JP5626474B2 - ラジアルフォイル軸受 - Google Patents
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Description
本発明は、ラジアルフォイル軸受に関する。本願は、2011年8月1日に、日本に出願された特願2011−168574号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
従来、高速回転体用の軸受として、回転軸に外挿されて用いられるラジアル軸受が知られている。ラジアル軸受としては、軸受面を形成する薄板状のトップフォイルと、このトップフォイルを弾性的に支持するバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備えたラジアルフォイル軸受がよく知られている。ラジアルフォイル軸受のバックフォイルとしては、薄板を波板状に成形したバンプフォイルが主に用いられている。
上記ラジアルフォイル軸受では、通常、トップフォイルやバンプフォイルが軸受ハウジングから脱落するのを防止するため、その一端部(止端部)がスポット溶接によって軸受ハウジングに直接的に、あるいはスペーサを介して間接的に固定されている。
また、溶接に代えて機械的に固定を行うために、トップフォイルの一端側の一部または全部を曲げ加工によって起こし、この一端側を、外輪(軸受ハウジング)に形成した係合溝に係合させた構造も知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、溶接に代えて機械的に固定を行うために、トップフォイルの一端側の一部または全部を曲げ加工によって起こし、この一端側を、外輪(軸受ハウジング)に形成した係合溝に係合させた構造も知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、トップフォイルを溶接すると、入熱があるために、トップフォイルに歪みが生じる。特許文献1の構造でも、曲げ加工によってトップフォイルに歪みが生じてしまう。
回転軸の回転によって前記回転軸とトップフォイルとの間に形成されるフォイル軸受の流体潤滑膜の厚みは、10μm前後と非常に薄い。このため、トップフォイルに少しでも歪みが生じると、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)に影響が及び、設計通りの性能が得られなくなる。
回転軸の回転によって前記回転軸とトップフォイルとの間に形成されるフォイル軸受の流体潤滑膜の厚みは、10μm前後と非常に薄い。このため、トップフォイルに少しでも歪みが生じると、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)に影響が及び、設計通りの性能が得られなくなる。
また、一端部(止端部)をスポット溶接によって軸受ハウジングに固定するトップフォイルでは、その両端付近(止端側と自由端側)が軸受ハウジングの内周面を構成する曲面になじみ難く(曲面に沿って変形し難く)、平面に近い状態になる。すると、平面に近い前記部位では回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が発生する。その結果、回転軸の始動トルクが高くなったり、運転中の発熱が設定以上に高くなるなどの不都合が起こる。
回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)を小さくする方法として、例えば、トップフォイルの両端付近を支えているバンプフォイル(バックフォイル)の山を無くすという方法が考えられる。しかしながら、バンプフォイルの山を無くすと、山を無くした部位における回転軸の支持剛性が大幅に下がる。このため、衝撃荷重などによって回転軸が前記部位に向かって動こうとしたとき、回転軸の動きを抑制することができない。その結果、回転軸に設けられたインペラなどの回転部分が静止部(ハウジング)と接触を起こす。
また、前記部位における回転軸の支持剛性を下げ過ぎないようにする方法として、前記部位のバンプフォイルの一つの山の高さを低くするという方法が考えられる。しかしながら、低くする量が数十μmの小さい単位であるため、その製作は極めて困難である。
また、前記部位における回転軸の支持剛性を下げ過ぎないようにする方法として、前記部位のバンプフォイルの一つの山の高さを低くするという方法が考えられる。しかしながら、低くする量が数十μmの小さい単位であるため、その製作は極めて困難である。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、トップフォイルに生じる歪みを充分に少なくし、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について設計通りの良好な性能が得られるラジアルフォイル軸受を提供する。また、本発明は、回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じることを防止したラジアルフォイル軸受を提供する。
