JP5609063B2 - 棒鋼の圧延方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、仕上げ圧延前に予備水冷を行ってもよいことが記載されているが、冷却による鋼材内部の温度変化については言及されていない。また、かかる冷却をどの段階で行うべきかについては指針がない。
さらに、特許文献3に開示の冷却制御技術では、冷却後の鋼材の温度を復熱により均一化させるように制御している。
しかしながら、引用文献3に開示されている技術では、冷却開始後、決められた時間経過後の鋼材の温度を、冷却時の冷却水量で制御しようとしているので、被冷却材が大断面である場合には、冷却水量で制御しようとしても、十分な冷却は望めないという問題がある。
1.連続鋳造したブルームを粗圧延して棒鋼の圧延用素材としたのち、該圧延用素材に仕上げ圧延を施して棒鋼を製造するに際し、
粗圧延直後の圧延用素材に対して、表面温度をMS点超 Ar3点以下まで冷却する冷却処理を施すと共に、該冷却処理後、仕上げ圧延開始までに下記式(1)の範囲を満足する待機時間t(秒)を設け、復熱により圧延用素材の表面温度をAc3点以上、(Ac3点+50℃)以下に調整したのち、仕上げ圧延に供することを特徴とする棒鋼の圧延方法。
記
0.15×D−8.2 ≦t≦ 1.5×D−63.6 --- (1)
但し、Dは粗圧延後の圧延用素材の断面短辺寸法(mm)
また、本発明では、粗圧延終了後、仕上げ圧延開始までの間隔を、粗圧延後の素材の断面寸法を考慮して決定するので、仕上げ温度の安定化が達成される。
さらに、本発明に従い、粗圧延後から仕上げ圧延までの圧延用素材の移送距離を、圧延用素材の長さの2倍以上とすることにより、冷却と復熱を粗圧延と仕上げ圧延のタイミングと非同期とすることができるので、適切な仕上げ圧延温度の調整が可能となる。
図1に、本発明の実施に用いて好適な圧延設備を模式で示す。図中、符号1は連続鋳造鋳片(ブルーム)、2は加熱炉、3は粗圧延機、4は仕上げ圧延機、5は冷却装置、6は仕上げ圧延前の圧延用素材、7は製品である棒鋼である。
本発明では、この粗圧延直後の圧延用素材6を、その表面温度がMS点超 Ar3点以下の温度になるまで冷却する。
MS点以下まで冷却すると、表面にマルテンサイトが生成して表面割れが生じてしまう。一方、冷却後の表面温度がAr3点超であると、鋼組織の微細化を十分に行えず、材質改善が不十分になる。
0.15×D−8.2 ≦t≦ 1.5×D−63.6 --- (1)
但し、Dは粗圧延後の圧延用素材の断面短辺寸法(mm)
の範囲を満足する待機時間t(秒)を設け、その間の復熱により、圧延用素材の表面温度がAc3点以上、(Ac3点+50℃)以下になるように調整する。好ましくは、(Ac3点+10℃)以上、(Ac3点+50℃)以下の温度範囲である。
ここに、上記 (1)式の待機時間tの下限値は、冷却後の圧延用素材の表面を、完全復熱の2/3まで復熱させるために必要な時間である。
同図に示したとおり、粗圧延の直後に冷却処理を施すと、圧延用素材の表面温度は急激に低下するが、冷却を停止すると、表面温度は次第に上昇していき、一定時間経過後、表面温度は再び低下していく。
冷却停止後、表面温度が上昇していき、再度温度降下を生じるまでの間を復熱過程と呼ぶ。
復熱過程の温度変化を特徴付ける時間のパラメータとして、冷却後、復熱が完了して表面温度が再び下がり始めるまでの時間を復熱完了時間と呼ぶ。
また、待機時間t(秒)が、矩形断面素材の短辺寸法D(mm)(正方形断面の場合は一辺の寸法)に応じて、t=1.5×D−63.6となれば、復熱はほぼ完了することが判明した。従って、待機時間tを(1.5×D−63.6)超にすると、待機時間が無駄に長くなり生産性が悪くなるだけなので、(1.5×D−63.6)を待機時間tの上限とする。
以上のことから、待機時間tは上掲式(1)の範囲を満足させることとしたのである。
同図に示したように、従来の放冷処理による場合は、仕上げ圧延開始までに約650秒もの時間を必要としたのに対し、粗圧延後に水冷を施した場合は、仕上げ圧延の開始時間を大幅に短縮することができる。
また、図4および図5に、120mm×120mmの断面寸法および240mm×240mmの断面寸法に粗圧延した素材に対し、水冷を施した場合の素材表面の復熱現象を示す。
図3〜5から、素材表面の復熱現象は素材の断面寸法によって変化することが分かる。
