しかしながら、特許文献1のロック装置においては、背支桿101と共に回動軸112を中心に揺動する扇形ギア状のロック受部材103の係合溝102に、座受部材113の内壁面に固定されている基台114上を直線的に前後動するロック部材104の先端をばねの力で押し込み嵌入させることで係合させるようにしているので、ロック部材104が基台114上に片持ち支持される構造となるため、支持剛性が弱いという問題を伴う。これを解消するためには、剛性を確保するためにロック部材104を厚くする必要が生じ、その分だけロック受部材103側も係合溝102の溝幅の拡大に伴い大型化する問題がある。また、2点支持とする場合には、部品点数が多くなる問題が伴う。
また、直線的に水平面内を往復動するロック部材104と垂直面内で揺動する扇形ギア状のロック受部材104の係合溝102とを嵌合させてロックさせる構造のため、ロック部材104と係合溝102とのクリアランスを大きめにとらないと、ロック動作やロック解除動作がスムーズにならない。このため、ロック部材104と係合溝102との嵌合状態におけるがたつきが大きくなり、それを回避するための構造上の対策が必要となる。
また、複数の係合溝102が形成された扇形ギア状のロック受部材104が背支桿101と共に回動軸112を中心に揺動させられるので、大きな空間を必要とし、ロック機構を覆うカバーあるいは座受け部材103として比較的大形なものを必要とする。このため、座受け部材103あるいはその周辺の空間のスリム化を図ることができない。
さらに、特許文献1記載のロック装置によると、ロック部材受け103を背支桿101と共に回動軸112の六角柱状部に固定する一方、座受部材113の内壁面に基台114を固定し、尚かつその上にロック部材104、切換手段105、ロック付勢手段107及び捩りばね108などを搭載してロック機構111の固定側部材を座受部材113の内側に収容する構造であるため、後付けが不可能な構造である。
そこで、本発明は、支持剛性が強く、ロック部材を薄くして小型化が可能な椅子のロッキング機構用ロック装置を提供することを目的とする。また、本発明は、ロック部材と係合溝との嵌合並びに離脱が滑らかな椅子のロッキング機構用ロック装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、後付けが可能な椅子のロッキング機構用ロック装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明は、脚に支持されたベース部材に対して後傾可能に連結された背支持部材を備え、背支持部材の後傾動作の途中でベース部材に背支持部材を固定する椅子のロッキング機構用ロック装置において、ロック装置はベース部材側に取り付けられる固定側部材と背支持部材側に取り付けられる可動側部材とで構成され、可動側部材には回転軸を中心に旋回動作して両端が固定側部材と交差するストッパ部材と該ストッパ部材を旋回動作させる駆動部とを備え、固定側部材側にはストッパ部材の両端部が嵌まり込む孔または凹部を背支持部材の回転方向に複数段備えるようにしている。
ここで、ロック装置には、ストッパ部材を固定側部材の孔または凹部に向けて付勢する第1のばねと、ストッパ部材と駆動部との間に介在され駆動部の動きをストッパ部材に伝達する第2のばねとを備え、駆動部のロック動作あるいはロック解除動作に対してストッパ部材が追従できないときには第2のばねの伸縮により駆動部とストッパ部材との連係動作を切り離すと共に駆動部の変位を吸収してばね力として蓄え、ストッパ部材にかかる固定側部材との間の摩擦力が軽減されたときに第2のばねに蓄えられたばね力でストッパ部材を旋回させるものであることが好ましい。
また、本発明の椅子のロッキング機構用ロック装置は、可動側部材及び固定側部材がベース部材並びに背支持部材とは独立したユニットとして構成され、ベース部材並びに背支持部材に対して着脱が自在であることが好ましい。