本発明にかかる第1態様のラジアルフォイル軸受は、回転軸に外挿されて前記回転軸を支持するラジアルフォイル軸受であって、
前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルをその内部に収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備え、
前記トップフォイルは、矩形状の金属箔が円筒状に巻かれ、前記金属箔の一方の側が、前記金属箔によって形成される円筒の一つの接線方向に延び出るように形成され、
前記軸受ハウジングの内周面には、その軸方向に沿って係合溝が形成され、前記係合溝は、その深さ方向が、前記トップフォイルの前記円筒の接線方向に一致して形成され、
前記トップフォイルの、前記円筒の接線方向に延び出た一方の側が、前記係合溝に係合している。
前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルをその内部に収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備え、
前記トップフォイルは、矩形状の金属箔が円筒状に巻かれ、前記金属箔の一方の側が、前記金属箔によって形成される円筒の一つの接線方向に延び出るように形成され、
前記軸受ハウジングの内周面には、その軸方向に沿って係合溝が形成され、前記係合溝は、その深さ方向が、前記トップフォイルの前記円筒の接線方向に一致して形成され、
前記トップフォイルの、前記円筒の接線方向に延び出た一方の側が、前記係合溝に係合している。
この場合、トップフォイルの一方の側が、円筒の接線方向に延び出て形成されており、この一方の側が、軸受ハウジングの係合溝に係合している。このため、トップフォイルに対してスポット溶接や曲げ加工を行うことなく、トップフォイルを軸受ハウジング内に収容・固定することができる。
また、係合溝の深さ方向を、トップフォイルが形成する円筒の一つの接線方向に一致させている。このため、前記トップフォイルの一方の側を前記係合溝の深さ方向に合わせて係合させると、この係合した状態ではトップフォイルは変形しない。したがって、トップフォイルに歪みが生じることがない。その結果、トップフォイルに歪みが生じるのを防止し、トップフォイルの歪みを充分に少なくすることができる。
また、係合溝の深さ方向を、トップフォイルが形成する円筒の一つの接線方向に一致させている。このため、前記トップフォイルの一方の側を前記係合溝の深さ方向に合わせて係合させると、この係合した状態ではトップフォイルは変形しない。したがって、トップフォイルに歪みが生じることがない。その結果、トップフォイルに歪みが生じるのを防止し、トップフォイルの歪みを充分に少なくすることができる。
本発明にかかる第2態様によれば、前記第1態様のラジアルフォイル軸受において、前記トップフォイルには、前記一方の側と、前記一方の側と反対の他方の側とに、これらの間の中央部に比べて薄厚な薄肉部が形成されていることが好ましい。
この場合、トップフォイルの両端部が弾性変形し易くなり、前記両端部において回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じることを抑制できる。
この場合、トップフォイルの両端部が弾性変形し易くなり、前記両端部において回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じることを抑制できる。
本発明にかかる第3態様によれば、前記第1態様のラジアルフォイル軸受において、前記薄肉部は、その外周面が前記中央部の外周面より凹んだ状態に形成されていることが好ましい。
この場合、この薄肉部では、その外周面側を支持するバックフォイルとの間に隙間が形成され、前記薄肉部において回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じることが確実に防止できる。
この場合、この薄肉部では、その外周面側を支持するバックフォイルとの間に隙間が形成され、前記薄肉部において回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じることが確実に防止できる。
本発明にかかる第4態様によれば、前記第1から3の何れか一つの態様のラジアルフォイル軸受において、前記係合溝に係合しているトップフォイルの前記一方の側が、固定手段によって前記係合溝内に固定されていることが好ましい。
この場合、トップフォイルの一方の側が係合溝内に固定されることにより、回転軸の回転中にトップフォイルが回転したり、ラジアルフォイル軸受から脱落することを確実に防止できる。
