ところで、このような予熱器は、燃料電池スタックの側面に近付けるほど、燃料電池スタックから多くの熱を受けるようになるため、ガスを効率良く予熱することができる。しかし、予熱器を近付け過ぎると、熱サイクルの繰り返しによって、予熱器または燃料電池スタック自体が変形する可能性があるため、予熱器と燃料電池スタックとが接触してショートが発生し、信頼性が低下するおそれがある。そこで、特許文献1に記載の従来技術では、燃料電池スタック(51)と予熱器であるガスフローパネル(55)との間に、絶縁性の挿入物(49)を配置している。
ところが、上記した絶縁性の挿入物を予熱器と燃料電池スタックとの間に配置するためには、通常、例えばボルトなどの固定手段が不可欠となる。その結果、燃料電池の製造時に挿入物や固定手段が必要となるため、部品点数や工数の増加が避けられなくなり、製造コストの上昇に繋がってしまうという問題がある。
また、上記した絶縁性の挿入物を予熱器と燃料電池スタックとの間に配置すると、予熱器に期待されること、具体的には、燃料電池スタックから多くの熱を受けてガスを効率良く予熱することに対し、相反することになるという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池スタックと補助器との間で起こるショートを防止して信頼性を高くすることができ、かつ、高熱効率化、低コスト化を図ることができる燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、電解質層と、その両側に配置され燃料ガスに接する燃料極層及び酸化剤ガスに接する空気極層とを有する発電セルを複数積層してなり発電反応により電力を発生する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックでの発電反応にあたり、酸化剤及び燃料を含む原料の予熱、発電後の残余燃料ガスの燃焼、液体原料の気化、及び原料の改質の各機能のうちの少なくとも1つの機能を有し、前記燃料電池スタックの側面に近接して配置される補助器とを備えた燃料電池において、前記燃料電池スタックを構成する絶縁部材の一部を前記燃料電池スタックの側面から前記補助器に向けて張り出してなる張出部を備えたことを特徴とする燃料電池がある。
手段1に記載の発明によると、燃料電池は、燃料電池スタックを構成する絶縁部材の一部を燃料電池スタックの側面から補助器に向けて張り出してなる張出部を備えている。その結果、燃料電池スタックと補助器との間隔が張出部を介して一定に保持されるため、両者の接触が回避される。従って、燃料電池スタックと補助器との間で起こるショートが防止されるため、燃料電池の信頼性を高くすることができる。しかも、燃料電池スタックを構成する絶縁部材の一部が張出部となることから、張出部は燃料電池スタックと一体になる。よって、張出部を燃料電池スタックに固定するための固定手段を設けたりしなくても済む。ゆえに、燃料電池の部品点数が少なくなり、製造時の工数も少なくなるため、燃料電池の低コスト化を図ることができる。
また、燃料電池スタックからの熱を確実に補助器に伝導するために、燃料電池スタックと補助器との間の空間を最小限の部品(張出部)で絶縁し、残りの空間を遮蔽物のない構造とすることができるため、効率的に補助器(例えば、補助器が予熱器である場合には、予熱器内のガス)を昇温させることができる。さらに、燃料電池スタックと補助器とを絶縁する最小限の部品を、燃料電池スタックとほぼ同じ温度にすれば、より効率的に補助器を昇温させることができる。
ここで、燃料電池としては、ZrO2系セラミックなどを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)などが挙げられる。なお、燃料電池の稼動温度(即ち、イオンが電解質中を移動可能となる温度)は、燃料電池の種類ごとに異なっている。具体的に言うと、SOFCの稼動温度は700℃〜1000℃程度、PEFCの稼動温度は常温〜90℃程度、MCFCの稼動温度は650℃〜700℃程度、PAFCの稼動温度は150℃〜200℃程度である。
燃料電池を構成する燃料電池スタックは、発電セルを複数積層してなる。発電セルを構成する電解質層は、燃料極層に接する燃料ガス及び空気極層に接する酸化剤ガスの少なくとも一方の一部がイオンとなって移動する性質(イオン伝導性)を有している。電解質層中を移動するイオンとしては、例えば酸素イオンや水素イオンなどが挙げられる。
燃料電池がSOFCである場合、電解質層(固体酸化物層)の形成材料としては、例えばZrO2系セラミック、LaGaO3系セラミック、BaCeO3系セラミック、SrCeO3系セラミック、SrZrO3系セラミック、CaZrO3系セラミックなどがある。
また、発電セルを構成する燃料極層は、還元剤となる燃料ガスと接触し、発電セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料極層の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO2系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO2系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、金属(Ni、Feなど)との混合物が挙げられる。また、燃料極層の形成材料としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料やそれらの合金が挙げられる。なお、金属材料(または合金)とセラミック材料との混合物(サーメットなど)を選択してもよい。さらに、金属材料(NiやFeなど)の酸化物とセラミック材料との混合物を選択してもよい。