また、可動側部材は、ベース部材に背支持部材をロッキング可能に連結する回転軸が貫通させられる孔と回転軸よりも前方に突出した背支持部材の先端に備えられるピンと係合する軸受け凹部及びストッパ部材の両端を通過させるための孔が設けられた左右一対の側壁部とストッパ部材を支持するベース天板とから成る溝形ベースフレームを有し、他方、固定側部材は、可動側部材のストッパ部材の両端部が嵌まり込む孔または凹部が背支持部材の回転方向に複数段備えられた左右一対の側壁部と両側壁部の外側でベース部材のロック装置を嵌め込む空所の周りに固定するためのフランジ部とを備える溝形フレームで構成されることが好ましい。
さらに、可動側部材と固定側部材とは、ベース部材に背支持部材をロッキング可能に連結する回転軸よりも前方でベース部材と背支持部材との間に組み付けられ、可動側部材の溝形ベースフレームを跨ぐように固定側部材の溝形フレームを配置して、固定側部材の溝形フレームの内側に可動側部材の溝形ベースフレームが収容されるようにしたものであることが好ましい。
さらに、本発明は、請求項1から5のいずれか1つに記載の椅子のロッキング機構用ロック装置を組み込んだ椅子である。
本発明の椅子のロッキング機構用ロック装置によれば、ストッパ部材は回転運動によりその両端を固定側部材に同時に係合させてロックが成立するので、ロック部材と係合溝との嵌合並びに離脱を滑らかなものとして、動作不良が少なく強度的に強いロック装置を構成できる。しかも、1枚のストッパ部材の回転運動で両端でのロックを完了することができるので、部品点数が少なく、シンプルな構造にできると共に2点で固定するのでストッパ部材の厚みを薄くすることも可能となる。
また、可動側部材側にストッパ部材を装備して背支持部材と共に回動するようにしているので、大容積となる固定側部材を移動させる場合に比べて場所をとらずに済み、ロック装置そのもののコンパクト化が可能となると共に占有スペースを小さくすることができる。依って、座下のスペースの有効利用が可能となると共に大きな空間を必要とせず、ロック装置を覆うカバーあるいは座受け部材として比較的小形なもので足りるので、座受け部材あるいはその周辺の空間のスリム化を図ることができる。
また、請求項3記載の発明にかかるロック装置によれば、可動側部材及び固定側部材を椅子のベース部材並びに背支持部材とは独立して構成しそれぞれベース部材と背支持部材に取り付け可能な構造とされているため、ベース部材に可動側部材と固定側部材とをそれぞれ嵌入する空所と固定側部材のフランジ部を固定するボルトを通すねじ穴を備えていれば、複雑な構造物がベース部材上に存在しないことから、容易に後付けできる。
また、請求項4記載の発明にかかるロック装置によれば、可動側部材の両側壁部の後端の孔に回転軸を貫通させると共に背支持部材の先端のピンに両側壁部の軸受け凹部を宛がうことで、可動側部材が背支持部材と一体化されて背支持部材と連動するように構成され、他方、ベース部材の空所に固定側部材を嵌入してフランジ部をベース部材にねじ止めすれば、可動側部材の溝形ベースフレームを跨ぐように固定側部材の溝形フレームが設置されて、回転軸を中心として同じ旋回軌跡に可動側部材のストッパ部材とその両端を通過させるための孔並びにストッパ部材の両端部が嵌まり込む固定側部材の孔または凹部が配置される。したがって、椅子のベース部材と背支持部材との間に簡単に組み付けることができる。
また、請求項5記載の発明にかかるロック装置によれば、可動側部材と固定側部材とは、ベース部材に背支持部材をロッキング可能に連結する回転軸よりも前方でベース部材と背支持部材との間に組み付けられ、可動側部材の前記溝形ベースフレームを跨ぐように固定側部材の溝形フレームを配置して、固定側部材の溝形フレームの内側に可動側部材の溝形ベースフレームが収容されるようにしているので、椅子のベース部材と背支持部材との間に組み付けた状態で場所をとらない。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に本発明の椅子のロッキング機構用ロック装置の一実施形態を示す。この実施形態のロック装置31は、図5に示すように、脚1に支持されたベース部材2に対して後傾可能に連結された背支持部材4を備え、背支持部材4の後傾動作の途中でベース部材2に背支持部材4を固定する椅子のロッキング機構において、ベース部材2に背支持部材4をロッキング可能に回転軸7で連結すると共に回転軸7よりも前方でベース部材2と背支持部材4との間に組み付けられるものである。
