JP2015134948A - 肌焼鋼および機械構造用部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的安価な生産コストの下に得られる、高い曲げ疲労強度および面圧疲労強度を有する機械構造用部品の素材として適した肌焼鋼について提案する。
【解決手段】質量%で、C:0.15%以上0.25%以下、Si:1.10%超え1.50%以下、Mn:0.40%以上1.20%以下、S:0.010%以上0.030%以下、Cu:0.05%以上0.50%以下、Cr:0.80%以上1.80%以下、Mo:0.10%以下、Al:0.020%以上0.060%以下、N:0.0060%以上0.0200%以下および0:0.0015%以下を、所定の関係の下に含有する化学組成を有し、浸炭焼入れ・焼戻し後に得られる表面から200μm深さの位置での硬さがHV730以上とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車や各種産業機器等の機械構造用部品の素材として供する、肌焼鋼、なかでも高い曲げ疲労強度および面圧疲労強度を有する機械構造用部品の素材として適した肌焼鋼およびそれを用いて作製される機械構造用部品に関するものである。
機械構造用部品、例えば自動車等の駆動伝達部品に用いられている歯車は、近年、省エネルギー化による車体重量の軽量化に伴って、その小型化が要求される一方、エンジンの高出力化により負荷が増大しているため、耐久性の向上が課題とされている。
一般的に、歯車の耐久性は、歯元の曲げ疲労破壊並びに歯面の面圧疲労破壊によって決定されるため、これまで、曲げ疲労強度および耐ピッチング性の向上を目的とし、微量元素の添加による介在物の形態制御や浸炭異常層の発生抑制をはかったり、あるいは、焼戻し軟化抵抗性を付与した、浸炭肌焼鋼が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、鋼中のSiを低減すると共に、Mn、Cr、MoおよびNiの量を制御することにより、浸炭熱処理後の表面の粒界酸化層を低減して亀裂の発生を少なくし、また不完全焼入層の生成を抑制することにより、表面硬さの低減を抑えて疲労強度を高め、さらにCaを添加して、亀裂の発生・伝播を助長するMnSの延伸を制御する方法が開示されている。
特許文献2には、素材としてSiを0.25〜1.50%添加した鋼材を用いて焼戻し軟化抵抗を高める方法が開示されている。
また、特許文献3には、浸炭あるいは浸炭窒化処理時の表面炭素量および窒素の量を特定範囲内に制御することにより、微細な炭化物の生成を促し、表層部の高い硬さを確保して耐ピッチング性を高める方法が開示されている。
特公平07−122118号公報 特許第2945714号公報 特開平07−188895号公報
しかしながら、上述した特許文献1〜3に記載の発明はいずれも、以下に述べる問題があった。
まず、特許文献1の記載によれば、Siを低減すると粒界酸化層および不完全焼入れ層が低減するため、歯車の歯元での曲げ疲労による亀裂発生を抑えることはできる。しかしながら、逆に焼戻し軟化抵抗が低下して、破壊の発生が歯元から歯面側に移行する結果、歯面での摩擦熱による焼戻し軟化を抑えることができなくなって表面が軟化するため、ピッチングが発生し易くなることが問題になる。
特許文献2では、焼戻し軟化抵抗を上げるために逆にSi等を添加し、一方、粒界酸化の進行を抑制するために浸炭工法を真空浸炭あるいはプラズマ浸炭等に限定しているが、これらの特殊な浸炭手法では、製造コストが嵩むという不利があり、工業的規模での量産化には不適であった。
また、特許文献3に記載の技術は、高価な合金であるV、Moを多量に添加する必要があり、製造コストの大幅な増加を招いてしまうだけでなく、炭窒化物の析出により、連続鋳造時の割れの発生が懸念されるものであった。
そこで、本発明は、比較的安価な生産コストの下に得られる、高い曲げ疲労強度および面圧疲労強度を有する機械構造用部品の素材として適した肌焼鋼およびそれを素材として用いた機械構造用部品について提案することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、浸炭焼入れ・焼戻し後の疲労特性に及ぼす、成分および浸炭層の硬さの影響について鋭意検討を行った。その結果、以下のa)〜e)の事項を見出すに到った。
a)鋼材中のSi、MnおよびCrを増量して焼戻し軟化抵抗を高めることによって、例えば歯車としたときの接触面での発熱による軟化を抑えれば、歯車駆動時に生じる歯面の亀裂発生を抑制することができる。
b)曲げ疲労および疲労亀裂の起点となり得る粒界酸化層については、Si、MnおよびCrを所定量以上添加することにより、粒界酸化層の成長方向が深さ方向から表面の密度増加方向に変わる。従って、起点となるような深さ方向に成長した酸化層がなくなるため、曲げ疲労および疲労亀裂の起点となり難くなる。
