たす入射光を、散乱させることなく反射させる光学素子である。したがって、この例では、或る特定波長の光束がホログラム10へ干渉縞11a,11bのブラッグ条件を満たすように入射した場合、干渉縞11a,11bで回折されて像12a,12bを形成する再生光L3a,L3bは、平行光束となる。
加えて、第1像12aおよび第2像12bをなす二次元パターンの全部または一部が、72μm四方の領域内に収まる大きさで配置された文字、数字、記号または模様によって、構成されていてもよい。ヒトが裸眼で物体を観察する場合、ぼけずにはっきりと見ることができる位置(近点)は、標準的には、眼から250mm離れた位置であると考えられており、加えてヒトの眼の分解能は角度にして約1分(約1/60°)である(John.E. Greivenkamp著「フィールドガイド 幾何光学」の第45頁参照)。この結果、近点における最小分解能は、72.7μm程度となる。このため、二次元パターンを構成する文字、数字、記号または模様の一つ当たりの大きさ、幅および高さが72μm以下となっている場合、標準的には、ヒトが裸眼によって文字、数字、記号または模様を識別することができない。すなわち、このようなサイズの二次元パターンの文字、数字、記号または模様を識別するためには、拡大鏡を用いる等、何らかの手段を講じることが必要となってくる。したがって、このような二次元パターンからなる第1像12aおよび第2像12bによれば、ホログラム10に高い識別性を付与し、ホログラム10を真正性標示体として極めて有効に機能させることができる。
以上のような本実施の形態による体積型ホログラム10によれば、第1干渉縞11aによって第1再生照明光L1aを回折してなる第1再生光L3aと、第2干渉縞11bによって第2再生照明光L1bを回折してなる第2再生光L3bと、の加法混色を利用して色を再現するようになっている。第1再生光L3a(第1再生照明光L1a)をなす第1波長の光及び第2再生光L3b(第2再生照明光L1b)をなす第2波長の光の波長域を適宜設定することにより、第1再生光L3aと第2再生光L3bとを重ね合わせた像12を、xy色度図において赤色、緑色および青色で囲まれる領域内にある所望の色で再生することが可能となる。すなわち、二つの干渉縞11a,11bのみによって、xy色度図において赤色、緑色および青色で囲まれる領域内にある所望の色で像12を再生することができる。
また、ホログラム記録材料20に記録されるべき干渉縞の数が増えると、各干渉縞が薄く記録されるようになる。一例として、フォトポリマーからなるホログラム記録材料では、ホログラム内においてモノマーが粗密にポリマー化していることに起因した屈折率変調によって干渉縞が形成されている。この時、ホログラム記録材料内のモノマー量は限られているので、干渉縞の数量が多いと各干渉縞に対するホログラム記録材料の屈折率変調量は制限されるうえ、その割り当てを制御することが困難となる。したがって、xy色度図において赤色、緑色および青色で囲まれる領域内にある所望の色を三つの干渉縞で再現するホログラムと比較すると、本実施の形態によるホログラム10によれば、二つの干渉縞のみによって種々の色を明るく再現することができると言える。
加えて、ホログラム10によって種々の色で再生される像12に、優れた意匠性および高い識別性を付与することができる。このようなホログラム10は、真贋の判定が極めて容易となることから、真正性を標示する真正性標示体として有効に機能し得る。
次に、主として図5〜図9を参照しながら、以上のようなホログラム10を製造する方法の一例について説明する。以下の製造方法によれば、説明してきた本実施の形態による体積型ホログラムを安価且つ容易に作製することが可能となる。
なお、体積型ホログラム10は、ホログラム記録材料20から形成されるようになる。このため、ホログラム記録材料20が対応する位置関係でホログラム10と同様に配置された状態にあるものとして、ホログラム10に対して用いた方向を用いて、ホログラム記録材料20に対する方向も特定していく。さらに、ホログラム記録材料20に積層される後述のフィルム状部材(例えば、ホログラム原版30,40、積層原版25、ホログラム原版用のホログラム記録材料35,45)に対しても、当該フィルム状部材がホログラム記録材料20に積層された状態にあるものとして、ホログラム10およびホログラム記録材料20に対して用いた方向を用いて、方向を特定していく。
以下に説明するホログラムの製造方法は、ホログラム記録材料20の一方の面(第2面)20bへ第1参照光L1rを入射させるとともに、当該ホログラム記録材料20の他方の面(第1面)20aへ第1波長の第1物体光L3oを入射させて、第1参照光L1rと第1物体光L3oとが干渉してなる光の干渉縞を生じさせて第1干渉縞(第1干渉パターン)11aをホログラム記録材料20に記録する工程と、ホログラム記録材料20の一方の面20bへ第2参照光L2rを入射させるとともに、当該ホログラム記録材料20の他方の面20aへ第2物体光L4oを入射させ、第2参照光L2rと第2物体光L4oとが干渉してなる光の干渉縞を生じさせて第2干渉縞(第2干渉パターン)11bをホログラム記録材料20に記録する工程と、を主として含んでいる。
