JP5614804B2 - 抗ウイルス剤担持シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抗インフルエンザウイルス剤等の抗ウイルス剤を担持した担持シートに関し、特に、豚インフルエンザウイルスや鳥インフルエンザウイルスの如き新型インフルエンザウイルスを不活化させる機能を持つ抗インフルエンザウイルス剤を担持した担持シートに関するものである。
現在、豚インフルエンザや鳥ウイフルエンザの如き新型インフルエンザの流行が危険視されている。特に、鳥インフルエンザは致死率が高いため、医療従事者は、感染者の身の回りにあるタオル、ベッドカバー、カーテン等のシート状物を手で触れることによる接触感染の危険に常に曝されている。
このため、これらのシート状物に抗インフルエンザウイスル剤等のウイルス剤を付与することが提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載された抗ウイルス剤は、金属酸化物の水和物よりなる微粒子であり、ヒドロキシラジカルを発生し、このヒドロキシラジカルによってインフルエンザウイルス等のウイルスを不活化させるものである。このような微粒子をシート状物に付着させるには、接着剤を使用する必要がある。
接着剤としては、水溶液型、水性エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型等の種々のタイプのものが知られているが、いずれにしても、微粒子をシート状物に付着させる際に、接着剤成分が微粒子を被覆してしまうということがあった。そして、この被覆により、微粒子の抗ウイスル活性が長時間持続しにくいという欠点があった。すなわち、接着剤成分の皮膜によって被覆されていない微粒子の部分(露出している部分)が、当初抗ウイルス活性を示すだけであり、被覆されている部分(露出していない部分)は抗ウイルス活性が使用されていないことにより、かかる欠点が生じるものと考えられる。
本発明者は、上記欠点を解決するために、微粒子状の抗ウイルス剤をシート状物に接着剤で付着させても、抗ウイルス活性が長時間持続しうる抗ウイルス剤担持シートを提案した(特許文献2)。すなわち、特許文献2に係る発明は、接着剤成分としてポリビニルアルコールを使用することにより、抗ウイルス活性を長時間持続させうるというものである。
また、本発明者は、抗ウイルス剤と脂肪酸とをシート状物に付与することにより、抗ウイルス剤からヒドロキシラジカルを長時間に亙って発生せしめ、抗ウイルス活性を長時間持続させうる抗ウイルス剤担持シートも提案した(特許文献3)。
特開2008−37814号公報(特許請求の範囲の項及び段落番号0025) 特願2009−258447号明細書 特願2010−173206号明細書
特許文献3に記載された発明は、抗ウイルス活性を長時間持続させうるものであるが、脂肪酸により抗ウイルス剤担持シートの表面が撥水性になる。シートの表面が撥水性になると、ウイルス含有水がシートに付着した場合、ウイルスをシート内部に侵入させないという効果やウイルスがシートに通過しにくくなるという効果を奏する。一方、ウイルス含有水がシート表面に付着した状態となり、この状態で他の物品や身体と接触すると、ウイルスが他の物品や身体に付着し、ウイルスによる感染が拡大するおそれがあった。
本発明の課題は、ウイルス含有水がシート表面に付着した場合、ウイルス含有水をシート内部に取り込むことができる抗ウイルス剤担持シートを提供することにある。
すなわち、本発明は、ヒドロキシラジカルを発生する微粒子状の焼成ドロマイトよりなる抗ウイルス剤、炭素数5〜18の脂肪酸及び界面活性剤を、接着剤成分としてのポリビニルアルコール及び/又はポリオレフィン樹脂によって、シート状物に付着させたことを特徴とする抗ウイルス剤担持シート及びその製造方法に関するものである。
本発明に用いる微粒子状の抗ウイルス剤としては、特許文献1及び国際公開2005/013695に記載されているものが挙げられる。すなわち、ドロマイト(苦灰石)を焼成し、それを水和した後、粉砕して微粒子としたものである。微粒子の組成は、CaCO3、Ca(OH)2及びMg(OH)2を主成分とするものである。また、微粒子の平均粒子径は0.1〜60μm程度である。かかる抗ウイルス剤は、ヒドロキシラジカルを発生する。そして、ヒドロキシラジカルは、豚インフルエンザウイルスや鳥インフルエンザウイルスの如き新型インフルエンザウイルスはもとより、旧型インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス及びレトロウイルス等のウイルスを不活化する。
また、本発明に用いる微粒子状の抗ウイルス剤と併せて、炭素数5〜18の脂肪酸を用いることによって、本発明ではヒドロキシラジカルの発生を長時間持続しうるようになる。この理由は定かではないが、脂肪酸の皮膜によって、ヒドロキシラジカルの発生を阻害する水分がヒドロキシラジカル発生源に接触し難くなること、及びヒドロキシラジカルの放出が緩慢となり、ヒドロキシラジカルが長時間に亙って徐々に放出されることに起因しているのではないかと推定している。
