(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の燃料供給システム1の全体構成図である。この燃料供給システム1は、車両に適用されており、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)EGへ燃料を供給する機能を有するとともに、後述する車両用空調装置2において、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を有している。
まず、燃料供給システム1は、加圧されて液化された高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段としての高圧タンク11を備えている。本実施形態では、この高圧タンク11に貯蔵される燃料として、可燃性を有し、比較的気化潜熱が高く、さらに、高圧化においては常温(15℃〜25℃程度)でも液化する燃料を採用している。
つまり、本実施形態の燃料は、エンジンEGにて燃料として燃焼させるために可燃性が必要となる。また、後述するように、その気化潜熱によって送風空気を冷却するために比較的気化潜熱が高い燃料であることが望ましい。さらに、その製造コストを低減するとともに減圧することで容易に気化させることができるように常温でも液化しやすい燃料であることが望ましい。
具体的には、本実施形態では、可燃性を有し、気化潜熱が水の気化潜熱の20%以上であり、常温であっても1.5MPa以下で液化する燃料として、アンモニアを採用している。さらに、アンモニアは水素を含有する燃料(水素化合物)であるので、改質することによって可燃性を有する水素ガスを生成することもできる。
この他にも同等の性質を有する燃料として、ジメチルエーテル、アルコール含有燃料等を採用してもよい。さらに、水素を含有する燃料であって、同燃料の分子中に、S(硫黄)、O(酸素)、N(窒素)およびハロゲンのうち少なくとも1種の原子が含まれるものであり、かつ、分子間にて水素結合が発現するものを採用してもよい。
高圧タンク11の燃料流出口には、開閉弁12を介して、燃料を気化させる熱交換器13の燃料流入口(燃料流入ポート131)が接続されている。開閉弁12は、高圧タンク11の燃料流出口から熱交換器13の燃料流入口へ至る燃料通路を開閉する電磁弁であり、後述するシステム制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
そして、システム制御装置が、開閉弁12の開弁時間を調整することによって、熱交換器13へ流入する燃料流量が調整される。従って、開閉弁12は、燃料流量調整手段を構成している。もちろん、燃料流量調整手段として、弁開度を調整することによって燃料流量を調整する流量調整弁を採用してもよい。また、開閉弁12は、高圧タンク11の燃料流出口側に一体的に設けられていてもよいし、熱交換器13の燃料流入口側に一体的に設けられていてもよい。
熱交換器13は、高圧タンク11から流出した燃料を、熱媒体と熱交換させることによって加熱して気化させる気化用熱交換器である。さらに、この熱交換器13は、高圧タンク11から流出した液相状態の燃料(液体燃料)を気化させる第1燃料気化部14と、第1燃料気化部14から流出した液体燃料あるいは気液二相状態の燃料(二相燃料)を気化させる第2燃料気化部15とを一体的に構成したものである。
より具体的には、第1燃料気化部14は、高圧タンク11から流出した液体燃料と後述する車両用空調装置2の熱媒体循環回路20を循環する循環水(第1熱媒体)とを熱交換させることによって、液体燃料を加熱して気化させる熱交換部である。また、第2燃料気化部15は、第1燃料気化部15から流出した液体燃料あるいは二相燃料と後述する冷却水循環回路40を循環するエンジンEGの冷却水(第2熱媒体)とを熱交換させることによって、液体燃料あるいは二相燃料を加熱して気化させる熱交換部である。
従って、熱交換器13の第1、第2燃料気化部14、15は、それぞれ特許請求の範囲に記載された第1、第2燃料気化手段に対応している。なお、熱交換器13の具体的構成については後述する。
熱交換器13の気体燃料出口(燃料流出ポート135)には、熱交換器13にて気化された気相状態の燃料(気体燃料)を蓄えるバッファタンク16が接続されている。バッファタンク16から流出した気体燃料の流れは、2つの流れに分岐され、分岐された一方の気体燃料は、気体燃料をエンジンEGの燃焼室内へ噴射供給する燃料噴射弁(インジェクタ)17へ流入し、分岐された他方の気体燃料は、気体燃料を改質して水素ガスを発生させる改質器(リフォーマ)18へ流入する。
エンジンEGは、いわゆるレシプロ型エンジンで構成されており、熱交換器13からバッファタンク16を介して供給される気体燃料を燃焼させることによって、車両走行用の駆動力となる機械的エネルギを出力するエネルギ出力手段である。
インジェクタ17は、エンジンEGのシリンダヘッドに固定されて、エンジンEGの吸気ポートに向けて気体燃料を噴射するものである。これにより、気体燃料と燃焼用空気(吸気)が混合された混合気が燃焼室内へ供給される。より具体的には、インジェクタ17は、吸気経路内に燃料を供給する燃料供給通路を開閉する電磁弁によって構成されている。この電磁弁は、システム制御装置から出力される制御電圧によってその作動が制御される。
