JP5606701B2 - メチレンラクトン類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、メチレンラクトン類の製造方法に関する。より詳しくは、化学、医農薬等の各種産業分野において有用な化合物であるメチレンラクトン類の製造に好適なメチレンラクトン類の製造方法に関する。
エキソメチレン基とラクトン環構造とを有するメチレンラクトン類は、生理活性発現骨格として知られており、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤等の医農薬中間体として期待される他、耐熱性、光学特性、UV硬化性、粘着性、透明性等の特性を有する重合体を製造するための単量体として適用されることが期待されるものである。このような単量体から得られる重合体は、電子情報材料、電池材料、光学材料、レジスト材料、液晶材料、冷媒材料、塗料、接着剤、洗剤ビルダー等の各種化学製品の製造原料や医農薬原料に適用できる可能性がある。このように、メチレンラクトン類は、化学、医農薬等の分野において有用な化合物である。
メチレンラクトン類の合成方法としては、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを触媒の存在下で反応させる方法(例えば、特許文献1参照。)、γ−ブチロラクトン類とホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体とを含む原料ガスを触媒の存在下で気相接触反応する方法(例えば、特許文献2参照。)、アルキリデン無水コハク酸又はアルキル無水マレイン酸を出発原料としてラネーニッケル触媒により接触還元して製造される混合物をシュウ酸エステル及びアルコラートと作用させてα−アルキルオキサリル−β−アルキル−γ−ブチロラクトンのエノール塩を得、さらに得られたエノール塩をホルムアルデヒドと反応させる方法(例えば、特許文献3参照。)等が開示されている。
このように合成されたメチレンラクトン類は、他の合成化学品と同様に副生物や残存合成原料の不純物を含んでいることから、通常では、合成後精製して製造されることになる。特に、メチレンラクトン類は、医農薬中間体や、重合体を製造するための単量体としての利用が期待されることから、充分に精製され、品質の優れたものが求められている。
合成されたメチレンラクトン類を精製する方法としては、合成反応液を57〜60℃、0.3mmHg(40Pa)の比較的低温・高真空下で減圧蒸留することが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、重合禁止剤の存在下で減圧蒸留をすることも開示されている(例えば、特許文献3参照。)が、これら従来技術における文献においては、蒸留を行う際の条件についての詳しい記載はない。
国際公開2008/023823号公報(第1頁) 特開平10−120672号公報(第1−2、5頁) 特開2007−217388号公報(第1、13−15頁)
一般的に合成化学品を精製して製造する場合、精製工程において蒸留精製を行うことが有効な手法であるが、従来のメチレンラクトン類の製造における蒸留工程においては、高真空で比較的低温条件下で行われていたといえる。メチレンラクトン類は重合性二重結合を有することから、高温条件下で蒸留を行えば重合反応を引き起こしてしまい、それを避けるためには、比較的低温で蒸留を行わなければならなかった。実際に、高温で蒸留を行うと、重合禁止剤を添加した場合においても、単に蒸留工程だけによって行った場合は、合成されたメチレンラクトン類を含む反応液の入った容器のボトム部分でメチレンラクトン類の重合が進行してしまうことが判った。
上述した従来技術においては、蒸留を行う際の条件についての詳しい記載がないものがあるが(特許文献3等)、メチレンラクトン類の精製を単に蒸留工程だけによって行う場合、充分に精製されたメチレンラクトン類を得ているのであれば、高真空・低温下で蒸留しているものとしか考えられないといえる。
このように、上述した従来技術におけるメチレンラクトン類の精製は、減圧することにより高真空条件下で蒸留を行っているが、コスト面及び工業的な実施の面で改善の余地があった。すなわち、余りに高真空条件とする場合、そのような条件を工業的に実現するためには特別な設備等を必要とすることから、現実的な精製法といえるものではない。
また更に、メチレンラクトン類から得られる重合体の用途において要求される物性を発現するために、置換基を有するメチレンラクトン類が求められることになるが、高真空条件下での蒸留においては、メチレンラクトン類の置換基の炭素鎖が長くなるに従いその沸点も上昇するために、低温で蒸留を行うためにはさらに高真空にする必要があり、温度を上げずに高真空条件下で蒸留するには限界がある。
したがって、工業的に実施可能な蒸留方法とし、品質に優れた種々のメチレンラクトン類を製造する製法とするための工夫の余地があった。