とりわけ、以下のホログラム製造方法においては、第1参照光L1rおよび第1物体光L3oの波長(第1波長)と、第2参照光L2rおよび第2物体光L4oの波長(第3波長)と、が互いに異なり、且つ、第1物体光L3oのホログラム記録材料20の入射方向(本実施の形態では、第1物体光L3oが散乱光からなるため、第1物体光L3oの主たる入射方向)と、第2物体光L4oのホログラム記録材料20の入射方向(本実施の形態では、第1物体光L3oが散乱光からなるため、第1物体光L3oの主たる入射方向)と、が互いに異なることを特徴としている。
以下のホログラム製造方法においては、第1干渉縞11aを記録する工程と、第2干渉縞11bを記録する工程は、少なくとも部分的に並行して実施され、具体的には、第1干渉縞11aを記録するための露光(第1参照光L1rおよび第1物体光L3oの露光)と、第2干渉縞11bを記録するための露光(第2参照光L2rおよび第2物体光L4oの露光)とが、少なくとも一時期並行して行われる。
まず、第1の光の干渉縞を生じさせて第1干渉縞(第1干渉パターン)11aを、ホログラム記録材料20に記録するための露光について説明する。ホログラム10をなすようになるホログラム記録材料20に露光される第1参照光L1rおよび第1物体光L3oの波長は、図3に示された第1再生照明光L1aおよび第1再生光L3aと同一の第1波長である。したがって、図5に示すように、第1参照光L1rは、第1方向d1に沿って第1再生照明光L1aとは逆向きに進んでホログラム記録材料20へ一方の面20bの側から入射する。また、第1物体光L3oは、第3方向d3を中心とする方向から第1再生光L3aとは逆向きに進んでホログラム記録材料20へ他方の面20aの側から入射する。
なお、ホログラム記録材料20の他方の面(第1面)20aが、ホログラム10の上述した第1面10aをなすようになり、ホログラム記録材料20の一方の面(第2面)20bが、ホログラム10の第1面10aとは逆側の第2面10bをなすようになる。
次に、第2の光の干渉縞を生じさせて第2干渉縞(第2干渉パターン)11bをホログラム記録材料20に記録するための露光について説明する。ホログラム記録材料20に露光される第2参照光L2rおよび第2物体光L4oの波長は、第2再生照明光L1bおよび第2再生光L3bの波長(第2波長)と異なるとともに、第1再生照明光L1aおよび第1再生光L3aの波長(第1波長)とも異なる第3波長である。図4を参照しながら説明したように、第2干渉縞11bは、第1方向d1からホログラム10の第1面10aに入射する第2波長の光L1bを高い回折効率で第3方向d3を中心とした方向に散乱反射する。また、図4によく示されているように、第2干渉縞11bは、第2方向d2からホログラム10の第1面10aに入射する第3波長の光L2bを高い回折効率で第4方向d4を中心とした方向に散乱反射する。したがって、第3波長の第2参照光L2rおよび第2物体光L4oを用いて、第2干渉縞11bをホログラム記録材料20の記録することができる。
具体的には、図5に示すように、第2参照光L2rは、第2方向d2に沿って第2再生照明光L2bとは逆向きに進んでホログラム記録材料20へ一方の面20b側から入射する。また、第2物体光L4oは、第4方向d4を中心とする方向から第2再生光L4bとは逆向きに進んでホログラム記録材料20へ他方の面20aから入射する。
また、ここで説明する製造方法においては、図5に示されているように、二次元パターンからなる第1像12aを再生するための第1物体光L3oは、反射型体積ホログラムからなる第1ホログラム原版30を再生することによって得られる。同様に、二次元パターンからなる第2像12bを再生するための第2物体光L4oは、反射型体積ホログラムからなる第2ホログラム原版40を再生することによって得られる。
具体的には、図5に示すように、第1物体光L3oを発生させる第1ホログラム原版30および第2物体光L4oを発生させる第2ホログラム原版40を積層してなる積層原版25が、ホログラム記録材料20の第1面20aの側に積層される。これにより、ホログラム記録材料20の第1面20aの側から順に、第1ホログラム原版30および第2ホログラム原版40が、ホログラム記録材料20に積層される。この状態で、第1波長の第1参照光L1rが、第1方向d1に沿ったコヒーレントな光、典型的にはレーザ光からなる平行光束として、ホログラム記録材料20に第2面20bの側から照射される。第1参照光L1rの照射と並行して、第3波長の第2参照光L2rが、第2方向d2に沿ったコヒーレントな光、典型的にはレーザ光からなる平行光束として、ホログラム記録材料20に第2面20bの側から照射される。