この場合、トップフォイルの一方の側が係合溝内に固定されることにより、回転軸の回転中にトップフォイルが回転したり、ラジアルフォイル軸受から脱落することを確実に防止できる。
本発明にかかる第5態様によれば、前記第1から4の何れか一つの態様のラジアルフォイル軸受において、前記トップフォイルの径方向外側と前記バックフォイルの径方向内側との間に中間フォイルが配置され、前記軸受ハウジングが前記トップフォイル、前記中間フォイル、及び前記バックフォイルをその内部に収容していることが好ましい。
この場合、トップフォイルとバックフォイルとの間に中間フォイルがあるため、回転軸が回転時において軸振動を起こした際に、トップフォイルと中間フォイルとの間および中間フォイルとバックフォイルとの間が互いに滑ることによって摩擦が生じる。これにより、軸振動を減衰させるという効果が得られる。前記減衰効果によって、回転軸の軸振動を抑制することができる。また、中間フォイルによってトップフォイルの剛性を補強することもできる。
本発明にかかる第6態様によれば、前記第5の態様のラジアルフォイル軸受においては、前記中間フォイルが複数枚重ねられていることが好ましい。
この場合、トップフォイルと中間フォイルとの間及び中間フォイルとバックフォイルとの間が互いに滑ることで生じる摩擦によって得られる減衰効果に、複数枚の中間フォイル間の滑りによる摩擦によって得られる減衰効果を加えることができる。その結果、回転軸の軸振動をより収まり易くすることができる。
この場合、トップフォイルと中間フォイルとの間及び中間フォイルとバックフォイルとの間が互いに滑ることで生じる摩擦によって得られる減衰効果に、複数枚の中間フォイル間の滑りによる摩擦によって得られる減衰効果を加えることができる。その結果、回転軸の軸振動をより収まり易くすることができる。
本発明のラジアルフォイル軸受によれば、トップフォイルに歪みが生じるのを防止し、トップフォイルの歪みが充分に少なくなるようにした。また、回転軸の軸振動を容易に抑制できる。これにより、ラジアルフォイル軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について、良好で設計通りの性能を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明のラジアルフォイル軸受の実施形態を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
(第1実施形態)
図1は、本発明のラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。図1は、回転軸1、回転軸1の先端部に設けられたインペラ2、及びラジアルフォイル軸受3を示している。
なお、図1では、ラジアルフォイル軸受3が一つしか記載されていないが、通常は回転軸1の軸方向にラジアルフォイル軸受が二つ設けられて、回転軸1の支持構造が構成される。したがって、本実施形態においてもラジアルフォイル軸受3が二つ設けられている。
図1は、本発明のラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。図1は、回転軸1、回転軸1の先端部に設けられたインペラ2、及びラジアルフォイル軸受3を示している。
なお、図1では、ラジアルフォイル軸受3が一つしか記載されていないが、通常は回転軸1の軸方向にラジアルフォイル軸受が二つ設けられて、回転軸1の支持構造が構成される。したがって、本実施形態においてもラジアルフォイル軸受3が二つ設けられている。
回転軸1には、インペラ2が形成された側にスラストカラー4が固定されている。スラストカラー4の両面側には、スラストカラー4に対向するそれぞれの側にスラスト軸受5が配置されている。
また、インペラ2は、静止側となるハウジング6内に配置されており、ハウジング6との間にチップクリアランス7を有している。
また、回転軸1には、スラストカラー4より中央側において、ラジアルフォイル軸受3が外挿されている。
また、インペラ2は、静止側となるハウジング6内に配置されており、ハウジング6との間にチップクリアランス7を有している。
また、回転軸1には、スラストカラー4より中央側において、ラジアルフォイル軸受3が外挿されている。
図2Aから図2Eは、前述した構成のターボ機械に適用されたラジアルフォイル軸受の第1実施形態を示す図である。図2Aに示すように、第1実施形態のラジアルフォイル軸受3は、円筒形状を有し、回転軸1に外挿されて、回転軸1を支持する。ラジアルフォイル軸受3は、回転軸1に対向して配置される円筒状のトップフォイル10と、トップフォイル10の径方向外側に配置されるバックフォイル11と、バックフォイル11の径方向外側に配置される軸受ハウジング12とを備えている。
軸受ハウジング12は、金属製で円筒形状を有し、ラジアルフォイル軸受3の最外部を構成し、その内部にバックフォイル11およびトップフォイル10を収容する。軸受ハウジング12には、その内周面に、軸受ハウジング12の軸方向に沿って係合溝13が形成されている。