そして、システム制御装置が、電磁弁を開く開弁時間を調整することによって、燃焼室内へ供給される燃料の供給流量を調整することができる。なお、図1では、図示の明確化のため、エンジンEGの1つの気筒のみを図示しているが、このエンジンEGは、多気筒型(例えば、4気筒)のエンジンであり、インジェクタ17は、各気筒に対して1個づつ設けられている。
リフォーマ18は、気体燃料を触媒下で改質可能温度まで加熱して改質反応させることによって、水素ガスを発生させるものである。具体的には、本実施形態では、燃料として水素含有燃料であるアンモニアを採用しているので、燃料を350℃以上となるまで加熱して、触媒下にて改質反応をさせて水素ガスを発生させている。
リフォーマ18にて発生した水素ガスは、補助燃料として吸気に混合されてエンジンEGの吸気ポートより燃焼室へ供給される。エンジンEGにて燃焼した気体燃料および水素ガスは、エンジンEGの排気ポートから排気される。
次に、車両用空調装置2について説明する。車両用空調装置2は、熱媒体循環回路20に配置された冷却用熱交換器21、蒸気圧縮式の冷凍サイクル30の蒸発器34、ヒータ22、並びに、これらの冷却用熱交換器21、蒸発器34およびヒータ22を収容するケーシング23等を有して構成されている。
ケーシング23は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、車室内に向けて送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて形成されている。ケーシング23の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と車室外空気(外気)とを切替導入する図示しない内外気切替装置が配置されている。
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機24が配置されている。この送風機24は、システム制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される電動送風機である。送風機24の空気流れ下流側には、熱媒体循環回路20の冷却用熱交換器21が配置されている。
ここで、熱媒体循環回路20について説明する。熱媒体循環回路20は、第1熱媒体としての循環水(例えば、水、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路で、熱交換器13の第1燃料気化部14の第1熱媒体通路14b、冷却用熱交換器21、第1熱媒体循環手段としての循環水ポンプ21aを環状に接続したものである。
循環水ポンプ21aは、第1熱媒体通路14bへ循環水を圧送する電動式のポンプであり、システム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。そして、システム制御装置が循環水ポンプ21aを作動させると、循環水は、循環水ポンプ21a→第1熱媒体通路14b→冷却用熱交換器21→循環水ポンプ21aの順に循環する。
これにより、第1燃料気化部14の第1燃料通路14aを流通する液体燃料が、第1熱媒体通路14bを流通する循環水によって加熱されて気化される。一方、循環水は、第1熱媒体通路14bにて第1燃料通路14aを流通する燃料の気化潜熱によって冷却されて、冷却用熱交換器21へ流入する。冷却用熱交換器21では、燃料の気化潜熱によって冷却された循環水と送風機24によって送風された送風空気とが熱交換して、送風空気が冷却される。
つまり、本実施形態では、循環水を介して、燃料の気化潜熱によって送風空気を間接的に冷却することができる。従って、本実施形態の冷却用熱交換器21は、特許請求の範囲に記載された冷却手段に対応し、送風空気が特許請求の範囲に記載された熱交換対象物に対応している。
また、送風機24から送風される送風空気の温度は、内外気切替装置がケーシング23内の空気通路に外気を導入するように切り替えている場合には外気温となり、車室内空気を導入するように切り替えている場合には車室内空気温度となる。従って、循環水ポンプ21aから第1熱媒体通路14bへ圧送される循環水の温度(以下、第1温度という)T1は、外気温あるいは車室内空気温度程度(具体的には、20℃〜40℃)の常温となる。
冷却用熱交換器21の送風空気流れ下流側には、蒸発器34が配置されている。蒸発器34は、冷凍サイクル30において低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器であって、冷却用熱交換器21にて冷却された送風空気をさらに冷却する機能を果たす。冷凍サイクル30は、冷媒を圧縮して吐出する冷媒圧縮機31、冷媒圧縮機31吐出冷媒を外気と熱交換させて放熱させる放熱器32、放熱器32流出冷媒を減圧膨張させる膨張弁33、蒸発器34を環状に接続したものである。