ホログラム記録材料20を透過した第1参照光L1rが、第1ホログラム原版30のブラッグ条件を満たすようにして、第1ホログラム原版30へ入射する。すなわち、第1参照光L1rは再生照明光として第1ホログラム原版30へ入射し、第1ホログラム原版30で回折される。これにより、第1ホログラム原版30によって二次元文字列パターンが再生され、この二次元文字列パターンをなす回折光が、第1物体光L3oとして、ホログラム記録材料20へ他方の面20aから入射する。
この結果、ホログラム記録材料20内において、第1参照光L1rと第1物体光L3oが干渉し、明暗の縞からなる光の干渉縞が形成される。感光性を有したホログラム記録材料20は、この明暗の縞に対応して反応する。この結果、ホログラム記録材料20内に、この明暗の縞に対応したパターンの第1干渉縞11aが記録され、回折機能が付与される。一例として、ホログラム記録材料20がフォトポリマーからなる場合には、屈折率変調パターンとして第1干渉縞11aが記録される。
一方、第2参照光L2rは、ホログラム記録材料20および第1ホログラム原版30を透過した後、第2ホログラム原版40のブラッグ条件を満たすようにして、第2ホログラム原版40へ入射する。すなわち、第2参照光L2rは再生照明光として第2ホログラム原版40へ入射し、第2ホログラム原版40で回折される。これにより、第2ホログラム原版40によって二次元文字列パターンが再生される。この二次元文字列パターンをなす回折光が、第1ホログラム原版30を透過した後に、第2物体光L4oとしてホログラム記録材料20へ他方の面20aから入射する。この結果、ホログラム記録材料20内において、第2参照光L2rと第2物体光L4oが干渉し、明暗の縞からなる光の干渉縞が形成される。感光性を有したホログラム記録材料20は、この明暗の縞に対応して反応する。この結果、ホログラム記録材料20内に、この明暗の縞に対応したパターンの第2干渉縞11bが記録され、回折機能が付与される。
なお、干渉縞11a,11bを記録されてホログラム10をなすようになるホログラム記録材料20としては、例えば、フォトポリマー、銀塩乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト等を用いることができる。また、ホログラム記録材料20に干渉縞11a,11bを記録するためのコヒーレントな光(本例では、第1参照光L1rおよび第2参照光L2r)として、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ネオジウムヤグレーザー等のレーザ光源から発振される光を用いることができる。
ところで、図5に示すように、積層原版25のホログラム記録材料20に面していない側の面上には、遮光層27が設けられている。これにより、積層原版25のホログラム記録材料20に面していない側の面で、参照光L1r,L2rが反射すること、並びに、環境光がホログラム記録材料20へ第1面20a側から入射することが効果的に抑制される。この結果、迷光等に起因した、ホログラム記録材料20の意図しない感光、これにともなって、意図しない干渉縞の記録が効果的に防止される。
加えて、迷光等の発生を防止する観点からは、積層原版25とホログラム記録材料20との間、積層原版25と遮光層27との間、および、積層原版25の第1ホログラム記録原版30と第2ホログラム記録原版40との間の一以上に、インデックスマッチング液からなるインデックスマッチング層が設けられてよい。インデックスマッチング層によれば、隣接する層間での急激な屈折率変化に起因した反射を効果的に防止することができるとともに、急激な屈折率変化の原因となる空気層が隣接する層間に形成されてしまうことも効果的に防止することができる。
ここで、図2に示すような二次元文字列パターンを再生する反射型体積ホログラムとしての第1および第2ホログラム原版30,40は、それぞれ、以下のようにして、作製され得る。
まず、図6および図7に示すように、ホログラム原版30,40用のホログラム記録材料35,45上に、二次元パターン12a,12bと同一パターンで露光光を遮光することができる遮光マスク48を配置する。上述したホログラム10については、第1干渉縞11aで再生される第1像12aおよび第2干渉縞11bで再生される第2像12bは同一であることから、第1ホログラム原版30および第2ホログラム原版40を作製する場合に同一のマスク48を用いることができる。
次に、図8に示すように、ホログラム原版用ホログラム記録材料35,45を、遮光マスク48が配置された側から、露光する。これによって、遮光マスク48で覆われていない領域が、不感化処理(失活処理)を施され、感光性を失う。なお、この不感化処理での露光に用いられる光L62としては、特にその波長を限定されることなく、例えば紫外線を用いることができる。紫外線を用いた場合、短時間でより確実に不感化処理を行うことができる。
