JP5625199B2 - ペントース糖発酵細胞 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
[発明の分野]
本発明は、キシロースをキシルロースに異性化することができる細胞に関する。本発明は、かかる細胞が、エタノールなどの発酵産物の産生に使用される方法にも関する。
[背景技術]
過去数10年間の従来の化石燃料(石油ベースの燃料)の大規模な消費は、高レベルの汚染の一因となっている。化石燃料の世界的な蓄えが有限ではないという認識、および高まりつつある環境に対する意識に加えて、このことが、無鉛ガソリンよりも、放出するリットル当たりのCOが少ない、微粒子不含燃焼燃料資源であるエタノールなどの代替燃料の可能性を研究する新たな構想の刺激となっている。
バイオマス由来エタノールは、多くの異なる資源から得られるヘキソース糖を発酵することによって産生することができるが、燃料アルコールの工業規模生産に通常使用されるショ糖およびトウモロコシデンプンなどの基質は高価である。したがって、燃料エタノール産生を増加するには、低コストの供給原料を使用することが必要である。
現在、植物バイオマス由来のリグノセルロース系供給原料のみが、エタノール産生に現在使用されている作物の代わりとして使用するのに十分な量で入手可能である。大部分のリグノセルロース系材料において、グルコースの次に一般的な糖はキシロースである。したがって、経済的に実現可能な燃料生産方法のためには、ヘキソース糖とペントース糖のどちらも発酵させて、エタノールを形成しなければならない。サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)酵母は強く、エタノール産生によく適合するが、炭素源としてキシロースを使用してエタノールを産生することができない。さらに、キシロースをエタノールに発酵することができ、高いエタノール収率および高いエタノール生産性を有する天然生物は知られていない。したがって、リグノセルロース系供給原料からの工業的に実現可能なエタノール産生を可能にするために、これらの特性を有する生物が必要とされている。
[発明の概要]
本発明に従って、アルコール発酵などの発酵が可能であり、かつ炭素源としてキシロースを使用することができる細胞が提供される。かかる細胞は、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含み、そのキシロースイソメラーゼのアミノ酸配列は、配列番号3に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の配列同一性を有し、かつそのヌクレオチド配列は宿主に対して非相同的である。かかる細胞は、炭素源としてキシロースを使用した場合に、野生型糸状菌と比較して多い量のエタノールを産生する。
本発明は:
−細胞がキシロースを発酵産物へと発酵させるように、本発明の細胞でキシロース源を含有する培地を発酵させることを含む、発酵産物を産生する方法;
−細胞がキシロースおよびL−アラビノースを発酵産物へと発酵させるように、L−アラビノースを用いることもできる、定義される本発明の細胞で、少なくともキシロース源とL−アラビノース源を含有する培地を発酵させることを含む、発酵産物を産生する方法;
−本発明の細胞およびL−アラビノースを使用することもできる細胞で、少なくともキシロース源とL−アラビノース源を含有する培地を発酵させることを含む方法であって、各細胞がキシロースおよび/またはアラビノースを発酵産物へと発酵させる、発酵産物を産生する方法;
も提供する。
本発明はさらに、発酵産物を産生する方法における本発明の細胞の使用を提供する。
サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現に関する、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC 8492由来のキシロースイソメラーゼをコードするpYISIT4−XKS1−xylA(Baun CpO)のプラスミドマップを示す。CpOは、最適化されたコドン対を意味する。 プラスミドpPWT080の物理的地図を示し、その配列が配列番号4に示される。 野生型GRE3遺伝子座の物理的地図(パネルa)およびGRE3遺伝子座におけるPWT080の1コピーの組込みを示す(パネルbはプライマーが結合する場所を示し、パネルcはRKI1プローブが結合する場所を示す)。 CEN.PK113−7DにおけるプラスミドpPWT080の1コピーの正しい組込みを表すオートラジオグラムを示す: パネルa:RKI1プローブとハイブリダイズされた染色体DNA標本のXcmIによる消化。レーン1:CEN.PK113−7D;レーン2:BIE104F1;レーン3:BIE104P1 パネルb:RKI1プローブとハイブリダイズされた染色体DNA標本のPsiIによる消化。レーン1:CEN.PK113−7D;レーン2:BIE104F1;レーン3:BIE104P1 ΔGRE3::PPPは、強力な構成プロモーター、ΔGRE3::[TPI1p−TAL1−ADH1p−TKL1−PGI1p−RPE1−ENO1p−RKI1]の制御下におけるTAL1、TKL1、RKI1およびRPE1遺伝子を含有するカセットによる、GRE3遺伝子のコード領域の置換を表す。 GRE3遺伝子のコード領域が、PPP遺伝子TAL1、TKL1、RKI1およびRPE1の組込みによって置換された、GRE3遺伝子座の物理的地図を示す。パネルaは、配列番号5および6のプライマーが結合する場所を示し、パネルbは、RKI1プローブが結合する場所を示す。 プラスミドpYI#SIT4の物理的地図を示す。 プラスミドpPWT007の物理的地図を示す。 プラスミドpPWT042の物理的地図を示す。 野生型SIT4遺伝子座の物理的地図(パネルa)およびSIT4遺伝子座におけるPWT080の1コピーの組込みを示す(パネルbはプライマーが結合する場所を示す)。 数回前培養した後の唯一の炭素源としての2%キシロース上でのBIE104P1Y9の増殖曲線、およびゲノムにpPWT042の1コピーが組み込まれていない参照株の増殖曲線を示す。数字によりグラフに事象が示される:(1):YNB 1%グルコース+1%キシロースに移行;(2):YNB 0.1%グルコース+2%キシロースに移行;(3)YNB 2%キシロースに移動;(4)YNB 2%キシロースに移行(BIE104P1Y9のみ)。 参照株BIE104P1、およびキシロース代謝株BIE104P1Y9の増殖曲線を示す。 グルコース上で前培養された株BIE104P1(パネルa)、グルコース上で前培養されたBIE104P1Y9(パネルb)およびキシロース上で前培養されたBIE104P1Y9(パネルc)の時間の経過によるキシロースおよびグルコース消費ならびにエタノール産生を示す。 グルコース上で前培養された株BIE104P1(パネルa)、グルコース上で前培養されたBIE104P1Y9(パネルb)およびキシロース上で前培養されたBIE104P1Y9(パネルc)の時間の経過によるキシロースおよびグルコース消費ならびにエタノール産生を示す。 グルコース上で前培養された株BIE104P1(パネルa)、グルコース上で前培養されたBIE104P1Y9(パネルb)およびキシロース上で前培養されたBIE104P1Y9(パネルc)の時間の経過によるキシロースおよびグルコース消費ならびにエタノール産生を示す。 プラスミドpPWT018の物理的地図を示す。 プラスミドpPWT006の物理的地図を示す。 サザンブロットオートラジオグラムを示す。野生型株CEN.PK113−7D(レーン1)およびBIE104A2(レーン2)の染色体DNAを大腸菌(EcoRI)およびヒンディースリー(HindIII)の両方で消化した。そのブロットを特異的なSIT2プローブとハイブリダイズした。 野生型SIT2遺伝子座の物理的地図(パネルa)ならびにプラスミドpPWT018の組込みによるara遺伝子導入後、続いて、分子内組換えによってベクターおよび選択マーカー配列の欠損が生じた物理的地図(パネルb)を示す。プローブのハイブリダイゼーションが示される。 異なる培地上でのBIE104A2P1Y9株の増殖曲線のグラフ図を示す。パネルa:ガラクトース上で増殖され、続いて数字によりグラフに示される事象(1)1%アラビノース+1%キシロースへの移行および(2)2%キシロース+0.2%アラビノースへの移行が行われたBIE104A2P1Y9株。パネルb:グルコース上で増殖され、続いて(1)1%アラビノース+1%キシロースへの移行、および(2)2%キシロース+0.2%アラビノースへの移行が行われたBIE104A2P1Y9株。 異なる培地上でのBIE104A2P1Y9株の増殖曲線のグラフ図を示す。パネルa:ガラクトース上で増殖され、続いて数字によりグラフに示される事象(1)1%アラビノース+1%キシロースへの移行および(2)2%キシロース+0.2%アラビノースへの移行が行われたBIE104A2P1Y9株。パネルb:グルコース上で増殖され、続いて(1)1%アラビノース+1%キシロースへの移行、および(2)2%キシロース+0.2%アラビノースへの移行が行われたBIE104A2P1Y9株。
[配列表の簡単な説明]
配列番号1は、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC 8492由来の野生型キシロースイソメラーゼ配列を示す。Genbankアクセッション番号AAYH02000036。
配列番号2は、配列番号1に由来するコドン最適化配列を示す。
配列番号3は、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC 8492由来のキシロースイソメラーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、プラスミドpPWT080の配列を示す。
配列番号5は、フォワードプライマーの配列を示す。
配列番号6は、リバースプライマーの配列を示す。
配列番号7は、診断PCR用の多機能性フォワードプライマーの配列を示す。
配列番号8は、診断PCR用の多機能性リバースプライマーの配列を示す。
配列番号9は、フォワードプライマーRKI1プローブの配列を示す。
配列番号10は、リバースプライマーRKI1プローブの配列を示す。
配列番号11は、フォワードプライマーkanMXカセットの配列を示す。
配列番号12は、リバースプライマーkanMXカセットの配列を示す。
配列番号13は、フォワードプライマーの配列を示す。
配列番号14は、リバースプライマーの配列を示す。
配列番号15は、診断PCR用の多機能性フォワードプライマーの配列を示す。
配列番号16は、診断PCR用の多機能性リバースプライマーの配列を示す。
配列番号17は、プラスミドpPWT018の配列の配列を示す。
配列番号18は、フォワードプライマー組込みpPWT018の配列を示す。
配列番号19は、リバースプライマー組込みpPWT018の配列を示す。
配列番号20は、フォワードプライマーSIT2プローブの配列を示す。
配列番号21は、リバースプライマーSIT2プローブの配列を示す。
[発明の詳細な説明]
本明細書および添付の特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含有する(include)」という単語および「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(includes)」および「含有する(including)」などの変形形態は、包括的に解釈される。すなわち、これらの単語は、状況が許す場合、特に記載されていない他の要素または整数の可能性のある包含を意味することが意図される。
本発明は、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む細胞に関し、キシロースイソメラーゼのアミノ酸配列は、配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有し、ヌクレオチド配列は宿主に非相同である。
キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列の存在は、キシロースをキシルロースへと異性化する能力を細胞に与える。
「キシロースイソメラーゼ」(EC5.3.1.5)は、D−キシロースのD−キシルロースへの、かつ/またはその逆の直接的な異性化を触媒する酵素として本明細書において定義される。その酵素は、D−キシロースケトイソメラーゼとしても知られる。本明細書において、キシロースイソメラーゼは、D−グルコースとD−フルクトースの間の転化を触媒することもできる(したがって、グルコースイソメラーゼと呼ぶこともできる)。本明細書において、キシロースイソメラーゼは、補因子としてマグネシウム、マンガンまたはコバルトなどの二価カチオンを必要とすることがある。
したがって、本発明の細胞は、キシロースをキシルロースに異性化することができる。キシロースをキシルロースに異性化する能力は、定義されるキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物で宿主細胞を形質転換することによって、宿主細胞に与えられる。本発明の細胞は、キシルロースへのキシロースの直接的な異性化によって、キシロースをキシルロースに異性化する。これは、キシロースレダクターゼおよびキシリトールデヒドロゲナーゼによりそれぞれ触媒される、キシリトール中間体を介ての、キシルロースへのキシロースの2段階転化とは対照的に、キシロースイソメラーゼにより触媒される1回の反応でキシロースがキシルロースへと異性化されることを意味すると理解される。
キシロースイソメラーゼ活性の単位(U)は本明細書において、Kuyperら(2003,FEMS Yeast Res.4:69−78)によって記載されている条件下にて、1分間にキシロース1nmolを産生する酵素の量として定義される。
本発明の細胞は、配列番号3のアミノ酸配列またはそれと少なくとも約70%の配列同一性を有する配列を有するキシロースイソメラーゼを基準として定義される。同様に、本発明の細胞は、かかるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であるキシロースイソメラーゼを基準として定義され得る。
配列番号3は、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC 8492由来のキシロースイソメラーゼのアミノ酸配列を示す。本発明の細胞は、配列番号3のアミノ酸を有する、またはそれと少なくとも約70%の配列同一性を有するキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。
好ましくは、本発明による細胞は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%または少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む細胞である。しかしながら、本発明による細胞は、配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%または少なくとも約70%の配列同一性を有する配列を有するキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