蒸発器34の送風空気流れ下流側には、ヒータ22が配置されている。ヒータ22は、送風機24から送風されて冷却用熱交換器21および蒸発器34を通過して冷却された送風空気(冷風)を加熱する空気加熱手段である。本実施形態では、ヒータ22として電力を供給されることによって発熱する電気ヒータを採用しており、ヒータ22の加熱能力は、システム制御装置から出力される制御電圧によって制御される。
もちろん、ヒータ22として、高温流体と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器を採用してもよい。このような高温流体としては、具体的に、冷却水循環回路40を循環するエンジン冷却水のうち、エンジンEGから流出した高温の冷却水、ヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)の高温高圧冷媒等を採用することができる。
ケーシング23の空気流れ最下流部には、ヒータ22にて加熱された空調風を、空調対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、システム制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
次に、冷却水循環回路40について説明する。冷却水循環回路40は、第2熱媒体としてのエンジンEGの冷却水(例えば、水、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路で、熱交換器13の第2燃料気化部15の第2熱媒体通路15b、エンジンEG内に形成されたエンジンEGの冷却用通路42、第2熱媒体循環手段としての冷却水ポンプ43を環状に接続したものである。
冷却水ポンプ43は、第2熱媒体通路15bへ冷却水を圧送する電動式のポンプであり、システム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。そして、システム制御装置が、冷却水ポンプ43を作動させると、冷却水は、冷却水ポンプ43→エンジンEG内の冷却用通路42→第2熱媒体通路15b→冷却水ポンプ43の順に循環する。
これにより、第2燃料気化部15の第2燃料通路15aを流通する液体燃料あるいは二相燃料が、第2熱媒体通路15bを流通する冷却水によって加熱されて気化される。一方、冷却水は、第2熱媒体通路15bにて、第2燃料通路15aを流通する燃料の気化潜熱によって冷却されて、エンジンEG内の冷却用通路42へ流入する。冷却用通路42では、冷却水がエンジンEGの廃熱を吸熱して、エンジンEGが冷却される。
また、本実施形態では、エンジンEGのオーバーヒートの抑制およびエンジンEG潤滑用オイルの粘度増加によるフリクションロスの低減のために、システム制御装置が、エンジンEGの温度が80℃〜100℃程度となるように、冷却水ポンプ43の冷却水循環流量を調整している。従って、冷却水ポンプ43から第2熱媒体通路15bへ圧送される冷却水の温度(以下、第2温度という)T2は、80℃〜100℃程度の高温となる。
つまり、冷却水ポンプ43から第2熱媒体通路15bへ圧送される冷却水の第2温度T2は、循環水ポンプ21aから第1熱媒体通路14bへ圧送される循環水の第1温度T1よりも高くなる。なお、エンジンEGの廃熱が多く、第2燃料気化部15にて冷却水を充分に冷却することができない場合は、冷却水循環回路40に、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータを追加してもよい。
次に、図2、図3を用いて、熱交換器13の具体的構成について説明する。なお、図2は、熱交換器13の分解斜視図であり、図3は、熱交換器13における燃料、循環水および冷却水の流れを模式的に示した説明図である。
熱交換器13は、図2に示すように、略長方形状の金属板材にプレス加工を施すことによって形成された複数枚のプレート部材13a〜13eを順次積層して、各プレート部材13a〜13e間に形成される隙間を燃料等が流通する通路とする積層型プレート熱交換器(いわゆる積層型熱交換器)として構成されている。
具体的には、この熱交換器13では、第1、第2伝熱プレート13a、13bを介して、燃料と循環水あるいは燃料と冷却水が熱交換する。さらに、本実施形態では、燃料と循環水が熱交換する熱交換領域および燃料と冷却水が熱交換する熱交換領域を、区画プレート13cによって区画することによって、第1燃料気化部14および第2燃料気化部15に機能的に分割している。
第1燃料気化部14では、第1、第2伝熱プレート13a、13bを順次積層することによって、第1伝熱プレート13aと第2伝熱プレート13bとの間に、高圧タンク11から流出した液体燃料を流通させる第1燃料通路14a、および、循環水ポンプ21aから圧送された循環水を流通させる第1熱媒体通路14bが積層方向に交互に形成されている。
さらに、第1燃料通路14aおよび第1熱媒体通路14bの内部には、燃料と循環水との熱交換を促進するインナーフィン13fが配置されている。インナーフィン13fは、薄板状金属を、波状に折り曲げて形成したものである。より詳細には、本実施形態のインナーフィン13fは、各通路14a、14bを流通する流体の流れ方向から見たときに波状となるように折り曲げられている。