本実施形態において、ロック装置31は、ベース部材2側に取り付けられる固定側部材33と背支持部材4側に取り付けられる可動側部材32とで構成され、可動側部材32側には回転軸38を中心に旋回動作して両端37aが固定側部材33と交差するストッパ部材37と該ストッパ部材37を旋回動作させる駆動部51とを備え、固定側部材33側にはストッパ部材37の両端部37aが嵌まり込む孔34または凹部が両側壁にそれぞれ背支持部材4の回転方向に複数段備えられている。
ここで、固定側部材33は、下方が開口された溝形のフレーム71によって構成され、鉛直方向に垂下する左右一対の側壁部70に放射状に3つの孔34がそれぞれ設けられると共に、両側壁部70の外側には外方へ向けて突き出しベース部材2に跨るフランジ部35が備えられている。本実施形態では、孔34は回転軸7を中心とした円周上に等間隔で3つ設けられているが、この孔数、孔のピッチに限るものではない。この固定側部材33は、ベース部材2の左右のビーム部分に跨るようにフランジ部35を搭載して、透孔72に通したボルト36でベース部材2に固定することにより、ベース部材2の中央の空所62に孔34を開けた側壁部70を落とし込むように配置される。また、可動側部材32は、下方が開口された溝形ベースフレーム69によって構成され、鉛直方向に垂下する左右一対の側壁部67の後端に回転軸7を貫通させる孔63と背支持部材4の回転軸7よりも前方に突出した先端に備えられるピン例えば反力ばね16の一端を受け止める連結ピン13に係合する軸受け凹部64が設けられている。また、可動側部材32の両側壁67には、ストッパ部材37の両端37aを通過させるための孔50がそれぞれ1箇所ずつ形成されている。可動側部材32は、後端の孔63に回転軸7を貫通させると共に連結ピン13に軸受け凹部64を宛がうことで背支持部材4と一体化され、背支持部材4と連動するように構成される。この可動側部材32の孔50と固定側部材33の孔34とは、共にプレート状のストッパ部材37の厚みよりも僅かに大きな孔としてがたつきを少なくすることが好ましい。尚、可動側部材32のストッパ部材37や駆動部51並びに操作ワイヤ48等は可動側部材32の溝形ベースフレーム69の天井部68に支持される。また、ストッパ部材37は操作ワイヤ48を介して着座者の近傍に配置された操作レバーなどで操作される。
ここで、ロック装置31には、機構中にばねを介在させることによって自己保持機能を持たせることが好ましい。自己保持機構は、例えば図1〜図2(あるいは図6及び図7)に示すように、ストッパ部材37を固定側部材33側の孔34または凹部に向けて付勢する第1のばね44と、ストッパ部材37と駆動部51との間に介在され駆動部51の動きをストッパ部材37に伝達する第2のばね45とを備え、駆動部51のロック動作あるいはロック解除動作に対してストッパ部材37が追従できないときには第2のばね45の伸縮により駆動部51とストッパ部材37との連係動作を切り離すと共に駆動部51の変位を吸収してばね力として蓄え、ストッパ部材37にかかる固定側部材33との間の摩擦力が軽減されたときに第2のばね45に蓄えられたばね力でストッパ部材37を旋回させるものである。尚、ロック装置の自己保持機能とは、図示していない操作レバーなどの操作でロック状態が駆動系では切り替えられたとしても、ストッパ部材37が切り替えられない状況にある時には、ストッパ部材37が旋回し得る状況になるまで、駆動部51の状態を保持することを意味する。第1のばね44は第2のばね45よりも弱く、同じ方向に作用する力で先に第1のばね44が縮んだ後に第2のばねが縮む強さ関係を有していることが好ましい。