炭素数5〜18の脂肪酸としては、ステアリン酸、カプリル酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸又はリノール酸等が用いられる。炭素数5〜18の脂肪酸は、粉末状又は液状で用いられてもよいし、水又はアルコールに溶解又は懸濁させた溶液状で用いてもよい。本発明においては、特に粉末状のステアリン酸、液状のカプリル酸、液状の吉草酸又は液状のカプロン酸を用いるのが好ましい。
界面活性剤としては、親水性の良好なものであれば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤を使用しうる。特に、ポリオキシアルキレンアルコール型非イオン界面活性剤を用いるのが好ましい。ポリオキシアルキレンアルコール型非イオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アセチレングリコール又はアセチレンアルコール等が挙げられる。また、アルキルスルホコハク酸ナトリウム塩等の陰イオン界面活性剤も好ましく用いられる。
なお、アセチレングリコールは、以下のような構造を持つものである。
Figure 0005614804
また、アセチレンアルコールは、以下のような構造を持つものである。
Figure 0005614804
化1及び化2において、Rは各々独立して水素原子又はアルキル基であり、Xはエチレン又はプロピレンであり、yは正の整数である。
本発明で用いる微粒子状の焼成ドロマイトよりなる抗ウイルス剤は、シート状物に接着剤成分によって付着せしめられる。接着剤成分としては、ポリビニルアルコール又はポリオレフィン樹脂が用いられる
接着剤成分であるポリビニルアルコールの重合度は250〜1000であるのが好ましい。この理由は、水溶液として取り扱いやすく、かつ接着作用を十分に発揮しうるからである。また、ポリビニルアルコールのケン化度は、35〜99モル%程度であるのが好ましい。特に、66〜99モル%が好ましく、より好ましくは90〜99モル%である。なお、ポリビニルアルコールは、一般的に水に溶解させたポリビニルアルコール水溶液の状態で接着剤として取り扱われる。
接着剤成分であるポリオレフィン樹脂は、数平均粒子径が1μm以下の微粒子状のポリオレフィン樹脂の形態で用いるのが好ましい。ここで、ポリオレフィン樹脂微粒子の数平均粒子径は、日機装社製の「マイクロトラック粒度分布計 UPA150(MODEL No.9340)」を用いて求めたものである。数平均粒子径が大きすぎると、水系溶媒中に良好に分散しにくくなる傾向が生じる。
本発明では、特に水系溶媒に分散しやすいポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。かかるポリオレフィン樹脂は本件出願人が開発したものであって、特許第3699935号公報に記載されているものであり、(A1)不飽和カルボン酸又はその無水物と(A2)炭素数2〜6のアルケンを含むモノマーを共重合してなる共重合体からなるものである。(A1)不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が用いられる。また、(A2)炭素数2〜6のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等が用いられる。なお、(A1)及び(A2)の他に、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のアクリル酸エステルを第三成分として共重合しても差し支えない。また、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル等の第三成分を共重合しても差し支えない。
(A1)と(A2)の共重合比は、質量比で、(A1):(A2)=0.5〜20:99.5〜80程度である。また、第三成分を共重合するときは、全体の35質量%以下程度の量で共重合される。
以上のような組成を持つポリオレフィン樹脂微粒子は、特許第3699935号公報に記載されているように、水系溶媒によく分散するものである。したがって、接着剤成分の一つであるポリオレフィン樹脂微粒子は、一般的に、水及び/又はアルコールに分散させた水系分散液の状態で接着剤として用いられる。
