JP5618956B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、交流電力を他の交流電力に変換する電力変換装置に関するもので、例えば、モータを駆動制御する場合等に用いられる。
交流電力を他の交流電力に変換する電力変換装置として、例えば、図20に示すような回路構成のものがある。その出力端子に接続されたモータへの高圧の出力電圧を得る目的で、交流端子が直列に接続された複数台の単相変換器を有する。これら複数台の単相変換器に電力を供給する目的で、複数の巻線を有する変圧器と複数台のダイオード整流器によって、互いに絶縁された複数の直流電源を生成し、前記単相変換器の直流部に各々接続される。また、入力側の高調波電流を抑制する目的で、前記変圧器は、互いに位相をずらした複数の巻線を備えた構造になっている(例えば、特許文献1)。
図21は、交流電力を他の交流電力に変換する電力変換装置の別の例である。高圧の出力電圧を得る目的で交流端子が直列に接続された複数台の単相変換器(第4の交直変換器)を有する点は、特許文献1と同様であるが、第1の交直変換器と第2の交直変換器と高周波変圧器と第3の交直変換器とによって、第4の交直変換器に電力を供給する点が異なる。第2の交直変換器と第3の交直変換器は、高周波変圧器の1次側および2次側に印加する高周波の電圧を各々制御することで、第4の交直変換器に供給する電力を制御する。入力側の電流は、交流端子が直列に接続された第1の交直変換器によって制御され、その高調波電流は抑制される(例えば、特許文献2)。
米国特許第5,625,545号公報(図1) 特開2005−73362号公報(図2)
背景技術においては、入力側の回路電圧と出力側の回路電圧との間の電圧変換を担う複数の巻線を有する変圧器や高周波変圧器、更にはこの高周波変圧器に接続する追加の交直変換器を必要とし、その分装置が大型化するとともに発生損失も増大して効率が低下するという問題があった。
この発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、入力側の回路電圧と出力側の回路電圧との間で電圧変換を行う変圧器を必要とすることなく、小型・軽量・低コスト・高効率の電力変換装置を得ることを目的とする。
交流の入力端子と交流の出力端子との間で電力変換を行う電力変換装置であって、
互いに直列にして前記入力端子と前記出力端子との間に接続され、スイッチング素子と直流キャパシタとを有し単相交流間の電力変換を行う単相変換器をそれぞれ各相毎に備えてなる第1および第2の変換器群、前記入力端子と前記出力端子との間に接続されたリアクトルとキャパシタとのLC直列体、および前記第1の変換器群により前記入力端子からの入力電力を制御する入力制御手段と前記第2の変換器群により前記出力端子への出力電力を制御する出力制御手段と前記LC直列体を介して前記第1の変換器群と前記第2の変換器群との電力を平衡バランスさせる変換器群間バランス制御手段とを有する変換器制御手段を備えたものである。
以上のように、この発明に係る電力変換装置は、LC直列体と変換器群間バランス制御手段の作用により、実質的に従来の変圧器の機能を担う構成としたので、変圧器が不要となり、小型・軽量・低コスト・高効率の電力変換装置を実現することができる。
本発明の実施の形態1における電力変換装置の主回路構成の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態1における単相変換器の主回路構成の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態1における電力変換装置をモータ駆動装置として適用する場合の主回路および制御手段の構成の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態1における第1の変換器群の制御の一部である入力制御手段の原理を説明する回路図である。 本発明の実施の形態1における第2の変換器群の制御の一部である出力制御手段の原理を説明する回路図である。 本発明の実施の形態1における第1の変換器群と第2の変換器群との間の電力を平衡バランスさせる変換器群間バランス制御手段の原理を説明する回路図である。 本発明の実施の形態1における第1の変換器群と第2の変換器群との間の電力を平衡バランスさせる制御の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1におけるLC直列体におけるインピーダンスおよび位相の周波数特性の一例を示すグラフである。 本発明の実施の形態1における各変換器直列体の相間の電力バランス制御を行う相間バランス制御手段の原理を説明する回路図である。 本発明の実施の形態1における第1の変換器群内の各変換器直列体の相間の電力バランス制御の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1における各変換器直列体の相間の電力バランス制御の原理を説明するフェーザ図である。 本発明の実施の形態1における第2の変換器群内の各変換器直列体の相間の電力バランス制御の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1における第1の変換器群内の単相変換器の間の電力バランス制御を行う直列間バランス制御手段の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1における第2の変換器群内の単相変換器の間の電力バランス制御を行う直列間バランス制御手段の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態2における電力変換装置の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態2における第3の変換器群の主回路構成の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態2における第1の変換器群内の単相変換器および第3の変換器群内の三相変換器の間の電力バランス制御を行う直列間バランス制御手段の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態2における第2の変換器群内の単相変換器および第3の変換器群内の三相変換器の間の電力バランス制御を行う直列間バランス制御手段の一例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態3におけるLC直列体の主回路構成の一例を示す回路図である。 特許文献1における主回路構成を示す回路図である。 特許文献2における主回路構成を示す回路図である。
実施の形態1.