次に、ホログラム原版用ホログラム記録材料35,45に干渉縞を記録する。まず、第1ホログラム原版30について説明する。第1ホログラム原版30については、第1方向d1からの第1波長の光を、第3方向d3を中心とした方向に、散乱反射するように構成されたホログラフィック散乱板39を用意する。図8に示すように、用意されたホログラフィック散乱板39を、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35に一方の面(第2面)35bの側から積層する。この状態で、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35へ他方の面(第1面)35aの側から第1波長の参照光L81を入射させる。参照光L81は、第1方向d1に沿ったコヒーレントな光、典型的にはレーザ光からなる平行光束として、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35に照射される。そして、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35を透過した参照光L81が、ホログラフィック散乱板39のブラッグ条件を満たすようにして、ホログラフィック散乱板39へ入射する。これにより、参照光L81は再生照明光としてホログラフィック散乱板39へ入射してホログラフィック散乱板39で回折され、参照光L81がホログラフィック散乱板39で回折されてなる散乱反射光が、物体光L82として、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35に一方の面35bの側から入射する。この際、物体光L82である散乱反射光は、上述した第3方向d3を中心とした角度域に広がる散乱光として、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35に入射する。この結果、第1ホログラム原版用ホログラム記録材料35のうちの感光性を有している文字列パターンの領域が、参照光L81および物体光L82によって露光され、第1像12aと同様の二次元文字列パターンを再生し得る干渉縞が記録される。
第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45に対しても同様の方法によって、第2像12bを再生し得る干渉縞が記録される。まず、第2方向d2からの第3波長の光を、第4方向d4を中心とした方向に、散乱反射するように構成されたホログラフィック散乱板49を用意する。次に、図9に示すように、用意されたホログラフィック散乱板49を、第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45に一方の面(第2面)45bの側から積層する。この状態で、第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45へ他方の面(第1面)45aの側から第3波長の参照光L91を入射させる。参照光L91は、第2方向d2に沿ったコヒーレントな光、典型的にはレーザ光からなる平行光束として、第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45に照射される。第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45を透過した参照光L91は、再生照明光としてホログラフィック散乱板49へ入射してホログラフィック散乱板49で回折される。そして、参照光L101がホログラフィック散乱板49で回折されてなる散乱反射光が、物体光L92として、第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45に一方の面45bの側からから入射する。この際、物体光L92である散乱反射光は、上述した第4方向d4を中心とした角度域に広がる散乱光として、第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45に入射する。この結果、第2ホログラム原版用ホログラム記録材料45のうちの感光性を有している文字列パターンの領域が、参照光L91および物体光L92によって露光され、第2像12bと同様の二次元文字列パターンを再生し得る干渉縞が記録される。
以上のようにして干渉縞が記録されたホログラム原版用ホログラム記録材料35,45に適当な後処理を施すことにより、上述したホログラム原版30,40が得られる。なお、上記説明における各ホログラム原版用ホログラム記録材料35,45の一方の面35b,45bが、対応するホログラム原版30,40のホログラム記録材料20に対面する側の面をなすようになり、各ホログラム原版用ホログラム記録材料35,45の他方の面35a,45aが、対応するホログラム原版40の遮光層27に対面する側の面をなすようになる。
なお、干渉縞を記録されてホログラム原版30,40をなすようになるホログラム原版用ホログラム記録材料としては、ホログラムを作製するためのホログラム記録材料20に用いられ得る材料として例示した材料を同様に用いることができる。また、ホログラム原版30,40を作製するための露光光として、ホログラム記録材料20に干渉縞11a,11bを記録するために用いられ得る光源として上述したレーザ光源から発振されるレーザ光を同様に用いることができる。さらに、干渉縞11a,11bを記録する場合と同様の目的から、ホログラフィック散乱板39,49のホログラム原版用ホログラム記録材料35,45とは逆側の面に遮光層を設けてもよいし、ホログラフィック散乱板39,49とホログラム原版用ホログラム記録材料35,45や遮光層との間にインデックスマッチング層を設けてもよい。