本発明に用いる抗インフルエンザウイルス剤等の抗ウイルス剤をシート状物に付着させるには、たとえば、以下のような方法によるのが好ましい。まず、微粒子状の抗ウイルス剤を水及びアルコールよりなる水系溶媒に分散させて水性分散液を準備する。水系溶媒中にアルコールを併用するのは、シート状物が不織布や編織物のように繊維間隙を持ったものである場合、当該繊維間隙への浸透性を向上させるためである。アルコールとしては、エタノール等の低級アルコールが水よりも低い沸点を持っており、水と共に蒸発させうるので、好ましい。そして、この水性分散液に炭素数5〜18の脂肪酸を添加混合する。炭素数5〜18の脂肪酸が粉末として取り扱われるときには、この粉末を添加混合すればよい。また、炭素数5〜18の脂肪酸が液状として取り扱われるときには、この液状物を添加混合すればよい。脂肪酸を添加混合する方法としては、この他に、予め、脂肪酸を水及び/又はアルコールに溶解又は懸濁させて脂肪酸溶液の形で添加混合してもよい。なお、アルコールとしては前記と同様の理由でエタノール等の低級アルコールを使用するのが好ましい。脂肪酸を添加混合した後、ポリビニルアルコールが溶解しているポリビニルアルコール水溶液等の接着剤成分を含む水性接着剤液を添加混合する。そして、最後に界面活性剤を粉末、水溶液又は水分散液の形で添加混合する。以上のようにして得られたスラリー液を、浸漬法、塗布法又は噴霧法等の従来公知の手段で、シート状物に付与する。そして、乾燥して、スラリー液中の水及びアルコールを蒸発させると、微粒子状の抗ウイルス剤が、接着剤成分によってシート状物に付着せしめられるのである。
また、接着剤成分としてポリオレフィン樹脂を用いるときは、数平均粒子径が1μm以下の微粒子状のポリオレフィン樹脂が水系溶媒に分散している水系分散液を、接着剤成分を含む水性接着剤液として用いればよい。この水系分散液も、水及びアルコールよりなる水系溶媒に、微粒子状のポリオレフィン樹脂を分散させて準備すればよい。アルコールを併用するのは、前記したのと同様の理由であり、かつ微粒子状のポリオレフィン樹脂の分散性を向上させるためである。また、使用するアルコールも、前記したのと同様の理由で、エタノール等の低級アルコールであるのが好ましい。
微粒子状の抗ウイルス剤に対する脂肪酸の配合割合は、微粒子状の抗ウイルス剤100質量部に対して、脂肪酸が1〜80質量部が好ましく、特に1〜40質量部が好ましい。また、微粒子状の抗ウイルス剤に対する界面活性剤の配合割合は、微粒子状の抗ウイルス剤100質量部に対して、界面活性剤が1〜20質量部であるのが好ましい。脂肪酸に対する界面活性剤の配合割合は、脂肪酸100質量部に対して、1〜100質量部であるのが好ましい。この程度の配合割合が、抗ウイルス活性の長時間持続性とウイルス含有水のシート内部への取り込み性とのバランスが良好となる。
シート状物としては、不織布、紙、編織物等の任意の素材のものが用いられる。タオルやカーテン等の素材として用いられるシート状物には、不織布や編織物が多いので、これらを用いるのが好ましい。本発明では、抗ウイルス剤の接着性(抗ウイルス剤の付着量やその接着力)の向上を目的として、ポリオレフィン樹脂微粒子からなる接着剤成分を併用することがあるため、不織布や編織物としても、ポリオレフィン系繊維よりなるものを用いるのが好ましい。ポリオレフィン系繊維としては、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維を挙げることができる。特に、不織布の場合には、芯成分が高融点のポリエステルよりなり、鞘成分が低融点のポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンよりなる芯鞘型複合長繊維を用いるのが好ましい。このような芯鞘型複合長繊維を用いると、鞘成分のみの融着によって長繊維相互間が結合させて不織布を得ることができ、風合いを硬化させずに、形態安定性のよい不織布が得られるからである。
本発明に係る抗ウイルス剤担持シートは、任意の用途に用いられる。たとえば、シート状物として不織布や編織物を用いた場合には、不織布や編織物が従来用いられている種々の用途、たとえばカーテン、包帯、手術用ガウン、ベッドシーツ、タオル、手袋、カーペット、エアーコンディショナーのフィルター材等に用いることができる。また、シート状物として紙を用いた場合にも、紙が従来用いられている種々の用途、たとえば壁紙やペーパータオル等に用いることができる。
本発明に係る抗ウイルス剤担持シートは、ヒドロキシラジカルを発生する微粒子状の焼成ドロマイトよりなる抗ウイルス剤が、炭素数5〜18の脂肪酸及び界面活性剤と共に、シート状物に付着せしめられている。炭素数5〜18の脂肪酸は、微粒子状の抗ウイルス剤からのヒドロキシラジカルの発生を長時間持続しうるようになる。また、界面活性剤は担持シート表面を親水性にし、そこに付着したウイルス含有水は、シート内部に取り込まれる。したがって、豚インフルエンザウイルス等のウイルスが担持シートに付着しても、長時間に亙ってヒドロキシラジカルによるウイルスの不活化が可能となると共に、このウイルスが担持シート内部に取り込まれる。よって、本発明に係る抗ウイルス剤担持シートは、抗ウイルス活性が長時間持続すると共に表面にウイルスが残存しにくいので、他の物品や身体と接触して感染が拡大するのを防止しうるという効果を奏する。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、ヒドロキシラジカルを発生する微粒子状の抗ウイルス剤を炭素数5〜18の脂肪酸及び界面活性剤を併用してシート状物に付着しておくと、ヒドロキシラジカルの発生を長時間持続しうると共にウイルスをシート内部に取り込むことが可能になるとの知見に基づくものとして、理解されるべきである。