図1に、本発明の実施の形態1における電力変換装置の主回路構成の一例を示す。全体は、第1の変換器群101と、第2の変換器群102、およびリアクトルとキャパシタとのLC直列体201によって構成される。
第1の変換器群101は、r、s、t相の各相において、複数の単相変換器10a、10b、・・・、10nのそれぞれの交流端子が直列に接続された変換器直列体110r、110s、110tによって構成されており、同様に、第2の変換器群102も、u、v、w相の各相において、複数の単相変換器20a、20b、・・・、20mのそれぞれの交流端子が直列に接続された変換器直列体120u、120v、120wによって構成される。なお、変換器直列体110r、110s、110tと、変換器直列体120u、120v、120wにおいて、直列に接続される単相変換器の台数は必ずしも同じでなくてもよい。
変換器直列体110r、110s、110tの一方の交流端子は、電力変換装置の入力端子r、s、tにそれぞれ接続され、変換器直列体120u、120v、120wの一方の交流端子は、電力変換装置の出力端子u、v、wにそれぞれ接続されている。変換器直列体110r、110s、110t、および、変換器直列体120u、120v、120wの他方の交流端子は一括して互いに接続されている。LC直列体201の一方の端子は入力端子r、s、tにそれぞれ接続され、LC直列体201の他方の端子は出力端子u、v、wにそれぞれ接続される。
入力端子r、s、tに流れる電流をIsr、Iss、Ist、出力端子u、v、wに流れる電流をImu、Imv、Imw、LC直列体201に流れる電流をIcr、Ics、Ict、各相の変換器直列体110r、110s、110t、120u、120v、120wに流れる電流をIr、Is、It、Iu、Iv、Iwとし、必要とする電流情報が得られるよう、それらのいずれか、もしくは全てを検出する電流センサ(図示省略)を接続する。
図2は、単相変換器10a、10b、・・・、10n、および、20a、20b、・・・、20mの主回路構成の一例を示しており、スイッチング素子Sと環流ダイオードD、および直流キャパシタCによって構成される。図2では、フルブリッジの単相変換器を図示しているが、交流出力が可能な単相変換器であれば他の主回路構成のものでもよい。
r相の単相変換器10a、10b、・・・、10nの直流キャパシタ電圧をVdcra、Vdcrb、・・・、Vdcrn、s相の単相変換器10a、10b、・・・、10nの直流キャパシタ電圧をVdcsa、Vdcsb、・・・、Vdcsn、t相の単相変換器10a、10b、・・・、10nの直流キャパシタ電圧をVdcta、Vdctb、・・・、Vdctnとし、必要とする電圧情報が得られるよう、それらのいずれか、もしくは全てを検出する電圧センサ(図示省略)を接続する。
また、u相の単相変換器20a、20b、・・・、20mの直流キャパシタ電圧をVdcua、Vdcub、・・・、Vdcum、v相の単相変換器20a、20b、・・・、20mの直流キャパシタ電圧をVdcva、Vdcvb、・・・、Vdcvm、w相の単相変換器20a、20b、・・・、20mの直流キャパシタ電圧をVdcwa、Vdcwb、・・・、Vdcwmとし、必要とする電圧情報が得られるよう、それらのいずれか、もしくは全てを検出する電圧センサ(図示省略)を接続する。
なお、後段で説明する各制御を行うには、すべての直流キャパシタ電圧の情報が必要となり、原則としてそのすべてに電圧センサを設置することが必要となるが、電流情報と交流電圧指令値とから電力を推定しこの推定電力を用いて直流キャパシタの直流電圧を導出することで一部電圧センサの設置を節減することは可能である。
本発明の電力変換装置は、入力端子r、s、tや出力端子u、v、wに接続される機器を制御、もしくは入力端子r、s、tや出力端子u、v、wの電圧や電流を制御しながら、前記全ての直流キャパシタ電圧を同時に制御することが重要となる。以下では、図3に示すように、入力端子r、s、tに三相の系統電源301、出力端子u、v、wにモータ501を接続する場合、すなわちモータ駆動装置として本発明の電力変換装置を適用する場合を想定してその回路動作について説明する。
図3において、電力変換装置の制御を担う変換器制御手段150は、第1の変換器群101の各単相変換器10a等のスイッチング素子Sをオンオフ駆動することにより入力端子r、s、tからの入力電力を制御する入力制御手段151、第2の変換器群102の各単相変換器20a等のスイッチング素子Sをオンオフ駆動することにより出力端子u、v、wへの出力電力を制御する出力制御手段152、両変換器群101、102の各単相変換器10a、20a等のスイッチング素子Sをオンオフ駆動することにより、LC直列体201を介して第1の変換器群101と第2の変換器群102との電力を平衡バランスさせる変換器群間バランス制御手段153、両変換器群101、102の各単相変換器10a、20a等のスイッチング素子Sをオンオフ駆動することにより、両変換器群101、102のそれぞれにおいて、各相の変換器直列体110r、120u等の電力を平衡バランスさせる相間バランス制御手段154、および両変換器群101、102の各単相変換器10a、20a等のスイッチング素子Sをオンオフ駆動することにより、変換器直列体110r、120u等を構成する各単相変換器の電力を平衡バランスさせる直列間バランス制御手段155を備えている。
なお、これら各制御手段の機能については、後段の各制御の動作において詳細に説明する。
なお、図3は回路動作を説明するにあたっての、本発明の実施の形態1における適用例の一つであり、適用用途に応じて、入力端子r、s、tに三相の系統電源以外の交流機器、出力端子u、v、wにモータ以外の交流機器を接続してもよい。さらに、入力端子r、s、tや、出力端子u、v、wを電源や負荷機器などと接続する場合は、リアクトルや、リアクトルとキャパシタを組み合わせたフィルタを介して接続してもよく、図3では、入力端子r、s、tにリアクトル401を接続している。
図3において、例えば、三相の系統電源301の線間電圧実効値が6,600Vで周波数が60Hz、モータ501の定格線間電圧実効値が6,600Vで定格周波数が60Hzの場合、単相変換器に使用する素子を1,700V耐圧のIGBTとし、直流キャパシタ電圧の直流電圧指令値を1,000Vと仮定し、r、s、t相、および、u、v、w相の変換器直列体に使用する単相変換器の直列数を10と設定することができる。