すなわち、軸受ハウジング12の正面図である図2Bに示すように、軸受ハウジング12の内周面には、軸受ハウジング12の軸方向の全長に渡って係合溝13が形成されている。係合溝13は、図2C中に矢印Aで示す深さ方向が、後述するトップフォイル10の円筒部10aの、所定位置での(一つの)接線方向に一致するように形成されている。また、その深さは、2mm〜5m程度である。
軸受ハウジング12の外周面側には、係合溝13に連通し、係合溝13の深さ方向Aに直交する一対の孔14が形成されている。一対の孔14は、後述するように係合溝13内に差し入れられたトップフォイル10の一方の側10bを、係合溝13内に固定するのに用いられるネジの挿入用の孔である。一対の孔14の内周面には、雌ネジ部がそれぞれ形成されている。
図2Aに示すように、バックフォイル11は、フォイル(薄板)から形成されてトップフォイル10を弾性的に支持する。バックフォイル11としては、例えばバンプフォイルや、特開2006−57652号公報や特開2004−270904号公報などに記載されているスプリングフォイル、又は特開2009−299748号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。本実施形態では、バックフォイル11としてバンプフォイルを用いている。ただし、前記のスプリングフォイルやバックフォイルを、本発明のバックフォイルとして用いてもよい。
バンプフォイル(バックフォイル)11は、図2Aに示すように、フォイル(薄板)が波板状に成形され、軸受ハウジング12の内周面に沿って円筒状を形成するように配置されている。ただし、本実施形態においては、バンプフォイル11は、その両端部間を所定間隔あけた状態で配設されている。すなわち、バンプフォイル11は、軸受ハウジング12の内周面上を、係合溝13上及び係合溝13の側方(係合溝13の深さ方向Aと反対の側方)を覆うことなく、その他の面上のみを覆って配置されている。
また、波板状に成形されたバンプフォイル11には、ラジアルフォイル軸受3の周方向に沿って、軸受ハウジング12と接する谷部と、トップフォイル10に接する山部とを交互に形成されている。これによって、バンプフォイル11は、特にトップフォイル10に接する山部により、トップフォイル10を弾性的に支持している。また、ラジアルフォイル軸受3の軸方向に、山部や谷部による流体の通路が形成されている。
なお、バンプフォイル11は、従来と同様に、スポット溶接等を用いて軸受ハウジング12に固定されている。
なお、バンプフォイル11は、従来と同様に、スポット溶接等を用いて軸受ハウジング12に固定されている。
トップフォイル10は、バックフォイル(バンプフォイル)11の内面に沿って円筒状に巻かれ、その一方の側10bの先端部が軸受ハウジング12に形成された前記係合溝13に係合するように配設されている。トップフォイル10は、その展開図である図2Dに示すように、軸受周方向を長辺とし、軸受長方向を短辺とする矩形状の金属箔が、その側面図である図2E中の矢印方向(長辺の長さ方向:軸受周方向)に円筒状に巻かれて、形成されている。
ただし、トップフォイル10は、前記金属箔の両端が突き合わされるように巻かれることなく、図2Cに示すように、その一方の側10bが他方の側の外側に重なるように、巻かれている。また、一方の側10bは、これ以外の部分で形成される円筒部10aの所定位置(本実施形態ではバックフォイル11の一方の端部11aと重なる位置R)、での接線方向に、延び出て形成されている。
前記の軸受ハウジング12における係合溝13も、その深さ方向Aが、トップフォイル10の円筒部10aの前記所定位置(前記位置R)での接線方向に一致して形成されている。なお、本実施形態における「接線方向に一致している」という文言は、設計上、前記位置Rでの接線方向に一致させて係合溝13を形成しているという意味である。係合溝13は、製造誤差あるいは前記製造誤差を見込んだクリアランスを含んでいてもよい。これにより、位置Rでの接線方向と係合溝13の深さ方向Aとが僅かにずれていても、本実施形態の範囲内である。
トップフォイル10は、前述したようにその一方の側10bの延び出た方向が係合溝13の深さ方向Aに一致するように配置されている。一方の側10bの先端部が、係合溝13に係合されている。したがって、トップフォイル10は、一方の側10bが係合した状態では変形しない。このため、トップフォイル10には、歪みが生じない。
また、本実施形態では、係合溝13に係合しているトップフォイル10の一方の側10bは、固定手段によって係合溝13内に固定されている。具体的には、固定手段として雄ネジ15を前記孔14に螺合し挿入する。これにより、一方の側10bを係合溝13の内壁面に密着させることで固定する。なお、係合溝13の内壁面に密着させられることによる一方の側10bの変形は僅かである。このため、一方の側10bの変形によってトップフォイル10に歪みが生じることはほとんどない。