本実施形態におけるロック装置31の自己保持機構は、ストッパ部材37を挟んで第1のばね44と第2のばね45とが反対側に配置するようにしたものである。第1のばね44は、ねじりコイルばねから成り、ストッパ部材37の旋回中心となる回転軸38と同心状に配置されて、一端がストッパ部材37の縁に引っ掛けられると共に他端が可動側部材32の天井の孔57に引っ掛けられて、ストッパ部材37を固定側部材33の孔34または凹部に向けて常時付勢するように設けられている。
他方、第2のばね45を含む駆動部51は、ストッパ部材37に設けられた長孔56に嵌入される連結ピン39を介してストッパ部材37の旋回方向にのみ係合される第2のスライダ41’と、この第2のスライダ41’と同方向に前後方向に駆動可能な第1のスライダ40’と、操作ワイヤ48によって第1のスライダ40’を前後方向に駆動する揺動レバー53と、第2のスライダ41’をストッパ部材37に向けて前後動可能に支持するガイド55とから構成されている。第2のスライダ41’は第2のばね45を収容する筺形を成すと共に、前端に連結ピン39を有するストッパ部材37の下に潜り込み連結板が突出するように設けられている。この第2のスライダ41’の後半部の底部は解放されており、第1のスライダ40’が内方に挿入されて第2のばね45を押すようにして前後動可能に設けられている。また、第2のスライダ41’の後退時のストロークエンドはガイド55の縁に当接することで規制されている。ガイド55は第2のスライダ41’をストッパ部材37に向けて前後動可能に支持するためのものであり、ストッパ部材37側に向かう面だけが開放されて周囲の3面が包囲された溝状の空間を区画している。ガイド55は、左右の側壁の一方に突起65を設けると共に他方の側壁にブラケット66を備え、可動側部材32の側壁に設けられている孔に前述の突起65を嵌め込むと共に可動側部材32の天井面にブラケット66をねじ73で止め付けることで、可動側部材32に固定されている。揺動レバー53はガイド55の左右の側壁からそれぞれ突出する凸部52が軸受け孔54に挿入されることによって揺動可能に支持されている。また、揺動レバー53の先端側には、ワイヤ係止ブロック47が設けられ、ガイド55に形成されたワイヤ保持用ブラケット49に固定されたワイヤ48の先端の玉が引っ掛けられている。
このロック装置31は、ストッパ部材37を固定側部材33側の孔34に向けて復元させ嵌入されるように常時付勢する第1のばね44と、ストッパ部材37と連係動作する第2のスライダ41’と操作ワイヤ48によって駆動される第2のスライダ41’との間に配置されて第1のスライダ40’の動きを第2のスライダ41’に伝達する第2のばね45とで自己保持機能が実現される。尚、第1のばね44は第2のばね45よりも弱く、同じ方向に作用する力で先に第1のばね44が縮んだ後に第2のばねが縮む強さ関係を有していることが好ましい。
このロック装置31によれば、ストッパ部材37が時計回転方向に旋回して固定側部材33の孔34から離脱したロック解除状態は、第2のスライダ41’がストッパ部材37と共に図2上左側へ移動した状態であると共に第1のばね44が捻られた状態にある。このとき、第1スライダ40’と揺動レバー53とは、操作ワイヤ48が引っ張られて図1上反時計回転方向に回転している状態にある。そこで、ロック状態に切り替えるため、操作ワイヤを伸張(解放)すると、揺動レバー53並びに第1のスライダ40’が解放され、第1のばね44の力でストッパ部材37が反時計回転方向へ旋回させられると共に第2のスライダ41’並びに第1のスライダ40’も図1の状態に押し戻される。このとき、可動側部材32の位置が固定側部材33の孔34の位置と一致していないと、ストッパ部材37の両端部37aが固定側部材33の両側壁に当接してストッパ部材37が旋回できない状態となり、ストッパ部材37の先端37aが可動側部材32の側壁に押し当てられた状態で保持される。しかし、背支持部材4の後傾あるいは復元動作により可動側部材32の孔34がストッパ部材37の位置に合致したとき、第1のばね44の力でストッパ部材37が反時計回転方向に回転して可動側部材32の孔34に嵌入するロック状態へと切り替わる。同時に、ピン39で連結された第2のスライダ41’並びに第1のスライダ40’も図1の位置に復帰する。