実施例1
微粒子状の抗インフルエンザウイルス剤(モチガセ社製、商品名「BR−p3」)4.5gが水25.5gに分散している分散液を攪拌しながら、エタノール13.2gを添加して、水及びエタノールよりなる水系溶媒に抗インフルエンザウイルス剤が分散している水性分散液を準備した。この水性分散液にステアリン酸粉末0.45gを添加し撹拌して混合した。一方、ポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製、商品名「JF−03」)0.225gを水に溶解させて、固形分濃度10質量%としたポリビニルアルコール水溶液2.25gを前記水性分散液に添加し、十分に攪拌して混合した。その後、攪拌しながら、下記方法によって調製されたポリオレフィン樹脂微粒子が分散した水系分散液(固形分濃度25質量%)2.7gをゆっくり添加混合した。さらにその後、アセチレングリコール含有水溶液(日信化学工業株式会社製、商品名「オルフィンWE−003」、濃度50質量%)0.27gを添加し混合して、スラリー液を得た。このスラリー液中における抗インフルエンザウイルス剤の濃度は約9質量%であり、ポリビニルアルコールの濃度は約0.5質量%であり、ポリオレフィン樹脂微粒子の濃度は約1質量%であり、ステアリン酸の濃度は約1質量%であり、アセチレングリコールの濃度は約0.3質量%である。
[ポリオレフィン樹脂微粒子が分散した水系分散液の調製]
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた攪拌機を用いて、100gのポリオレフィン樹脂(アルケマ社製、商品名「ボンダイン HX−8290」)、有機溶媒として120gのエタノール、塩基性化合物として3.36gの85%水酸化カリウム及び170gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、攪拌翼の回転速度を300rpmとして攪拌し、ポリオレフィン樹脂微粒子を水中に浮遊させた。そして、この状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。系内温度を120℃に保って、さらに60分間攪拌した。その後、水浴に漬けて、回転速度300rpmを保ったまま攪拌しつつ、室温(約25℃)まで冷却した。最後に、300メッシュのステンレス製フィルター(平織組織で線径0.035mm)を用いて加圧濾過(空気圧0.25MPa)した。得られたポリオレフィン樹脂微粒子が分散した水系分散液は乳白色であり、微粒子の数平均粒子径は約0.06μmであった。
なお、ここで使用したポリオレフィン樹脂は、エチレン80質量%、アクリル酸エチル18質量%、無水マレイン酸2質量%より構成された共重合体であり、融点は81℃のものである。
上記方法で得られたスラリー液を、スパンボンド不織布(ユニチカ社製、商品名「エルベス S0503WDO」、目付50g/m2)上にバーコーターを用いて塗布した後、115℃で90秒間乾燥して、スパンボンド不織布(シート状物)に抗インフルエンザウイルス剤が付着した試験片1を得た。ここで用いているスパンボンド不織布は、芯成分がポリエステルで鞘成分がポリエチレンよりなる芯鞘型複合長繊維で構成されたものであり、部分的にポリエチレンの融着によって生じた熱融着区域を持っているものである。なお、スパンボンド不織布に対する抗インフルエンザウイルス剤、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン樹脂微粒子、ステアリン酸及びアセチレングリコールの付着量は、合計約20g/m2であり、各々は以下のとおりであった。すなわち、抗インフルエンザウイルス剤の付着量は約15g/m2であり、ポリビニルアルコールの付着量は約0.75g/m2であり、ポリオレフィン樹脂微粒子の付着量は約2.25g/m2であり、ステアリン酸の付着量は約1.5g/m2であり、アセチレングリコールの付着量は約0.5g/m2であった。したがって、抗インフルエンザウイルス剤100質量部に対するステアリン酸の付着量は約10質量部であり、アセチレングリコールの付着量は約3質量部である。
比較例1
ステアリン酸粉末及びアセチレングリコールを添加しない他は、実施例1と同様の方法で対照試験片1を得た。
比較例2
アセチレングリコールを添加しない他は、実施例1と同様の方法で対照試験片2を得た。
[濡れ性の評価]
