JP5618500B2 - 高剛性高減衰能鋳鉄の機械部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、ヤング率が高くかつ振動減衰能に優れかつ耐摩耗性が求められる高剛性高減衰能鋳鉄の機械部材及びその製造方法に関する。本発明の機械部材は、例えば剛性の要求される工作機械や高精密工作機械、またヤング率と振動が問題となる精密測定器の構造部材などとして使用することによって、それらの加工効率、加工品の精度、測定精度を高めることができる。
従来から、工作機械用構造材料として、振動減衰能に比較的優れた片状黒鉛鉛鋳鉄が主に使用されてきた。片状黒鉛鋳鉄は、片状黒鉛を多量に含むことによる複合型防振機構を有することから鋼等に比べて減衰能が高く、しかも大型の構造材を製作するに当っての成形性及びコストの面で有利な特徴を有している。なお、片状黒鉛鋳鉄に代わる工作機械構造材へ適用を考えて、コンクリート系材料、天然グラナイト、CFRP等優れた減衰能を有する材料の研究がされてきた。しかし、いずれも剛性の低さ、加工性、コスト等の問題で実用化に至っていない。
現在、減衰性、鋳造性、コストの点で優れている片状黒鉛鋳鉄は、工作機械のベッド、テーブル、コラムなど構造材料に広く使用されている。しかし、加工硬化の激しい難加工性材料等の加工を行う工作機械には、大切り込みを安定して維持する高い剛性と、有害な振動の発生を抑制する高い振動減衰能が必要とされる。このように、振動減衰能が更に激しく求められる場合には、現状の片状黒鉛鋳鉄では振動の影響のため、加工効率、加工品の精度が充分に得られない場合がある。
従来から工作機械等に用いられているFC300等の片状黒鉛鋳鉄は、複合型減衰機構を発現する片状黒鉛を多量に含んでいるため、従来材料の中では振動減衰能に優れる構造材料である。この片状黒鉛鋳鉄の振動減衰能を改善するには、片状黒鉛の量を増加させればよい。しかし、片状黒鉛鋳鉄が増加するに伴って動的ヤング率(以下、単にヤング率と呼ぶ)が低下してしまう問題がある。片状黒鉛鋳鉄の黒鉛量の調整は、C及びSiの量によって制御できる。工作機械の構造材料としては、ヤング率が低下すると剛性保持のため構造材料の肉厚を増加する必要が出てくる。そのため、構造設計上の問題が発生するばかりでなく、コストも増加することになり好ましくない。
そこで、本出願人は、高剛性でかつ高減衰能を持つ高剛性高減衰能鋳鉄を提案した(特許文献1)。この高剛性高減衰能鋳鉄は、今までの素材では成し得なかった高ヤング率と高減衰能を合わせ持った構造材料である。ところで、工作機械の構造部材の中には、一般に摺動する部分が存在する。通常、摺動部は油で潤滑されるが、長期間の機械使用によって摩耗し工作機械としての精度を維持できなくなる。そのため、片状黒鉛鋳鉄の場合には、その防止策として摺動部の表面を焼き入れして使用しているのが普通である。しかし、特許文献1では、FC300に通常行われている表面焼入れをしても硬くならず、本材料は摺動部のある構造部材の寿命としては使用できなかった。
特開2008−223135号公報
この発明はこうした事情を考慮してなされたもので、高剛性でかつ高減衰性能を持つAl,Sn添加鋳鉄の表面の硬度を上げ工作機械などで摺動する部分に使用される際に、その表面に耐摩耗性を付与して寿命を改善し得る高剛性高減衰能鋳鉄の機械部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
この発明に係る高剛性高減衰能鋳鉄の機械部材は、下記式(3)に示す炭素当量が3.30〜3.95%となるC及びSiと、Mn:0.05〜1.0%と、P:0.04%以下と、S:0.03%以下と、Al:3〜7%と、Sn:0.03〜0.20%と、残部Fe及び不可避的不純物からなる高剛性高減衰能鋳鉄を鋳造してなり、表面が窒化されたことを特徴とする。
炭素当量(%)=C量(%)+(1/3)×Si量(%) …(3)