このロック状態から、操作ワイヤ48を引っ張ってロック解除状態に切り替えようとすると、図1において揺動レバー53が反時計回転方向に回転して第1のスライダ40’を前進させ、第2のばね45を圧縮する方向に付勢する。このとき、ストッパ部材37が自由に動ける状態にあれば、第2のばね45を介して第2のスライダ41’及びストッパ部材37が押されて固定側部材33の孔34から抜け出しロック解除状態に切り替わる。しかし、固定側部材33の孔34にストッパ部材37の先端部37aが嵌入された状態で固定側部材33と可動側部材32との間に生ずる摩擦力などで拘束されている場合には、第1のスライダ40’の変位量は第2のばね45の変位として吸収され、第2のスライダ41’とストッパ部材37とがそのままの状態に保持されたまま第2のばね45の圧縮が行われる。そして、背支持部材4に何らかの動きが生じることにより上述の摩擦力などが軽減されたとき、第2のばね45の力で第2のスライダ41’とストッパ部材37とが即座に固定側部材33の孔34から押し出されてロック解除状態に切り替わると同時に第1のばね44が捻られ、ストッパ部材37をロック状態に切り替えるためのばね力が蓄えられる。
また、図6〜図11に本発明のロック装置の他の実施形態を示す。この実施形態のロック装置31は、図1及び図2に示す実施形態とは自己保持機構の構成において主に異なる。この実施形態におけるロック装置31の自己保持機構は、ストッパ部材37の一側に第1のばね44並びに第2のばね45を含む駆動部51が全て配置されたものである。
駆動部51は、ストッパ部材37に回転自在に取り付けられてストッパ部材37を直接駆動する第1のスライダ40と、この第1のスライダ40に沿って摺動可能な第2のスライダ41と、第1のスライダ40と第2のスライダ41とを貫通して第1のスライダ40に対して第2のスライダ41を摺動可能に連結する連結軸42と、第1のスライダ41の第2のスライダ42が配置される面の反対側の面に配置されて連結軸の抜け止めを図るスライダ43とから構成されている。第2のばねは、第1のスライダ41の中央に配置されたガイド溝46内に収容され、第1のスライダの後端縁とスライダ43との間で伸縮するように設けられている。第2のばね45は第2のスライダ41が操作ワイヤ48の働きによってストッパ部材37を固定側部材33の孔34から離脱させる方向に引っ張られる際に、連結軸42を介して連動されるスライダ43との間で圧縮される。そして、ストッパ部材37に対して孔34から離脱する方向に常時付勢するばね力を蓄える。第2スライダ41の動きあるいは第1スライダ40の動きは第2のばね45を介して互いに伝達される。したがって、ストッパ部材37が旋回させられようとする方向に拘束されている場合、例えば固定側部材33の孔34にストッパ部材37の先端部37aが嵌入された状態で固定側部材33と可動側部材32との間に生ずる摩擦力などで拘束されたり、あるいは可動側部材32の孔34に向けて付勢されているストッパ部材37の先端37aが孔34の位置と合致していない状態では、第2のスライダ41の変位量は第2のばね45の変位として吸収される。
また、第2のスライダ42には、操作用ワイヤの玉が挿入されて引っ掛けられるワイヤ係止ブロック47が設けられ、可動側部材32に溶接付けなどで固着されたワイヤ保持用ブラケット49に固定されたワイヤの先端が引っ掛けられるように設けられている。第2のスライダ42と可動側部材32と一体のワイヤ保持用ブラケット49との間には操作ワイヤ48と同心状に第1のばね44が配置されている。したがって、操作ワイヤ48が引っ張られることにより、第2のスライダ41が引き寄せられた状態では第1のばね44は圧縮されて、第2のスライダ41を元の位置に戻そうとする力が蓄えられる。