次に、各単相変換器の出力電圧指令値の決定方法について説明する。先ず、第1の変換器群101を構成する各単相変換器に与える出力電圧指令値は、(1)式の通りとなる。
Figure 0005618956
ここで、Vrx*は、r相の変換器直列体110rの各単相変換器の出力電圧指令値、Vsx*は、s相の変換器直列体110sの各単相変換器の出力電圧指令値、Vtx*は、t相の変換器直列体110tの各単相変換器の出力電圧指令値である。各変数の添え字に含まれるxは、出力電圧指令値を与える単相変換器によって変化し、単相変換器10a、10b、・・・、10nに対応して、x=a、b、・・・、nとなる。例をあげると、r相の変換器直列体110rの単相変換器10aの出力電圧指令値はVra*のようになる。また、(1)式において、nは、変換器直列体110r、110s、110tの単相変換器の直列数を表しており、ここでの設計例ではn=10である。
(1)式右辺第1項のKrx、Ksx、Ktxは、詳しくは後述するが、直列間バランス制御手段155が制御対象とするもので、変換器直列体110r、110s、110tの内部で単相変換器間の電力バランスを制御する変数であり、(2)式の関係がある。
Figure 0005618956
同じく、(1)式右辺第1項のVr*は、詳しくは後述するが、入力制御手段151が制御対象とするものである。
また、(1)式右辺第2項のV0h1*は、詳しくは後述するが、変換器群間バランス制御手段153が制御対象とするもので、第1の変換器群101と第2の変換器群102との間の電力の平衡バランスを制御する変数であり、同右辺第3項のV0b1*は、詳しくは後述するが、相間バランス制御手段154が制御対象とするもので、r、s、t相の変換器直列体110r、110s、110tの相間の電力バランスを制御する変数である。
ここで、同第2項および第3項は、r、s、t相の出力電圧指令値に共通して加算される零相電圧であるので、これらの電圧成分は入力端子r、s、tの端子間には現れず、入力端子r、s、tの端子間に現れる電圧は、Vr*、Vs*、Vt*の線間電圧に相当する電圧となる。
次に、第2の変換器群102を構成する各単相変換器に与える出力電圧指令値は、(3)式の通りとなる。
Figure 0005618956
ここで、Vuy*は、u相の変換器直列体120uの各単相変換器の出力電圧指令値、Vvy*は、v相の変換器直列体120vの各単相変換器の出力電圧指令値、Vwy*は、w相の変換器直列体120wの各単相変換器の出力電圧指令値である。各変数の添え字に含まれるyは、出力電圧指令値を与える単相変換器によって変化し、単相変換器20a、20b、・・・、20mに対応して、y=a、b、・・・、mとなる。例をあげると、u相の変換器直列体120uの単相変換器20aの出力電圧指令値はVua*のようになる。また、(3)式において、mは、変換器直列体120u、120v、120wの単相変換器の直列数を表しており、前記の設計例ではm=10である。
(3)式右辺第1項のKuy、Kvy、Kwyは、第1の変換器群101の場合と同様、直列間バランス制御手段155が制御対象とするもので、変換器直列体120u、120v、120wの内部で単相変換器間の電力バランスを制御する変数であり、(4)式の関係がある。
Figure 0005618956
同じく、(3)式右辺第1項のVu*は、詳しくは後述するが、出力制御手段152が制御対象とするものである。
また、(3)式右辺第2項のV0h2*は、第1の変換器群101の場合と同様、変換器群間バランス制御手段153が制御対象とするもので、第1の変換器群101と第2の変換器群102の間の電力の平衡バランスを制御する変数であり、同右辺第3項のV0b2*は、第1の変換器群101の場合と同様、相間バランス制御手段154が制御対象とするもので、u、v、w相の変換器直列体120u、120v、120wの相間の電力バランスを制御する変数である。
ここで、同第2項および第3項は、u、v、w相の出力電圧指令値に共通して加算される零相電圧であるので、これらの電圧成分は出力端子u、v、wの端子間には現れず、出力端子u、v、wの端子間に現れる電圧は、Vu*、Vv*、Vw*の線間電圧に相当する電圧となる。
次に、(1)式および(3)式の各変数の決定方法について説明する。第1の変換器群101の主な役割の一つは、系統電源301から所望の電力を入力するという入力制御手段151が担う機能であり、入力する電力を制御する変数が(1)式の右辺第1項のVr*、Vs*、Vt*である。前述の通り、入力端子r、s、tの端子間に現れる電圧は、Vr*、Vs*、Vt*の線間電圧に相当する電圧であるので、Vr*、Vs*、Vt*は、図4に示す一般的な三相の電力変換装置を制御する過程で計算される各相の電圧指令値Vr*、Vs*、Vt*と同様に導出することができる。
公知技術を用いれば、系統電源301から電力変換装置に入力される入力電力Pを制御することが可能である。ここで所望の入力電力Pの指令値P*は、電力変換装置の全ての直流キャパシタ電圧の平均値Vdcaveが直流電圧指令値(前述の設計例では1,000V)と等しくなるように決定しても良いし、第1の変換器群101と第2の変換器群102の間の電力バランス制御が機能することを見越して、第1の変換器群101内の全直流キャパシタ電圧平均値Vdc1aveが直流電圧指令値(前述の設計例では1,000V)と等しくなるように決定してもよい。
一方、第2の変換器群102の主な役割の一つは、モータ501を駆動するという出力制御手段152が担う機能であり、それを制御する変数が(3)式の右辺第1項のVu*、Vv*、Vw*である。前述の通り、出力端子u、v、wの端子間に現れる電圧は、Vu*、Vv*、Vw*の線間電圧に相当する電圧であるので、Vu*、Vv*、Vw*は、図5に示す一般的な三相の電力変換装置を制御する過程で計算される各相の電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*と同様に導出することができ、公知な制御例である、V/f一定制御やベクトル制御、ダイレクトトルク制御などを適用できる。