これらの点を改善した工業的に実施可能な蒸留を行うためには、合成されたメチレンラクトン類を従来行われていたよりも高い温度で蒸留する必要がある。しかし、上述したとおり、単に高温で蒸留を行うと、重合禁止剤を添加した場合においてもメチレンラクトン類の重合が進行してしまうことが判った。すなわち、メチレンラクトン類合成後の反応液を単に高温で蒸留した場合には、重合禁止剤が効果的に働かず、重合禁止剤を添加しても蒸留時にメチレンラクトン類の重合が充分に抑制されない、ということになる。高温条件下ではメチレンラクトン類の重合が速やかに進行するため、合成されたメチレンラクトン類の精製工程として高温での蒸留を行う場合には、そのような条件であってもメチレンラクトン類の重合が充分に抑制されるようにすることが必要不可欠となる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、メチレンラクトン類の精製工程として高温での蒸留を行う際に、メチレンラクトン類の重合を充分に抑制することができ、工業的に好適に用いられ、品質に優れた種々のメチレンラクトン類を製造することができるメチレンラクトン類の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、合成されたメチレンラクトン類の精製工程として高温での蒸留を行う際に、重合禁止剤が効果的に働かない原因について種々検討したところ、メチレンラクトン類合成後の反応液中に含まれる金属成分及び/又は不純物としての酸成分が重合禁止剤の働きを抑制していることを突き止めた。そこで、メチレンラクトン類を蒸留する工程の前に、金属成分及び/又は不純物の酸成分を合成反応液から除去することにより、不純物除去後の高温条件下での蒸留工程時に重合禁止剤が効果的に働き、その結果、蒸留工程におけるメチレンラクトン類の重合を充分に抑制することができるようになり、高品質のメチレンラクトン類を製造することが可能となった。このように、精製工程において従来のように単に蒸留を行うだけではなく、上記のように除去工程を操作することにより、高温で蒸留した場合にも、メチレンラクトン類の重合を充分に抑制することができることから、工業的に好適に用いられ、品質に優れた種々のメチレンラクトン類を製造できる製造方法となることを見出したものである。このように上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、メチレンラクトン類を合成し、蒸留して精製する工程を含むメチレンラクトン類の製造方法であって、上記製造方法は、メチレンラクトン類を合成した反応液から金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去する工程を行った後、反応液を重合禁止剤の存在下、70℃以上で蒸留して精製する工程を行うメチレンラクトン類の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の製造方法は、メチレンラクトン類の合成後、合成されたメチレンラクトン類を精製することとなるが、本発明の技術的特徴は合成されたメチレンラクトン類の精製工程にあるため、メチレンラクトン類の合成工程の概略を説明後、メチレンラクトン類の精製工程について説明し、その後に合成工程の詳細を説明する。
上記メチレンラクトン類の合成工程における合成方法としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを触媒の存在下で反応させる方法や、γ−ブチロラクトン類とホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体とを含む原料ガスを金属酸化物触媒、ゼオライト触媒等の存在下で気相接触反応する方法の他、塩基性化合物存在下でγ−ブチロラクトンと蟻酸エチルとを反応させ、続いて得られた化合物をホルムアルデヒドと反応させる方法、アルキリデン無水コハク酸又はアルキル無水マレイン酸を接触還元することにより得られた置換基を持つγ−ブチロラクトン化合物とシュウ酸エステルとを塩基性化合物存在下で反応させ、続いて得られた化合物をホルムアルデヒドと反応させる方法、亜鉛存在下でα−ハロゲン化メチルアクリル酸とカルボニル化合物とを反応させる方法、金属酸化物や塩基性触媒等の存在下でγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとを反応させる方法、レブリン酸より得られた置換基を持つγ−ブチロラクトン化合物とホルムアルデヒドとを塩基性触媒存在下で反応させる方法等が挙げられる。これらの方法は、国際公開2008/023823号公報、特開平10−120672号公報、米国特許第5166357号明細書、特開2007−217388号公報、特開平9−12632号公報、米国特許第6232474号明細書、米国特許公開第2006/0100447号公報に記載されている。