試験片1、対照試験片1及び対照試験片2の表面にスポイドで水滴1滴(50〜70μL程度)を垂らし、その水滴が完全に試験片表面から内部に染み込むまでの時間を計測し、この結果を以下に示す5段階の基準で評価し、表1に示した。
●・・・即座に染み込む。
◎・・・10秒以内に染み込む。
○・・・10秒〜30秒で染み込む。
△・・・30秒〜3分で染み込む。
×・・・3分以上かかる。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試験片1 対照試験片1 対照試験片2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
濡れ性 ◎ ◎ △〜×
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[抗インフルエンザウイルス活性評価]
抗インフルエンザウイルス活性は炭酸ガスと接触すると低下していくことが知られているため、試験片1、対照試験片1及び対照試験片2を所定時間炭酸ガスに接触させた後の抗インフルエンザウイルス活性を評価した。具体的には、二酸化炭素インキュベーター(31℃、二酸化炭素濃度20%に設定)内に、各試験片を静置し、30分間隔で各試験片を切り出した。そして、抗インフルエンザウイルス活性と試験片のpHとの間に相関関係があること、すなわち、抗インフルエンザウイルス活性があると試験片にチモールフタレイン指示薬を噴霧したとき発色することが知られているため、切り出した試験片にチモールフタレイン指示薬を噴霧し、20分経過後の発色の有無を観察した。この結果を以下の基準で三段階で評価し、表2に示した。
○・・・発色あり
△・・・一部発色あり
×・・・発色なし
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
切出時間 試験片1 対照試験片1 対照試験片2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
0分 ○ ○ ○
60分 ○ △ ○
120分 △ × ○
180分 △ × △
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表1及び表2の結果から、試験片1は脂肪酸を使用していない対照試験片1と同程度の濡れ性であることが分かり、かつ、脂肪酸を使用している対照試験片2と同程度、抗インフルエンザウイルス活性が持続していることが分かる。したがって、試験片1は、抗インフルエンザウイルス活性を長時間持続しうると共に、表面にインフルエンザウイルスを含有した水が付着した場合、インフルエンザウイルスをシート内部に取り込みやすいことが分かる。
実施例2
ステアリン酸粉末を4.5gを66gのエタノールに溶解させたステアリン酸溶液を準備した。そして、このステアリン酸溶液7.05gを、実施例1で用いたステアリン酸粉末0.45gに代え、その他は実施例1と同様の方法で試験片2を得た。なお、抗インフルエンザウイルス剤等の付着量は実施例1と同一である。
実施例3
アセチレングリコール含有水溶液0.27gに代えて、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール含有界面活性剤(楠本化成株式会社製、商品名「AGITAN350」)0.135gを用いる他は、実施例2と同様の方法で試験片3を得た。なお、抗インフルエンザウイルス剤等の付着量は、抗インフルエンザウイルス剤100質量部に対して、アセチレングリコールの付着量が約3質量部であったのが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの付着量が約3質量部に変更された他は、実施例2と同一である。
実施例4
アセチレングリコール含有水溶液0.27gに代えて、アルキルスルホコハク酸ナトリウム含有水溶液(サンノプコ株式会社製、商品名「ノプコウェット50」、濃度50質量%)0.45gを用いる他は、実施例2と同様の方法で試験片4を得た。なお、抗インフルエンザウイルス剤等の付着量は、抗インフルエンザウイルス剤100質量部に対して、アセチレングリコールの付着量が約3質量部であったのが、アルキルスルホコハク酸ナトリウムの付着量が約5質量部に変更された他は、実施例2と同一である。
実施例5
アセチレングリコール含有水溶液0.27gに代えて、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム含有水溶液(花王株式会社製、商品名「ペレックスOT−P」、濃度70質量%)0.32gを用いる他は、実施例2と同様の方法で試験片5を得た。なお、抗インフルエンザウイルス剤等の付着量は、抗インフルエンザウイルス剤100質量部に対して、アセチレングリコールの付着量が約3質量部であったのが、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムの付着量が約5質量部に変更された他は、実施例2と同一である。