配列同一性(または配列類似性)は本明細書において、配列の比較によって決定される、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列または2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列の間の関係として定義される。通常、配列同一性または類似性は、一般に比較される配列の全長によって比較される。しかしながら、配列は、より短い比較の窓によって比較することができる。当技術分野において、「同一性」とは、場合により、かかる配列のストリング間のマッチによって決定される、アミノ酸または核酸配列間の配列関連性の程度も意味する。
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最も大きなマッチが得られるように設計される。同一性および類似性を決定する方法は、一般公開されているコンピュータープログラムで体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するのに好ましいコンピュータープログラム法としては、例えばBestFit、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、NCBIおよび他の情報源から一般公開されている方法(BLAST Manual,Altschul,Sら、NCBI NLM NIH Bethesda,MD 20894)が挙げられる。BLASTPを使用したアミノ酸配列比較のための好ましいパラメーターは、ギャップオープン11.0、ギャップ伸長1、Blosum 62マトリックスである。BLASTPを用いた核酸配列比較のための好ましいパラメーターは、ギャップオープン11.0、ギャップ伸長1、DNA完全マトリックス(DNA同一性マトリックス)である。
任意に、アミノ酸類似性の程度の決定において、当業者は、当業者には明らかであるだろう、いわゆる「保存的」アミノ酸置換も考慮に入れることができる。
保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。
好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。本明細書において開示されるアミノ酸配列の置換型は、開示される配列において少なくとも1つの残基が除去されており、異なる残基がその場所に挿入されている配列である。アミノ酸の変化が保存的であることが好ましい。天然アミノ酸それぞれの好ましい保存的置換は以下のとおりである:Alaからser;Argからlys;Asnからglnまたはhis;Aspからglu;Cysからserまたはala;Glnからasn;Gluからasp;Glyからpro;Hisからasnまたはgln;Heからleuまたはval;Leuからileまたはval;Lysからarg;glnまたはglu;Metからleuまたはile;Pheからmet、leuまたはtyr;Serからthr;Thrからser;Trpからtyr;Tyrからtrpまたはphe;および、Valからileまたはleuへの置換。
本発明によるキシルロースへのキシロースの転化を触媒する酵素をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3で示される配列またはそれと少なくとも約70%の配列同一性を有する配列を有する酵素をコードするヌクレオチド配列と、中程度の、または好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下にてハイブリダイズするその能力によっても定義され得る。
形式上、かかるヌクレオチド配列は、配列番号3で示される配列またはそれと少なくとも約70%の配列同一性を有する配列を有する酵素をコードするヌクレオチド配列の逆相補配列とハイブリダイズし、例えば配列番号1または2の逆相補配列とハイブリダイズする配列とハイブリダイズする。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は本明細書において、少なくとも約25個、好ましくは約50個のヌクレオチド、75または100個、最も好ましくは約200個以上のヌクレオチドの核酸配列を温度約65℃にて約1M塩を含む溶液、好ましくは6×SSC(塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム)または同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中でハイブリダイズし、約0.1M以下の塩を含む溶液、好ましくは0.2×SSCまたは同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中で65℃にて洗浄することを可能にする条件として定義される。好ましくは、ハイブリダイゼーションは一晩、すなわち少なくとも10時間行われ、好ましくは洗浄は、洗浄液の少なくとも2回の交換を伴って、少なくとも1時間行われる。これらの条件は通常、約90%以上の配列同一性を有する配列の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする。
中程度の条件は本明細書において、少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは約200個以上のヌクレオチドの核酸配列を温度約45℃にて約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSCまたは同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中でハイブリダイズし、約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6×SSCまたは同等のイオン強度を有する他の任意の溶液中で室温にて洗浄することを可能にする条件として定義される。好ましくは、ハイブリダイゼーションは一晩、すなわち少なくとも10時間行われ、好ましくは洗浄は、洗浄液の少なくとも2回の交換を伴って、少なくとも1時間行われる。これらの条件は通常、約50%までの配列同一性を有する配列の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする。当業者であれば、同一性が50%〜90%の様々な配列を特異的に同定するために、これらのハイブリダイゼーション条件に変更を加えることができるだろう。
導入酵素が本発明の細胞において活性型で発現する可能性を高めるために、選択される酵母細胞に対してそのコドン使用頻度を最適化するように、相当するコードヌクレオチド配列を適応させることができる。コドン最適化のいくつかの方法は当技術分野で公知である。酵母に対してヌクレオチド配列のコドン使用頻度を最適化する好ましい方法は、国際公開第2006/077258号パンフレットおよび/または国際公開第2008/000632号パンフレットに開示されているコドン対最適化技術である。国際公開第2008/000632号パンフレットでは、コドン対最適化に取り組んでいる。コドン対最適化は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、そのコドン使用頻度に関して、特に使用されるコドン対に関して修飾して、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の向上した発現および/またはコードされるポリペプチドの向上した産生を得る方法である。コドン対は、コード配列における1組の2個の連続したトリプレット(コドン)として定義される。
遺伝子発現および翻訳効率の簡単な測定法として、Xuhua Xia,Evolutionary Bioinformatics 2007:3 53−58に記載のコドン使用頻度の指標(Codon Adaptation Index)(CAI)が使用される。この指標では、各コドンの相対的なメリットを評価するためにある種からの高度に発現した遺伝子の参照セットを用い、遺伝子のスコアは、その遺伝子におけるすべてのコドンの使用頻度から計算される。この指標によって、コドン使用頻度パターンの形作りにおいて、選択がどの程度まで有効であるのか、その程度が評価される。その点から、遺伝子の発現レベルを予想し、宿主に対するウイルス遺伝子の適応を評価し、かつ異なる生物におけるコドン使用頻度を比較するのに、この指標は有用である。この指標によって、異種遺伝子発現の有望な成功のおよその指標も得られる。本発明によるコドン対最適化遺伝子では、そのCAIは、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.85以上、0.87以上、0.90以上、0.95以上、または約1.0である。
本発明の細胞において、キシロースイソメラーゼは一般に、その細胞と非相同である。すなわち、キシロースイソメラーゼは、それがその中に存在する生物、細胞、ゲノムDNAまたはRNA配列の一部として、論議されている細胞において天然に存在しない配列を有する。すなわち、キシロースイソメラーゼはその細胞に対して外来性であり、あるいはその細胞に天然に存在しない。したがって、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列は一般に、形質転換宿主細胞において活性型で発現される、または発現されることができる。
したがって、本発明の細胞は、上記で定義されるキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物を含む細胞、すなわち、その核酸構築物で形質転換されている細胞である。キシロースイソメラーゼコード配列を含む核酸構築物は好ましくは、宿主細胞においてキシロースイソメラーゼを発現することができる。
細胞において非相同キシロースイソメラーゼ配列を発現する方法は、当業者にはよく知られている。
したがって、本発明の細胞は組換え細胞である。すなわち、本発明の細胞は、対象の細胞において天然に存在しないヌクレオチド配列を含む、またはそのヌクレオチド配列で形質転換される、またはそのヌクレオチド配列で遺伝子組換えされる。
細胞におけるキシロースイソメラーゼの組換え発現の技術、ならびに本発明の細胞の更なる遺伝子修飾の技術は、当業者にはよく知られている。一般に、かかる技術は、関連する配列を含む核酸構築物での細胞の形質転換を含む。かかる方法は、例えばSambrookおよびRussel(2001)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory PressまたはF.Ausubelら編「Current protocols in molecular biology」,Green Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)などの標準専門書から知られている。真菌宿主細胞の形質転換および遺伝子修飾方法は、例えば欧州特許出願公開第A−0635574号明細書、国際公開第98/46772号パンフレット、国際公開第99/60102号パンフレット、国際公開第00/37671号パンフレット、国際公開第90/14423号パンフレット、欧州特許出願公開第A−0481008号明細書、欧州特許出願公開第A−0635574号明細書および米国特許第6,265,186号明細書から知られている。
大部分のエピソームまたは2μプラスミドは比較的不安定であり、各世代後に約10−2個以上の細胞で失われる。選択的な増殖の条件下でさえ、60〜95%の細胞のみがエピソームプラスミドを保持する。大部分のエピソームプラスミドのコピー数は、cir宿主の細胞1個につき10〜40の範囲である。しかしながら、プラスミドは、細胞の中に等しく分布しておらず、母集団における細胞当たりのコピー数に高い分散がある。組込みプラスミドで形質転換された株は、選択的圧力の非存在下でさえ、非常に安定である。しかしながら、プラスミドの欠失は、直列型反復DNA間の相同的組換えによって、約10−3〜10−4回の頻度で起こり、ベクター配列のループアウトが生じる。したがって、好ましくは、安定な組込みの場合におけるベクターデザインは、いったん選択マーカー遺伝子が欠失すると(これは分子内、相同的組換えによっても起こる)、組込み構築物のループアウトがもはや不可能となる、デザインである。好ましくは遺伝子がこのように安定に組み込まれる。安定な組込みは本明細書において、組込み構築物のループアウトがもはや不可能である、ゲノムへの組込みとして定義される。好ましくは、選択マーカーは存在しない。
一般に、核酸構築物は、プラスミド、例えば低コピーのプラスミドまたは高コピーのプラスミドであることができる。本発明による細胞は、例えば、ヌクレオチド構築物の複数のコピーによって、またはキシロースイソメラーゼ配列の複数のコピーを有する構築物の使用によって、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のコピーを含み得る。
核酸構築物は、エピソーム的に維持され、したがって、常染色体複製配列などの自律的複製の配列を含む。適切なエピソーム核酸構築物は、例えば酵母2μまたはpKD1プラスミド(Gleerら、1991,Biotechnology 9:968−975)、またはAMAプラスミド(Fierroら、1995,Curr Genet.29:482−489)をベースとし得る。代替方法として、各核酸構築物は、細胞のゲノムに1つまたは複数のコピーで組み込まれてもよい。細胞のゲノムへの組込みは、非相同的組換えによってランダムに起こるが、好ましくは、核酸構築物は、当技術分野でよく知られているように、相同的組換えによって細胞のゲノムへ組み込まれ得る(例えば、国際公開第90/14423号パンフレット、欧州特許出願公開第A−0481008号明細書、欧州特許出願公開第A−0635574号明細書および米国特許第6,265,186号明細書参照)。
一般に、キシロースイソメラーゼをコードする配列は、キシロースイソメラーゼ配列の転写および/または翻訳を提供することができる、または助けることができる、1つ以上の核酸配列に作動可能に連結される。
「作動可能に連結される」という表現は、記載の構成要素が、それらが意図されるように機能することを可能にする関係にある、近位(juxtaposition)を意味する。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列に作動可能に連結され、前記プロモーターまたはエンハンサーはコード配列の転写に影響を及ぼす。
本明細書で使用される、「プロモーター」という用語は遺伝子の転写開始部位の転写方向に対して上流に位置する1つ以上の遺伝子の転写を制御するように機能し、かつDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位および当業者に公知の他の任意のDNA配列の存在によって構造的に同定される、核酸断片を意味する。「構成的」プロモーターは、大部分の環境的および発生的条件下にて活性なプロモーターである。「誘導」プロモーターは、環境的および発生的制御下にて活性なプロモーターである。
本発明による酵素をコードするヌクレオチド配列の発現を達成するために使用することができるプロモーターは、発現される酵素をコードするヌクレオチド配列に対して天然(native)ではないかもしれない。すなわち、それが作動可能に連結されるヌクレオチド配列(コード配列)に対して非相同的であるプロモーターである。しかしながら、プロモーターは、宿主細胞に対して相同的、すなわち内因性であることができる。
この文脈における適切なプロモーターとしては、当業者にはよく知られている、構成的かつ誘導性の天然プロモーターならびに改変(engineered)プロモーターが挙げられる。真核生物の宿主細胞における適切なプロモーターは、GAL7、GAL10、またはGAL1、CYC1、HIS3、ADH1、PGL、PH05、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO1、TPI1、およびAOX1である。他の適切なプロモーターとしては、PDC1、GPD1、PGK1、TEF1、およびTDH3が挙げられる。