また、燃料ガスとしては、例えば、水素ガス、炭化水素ガス、水素ガスと炭化水素ガスとの混合ガスなどが挙げられる。燃料ガスとして炭化水素ガスを選択した場合、炭化水素ガスの種類は特に限定されないが、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等であることが好ましい。なお、水中にガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)を通過させて加湿することによって得られる燃料ガスや、ガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)に水蒸気を混合させることによって得られる燃料ガスを選択してもよい。また、1種類の燃料ガスのみを用いてもよいし、複数種類の燃料ガスを併用してもよい。さらに、燃料ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。また、液体の原料を気化したものを燃料ガスとして使用したり、水素ガス以外のガスを改質して生成した水素ガスを燃料ガスとして使用したりすることもできる。
発電セルを構成する空気極層は、酸化剤となる酸化剤ガスと接触し、発電セルにおける正電極として機能する。ここで、空気極層の形成材料としては、例えば、金属材料、金属の酸化物、金属の複合酸化物などを挙げることができる。金属材料の好適例としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等やそれらの合金などがある。金属の酸化物の好適例としては、例えば、La、Sr、Ce、Co、Mn、Feの酸化物(La2O3、SrO、Ce2O3、Co2O3、MnO2、FeO)などがある。金属の複合酸化物の好適例としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La1−xSrxCoO3系複合酸化物、La1−xSrxFeO3系複合酸化物、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、La1−xSrxMnO3系複合酸化物、Pr1−xBaxCoO3系複合酸化物、Sm1−xSrxCoO3系複合酸化物)などがある。
また、酸化剤ガスとしては、例えば、酸素と他の気体との混合ガスなどが挙げられる。この混合ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。なお、混合ガスは、安全で安価な空気であることが好ましい。
さらに、燃料電池スタックを構成する絶縁部材は、絶縁性、耐熱性、シール性等を考慮して適宜選択することができ、その形成材料としては、例えばセラミック材料などを挙げることができる。セラミック材料の好適例としては、例えばマイカセラミック、アルミナ、ガラスセラミック、結晶化ガラス等の低温焼成材料、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などがある。
なお、燃料電池スタックを構成する絶縁部材は、複数の発電セル内に配置して積層されるとともにシール部材を兼ねる絶縁フレームであることが好ましい。このようにすれば、シール部材を絶縁部材と別々に設けなくても済む。その結果、燃料電池の部品点数がよりいっそう少なくなるため、燃料電池のさらなる低コスト化を図ることができる。
なお、燃料電池を構成する補助器としては、酸化剤及び燃料を含む原料の予熱の機能を有する予熱器(熱交換器)、発電後の残余燃料ガスの燃焼の機能を有する発熱器、液体原料の気化の機能を有する気化器、原料の改質の機能を有する改質器などが挙げられる。
また、燃料電池は、燃料電池スタックを構成する絶縁部材の一部を燃料電池スタックの側面から補助器に向けて張り出してなる張出部を備えている。なお、張出部の先端は、補助器に当接されていることが好ましく、特には、補助器に設けられた凹所に嵌合固定されていることが好ましい。このようにすれば、燃料電池スタックと補助器との間隔を一定に保持しやすくなるため、燃料電池の信頼性を確実に高くすることができる。
また、張出部には、積層する方向の両側面を連通させる開口部が形成されていることが好ましい。このようにすれば、例えば燃料電池の起動時において、起動用バーナーで燃料電池スタックを昇温させる際に、高温のバーナー排ガスが開口部を通過するように設定できる。即ち、高温のバーナー排ガスは燃料電池スタックの近傍を通過するため、開口部を通過したバーナー排ガスによって燃料電池スタックが素早く温められて稼動温度に達するようになる。このため、燃料電池の起動時間の短縮を図ることができる。
なお、張出部において開口部が占める割合は、10%以上90%以下であることが好ましい。仮に、開口部が占める割合が10%未満になると、上記した高温のバーナー排ガスが開口部を通過しにくくなるため、開口部を通過したバーナー排ガスによって燃料電池スタックが温められにくくなり、燃料電池の起動時間を短縮できなくなる。一方、開口部が占める割合が90%よりも大きくなると、張出部の強度が低下して張出部が変形しやすくなるため、燃料電池スタックと補助器との間隔を一定に保持できなくなる。なお、開口部は、1つの張出部に対して1つのみ形成されていてもよいし、1つの張出部に対して複数形成されていてもよい。