また、図2Eに示すように、一方の側10bと、これと反対の他方の側とに、これらの間の中央部に比べて薄厚な薄肉部18が形成されている。これら薄肉部18は、図2A及び図2Cに示すように、その外周面(バンプフォイル11側の面)が前記中央部の外周面より凹んだ状態となるよう、薄厚化されて形成されている。
薄肉部18は、トップフォイル10の両端部を、十μm単位でコントロールして所望の厚さ(薄さ)に形成する加工(例えば、エッチング加工)によって、形成される。具体的には、軸受径φ35mmとした場合、トップフォイル10の厚さを100μmとすると、薄肉部18の厚さは80μm程度となるように形成する。なお、エッチング加工では、曲げ加工などに比べてトップフォイル10に生じる応力が極めて小さい。したがって、トップフォイル10に歪みが生じることはほとんどない。
また、図2A、図2C、及び図2Eに示すように、薄肉部18の周方向の長さLは、係合溝13と、係合溝13の両側に位置する、バンプフォイル11の端部の山一つ分までに対応する長さである。
また、図2A、図2C、及び図2Eに示すように、薄肉部18の周方向の長さLは、係合溝13と、係合溝13の両側に位置する、バンプフォイル11の端部の山一つ分までに対応する長さである。
トップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成したことにより、これら両端部(薄肉部18)は弾性変形し易くなる。したがって、これら両端部は、軸受ハウジング12の内周面を構成する曲面に倣って曲面となる。これにより、トップフォイル10には、その両端部においても回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)がほとんど発生しない。
また、トップフォイル10の両端部の外周面を、前記中央部の外周面より凹んだ状態となるように薄厚化して薄肉部18を形成している。これにより、薄肉部18の外周面とトップフォイル10の外周面側を支持するバックフォイル11との間において、その端部の山一つ分との間に隙間が形成される。これにより、薄肉部18においては、回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じることが確実に防止される。なお、薄肉部18の周方向の長さLは、図2A及び図2Cに示した例に代えて、係合溝13と、バンプフォイル11の端部の山三つ分ぐらいまでに対応する長さでもよい。
次に、前述した構成からなるラジアルフォイル軸受3の作用について説明する。
回転軸1が停止した状態では、トップフォイル10はバックフォイル11によって回転軸1側に付勢されることで回転軸1に密着している。
なお、本実施形態では、トップフォイル10の両端部が薄肉部18である。このため、これら薄肉部18では回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)がほとんど生じない。
回転軸1が停止した状態では、トップフォイル10はバックフォイル11によって回転軸1側に付勢されることで回転軸1に密着している。
なお、本実施形態では、トップフォイル10の両端部が薄肉部18である。このため、これら薄肉部18では回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)がほとんど生じない。
回転軸1を図2A中の矢印P方向に始動させると、最初回転軸1は低速で回転を始め、その後徐々に加速して高速で回転する。続いて、図2A中矢印Qで示すように、トップフォイル10の他方端(一方の側10bと反対の側[自由端側]の端部)とバンプフォイル11の一端との間から周囲流体が引き入れられ、トップフォイル10と回転軸1との間に周囲流体が流入する。これにより、トップフォイル10と回転軸1との間に流体潤滑膜が形成される。
その際、流体潤滑膜が形成されるまでの過渡状態においては、回転軸1とトップフォイル10との間に固体摩擦が生じ、これが始動時の抵抗になる。しかしながら、前記したようにトップフォイル10の両端部でプリロードが生じなくなっており、周囲流体が流入する側のトップフォイル10が柔らかい薄肉部18であるためにトップフォイル10と回転軸1との間が開口し易くなっている。これにより、回転軸1が始動すると早期に流体潤滑膜が形成され、回転軸1はトップフォイル10に対して非接触状態で回転するようになる。