c)上記a)およびb)で述べたとおり、Si、MnおよびCrは、焼戻し軟化抵抗の向上と粒界酸化層の制御に有効であるが、これらの効果を両立させるためには、Si、MnおよびCrについて、その含有量を厳密に制御する必要がある。
d)浸炭後の面疲労特性は、試験時の最大せん断応力の発生深さに相当する、表面から200μm深さの位置の硬さと相関があり、当該位置における硬さをHV730以上とすれば、ピッチング(素材の疲れが主原因で歯面に剥離損傷が発生すること)による破壊を効果的に抑制することができる。
e)浸炭熱処理では、表面の炭素濃度が被処理材の形状の影響を大きく受ける。すなわち、処理材の平坦部分では狙い通りの硬さや組織が得られても、歯先等の角部では浸炭が過剰となり、粗大炭化物の生成に伴う疲労強度の低下が懸念されている。特に、最近用いられるようになってきた真空浸炭では、この傾向がより顕著になっている。これに対し、炭化物の生成抑制効果のある、Si、Cuを適量添加することで、過剰浸炭による疲労強度の低下を抑制することができる。
本発明は上記の知見に立脚するものであり、その要旨構成は、次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.15%以上0.25%以下、
Si:1.10%超え1.50%以下、
Mn:0.40%以上1.20%以下、
S:0.010%以上0.030%以下、
Cu:0.05%以上0.50%以下、
Cr:0.80%以上1.80%以下、
Mo:0.10%以下、
Al:0.020%以上0.060%以下、
N:0.0060%以上0.0200%以下および
0:0.0015%以下
を、下記(1)式および(2)式を満足する範囲の下に含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、浸炭焼入れ・焼戻し後に得られる表面から200μm深さの位置での硬さがHV730以上であることを特徴とする肌焼鋼。

2.3≧[%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3≧1.6 …(1)
0.25≧[%Si]×([%Cu]/2)≧0.06 …(2)
但し、[ ]は括弧内の元素の含有量(質量%)
2.前記1に記載の肌焼鋼を素材とし、該素材に機械加工を行って部品形状とした後、浸炭焼入れ処理を施して得られる耐疲労性に優れた機械構造用部品。
3.前記機械加工の前に鍛造を施してなる前記2に記載の機械構造用部品。
本発明によれば、高い曲げ疲労強度および面圧疲労強度を有する機械構造用部品の素材として適した肌焼鋼を提供することができる。すなわち、機械構造用部品として例えば歯車を、本発明鋼を用いて作製した場合に、その歯元の曲げ疲労特性のみならず、歯面の面圧疲労特性にも優れた歯車を量産することが可能になる。
浸炭焼入れ・焼戻し処理の条件を示す図である。 小野式回転曲げ疲労試験片の仕様を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.15%以上0.25%以下
Cは、浸炭処理後の焼入れにより中心部の硬さを高めるために0.15%以上を必要とするが、含有量が0.25%を超えると、機械構造用部品における芯部の靭性が低下するため、C量は0.15〜0.25%の範囲に限定した。好ましくは0.17〜0.23%の範囲である。
Si: 1.10%超え1.50%以下
Siは、本発明において最も重要な元素である。Siは、歯車等が転動中に到達すると予想される200〜300℃の温度域における軟化抵抗を高めると共に、浸炭表層部の硬さ低下を引き起こす残留オーステナイトの生成を抑制しつつ、焼入れ性を向上させる元素である。また、浸炭時に粗大な炭化物の生成を抑制する効果も有しており、これらの鋼を得るには、少なくとも1.10%を超える量の添加が不可欠である。しかしながら、一方でSiはフェライト安定化元素であり、過剰な添加はAc3変態点を上昇させ、通常の焼入れ温度範囲で炭素の含有量の低い芯部でフェライトが出現し易くなり強度の低下を招く。また、過剰な添加は浸炭前の鋼材を硬化させ、切削性を劣化させる不利もある。この点、Si量が1.50%以下であれば、上記のような弊害は生じないので、Si量は1.10%超え1.50%以下の範囲に限定した。好ましくは1.10%超え1.40%以下の範囲である。
Mn:0.40%以上1.20%以下
Mnは、焼入性に有効な元素であり、少なくとも0.40%の添加を必要とする。しかしながら、Mnは、浸炭異常層を形成し易く、また過剰な添加は残留オーステナイト量が過多となって硬さの低下を招くため、上限を1.20%とした。好ましくは0.60〜1.00%の範囲である。
S:0.010%以上0.030%以下
Sは、Mnと硫化物を形成し、被削性を向上させる作用を有するので、少なくとも0.010%以上含有させる。一方、過剰な添加は、部品の疲労強度および靭性を低下させるため、上限を0.030%とした。