比較例3
ステアリン酸溶液7.05gをエタノール6.6gに変更し、かつ、アセチレングリコール含有水溶液を用いない他は、実施例2と同一の方法で対照試験片3を得た。
比較例4
アセチレングリコール含有水溶液を用いない他は、実施例2と同一の方法で対照試験片4を得た。
試験片2〜5、対照試験片3及び対照試験片4について、試験片1の場合と同様にして濡れ性を評価した。この結果を表3に示した。
[表3]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試 験 片 対照試験片
━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━
2 3 4 5 3 4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
濡れ性 ●〜◎ ◎ ○〜△ ◎〜○ ◎〜○ ×
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試験片2〜5、対照試験片3及び対照試験片4について、試験片1の場合と同様にして抗インフルエンザウイルス活性を評価した。この結果を表4に示した。
[表4]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
試 験 片 対照試験片
切出時間 ━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━
2 3 4 5 3 4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
0分 ○ ○ ○ ○ ○ ○
30分 ○ ○ ○ ○ △ ○
60分 ○ × ○ ○ × ○
90分 ○ ○ ○ ○
120分 △ △ ○ ○
150分 × × ○ ○
180分 △ △
210分 △ △
240分 △ △
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表3及び表4の結果から、試験片2〜5は脂肪酸を使用していない対照試験片3と比べて、濡れ性は同程度であるが、抗インフルエンザ活性は長時間持続している。また、試験片2〜5は、脂肪酸を使用している対照試験片4と比べて、濡れ性が大幅に向上し、抗インフルエンザ活性は同程度であるか又は短時間しか持続していない結果となっている。つまり、試験片2〜5は、抗インフルエンザ活性の持続性を若干犠牲にしながら、表面にインフルエンザウイルスを含有した水が付着した場合、インフルエンザウイルスをシート内部に取り込みやすくしたものである。

Claims (8)

  1. ヒドロキシラジカルを発生する微粒子状の焼成ドロマイトよりなる抗ウイルス剤、炭素数5〜18の脂肪酸及び界面活性剤を、接着剤成分としてのポリビニルアルコール及び/又はポリオレフィン樹脂によって、シート状物に付着させたことを特徴とする抗ウイルス剤担持シート。
  2. 抗ウイルス剤が抗インフルエンザウイルス剤である請求項1記載の抗ウイルス剤担持シート。
  3. 脂肪酸が、ステアリン酸又はカプリル酸である請求項1記載の抗ウイルス剤担持シート。
  4. 界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルコール型非イオン界面活性剤である請求項1記載の抗ウイルス剤担持シート。
  5. ポリオレフィン樹脂が、以下に示す(A1)及び(A2)を含むモノマーを共重合してなる共重合体である請求項記載の抗ウイルス剤担持シート。
    (A1):不飽和カルボン酸又はその無水物
    (A2):炭素数2〜6のアルケン
  6. シート状物が不織布又は編織物である請求項1乃至のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤担持シート。
  7. 不織布の構成繊維が芯鞘型複合長繊維であって、芯成分がポリエステルであり、鞘成分がポリオレフィンである請求項記載の抗ウイルス剤担持シート。
  8. ヒドロキシラジカルを発生する微粒子状の焼成ドロマイトよりなる抗ウイルス剤を水及びアルコールよりなる水系溶媒に分散させた水性分散液に、粉末状又は液状の炭素数5〜18の脂肪酸を添加混合するか、或いは炭素数5〜18の脂肪酸をアルコールに溶解した脂肪酸溶液を添加混合した後、接着剤成分としてのポリビニルアルコール及び/又はポリオレフィン樹脂を含む水性接着剤液を添加混合し、最後に界面活性剤を添加混合して得られたスラリー液を、シート状物に付与した後、該スラリー液中の水及びアルコールを蒸発させることを特徴とする抗ウイルス剤担持シートの製造方法。
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