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、電解質層と、その両側に配置され燃料ガスに接する燃料極層及び酸化剤ガスに接する空気極層とを有する発電セルを複数積層してなり発電反応により電力を発生する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックでの発電反応にあたり、酸化剤及び燃料を含む原料の予熱、発電後の残余燃料ガスの燃焼、液体原料の気化、及び原料の改質の各機能のうちの少なくとも1つの機能を有し、前記燃料電池スタックの側面に近接して配置される補助器とを備えた燃料電池において、前記燃料電池スタックを構成する導電性金属部材の一部を前記燃料電池スタックの側面から前記補助器に向けて張り出してなる張出部を備えるとともに、該張出部に絶縁被膜が一体形成されていることを特徴とする燃料電池がある。
手段2に記載の発明によると、燃料電池は、燃料電池スタックを構成する導電性金属部材の一部を燃料電池スタックの側面から補助器に向けて張り出してなる張出部を備えている。その結果、燃料電池スタックと補助器との間隔が張出部を介して一定に保持されるため、両者の接触が回避される。また、燃料電池スタック及び補助器の両方に接する張出部に絶縁被膜が一体形成されているため、燃料電池スタックと補助器との絶縁が確保される。従って、燃料電池スタックと補助器との間で起こるショートが防止されるため、燃料電池の信頼性を高くすることができる。しかも、燃料電池スタックを構成する導電性金属部材の一部が張出部となることから、張出部は燃料電池スタックと一体になる。よって、張出部を燃料電池スタックに固定するための固定手段を設けたりしなくても済む。ゆえに、燃料電池の部品点数が少なくなり、製造時の工数も少なくなるため、燃料電池の低コスト化を図ることができる。
なお、張出部に一体形成された絶縁被膜の形成材料としては、例えばセラミック材料などが挙げられる。セラミック材料の好適例としては、例えばマイカセラミック、アルミナ、ジルコニア、ガラスセラミック、結晶化ガラス、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などがある。なお、絶縁被膜は、酸化物セラミック、即ち、アルミナやジルコニアなどを主体とする耐熱性絶縁被膜であることが好ましい。このようにすれば、張出部の温度が上昇したとしても、絶縁被膜は、溶けることなく張出部を被覆し続けるため、燃料スタックと補助器との間で起こるショートが確実に防止され、燃料電池の信頼性がよりいっそう向上する。なお、張出部に絶縁被膜を一体形成する方法としては、溶射やスプレーコートの終了後に焼成することなどを挙げることができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態の燃料電池1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池1は、発電反応により電力を発生する燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10の補助器である予熱器20(熱交換器)と、燃料電池スタック10を加熱する起動用バーナー30とを備えている。なお、予熱器20は、燃料電池スタック10へ供給するガスを排ガス(例えば、発電後の残余燃料ガスをさらに燃焼させたガス)の熱で加熱する機能、及び、燃料電池スタック10から放出された熱を吸収する機能のうち少なくとも一方の機能を有している。また、燃料電池スタック10、予熱器20及び起動用バーナー30は、断熱容器2(図6参照)内に収容されている。
図2,図3に示されるように、予熱器20は、燃料電池スタック10の側面14に近接して配置されている。予熱器20は、耐熱性に優れた材料(例えばステンレス)によって形成され、縦10mm×横180mm×高さ225mmの略直方体状をなしている。また、予熱器20は、燃料電池スタック10での発電反応時に燃料電池スタック10から発生する熱によって、燃料電池スタック10への供給前に燃料ガス(本実施形態では炭化水素ガス)及び空気(酸化剤ガス)の温度を上昇させる機能(予熱を行う機能)を有している。そして、予熱器20は、加熱された燃料ガス及び空気を燃料電池スタック10に供給するようになっている。なお、本実施形態の予熱器20は、上下を金属板で挟まれた空間内に多数の金属製フィンからなる熱交換層(図示略)が配置されるとともに、熱交換層の外周が金属板で包囲された装置である。
図1に示されるように、起動用バーナー30は、略平板状をなし、燃料電池スタック10及び予熱器20を下方から支持するようになっている。起動用バーナー30は、燃料電池スタック10を稼動温度(例えば700℃)まで加熱するようになっている。なお、起動用バーナー30は、フレーム31、燃焼プレート32及び配管33を備えている。燃焼プレート32は、フレーム31の上面(表面)に設置されている。燃焼プレート32は、例えば多孔質のセラミック材料などによって形成され、表面において可燃性ガスと空気との混合ガスが燃焼するようになっている。配管33は、フレーム31の側面から突出しており、混合ガスを燃焼プレート32に供給するようになっている。