ストッパ部材37は中央に配置された回転軸38を中心に旋回動作することにより、両端37aが固定側部材33の左右の側壁部70の孔34に斜めに差し込まれるようにして同時に嵌入される。このため、ストッパ部材を固定側部材33の側壁部70に直交させるように差し込む場合に比べて滑らかに差し込まれ確実に係合できる。しかも、固定側部材33に対してストッパ部材37の両端で係合されるため、ロック装置31としての構造強度を高くできる。したがって、場合によってはストッパ部材37の厚さを片持ち支持の場合に比べて薄くすることも可能である。さらに、可動側部材32側にストッパ部材37を搭載しているので、複数段の孔34を設けるために高さ方向に面積を要する固定側部材33側を背支持部材4と連動させる場合に比べて遙かにロック装置を装備するための所要空間を小さくすることができる。
このロック装置31によれば、図7〜図9に示すように動作する。図8に非ロック状態を示す。この非ロック状態では、操作ワイヤ48によって第2のスライダ41のみが引っ張られると共にストッパ部材37が自由に動ける状態にあるため、第1のばね44が圧縮され、第2のばね45の反発力で第1のスライダ40のガイド溝46の前端縁まで連結軸42が押された状態でストッパ部材37が固定側部材33の孔34から離脱した状態に保持されている。
ここで、ロック状態に移行するため操作ワイヤ48が伸ばされると、第2のスライダ41が第1のばね44の力で第1のスライダ40側へ押し出されると共に第1のばね44が開放される。このとき、図8に示すように可動側部材32の孔34が固定側部材33の孔34の位置と一致していないと、ストッパ部材37は旋回することができないので、連結ボルト39、第1のスライダ40及び連結軸42も移動できない。このため、第2のばね45を圧縮しながら第2のばね45と第1のばね44との力が調和する位置まで第2のスライダ41が前進して止まる。この状態では、第2のばね45が圧縮された状態であるので、連結軸42(スライダ43)、第1のスライダ40及び連結ボルト39を介してストッパ部材37を図上反時計回転方向へ弾力的に付勢する力を常時負荷することとなるので、ストッパ部材37の先端37aが可動側部材32の側壁に押し当てられた状態で保持される。
そして、背支持部材4の後傾あるいは復元動作により可動側部材32の孔34がストッパ部材37の位置に合致したとき、第2のばね45並びに第1のばね44の力でストッパ部材37の先端37aが可動側部材32の孔34に嵌入してロック状態となる(図7及び図6参照)。このロック状態では、操作ワイヤ48が伸ばされて第2のスライダ41が第1のばね44の力で、第1のスライダ40が第2のばね45の力でそれぞれ押されることにより、第2のスライダ41の連結軸42が第1のスライダ40のガイド溝46の前端縁まで移動して、第1のスライダ40を押し出してストッパ部材37を旋回させているので、第1のばね44と第2のばね45とは共に伸びた状態となっている。
この図7及び図6のロック状態から、操作ワイヤ48を引っ張って非ロック状態に切り替えようとすると、第1のばね44を圧縮しながら第2のスライダ41が引っ張られる。このとき、ストッパ部材37が自由に動ける状態にあれば、第2のばね45を介して第1のスライダ40及びストッパ部材37が固定側部材33の孔34から抜け出し図13に示す非ロック状態に移行する。しかし、ストッパ部材37が旋回させられようとする方向に拘束されている場合、例えば固定側部材33の孔34にストッパ部材37の先端部37aが嵌入された状態で固定側部材33と可動側部材32との間に生ずる摩擦力などで拘束されている場合には、第2のスライダ41の変位量は第2のばね45の変位として吸収され、第1のスライダ40及びストッパ部材37がそのままの状態に保持されたまま第2のばね45の圧縮が行われる(図9参照)。この状態は、操作ワイヤ48は非ロック状態に切り替わっているものの、可動側部材32の孔34から抜け出せない状態のストッパ部材37に対して離脱させるためのばね力だけを付勢し続けているものである。したがって、背支持部材4に何らかの動きが生じることにより上述の摩擦力などが軽減されたとき、第2のばね45の力で第1のスライダ40及びストッパ部材37が即座に引っ張られ、固定側部材33の孔34からストッパ部材37が抜け出し図8に示す非ロック状態に移行することができる。