本発明の細胞において、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド酸配列の3’末端は好ましくは、転写ターミネーター配列に作動可能に連結される。好ましくは、ターミネーター配列は、例えば選択した酵母種など、選択した宿主細胞において作動可能である。いずれにせよ、ターミネーターの選択は重要ではなく、例えば、いずれかの酵母遺伝子由来であることができるが、非酵母、真核生物遺伝子由来である場合には、ターミネーターが時々機能することがある。通常、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、ターミネーターを含む。好ましくは、かかるターミネーターは、本発明の宿主細胞におけるナンセンス変異依存mRNA分解を防ぐ変異と組み合わせられる(例えば:Shirleyら、2002,Genetics 161:1465−1482参照)。
転写終結配列は好ましくは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。
任意に、本発明で使用するのに適した核酸構築物に選択マーカーが存在し得る。本明細書で使用される、「マーカー」という用語は、マーカーを含有する宿主細胞の選択またはスクリーニングを可能にする形質または表現型をコードする遺伝子を意味する。マーカー遺伝子は、抗生物質抵抗性遺伝子であることができ、それによって、適切な抗生物質を使用して、形質転換されていない細胞の中から形質転換細胞を選択することができる。適切な抗生物質耐性マーカーの例としては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ、3’−O−ホスホトランスフェラーゼII(カナマイシン、ネオマイシンおよびG418耐性)が挙げられる。抗生物質耐性マーカーは、倍数性宿主細胞の形質転換には最も簡便であるが、好ましくは、栄養要求性マーカー(URA3、TRPl、LEU2)またはS.pombe TPI遺伝子(Russell P R,1985,Gene 40:125−130に記載)などの非抗生物質耐性マーカーが使用される。好ましい実施形態において、核酸構築物で形質転換された宿主細胞はマーカー遺伝子を含まない。マーカー遺伝子を含まない組換え微生物宿主細胞を作製する方法が、欧州特許出願公開第A−O635 574号明細書に開示されておりアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)amdS(アセトアミダーゼ)遺伝子または酵母URA3およびLYS2遺伝子などの二方向性マーカーの使用に基づく。代替方法としては、緑色蛍光タンパク質、lacL、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−グルクロニダーゼなどのスクリーニング可能なマーカーを本発明の核酸構築物中に組込み、形質転換細胞のスクリーニングを可能にすることができる。
本発明で使用するのに適している核酸構築物に存在することができる更なる任意の要素としては、限定されないが、1つ以上のリーダー配列、エンハンサー、組込み因子、および/またはレポータ遺伝子、イントロン配列、セントロメア、テロマーおよび/またはマトリックス接着(MAR)配列が挙げられる。本発明の核酸構築物はさらに、ARS配列などの自律的複製のための配列を含み得る。
好ましくは、キシロースイソメラーゼは、サイトゾルにおいて発現される。サイトゾルでの発現は、ミトコンドリアまたはペルオキシソーム標的シグナルの欠失または修飾によって達成される。
本発明の細胞は、細菌などの原核細胞または真核細胞など、いずれかの適切な細胞であることができる。一般に、細胞は、真核細胞、例えば酵母または糸状菌である。
本明細書において酵母は、真核微生物として定義され、主に単細胞型で増殖するEumycotina亜門のすべての種を包含する(Alexopoulos,C.J.,1962,In:Introductory Mycology,John Wiley & Sons,Inc.,NewYork)。
酵母は単細胞葉状体の出芽によっても、また生物体の分裂によっても増殖することができる。本発明の細胞として好ましい酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クロエケラ属(Kloeckera)、シュワンニオマイセス属(Schwanniomyces)またはヤロウイア属(Yarrowia)に属する。酵母は、嫌気性発酵ができる酵母、さらに好ましくは嫌気性アルコール発酵ができる酵母が好ましい。
本明細書において糸状菌は、Eumycotina亜門のすべての糸状形態を含む真核微生物として定義される。これらの菌は、キチン、セルロース、および他の複合多糖で構成される栄養菌糸によって特徴付けられる。
本発明の細胞として使用するのに適している糸状菌は、形態学的、生理学的、および遺伝的に酵母と異なる。大部分の菌が繁殖に無菌条件を必要とせず、かつバクテリオファージの感染に対して感受性が低いことから、糸状真菌細胞は有利に使用され得る。糸状菌による栄養増殖は菌糸の伸長によるものであり、大部分の糸状菌の炭素異化は、偏性好気性である。本発明の宿主細胞として好ましい糸状菌は、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ヒューミコラ属(Humicola)、Acremoniurra属、フザリウム属(Fusarium)またはペニシリウム属(Penicillium)に属し得る。より好ましくは、糸状真菌細胞は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、またはリゾプス・オリーゼ(Rhizopus oryzae)細胞であり得る。
長年にわたって、作物糖からバイオエタノールを生産するために、種々の生物体の導入が提案されてきた。しかしながら、実際には、主要なすべてのバイオエタノール生産方法では、エタノール生産体としてサッカロミセス属(Saccharomyces)の酵母が使用され続けている。これは、工業プロセスに対するサッカロミセス属(Saccharomyces)の多くの魅力的な特徴、すなわち酸、エタノールおよび浸透圧に対する高い耐性、嫌気性増殖能力、および当然のことながらその高いアルコール発酵能力によるものである。宿主細胞として好ましい酵母種としては、サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)、サッカロミセス・ブルデリ(S.bulderi)、サッカロミセス・バーネッティ(S.barnetti)、サッカロミセス・エキシグス(S.exiguus)、サッカロミセス・ウバルム(S.uvarum)、サッカロミセス・ディアスタティカス(S.diastaticus)、クルイベロミセス・ラクチス(K.lactis)、クルイベロミセス・マルキシアヌス(K.marxianus)またはクルイベロミセス・フラギリス(K.fragilis)が挙げられる。
本発明の細胞は、植物バイオマス、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、ラムノース、ガラクトース、フコース、マルトース、マルトデキストリン、リボース、リブロース、またはデンプン、デンプン誘導体、ショ糖、ラクトースおよびグリセロールを、例えば発酵性糖へと転化することができる。したがって、本発明の細胞は、セルロースをグルコースモノマーへと転化し、ヘミセルロースをキシロースモノマーおよびアラビノースモノマーへと転化するのに必要なセルラーゼ(エンドセルラーゼまたはエキソセルラーゼ)、ヘミセルラーゼ(エンドまたはエキソ−キシラナーゼまたはアラビナーゼ)、ペクチンをグルクロン酸およびガラクツロン酸へと転化することができるペクチナーゼ、またはデンプンをグルコースモノマーへと転化するアミラーゼなどの1つ以上の酵素を発現することができる。
本発明の細胞は、細胞へのキシロースの能動輸送または受動輸送が可能な宿主であることが好ましい。
好ましくは、本発明の細胞は:
能動解糖が可能であり;かつ/または
ペントースリン酸経路を通じてフラックスを示し;かつ/または
キシロースから異性化されたキシルロースがピルビン酸塩へと代謝され得るようなキシルロースキナーゼ活性を示す。
細胞は好ましくは、エタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム系抗生物質またはセファロスポリンなどの所望の発酵産物へとピルビン酸塩を転化するのに必要な酵素活性をさらに含む。
本発明の好ましい細胞は、アルコール発酵、好ましくは嫌気性アルコール発酵が天然に可能な細胞である。本発明の細胞は好ましくは、エタノールに対する高い寛容性、低pHに対する高い寛容性(すなわち、約5、約4、約3、または約2.5より低いpHで増殖することができる)および乳酸、酢酸またはギ酸などの有機酸および/またはフルフラルおよびヒドロキシメチルフルフラルなどの糖分解生成物に対する高い寛容性かつ/または高温に対する高い寛容性を有する。
本発明の細胞の上記の特性および活性のいずれも、細胞に天然に存在するか、または遺伝子修飾によって導入または修飾される。
キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列は一般に、形質転換宿主細胞において活性型で発現される、または発現されることができる。したがって、宿主細胞におけるヌクレオチド配列の発現によって、一般に約30℃でタンパク質1mg当たりに少なくとも約10Uのキシロースイソメラーゼ活性、好ましくは約30℃でタンパク質1mg当たりに少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約750または少なくとも約1000Uのキシロースイソメラーゼ活性の特異的な活性を有する活性キシロースイソメラーゼが産生される。形質転換宿主細胞において発現されるキシロースイソメラーゼの特異的な活性は、本明細書において宿主細胞の細胞不含ライセート、例えば酵母細胞不含ライセートのタンパク質1mg当たりのキシロースイソメラーゼ活性単位の量として定義される。キシロースイソメラーゼ活性、タンパク質の量の決定および細胞不含ライセートの調製は、本明細書に記述されるとおりである。好ましくは、宿主細胞におけるキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列の発現によって、50、40、30または25mM未満であるキシロースに対するKを有するキシロースイソメラーゼが産生され、さらに好ましくはキシロースに対するKは約20mM以下である。
本発明の細胞は、ペントースリン酸経路のフラックスを増加する、1つ以上の遺伝子修飾を含み得る。特に遺伝子修飾(1つまたは複数)によって、非酸化的部分のペントースリン酸経路を通じてフラックスの増加が生じる。ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスの増加を生じさせる遺伝子修飾は本明細書において、その遺伝子修飾がフラックスを増加させることを除いて遺伝的に同一である株におけるフラックスと比較して、フラックスを少なくとも約1.1、約1.2、約1.5、約2、約5、約10または約20倍増加する修飾を意味すると理解される。ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスは、唯一の炭素源としてのキシロース上で修飾宿主を増殖させ、特異的なキシロース消費速度を決定し、キシリトールが生産された場合には特異的なキシロース消費速度から特異的なキシリトール生産速度を引くことによって、測定される。しかしながら、ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスは、唯一の炭素源としてのキシロース上での増殖速度、好ましくは唯一の炭素源としてのキシロース上での嫌気性増殖速度と比例する。唯一の炭素源としてのキシロース上での増殖速度(μmax)と、ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスとの間には、比例関係がある。糖でのバイオマスの収量は一定であるため特異的なキシロース消費速度(Q)は、糖でのバイオマスの収量(Yxs)で割った増殖速度(μ)に等しい(ある一連の条件下での:嫌気性、増殖培地、pH、株の遺伝的背景等;すなわち、Q=μ/Yxsである)。したがって、ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックス増加は、輸送を除いて、これらの条件下で最大増殖速度の増加から推定される(取込みは律速である)。
ペントースリン酸経路のフラックスを増加する1つ以上の遺伝子修飾は、様々な方法で宿主細胞において誘導される。これらは、例えば、キシルロースキナーゼおよび/または非酸化的部分ペントースリン酸経路の酵素のうちの1つ以上のより高い定常状態活性レベル、かつ/または非特異的アルドースレダクターゼ活性の低減された定常状態レベルを達成することを含む。定常状態活性レベルのこれらの変化は、変異体(自然に起こる、または化学物質または放射線によって誘発される)の選択によって、および/または組換えDNA技術によって、例えば、酵素をコードする遺伝子またはこれらの遺伝子を調節する因子をそれぞれ過剰発現または不活化させることによって起こり得る。
好ましい宿主細胞において遺伝子修飾は、(非酸化的部分)ペントースリン酸経路の少なくとも1つの酵素の過剰発現を含む。好ましくは、その酵素は、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼをコードする酵素からなる群から選択される。(非酸化的部分)ペントースリン酸経路の酵素の様々な組み合わせを過剰発現することができる。例えば、過剰発現される酵素は、少なくとも、リブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびリブロース−5−リン酸エピメラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびトランスケトラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびトランスアルドラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸エピメラーゼおよびトランスケトラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸エピメラーゼおよびトランスアルドラーゼ酵素;または少なくとも、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、およびトランスアルドラーゼ酵素;または少なくとも、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、およびトランスケトラーゼ酵素であることができる。本発明の一実施形態において、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼ酵素のそれぞれが、宿主細胞において過剰発現される。宿主細胞における遺伝子修飾が少なくともトランスケトラーゼとトランスアルドラーゼ酵素の両方の過剰発現を含む宿主細胞が、そのような宿主細胞は既にキシロース上での嫌気性増殖が可能なため、より好ましい。実際には、一部の条件下で、トランスケトラーゼとトランスアルドラーゼのみを過剰発現する宿主細胞は既に、その酵素のうち4種類すべて、すなわちリブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼを過剰発現する宿主細胞と同じキシロース上での嫌気性増殖速度を有する。さらに、これらの酵素のうち1種類のみの過剰発現によって代謝の不均衡が起こり得るため、イソメラーゼのみ、またはエピメラーゼのみを過剰発現する宿主細胞よりも、酵素リブロース−5−リン酸イソメラーゼとリブロース−5−リン酸エピメラーゼの両方を過剰発現する宿主細胞が好ましい。