図1〜図3に示されるように、燃料電池スタック10は、発電の最小単位である略矩形板状の発電セル11を複数積層してなるものである。燃料電池スタック10は、縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体状をなしている。また、燃料電池スタック10は、同燃料電池スタック10を厚さ方向に貫通する8つの貫通孔40を有している。なお、燃料電池スタック10の四隅にある4つの貫通孔40に締結ボルト41を挿通させ、燃料電池スタック10の下面から突出する締結ボルト41の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔40にガス流通用締結ボルト42を挿通させ、燃料電池スタック10の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト42の両端部分にナット43を螺着させる。その結果、複数の発電セル11が固定されるようになっている。
図3〜図5に示されるように、発電セル11は、コネクタプレート51、空気極フレーム52、上側絶縁フレーム53(絶縁部材)、セパレータ54、空気極層55、電解質層56、燃料極層57、下側絶縁フレーム58(絶縁部材)、燃料極フレーム59及びコネクタプレート60を順番に積層することによって構成されている。
コネクタプレート51,60は、耐熱性及び導電性に優れたステンレスなどの金属材料によって略矩形板状に形成され、発電セル11の上端部及び下端部に配置されている。コネクタプレート51,60は、発電セル11内にガス流路を形成するとともに、隣接する発電セル11同士を導通させるようになっている。詳述すると、隣接する発電セル11同士の間に位置するコネクタプレート51,60は、いわゆるインターコネクタとなり、隣接する発電セル11同士を区画するようになっている。なお、本実施形態のコネクタプレート60は、下側に隣接する発電セル11のコネクタプレート51を兼ねている。また、燃料電池スタック10の上端部に配置されたコネクタプレート51は上側エンドプレート12となり、燃料電池スタック10の下端部に配置されたコネクタプレート60は下側エンドプレート13となっている。両エンドプレート12,13は、燃料電池スタック10を挟持しており、燃料電池スタック10から出力される電流の出力端子となっている。なお、エンドプレート12,13となるコネクタプレート51,60は、インターコネクタとなるコネクタプレート51,60よりも肉厚になっている。
図3〜図5に示されるように、空気極フレーム52及び燃料極フレーム59は、ステンレスなどの導電性材料によって略矩形枠状に形成されている。よって、空気極フレーム52の中央部には、同空気極フレーム52を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部61が設けられ、燃料極フレーム59の中央部には、同燃料極フレーム59を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部62が設けられている。また、絶縁フレーム53,58は、厚さ0.5mmのマイカシートによって略矩形枠状に形成されている。よって、上側絶縁フレーム53の中央部には、同上側絶縁フレーム53を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部63が設けられ、下側絶縁フレーム58の中央部には、同下側絶縁フレーム58を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部64が設けられている。さらに、セパレータ54は、ステンレスなどの導電性材料によって略矩形枠状に形成されている。よって、セパレータ54の中央部には、同セパレータ54を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部65が設けられている。
図3〜図5に示されるように、電解質層56は、例えばZrO2などのセラミック材料(酸化物)によって矩形板状に形成されている。電解質層56は、セパレータ54の下面に固定されるとともに、セパレータ54の開口部65を塞ぐように配置されている。電解質層56は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。また、電解質層56の上面には、燃料電池スタック10に供給された空気に接する空気極層55が貼付され、電解質層56の下面には、同じく燃料電池スタック10に供給された燃料ガスに接する燃料極層57が貼付されている。即ち、空気極層55及び燃料極層57は、電解質層56の両側に配置されている。また、空気極層55は、セパレータ54の開口部65内に配置され、セパレータ54と接触しないようになっている。なお、空気極層55は、金属の複合酸化物によって矩形板状に形成され、燃料極層57は、金属材料とセラミック材料との混合物(本実施形態ではサーメット)によって同じく矩形板状に形成されている。
図3に示されるように、本実施形態の発電セル11では、下側絶縁フレーム58の開口部64、燃料極フレーム59の開口部62、及びコネクタプレート60等により、セパレータ54の下方に燃料室15が形成されるようになっている。なお、燃料室15内には、電解質層56、燃料極層57及び燃料極集電体67が収容されている。
また、本実施形態の発電セル11では、コネクタプレート51、空気極フレーム52の開口部61、及び、上側絶縁フレーム53の開口部63等により、セパレータ54の上方に空気室16が形成されるようになっている。そして、空気極層55及びコネクタプレート51は、空気極集電体66によって電気的に接続されている。よって、絶縁フレーム53,58は、各発電セル11内に配置して積層されるとともに、燃料室15と空気室16とのシール部材を兼ねている。