次に、第1の変換器群101と第2の変換器群102の間の電力バランス制御、即ち、変換器群間バランス制御手段153の制御機能について説明する。前記で説明した、(1)式および(3)式の右辺第1項のVr*、Vs*、Vt*や、Vu*、Vv*、Vw*のみを用いて制御を行うと、第1の変換器群101は系統電源301から電力を入力し続け、第2の変換器群102はモータ501を駆動、すなわち電力をモータ501へ出力し続けるので、第1の変換器群101内の直流キャパシタ電圧は上昇し続け、第2の変換器群102内の直流キャパシタ電圧は低下し続ける。これは、モータの制御が不可能になること以外に、半導体素子や直流キャパシタの過電圧破壊にもつながるため、第1の変換器群101から第2の変換器群102へ電力を送る制御(第1の変換器群101と第2の変換器群102の間の電力平衡バランス制御)が必要である。その制御を行う変数が、(1)式の右辺第2項のV0h1*と、(3)式の右辺第2項のV0h2*である。
V0h1*とV0h2*は、共に零相電圧(第1の零相電圧)として与えられるため、図6に示すような零相等価回路で説明することができる。図7は、V0h1*とV0h2*を算出するブロック図の一例を示している。ここでは、例として、60Hzの18次周波数である1,080Hzで、実効値がV18の正弦波電圧を用意し、それをV0h1*とする。
そして、V0h2*は、第1の変換器群101の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1aveと、第2の変換器群102の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc2aveとの偏差を計算し、それを制御器Gh(s)に与えて、位相θを計算する。その位相θをV0h1*から遅らせた電圧をV0h2*とする。すなわち、(5)式の通りとなる。
Figure 0005618956
ここで、ω18は、18次周波数(=1,080Hz)の角周波数である。
図8は、例として、L=3mH、C=7.4μFと設定したLC直列体201のインピーダンスと位相の周波数特性を示している。この場合、LC直列体201の共振周波数は、1,068Hzであり、共振周波数よりも高周波の領域ではインダクタンス成分が支配的となる。それ故に、18次の周波数である1,080Hzでは、インピーダンスが、0.44Ωのインダクタンス成分となるため、図7の制御ブロックによって計算されたV0h1*とV0h2*によって、第1の変換器群101から第2の変換器群102に(6)式で示される電力が送電される。
Figure 0005618956
V0h1*とV0h2*を適切に決定すれば、第1の変換器群101から第2の変換器群102に送電される電力P12を制御できるので、第1の変換器群101内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1aveと、第2の変換器群102内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc2aveとを均一にすることができる。なお、前記の説明では、V0h1*およびV0h2*の周波数を1,080Hzに設定したが、系統電源301の周波数よりも十分に高く、かつLC直列体201の共振周波数よりも高ければ、幾らに設定してもよい。但し、第1の変換器群101および第2の変換器群102が出力可能な周波数よりも低く設定する必要がある。即ち、V0h1*とV0h2*は、第1の変換器群101および第2の変換器群102の各スイッチング素子Sのスイッチング動作で作り出すものであるので、必要な高速度スイッチングが可能なスイッチング素子Sで構成することが要請される。
以上のように、V0h1*とV0h2*の周波数を、入力端子および出力端子に印加される交流の周波数の上限より高い周波数であって、かつ、スイッチング素子Sのスイッチング能力が可能な範囲で高い値に設定し、共振周波数がこのV0h1*とV0h2*の周波数より若干低くなるLC直列体201を用いることで、群間バランス制御動作におけるLC直列体201のインピーダンスが小さくなって群間でやりとりできる電力を大きくでき、しかも、同インピーダンスも誘導性(インダクタンス成分)となるので、制御動作が安定するという利点がある。
なお、図7では、V0h1*とV0h2*の位相差を制御する例を示したが、その零相電圧に対して、LC直列体201に流れる電流Icr、Ics、IctやLC直列体201に流れる零相電流Ic0(=(Icr+Ics+Ict)/3)を制御することによって、第1の変換器群101から第2の変換器群102に送電される電力P12を制御してもよい。
次に、相間バランス制御手段154による、各変換器直列体の相間の電力バランス制御について説明する。この各変換器直列体の相間の電力バランス制御は、第1の変換器群101および第2の変換器群102でそれぞれ独立に行う。なお、各変換器直列体の相間の電力バランスを制御しない場合は、例えば、変換器直列体110rの直流キャパシタ電圧が上昇し続け、変換器直列体110s、110tの直流キャパシタ電圧が低下し続けるなどの可能性があり、スイッチング素子Sや直流キャパシタCの過電圧破壊を生じる恐れがある。そこで、(1)式の右辺第3項のV0b1*、および(3)式の右辺第3項のV0b2*を用いて各変換器直列体の相間の電力バランス制御を行う。
図9は、変換器直列体110r、110s、110tの相間の電力バランス制御を説明する回路図である。この制御では、各相の変換器直列体をそれぞれ1台の単相変換器として考え、各相の変換器直列体110r、110s、110t内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1rave、Vdc1save、Vdc1taveが均一になるように零相電圧V0b1*(第2の零相電圧)を出力する。
図10は、V0b1*の計算方法の一例を示すブロック図である。先ず、第1の変換器群101内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1aveと各相の変換器直列体110r、110s、110t内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1rave、Vdc1save、Vdc1taveとの偏差をそれぞれ計算し、制御器Gb(s)に与える。制御器Gb(s)のそれぞれの出力と、入力端子に流れる電流Isr、Iss、Istとの積を計算し、各相の計算結果の総和を計算してV0b1*を算出する。制御器Gb(s)には比例制御器や比例・積分制御器が使用できる。