同図において、復熱2/3時間を復熱時間の下限値、復熱完了時間を復熱時間の上限値とすると、好適な復熱時間tは、素材断面における一辺の長さDとの関係で、前掲式(1)で示されることになる。
なお、断面形状が長方形である場合、短辺寸法が復熱時間に大きく影響することが分かっているので、短辺寸法Dに応じて(1)式を満足するように復熱時間tを調整する。
上記したAc3点〜(Ac3点+50℃)という表面温度範囲は、低温靱性等の材質改善を行う上で必要な温度であり、この温度がAc3点を下回るとα−γ二相域となるが、圧延時にα−γ二相域圧延を行うとαとγの分率によって材質が大きく変動するため、材質にばらつきが生じてしまう。
なお、実際の製造ラインでは目標温度に制御しようとしても若干のばらつきが生じるので、この点を考慮すると、仕上げ圧延を行う際の圧延用素材の実際的な表面温度は(Ac3点+10℃)以上、(Ac3点+50℃)以下とすることが好ましい。
ここに、圧延用素材の表面温度は、放射温度計によって測定することができる。
また、低温靱性の向上は、低温圧延で歪を蓄積させた棒鋼が、圧延後に変態することで組織が微細化することによって達成される。
すなわち、粗圧延機から仕上げ圧延機までの移送ラインの長さは、少なくとも圧延用素材の長さ相当の冷却ゾーンと、冷却後の圧延用素材が復熱を完了するまで待機できる長さ(復熱ゾーン)があればよく、従って、少なくとも圧延用素材の2倍程度(好適には3〜4倍)の長さがあればよい。かかる冷却・復熱ゾーンを設けることにより、冷却と復熱を粗圧延と仕上げ圧延のタイミングに対して非同期とすることができ、その結果、適切な仕上げ圧延温度の調整が可能となる。
このため、製品の径がより太径なため、粗圧延で十分な圧下量を確保できない場合でも、棒鋼の表面近傍については結晶粒を微細にすることが可能となる。
ついで、粗圧延後に水冷処理(スプレー冷却)を施して、圧延用素材の表面温度を500℃まで低下させたのち、30秒間待機させて復熱させたのち、仕上げ圧延を行った(発明例)。仕上げ圧延直前における圧延用素材の表面温度は800℃であった。なお、この鋼材のC量は0.6質量%であり、Ar3点は750℃である。
また、比較のため、粗圧延後に水冷処理を施さず、圧延用素材の表面温度が800℃になるまで650秒間放冷したのち、仕上げ圧延を行った(比較例1)。
さらに、比較のため、粗圧延後に水冷処理(スプレー冷却)を施して、圧延用素材の表面温度を500℃まで低下させたのち、20秒間待機させて復熱させたのち、仕上げ圧延を行った(比較例2)。なお、仕上げ圧延直前における圧延用素材の表面温度は760〜800℃であった。
また、比較例1に比べて、仕上げ圧延時の圧下力を約20%低減することができた。
さらに、発明例と比較例1について、鋼組織および低温靱性の調査を行った結果、本発明法に従った場合および比較例1に従った場合いずれも、棒鋼表層部の組織が同等に微細化され、その結果低温靱性も向上していることが確認された。
また、比較例2の場合は、待機時間が十分ではないため、圧延温度が変動したことに起因して、棒鋼表層部組織の結晶粒径にばらつきが生じており、低温靱性にもばらつきが発生した。
2 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上げ圧延機
5 冷却装置
6 圧延用素材
7 棒鋼
Claims (3)
- 連続鋳造したブルームを粗圧延して棒鋼の圧延用素材としたのち、該圧延用素材に仕上げ圧延を施して棒鋼を製造するに際し、
粗圧延直後の圧延用素材に対して、表面温度をMS点超 Ar3点以下まで冷却する冷却処理を施すと共に、該冷却処理後、仕上げ圧延開始までに下記式(1)の範囲を満足する待機時間t(秒)を設け、復熱により圧延用素材の表面温度をAc3点以上、(Ac3点+50℃)以下に調整したのち、仕上げ圧延に供することを特徴とする棒鋼の圧延方法。
記
0.15×D−8.2 ≦t≦ 1.5×D−63.6 --- (1)
但し、Dは粗圧延後の圧延用素材の断面短辺寸法(mm) - 前記圧延用素材の表面温度を(Ac3点+10℃)以上、(Ac3点+50℃)以下に調整することを特徴とする請求項1に記載の棒鋼の圧延方法。
- 前記粗圧延後から仕上げ圧延開始までの圧延用素材の移送距離を、該圧延用素材の長さの2倍以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の棒鋼の圧延方法。
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