Cu:0.05%以上0.50%以下
Cuは、本発明において重要な効果を有する元素の一つである。特に、炭化物の生成を抑制することで、過剰浸炭による疲労強度低下の抑制に効果がある。また、焼入れ性及び耐食性の向上にも寄与するため、0.05%以上含有させる必要がある。一方、0.50%を超えて添加した場合、素材硬さの上昇を招いて冷間加工性が劣化してしまうため、Cu含有量は0.50%以下の範囲内とする必要がある。好ましくは0.10〜0.30%の範囲である。
Cr:0.80%以上1.80%以下
Crは、焼入性のみならず焼戻し軟化抵抗の向上にも有効な元素であるが、含有量が0.80%に満たないとその添加効果に乏しく、一方1.80%を超えると軟化抵抗を高める効果は飽和し、むしろ浸炭異常層を形成し易くなるため、Cr量は0.80〜1.80%の範囲に限定した。好ましくは0.90〜1.50%の範囲である。
Mo:0.10%以下
Moは、焼入れ性および靭性を向上させると共に、浸炭処理後の結晶粒径を微細化する効果を有するため、好ましくは0.03%以上で添加する。一方、多量に添加すると、製造コストを上昇させるため、0.10%を上限とした。なお、上記効果を発揮させるため、上限値は0.07%とすることが好ましい。
Al:0.020%以上0.060%以下
Alは、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト結晶粒の微細化に寄与する元素であり、この効果を得るためには0.020%以上の添加を必要とするが、含有量が0.060%を超えると疲労強度に対して有害なAl 203介在物の生成を助長するため、Al量は0.020〜0.060%の範囲に限定した。好ましくは0.020〜0.040%の範囲である。
N:0.0060%以上0.0200%以下
Nは、Alと結合してAlNを形成し、オーステナイト結晶粒の微細化に寄与する元素である。従って、適正添加量はAlとの量的バランスで決まるが、その効果を発揮するためには0.0060%以上の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると凝固時の鋼塊に気泡が発生したり、鍛造性の劣化を招くため、上限を0.0200%とする。好ましくは0.0100〜0.0150%の範囲である。
O:0.0015%以下
Oは、鋼中において酸化物系介在物として存在し、疲労強度を損なう元素である。従って、含有量は低いほど望ましいが、0.0015%までは許容される。
なお、被削性を向上させるために必要に応じて、Pb、SeおよびCa等の快削元素を含有させてもよい。また、Pは、結晶粒界に偏析し、浸炭層および芯部の靭性を低下させるので、その混入は低いほど望ましいが、0.020%までは許容される。
以上、本発明の基本成分の適正組成範囲について説明したが、本発明では、各々の元素が単に上記の範囲を満足するだけでは不十分であり、Si、Mn、CrおよびCuについては、次式(1)および(2)の関係を満足させることが重要である。
2.3≧[%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3≧1.6 …(1)
0.25≧[%Si]×([%Cu]/2)≧0.06 …(2)
上式(1)は、焼入性および焼戻し軟化抵抗性に影響を与える因子を示し、その値が1.6未満では焼入性および焼戻し軟化抵抗性の改善効果に乏しい。一方、上式(1)が2.3を超えると、芯部硬さの増加によって加工性が劣化するだけでなく、浸炭表層部のMs点が低下し、残留オーステナイト量が過多となって表層硬さの低下を招くことになる。
上式(2)は、浸炭性に影響を与える因子を示し、0.06未満では炭化物生成の抑制効果に乏しく、疲労強度に悪影響を与える場合がある。一方0.25を超えると、上記の改善効果が飽和するだけでなく、表面性状や加工性の劣化を招く。
さらに、上掲した元素の規定式に加え、浸炭後の鋼材表面から200μm深さの位置における硬さをHV730以上とすることも重要である。歯車においてピッチング発生に繋がる歯面および歯元の初期亀裂は、ローラーピッチング疲労試験時の最大せん断応力発生深さに相当する、表面から200μm深さの位置の硬さが高いほど発生しにくい。初期亀裂の発生を抑制し、長寿命を得るため、表層部から200μm位置における硬さをHV730以上に限定した。なお、本発明で硬さ(HV)は全て荷重300gfで求めた値として規定する。
本発明に係る肌焼鋼から機械構造用部品を作製する際の製造条件については、特に制限は無いが、好適な製造条件は次の通りである。
前記した好適成分組成からなる鋼素材を溶解鋳造してビレットとし、熱間圧延後、機械構造用部品としての予備成形を行う。次に、機械加工、あるいは鍛造後に機械加工を行い機械構造用部品形状とした後、浸炭焼入れ処理を施し、必要に応じて更に歯面に研磨加工を施して最終製品とする。