図11は、r相の変換器直列体110rの全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1raveのみが大きい場合の制御を説明するフェーザ図である。図11(a)のように、各相の電圧指令値Vr*、Vs*、Vt*は、系統電源301の電圧と略等しい三相平衡であり、通常、入力電流Isr、Iss、Istは、Vr*、Vs*、Vt*と同位相に制御される。Vdc1raveのみが大きい場合は、図11(b)のように、V0b1*はIsrと逆位相となり、中性点Oが移動する。その結果、r相の出力電圧指令値はVr*よりも小さくなり、s相およびt相の出力電圧指令値は、Vs*、Vt*よりも大きくなる。よって、r相の変換器直列体110rの入力電力は小さくなり、s相、t相の変換器直列体110s、110tの入力電力が大きくなるので、各相の変換器直列体110r、110s、110tの全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1rave、Vdc1save、Vdc1taveを均一に制御することができる。
なお、前記の説明では、Ir、Is、Itを用いずにIsr、Iss、Istを用いたが、これは、Ir、Is、ItにはLC直列体201に流れる高周波の零相電流が含まれるためであり、その電流値を制御に用いるとV0b1*が高周波で振動するので、第1の変換器群101と第2の変換器群102の間の電力バランス制御、すなわちV0h1*と干渉する恐れがあるためである。V0b1*が低周波であれば、LC直列体201のインピーダンスは十分に高いため、第1の変換器群101と第2の変換器群102の間の電力バランス制御とは干渉しない。逆に、V0h1*は十分に高周波であるため、各変換器直列体の間の電力バランス制御とも干渉しない。
さらに、前記の説明では、入力端子に流れる電流Isr、Iss、Istを制御に用いたが、力率が十分に高い場合は電圧指令値Vr*、Vs*、Vt*や系統電源301の電圧値を用いてもよい。
同様に、変換器直列体120u、120v、120wの相間の電力バランス制御、すなわち、(3)式右辺第3項のV0b2*(第2の零相電圧)についても、図12に例示するブロック図を用いて導出することができる。ただし、第1の変換器群101を流れる電流は、入力方向を正、第2の変換器群102を流れる電流は、出力方向を正としているので、各相の変換器直列体120u、120v、120w内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc2uave、Vdc2vave、Vdc2waveと、第2の変換器群102内の全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc2aveとの偏差を計算する際の符号は図10とは反転している。また、図12も同様に、高周波成分が少ないImu、Imv、Imwを制御に用いているが、力率が1に近い場合は、電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*を用いてもよい。
次に、直列間バランス制御手段155による、互いに直列接続された単相変換器間の電力バランス制御について説明する。単相変換器間の電力バランス制御は、(1)式右辺第1項のKrx、Ksx、Ktx(x=a、b、・・・、n)、および(3)式右辺第1項のKuy、Kvy、Kwy(y=a、b、・・・、m)によって実現する。
図13は、例として、r相の単相変換器に着目し、Kra、Krb、・・・、Krnを決定するブロック図の一例を示している。r相の変換器直列体110rの全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc1raveと、r相の単相変換器10aの直流キャパシタ電圧Vdcraとの偏差を計算し、それを制御器(図13では比例制御器Ki)に与え、それに1を加えることで、Kraを計算する。同様に、単相変換器10b、・・・、10nにおいても、自身の直流キャパシタ電圧Vdcrb、・・・、Vdcrnを用いて、Krb、・・・、Krnを計算する。以上のように制御を行えば、変換器直列体110r内の全直流キャパシタ電圧平均値Vdc1raveよりも直流キャパシタ電圧が低い単相変換器は、出力する電圧の分担が相対的に多くなるので入力する電力量も多くなり、自身の直流キャパシタ電圧が高い単相変換器は、出力する電圧の分担が相対的に少なくなるので入力する電力量も少なくなり、最終的には、単相変換器の全直流キャパシタ電圧を均一にできる。
なお、s相、t相に関しても同様に、図13のブロック図を用いて制御することが可能であり、s相の場合は記号のrをsに、t相の場合は記号のrをtに置き換えればよい。
一方、図14は、例として、u相の単相変換器に着目し、Kua、Kub、・・・、Kumを決定するブロック図の一例を示している。図13と異なる点は、u相の単相変換器はモータ501を駆動しているので、出力電圧が大きくなるほど出力電力も大きくなる。それ故に、u相の変換器直列体120uの全直流キャパシタ電圧の平均値Vdc2uaveと、u相の単相変換器20aの直流キャパシタ電圧Vdcuaとの偏差を計算し、それを制御器(図14では比例制御器Ki)に与え、その出力を1より減算することで、Kuaを計算する。同様に、単相変換器20b、・・・、20mにおいても、自身の直流キャパシタ電圧Vdcub、・・・、Vdcumを用いて、Kub、・・・、Kumを計算する。
なお、図13および図14では、制御器に比例制御器を用いた。これは、前述のように(2)式および(4)式を成立させるためであり、言い換えると、各相の変換器直列体110r、110s、110t、120u、120v、120wが出力する零相電圧以外の電圧をVr*、Vs*、Vt*、Vu*、Vv*、Vw*と等しくするためである。系統電源301から入力する電力の制御やモータ501の制御に影響を与えなければ、従って、多少の電流歪みや制御精度の低下が許容される場合は、図13および図14の制御器に比例・積分制御器などを用いて、制御の安定性を優先するようにしても良い。