また、第1、第2各プレート部材13a、13bの長辺方向の両端側には、それぞれ2個ずつ合計4つのタンク形成部が、積層方向に打ち出し成形されている。タンク形成部は、その中央部に貫通穴を有しており、第1、第2プレート部材13a、13bが積層された際に、燃料および循環水を分配あるいは集合させる4つのタンク部を形成する。そして、これらのタンク部のうち所定の2つのタンク部が第1燃料通路14aに連通し、残りの2つのタンク部が第1熱媒体通路14bに連通している。
第1燃料気化部14の積層方向一端側には、第1エンドプレート13dが配置されている。第1エンドプレート13dには、高圧タンク11から流出した液体燃料を第1燃料気化部14へ流入させる燃料流入ポート131、循環水を第1燃料気化部14へ流入させる第1熱媒体流入ポート132、および、循環水を第1燃料気化部14から流出させる第1熱媒体流出ポート133が形成されている。
従って、第1燃料気化部14では、図3に示すように、燃料流入ポート131から流入した燃料が太実線矢印に示すように流れ、第1熱媒体流入ポート132から流入した循環水が太破線矢印に示すように流れて第1熱媒体流出ポート133から流出していく。
一方、第1燃料気化部14の積層方向の他端側には、区画プレート13cが配置されている。この区画プレート13cは、第1燃料気化部14と第2燃料気化部15との間の熱移動を抑制する断熱手段としての機能を果たす。具体的には、区画プレート13cは、2枚の板状部材を貼り合わせて中空状に形成したもので、その内部空間には空気が封入されている。もちろん、断熱性能を高めるために、内部空間を真空としてもよい。
さらに、区画プレート13cには、その表裏を貫通する貫通穴134が形成されている。この貫通穴134は、第1燃料気化部14から流出した液体燃料あるいは二相燃料を第2燃料気化部15へ流入させる燃料通路として機能する。
第2燃料気化部15の基本的構成は、第1燃料気化部14と同様である。従って、第2燃料気化部15では、第1、第2プレート部材13a、13bを順次積層することによって、第1プレート部材13aと第2プレート部材13bとの間に、第1燃料気化部14から流出した液体燃料あるいは二相燃料を流通させる第2燃料通路15a、および、冷却水ポンプ43から圧送された冷却水を流通させる第2熱媒体通路15bが積層方向に交互に形成されている。
さらに、第2燃料通路15aおよび第2熱媒体通路15bの内部にも、第1燃料気化部14と同様に、燃料と冷却水との熱交換を促進するインナーフィン13fが配置されている。
また、第2燃料気化部15の積層方向の他端側(区画プレート13cの反対側)には、第2エンドプレート13eが配置されており、この第2エンドプレート13eには、気体燃料を第2燃料気化部15から流出させる燃料流出ポート135、冷却水を第2燃料気化部15へ流入させる第2熱媒体流入ポート136、および、冷却水を第2燃料気化部15から流出させる第2熱媒体流出ポート137が形成されている。
従って、第2燃料気化部15では、図3に示すように、区画プレート13cの貫通穴134から流入した燃料が太実線矢印に示すように流れて燃料流出ポート135から流出し、第2熱媒体流入ポート136から流入した冷却水が太一点破線矢印に示すように流れて第2熱媒体流出ポート137から流出していく。
なお、本実施形態では、燃料としてアンモニアを採用しているので、熱交換器13の各構成部材(プレート部材13a〜13e、インナーフィン13f)は、いずれも耐食性に優れる金属(例えば、ステンレス合金)で形成されている。また、本実施形態では、図2、図3に示すように、熱交換器13のうち、第1燃料気化部14が占める領域に対して第2燃料気化部15が占める領域の割合は、略1/2としている。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。システム制御装置は、制御処理や演算処理を行うCPUおよびプログラムやデータ等を記憶するROMおよびRAM等の記憶回路を含む周知のマイクロコンピュータ、各種制御対象機器への制御信号(あるいは制御電圧)を出力する出力回路、各種センサの検出信号が入力される入力回路、並びに、電源回路等から構成されている。
システム制御装置の出力側には、前述した各種制御対象機器12、17、21a、24、43等が接続され、システム制御装置はこれらの制御対象機器の作動を制御する。システム制御装置の入力側には、エンジンEGの作動を制御するために用いられる物理量を検出するエンジン制御用のセンサ群、車両用空調装置2の作動を制御するために用いられる物理量を検出する空調制御用のセンサ群等が接続されている。
具体的には、エンジン制御用のセンサ群としては、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、エンジンEGの回転数を検出する回転数センサ、インジェクタ17へ流入する燃料圧力を検出する燃圧センサ、エンジンEGの吸気経路に配置されて吸気流量を調整するスロットルバルブの弁開度を検出するスロットルポジションセンサ、エンジンEGの冷却用通路42から流出した冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(いずれも図示せず)等が設けられている。