また、燃料電池スタック10は、各発電セル11の燃料室15に燃料ガスを供給する燃料供給経路70と、燃料室15から燃料ガスを排出する燃料排出経路80とを備えている。燃料供給経路70は、ガス流通用締結ボルト42の中心部において軸方向に沿って延びる燃料供給孔71と、燃料供給孔71と燃料室15とを連通させる燃料供給横孔72とによって構成されている。また、燃料排出経路80は、ガス流通用締結ボルト42の中心部において軸方向に沿って延びる燃料排出孔81と、燃料排出孔81と燃料室15とを連通させる燃料排出横孔82とによって構成されている。
よって、図3に示されるように、燃料ガスは、燃料供給孔71及び燃料供給横孔72を順番に通過して燃料室15に供給され、燃料排出横孔82及び燃料排出孔81を順番に通過して燃料室15から排出される。なお、燃料供給孔71及び燃料排出孔81を有するガス流通用締結ボルト42の頂部には、ジョイント441を介して断熱容器2外に連通するガスパイプ451が接続されている。
さらに、燃料電池スタック10は、各発電セル11の空気室16に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室16から空気を排出する空気排出経路(図示略)とを備えている。空気供給経路は、燃料供給経路70と略同様の構造を有しており、ガス流通用締結ボルト42の中心部において軸方向に沿って延びる空気供給孔(図示略)と、空気供給孔と空気室16とを連通させる空気供給横孔(図示略)とによって構成されている。また、空気排出経路は、燃料排出経路80と略同様の構造を有しており、ガス流通用締結ボルト42の中心部において軸方向に沿って延びる空気排出孔(図示略)と、空気排出孔と空気室16とを連通させる空気排出横孔(図示略)とによって構成されている。
よって、空気は、空気供給孔及び空気供給横孔を順番に通過して空気室16に供給され、空気排出横孔及び空気排出孔を順番に通過して空気室16から排出される。なお、空気供給孔及び空気排出孔を有するガス流通用締結ボルト42の頂部には、ジョイント442を介して断熱容器2外に連通するガスパイプ452が接続されている。
図1〜図5に示されるように、燃料電池1は、上側絶縁フレーム53の一部を燃料電池スタック10の側面14から予熱器20に向けて張り出してなる張出部91を備えている。張出部91は、燃料電池スタック10を構成する複数の発電セル11のうち、最上層及び最下層の発電セル11に設けられている。張出部91は、長さ(張り出し量)3mm×幅180mm×厚さ0.5mmの略矩形板状をなしている。なお、張出部91の長さは、燃料電池スタック10と予熱器20との間隔と等しくなっている。このため、張出部91の先端は、予熱器20に当接するようになっている。また、張出部91の幅は、燃料電池スタック10の幅(横の長さ)及び予熱器20の幅(横の長さ)と等しくなっている。このため、張出部91の先端面全体が予熱器20に当接するようになっている。さらに、張出部91の厚さは、絶縁フレーム53,58の厚さと等しくなっている。なお、本実施形態の図面では、説明の便宜上、張出部91を実際よりも大きく示している。
例えば、断熱容器2内を稼動温度に加熱した状態で、燃料供給経路70から燃料室15に燃料ガスを導入するとともに、空気供給経路から空気室16に空気を導入する。その結果、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とが電解質層56を介して反応(発電反応)し、空気極層55を正極、燃料極層57を負極とする直流の電力が発生する。なお、本実施形態の燃料電池スタック10は、発電セル11を複数積層して直列に接続しているため、空気極層55に電気的に接続される上側エンドプレート12が正極となり、燃料極層57に電気的に接続される下側エンドプレート13が負極となる。
次に、燃料電池1のシステム構成について説明する。
図6に示されるように、燃料電池1を構成する燃料電池スタック10には、燃料電池スタック10に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路101が接続されている。燃料ガス供給流路101は、ガスパイプ451及びジョイント441を介して燃料電池スタック10の燃料供給経路70に連通している(図3参照)。また、燃料ガス供給流路101上には、電磁弁102、脱硫器103及び燃料ポンプ104が設置されている。電磁弁102は、燃料ガス供給流路101を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁102は、開状態に切り替えられた際に、燃料ガスとなる原料ガスを下流側に供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の電磁弁102は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。脱硫器103は、上流側から供給されてきた原料ガスを脱硫し、脱硫した原料ガスを下流側に供給するようになっている。燃料ポンプ104は、脱硫器103の下流側に配置されており、脱硫器103によって脱硫された原料ガスを燃料電池スタック10側に供給するようになっている。
また図6に示されるように、燃料電池スタック10には、燃料電池スタック10に空気を供給する空気供給流路111が接続されている。空気供給流路111は、ガスパイプ452及びジョイント442を介して燃料電池スタック10の空気供給経路に連通している。また、空気供給流路111上には、空気ポンプ112が設置されている。空気ポンプ112は、外部から取り入れた空気を燃料電池スタック10側の予熱器20に供給するようになっている。