最後に計算された各出力電圧指令値を三角波キャリアと比較することで、スイッチング素子に与えるゲート信号を決定する。各出力電圧指令値と三角波キャリアとを比較してゲート信号を決定する三角波キャリア比較は一般的であり、レグが2つある単相変換器は、バイポーラ変調やユニポーラ変調と呼ばれる公知な方法を用いることができる。本発明の電力変換装置では、単相変換器を直列に接続しているので、出力電圧指令値と比較する三角波キャリアの位相を直列接続された単相変換器ごとにシフトさせれば、変換器直列体が出力する電圧レベル数や制御可能な周波数を増加することができ、高調波電圧や高調波電流を低減することができる。
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、複数の巻線を有する変圧器や、高周波変圧器および高周波変圧器に接続する追加の交直変換器を必要とせず、出力側の単相変換器(第2の変換器群201を構成する単相変換器)に電力を供給することができ、入力電流も第1の変換器群101によって制御することができる。
なお、各群間、相間および直列間の各単相変換器の直流キャパシタ電圧を均一にでき、モータ501を適切に駆動できる方法であれば、変換器制御手段として以上で説明した方法以外の他の制御方法を用いてもよい。
また、前記では、三相/三相の電力変換装置を例示したが、三相以外の相数の電力変換装置としても使用できる。例えば、図1のt相およびw相に接続される全ての単相変換器とLC直列体を取り除けば、二相/二相の電力変換装置となる。二相の電圧を、単相の電圧の大きさが1/2で、逆位相の2つの電圧と考えれば、前記で説明した零相電圧や零相電流の概念を適用できるので、単相/単相の電力変換装置としても適用可能である。
実施の形態2.
ところで、モータ501の始動時には静止摩擦力が始動を妨げるように発生するので、それに打ち勝つトルクを発生させる目的で電力変換装置から直流電圧もしくは0Hzに近い低周波電圧を出力することがある。従って、本願発明に係る電力変換装置は、交流の入力端子と交流の出力端子との間で電力変換を行うものであるが、一定の過渡的な条件下においては、交流電力を直流電力に変換する機能も要請されるものである。
実施の形態1で示した図1や図3の主回路構成においては、そのような直流電圧もしくは0Hzに近い低周波電圧を出力する時間が十分に短いか直流キャパシタの容量が十分に大きければ問題とならないが、そうでない場合は、ある相が常に電力を供給し、他の相が常に電力を吸収する動作となり、第2の変換器群102を構成する単相変換器の直流キャパシタ電圧が上昇もしくは低下し、モータ501の制御が行えない可能性がある。最悪の場合は直流キャパシタ電圧が上昇し続け、スイッチング素子Sや直流キャパシタCが破壊される。
本発明の実施の形態2に係る電力変換装置は、上記した条件下での対策を加味したもので、図15に示すように、第3の変換器群103を第1の変換器群101と第2の変換器群102との間に追加する。そして、第3の変換器群103の主回路構成としては、例えば、図16に示すような、2台の三相変換器を直流端子部で共通に接続した回路構成が使用できる。なお、共通の直流端子部に接続する直流キャパシタCの電圧をVdc3とし、この電圧を検出する電圧センサを接続する。この場合、第3の変換器群103の直流端子部は各相で共通となるので、直流電圧や低周波の電圧を出力したとしても、ある相が出力する電力と他のある相に入力される電力が相殺されるので、前述のようなスイッチング素子Sや直流キャパシタCの破壊を防ぐことができる。
次に、図15の電力変換装置を図3と同様にモータ駆動装置として使用することを例に、回路動作について説明する。第3の変換器群103の直流キャパシタ電圧の直流電圧指令値を、第1の変換器群101および第2の変換器群102の単相変換器の直流キャパシタ電圧の電圧指令値と同等に設計すると、第3の変換器群103が出力可能な電圧は、第1の変換器群101および第2の変換器群102の1台の単相変換器が出力可能な電圧の0.5倍となる。
即ち、第1の変換器群101および第2の変換器群102の単相変換器は、この事例では、図2に示すように、フルブリッジの単相変換器を採用しているので、直流キャパシタ電圧をVdcとしたとき、+Vdc〜−Vdcの出力が可能であるのに対し、第3の変換器群103は、図16に示すように、コンバータ、インバータ側それぞれハーフブリッジの三相変換器を採用しているので、1相当たりの出力電圧は、+0.5Vdc〜−0.5Vdcとなる。
そこで、実施の形態1で説明した制御を基本として、第1の変換器群101および第2の変換器群102が出力すべき出力電圧指令値Vr*、Vs*、Vt、および、Vu*、Vv*、Vt*から、0.5台分の単相変換器に相当する出力電圧を第3の変換器群103が分担して出力することを考える。よって、第3の変換器群103の系統電源301側の三相変換器に与えるr、s、t相の出力電圧指令値V3r*、V3s*、V3t*は、(7)式の通りとなる。
Figure 0005618956
ここで、(7)式で第1項のみで出力電圧指令値を与える理由は、第3の変換器群103は、直流キャパシタCが、r、s、t相およびu、v、w相で共通であるため、第1の変換器群101と第2の変換器群102との間の電力バランス制御や、各変換器直列体の間の電力バランス制御のような制御は必要でないからである。
同様に、第3の変換器群103のモータ501側の三相変換器に与えるu、v、w相の出力電圧指令値V3u*、V3v*、V3w*は、(8)式の通りとなる。
Figure 0005618956
また、第3の変換器群103が第1の変換器群101および第2の変換器群102の出力すべき電圧を一相あたり単相変圧器0.5台分負担することになるので、第1の変換器群101の単相変換器の電圧指令値は、(9)式の通りとなる。
Figure 0005618956
第2の変換器群102の単相変換器の電圧指令値は、(10)式の通りとなる。
Figure 0005618956