また、空調制御用のセンサ群としては、車室内温度を検出する内気温センサ、車室外気温を検出する外気温センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、冷却用熱交換器21から吹き出される送風空気(冷風)の温度を検出する冷風温度センサ、蒸発器34における冷媒蒸発温度に相関を有する温度(本実施形態では、蒸発器34の温度)を検出する蒸発器温度センサ、ヒータ22にて加熱された空調風の温度を検出する空調風温度センサ(いずれも図示せず)等が設けられている。
さらに、システム制御装置の入力側には、車両を起動あるいは停止させるスタートスイッチ、エンジンEGを始動させるイグニションスイッチ等のエンジン操作用のスイッチ群の操作信号が入力されるとともに、車両用空調装置2の作動スイッチ、車両用空調装置2の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ、車室内の目標温度を設定する目標温度設定手段としての車室内温度設定スイッチ等の空調操作用のスイッチ群の操作信号が入力される。
なお、上述の如く、本実施形態のシステム制御装置は、エンジン制御および空調制御の双方を司る制御装置として構成されているが、もちろん、主にエンジン制御を行うエンジン制御用の制御装置と、主に空調制御を行う空調制御用の制御装置とを別体の制御装置として構成してもよい。
また、システム制御装置は、上述した各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、システム制御装置のうち各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、循環水ポンプ21aの作動を制御する構成が第1熱媒体流量制御手段を構成し、冷却水ポンプ43の作動を制御する構成が第2熱媒体流量制御手段を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の燃料供給システム1の作動について説明する。まず、イグニションスイッチが投入されてエンジンEGが始動すると、システム制御装置が、その記憶回路に記憶されたエンジン制御プログラムを実行する。このエンジン制御プログラムでは、エンジンの運転状態に応じて、インジェクタ17からエンジンEGへ供給される燃料の供給流量等を決定して、インジェクタ17等の作動を制御する。
まず、エンジン制御プログラムが実行されると、システム制御装置は、所定の制御周期毎にエンジン制御用のセンサ群の各種検出値を読み込み、読み込まれた各種検出値に基づいて、冷却水ポンプ43の冷却水圧送能力、インジェクタ17の開弁時間、開閉弁12の開弁時間等を決定する。
具体的には、冷却水ポンプ43の冷却水圧送能力については、冷却水温度センサの検出温度が80℃以上100℃以下となるように決定する。また、インジェクタ17の開弁時間については、エンジン回転数、アクセル開度信号、スロットルバルブの弁開度等に基づいて、予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGに要求されている駆動トルクを発生させるために必要な目標燃料供給流量を決定する。
そして、この目標燃料供給流量、エンジン回転数、インジェクタ17入口側の燃料圧力等に基づいて、予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、インジェクタ17から燃焼室へ供給される供給流量が、目標燃料供給流量となるインジェクタ17の開弁時間を決定する。
ここで、本実施形態のエンジンEGには、熱交換器13(具体的には、第1燃料気化部14および第2燃料気化部15)にて気化された燃料が供給される。さらに、熱交換器13にて気化された燃料は、エンジンEGのみならずリフォーマ18にも供給される。そのため、熱交換器13にて気化される燃料の流量(質量流量)は、インジェクタ17から燃焼室へ供給される燃料の供給流量(質量流量)より多くなっている必要がある。
そこで、システム制御装置では、上述したインジェクタ17の開弁時間と同様に、目標燃料供給流量、高圧タンク11から流出する燃料の圧力等に基づいて、予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、熱交換器13へ供給される燃料流量が、目標燃料供給流量よりも所定量多くなるように、開閉弁12の開弁時間を決定する。
そして、システム制御装置は、上述の如く決定された制御状態となるように、出力回路あるいは駆動回路(EDU)から冷却水ポンプ43、インジェクタ17および開閉弁12に対して制御信号を出力する。
その後、スタートスイッチによって車両の停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→冷却水ポンプ43の冷却水圧送能力、インジェクタ17および開閉弁12の開弁時間等の決定→決定された冷却水圧送能力および開弁時間となる制御信号の出力といった制御ルーチンを繰り返す。
この際、熱交換器13では、第1燃料気化部14の第1燃料通路14aを介して第2燃料通路15aへ流入した液体燃料が、第2熱媒体通路15bを流通する冷却水に加熱されて気化される。一方、第2熱媒体通路15bを流通する冷却水は、第1燃料通路14aを流通する燃料の気化潜熱によって冷却される。