「リブロース5−リン酸エピメラーゼ」酵素(EC5.1.3.1)は本明細書において、D−リブロース5−リン酸へのD−キシルロース5−リン酸のエピマー化およびその逆のエピマー化を触媒する酵素として定義される。この酵素は、ホスホリブロースエピメラーゼ;エリトロース−4−リン酸イソメラーゼ;ホスホケトペントース3−エピメラーゼ;キシルロースリン酸3−エピメラーゼ;ホスホケトペントースエピメラーゼ;リブロース5−リン酸3−エピメラーゼ;D−リブロースリン酸−3−エピメラーゼ;D−リブロース5−リン酸エピメラーゼ;D−リブロース−5−P3−エピメラーゼ;D−キシルロース−5−リン酸3−エピメラーゼ;ペントース−5−リン酸3−エピメラーゼ;またはD−リブロース−5−リン酸3−エピメラーゼとしても知られる。リブロース5−リン酸エピメラーゼはさらに、そのアミノ酸配列によって定義される。同様に、リブロース5−リン酸エピメラーゼは、その酵素をコードするヌクレオチド配列によって、ならびにリブロース5−リン酸エピメラーゼをコードする参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によって定義される。リブロース5−リン酸エピメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書においてRPE1と示される。
「リブロース5−リン酸イソメラーゼ」酵素(EC5.3.1.6)は本明細書において、D−リブロース5−リン酸へのD−リボース5−リン酸の直接的異性化およびその逆の直接的異性化を触媒する酵素として定義される。この酵素は、ホスホペントイソメラーゼ;ホスホリボイソメラーゼ;リボースリン酸イソメラーゼ;5−ホスホリボースイソメラーゼ;D−リボース5−リン酸イソメラーゼ;D−リボース−5−リン酸ケトール−イソメラーゼ;またはD−リボース−5−リン酸アルドース−ケトース−イソメラーゼとしても知られる。リブロース5−リン酸イソメラーゼはさらに、そのアミノ酸配列によって定義され得る。同様に、リブロース5−リン酸イソメラーゼは、その酵素をコードするヌクレオチド配列によって、ならびにリブロース5−リン酸イソメラーゼをコードする参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によって定義される。リブロース5−リン酸イソメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書においてRPI1と示される。
「トランスケトラーゼ」酵素(EC2.2.1.1)は本明細書において、以下の反応:D−リボース5−リン酸+D−キシルロース5−リン酸<−>セドヘプツロース7−リン酸+D−グリセルアルデヒド3−リン酸およびその逆の反応を触媒する酵素として定義される。この酵素は、グリコールアルデヒドトランスフェラーゼまたはセドヘプツロース−7−リン酸:D−グリセルアルデヒド−3−リン酸グリコールアルデヒドトランスフェラーゼとしても知られる。トランスケトラーゼはさらに、そのアミノ酸配列によって定義され得る。同様に、トランスケトラーゼは、その酵素をコードするヌクレオチド配列によって、ならびにトランスケトラーゼをコードする参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によって定義され得る。トランスケトラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書においてTKL1と示される。
「トランスアルドラーゼ」酵素(EC2.2.1.2)は明細書において、以下の反応:セドヘプツロース7−リン酸+D−グリセルアルデヒド3−リン酸<−>D−エリトロース4−リン酸+D−フルクトース6−リン酸およびその逆の反応を触媒する酵素として定義される。この酵素は、ジヒドロキシアセトントランスフェラーゼ;ジヒドロキシアセトンシンターゼ;ホルムアルデヒドトランスケトラーゼ;またはセドヘプツロース−7−リン酸:D−グリセルアルデヒド−3−リン酸グリセロントランスフェラーゼとしても知られる。トランスアルドラーゼはさらに、そのアミノ酸配列によって定義され得る。同様に、トランスアルドラーゼは、その酵素をコードするヌクレオチド配列によって、ならびにトランスアルドラーゼをコードする参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によって定義され得る。トランスアルドラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書においてTAL1と示される。
本発明の細胞において酵素を発現および過剰発現するための様々な手段が当業者には公知である。特に、宿主細胞において酵素をコードする遺伝子のコピー数を増加することによって、例えば宿主細胞のゲノムに遺伝子の更なるコピーを組み込むことによって、エピソーム多コピー型発現ベクターから遺伝子を発現することによって、または遺伝子の複数のコピーを含むエピソーム発現ベクターを導入することによって、酵素を過剰発現することができる。
代替方法としては、本発明の宿主細胞における酵素の過剰発現は、過剰発現されるべき酵素をコードする配列に対して天然ではないプロモーター、すなわち、それが作動可能に連結されるコード配列に対して非相同的なプロモーターを使用することによって達成することができる。プロモーターは好ましくは、それが作動可能に連結されるコード配列に対して非相同的であるが、プロモーターは、宿主細胞に対して相同的、すなわち宿主細胞に対して内因性であることも好ましい。非相同的プロモーターは、好ましくはキシロースまたはキシロースおよびグルコースが炭素源として、さらに好ましくは主要な炭素源(すなわち、利用可能な炭素源の50%を超える割合が、キシロースまたはキシロースおよびグルコースからなる)として、最も好ましくは唯一の炭素源として利用可能な条件下にて、そのコード配列に対して天然のプロモーターよりも、高い定常状態レベルのコード配列を含む転写物を産生することができる(単位時間当たりに、多くの転写物分子、すなわちmRNA分子を産生することができる)ことが好ましい。この文脈における適切なプロモーターとしては、構成的かつ誘導性の天然のプロモーターならびに改変プロモーターが挙げられる。本発明で使用するのに好ましいプロモーターはさらに、カタボライト(グルコース)レプレッションを受けず、かつ/または好ましくは誘導のためにキシロースを必要としない。これらの特徴を有するプロモーターは広く入手可能であり、当業者に公知である。かかるプロモーターの適切な例としては、例えば解糖遺伝子からのプロモーター、例えば酵母または糸状菌由来のホスホフルクトキナーゼ(PFK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD、TDH3またはGAPDH)、ピルビン酸キナーゼ(PYK)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターなどが挙げられる。酵母由来のかかるプロモーターについての詳細は、(国際公開第93/03159号パンフレット)に記載されている。他の有用なプロモーターは、リボソームタンパク質コード遺伝子プロモーター、ラクターゼ遺伝子プロモーター(LAC4)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(ADHl、ADH4等)、およびエノラーゼプロモーター(ENO)である。他のプロモーター、構成的かつ誘導性のプロモーター、およびエンハンサーまたは上流活性化配列は、当業者にはよく知られているだろう。本発明の宿主細胞において使用されるプロモーターは、所望の場合には、その制御特性に影響を及ぼすように修飾することができる。
上記の酵素の過剰発現に用いられるコード配列は好ましくは、本発明の宿主細胞に対して相同的であり得る。しかしながら、本発明の宿主細胞に対して非相同的なコード配列を使用することができる。
遺伝子組換え宿主細胞における酵素の産生について言及される場合、酵素の過剰発現とは、同一条件下での非修飾宿主細胞と比較して、酵素が高レベルの特異的酵素活性で産生されることを意味する。通常これは、酵素的に活性なタンパク質(またはマルチサブユニット酵素の場合におけるタンパク質)は、同一条件下での非修飾宿主細胞と比較して、多くの量または高い定常状態レベルで産生されることを意味する。同様に、これは通常、酵素的に活性なタンパク質をコードするmRNAが、同一条件下での非修飾宿主細胞と比較して、多くの量または高い定常状態レベルで産生されることを意味する。したがって、酵素の過剰発現は好ましくは、本明細書に記載の適切な酵素アッセイを用いて、宿主細胞における酵素の特異的な活性のレベルを測定することによって決定される。代替方法としては、酵素の過剰発現は、酵素タンパク質の特異的な定常状態レベルを例えば酵素に対して特異的な抗体を用いて定量化することによって、または酵素をコードするmRNAの特異的な定常レベルを定量化することによって、間接的に決定することができる。後者は特に、その酵素の基質が市販されていないことから、その酵素アッセイが容易に実行可能ではないペントースリン酸経路の酵素に適している。好ましくは本発明の宿主細胞において、過剰発現されるべき酵素は、過剰発現を生じさせる遺伝子修飾を除いて遺伝的に同一である株と比較して、少なくとも約1.1、約1.2、約1.5、約2、約5、約10または約20倍過剰発現される。過剰発現のこれらのレベルは、酵素の活性の定常状態レベル、酵素のタンパク質の定常状態レベルならびに酵素をコードする転写物の定常状態レベルに当てはまり得ることを理解されたい。
本発明の細胞は、特異的なキシルロースキナーゼ活性を高める、1つ以上の遺伝子修飾を含み得る。好ましくは遺伝子修飾(1つまたは複数)によって、例えば、キシルロースキナーゼをコードするヌクレオチド配列の過剰発現によって、キシルロースキナーゼの過剰発現が起こる。キシルロースキナーゼをコードする遺伝子は宿主細胞に対して内因性であるか、または宿主細胞に対して非相同的であるキシルロースキナーゼであることができる。本発明の宿主細胞におけるキシルロースキナーゼの過剰発現に使用されるヌクレオチド配列は、キシルロースキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
「キシルロースキナーゼ」酵素(EC2.7.1.17)は本明細書において、ATP+D−キシルロース=ADP+D−キシルロース5−リン酸の反応を触媒する酵素として定義される。この酵素は、リン酸化キシルロキナーゼ、D−キシルロキナーゼまたはATP:D−キシルロース5−ホスホトランスフェラーゼとしても知られる。本発明のキシルロースキナーゼはさらに、そのアミノ酸配列によって定義され得る。同様に、キシルロースキナーゼは、その酵素をコードするヌクレオチド配列によって、ならびにキシルロースキナーゼをコードする参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によって定義され得る。
本発明の細胞において、特異的なキシルロースキナーゼ活性を高める遺伝子修飾は、上述のペントースリン酸経路のフラックスを増加する修飾のいずれかと組み合わせることができる。しかしながら、これは必須ではない。
したがって、本発明の宿主細胞は、特異的なキシルロースキナーゼ活性を高める遺伝子修飾(1つまたは複数)のみを含み得る。本発明の宿主細胞におけるキシルロースキナーゼの過剰発現を達成し、かつ解析するための、当技術分野で利用可能な様々な手段は、ペントースリン酸経路の酵素について上述した手段と同じである。好ましくは本発明の宿主細胞において、過剰発現されるキシルロースキナーゼは、過剰発現を生じさせる遺伝子修飾を除いて遺伝的に同一である株と比較して、少なくとも約1.1、約1.2、約1.5、約2、約5、約10または約20倍過剰発現される。過剰発現のこれらのレベルは、酵素の活性の定常状態レベル、酵素のタンパク質の定常状態レベルならびに酵素をコードする転写物の定常状態レベルに当てはまることを理解されたい。
本発明の細胞は、宿主細胞において非特異的アルドースレダクターゼ活性を低減する1つ以上の遺伝子修飾を含み得る。好ましくは、非特異的アルドースレダクターゼ活性は、非特異的アルドースレダクターゼをコードする遺伝子の発現を低減する、またはその遺伝子を不活化する、1つ以上の遺伝子修飾によって、宿主細胞において低減される。好ましくは遺伝子修飾は、宿主細胞における非特異的アルドースレダクターゼをコードする遺伝子の各内因性コピーの発現を低減または不活化する。宿主細胞は、二倍性、多倍数性または異数性の結果として、非特異的アルドースレダクターゼをコードする遺伝子の複数のコピーを含み、かつ/または宿主細胞は、アミノ酸配列が異なり、かつ異なる遺伝子によってそれぞれがコードされている、アルドースレダクターゼ活性を有するいくつかの異なる(イソ)酵素を含有し得る。さらに、かかる場合において、好ましくは、非特異的アルドースレダクターゼをコードする各遺伝子の発現が低減または不活化される。好ましくは、その遺伝子は遺伝子の少なくとも一部の欠失によって、または遺伝子の破壊によって不活化され、それによって、この文脈では遺伝子という用語は、コード配列の上流または下流の非コード配列も含み、その(部分的な)欠失または不活化の結果として、宿主細胞における非特異的アルドースレダクターゼ活性の発現が低減される。
本発明の宿主細胞においてその活性が低減される、アルドースレダクターゼをコードするヌクレオチド配列は、アルドースレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
本発明の宿主細胞において、宿主細胞において非特異的アルドースレダクターゼ活性を低減する遺伝子修飾は上述のペントースリン酸経路のフラックスを増加する修飾のいずれか、および/または宿主細胞における特異的なキシルロースキナーゼ活性を高める修飾のいずれかと組み合わせることができる。しかしながら、これは必須ではない。
したがって、宿主細胞において非特異的アルドースレダクターゼ活性を低減する遺伝子修飾のみを含む本発明の宿主細胞が、特に本発明に含まれる。
「アルドースレダクターゼ」酵素(EC1.1.1.21)は本明細書において、キシロースまたはキシルロースをキシリトールへと還元することができる酵素として定義される。本発明の文脈において、アルドースレダクターゼは、本発明の宿主細胞に対して天然(内因性)であり、かつキシロースまたはキシルロースをキシリトールへと還元することができるいずれかの非特異的アルドースレダクターゼであり得る。非特異的アルドースレダクターゼは、以下の反応:
アルドース+NAD(P)H+H ? アルジトール+NAD(P)
を触媒する。
この酵素は広い特異性を有し、アルドースレダクターゼ;ポリオールデヒドロゲナーゼ(NADP);アルジトール:NADPオキシドレダクターゼ;アルジトール:NADP1−オキシドレダクターゼ;NADPH−アルドペントースレダクターゼ;またはNADPH−アルドースレダクターゼとしても知られる。
サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)に対して内因性であり、かつGRE3遺伝子によってコードされる、かかる非特異的アルドースレダクターゼの詳細な例(Traffら、2001,Appl.Environ.Microbiol.67:5668−74)。したがって、本発明のアルドースレダクターゼはさらに、そのアミノ酸配列によって定義される。同様に、アルドースレダクターゼは、その酵素をコードするヌクレオチド配列によって、ならびにアルドースレダクターゼをコードする参照ヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列によって定義される。
本発明の細胞は、キシロース上での、好ましくは炭素源としてのキシロース上での、さらに好ましくは嫌気性条件下での増殖のために、自然発生の、または誘発される(例えば、放射線または化学物質よって)変異体を選択することによって、キシロースの利用に適応される。変異体の選択は、例えばKuyperら(2004,FEMS Yeast Res.4:655−664)により記載されている培養物の連続継代などの技術によって、またはケモスタット培養物における選択圧下での培養によって行われる。好ましい本発明の宿主細胞において、変異体の選択によって得られる修飾を含む上述の遺伝子修飾のうちの少なくとも1つは、炭素源としての、好ましくは唯一の炭素源としてのキシロース上で、好ましくは嫌気性条件下で増殖する能力を宿主細胞に与える。好ましくは、修飾された宿主細胞は、本質的にキシリトールを産生せず、例えば、産生されるキシリトールは、検出限界を下回り、または例えば消費される炭素の約5、約2、約1、約0.5、または約0.3%未満(モル基準)である。
本発明の細胞は、好気性条件下にて少なくとも約0.05、約0.1、約0.2、約0.25または約0.3h−1の速度で、または適用可能な場合には嫌気性条件下にて少なくとも約0.03、約0.05、約0.07、約0.08、約0.09、約0.1、約0.12、約0.15または約0.2h−1の速度で、唯一の炭素源としてのキシロース上で増殖する能力を有し得る。好ましくは、修飾された宿主細胞は、好気性条件下にて少なくとも約0.05、約0.1、約0.2、約0.25または約0.3h−1の速度で、または適用可能な場合には嫌気性条件下にて少なくとも約0.03、約0.05、約0.1、約0.12、約0.15、約0.2h−1の速度で、唯一の炭素源としてのグルコースとキシロースの混合物(重量比1:1)上で増殖する能力を有する。
本発明の細胞は、少なくとも約200、約250、約300、約346、約350、約400、約500、約600、約750、または約1000mgのキシロース/g 細胞/hの特異的なキシロース消費速度を有し得る。本発明の細胞は、グルコース上での発酵産物(エタノールなど)の宿主細胞の収率の少なくとも約40、約50、約55、約60、約70、約80、約85、約90、約95、約98または約99%である、キシロース上での発酵産物(エタノールなど)の収率を有し得る。さらに好ましくは、キシロース上での本発明の細胞の発酵産物(エタノールなど)の収率は、グルコース上での発酵産物(エタノールなど)の細胞の収率と等しい。同様に、キシロース上での細胞のバイオマス収率は、グルコース上での宿主細胞のバイオマス収率の少なくとも約40、約50、約55、約60、約70、約80、約85、約90、約95、約98または約99%である。さらに好ましくは、キシロース上での細胞のバイオマス収率は、グルコース上での宿主細胞のバイオマス収率と等しい。グルコース上およびキシロース上での収率の比較において、どちらの収率も、好気性条件下または嫌気性条件下で比較されることを理解されたい。
本発明の細胞は、アラビノースを使用することができる。したがって、本発明の細胞は、L−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸に、かつ/または所望の発酵産物、例えば本明細書に記載の産物のうちの1つに転化することができる。
生物、例えばL−アラビノースからエタノールを産生できるサッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)株は、適切な源からのaraA(L−アラビノースイソメラーゼ)、araB(L−リブロキナーゼ)およびaraD(L−リブロース−5−P4−エピメラーゼ)遺伝子を導入する細胞を修飾することによって作製される。かかる遺伝子は、アラビノースを使用することができるように本発明の細胞に導入される。かかるアプローチは国際公開第2003/095627号パンフレットに記載されている。
本発明の細胞は、エタノールの産生に適している細胞である。しかしながら、本発明の細胞は、エタノール以外の発酵産物の産生にも適している。かかる非エタノール発酵産物は原則的に、酵母または糸状菌などの真核微生物によって産生可能な塊状または微細化学物質を含む。
かかる発酵産物は、例えば、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム系抗生物質またはセファロスポリンである。非エタノール発酵産物を産生するための、好ましい本発明の修飾宿主細胞は、結果としてアルコールデヒドロゲナーゼ活性を低減する遺伝子修飾を含有する宿主細胞である。
更なる態様において、本発明は、本発明の修飾宿主細胞が、キシロースなどのキシロース源を含む炭素源の発酵に使用される、発酵プロセスに関する。キシロース源に加えて、発酵培地における炭素源は、グルコース源も含み得る。キシロースまたはグルコース源はキシロースまたはグルコース自体であるか、またはキシロースもしくはグルコース単位を含む炭水化物オリゴマーまたはポリマー、例えばリグノセルロース、キシラン、セルロース、デンプン等であることができる。かかる炭水化物からキシロースまたはグルコース単位を放出するために、適切なカルボヒドラーゼ(キシラナーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ等)が発酵培地に添加されるか、または修飾宿主細胞によって産生される。後者の場合には、かかるカルボヒドラーゼが産生および排出されるように、修飾宿主細胞が遺伝子操作される。グルコースのオリゴマーまたはポリマー源を使用する更なる利点は、例えば、律速量のカルボヒドラーゼを使用することによって、発酵中に低濃度の遊離グルコースを維持することが可能となることである。次に、これは、キシロースなどの非グルコース糖の代謝および輸送に必要なシステムの抑制を防ぐ。
好ましい方法において、修飾宿主細胞は、キシロースとグルコースのどちらも、好ましくは同時に発酵させ、その場合には、好ましくはグルコース抑制を受けず、ディオーキシー増殖(diauxic growth)を防ぐ修飾宿主細胞が使用される。炭素源としてのキシロース(およびグルコース)源に加えて、発酵培地はさらに、修飾宿主細胞の増殖に必要な適切な成分を含むだろう。酵母などの微生物を増殖させるための発酵培地の組成は当技術分野でよく知られている。その発酵プロセスは、例えば、エタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ペニシリンGまたはペニシリンVおよびその発酵誘導体およびセファロスポリンなどのβ−ラクタム系抗生物質などの発酵産物を産生する方法である。
発酵プロセスは、好気性または嫌気性発酵プロセスである。嫌気性発酵プロセスは本明細書において、酸素の存在下にて行われるか、または実質的に酸素が消費されない、好ましくは約5未満、約2.5または約1mmol/L/h、さらに好ましくは0mmol/L/hが消費される(すなわち、酸素消費量が検出不可能である)、かつ有機分子が電子供与体と電子受容体両方としての役割を果たす、発酵プロセスとして定義される。酸素の非存在下では、解糖およびバイオマス形成で産生されるNADHは、酸化的リン酸化によって酸化することができない。この問題を解決するために、多くの微生物では、電子および水素受容体としてピルビン酸またはその誘導体の1つが用いられ、それによってNADが再生される。
したがって、好ましい嫌気性発酵プロセスでは、ピルビン酸は電子(および水素受容体)として使用され、エタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム系抗生物質およびセファロスポリンなどの発酵産物に還元される。
発酵プロセスは好ましくは、修飾宿主細胞に最適な温度で行われる。したがって、大部分の酵母または真菌宿主細胞については、発酵プロセスは、約42℃未満、好ましくは約38℃未満の温度で行われる。酵母または糸状真菌宿主細胞については、発酵プロセスは、好ましくは約35、約33、約30または約28℃より低い温度で、および約20、約22、または約25℃より高い温度で行われる。
好ましい方法は、エタノールを産生する方法であり、そのため、その方法は、(a)キシロース源を含有する培地を上記で定義される修飾宿主細胞で発酵させ、それによって、宿主細胞がキシロースをエタノールに発酵させる工程;任意に、(b)エタノールを回収する工程;を含む。発酵培地は、エタノールに発酵されるグルコース源も含み得る。その方法において、容積測定によるエタノール生産性は好ましくは、少なくとも約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約5.0または約10.0gエタノール/リットル/時間である。この方法におけるキシロースおよび/またはグルコース上でのエタノール収率は好ましくは、少なくとも約50、約60、約70、約80、約90、約95または約98%である。エタノール収率は本明細書において、理論最大収量のパーセンテージとして定義される。
本発明は、ブタノール乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム系抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される産物などの発酵産物を産生する方法にも関する。この方法は好ましくは、本明細書において上記で定義される修飾宿主細胞でキシロース源を含有する培地を発酵させることを含み、それによって、宿主細胞がキシロースを発酵産物に発酵させる。
本発明は、エタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム系抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される産物などの発酵産物を産生する方法も提供する。この方法は好ましくは、細胞がキシロースおよびL−アラビノースを発酵産物へと発酵させるように、キシロースとL−アラビノースの両方を使用することができる上記で定義される細胞で、少なくともキシロース源とL−アラビノース源を含有する培地を発酵させることを含む。
本発明は、エタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム系抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される産物などの発酵産物を産生する方法も提供する。この方法は好ましくは、上記で定義される細胞およびL−アラビノースを使用することができる細胞で、少なくともキシロース源とL−アラビノース源を含有する培地を発酵させ、それによって各細胞がキシロースおよび/またはアラビノースを発酵産物へと発酵させることを含む。
本発明の方法は、発行産物の回収も含み得る。その方法が行われる培地は、グルコース源も含有し得る。
本発明による方法は、好気性および嫌気性条件下で行われる。好ましくは、方法は、微好気性または酸素制限条件下にて行われる。
嫌気性発酵プロセスは本明細書において、酸素の非存在下にて行われる、または実質的に酸素が消費されない、好ましくは約5未満、約2.5または約1mmol/L/hが消費される、かつ有機分子が電子供与体と電子受容体の両方としての役割を果たす、発酵プロセスとして定義される。
酸素制限発酵プロセスは、酸素消費量が、気体から液体への酸素移動によって制限されるプロセスである。酸素制限の程度は、入ってくるガスフローの量および組成、ならびに使用される発酵装置の実際の混合/物質移動特性によって決定される。好ましくは、酸素制限条件下のプロセスにおいて、酸素消費量の速度は、少なくとも約5.5、さらに好ましくは少なくとも約6、例えば少なくとも7mmol/L/hである。
以下の実施例によって本発明を説明する。
[実施例]
別段の指定がない限り、用いられる方法は、生化学的標準技術である。適切な一般方法論の教科書の例としては、Sambrookら、Molecular Cloning,a Laboratory Manual(1989)およびAusubelら、Current Protocols in Biology(1995),John Wiley & Sons,Incが挙げられる。
キシロース異性化活性(実施例1および2で決定される)
50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、10mMキシロース、10mM MgClおよび適切な量の細胞不含抽出物を含有する反応混合物において37℃で、キシロースイソメラーゼ活性がアッセイされる。形成されるキシルロースの量は、システイン−カルバゾール法(Goldstein and McCusker,Yeast 15,1541−1553,1999)によって決定される。代替方法としては、キシロースイソメラーゼ活性は、Kersters−Hilderssonらの酵素アッセイを用いて30℃でアッセイされる(D−ソルビトールデヒドロゲナーゼを使用した酵素アッセイによるD−キシロースイソメラーゼの速度論的キャラクタリゼーション、Enz.Microb.Technol.9(1987)145−148)。形質転換サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)株の細胞不含抽出物におけるキシロースイソメラーゼの生体外活性は、二価カチオン(Mg2+またはCo2+)に依存する。
サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)の形質転換
サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)の形質転換は、GietzおよびWoods(2002;Transformation of the yeast by the LiAc/SS carrier DNA/PEG method.Methods in Enzymology 350:87−96)によって記述されるように行われた。
コロニーPCR
単一コロニー分離株をプラスチック製爪楊枝でつまみ、ミリQ水50μlに再懸濁した。試料を99℃で10分間インキュベートした。供給元から提供される説明書に従ってPhusion(登録商標)DNAポリメラーゼ(フィンザイム社(Finnzymes))を使用してPCR反応の鋳型として、インキュベートした試料5μlを使用した。

キシロースイソメラーゼ活性の決定のための試料の前処理(本明細書および実施例3において一般的な)
0.1M MOPSバッファー(pH7.5)0.5mlを一晩培養液の細胞ペレットに添加した。細胞を再懸濁し、直径0.4〜0.5mmのガラスビーズ0.5gを既に含有する2mlエッペンドルフチューブにそれを移した。エッペンドルフチューブ振盪機(IKA VIBRAX−VXR)において最高速度で4℃にて20分間、すべての試料を激しく振盪した。抽出物を14000rpmおよび4℃で5分間遠心分離した。細胞不含抽出物である上清を新たなエッペンドルフチューブに移した。