ここで、(7)式と(9)式における右辺第1項の係数K3r、K3s、K3t、Krx、Ksx、Ktxは、(11)式の関係を満たすものとすると、入力端子r、s、tの端子間に現れる電圧を、Vr*、Vs*、Vt*の線間電圧相当とすることができる。
Figure 0005618956
この場合は、第1の変換器群101内の単相変換器間のバランス制御に、第3の変換器群とのバランス制御を加える目的で、実施の形態1で示した図13の制御ブロック図を、図17のように変更する。
同様に、(8)式と(10)式における右辺第1項の係数K3u、K3v、K3w、Kuy、Kvy、Kwyは、(12)式の関係を満たすものとすると、出力端子u、v、wの端子間に現れる電圧を、Vu*、Vv*、Vw*の線間電圧相当とすることができる。
Figure 0005618956
この場合も、第2の変換器群102内の単相変換器間のバランス制御に、第3の変換器群103とのバランス制御を加える目的で、図14の制御ブロック図を、図18のように変更する。
なお、上記は一の構成例であり、第1から第3の変換器群101〜103の直流キャパシタ電圧を適切に制御でき、モータ501を適切に駆動できる方法であれば、他の制御方法を用いてもよい。
上記の説明では、三相/三相の電力変換装置の例を示したが、実施の形態1で説明したと同様に、他の相数の電力変換装置に適用しても良い。その場合は、第3の変換器群103の回路構成を入力側と出力側の相数に対応させて変更すればよい。
以上のように、本発明の実施の形態2によれば、複数の巻線を有する変圧器や、高周波変圧器および高周波変圧器に接続する追加の交直変換器を必要とせず、出力側の単相変換器(第2の変換器群201を構成する単相変換器)に電力を供給することができ、入力電流も第1の変換器群101によって制御することができる。更に、第1および第2の変換器群101と102との間に第3の変換器群103を挿入する構成としたので、電力変換装置から直流電圧もしくは0Hzに近い低周波電圧を出力する場合にも、第1および第2の変換器群101、102において特定の相に電力が偏るという不具合は解消される。
実施の形態3.
先の実施の形態1や2では、系統電源301がLC直列体201を介してモータ501に接続される回路構成となるが、系統電源301の周波数(例えば50Hzや60Hz)において、LC直列体201のインピーダンスが十分に高ければ、系統電源301の電圧は直接的にモータ501の駆動には影響を与えない。しかしながら、LC直列体201のインピーダンスを十分に高く設計できない場合や、モータ501のインピーダンスが高い場合などは、系統電源301がモータ501に与える影響を無視できなくなる。
本発明の実施の形態3に係る電力変換装置は、上記した条件下での対策を加味したもので、図19に示すように、LC直列体201を第1のLC直列体211と第2のLC直列体212の2つに分離する。第1のLC直列体211の一方の端子はそれぞれ入力端子r、s、tと接続し、他方の端子は、各相の端子同士で接続して中性点を形成する。第2のLC直列体212の一方の端子はそれぞれ出力端子u、v、wと接続し、他方の端子は、各相の端子同士で接続して中性点を形成し、第1のLC直列体211の中性点と接続する。
上記のように、LC直列体201を2つに分離し、中性点のみで接続することによって、零相成分でのみ入力端子と出力端子が電気的に接続された形となり、系統電源301の電圧はモータ501へは印加されない。また、第1の変換器群101と第2の変換器群102との間の電力バランス制御は、零相電圧を用いて行うので、実施の形態1や2と同様に制御が可能である。
なお、図19では、分離前のLC直列体201の定数をL、Cとし、分離後のLC直列体211、212の定数をL/2、2Cとしたが、これは、全体の共振周波数を分離前と一致させることが目的であり、必ずしも、LC直列体211と212の定数を合わせる必要はない。
さらに、LC直列体201を分離し、中性点のみを接続する利点として、入力側の相数と出力側の相数とが異なる場合でも適用することができる。例えば、入力側が三相で出力側が単相のような場合も適用可能である。この場合は、出力側の単相電圧を、電圧の大きさが1/2で、各々が逆位相の2つの電圧(二相電圧)として考えれば、零相電圧や零相電流という概念を上記説明と同様に適用できる。
以上のように、本発明の実施の形態3によれば、複数の巻線を有する変圧器や、高周波変圧器および高周波変圧器に接続する追加の交直変換器を必要とせず、出力側の単相変換器(第2の変換器群102を構成する単相変換器)に電力を供給することができ、入力電流も第1の変換器群101によって制御することができる。更に、LC直列体201を、中性点を介して互いに直列に接続された第1および第2のLC直列体で構成したので、系統電源301の周波数におけるLC直列体201のインピーダンスを十分に高く設計できない場合にも、系統電源301がモータ501に与える影響を阻止することができる。
なお、実施の形態1から3では、スイッチング素子SとしてIGBTを使用することを想定しているが、MOSFETなどの他のスイッチング素子を用いてもよい。また、通常、スイッチング素子SやダイオードDを構成する半導体素子の材料に珪素を使用するが、炭化珪素、窒化ガリウム、またはダイヤモンドなどのワイドギャップ材料を使用すると、半導体素子の高耐圧化が可能で、単相変換器の直列接続台数を低減でき、さらには低損失化が可能となる。さらに、前記ワイドギャップ材料を使用すると、高速スイッチングが可能となり、スイッチング周波数を高くできるので、LC直列体の共振周波数を高く設定でき、LC直列体を小型化することができる。
また、直流キャパシタ電圧の検出値をそのまま制御に適用することを想定したが、単相変換器の直流キャパシタ電圧は系統電源やモータの周波数の2倍の周波数で振動する恐れがあるため、この振動を除去するように、ローパスフィルタや移動平均などを用いてもよい。
101 第1の変換器群、102 第2の変換器群、103 第3の変換器群、
150 変換器制御手段、151 入力制御手段、152 出力制御手段、
153 変換器群間バランス制御手段、154 相間バランス制御手段、
155 直列間バランス制御手段、201,211,212 LC直列体、
301 系統電源、501 モータ、
10a,10b,・・・,10n,20a,20b,・・・,20m 単相変換器、