前述の如く、開閉弁12の開弁時間は、熱交換器13へ流入させる燃料の流量が目標燃料供給流量よりも多くなるように決定されているとともに、冷却水の第2温度T2が80℃〜100℃の高温となるので、熱交換器13では、要求されている駆動トルクを発生させるために充分な流量の燃料を気化させることができる。
さらに、本実施形態のシステム制御装置は、エンジンEGの始動に伴って、リフォーマ18に設けられた改質用加熱手段としての電気ヒータ(図示せず)に通電し、改質可能な温度以上となるまで燃料を加熱する。これにより、エンジンEGの燃焼室に水素ガスを補助燃料として供給することができる。
次に、エンジンEGの始動中に、車両用空調装置2の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されると、システム制御装置が、その記憶回路に記憶された空調制御プログラムを実行する。この空調制御プログラムでは、空調負荷に応じて、システム制御装置の出力側に接続された空調用の制御対象機器の制御状態を決定し、決定された制御状態となるように、制御対象機器の作動を制御する。
具体的には、空調制御プログラムが実行されると、システム制御装置が、予め定めた基準回転数(基準熱媒体圧送能力)となるように、循環水ポンプ21aを作動させる。さらに、システム制御装置は、車室内温度、車室外気温、日射量等に基づいて、各吹出口から車室内に吹き出される送風空気の目標吹出温度TAOを決定する。
そして、この目標吹出温度TAOおよび空調制御用のセンサ群の検出信号に基づいて、制御対象機器の作動を制御する。例えば、送風機24の目標送風量、すなわち送風機24の電動モータに出力する制御電圧については、目標吹出温度TAOに基づいて予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、目標吹出温度TAOが高温時および低温時に中間温度時よりも高くなるように決定される。
また、冷凍サイクル30の冷媒圧縮機31の冷媒吐出能力については、目標吹出温度TAOに基づいて予め記憶回路に記憶されている制御マップを参照して、目標吹出温度TAOの上昇に伴って上昇するように蒸発器34における目標冷媒蒸発温度TEOを決定し、フィードバック制御手法を用いて目標冷媒蒸発温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された検出値との偏差が縮小するように決定される。
また、ヒータ22に出力される制御電圧については、ヒータ22に加熱された空調風の温度と車室内温度設定スイッチによって設定された目標温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いてヒータ22から吹き出される空調風の温度が目標冷風温度TEOに近づくように決定される。
そして、システム制御装置は、出力回路あるいは駆動回路から上記の如く決定された制御信号を制御対象機器に対して出力する。その後、車両用空調装置2の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→制御対象機器の制御状態の決定→決定された制御状態が得られる制御信号の出力といった制御ルーチンを繰り返す。
この際、熱交換器13では、図4のモリエル線図に示すように、第1燃料気化部14および第2燃料気化部15にて、エンジンEGに要求出力を出力させるために充分な流量の燃料が気化させることができる。つまり、高圧タンク11から流出した液体燃料(図4のa点)は、開閉弁12を通過する際の圧力損失によって減圧され(図4のa点→b点)、第1燃料気化部14の第1燃料通路14aへ流入する。
第1燃料通路14aへ流入した液体燃料は、第1熱媒体通路14bへ流入した第1温度T1(20℃〜40℃)の循環水と熱交換して、そのエンタルピを上昇させる(図4のb点→c点)。これにより、循環水が冷却されるとともに、第1燃料通路14aへ流入した液体燃料の一部が気化されて、二相燃料となって第2燃料気化部15の第2燃料通路15aへ流入する。
第2燃料通路15aへ流入した二相燃料は、第2熱媒体通路15bへ流入した第2温度T2(80℃〜100℃)の冷却水と熱交換して、そのエンタルピをさらに上昇させる(図4のc点→d点)。これにより、冷却水が冷却されるとともに、第2燃料通路15aへ流入した二相燃料がさらに気化されて、気体燃料となって熱交換器13から流出する。
つまり、熱交換器13では、冷却水の第2温度T2が循環水の第1温度T1よりも高くなっていることによって、第2燃料気化部15における燃料の平均的なエンタルピH2が、第1燃料気化部14における燃料の平均的なエンタルピH1よりも高くなる。換言すると、第2燃料気化部15の所定の部位における燃料のエンタルピが、第1燃料気化部14の対応する部位における燃料のエンタルピよりも高くなる。
つまり、第2燃料気化部15の燃料流入部における燃料のエンタルピは、第1燃料気化部14の燃料流入部における燃料のエンタルピよりも高くなっており、第2燃料気化部15の燃料流出部における燃料のエンタルピは、第1燃料気化部14の燃料流出部における燃料のエンタルピよりも高くなっている。