また、この発明に係る高剛性鋼減衰能鋳鉄の機械部材の製造方法は、上記式(3)に示す炭素当量が3.30〜3.95%となるC及びSiと、Mn:0.05〜1.0%と、P:0.04%以下と、S:0.03%以下と、Al:3〜7%と、Sn:0.03〜0.20%と、残部Fe及び不可避的不純物からなる高剛性高減衰能鋳鉄を鋳造する工程と、470〜590℃に加熱処理する工程と、460〜580℃でかつ前記加熱処理の温度よりも常に低い温度で窒化する工程とを具備することを特徴とする。
この発明によれば、高剛性でかつ高減衰性能を持つAl,Sn添加鋳鉄の表面の硬度を上げ工作機械などで摺動する部分に使用される際に、その表面に耐摩耗性を付与して寿命を改善し得る高剛性高減衰能鋳鉄の機械部材及びその製造方法を提供できる。
図1は、処理温度と熱処理後の対数減衰率の変化率との関係を示す特性図である。 図2は、本発明の一実施例に係る機械部材の説明図である。 図3は、本発明の実施例1,2及び比較例1,2に係る機械部材の表面からの距離と硬さとの関係を示す特性図である。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明は、上述した構成にすることにより、Al,Snを添加した高剛性高減衰能鋳鉄の表面に耐摩耗性を付与し、機械部材の寿命を改善することを要旨とする。
Al,Snを添加した高剛性鋼減衰能鋳鉄は、片状黒鉛鋳鉄のFC300と同様の表面焼入れをしても硬化されず、焼入の硬化は得られない。これは、フェライト形成元素であるAlが添加されているため、焼入温度からの急冷処理でも焼入組織であるマルテンサイト組織が得られないためであると考えられる。このため、Al,Snを添加した高剛性鋼減衰能鋳鉄の硬化方法は限られてくる。
本発明の高剛性鋼減衰能鋳鉄の機械部材の製造方法は、従来の片状黒鉛鋳鉄のヤング率を維持しながら対数減衰率の改善を図り、さらに表面を硬化する方法を提案するものである。具体的には、本発明の製造方法は、片状黒鉛鋳鉄にAlとSnを同時に加えることによってヤング率、振動減衰能を改善し、その後加熱処理と窒化処理をする方法である。
片状黒鉛鋳鉄は、Al(アルミニウム)の添加量に伴って振動減衰能が改善されるが限界が現れる。例えば、Alの添加量を順次増やしてその振動減衰能及びヤング率を測定すると、3%Al添加から改善が見られるが、7%を超えると振動減衰能はむしろ低下する。しかし、本発明者らは、これらAlを添加した片状黒鉛鋳鉄にSn(スズ)を適量添加すると、ヤング率及び振動減衰能が改善されることを究明するに至った。更に、本発明者らは、振動減衰能及びヤング率は、C,Si量から計算される炭素当量とAl,Snの添加量の調整によって大きく変動することも明らかにした。ヤング率を維持したまま振動減衰能を改善するには、特許請求の範囲に記載するC,Si量から計算される炭素当量と、Al,Snの値の適正な調整が必要である。
本発明によれば、Alが3〜7%含有し、かつSnが0.03〜0.20%添加された片状黒鉛鋳鉄であって、炭素当量が3.3〜3.95%であるヤング率および振動減衰性に優れた鋳鉄材料を窒化してなる機械部材が得られる。
本発明において、Al:3〜7%と規定するのは次の理由による。即ち、AlとSnを添加した片状黒鉛鋳鉄でAlの添加量が振動減衰能に好ましい影響を及ぼすのは3%からで、3%より少ない場合、ほとんど改善効果は認められない。また、6%を超えると、振動減衰能は徐々に低下し、7%を超えると更に振動減衰能が低下する。そして、Alの添加量が7%を超えると、Alの添加によって形成される鉄Al炭化物が硬く脆くなるので、割れ易くなり且つ加工性が悪くなる。そのため、Alの適正添加量を3〜7%とした。
Al添加による片状黒鉛鋳鉄の振動減衰能の改善機構に関しては、Alを固溶した鉄合金の形成によるものとする説(前者)と、鉄Al炭化物の形成によるものとする説(後者)がある。本発明者らの研究では後者の説を捉えている。いずれの説もこれらの形成される物質の強磁性型の減衰機構によるものと推測されている点では同じである。