アッセイ条件 キシロースイソメラーゼ活性アッセイ(本明細書において一般的であり、実施例3で決定される)
以下の方法は、Dische−Borenfreud(J.Biol.Chem.(1951)192,2,583−587により記載の方法の改良型である。基質混合物(100mM MOPS(pH7.5),10mM MgCl,10mM D−キシロース)1.0mlを(希釈された)細胞不含抽出物50μlと氷上で二つ組で混合した。続いて、反応チューブを50℃の水浴に30分間入れた。さらに、反応も二つ組で30℃で行った。氷水上に反応チューブを置き、続いて1.67%L−システイン塩酸塩一水和物(メルク社(Merck))溶液0.2mlを添加することによって、反応を停止した。次いで、ボルテックスすることによって、混合物をよく混合した。続いて、HSO溶液(95〜97%濃HSO450mlを含む水190ml)6mlを添加して直ぐに、エタノールに溶解された0.12%(w/v)カルバゾール(メルク社)0.2mlを添加した。この最終混合物をボルテックスすることによって混合し、室温で60分間放置した。プラスチック製キュベットを使用して560nmにて吸収を測定する。
ケトースでもあるD(+)−フルクトースを参照として使用した。このために、D−フルクトース約1000mgを正確に計量し、50mlメスフラスコ中で0.1M MOPsバッファー(pH7.5)に溶解した。一連の希釈は、約2〜20μモル/mlの範囲で行われた。これらのフルクトース溶液50μlを上述のアッセイで使用し、560nmでの吸収を用いて較正曲線を作製した。560nmでの吸光度を較正曲線に関連付けることによって、試料の活性を計算した。
ブラッドフォード(Bradford)法の改良プロトコルに従って、Coomassie Plus Protein Assay(サーモサイエンティフィック社(Thermo Scientific))を用いて、試料のタンパク質濃度を決定した。キシロースイソメラーゼの特異的活性は、nmol/mgタンパク質/分として表される。
[実施例1]
サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC 8492からのイソメラーゼの発現
1.1.1 キシロースイソメラーゼ発現ベクターの作製
バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)ATCC 8492からのキシロースイソメラーゼ[E.C.4.2.1.2],GenBankアクセッション番号AAYH02000036(配列番号1)をコドン使用頻度について解析した。国際公開第2006/077258号パンフレットおよび国際公開第2008/000632号パンフレットに記載のように、コドン使用を最適化した(配列番号2)。
サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)のTPI1プロモーターの前方で、配列番号2による遺伝子をクローン化した。可能性のあるキシロースイソメラーゼの非効率的な発現を防ぐために、次の配列:
ACTAGTAAAAACACATACATAAACTAAAAATG
をコード配列の前に置き、開始コドンを下線を引いて示した。
SpeI制限部位ACTAGT)を強力な構成TPI1プロモーターに導入し、配列:
TCTTGCTTAAATCTATAACTACAAAAAACACATACATAAACTAAAAATG(元のTPI1プロモーター)を
TCTTGCTTAAATCTATAACTAGTAAAAACACATACATAAACTAAAAATGに変更した。
これによって、コドン最適化キシロースイソメラーゼコード配列をTPI1プロモーターに作動可能に連結することが可能となる。
さらに、終止コドンTAAを、酵母における最も効率的な終止コドンであるTAAGに変更した。簡便な制限部位を加えて、クローン化を促進した。ジーンアート社(GeneArt AG)(ドイツ、レーゲンスブルク(Germany,Regensburg))によって、配列が合成される。
最終的な酵母発現コンストラクトpYISIT4−XKS1−xylA(Baun CpO)を図1に示す。
1.2 酵母形質転換
サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)株CEN.PK113−7D(MATa URA3 HIS3 LEU2 TRP1 MAL2−8 SUC2) およびそのGRE3遺伝子がペントースリン酸経路(上記参照)の非酸化的部分の遺伝子によって置換されたCEN.PK113−7Dの誘導体(MATa URA3 HIS3 LEU2 TRP1 MAL2−8 SUC2 GRE3::[TPI1p−TAL1_ADH1p−TKL1_PGI1p−RPE1_ENO1p−RKI1])を構築物pYISIT4−XKS1−xylA(Baun CpO)で形質転換する。酵母カーボンベース(YCB)w/o硫酸アンモニウム(ディフコ社(Difco))、40mM KPi(pH6.8)および5mMアセトアミド上に、形質転換混合物をプレーティングした。非形質転換細胞はこの培地で増殖することができない。
形質転換体は、PCR技術および/またはサザンブロット技術を使用して特徴付けられる。
[実施例2]
キシロース上での形質転換酵母株の増殖
2.1 培地の組成
増殖実験:以下の組成:0.67%(w/v)酵母窒素ベースおよびグルコース、ガラクトースまたはキシロースのいずれか、またはこれらの基質の組み合わせ(以下参照)を有する培地上で、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)株を増殖させる。寒天平板を得るために、培地に2%(w/v)細菌学的(bacteriological)寒天を追加した。
エタノール産生:振盪フラスコ培養を合成培地中で30℃にて行った(Verduynら、Yeast 8:501−517,1992)。滅菌前に2M KOHで培地のpHを調整した。固形合成培地を得るために、寒天1.5%を加えた。
500ml振盪フラスコにおいて適切な糖を含有する培地100mlに凍結ストック培養物を接種することによって、前培養物を調製した。オービタルシェーカー(200rpm)で30℃にてインキュベートした後、この培養物を用いて、振盪フラスコ培養物を接種した。嫌気性培養のための合成培地に、エタノールに溶解されたエルゴステロール0.01g/LおよびTween80 0.42g/Lを追加した(Andreasen and Stier.J.Cell Physiol.41:23−36,1953; およびAndreasen and Stier.J.Cell Physiol.43:271−281,1954)。
2.2 増殖実験
pYISIT4−XKS1−xylA(Baun CpO)で形質転換された、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)株CEN.PK113−7DまたはPPPを構成的に発現する誘導体(実施例1参照)を炭素源として2%グルコースを有する寒天平板上で増殖させる。コロニーが目に見える場合には、単一コロニーを用いて、炭素源としての100mMキシロース、100mMグルコースおよび100mMガラクトース、またはその組み合わせを有する液体培地に、接種する。LKB Ultrospec K分光光度計で600nmにて光学濃度の増加を測定することによって、増殖がモニターされる。
2.3 エタノール産生
pYISIT4−XKS1−xylA(Baun CpO)で形質転換されたサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)CEN.PK113−7DまたはPPPを構成的に発現する誘導体(実施例1参照)を炭素源として2%グルコースを有する寒天平板上で増殖させる。コロニーが目に見える場合には、単一コロニーを用いて合成培地に接種する(上記のVerduynら)。グルコース、キシロースおよびまたはガラクトースの混合物を炭素源として培地に0〜50グラム/リットルの範囲で添加する。LKB Ultrospec K分光光度計で600nmにて光学濃度の増加を測定することによって、増殖がモニターされる。エタノールの産生および糖の消費は、HPLCおよび/またはNMR分析によってモニターされる。
[実施例3]
3.1 非酸化的ペントースリン酸経路の構成的に発現された4つの遺伝子の導入
CEN.PK113−7D(MATa URA3 HIS3 LEU2 TRP1 MAL2−8 SUC2)をプラスミドpPWT080で形質転換することによって遺伝子TAL1、TKL1、RKI1およびRPE1を構成的に発現するサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)BIE104P1を得た(図2)。プラスミドpPWT080は大部分が、ジーンアート社(ドイツ、レーゲンスブルク)によって合成された合成DNAを使用して作製された。プラスミドpPWT080の配列は配列番号4に示される。手短に言えば、プラスミドpPWT080は、図2に示されるように、GRE3遺伝子のプロモーター領域、続いて強力な構成プロモーターの制御下の4つのPPP遺伝子TAL1、TKL1、RKI1およびRPE1、およびGRE3遺伝子の3’非コード配列からなる。選択マーカーとして、G418に対する耐性を付与するkanMX遺伝子および唯一の窒素源としてのアセトアミド中で形質転換体が増殖することを可能にするアスペルギルス属(Aspergillus)amdS遺伝子がこのプラスミド上に存在する。組込みに続いて分子内組換えされると、マーカーは失われ、この構築物の組込みによって、GRE3遺伝子のコード領域が不活化され遺伝子TAL1、TKL1、RPE1およびRKI1の過剰発現が起こる。
CEN.PK113−7Dの形質転換の前に、供給元によって提供される説明書に従って制限酵素SfiI(New England Biolabs)を使用して、pPWT080を直鎖化した。1ml当たりG418(シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich))100μgを含有するYPD(1リットル当たり:酵母抽出物10g、ペプトン20g/L、ブドウ糖20g/L、寒天20g)上に形質転換混合物をプレーティングした。
2〜4日後に、コロニーがプレート上に現れたのに対して、ネガティブコントロール(すなわち、形質転換実験でDNAが添加されていない)では、ブランクのYPD/G418プレートが得られた。
プラスミドpPWT080の組込みは、GRE3遺伝子座に向けられる。PCRおよびサザンブロット技術を用いて、形質転換体を特徴付けた。
プラスミドpPWT080の1コピーの正しい組み込みを表すPCR反応は、配列番号5と6、および配列番号6と7によって示されるプライマーで行われた(図3参照)。配列番号5および6のプライマー対を用いて、GRE3遺伝子座での正しい組込みをチェックした。プラスミドpPWT080が複数のコピーで組み込まれる(頭−尾(head−to−tail)の組込み)場合、配列番号6および7のプライマー対によって、PCR産物が得られる。後者のPCR産物が存在しない場合、これは1つのコピーの組込みを表す。
上述のPCR技術を用いて、それ自体が同定された形質転換体における正しい1コピーの組込みを検証するために、サザンブロット分析を行った。このために、分子生物学標準技術を用いて、野生型株CEN.PK113−7Dおよび形質転換体から、染色体DNAを単離した。その染色体DNAを制限酵素XcmIおよびPsiIで消化し、0.7%アガロースゲル上で電気泳動し、製造元の説明書に従ってナイロン膜(Hybond N+、アマシャム・ファルマシア・バイオテク社(Amersham Pharmacia Biotech社))にDNAを移行した。
プラスミドpPWT080の正しい組込みを検出するためのプローブとして、プラスミドpPWT080に存在するRKI1遺伝子由来のプローブを使用した。配列番号9と10のプライマーおよびプラスミドpPWT080を鋳型として使用することによって、プローブを作製した。ECL Direct Labeling and Detection Systemの供給元(GE Life Sciences社)によって提案されるように、プローブの標識化およびそれに続くハイブリダイゼーションおよび洗浄手順を行った。
図4で表されるオートラジオグラムは、図3から推定することができる、予想されたハイブリダイゼーションと一致して、プラスミドpPWT080の1コピーの正しい組込みを示す(パネルc)。その株をBIE104F1と示した。
キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼをコードする遺伝子を導入することができるようにするためには(セクション3.2)、プラスミドpPWT080の組込みによって導入される選択マーカーを除去する必要がある。プラスミドpPWT080のデザインは、染色体にpPWT080を組み込むと、相同配列が互いに極めて接近するようなデザインであった。このデザインによって、これらの相同領域の自発的な(spontaneous)分子内組換によって、選択マーカーが失われることが可能となる。株からのマーカーの除去によって、マーカーを含有する株よりも、その使用における安定性が高いマーカー不含株が得られる。さらに具体的には、サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)のGRE3遺伝子座にてpPWT080の1コピーを組み込んだ後に、GRE3遺伝子のプロモーター領域およびGRE3遺伝子の3’非コード領域を複製する。栄養増殖すると、低頻度であるが、分子内組換えが起こる。この組換えの頻度は、ゲノムにおける相同領域の長さおよび遺伝子座に依存する(未発表の結果)。新たな培地に培養物の細画分を逐次的に移すと、時間の経過と共に、分子内組換え体が蓄積する。
このために、コロニー分離株から開始して、BIE104F1株をYPD−2%グルコース中で培養した。一晩培養液25μlを使用して、新たなYPD−2%グルコース培地に接種した。5回の連続的な移行後に、培養物の光学濃度を決定し、濃度約5000/mlに細胞を希釈した。30mM KPi(pH6.8)、0.1%(NHSO、40mMフルオロアセトアミド(アマシャム社(Amersham))および1.8%寒天(ディフコ社)を含有する酵母カーボンベース(ディフコ社)上に、細胞浮遊液100μlをプレーティングした。BIE104F1株の細胞と同一な、つまり、細胞内組換えなしの細胞はさらに、amdS遺伝子を含有する。それらの細胞に対して、フルオロアセトアミドは毒性である。これらの細胞はフルオロアセトアミドを含有する培地上で増殖することができず、かつコロニーを形成しない。しかしながら、分子内組換えが生じている場合には、選択マーカーを欠失しているBIE104F1変異株は、フルオロアセトアミドを増殖抑制化合物へと変換することができないため、フルオロアセトアミド培地上で増殖することができる。それらの細胞は、この寒天培地上でコロニーを形成する。
このようにして得られたフルオロアセトアミド耐性コロニーを、配列番号5と6、および配列番号7と8のプライマーを用いてPCR分析にかけた。配列番号5と6のプライマーによって、図5に示されるように選択マーカーの組換えが意図した通りに起こった場合にバンドが得られる。結果として、GRE3遺伝子のコード領域は、4つの遺伝子TKL1、TAL1、RKI1およびRPE1によって置換される。その場合には、プライマー7は、外部組換えされるべき領域でプライミングすることから、配列番号7および8を用いたPCR反応によって、PCR産物は得られない(図3、パネルb参照)。バンドがこれらのプライマーで得られる場合、これは、ゲノムにおける完全なプラスミドpPWT080の存在を表すため、組換えは起こっていない。