なお、浸炭焼入れ処理は、浸炭温度900〜1050℃で60〜600min、焼入れ温度800〜900℃で10〜120minとし、焼戻しは120〜250℃で30〜180minの範囲とする。
表1に示す化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造によりブルームとした。次いで、ビレット圧延を経て、さらに棒鋼圧延により50mmφの棒鋼とした。かくして得られた棒鋼に、1200℃で60minの加熱処理を施し、1100℃にて熱間鍛造を行って36mmφとし、その後1℃/sで室温まで冷却して丸棒鋼とし、さらに得られた丸棒鋼に対し、925℃で60minの焼準処理を実施した。
Figure 2015134948
次に、焼準処理後の丸棒鋼から、小野式回転曲げ疲労試験片、ローラーピッチング疲労試験片、20mφの丸棒を採取した。表1のNo.1〜31鋼の各試験片に対して、図1に示す条件の、浸炭焼入れ・焼戻しを施した後、回転曲げ疲労試験、ローラーピッチング疲労試験および20mmφの丸棒の表面から200μm深さの位置での硬さ調査を実施した。なお、No.32及び33鋼については、真空浸炭焼入れ・焼戻し後に同様の調査を実施した。また、熱間鍛造材を20mm厚に切断したものを試験材として、被削性を外周旋削試験により評価した。以下に、それぞれの調査内容について詳細に説明する。
回転曲げ疲労特性
直径36mmの丸棒鋼から、図2に示す寸法および形状の平行部直径8mmの試験片を採取し、平行部にこれと直角方向の深さ2mmの切欠き(切欠き係数α:1.56)を全周に付与した回転曲げ疲労試験片を作製した。得られた試験片に対して、浸炭焼入れ・焼戻し処理を行った後、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて、回転数:3000rpmで回転曲げ疲労試験を実施し、107回を疲労限度として、回転曲げ疲労強度を測定した。
ローラーピッチング疲労特性
ローラーピッチング疲労試験機を使用して、80℃のミッションオイルを潤滑に用い、すべり率:40%、回転数:1500rpmにてローラーピッチング疲労試験を行った。その際、107回を疲労限度として評価した。
硬さ調査
発明鋼および比較鋼の20mmφの丸棒を用いて、浸炭焼入れ・焼戻し処理後に、切断し、表面から200μm深さ位置の硬さを、ビッカース硬さ計により測定した。また、焼戻し軟化抵抗性の評価のため、250℃で2時間の焼戻しを行った後に、同位置での硬さを測定した。
被削性試験
36mmφの丸棒鋼(熱間鍛造材)を用いて、外周旋削試験を行った。該試験にはP20種工具を用いて、切込み:2mm、切削速度:200mm/min、送り:0.25mm/revおよび潤滑無の条件にて切削を行って切削時間:900sの段階での工具逃げ面磨耗幅を、実体顕微鏡にて測定して評価した。
表2に上記した各調査の結果を示す。本発明鋼(No.1〜13)は、回転曲げ疲労強度が480MPa以上、面圧疲労強度が2800MPa以上であり、表面から200μm位置での硬さはHV730以上が得られ、比較鋼No.14〜33より優れていた。
すなわち、比較鋼No.14は、C含有量が本発明範囲より低いために、内部硬さが低くなりすぎて回転曲げ疲労強度が低下した。
比較鋼No.15は、C含有量が本発明範囲より高いために、芯部の靭性が低下し、回転曲げ疲労強度が低下した。
比較鋼No.16は、Si含有量及び成分範囲規定式(1)([%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3)の値が本発明の範囲よりも低いために、芯部硬度及び耐焼戻し軟化抵抗が低下し、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.17は、Si含有量及び成分範囲規定式(1)([%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3)の値が本発明の範囲よりも高いために、焼入れ性が高くなり、被削性が低下した。
比較鋼No.18は、Mn含有量及び成分範囲規定式(1)([%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3)が本発明の範囲より低いために、芯部硬度及び耐焼戻し軟化抵抗が低下し、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.19は、Mn含有量が本発明の範囲より高いために、浸炭表層部のMs点が低下し、残留オーステナイト量が増加するために、表面から200μm深さ部での硬さが低くなり、面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.20は、S含有量が本発明範囲より低いために、MnSの生成量が乏しく、被削性が低下した。