S スイッチング素子、C 直流キャパシタ、r,s,t 入力端子、
u,v,w 出力端子。

Claims (13)

  1. 交流の入力端子と交流の出力端子との間で電力変換を行う電力変換装置であって、
    互いに直列にして前記入力端子と前記出力端子との間に接続され、スイッチング素子と直流キャパシタとを有し単相交流間の電力変換を行う単相変換器をそれぞれ各相毎に備えてなる第1および第2の変換器群、前記入力端子と前記出力端子との間に接続されたリアクトルとキャパシタとのLC直列体、および前記第1の変換器群により前記入力端子からの入力電力を制御する入力制御手段と前記第2の変換器群により前記出力端子への出力電力を制御する出力制御手段と前記LC直列体を介して前記第1の変換器群と前記第2の変換器群との電力を平衡バランスさせる変換器群間バランス制御手段とを有する変換器制御手段を備えたことを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記第1の変換器群の一方の各相端子は前記入力端子の各相端子に接続され、前記第2の変換器群の一方の各相端子は前記出力端子の各相端子に接続され、前記第1の変換器群の他方の各相端子および前記第2の変換器群の他方の各相端子は一括して互いに接続されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
  3. スイッチング素子と直流キャパシタとを有し交流間の電力変換を行う第3の変換器群を備え、前記第1および第2の変換器群は前記第3の変換器群を介して互いに直列にして前記入力端子と前記出力端子との間に接続され、
    前記第1の変換器群の一方の各相端子は前記入力端子の各相端子に接続され、前記第2の変換器群の一方の各相端子は前記出力端子の各相端子に接続され、前記第1の変換器群の他方の各相端子は前記第3の変換器群の一方の各相端子に接続され、前記第2の変換器群の他方の各相端子は前記第3の変換器群の他方の各相端子に接続されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
  4. 前記変換器群間バランス制御手段は、前記第1および第2の変換器群により第1の零相電圧を発生させ前記第1の零相電圧と前記第1の零相電圧によって前記LC直列体を介して流れる電流との積からなる電力に基づき前記第1の変換器群と前記第2の変換器群との電力を平衡バランスさせることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  5. 前記第1の零相電圧の周波数を、前記入力端子および前記出力端子に印加される交流の周波数の上限より高い周波数に設定することを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
  6. 前記LC直列体は、その共振周波数を、前記第1の零相電圧の周波数より低い周波数に設定することを特徴とする請求項5記載の電力変換装置。
  7. 前記変換器制御手段は、更に、前記第1および第2の変換器群それぞれにおいて、各相の単相変換器の電力を平衡バランスさせる相間バランス制御手段を備え、
    前記相間バランス制御手段は、前記第1および第2の変換器群それぞれにおいて、第2の零相電圧を発生させ前記第2の零相電圧によって各相の単相変換器間に流れる電流に基づき各相の単相変換器の電力を平衡バランスさせることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  8. 前記第2の零相電圧の周波数を、前記LC直列体の共振周波数より低い周波数に設定することを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
  9. 前記第1の変換器群または前記第2の変換器群における前記単相変換器が、複数個の単相変換器を直列接続してなる変換器直列体で構成される場合、
    前記変換器制御手段は、更に、前記変換器直列体を構成する各単相変換器の電力を平衡バランスさせる直列間バランス制御手段を備え、
    前記直列間バランス制御手段は、前記変換器直列体を構成する各単相変換器の前記直流キャパシタの電圧検出値に基づき当該各単相変換器が分担する交流電圧指令値を調整することにより前記変換器直列体を構成する各単相変換器の電力を平衡バランスさせることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  10. 前記直列間バランス制御手段は、
    前記第1の変換器群にあっては、対象とする単相変換器の直流キャパシタの電圧が全直流キャパシタの電圧平均値より低くなると当該単相変換器が分担する交流電圧指令値を全単相変換器の平均指令値より高くするように調整し、
    前記第2の変換器群にあっては、対象とする単相変換器の直流キャパシタの電圧が全直流キャパシタの電圧平均値より低くなると当該単相変換器が分担する交流電圧指令値を全単相変換器の平均指令値より低くするように調整することを特徴とする請求項9記載の電力変換装置。
  11. 前記LC直列体を互いに直列に接続された第1および第2のLC直列体で構成し、前記第1のLC直列体の一方の各相端子は前記入力端子の各相端子に接続され、前記第2のLC直列体の一方の各相端子は前記出力端子の各相端子に接続され、前記第1のLC直列体の他方の各相端子および前記第2のLC直列体の他方の各相端子は一括して互いに接続されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  12. 前記スイッチング素子は、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体材料によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  13. 前記ワイドバンドギャップ半導体材料は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドであることを特徴とする請求項12記載の電力変換装置。
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