配列番号5および6のプライマーによってPCR産物が得られない場合、完全なプラスミドpPWT080がゲノム外で組換えするように、組換えが起こっている。選択マーカーだけでなく、4つのPPP遺伝子も失われた。実際に、野生型酵母が回収されている。
予想されるPCR結果が示す分離株をサザンブロット分析にかけた(上記参照)。この結果を図4に示す。サザンブロット上のバンドの正確なパターン(図3から推定される)を表す株の1つは、BIE104P1と示される株である。
3.2 キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼをコードする、構成的に発現される遺伝子の導入
形質転換体のG418選択を可能にするために、図1に示すプラスミドpYISIT4−XKS1−xylA(Baun CpO)を改良した。このために、制限酵素MluIおよびSacIIを使用して、プラスミドpYISIT4−XKS1−xylA(Baun)(図1)から、TPI1プロモーターの制御下のxylA遺伝子およびTDH1プロモーターの制御下のXKS1遺伝子を含有する4630bpインサートを切断した。
図6に示すプラスミドpYI#SIT4を制限酵素Acc65Iで消化した。
大腸菌(E.coli)(カナマイシン)およびサッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)(G418)における選択を可能にする、プラスミドp427TEF(デュアルシステムズ・バイオテック社(Dualsystems Biotech AG))上に存在するカナマイシン耐性マーカー(kanMX)を、配列番号11および12のプライマーを用いたPCRによって単離した。配列番号12のプライマーの配列は、kanMX断片におけるMluI部位が失われるようにデザインされ、得られるプラスミド(pPWT007、以下参照)におけるMluI部位がユニーク(unique)に維持される。Zero Blunt(登録商標)TOPO PCR Cloning Kit for Sub−cloning(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用して、pCRII−TOPOベクターにおいてPCR産物をサブクローニングした。制限酵素Acc65を使用してkanMX耐性マーカーを切断するために、正しいクローンを用いた。消化されたプラスミドpYI#SIT4とこの断片をライゲートした結果、図7に示すpPWT007が得られた。
プラスミドpPWT007を制限酵素MluIおよびSacIIで切断した。このベクターを精製した後、上述のpYISIT4−XKS1−xylA(Baun)の4630bp MluI−SacII断片をライゲートした。得られたプラスミドは、pPWT042と呼ばれ、図8に示される。
BIE104P1株(MATa URA3 HIS3 LEU2 TRP1 MAL2−8 SUC2 ΔGRE3::[TPI1p−TAL1−ADH1p−TKL1−PGI1p−RPE1−ENO1p−RKI1])(セクション3.1参照)をプラスミドpPWT042で形質転換した。BIE104P1を形質転換する前に、供給元により提供される説明書に従って、制限酵素SfiIを用いて、pPWT042を直鎖化した。1ml当たりG418(シグマ・アルドリッチ社)100μgを含有するYPD(1リットル当たり:酵母抽出物10g,ペプトン20g/L、ブドウ糖20g/L、寒天20g)上に形質転換混合物をプレーティングした。
2〜4日後に、コロニーがプレート上に現れたのに対して、ネガティブコントロール(すなわち、形質転換実験でDNAが添加されていない)では、ブランクのYPD/G418プレートが得られた。
プラスミドpPWT042のSfiIでの消化については、その組込みは、ゲノムにおけるSIT4遺伝子座に向けられる(Gottlin−Ninfa and Kaback(1986)Molecular and Cellular Biology Vol.6,No.6,2185−2197)。PCRおよびサザンブロット技術を用いて、形質転換体を特徴付けた。
プラスミドpPWT04の1コピーの正しい組み込みを表す、Phusion(登録商標)DNAポリメラーゼ(フィンザイム社)を用いたPCR反応は、配列番号13と14、および配列番号14と15によって示されるプライマーで行われた。図9に示すように、配列番号13および14のプライマー対を用いて、SIT4遺伝子座での正しい組込みをチェックした。SIT4遺伝子座におけるプラスミドの正しい組込みは、配列番号15および16のプライマー対でもチェックすることができる(図9)。プラスミドpPWT042が複数のコピーで組み込まれる(頭−尾の組込み)場合、配列番号14および15のプライマー対によって、PCR産物が得られる。後者のPCR産物が存在しない場合、これはプラスミドpPWT042の1コピーの組込みを表す。
ゲノムに組み込まれたプラスミドpPWT042の1コピーを有する株をBIE104P1Y9と示した。
3.3 増殖実験
BIE104P1およびBIE104P1Y9株の単一コロニー分離株を用いて、2%グルコースが追加されたYNB−培地(ディフコ社)に接種した。接種されたフラスコを約30℃および280rpmにて約16時間インキュベートした。一晩培養液の600nmでの光学濃度を決定した。1%グルコースおよび1%キシロースが追加されたYNB培地に、0.2の初期OD600にて一晩培養液を接種した。細胞を30℃および280rpmで一晩増殖させた。続いて、2%キシロースおよび0.1%グルコースを含有するYNB培地に0.2の初期OD600で接種した。
後者の培地中に存在する微量のグルコースは両方の株によって急速に消費された。0.2の初期OD600にて、炭素源として2%キシロースを有するYNBに移行すると、約4週間の非常に長い誘導期の後に、BIE104P1Y9のみが、この培地上で増殖することができた。600nmでの光学濃度が少なくとも2.0の値に達した場合、0.2の初期OD600にて2%キシロースを含有する新たなYNB培地を有するフラスコに細胞を移した。
図10に示すように、これを何度も繰り返した。BIE104P1Y9株が、唯一の炭素源として2%キシロースを含有する無機培地上で迅速かつ効率的に増殖したのに対して、組込みプラスミドpPWT042を欠損している参照株はそのように増殖することができないことが、グラフにはっきりと示されている。
3.4 キシロースイソメラーゼ活性
BIE104P1およびBIE104P1Y9株の単一コロニー分離株を用いて、YPD2%グルコースに接種した。接種されたフラスコを約30℃および280rpmにて約16時間インキュベートした。一晩培養液の600nmでの光学濃度を決定した。遠心分離によって細胞を収集した。0.1M MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸;シグマ社)バッファー(pH7.5)でペレットを1回洗浄し、分析が行われるまで−20℃で凍結した。
分析結果を以下の表にまとめる。

3.5 エタノール産生
IE104P1およびBIE104P1Y9株の単一コロニー分離株を用いて、唯一の炭素源として2%グルコースが追加されたVerduyn培地(Verduynら、Yeast 8:501−517,1992)に接種した。さらに、唯一の炭素源として2%キシロースを有するVerduyn培地においてBIE104P1Y9株を接種した。接種されたフラスコを約30℃および280rpmにて約64時間インキュベートした。培養物の600nmでの光学濃度を決定した。遠心分離によって細胞を収集し、細胞ペレットを滅菌ミリQ水(ミリポア社(Millipore))で洗浄した。
2%グルコースおよび2%キシロースが追加された、新たなVerduyn培地に、上述の前培養物を接種した。接種した細胞の量は、初期OD600が0.2となるような量であった。培地およびヘッドスペースから酸素がなくなった後に、フラスコをウォーターロックで密閉し、嫌気性増殖条件を確保した。
フラスコを約30℃および280rpmにて72時間インキュベートした。分析のために、試料を23、47および71時間の時点で採取した。以下の分析を行った:OD600の決定、NMR分析(キシロース、グルコース、エタノール、酢酸およびグリセロール)。この結果を図11および12および以下の表に示す。データは、示される糖の残留量(グルコースおよびキシロース(g/L))および(副)生成物(エタノール、グリセロールおよび酢酸)の形成を表す。
図11において、時間の経過に伴う600nmでの光学濃度(OD600)の発生を示す。参照株、BIE104P1は、実験を開始する前または開始して23時間後に、その最大OD600に達する。明らかに、23時間の時点で、または23時間の時点前に、培地からグルコースが消耗されている(図12、パネルa)。さらに、グルコースがこの酵母株によって消費された時点で、エタノール産生もその最大に達する。必要な活性タンパク質(すなわち、キシロースイソメラーゼおよび過剰発現されたキシルロキナーゼ)を欠損しているため、この株はキシロースを利用し、キシロースを発酵することができないことから、増殖およびエタノール産生のどちらも止まる。
しかしながら、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)由来のキシロースイソメラーゼおよび天然キシルロキナーゼが過剰発現される、BIE104P1Y9株は、増殖することができ、かつキシロースをエタノールに発酵することができる(図11および12)。嫌気性培養して約1日後、BIE104P1Y9株は既に、いくらかのキシロースを消費し、すべてのグルコースが既に消費された。その後、図12(パネルbおよびc)および以下の表から分かるように、残留量のグルコースがエタノールへと発酵された。副生成物の形成(酢酸およびグリセロール)は、以下の表から分かるように少ない。
図11および12に示される結果から分かるように、この結果は、前培養物(グルコースまたはキシロース)によって(著しく)影響を受けない。

これらの結果に基づいて、キシロース上で予備増殖されたBIE104P1Y9株の場合には、キシロース363mg/バイオマス1g/時のQsが計算された(時間間隔23〜47時間;光学濃度30は乾燥物質6g/Lに等しい)。
[実施例4]
4.1 サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)のゲノムへのaraA、araBおよびaraD遺伝子の導入
図13に示すプラスミドpPWT018を以下のように作製した:SIT2遺伝子座(Gottlin−Ninfa and Kaback(1986) Molecular and Cell Biology vol.6,no.6,2185−2197)と、抗生物質G418上での形質転換体の選択およびアセトアミド上で増殖する能力を可能にするマーカー(上記参照)と、からなるベクターpPWT006(図14)を制限酵素BsiWIおよびMluIで消化した。国際特許出願公開第2008/04184号パンフレットに開示される、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来のアラビノースイソメラーゼ(araA)、L−リブロキナーゼ(araB)およびL−リブロース−5−リン酸−4−エピメラーゼ(araD)をコードする遺伝子は、ジーンアート社(ドイツ、レーゲンスブルク)によって合成された。サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)由来の強力なプロモーター、すなわち、araA遺伝子の発現を制御するTDH3プロモーター、araB遺伝子を制御するENO1プロモーターおよびaraD遺伝子を制御するPGI1プロモーターの制御下の(またはそれらのプロモーターに作動可能に連結された)、上記の3つのara遺伝子を有する1つの大きな断片を合成した。この断片は、ユニークな制限酵素Acc65IおよびMluIによって囲まれた。MluIおよびBsiWIで消化されたpPWT006へのこの断片のクローニングによって、プラスミドpPWT018(図13)が得られた。プラスミドpPWT018の配列は、配列番号17で示される。
供給元の説明書に従って、予めSfiI(ニューイングランドバイオラブス社(New England Biolabs))で直鎖化されたプラスミドpPWT018で、CEN.PK113−7D(MATa URA3 HIS3 LEU2 TRP1 MAL2−8 SUC2)を形質転換した。SIT2遺伝子の5’フランキング領域において合成SfiI部位を消化した(図13参照)。1ml当たりG418(シグマ・アルドリッチ社)100μgを含有するYPD寒天(1リットル当たり:酵母抽出物10g,ペプトン20g/L,ブドウ糖20g/L、寒天20g)上に形質転換混合物をプレーティングした。
2〜4日後に、コロニーがプレート上に現れたのに対して、ネガティブコントロール(すなわち、形質転換実験でDNAが添加されていない)では、ブランクのYPD/G418プレートが得られた。
プラスミドpPWT018の組込みは、SIT2遺伝子座に向けられる。PCRおよびサザンブロット技術を用いて、形質転換体を特徴付けた。
プラスミドpPWT018の1コピーの正しい組み込みを表すPCR反応は、配列番号18と15、および配列番号15と14によって示されるプライマーで行われた(図3参照)。配列番号18および15のプライマー対を用いて、SIT2遺伝子座での正しい組込みをチェックした。プラスミドpPWT018が複数のコピーで組み込まれる(頭−尾の組込み)場合、配列番号15および14のプライマー対によって、PCR産物が得られる。後者のPCR産物が存在しない場合、これはプラスミドpPWT018の1コピーの組込みを表す。プラスミドpPWT018の1コピーがSIT2遺伝子座に組み込まれた株をBIE104R2と示した。
他の構築物で酵母株を形質転換することができるようにするためには、選択マーカーを除去する必要がある。プラスミドpPWT018のデザインは、染色体にpPWT018を組み込むと、相同配列が互いに極めて接近するようなデザインであった。このデザインによって、これらの相同領域の自発的な分子内組換によって、選択マーカーが失われることが可能となる。
栄養増殖すると、低頻度であるが、分子内組換えが起こる。この組換えの頻度は、ゲノムにおける相同領域の長さおよび遺伝子座に依存する(未発表の結果)。新たな培地に培養物の細画分を逐次的に移すと、時間の経過と共に、分子内組換え体が蓄積する。
このために、単一コロニー分離株から開始して、BIE104R2株をYPD培地(1リットル当たり:酵母抽出物10g、ペプトン20g/L、ブドウ糖20g/L)中で培養した。一晩培養液25μlを使用して、新たなYPD培地に接種した。少なくとも5回のかかる連続的な移行後に、培養物の光学濃度を決定し、濃度約5000/mlに細胞を希釈した。30mM KPi(pH6.8)、0.1%(NHSO、40mMフルオロアセトアミド(アマシャム社)および1.8%寒天(ディフコ社)を含有する酵母カーボンベース培地(ディフコ社)上に、細胞浮遊液100μlをプレーティングした。BIE104R2株の細胞と同一な、つまり、細胞内組換えなしの細胞はさらにamdS遺伝子を含有する。それらの細胞に対して、フルオロアセトアミドは毒性である。これらの細胞はフルオロアセトアミドを含有する培地上で増殖することができず、かつコロニーを形成しない。しかしながら、分子内組換えが生じている場合には、選択マーカーを欠失しているBIE104R2変異株は、フルオロアセトアミドを増殖抑制化合物へと変換することができないため、フルオロアセトアミド培地上で増殖することができる。それらの細胞は、この寒天培地上でコロニーを形成する。