本発明において、Sn:0.03〜0.2%と規定するのは、次の理由による。即ち、Snの添加量が少なすぎると、ヤング率及び振動減衰能の改善効果が認められない。0.03%ぐらいからヤング率、振動減衰能の改善に効果を現し、0.08%前後で最も顕著な効果を現す。Snの添加量が多くなると次第に効果が低減し、0.2%以上になると効果が大きく低下し、改善効果が得られなくなる。そのため、Snの添加量は0.03〜0.2%が適正値である。
なお、Sn添加による改善効果の機構については諸説あるが、次にように考えられる。即ち、片状黒鉛鋳鉄にAlを添加すると、鉄とAlと炭素の反応により鉄Al炭化物が形成されるといわれている。また、鉄Al炭化物は、強磁性体であり、強磁性体型の振動減衰機構を発現するといわれている。本発明者らの研究によれば、Alの添加量を増やしていけば、鉄Al炭化物が増加していくが、およそ6%前後で鉄Al炭化物が増加しなくなる。しかし、Snを添加すると、Al単独の添加に比較して常により多くの鉄Al炭化物が形成されるようになり、その結果Sn添加による改善効果が現れるものと考えられる。
本発明において、本発明の高剛性高減衰能鋳鉄は、上記Al,Sn以外に、C,Si,Mn,P,S等を含んでいる。ここで、C及びSiの量は後に詳述するとおりである。
Mnは通常の片状黒鉛鋳鉄の場合と同様に、0.05〜1.0%とする。この理由は、Mnは0.05%以上では鋳鉄の強さ、硬さを増すが、1.0%を超えると鋳鉄をチル化させ、硬く脆くするので、上記数値範囲とした。
さらに、Mn(マンガン)量は、0.05〜1.0%とする。この理由は、以下のとおりである。即ち、Mn量が1.0%を越えると、振動特性が低下するため鋳鉄組成中のMn量は1.0%以下とする。Mn量は少ない方が振動特性は良くなるが、鋳鉄原料内にもともと少量のMnが含有されているため、必要以上に低減させることはコスト的な面で不利益になる。そこで、Mn量の下限値は0.05%とする。なお、Mn量が1.0%を越える場合に振動減衰能が低下する理由は、現在のところ不明である。
Pは通常の片状黒鉛鋳鉄の場合と同様に、0.04%以下とする。この理由は、Pは0.04%を超えると、鉄と反応して硬い化合物であるステダイトを形成し鋳鉄を脆くするため、上記数値範囲とした。
Sは、通常の片状黒鉛鋳鉄の場合と同様に、0.03%以下とする。この理由は、Sが0.03%を超えると、溶湯の流動性を悪くするとともに、鋳鉄をチル化させ硬く脆くするためである。
本発明において、上記式(3)、即ち、炭素当量(%)=C量(%)+(1/3)×Si量(%)で表される炭素当量(C.E.)は、上記したように3.30〜3.95%にすることが必要である。炭素当量は、大きくなると振動減衰能が改善されヤング率が低下する。炭素当量の増減では両者の両立はできないが、振動減衰能とヤング率に与える影響は大きいので適正な値にする必要がある。Alが添加された場合、従来の片状黒鉛鋳鉄に比較して、オーステナイトと黒鉛の共晶反応が起きる共晶組成が変化する。従来の片状黒鉛鋳鉄は、上記式(3)で表される炭素当量が4.3%で共晶反応を生じるが、Alが添加されるとこの値よりも小さい値で共晶反応が起きるようになる。共晶組成より大きな炭素当量になると過共晶となりヤング率が大きく低下するので好ましくない。
本発明の場合、炭素当量が3.95%を超えると、振動減衰能が大きく改善されるが、ヤング率が大きく低下する。これは、炭素当量が共晶組成を超えて過共晶になるためだと考えられる。炭素当量が小さい場合には、黒鉛の形成量が減少するためヤング率が改善されるが、振動減衰能が低下するので、3.3%以上の炭素当量が必要である。従って、炭素当量は3.30〜3.95とした。
次に、本発明に係る高剛性鋼減衰能鋳鉄の機械部材の製造方法における加熱処理工程と窒化処理工程について説明する。
この製造方法の過程では、高剛性鋼減衰能鋳鉄を鋳造した後に470〜590℃で加熱処理し、その後、460〜580℃で窒化処理を行っている。ここで、窒化処理の温度は、加熱処理の温度よりも低く設定する必要がある。これにより、窒化処理で生じる変形が小さくなる。好ましくは、窒化処理の温度と加熱処理の温度との差が30℃以上に設定するのが良い。これにより、後述する図2の機械部材で窒化後の変形量を20μm以下に制御できる。即ち、好ましい加熱処理温度は490〜590℃であり、好ましい窒化処理温度は460〜560℃である。ここで、加熱処理は、前記鋳鉄の減衰性能及びヤング率の改善と加工の残留応力を除去するのが目的であり、窒化処理は機械部材の表面に耐摩耗性を付与することを目的としている。