以上のように構成されたロック装置31は、ロッキング機構を備える椅子のベース部材2並びに背支持部材4とは独立して構成され、それぞれベース部材2と背支持部材4に取り付け可能な構造とされているため、ベース部材にロック装置31が嵌め込まれる空所62と固定側部材33のフランジ35が固定される場所が存在すれば後付可能となる。ベース部材2はボルト36を通すねじ穴(図示省略)と空所62を有しているだけで、反力ばね16もベース部材の前端板20と背支持部材のばね受け部12の連結ピン13との間に横向きで配置するだけなので、複雑な構造物がベース部材2上に存在しないことから、容易に後付けできる。勿論、ロック装置31をベース部材2と背支持部材4との間に椅子の組み立て時に予め搭載しても良いし、ベース部材並びに背支持部材4と予め一体形成することも可能である。
図12〜図13に本発明の椅子のロッキング機構用ロック装置を組み込む背凭れ用反力機構の一実施形態を示す。この背凭れ用反力機構は、椅子の背支持部材4を後傾させる際に座支持部材6を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材4を原位置に復帰させるばね力を負荷する反力ばね16を利用した反力機構とを併用する体重感知式ロッキング機構であり、反力ばね16が背支持部材4の回転軸7よりも前方でかつ背支持部材4と座支持部材6との間に横向きに配置されている。
尚、椅子は、脚1と、脚1に支持されたベース部材2と、背もたれ3が取り付けられた背支持部材4と、座5が取り付けられた座支持部材6とを有し、ベース部材2に対して背支持部材4を回転軸7によって後傾可能に連結する一方、座支持部材6の前方をベース部材2のブラケット58に対して連結ピン8,59で回転自在にリンク10を介して連結すると共に、座支持部材6の後方と背支持部材4の回転軸7よりも斜め上前方へと延出するてこリンク部11とを後部連結ピン9で回転自在に連結し、背支持部材4の回転軸7を中心とする後傾動作によって背支持部材4の前方のてこリンク部11を座支持部材6の後方を後ろ上斜め方向へ持ち上げるように回転させて、座支持部材6の前方に連結されたリンク10を引き起こしながら座支持部材6の前方を持ち上げる体重対応式反力機構を構成している。
背支持部材4は、背凭れ3を支持すると同時に、背凭れ回転軸7を支点として座支持部材6を持ち上げる梃子として機能するものであり、回転軸7よりも前方でかつ回転軸よりも上方にてこリンク部11と連結ピン13を介して反力ばね16の端部を支えるばね受け部12とをそれぞれ設け、着座者が背もたれ3に凭り掛かった際に座支持部材6を持ち上げると共に反力ばね16を縮めて反力を発生させるようにするものである。尚、背支持部材4には、ベース部材2に設けられた回転規制用長孔15を貫通する規制ピン14が備えられ、背支持部材が一定範囲でのみ揺動可能となるようにストローク端を規制するように設けられている。
ベース部材2は、背支持部材4と座支持部材6とを支持して脚1に回転可能に搭載させるためのものであり、少なくとも背支持部材4と座支持部材6とを支持する部位と剛性を備えれば良く、特定の構造や形状などに限定されるものではない。本実施形態の場合、ベース部材2は、脚1の支柱の上端部に締まり嵌めによって固定される円錐筒状の軸受け部を有するベース取付座60の左右に前方へ向けて突出するように配置されるビームの前端を前端板20並びに横板62で連結して、中央にロック装置31あるいはロック装置31と反力ばね16とを配置する空所62を形成したフレーム形状を成している。