また、車両用空調装置2の作動時であっても、開閉弁12の開弁時間は、熱交換器13へ流入させる燃料の流量が、目標燃料供給流量よりも多くなるように決定されているので、熱交換器13では、要求されている駆動トルクを発生させるために充分な流量の燃料を気化させることができる。
さらに、車両用空調装置2では、送風機24から送風された送風空気が、冷却用熱交換器21および蒸発器34にて冷却され、冷却用熱交換器21にて冷却された冷風は、ヒータ22によって乗員の所望の温度に温度調整されて、各吹出口を介して車室内へ吹き出される。そして、車室内に吹き出される空調風によって、車室内温度が車室外気温より低く冷やされる場合には車室内の冷房が実現され、車室内温度が車室外気温より高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現される。
本実施形態の燃料供給システム1は、上記の如く作動するので、以下のような優れた効果を得ることができる。
まず、第1燃料気化部14から流出した燃料を第2燃料気化部15にて気化させる熱交換器13を備えているとともに、第2燃料気化部15における燃料のエンタルピH2を第1燃料気化部14における燃料のエンタルピH1よりも高くしているので、第1燃料気化部14における燃料の気化よりも第2燃料気化部15における燃料の気化を促進できる。
これにより、車両用空調装置2を作動させない場合のように冷却用熱交換器21に冷却負荷が要求されない場合、あるいは、車両用空調装置2の作動時であっても冷却用熱交換器21に要求される冷却負荷が小さくなり、第1燃料気化部14にて気化させることのできる燃料流量が少なくなってしまった場合でも、第1燃料気化部14にて気化させることのできなかった燃料を第2燃料気化部15にて気化させることができる。
従って、第1燃料気化部14にて気化させることのできる流量によらず、第2燃料気化部15にて充分な流量の燃料を気化させることができる。すなわち、冷却用熱交換器21に要求される冷却負荷によらず、エネルギ出力手段(EG)へ充分な供給流量の燃料を供給することができる。
また、本実施形態の熱交換器13では、第2燃料気化部15の第2熱媒体通路15bへ流入させる冷却水の第2温度T2を、第1燃料気化部14の第1熱媒体通路14bへ流入させる循環水の第1温度T1よりも高くしているので、極めて容易に、第2エンタルピH2を第1エンタルピH1よりも高くすることができる。
また、本実施形態の熱交換器13では、第1燃料気化部14を構成する第1熱交換領域および第2燃料気化部15を構成する第2熱交換領域を断熱性を有する区画プレート13cによって区画しているので、第1エンタルピH1と第2エンタルピH2との差を効率的に確保することができる。
また、本実施形態の燃料供給システム1では、バッファタンク16を備えているので、エンジンEGの要求出力が急増した場合であっても、バッファタンク16に蓄えられた気体燃料をエンジンEGへ供給できる。従って、より一層確実に、エンジンEGへ充分な供給流量の燃料を供給することができる。
さらに、本実施形態の第1燃料気化部14では、熱媒体循環回路20を循環する循環水を介して、間接的に熱交換対象物である送風空気を冷却しているので、第1燃料気化部14を車両用空調装置2のケーシング23の外部(すなわち、送風空気の空気通路外)に配置することができる。
従って、何らかの理由で、燃料供給システム1から燃料が漏れたとしての、可燃性を有する燃料が車室内に送風されてしまうことを防止できる。また、仮に毒性を有する燃料を採用したとしても、燃料が車室内に送風されてしまうことを防止して乗員の安全性を確保することができる。
なお、上述の説明から明らかなように、本実施形態は、燃料供給システム1にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する熱管理システム、あるいは冷却システムについて説明したものと表現することができる。
すなわち、本実施形態は、
液化された燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段(高圧タンク11)と、
前記液体燃料貯蔵手段から流出した燃料を気化させる第1燃料気化手段(第1燃料気化部14)と、
前記第1燃料気化手段から流出した燃料を気化させる第2燃料気化手段(第2燃料気化部15)と、
前記第1燃料気化手段にて気化する燃料の気化潜熱によって熱交換対象物を冷却する冷却手段(冷却用熱交換器21)とを備え、
第2燃料気化手段における燃料の第2エンタルピ(H2)が、第1燃料気化手段における燃料の第1エンタルピ(H1)よりも高くなっていることを特徴とする熱管理システムあるいは冷却システムについて説明したものと表現することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、図5の全体構成図に示すように、開閉弁12の下流側に燃料の流れを分岐する分岐部を設け、分岐された一方の燃料を、第1実施形態と同様に熱交換器13の燃料流入ポート131へ流入させ、分岐された他方の燃料を第1燃料気化部14の出口側(第2燃料気化部15の入口側)へ流入させる構成としている。