その中でも、本発明においては、合成された反応液中に金属成分及び/又は不純物としての酸成分を含むことになる合成工程や反応液によって配管や反応器などから金属成分が溶出してくる可能性のある製造方法に適用されることになる。好ましい形態としては、上記合成工程がα,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを触媒の存在下で反応させる方法、塩基性化合物存在下でγ−ブチロラクトンと蟻酸エチルとを反応させ、続いて得られた化合物をホルムアルデヒドと反応させる方法、アルキリデン無水コハク酸又はアルキル無水マレイン酸を接触還元することにより得られた置換基を持つγ−ブチロラクトン化合物とシュウ酸エステルとを塩基性化合物存在下で反応させ、続いて得られた化合物をホルムアルデヒドと反応させる方法、亜鉛存在下でα−ハロゲン化メチルアクリル酸とカルボニル化合物とを反応させる方法、金属酸化物や塩基性触媒等の存在下でγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとを反応させる方法、及び、レブリン酸より得られた置換基を持つγ−ブチロラクトン化合物とホルムアルデヒドとを塩基性触媒存在下で反応させる方法のいずれかの方法によって行われる形態である。更に好適な形態としては、反応時に触媒や添加剤として金属成分及び/又は不純物としての酸成分を含むことになる合成工程を有する製造方法である。より一層好ましくは、上記金属成分が遷移金属である製造方法である。
すなわち本発明は、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを遷移金属を含む金属触媒の存在下で反応させる方法、亜鉛存在下でα−ハロゲン化メチルアクリル酸とカルボニル化合物とを反応させる方法、及び、金属酸化物や塩基性触媒等の存在下でγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとを反応させる方法のいずれかの方法によって合成工程が行われる製造方法に適用されることが好ましい。最も好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを遷移金属を含む金属触媒の存在下で反応させる方法によって合成工程が行われる製造方法に適用されることである。
本発明では、精製工程において、金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去する不純物除去工程を行った後、反応液を重合禁止剤の存在下、70℃以上で蒸留して精製する蒸留工程を行うことになる。
上記精製工程を含む本発明の製造方法における技術的意義は、精製工程において不純物を取り除くのに有効な手法である蒸留を工業的に容易な条件(高真空ではない条件)で行いつつ、最終生成目的物であるメチレンラクトン類が重合により失われて収率が低下することを抑制し、また重合物の副生によって精製効率が低下することを抑制し、純度の高いメチレンラクトン類を効率良く得るというところにある。そのために、上述したように上記不純物除去工程を上記蒸留工程の前に行い、重合禁止剤の作用効果を低減させる金属成分及び/又は不純物としての酸成分を充分に取り除いたうえで、70℃以上の高温下で重合禁止剤を作用させて蒸留工程を行うものである。これによって、蒸留工程において過剰な高真空条件を必要としない高温条件で蒸留操作を行うことができ、かつ、高温条件であっても重合禁止剤の作用を充分に発揮させ、メチレンラクトン類が重合することを防止することになる。
したがって、上記不純物除去工程は、高温下での蒸留工程の前工程であって、メチレンラクトン類の重合を充分に抑制できる比較的低温条件、かつ、工業的な実施が困難である高真空とはならない条件下で、金属成分及び/又は不純物としての酸成分を充分に取り除くことができる手法でもって行われることが好ましい。また、上記蒸留工程は、合成されたメチレンラクトン類の反応液から上記金属成分及び/又は酸成分以外の不純物を充分に取り除く工程であって、工業的な実施が困難である高真空とはならない条件下で行われることが好ましい。
上記不純物除去工程における金属成分及び/又は不純物としての酸成分とは、メチレンラクトン類を合成した反応液に含まれる金属成分及び/又は酸成分であって、通常は合成反応後に残った反応原料や触媒であるが、反応溶液に配管や反応器などから溶出したような金属類等も含まれる。本発明においては、メチレンラクトン類の重合を抑制するための重合禁止剤がいずれかの工程で添加されることになるが、該重合禁止剤が酸成分に該当する場合には、該重合禁止剤はここでいう不純物としての酸成分ではない。この場合は、重合禁止剤としての酸成分があっても、該成分そのものが重合禁止剤であることから、重合禁止剤の作用を阻害することにはならず、したがって、本発明の作用効果が損なわれることはない。本発明においては、あくまでも、高温条件下で行われる蒸留工程における重合禁止剤の作用が金属成分及び/又は酸成分によって阻害されるのを抑制することが肝要である。すなわち、重合禁止剤とは異なり、該重合禁止剤の作用を阻害する金属成分及び/又は酸成分を高温条件下で行われる蒸留工程前に取り除いておくということが本発明の本質的特徴である。