一方、原料ガスは、改質器(図示略)によって燃料ガス(水素ガス)に改質された後、燃料電池スタック10に供給される。それとともに、予熱器20は、空気ポンプ112から供給された空気を燃料電池スタック10からの熱によって加熱し、加熱した空気を燃料電池スタック10に供給するようになっている。なお、発電に寄与しないガスや、発電後の使用済みガスは、排出流路113を介して燃料電池スタック10から排出される。
図6に示されるように、燃料電池1を構成する起動用バーナー30には、起動用バーナー30に空気及び着火用ガスを供給するガス供給流路121が接続されている。ガス供給流路121は、上流側において、空気供給管122及びガス供給管123に分岐している。空気供給管122上には、空気ブロワ124が設置されている。空気ブロワ124は、外部から取り入れた空気を起動用バーナー30に供給するようになっている。一方、ガス供給管123上には、電磁弁125が設置されている。電磁弁125は、ガス供給管123を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁125は、開状態に切り替えられた際に、下流側に着火用ガスを供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の電磁弁125は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
そして、空気供給管122とガス供給管123との接続部分には、比例弁126が設置されている。比例弁126は、空気供給管122から起動用バーナー30に供給される空気の量と、ガス供給管123から起動用バーナー30に供給される着火用ガスの量との割合(空燃比)を調整するようになっている。なお、起動用バーナー30に送り込まれた空気及び着火用ガスは、図示しない着火源によって着火され、断熱容器2内を加熱するようになっている。
また図6に示されるように、燃料電池1は、システム全体を制御する制御装置131を備えている。制御装置131は、CPU、ROM、RAM及び入出力回路等により構成されている。CPUは、電磁弁102,125、燃料ポンプ104、空気ポンプ112、空気ブロワ124及び比例弁126に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
次に、燃料電池1の製造方法を説明する。
まず、ステンレス板を打ち抜くことにより、コネクタプレート51,60、空気極フレーム52、セパレータ54及び燃料極フレーム59を形成する。また、マイカシートを所定形状に形成することにより、絶縁フレーム53,58を製造する。具体的には、市販のマイカシート(マイカと成形用樹脂との複合体からなるシート)を他の部材(コネクタプレート51,60、空気極フレーム52、セパレータ54及び燃料極フレーム59など)とほぼ同じ形状(但し、張出部91を除く)に形成する。なお、マイカシートは、他の部材よりも張出部91となる部分だけ大きく形成される。また、マイカシートに含まれている樹脂成分は、他の部材と共に積層された後に行われる熱処理によって蒸発する。さらに、マイカシートは、各発電セル11を積層方向にボルト締めした際に他の部材に挟まれることによって、各部材をシールするようになっている。
次に、発電セル11を、従来周知の手法に従って形成する。具体的には、燃料極層57となるグリーンシート上に電解質層56となるグリーンシートを積層し、焼成する。さらに電解質層56上に空気極層55の形成材料を印刷した後、焼成する(この時点で、SOFCの単セルが得られる)。なお、電解質層56は、ロウ付けによってセパレータ54に対して固定される。そして、コネクタプレート51,60、空気極フレーム52、絶縁フレーム53,58、(SOFCの単セルがロウ付けにて固定された)セパレータ54及び燃料極フレーム59などを積層して一体化する。その結果、発電セル11が形成される。
次に、各発電セル11を積層して一体化することにより、燃料電池スタック10を形成する。詳述すると、燃料電池スタック10の四隅にある4つの貫通孔40に締結ボルト41を挿通させ、燃料電池スタック10の下面から突出する締結ボルト41の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔40にガス流通用締結ボルト42を挿通させ、燃料電池スタック10の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト42の両端部分にナット43を螺着させる。その結果、各発電セル11が固定される。
そして、燃料電池スタック10及び予熱器20を起動用バーナー30上に搭載すれば、燃料電池1が完成する。なお、燃料電池スタック10と予熱器20との間は、張出部91を予熱器20に接触させる。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の燃料電池1は、燃料電池スタック10を構成する上側絶縁フレーム53の一部を燃料電池スタック10の側面14から予熱器20に向けて張り出してなる張出部91を備えている。その結果、燃料電池スタック10と予熱器20との間隔が張出部91を介して一定に保持されるため、例えば熱サイクルの繰り返しで燃料電池スタック10や予熱器20が変形したとしても、両者の接触が回避される。従って、燃料電池スタック10と予熱器20との間で起こるショートが防止されるため、燃料電池1の信頼性を高くすることができる。しかも、上側絶縁フレーム53の一部が張出部91になることから、張出部91は燃料電池スタック10と一体になる。よって、張出部91を燃料電池スタック10に固定するための固定手段を設けたりしなくても済む。ゆえに、燃料電池1の部品点数が少なくなり、製造時の工数も少なくなるため、燃料電池1の低コスト化を図ることができる。また、張出部91が燃料電池スタック10と一体になることによって、張出部91の強度が向上する。しかも、振動によって張出部91を有する上側絶縁フレーム53の位置ずれが防止されるため、張出部91が当接する予熱器20の位置ずれが防止される。