このような構成は、区画プレート13cの貫通穴134へ、分岐された他方の燃料を導く構成とすれば、容易に実現できる。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、高圧タンク11から直接、第2燃料気化部15へ燃料を流入させることができるので、第1燃料気化部14にて気化させることのできる流量によらず、第2燃料気化部15にて充分な流量の燃料を確実に気化させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、第1、第2燃料気化手段である第1、第2燃料気化部14、15を1つの熱交換器13として一体的に構成した例を説明したが、第1、第2燃料気化手段は、これに限定されない。もちろん、第1、第2燃料気化手段を、それぞれ別々の熱交換器で構成してもよいし、他の形式の熱交換器として一体的に構成してもよい。
例えば、第1熱媒体(循環水)が流通する第1チラータンクの内部に、第1燃料通路を構成する燃料配管を配置し、第2熱媒体(冷却水)が流通する第2チラータンクの内部に第2燃料通路を構成する燃料配管を配置する熱交換器構造を採用してもよい。この場合は、第1チラータンクと第2チラータンクとを断熱部材を介在させて一体化すればよい。
さらに、第1、第2燃料気化手段として、燃料を気化させる気化空間を形成する気化容器、および、気化空間内に配置された熱媒体通路に向けて高圧液化燃料を霧状に噴射する噴射弁等を有して構成される噴射式の気化器を採用してもよい。
(2)上述の実施形態では、第1熱媒体として熱媒体循環回路20を循環する循環水を採用し、第2熱媒体として冷却水循環回路40を循環する冷却水を採用した例を説明したが、第1熱媒体および第2熱媒体はこれに限定されない。つまり、第2熱媒体の第2温度T2が第1熱媒体の第1温度T1よりも高くなっていればよい。従って、例えば、第2熱媒体としてリフォーマ18を冷却する冷却水を採用してもよい。
(3)上述の実施形態では、熱交換対象物として車室内に送風される送風空気を冷却する構成について説明したが、熱交換対象物は、これに限定されない。つまり、熱交換対象物としては、燃料の気化潜熱によって冷却可能なものの全てが採用できる。
例えば、内燃機関や燃料電池のようなエネルギ出力手段、電動モータやこれに電力を供給するインバータ回路等の電気回路等、作動時に発熱を伴う発熱機器等を採用してもよいし、飲料水や熱媒体のような流体を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、熱交換対象物である送風空気を、熱媒体を介して間接的に冷却する例を説明したが、もちろん、直接的に冷却してもよい。さらに、上述の第2実施形態では、第2燃料気化部15にて気化する燃料によって、エンジンEGを間接的に冷却する例を説明したが、第2燃料気化部15にて気化する燃料によって、他のものを冷却してもよい。
例えば、リフォーマ18を冷却してもよいし、エネルギ出力手段として、燃料電池を採用する場合には、燃料電池を冷却してもよい。
(4)上述の実施形態では、バッファタンク16を熱交換器13の燃料流れ下流側、すなわち第2燃料気化部15の燃料流れ下流側に配置した例を説明したが、バッファタンク16の配置はこれに限定されない。例えば、第1燃料気化部14の燃料出口側と第2燃料気化部15の燃料入口側との間に配置してもよい。
例えば、上述の実施形態のように、第1燃料気化部14と第2燃料気化部15が1つの積層型熱交換器として一体的に構成されている場合は、区画プレート13cの内部空間を利用してバッファタンクとしてもよい。
(5)第1実施形態の図4のモリエル線図にて説明したように、燃料が開閉弁12を通過する際には、燃料が減圧されることによって気化が促進される。そこで、例えば、開閉弁12の下流側に減圧機構(ノズル、オリフィス等)を配置して、熱交換器13(具体的には、第1燃料気化部14)へ流入する燃料を減圧させてもよい。
(6)上述の実施形態では、エネルギ出力手段として、エンジン(内燃機関)EGを採用した例を説明したが、エネルギ出力手段は、これに限定されない。例えば、リフォーマ18にて発生させた燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(空気)とを電気化学反応させることによって燃料を消費して、電気エネルギを出力する燃料電池を採用してもよい。
(7)上述の実施形態では、本発明の燃料供給システムを車両に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、エンジン駆動式の定置型空調装置あるいは冷凍装置に適用してもよいし、燃料を燃焼させて熱エネルギを出力するボイラ装置に適用して温水と冷水とを同時に作り出すシステムなどに適用してもよい。
(8)上述の実施形態では、エンジンEGへ補助燃料としての水素ガスを供給するために、リフォーマ18を採用した例を説明したが、このリフォーマ18は、エンジンEGへ充分な供給流量の燃料を供給するという効果を得るための必須の構成ではないので、廃止してもよい。また、上述の実施形態では、冷凍サイクル30によって送風空気を冷却する例を説明したが、冷却用熱交換器21にて充分に送風空気を冷却できる場合には、冷凍サイクル30を廃止してもよい。