比較鋼No.21は、S含有量が本発明範囲より高いために、疲労破壊の起点となるMnSの生成量が多くなり、回転曲げ疲労強度と面画圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.22は、Cu含有量が本発明の範囲より低いために、芯部硬度が低下し、回転曲げ疲労強度が低下した。
比較鋼No.23は、Cu含有量及び成分範囲に係る上記式(2)([%Si]×([%Cu]/2)の値が本発明範囲よりも高い結果、焼入れ性が高くなり、被削性が低下した。
比較鋼No.24は、Cr含有量及び成分範囲規定式(1)([%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3)が本発明の範囲より低いために、芯部硬度及び耐焼戻し軟化抵抗が低下し、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.25は、Cr含有量が本発明の範囲より高いために、浸炭表層部のMs点が低下し、残留オーステナイト量が増加する。よって、表層から200μm部での硬さが低くなり、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.26は、Al含有量が本発明範囲より高いために、Al203介在物の生成量が多くなり、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.27は、N添加量が本発明範囲よりも低いために、AlN生成量が少なくなり、オーステナイト結晶粒が粗大化してしまうため、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.28は、N添加量が本発明範囲よりも高いために、熱間鍛造時に割れを生じてしまい、疲労試験が出来なかった。
比較鋼No.29は、O含有量が本発明範囲より高いために、疲労破壊の起点となる酸化物系介在物の生成量が多くなり、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.30は、本発明成分範囲内であるが、成分範囲に係る上記規定式(1)([%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3)の値が1.6未満のため、耐焼戻し軟化抵抗が低下し、面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.31は、本発明成分範囲内であるが、成分範囲に係る上記規定式(1)([%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3)の値が2.3を超えているため、焼入れ性が高くなって被削性が低下した。また、浸炭表層部のMs点が低下し、残留オーステナイト量が増加して表面からから200μm深さ部分での硬さが低くなり、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.32は、本発明成分範囲内であるが、成分範囲に係る上記規定式(2)([%Si]×([%Cu]/2)の値が0.06未満と低い結果、過剰浸炭により粗大な炭化物が生成し、回転曲げ疲労強度と面圧疲労強度が低下した。
比較鋼No.33も同様に、本発明成分範囲内であるが、成分範囲に係る上記規定式2)([%Si]×([%Cu]/2)の値が0.25を超えているため、焼入性が高くなり、被削性が低下した。
Figure 2015134948

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.15%以上0.25%以下、
    Si:1.10%超え1.50%以下、
    Mn:0.40%以上1.20%以下、
    S:0.010%以上0.030%以下、
    Cu:0.05%以上0.50%以下、
    Cr:0.80%以上1.80%以下、
    Mo:0.10%以下、
    Al:0.020%以上0.060%以下、
    N:0.0060%以上0.0200%以下および
    0:0.0015%以下
    を、下記(1)式および(2)式を満足する範囲の下に含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、浸炭焼入れ・焼戻し後に得られる表面から200μm深さの位置での硬さがHV730以上であることを特徴とする肌焼鋼。

    2.3≧[%Si]+([%Mn]+[%Cr])/3≧1.6 …(1)
    0.25≧[%Si]×([%Cu]/2)≧0.06 …(2)
    但し、[ ]は括弧内の元素の含有量(質量%)
  2. 請求項1に記載の肌焼鋼を素材とし、該素材に機械加工を行って部品形状とした後、浸炭焼入れ処理を施して得られる機械構造用部品。
  3. 前記機械加工の前に鍛造を施してなる請求項2に記載の機械構造用部品。
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