このようにして得られたフルオロアセトアミド耐性コロニーを、配列番号18および15、および14および19のプライマーを用いてPCR分析にかけた。配列番号18および5のプライマーによって、選択マーカーの組換えが意図した通りに起こった場合にバンドが得られる。結果として、強力な酵母プロモーターの制御下のaraA、araBおよびaraD遺伝子を有するカセットが、宿主株のゲノムのSIT2遺伝子座に組み込まれた。その場合には、プライマー14は、外部組換えされるべき領域でプライミングすることから、配列番号14および19のプライマーを用いたPCR反応によって、PCR産物は得られない。バンドが後者のプライマーで得られる場合、これは、ゲノムにおける完全なプラスミドpPWT018の存在を表すため、組換えは起こっていない。
配列番号18および15のプライマーによってPCR産物が得られない場合、完全なプラスミドpPWT018がゲノム外で組換えするように、組換えが起こっている。選択マーカーのみならず、ara遺伝子も失われた。実際に、野生型酵母が回収されている。
pPWT018の1コピーの組込みに従って得られたPCR結果が示す分離株をサザンブロット分析にかけた。CEN.PK113−7D株の染色体DNAおよび正しい組換え体を大腸菌(EcoRI)およびヒンディースリー(HindIII)で消化した(二重消化)。鋳型としてpPW018を用いて、配列番号20および21のプライマーでSIT2プローブを作製した。ハイブリダイゼーション実験の結果を図15に示す。図16(パネルaおよびb)に示すように、予想ハイブリダイゼーションパターンは物理的地図から推定される。
その野生型株において、予想されるサイズと一致する、2.35kbのバンドが確認される(図16、パネルa)。プラスミドpPWT018の組込みおよび組換えによる部分的な欠損で、1.06kbのバンドが予想された(図16、パネルb)。実際に、図15(レーン2)に示されるように、このバンドが確認される。
サザンブロット上のバンドの正しいパターンを示す株の1つは(図15から推定されるように)、BIE104A2と示される株である。
4.2 非酸化的ペントースリン酸経路の、構成的に発現される4つの遺伝子の導入
構成的にaraA、araBおよびaraD遺伝子を発現するサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)BIE104A2をプラスミドpPWT080で形質転換した(図2)。その手順および結果は既に、実施例3に記述されている(セクション3.1)。要するに、SfiIで消化されたpPWT080で、BIE104A2を形質転換した。1ml当たりG418(シグマ・アルドリッチ社)100μgを含有するYPD寒天(1リットル当たり:酵母抽出物10g、ペプトン20g/L、ブドウ糖20g/L、寒天20g)上に形質転換混合物をプレーティングした。
2〜4日後に、コロニーがプレート上に現れたのに対して、ネガティブコントロール(すなわち、形質転換実験でDNAが付加されていない)では、ブランクのYPD/G418プレートが得られた。
プラスミドpPWT080の組込みは、GRE3遺伝子座に向けられる。実施例3、セクション3.1に記載のように、PCRおよびサザンブロット技術を用いて、形質転換体を特徴付けた。
予想されるハイブリダイゼーションパターンと一致して、プラスミドpPWT080の1コピーの正しい組み込みを示す形質転換体をBIE104A2F1と示した。
キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼをコードする遺伝子を導入することができるようにするためには(セクション3.2)、プラスミドpPWT080の組込みによって導入される選択マーカーを除去する必要がある。このために、コロニー分離株から開始して、BIE104A2F1株をYPD培地中で培養した。一晩培養液25μlを使用して、新たなYPD培地に接種した。5回の連続的な移行後に、培養物の光学濃度を決定し、濃度約5000/mlに細胞を希釈した。30mM KPi(pH6.8)、0.1%(NHSO、40mMフルオロアセトアミド(アマシャム社)および1.8%寒天(ディフコ社)を含有する酵母カーボンベース(ディフコ社)上に、細胞浮遊液100μlをプレーティングした。フルオロアセトアミド耐性コロニーをPCR分析にかけ、正しいPCRプロファイルの場合には、サザンブロット分析にかけた(実施例3のセクション3.1)。サザンブロット上にバンドの正しいパターンを示した株の1つは、BIE104A2P1と示される株である。
4.3 キシロースイソメラーゼおよびキシルロキナーゼをコードする構成的に発現される遺伝子の導入
BIE104A2P1株(MATa URA3 HIS3 LEU2 TRP1 MAL2−8 SUC2 SIT2::[TDH3−araA,ENO1−araB,PGI1−araD] ΔGRE3::[TPI1p−TAL1,ADH1p−TKL1,PGI1p−RPE1,ENO1p−RKI1])をプラスミドpPWT042で形質転換した。BIE104A2P1を形質転換する前に、供給元により提供される説明書に従って、制限酵素SfiIを用いて、pPWT042を直鎖化した。1ml当たりG418(シグマ・アルドリッチ社)100μgを含有するYPD寒天(1リットル当たり:酵母抽出物10g、ペプトン20g/L、ブドウ糖20g/L、寒天20g)上に形質転換混合物をプレーティングした。
2〜4日後に、コロニーがプレート上に現れたのに対して、ネガティブコントロール(すなわち、形質転換実験でDNAが添加されていない)では、ブランクのYPD/G418プレートが得られた。
プラスミドpPWT042をSfiIで消化すると、その組込みは、ゲノムにおけるSIT4遺伝子座に向けられる(Gottlin−Ninfa and Kaback(1986)Molecular and Cellular Biology Vol.6,No.6,2185−2197)。実施例3(セクション3.2)に記載のように、PCRおよびサザンブロット技術を用いて、形質転換体を特徴付けた。
ゲノムに組み込まれたプラスミドpPWT042の1コピーを有する株をBIE104A2P1Y9と示した。
4.4 増殖実験
BIE104A2P1Y9株の単一コロニー分離株を用いて、2%グルコースまたは2%ガラクトースが追加されたYNB培地(ディフコ社)に接種した。600nmでの光学濃度が少なくとも2.0の値に達するまで、接種されたフラスコを約30℃および280rpmにてインキュベートした。
1%アラビノースおよび1%キシロースが追加されたYNB培地に、0.2の初期OD600で一晩培養液を接種した。細胞を30℃および280rpmで増殖させた。600nmでの光学濃度を定期的にモニターした。光学濃度が2.0を超える値に達すると、2%キシロースおよび0.2%アラビノースを含有する新たなYNB培地に、培養物のアリコートを移した。添加された細胞の量は、培養物の初期OD600が0.2となるような量であった。
光学濃度を定期的にモニターした。結果を図17のパネルa(ガラクトース上の前培養物)およびパネルb(グルコース上の前培養物)に示す。
株がアラビノースとキシロースの両方を用いることができることが、結果にはっきりと示されている。

Claims (35)

  1. キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む細胞であって、前記キシロースイソメラーゼのアミノ酸配列が、配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも94%の配列同一性を有し、かつ前記ヌクレオチド配列が宿主に対して非相同的である、細胞。
  2. 真核細胞である、請求項1に記載の細胞。
  3. 酵母細胞である、請求項1または2に記載の細胞。
  4. サッカロミセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クロエケラ属(Kloeckera)、シュワンニオマイセス属(Schwanniomyces)またはヤロウイア属(Yarrowia)の酵母細胞である、請求項3に記載の細胞。
  5. 前記酵母細胞が、サッカロミセス・セレビジエ(S.cerevisiae)、サッカロミセス・ブルデリ(S.bulderi)、サッカロミセス・バーネッティ(S.barnetti)、サッカロミセス・エキシグス(S.exiguus)、サッカロミセス・ウバルム(S.uvarum)、サッカロミセス・ディアスタティカス(S.diastaticus)、クルイベロミセス・ラクチス(K.lactis)、クルイベロミセス・マルキシアヌス(K.marxianus)またはクルイベロミセス・フラギリス(K.fragilis)種の細胞である、請求項4に記載の細胞。
  6. 糸状真菌細胞である、請求項1または2に記載の細胞。
  7. 前記糸状真菌細胞が、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、クモノスカビ属(Rhizopus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ヒューミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、またはフザリウム属(Fusarium)である、請求項6に記載の細胞。
  8. 前記糸状菌細胞が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、またはリゾプス・オリーゼ(Rhizopus oryzae)である、請求項7に記載の細胞。
  9. a.細胞におけるキシロースの輸送の増加;
    b.キシルロースキナーゼ活性の増加;
    c.ペントースリン酸経路を介したフラックスの増加;
    d.アルドースレダクターゼ活性の減少;
    e.カタボライトリプレッションに対する感受性の減少;
    f.エタノール、オスモル濃度または有機酸に対する耐性の増加;または
    g.副生成物の産生の低減;
    をもたらす、1つまたは複数の遺伝子修飾を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞。
  10. 前記の1つまたは複数の遺伝子修飾によって、ペントースリン酸経路の非酸化的部分の酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が過剰発現される、請求項9に記載の細胞。
  11. 前記遺伝子が、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼまたはトランスアルドラーゼをコードする遺伝子である、請求項10に記載の細胞。
  12. 前記の1つまたは複数の遺伝子修飾によって、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼをコードする少なくとも遺伝子が過剰発現される、請求項10または11に記載の細胞。
  13. 前記の1つまたは複数の遺伝子修飾によって、キシルロースキナーゼをコードする遺伝子が過剰発現される、請求項9から12のいずれか一項に記載の細胞。
  14. 過剰発現される前記遺伝子が、細胞に対して内因性の遺伝子である、請求項8から13のいずれか一項に記載の細胞。
  15. 前記の1つまたは複数の遺伝子修飾によって、細胞における非特異的アルドースレダクターゼ活性が低下する、請求項9から14のいずれか一項に記載の細胞。
  16. 前記の1つまたは複数の遺伝子修飾が、非特異的アルドースレダクターゼをコードする内因性遺伝子の発現を低減する、または前記非特異的アルドースレダクターゼの活性を低減する、請求項15に記載の細胞。
  17. 前記非特異的アルドースレダクターゼ遺伝子が、非特異的アルドースレダクターゼ遺伝子の少なくとも一部の欠失によって、または遺伝子の破壊によって不活化される、請求項16に記載の細胞。
  18. 非特異的アルドースレダクターゼをコードする細胞における非特異的アルドースレダクターゼをコードする各遺伝子の発現が低減される、請求項16または17に記載の細胞。
  19. L−アラビノースを使用する能力を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の細胞。
  20. トランスアルドラーゼ遺伝子TAL1トランスケトラーゼ遺伝子(TKL1リブロース5−リン酸エピメラーゼ遺伝子(RPE1およびRKI1遺伝子が過剰発現される、請求項9から19のいずれかに記載の細胞。
  21. GRE3遺伝子のコード領域が、トランスアルドラーゼ遺伝子TAL1トランスケトラーゼ遺伝子(TKL1リブロース5−リン酸エピメラーゼ遺伝子(RPE1およびRKI1遺伝子を含むヌクレオチド配列でコード領域を置換することによって不活化される、請求項9から20のいずれかに記載の細胞。
  22. ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来の遺伝子araA、araBおよびaraDが発現される、請求項9から21のいずれかに記載の細胞。
  23. 発現される遺伝子修飾された遺伝子が構成的に発現される、または構成的に過剰発現される、請求項9から22のいずれかに記載の細胞。
  24. 構成的に発現または構成的に過剰発現される1つまたは複数の遺伝子修飾された遺伝子が、細胞のゲノムに安定に組み込まれる、請求項23に記載の細胞。
  25. 構成的に発現または構成的に過剰発現される遺伝子修飾された遺伝子が、細胞のゲノムに安定に組み込まれる、請求項24に記載の細胞。
  26. 細胞がキシロースを発酵産物へと発酵するように、請求項1から25のいずれか一項に記載の細胞で、キシロース源を含有する培地を発酵させることを含む、発酵産物を産生する方法。
  27. 細胞がキシロースおよびL−アラビノースを発酵産物へと発酵するように、請求項19から23のいずれかに記載の細胞で、少なくともキシロース源およびL−アラビノース源を含有する培地を発酵させることを含む、発酵産物を産生する方法。
  28. 請求項1から18のいずれか一項に記載の細胞で、少なくともキシロース源およびL−アラビノース源を含有する培地を発酵させることを含む方法であって、それによって、各細胞がキシロースおよび/またはアラビノースを発酵産物へと発酵させる、発酵産物を産生する方法。
  29. 前記発酵産物を回収することを含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記培地が、グルコース源も含有する、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記発酵産物が、エタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム系抗生物質およびセファロスポリンである、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
  32. 嫌気性である、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
  33. 好気性条件下にて行われる、請求項26から32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 好気性条件が、酸素制限条件である、請求項33に記載の方法。
  35. 発酵産物を産生する方法における、請求項1から25のいずれか一項に記載の細胞の使用。
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