本発明において、工作機械は、通常の機械とは異なり高精度である必要がある。そのための機械部材の寸法も、寸法精度が厳しく求められる。ここで、機械部材の寸法精度を高めるためには、窒化処理の前に応力除去を目的とした加熱処理をすることが好ましい。また、発明による鋳鉄素材の減衰性能を改善するには、鋳鉄素材の加熱処理が必要であり、それにより大きな効果が現れることが分かっている。これらの両方の目的に合致する温度、470〜590℃に加熱処理する。
加熱処理の下限温度の470℃は、窒化処理を460〜580℃とした場合に窒化温度の下限よりも高い温度とする。加熱処理の上限温度,590℃を超えると、図1に示すように、減衰性能の改善率が大きく低下する。従って、加熱処理温度は470〜590℃とする。減衰性能の改善率及び窒化温度との温度差を考えると、より好ましくは490〜560℃である。590℃の加熱処理に比較して560℃の場合は、対数減衰率の改善率(鋳鉄素材の減衰性能が加熱処理により改善される度合い)は約10%高い。
本発明において、窒化温度は460〜580℃とする。窒化温度が低い場合には、鋳鉄素材中の窒素の拡散速度が遅くなるため、満足な窒化層深さが得られなくなるので460℃が限界である。また、前述したように、窒化による部材の変形をできるだけ小さく抑えるために、窒化温度は加熱処理温度と同じかそれよりも低い温度にする必要がある。そのため、窒化温度の上限は、加熱処理の上限温度よりも低い580℃とする。窒化処理での変形抑制から窒化温度は460〜560℃であり、素材の減衰性能の改善の点から窒化温度はより好ましくは460〜530℃である。
加熱処理と窒化処理の一連の処理を行う工程は、通常、次の工程を採るのが好ましい。即ち、470〜590℃の加熱処理によって鋳鉄素材の減衰性能を改善し、同時に中仕上げ加工までの加工残留応力を除去する。その後、所定の寸法に加工して加熱処理によって生じた変形を加工により削除する。更にその後、加熱処理よりも低い温度で窒化処理することによって表面を硬化するとともに、変形を最小限に抑える。場合によっては、窒化による変形を加工削除し、精度の高い機械部材を製作する。窒化後の変形量が機会部材に求められる寸法精度以内であれば、そのまま最終仕上げせずに機械部材としてもよい。なお、窒化処理の方法としては、ガス窒化あるいはイオン窒化、プラズマ窒化などがあり、その手法は問わない。
本発明において、とるべき工程は、鋳造工程、荒加工工程、中仕上工程、加熱処理(470〜590℃)工程、仕上げ加工工程、窒化処理(460〜580℃)工程、及び最終仕上げ加工工程である。
次に、本発明の具体的な実施例について比較例とともに説明する。
(実施例1,2及び比較例1〜4)
まず、高周波溶解炉を用いて鋳鉄の組成を調整した。次に、銑鉄及び鉄スクラップ、加炭材、フェロマンガン、炭化珪素を入れて溶解し、その後フェロシリコンと加炭材で炭素量、シリコン量を調整し、溶解量を約500kgとした。但し、得られる鋳造品のAl量は純Al、スズ量は純Snを添加して調整した。また、溶解温度は約1450℃とした。なお、出湯前にCa−Si−Ba系接種剤を添加した後、フラン自硬性鋳型に鋳込んだ。
得られた鋳造品を荒加工、中仕上げ加工した後、電気炉を用いて550℃で3時間保持し、その後冷却して加熱処理した。その後、仕上げ切削加工により、所定寸法に加工した。更に、510℃,10時間でガス窒化処理をし、その後更に研削加工して最終寸法に仕上げ、高精度の機械部材を製作した。図2(A),(B)は、空洞部2を有した機械部材1の概要図を示す。ここで、図2(A)は機械部材1の正面図、図2(B)は図2(A)の側面図を示す。図2(A),(B)において、Lは200mm、Lは220±0.02mm、Lは130mm、Lは40±0.02mm、Lは36mm、空洞部2の径Rは150mm、機械部材1の長さLは1600mmである。