以上のようにして、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bをホログラム記録材料20に記録することができる。このようなホログラムの製造方法では、同時露光によって、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bが並行してホログラム記録材料20に記録されていく。したがって、ホログラム10を短時間で作製することができ、生産性の観点から好ましい。また、煩雑な作業を伴う光学系の準備を、複数回行う必要がない。さらに、各露光光(図示する例では、第1参照光L1rおよび第2参照光L2r)の光量を調節するといった簡易な操作により、各干渉縞11a,11bでの回折効率を調節することができる。すなわち、所望の光学特性を有する干渉縞11a,11bが精度良く形成されたホログラム10を、安価かつ容易に形成することができる。
また、第1干渉縞11aを形成するための第1参照光L1rおよび第1物体光L1oと、第2干渉縞11bを形成するための第2参照光L2rおよび第2物体光L2oとは、互いに異なるレーザ光源から発生される。したがって、第1干渉縞11aを形成するための光(第1参照光L1rおよび第1物体光L3o)と、第2干渉縞11bを形成するための光(第2参照光L2rおよび第2物体光L4o)とは互いに干渉することはない。このため、第1干渉縞11aを形成するための第1参照光L1rおよび第1物体光L2oのいずれかと、第2干渉縞11bを形成するための第2参照光L2rおよび第2物体光L4oのいずれかとが、干渉してなる不要な干渉縞がホログラム記録材料20に記録されることはない。これにより、不要な干渉縞によって意図しない方向へ回折される再生光が生じることが防止され、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bでの回折によって明るい再生光を得ることができる。すなわち、第1再生光L3bと第2再生光L3bとの加法混色によって、所望の色を明るく再現することができる。
第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bが記録されたホログラム記録材料20は、その後、後処理工程を施され、ホログラム記録材料20からホログラム10が得られるようになる。なお、後処理の内容は、ホログラム記録材料20をなす材料によって異なるが、一例として、紫外線照射および加熱処理が、一連の後処理としてホログラム記録材料20に実施され得る。
以上のような本実施の形態によれば、第1波長の第1再生照明光L1aが第1干渉縞11aによって主として回折される方向(第3方向d3)と、第2波長の第2再生照明光L1bが第2干渉縞11bによって主として回折される方向(第3方向d3)と、が同一であり、第1再生照明光L1aが第1干渉縞11aで回折されてなる第1再生光L3aと、第2再生照明光L1bが第2干渉縞11bで回折されてなる第2再生光L3bと、の加法混色によって、第1再生光L3aおよび第2再生光L3bの両方と異なる色が再現されるようになる。
上述した実施の形態によるホログラムの製造方法では、第1再生照明光L1aを第1再生光L3aとして回折する第1干渉縞11aは、第1再生照明光L1aの波長(第1波長)と同一の単一波長の光(第1波長の光)を用いて作製されている。その一方で、第2再生照明光L2bを第2再生光L3bとして回折する第2干渉縞11bは、第2再生照明光L2bの波長(第2波長)とは異なる波長の光(第3波長の光)を用いて作製されている。したがって、第1波長の第1再生照明光L1aが第1干渉縞11aによって回折される方向と同一方向に向けて第2干渉縞11bで回折される第2再生光L3b(第2再生照明L1b)の波長は、第2干渉縞11bを形成するための第2参照光L2rおよび第2物体光L4oの入射方向を制御することにより、概ね制約されることなく自由に調節可能である。
そして、第2波長を調整することができれば、第1再生光L3aおよび第2再生光L3bの加法混色によって再現される色を調節することができる。したがって、このような本実施の形態によれば、二つの干渉縞11a,11bのみによって、xy色度図上における広い色再現範囲内の色を再現することができるようになる。