(2)本実施形態では、張出部91が最上層及び最下層の発電セル11にそれぞれ配置されているため、両張出部91は互いに離間している。その結果、両張出部91の先端が予熱器20の上端部及び下端部に当接するようになるため、燃料電池スタック10と予熱器20との間隔を安定的に保持しやすくなる。
(3)本実施形態では、上側絶縁フレーム53において張出部91を除く部分の縦、横の長さが燃料電池スタック10の縦、横の長さと同じ180mmであるのに対して、張出部91の張り出し量(3mm)がかなり小さくなっている。よって、上側絶縁フレーム53に張出部91を形成したとしても、上側絶縁フレーム53が空気極フレーム52及びセパレータ54に挟持されることにより、張出部91が撓んだりせずに確実に保持される。また、仮に下側絶縁フレーム58に張出部91を形成した場合であっても、下側絶縁フレーム58がセパレータ54及び燃料極フレーム59に挟持されることにより、張出部91が撓んだりせずに確実に保持される。従って、張出部91の先端を確実に予熱器20に当接させることができるため、燃料電池1の信頼性が向上する。
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の上側絶縁フレーム53には、略矩形板状をなす張出部91が設けられていた。しかし図7に示されるように、発電セル11が積層する方向の両側面(上面92及び下面)を連通させる開口部94が張出部95に形成された、略矩形環状をなす上側絶縁フレーム96であってもよい。なお、開口部94は、縦2mm×横170mmの平面視長方形状をなしている。このため、開口部94の開口面積は340mm2となる。また本実施形態では、張出部95の上面92(及び下面)の面積が540mm2(=3×180mm2)となり、張出部95において開口部94が占める割合が約62%となる。なお、上側絶縁フレーム53に加えて下側絶縁フレーム58にも張出部を設け、下側絶縁フレーム58に設けた張出部に開口部を形成してもよい。
以上のようにすれば、張出部95に開口部94が形成されているため、燃料電池1の起動時や起動後において、起動用バーナー30から排出される高温のバーナー排ガスや高温の周囲空気が開口部94を通過するようになる。即ち、高温のバーナー排ガスや周囲空気は燃料電池スタック10の近傍を通過するため、開口部94を通過した高温のバーナー排ガスや周囲空気によって燃料電池スタック10が素早く温められて稼動温度に達するようになる。このため、燃料電池1の起動時間の短縮を図ることができる。しかも、図7に示す開口部94であれば、開口部94を形成したとしても、張出部95の先端全体が予熱器20に当接するようになるため、燃料電池スタック10と予熱器20との間隔を安定的に保持しやすくなる。
・上記実施形態では、張出部91の幅が上側絶縁フレーム53の幅(燃料電池スタック10の幅)と等しくなっていたが、図8,図9に示されるように、張出部211,212の幅を絶縁フレーム213,214の幅より小さくしてもよい。このようにした場合、図8に示される絶縁フレーム213では、張出部211の両端部に、厚さ方向から見て略L字状をなす切欠部215(開口部)が配置されるようになる。切欠部215は、張出部211の上面217及び下面を連通するとともに、張出部211の先端及び側縁において開口するようになっている。また、図9に示される絶縁フレーム214では、張出部212の中央部に、厚さ方向から見て略コ字状をなす切欠部216(開口部)が配置されるようになる。切欠部216は、張出部212の上面218及び下面を連通するとともに、張出部212の先端において開口するようになっている。
以上のようにすれば、張出部211,212に切欠部215,216が形成されているため、燃料電池1の起動時や起動後において、起動用バーナー30から排出される高温のバーナー排ガスや高温の周囲空気が切欠部215,216を通過するようになる。即ち、高温のバーナー排ガスや周囲空気は燃料電池スタック10の近傍を通過するため、切欠部215,216を通過した高温のバーナー排ガスや周囲空気によって燃料電池スタック10が素早く温められて稼動温度に達するようになる。このため、燃料電池1の起動時間の短縮を図ることができる。
・上記実施形態の燃料電池1では、上側絶縁フレーム53に張出部91が設けられていたが、下側絶縁フレーム58にも張出部91を設けてもよい。また、上側絶縁フレーム53に張出部91を設ける代わりに、下側絶縁フレーム58に張出部91を設けるようにしてもよい。
・上記実施形態の燃料電池1は、上側絶縁フレーム53の一部を燃料電池スタック10の側面14から予熱器20に向けて張り出してなる張出部91を備えていた。しかし、図10に示されるように、導電性金属部材であるコネクタプレート141の一部を燃料電池スタック142の側面143から予熱器144に向けて張り出してなる張出部145を備えた燃料電池140であってもよい。なお、空気極フレーム52、セパレータ54、燃料極フレーム59などを、張出部が形成される導電性金属部材として用いてもよい。