ラジアルフォイル軸受3では、トップフォイル10の一方の側10bが、円筒部10aの接線方向に延び出て形成されている。一方の側10bが、軸受ハウジング12の係合溝13に係合している。このため、トップフォイルに対してスポット溶接や曲げ加工を行うことなく、トップフォイル10を軸受ハウジング12内に収容・固定することができる。また、係合溝13の深さ方向Aを、トップフォイル10が形成する円筒部10aの一つの接線方向に一致させている。このため、トップフォイル10の一方の側10bを係合溝13の深さ方向Aに合わせて係合させると、この係合した状態ではトップフォイル10は変形しない。したがって、トップフォイル10には、歪みが生じない。トップフォイル10に歪みが生じることを防止し、トップフォイル10の歪みを充分に少なくすることができる。その結果、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について、設計通りの良好な性能を発揮させることができる。
また、トップフォイル10については、従来のスポット溶接や、歪みを発生させる曲げ加工を無くすことができるため、製作の難易度を低下させ、製造コストを低減することができる。
また、軸受ハウジング12に対するトップフォイル10の溶接が無いため、溶接不良などによる組立て不良や組立てのバラツキが無くなる。したがって、製造工程における良品の再現性が高くなり、優れた量産性を得ることができる。
また、軸受ハウジング12に対するトップフォイル10の溶接が無いため、溶接不良などによる組立て不良や組立てのバラツキが無くなる。したがって、製造工程における良品の再現性が高くなり、優れた量産性を得ることができる。
トップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成している。このため、トップフォイル10には、前記したようにこれら両端部においても回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)が発生しない。したがって、プリロードによって始動トルクが高くなったり、運転中の発熱が設定以上に高くなることを防止できる。
また、トップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成している。このため、例えば従来のようにトップフォイルの両端部を軸受ハウジングの内曲面(内周面)になじませるための熱処理工程が不要になる。
さらに、トップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成している。このため、周囲流体が流入する側のトップフォイル10の端部側(従来型の自由端側に相当)が柔らかくなっている。したがって、前記したように周囲流体がトップフォイル10と回転軸1との間に流入し易くなる。その結果、より低い回転数で流体潤滑膜が形成されるようになり、回転軸1の始動性が向上する。
また、トップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成している。このため、例えば従来のようにトップフォイルの両端部を軸受ハウジングの内曲面(内周面)になじませるための熱処理工程が不要になる。
さらに、トップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成している。このため、周囲流体が流入する側のトップフォイル10の端部側(従来型の自由端側に相当)が柔らかくなっている。したがって、前記したように周囲流体がトップフォイル10と回転軸1との間に流入し易くなる。その結果、より低い回転数で流体潤滑膜が形成されるようになり、回転軸1の始動性が向上する。
(第2実施形態)
次に、本発明のラジアルフォイル軸受の第2実施形態を説明する。図3Aから図3Cは、図1に示したターボ機械に適用されたラジアルフォイル軸受の第2実施形態を示す図である。図3Aはラジアルフォイル軸受20を示している。ラジアルフォイル軸受20が図2A及び図2Cに示したラジアルフォイル軸受3と異なる点は、トップフォイル21の一方の側の、係合溝13への固定方法にある。
次に、本発明のラジアルフォイル軸受の第2実施形態を説明する。図3Aから図3Cは、図1に示したターボ機械に適用されたラジアルフォイル軸受の第2実施形態を示す図である。図3Aはラジアルフォイル軸受20を示している。ラジアルフォイル軸受20が図2A及び図2Cに示したラジアルフォイル軸受3と異なる点は、トップフォイル21の一方の側の、係合溝13への固定方法にある。
すなわち、本実施形態のラジアルフォイル軸受20のトップフォイル21においては、図3Aから図3Cに示すように、その一方の側21bに、雄ネジ15の先端側を通す貫通孔22が形成されている。これら貫通孔22は、図2Bに示した孔14の位置に対応して二つ形成されている。また、これら貫通孔22は、その内径が雄ネジ15の外径より大きく形成されている。したがって、雄ネジ15は、トップフォイル21の一方の側21bを押圧することなく、係合溝13の内壁面に当接する。これにより、トップフォイル21の一方の側21bは、雄ネジ15に押圧されることで変形しない。一方の側21bは、円筒部21aの接線方向に延び出た状態のままで、その先端部が係合溝13内に確実に保持、固定された状態になる。