また、干渉縞の記録に用いられ得る高出力のレーザ光源は限られており、このため、高出力で発生されるレーザ光の波長も特定の波長に限られている。したがって、第2再生光L3bの波長が、高出力のレーザ光源から発生され得ない波長、例えば波長が570nmの黄色を再現する光に設定しておくことにより、通常の方法では、互いに波長が異なる三つの再生光の加法混色によって再現されるべき色を、二つの干渉縞11a,11bでそれぞれ回折された二つの再生光によって、再現することが可能となる。結果として、第1干渉縞11aを記録するための用いられる光(第1参照光L1rおよび第1物体光L3o)および第2干渉縞11bを記録するための用いられる光(第2参照光L2rおよび第2物体光L4o)が、それぞれ、赤色光、緑色光および青色光のうちの互いに異なるいずれか一つである場合には、第2干渉縞11bを形成するための第2参照光L2rおよび第2再生光L4oの入射方向を適宜調整することにより、第1再生光L3aと第2再生光L3bとを重ね合わせた像12を、xy色度図において赤色、緑色および青色で囲まれる領域内にある所望の色で再生することが可能となる。すなわち、二つの干渉縞11a,11bのみによって、xy色度図において赤色、緑色および青色で囲まれる領域内にある所望の色で像を再生することが可能となる。
一般に、ホログラム記録材料に複数の干渉縞を記録する場合、各干渉縞を形成するためのレーザ光の強度や光量、各干渉縞を形成するための原版の回折効率等を細かく考慮した上で、露光条件を詳細に検討し、最終的には、サンプル作製を繰り返して種々の条件を決定する。当然に、ホログラム記録材料に記録されるべき干渉縞の数が多い程、露光条件の設定は格段に難しくなっていく。また、一例として、フォトポリマーからなるホログラム記録材料では、ホログラム内においてモノマーが粗密にポリマー化していることに起因した屈折率変調によって干渉縞が形成されている。そして、ホログラム記録材料内のモノマー量は限られているので、干渉縞の数量が多い各干渉縞に対するホログラム記録材料の屈折率変調量は制限されるうえ、その割り当てを制御することが困難となる。
その一方で、本実施の形態によるホログラムの製造方法によれば、上述したように、二つの干渉縞11a,11bのみによって、xy色度図において赤色、緑色および青色で囲まれる領域内にある所望の色で像を再生することができる。すなわち、従来と同レベルの色純度を維持しながら、従来よりも容易且つ安価に、所望の色の像を明るく再生することが可能となる。結果として、ホログラム10によって再生される像に、優れた意匠性および高い識別性を付与することができる。このようなホログラム10は、真贋の判定が極めて容易となることから、真正性を標示する真正性標示体として有効に機能し得る。
また、本実施の形態によれば、各再生光L1a,L1bによって二次元パターンが再生されるようになる。この二次元パターンに意匠性や情報等を付与することができ、これにより、ホログラム10が真正性を標示する真正性標示体として有効に機能するようにすることができる。
さらに、図1に示された使用態様では、第2再生照明光L1bが第2干渉縞11bで回折されてなる第2再生光L3bは、記録時におけるホログラム記録材料20への露光方向(第2方向d2および第4方向d4)とは異なる方向から、第1干渉縞11aでの回折光L3aとともに同時に観察されることを意図されている。このような使用態様において、仮に第2干渉縞11bでの回折光が三次元像を再生する場合、当該像は、焦点がずれ、ぼやけて観察されやすくなる。一方、本実施の形態においては、第2干渉縞11bでの回折光が厚みを有さないニ次元パターンを再生するため、像のぼやけは緩和され、とりわけ、ホログラム10の表面の位置にニ次元パターンが再生されるようになる場合には、像のぼやけは発生しなくなる。これにより、第2干渉縞11bでの回折光L3bによって再生される二次元パターンを明瞭に観察することが可能となる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した実施の形態において、第1干渉縞11aによって主として第3方向d3に回折される第1波長の第1再生照明光L1aのホログラム10への入射方向(第1方向d1)と、第2干渉縞11bによって主として第3方向d3に回折される第2波長の第2再生照明光L2aのホログラム10への入射方向(第1方向d1)とが、互いに同一となっている例を示したが、これに限られない。すなわち、互いに異なる方向から入射する互いに異なる波長の再生照明光が、それぞれ別の干渉縞11a,11bで回折されてなる第1再生光L3aおよび第2再生光L3bの加法混色によって、種々の色を再現するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態において、第1参照光L1rと第2参照光L2rとのホログラム記録材料20への入射方向が異なっている例を示したが、これに限られず、同一となっていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、第1再生光L1aによって再生される第1像12aと、第2再生光L1bによって再生される第2像12bとが、同一形状の像であり且つ同一の位置に再生される例を示したが、これに限られない。例えば、第1像12aと第2像12bとが、異なる形状であってもよい。また、第1像12aの再生される位置と、第2像12bの再生される位置とが、ホログラム10の表面と平行な面上において異なっているようにしてもよいし、及び/又は、ホログラム10の表面からの高さ方向において異なっているようにしてもよい。第1像12aと第2像12bとが少なくとも一部分において重なり合って観察される場合、当該重なり合う部分を、上述したように種々の色で明るく再生することが可能となる。また、第1像12aと第2像12bとが部分的にしか重なり合わない場合には、ホログラム10によって同時に複数の色が再現されるようになる。