なお、機械部材の素材を鋳造する際に同時にφ30×300mmの試料を鋳込み、この素材から4×20×200mmに加工した評価試験片を作製して、上記機械部品と同様の加熱処理及び窒化処理をして、その性能(対数減衰率及び動的ヤング率)を評価した。試験方法は、JISG0602に準拠した。試験片を二点吊りして電磁加振器で1×10−4のひずみ振幅を与え、その後加振をとめて自由減衰させて、対数減衰率と動的ヤング率を求めた。比較例1〜4及び実施例1,2の組成を下記表1に、比較例1〜4及び実施例1,2の動的ヤング率,対数減衰率,硬さを下記表2に示す。
Figure 0005618500
Figure 0005618500
上記表2より、実施例1,2の窒化後の特性は、比較例1〜4のいずれの場合よりも上回っていることが明らかである。比較例1,2は振動減衰能の評価値である対数減衰率が低く、比較例3,4は加熱処理と窒化処理をしていない例であるが、実施例1,2に比較して対数減衰率が低い。
下記表3は、比較例1,2及び実施例1,2における窒化硬さ(ビッカース硬さ,HV)を表面からの距離との関係を示したものである。また、図3は、表3の値に基づいて表面からの距離と硬さ(HV)との関係をグラフ化したものである。
Figure 0005618500
実施例1,2は、図3のような硬度分布で窒化されている。図3において、線aは実施例1の場合、線bは実施例2の場合、線cは比較例1の場合、線dは比較例2の場合を夫々示す。なお、図3には、参考に普通鋳鉄のFC300との窒化特性を比較した。図3より、実施例1,2は、普通鋳鉄(Al,Sn添加鋳鉄)、FC300と比較して優れた窒化特性(表面硬さ、窒化層深さ)を示すことが分かる。実施例1,2の場合、窒化後に変形部除去のために50μmの研削加工をしたとしても、表面硬さ800〜1000HVを維持でき、耐摩耗性に優れることから、工作機械に求められる高精度な機械部材として使用できる。
上述したように、本発明によれば、高剛性でかつ高減衰性能を持つAl,Sn添加鋳鉄の表面の硬度を上げ工作機械などで摺動する部分に使用される際に、その表面に耐摩耗性を付与して寿命を改善し得る高剛性高減衰能鋳鉄の機械部材が得られる。
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲でAl,Sn,C,Si,Mn,P,S等の組成を適宜変えて具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の組成の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
1…機械部材、2…空洞部。

Claims (2)

  1. 下記式(1)に示す炭素当量が3.30〜3.95%となるC及びSiと、Mn:0.05〜1.0%と、P:0.04%以下と、S:0.03%以下と、Al:3〜7%と、Sn:0.03〜0.20%と、残部Fe及び不可避的不純物からなる高剛性高減衰能鋳鉄を鋳造してなり、表面が窒化されたことを特徴とする高剛性鋼減衰能鋳鉄の機械部材。
    炭素当量(%)=C量(%)+(1/3)×Si量(%) …(1)
  2. 下記式(2)に示す炭素当量が3.30〜3.95%となるC及びSiと、Mn:0.05〜1.0%と、P:0.04%以下と、S:0.03%以下と、Al:3〜7%と、Sn:0.03〜0.20%と、残部Fe及び不可避的不純物からなる高剛性高減衰能鋳鉄を鋳造する工程と、470〜590℃に加熱処理する工程と、460〜580℃でかつ前記加熱処理の温度よりも常に低い温度で窒化する工程とを具備することを特徴とする高剛性鋼減衰能鋳鉄の機械部材の製造方法。
    炭素当量(%)=C量(%)+(1/3)×Si量(%) …(2)
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