本実施形態のラジアルフォイル軸受20では、図2Aから図2Eに示したラジアルフォイル軸受3と同様の作用効果が得られる。さらに、トップフォイル21の一方の側21bを係合溝13内に確実に固定することができる。また、変形による僅かな歪みも生じないようにできる。
(第3実施形態)
本発明のラジアルフォイル軸受の第3実施形態を説明する。図4Aから図4Cは、図1に示したターボ機械に適用されるラジアルフォイル軸受の第3実施形態を示す図である。図4Aはラジアルフォイル軸受30を示している。図4Aに示したラジアルフォイル軸受30が、図2Aから図3Cに示したラジアルフォイル軸受3及びラジアルフォイル軸受20と異なる点は、トップフォイル10(21)とバックフォイル11との間に中間フォイル33を備えている点である。
本発明のラジアルフォイル軸受の第3実施形態を説明する。図4Aから図4Cは、図1に示したターボ機械に適用されるラジアルフォイル軸受の第3実施形態を示す図である。図4Aはラジアルフォイル軸受30を示している。図4Aに示したラジアルフォイル軸受30が、図2Aから図3Cに示したラジアルフォイル軸受3及びラジアルフォイル軸受20と異なる点は、トップフォイル10(21)とバックフォイル11との間に中間フォイル33を備えている点である。
中間フォイル33は、図4Aに示すように、トップフォイル10(21)とバックフォイル(バンプフォイル)11との間に配置されている。また、中間フォイル33は、トップフォイル10(21)と同様にバックフォイル(バンプフォイル)11の内面に沿って円筒状に巻かれている。
中間フォイル33は、トップフォイル10(21)とバックフォイル11との間に保持されている。このため、中間フォイル33と軸受ハウジング3(20)との間で軸方向のずれが生じた際も、中間フォイル33が軸受ハウジング3(20)の外に飛び出すことを防止できる。
図4B及び図4Cに示すように、本実施形態においては、中間フォイル33の展開形状は、トップフォイル10(21)の展開形状と同じである。しかしながら、中間フォイル33の厚さは、トップフォイル10(21)よりも薄く形成されている。
中間フォイル33は、トップフォイル10(21)とバックフォイル11との間に保持されている。このため、中間フォイル33と軸受ハウジング3(20)との間で軸方向のずれが生じた際も、中間フォイル33が軸受ハウジング3(20)の外に飛び出すことを防止できる。
図4B及び図4Cに示すように、本実施形態においては、中間フォイル33の展開形状は、トップフォイル10(21)の展開形状と同じである。しかしながら、中間フォイル33の厚さは、トップフォイル10(21)よりも薄く形成されている。
第一及び第二実施形態においては、トップフォイル10(21)の両端部に薄肉部18を形成したが、中間フォイル33にも薄肉部18を形成してもよい。トップフォイル10(21)に形成することなく中間フォイル33にのみに薄肉部18を形成してもよい。中間フォイル33の厚さは、例えば30μm程度と非常に薄く形成されるため、前記薄肉部を形成することはあまり無い。したがって、本実施形態ではトップフォイル10(21)にのみ薄肉部18を形成している。
本実施形態のラジアルフォイル軸受30によれば、図2Aから図3Cに示したラジアルフォイル軸受3(20)と同様の作用効果を得ることができる。さらに、ラジアルフォイル軸受30は、トップフォイル10(21)とバックフォイル11との間に中間フォイル33を備えているので、回転軸1が回転時において軸振動を起こしたときには、それに伴う膜圧変動がトップフォイル10(21)から中間フォイル33を介してバックフォイル11へ伝達される。このとき、トップフォイル10(21)には荷重変動によって微小な撓み(荷重に応じて変動)が引き起こされる。これにより、トップフォイル10(21)と中間フォイル33との間および中間フォイル33とバックフォイル11との間に「滑り」が生じる。この「滑り」が摩擦によるエネルギー散逸を引き起こし、膜圧変動を減衰させる。すなわち、上記膜圧変動に対する減衰効果を得ることができる。したがって、上記減衰効果によって前記の軸振動を抑制し、前記軸振動を収まり易くすることができる。また、中間フォイル33によってトップフォイル10(21)の剛性を補強することもできる。その結果、ラジアルフォイル軸受3(20)の動特性(剛性と減衰)を充分に高めることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では固定手段として雄ネジ15を用いたが、これに代えて楔状のピンなどを用い、これを孔14に差し込むことにより、トップフォイル21の一方の側を係合溝13に固定するようにしてもよい。
薄肉部18については、例えばその表裏両面をエッチング加工し、薄厚に形成してもよい。
例えば、前記実施形態では固定手段として雄ネジ15を用いたが、これに代えて楔状のピンなどを用い、これを孔14に差し込むことにより、トップフォイル21の一方の側を係合溝13に固定するようにしてもよい。