ここで、反力ばね16としては、本実施形態では圧縮コイルばねが用いられている。圧縮コイルばねから成る反力ばね16は、図12に示すように、ガイド軸19によって一軸方向に接近離反可能に設けられた一対のばねマウント17,18を介して背支持部材4の先端の反力ばね受け部12の連結ピン13とベース部材2の先端の前端板20との間に横向きに配置されている。したがって、反力ばね16は、背支持部材4のばね受け部12の連結ピン13と座支持部材6の前端板20との間に横向きに配置されため、ばねを長くして支点から作用点までの距離を長くとることができるので、金型用のばねのような強いばねを使わずに済む。一方のばねマウント17には調節ねじ21の先端の球面が嵌り込む凹部が、他方のばねマウント18には連結ピン13と係合する半円状のフックが設けられている。そして、ベース部材2の前端板20には先端が球面に形成された調節ねじ21が備えられ、調節ねじ21の前端板20からの突出量を変えることで反力ばね16の初期圧縮量を調節し、発生する反力の強さを調節可能とされている。また、調節ねじ21の先端の球面は反力ばね16の一方のばねマウント17に設けられる凹部との間で球面座を構成している。したがって、調節ねじ21の出入りにより反力ばね16の傾きを可変にしながら、反力ばね16の初期長さを変化させ、反力調整可能とする。
なお、本実施形態では、反力ばね16の角度調整を可能とするため、ベース部材2の前端板20には調節ねじ21がねじ込まれるねじ孔23を有する調整プレート22が位置決めボルト24と長孔25とを利用して前端板20に沿って上下方向に移動可能に取り付けられているが、反力ばね16の組み付け時に反力ばね16の角度が固定される場合には例えば溶接等により前端板20と調整プレート22とが固着されたり、あるいは前端板20そのものに調節ねじ21を備えるようにしても良い。調節ねじ21は調整プレート22から反力ばね16のばねマウント17に向けて突き出されている。
以上のように構成された背凭れ用反力機構によれば、着座者が背もたれ3に凭り掛かると、反力ばね16を押し縮めながら背もたれ3及び背支持部材4が回転軸7を中心に仮想線で示すように後傾する。同時に、背支持部材4の先端のてこリンク部11及びリンク10によって座支持部材6が持ち上げられようとするため、座5にかかる着座者の体重が背もたれ3を押し戻す力に変換されて背支持部材4に反力として作用する。このため、体重の重い人ほど背もたれを後傾させるのに大きな力が必要になり、体重の軽い人ほど背もたれを後傾させるのに小さな力で済む。つまり、背もたれを後傾させる力に対するロッキング反力として着座者の体重に応じた大きさのものを得ることができる。一方、着座者が上体を起こそうとすると、体重に起因するロッキング反力の作用と共に反力ばね16が伸びて背支持部材4が前方に起こされる。
この構成によると、背支持部材4の傾斜角度の増加に伴いばねの角度が寝てくるので、発生するロッキング反力は一定値に近づいてくる。その反面、背凭れにかかる着座者の体重は背凭れの角度が寝てくるため増加する。即ち、背もたれが後ろに倒れるに従ってばねの角度が寝てくるので、次第に背支持部材によって加えられる反力ばねの圧縮量が少なくなって反力ばねで発生する背凭れを元位置に押し戻そうとする力が相対的に弱まる。このため、ストロークエンド付近でばねが効いている感じ即ち押し戻されるような反発感のない反力特性が得られる。つまり、一般的には高級感があると言われているばねらしさのないロッキング反力が得られる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、体重感知式ロッキング機構に適用した例を挙げて主に説明したが、これに特に限定されるものではく、反力ばねのみで背凭れを支持する一般的な反力機構を用いる場合にも適用できることは言うまでもない。また、上述の実施形態においては、回転軸38の前方にロック装置31を配置した例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、回転軸よりも後方側に配置するようにしても良い。また、上述の実施形態においては、回転軸38の前方に反力ばね16を配置した例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、図14に示すように回転軸よりも後方側に反力ばね16を配置する場合においても、回転軸38よりも前方のベース部材2と背支持部材4との間若しくは回転軸38よりも後方側のベース部材2と背支持部材4との間にロック装置31を配置するようにしても良い。