さらに、上述した実施の形態において、第1干渉縞11aによって再生される第1像12aおよび第2干渉縞11bによって再生される第2像12bが、二次元文字列パターンからなる例を示したがこれに限られない。例えば、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの少なくとも一方が、ブラッグ条件を満たす入射光を散乱反射するようにしてもよい。すなわち、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの少なくとも一方が、ホログラフィック散乱板として機能するようにしてもよい。この変形例によれば、白色光下に配置されたホログラム10は、特定の方向に、第1波長の光と第2波長の光との加法混色で再現される色の散乱光を反射することができる。
あるいは、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの少なくとも一方が、ブラッグ条件を満たす平行入射光束を平行光束として反射するようにしてもよい。すなわち、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの少なくとも一方が、ホログラフィックミラーとして機能するようにしてもよい。なお、第2干渉縞11bがホログラフィックミラーとして機能する場合には、第2干渉縞11bでの回折光が、その回折方向によらず、平行光束となる。したがって、第2干渉縞11bでの回折光が像ぼけ等の不具合を生じさせることなく、第2干渉縞での回折光を明瞭に観察することができる。
さらに、上述した実施の形態において、ホログラム原版30,40からの再生光を物体光として用いてホログラム記録材料20に干渉縞11a,11bを記録するようにした例を示したが、これに限られない。例えば、模型(二次元の模型や三次元の模型等)からの散乱反射光を物体光としてホログラム記録材料20に入射させて、当該ホログラム記録材料20に干渉縞11a,11bを記録するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bがホログラム記録材料20に同時に記録される例を示したが、これに限られない。第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの一方がホログラム記録材料20に先に記録され、その後、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの他方がホログラム記録材料20に記録されるようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bがそれぞれ反射型の体積型ホログラムとして機能する例を示したが、第1干渉縞11aおよび第2干渉縞11bの少なくとも一方が透過型の体積型ホログラムとして機能するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、第1ホログラム原版30が反射型体積ホログラムからなる例を示したこれに限られず、第1ホログラム原版が透過型体積ホログラムからなるようにしてもよい。第1ホログラム原版が透過型体積ホログラムからなる場合、次のようにして、第1干渉縞11aをホログラム記録材料20に記録することができる。まず、透過型体積ホログラムからなる第1ホログラム原版を、ホログラム記録材料20の一方の面の側に配置し、当該第1ホログラム原版にそのブラッグ条件を満たすようにコヒーレントな光を入射させる。この結果、第1ホログラム原版からホログラム記録材料20に向けて、回折光としての第1物体光が入射するとともに、回折されることなく第1ホログラム原版30を透過した0次光としての第1参照光が入射する。これにより、第1参照光および第1物体光が干渉してなる明暗縞のパターンに対応して、第1干渉縞11aをホログラム記録材料20に記録することができる。また、第1ホログラム原版30と同様に、上述した実施の形態において、第2ホログラム原版40が反射型体積ホログラムからなる例を示したこれに限られず、第2ホログラム原版が透過型体積ホログラムからなるようにしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。例えば、第1干渉縞11aが三次元パターンを再生するとともに、第2干渉縞11bがホログラフィック散乱板またはホログラフィックミラーとして機能するようにしてもよい。このような変形例においては、第1干渉縞11aによって再生される三次元像が、第1再生光L3aと第2再生光L3bとの加法混色によって再現される色で、観察されるようになる。