薄肉部18については、例えばその表裏両面をエッチング加工し、薄厚に形成してもよい。
前記実施形態ではトップフォイル10(21)の一方の側10b(21b)全体を円筒部10a(21a)から延び出させ、その先端部を係合溝13に係合させるようにしたが、例えば一方の側10b(21b)にその側縁から延出する延出片を設けておき、この延出片のみを係合溝13に係合させるようにしてもよい。また、この延出片のみを円筒部10a(21a)から延び出るように形成し、この延出片を本発明の一方の側としてもよい。
前記実施形態では一枚の中間フォイル33を用いているが、複数の中間フォイルを重ねることによって、中間フォイルを多層化してもよい。バックフォイルとトップフォイルとの間に複数の中間フォイルを重ねて配置することにより、トップフォイルと中間フォイルとの間や中間フォイルとバックフォイルとの間が互いに滑ることで生じる摩擦によって得られる減衰効果に、中間フォイル間の滑りによる摩擦によって得られる減衰効果を加えることができる。その結果、回転軸の軸振動を抑制して前記軸振動をより収まり易くすることができる。
ラジアルフォイル軸受の減衰能力を高めるには、前記したように中間フォイルを複数枚重ねることよって多層化することが有効である。しかしながら、従来、中間フォイルは、スポット溶接を用いて軸受ハウジングに固定されている。このため、中間フォイルの厚さを上記スポット溶接により溶け落ちない程度に調整する必要があり、中間フォイルの厚さはトップフォイルの厚さと同程度である。上記した厚さの中間フォイルを複数枚重ねて多層化すると、軸受面の剛性(トップフォイルと中間フォイルを合わせた剛性)が非常に高くなり、軸振動によって引き起こされる流体潤滑膜の膜圧変動に対して軸受面が追従できなくなる。その結果、前述した各フォイル間の「滑り」による十分な減衰効果を得えることができない。
しかしながら、前記実施形態において、中間フォイル33は、スポット溶接を用いることなく、トップフォイル10(21)とバックフォイル11との間に保持されている。このため、中間フォイルをトップフォイルよりも薄く形成することができる。したがって、軸受面の剛性を適正な高さ(強さ)に調節しながら、複数の中間フォイルを重ね合わせることができる。
本発明のラジアルフォイル軸受によれば、トップフォイルの歪みの発生を防止し、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)に関して設計通りの良好な性能を有するラジアルフォイル軸受を得ることができる。
1…回転軸、3…ラジアルフォイル軸受、10…トップフォイル、10a…円筒部(円筒)、10b…一方の側、11…バックフォイル(バンプフォイル)、12…軸受ハウジング、13…係合溝、14…孔、15…雄ネジ(固定手段)、18…薄肉部、20…ラジアルフォイル軸受、21…トップフォイル、21a…円筒部(円筒)、21b…一方の側、22…貫通孔、30…ラジアルフォイル軸受、33…中間フォイル
Claims (5)
- 回転軸に外挿されて前記回転軸を支持するラジアルフォイル軸受であって、
前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルをその内部に収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備え、
前記トップフォイルは、矩形状の金属箔が円筒状に巻かれるとともに、前記金属箔の一方の側が、前記金属箔によって形成される円筒の接線方向に延び出て形成され、
前記軸受ハウジングの内周面には、その軸方向に沿って係合溝が形成され、
前記係合溝は、その深さ方向が、前記トップフォイルの前記円筒の一つの接線方向に一致して形成され、
前記トップフォイルの、前記円筒の接線方向に延び出た一方の側が、前記係合溝に係合しており、
前記トップフォイルには、前記一方の側と、前記一方の側と反対の他方の側とに、これらの間の中央部に比べて薄厚な薄肉部が形成されているラジアルフォイル軸受。 - 前記薄肉部は、その外周面が前記中央部の外周面より凹んだ状態に形成されている請求項1に記載のラジアルフォイル軸受。
- 前記係合溝に係合しているトップフォイルの前記一方の側が、固定手段によって前記係合溝内に固定されている請求項1又は2に記載のラジアルフォイル軸受。
- 前記トップフォイルの径方向外側と前記バックフォイルの径方向内側との間に中間フォイルが配置され、前記軸受ハウジングが前記トップフォイル、前記中間フォイル、及び前記バックフォイルをその内部に収容している請求項1〜3のいずれか一項に記載のラジアルフォイル軸受。
- 前記中間フォイルが複数枚重ねられている請求項4に記載のラジアルフォイル軸受。
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