なお、コネクタプレート141に張出部145を設ける場合、張出部145の先端面や、張出部145の先端部の上面及び下面には、コネクタプレート141と予熱器144とを電気的に絶縁させる絶縁被膜146が一体形成される。ここで、絶縁被膜146は、アルミナなどの酸化物セラミックを主体とする耐熱性絶縁被膜であることが好ましい。また、絶縁被膜146は、コネクタプレート141の外表面全体に形成されていてもよい。
・上記実施形態の燃料電池1では、張出部91の先端が予熱器20に当接されていた。しかし図11に示されるように、張出部151の先端が予熱器152に設けられた凹所153に嵌合固定された燃料電池150であってもよい。
・上記実施形態では、張出部91が最上層及び最下層の発電セル11のみに配置されていたが、張出部91の配置態様を変更してもよい。例えば、張出部91を、中間層の発電セル11に配置してもよい。また、張出部91を、全ての発電セル11に配置してもよいし、1つの発電セル11のみに配置してもよい。なお、張出部91の数を多くすれば、燃料電池スタック10と予熱器20との接触をより確実に回避できるため、燃料電池1の信頼性がよりいっそう高くなる。
・上記実施形態では、絶縁フレーム53,58(マイカシート)の厚さが0.5mmであって、張出部91の厚さが絶縁フレーム53,58の厚さと等しくなっていた。即ち、最上層の発電セル11に形成された張出部91の厚さと、最下層の発電セル11に形成された張出部91の厚さとが等しくなっていた。しかし、張出部91の厚さを適宜変更してもよい。例えば、最上層の発電セル11に形成された張出部91を、最下層の発電セル11に形成された張出部91より厚くしてもよいし、薄くしてもよい。
・上記実施形態では、絶縁フレーム53,58が、厚さ0.5mmのマイカシートによって形成されていた。しかし、絶縁フレーム53,58を形成するマイカシートの厚さを、例えば0.3mm、2mmなどに変更してもよい。また、マイカシートを重ねることにより、より厚い絶縁フレーム53,58を形成してもよい。
・図12に示される燃料電池スタック160のように、張出部161に設けられた開口部162と張出部163に設けられた開口部164とを、燃料電池スタック160の側面165に沿った方向(発電セル11が積層する方向とは直交する方向)にずらして配置してもよい。このようにすれば、起動用バーナー30から排出される高温のバーナー排ガスや高温の周囲空気が上昇して開口部162,164を通過する際に、バーナー排ガスや周囲空気が張出部161,163に当たって蛇行するため、燃料電池スタック160をより素早く温めることができる。
・上記実施形態の燃料電池スタック10は、1つの側面14に予熱器20を1つだけ配置していた。しかし、図13に示されるように、1つの側面171に複数個(図13では2個)の予熱器172を配置した燃料電池スタック170であってもよい。また図17に示されるように、互いに隣接する側面191,192にそれぞれ予熱器193を1つずつ配置した燃料電池スタック190であってもよい。さらに図14,図15に示されるように、互いに反対側に位置する側面181,182にそれぞれ予熱器183,184を1つずつ配置した燃料電池スタック180であってもよい。この場合、予熱器183には、絶縁フレーム185の一部を燃料電池スタック180の側面181から張り出してなる張出部186の先端が当接するとともに、予熱器184には、絶縁フレーム185とは別の絶縁フレーム187の一部を燃料電池スタック180の側面182から張り出してなる張出部188の先端が当接する。なお図16に示されるように、1つの絶縁フレーム201に対して、側面181から張り出してなる張出部202と、側面182から張り出してなる張出部203とを形成し、張出部202の先端を予熱器183に当接させるとともに、張出部203の先端を予熱器184に当接させるようにしてもよい。
・上記実施形態では、絶縁フレーム53,58が絶縁部材として用いられていたが、他のものを絶縁部材として用いてもよい。例えば、絶縁フレーム53,58を用いる代わりに、セパレータ54上や燃料極フレーム59上に貼付された平面視矩形状の絶縁片(図示略)などを絶縁部材として用いてもよい。この場合、張出部は、絶縁片の外周縁から突出し、燃料電池スタック10の側面14から予熱器20に向けて張り出すようになる。
・上記実施形態の燃料電池1では、予熱器20が燃料電池スタック10を補助する補助器として用いられていた。しかし、発熱器、気化器及び改質器などを補助器として用いてもよい。詳述すると、発熱器は、燃焼触媒を備え、発電後に燃料電池スタック10から排出された残余燃料ガスを燃焼させることにより、燃料電池1からの残余燃料ガスの排出を防止する機能を有している。また、気化器は、例えば燃料電池1の起動時において、起動用バーナー30からの熱や残余燃料ガスの燃焼による熱によって液体原料である水を気化し、気化した水(水蒸気)を燃料電池スタック10に供給する機能を有している。さらに、改質器は、改質用の触媒(例えばルテニウム、あるいはニッケル)を備え、水蒸気を用いて原料(本実施形態では炭化水素)を改質し、改質した原料を燃料電池スタック10に供給することにより、燃料極層57での炭素の析出や温度低下を防止する機能を有している。
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1または2において、前記張出部の幅が前記補助器の幅と等しくなっており、前記張出部の先端面全体が前記補助器に当接することを特徴とする燃料電池。
(2)上記手段1または2において、前記燃料電池スタックは前記絶縁部材を複数有し、前記絶縁部材の厚さは互いに等しいことを特徴とする燃料電池。