なお、上記不純物除去工程においては、メチレンラクトン類を合成した反応液に含まれる金属成分及び/又は不純物としての酸成分のうち、少なくとも1種の反応液中の濃度を低減させる工程であるが、後述するように、高温条件下で実施される蒸留工程における重合禁止剤の作用効果が阻害されないように低減すればよい。
本発明の製造方法においては、不純物除去工程を行った後の反応液中の重合禁止剤の濃度、金属成分の濃度及び不純物としての酸成分の濃度が下記数式(1);
Figure 0005606701
(式中、aは、重合禁止剤の官能基の数である。Xは、重合禁止剤の濃度(mol/L)である。Yは、反応液中に含まれる全ての金属成分の合計濃度(mol/L)である。Zは、反応液中に含まれる全ての酸成分の濃度(mol/L)である。)を満たすことが好ましい。
添加した重合禁止剤の分子中の重合禁止作用として働く官能基部分が、金属に配位したり、酸と反応したりして無くなっては重合禁止剤としての効果が出なくなってしまう。上記数式(1)が満たされることは、最終的に、金属や酸と反応していない重合禁止剤の官能基が反応溶液中に残っていることを意味し、その場合には、不純物除去工程に続く蒸留工程において、重合禁止剤が効果的に働くことが可能となり、それにより蒸留工程時におけるメチレンラクトン類の重合を充分に抑制することができるようになる。
なお、上記数式(1)中、重合禁止剤の濃度(X)は、下記数式(2);
Figure 0005606701
により求めることができる。
また、反応液中に含まれる全ての金属成分の合計濃度(Y)は、XRF(蛍光X線分析)やICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光)、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)等の方法で測定することができる。反応液中に含まれる全ての酸成分の濃度(Z)は、例えば、ガスクロマトグラフィーで酸類のピークの定量を行う、又は、水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定を行うことにより求めることができる。中和滴定で求められる具体的な値は、下記数式(3);
Figure 0005606701
で定義する。
なお、反応液のpHは、市販のpHメーターを使用して測定することができる。
上記金属成分は、メチレンラクトン類の合成工程において用いられる触媒に含まれる金属、金属化合物やメチレンラクトン類の合成工程が行われている配管から溶出してくる金属等が含まれる。
上記メチレンラクトン類の合成工程においては、金属類が触媒として使用されることが多く、その中には遷移金属化合物が触媒として用いられることもある。反応液中に遷移金属が含まれる場合に、特に高温条件下での蒸留工程において重合禁止剤の作用効果が阻害されることになる。したがって、上記金属成分として遷移金属を含む場合に、本発明の効果がより発揮されることとなり、本発明において好適に適用されることになる。
上記不純物としての酸成分は、メチレンラクトン類の合成反応に用いられなかった未反応の原料に含まれる酸や、メチレンラクトン類の合成反応により生成する副生成物に含まれる酸、触媒として用いられる酸等が含まれる。
上記メチレンラクトン類の合成工程においては、触媒や添加剤として強酸が用いられることもある。反応液中に強酸が含まれる場合に、特に高温条件下での蒸留工程において重合禁止剤の作用効果が阻害されることになる。したがって、上記不純物としての酸成分としてpKaが3以下である強酸を含んだ場合に、本発明の効果がより発揮されることとなり、本発明において好適に適用されることになる。
すなわち、上記不純物としての酸成分はpKaが3以下である強酸を含むことが好ましい。より好ましくは、pKaが0以下である強酸を含むことである。pKaが0以下である強酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸などがある。
上記不純物除去工程において、不純物の除去方法としてはメチレンラクトン類を合成した反応液に含まれる金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去することができ、かつ、不純物除去工程の際にメチレンラクトン類の重合が抑制される70℃未満の条件下で行える方法であれば特に制限されず、抽出、吸着、ろ過、中和、晶析等の除去方法を用いることが好適である。また、これらの方法は1つの方法を繰り返してもよく、2つ以上の方法をあわせて用いてもよいが、その中の少なくとも1つには吸着又は抽出によって金属成分及び/又は不純物としての酸成分を取り除く方法が含まれていることが好ましい。
吸着を行う場合には、反応液である有機溶媒から金属類や酸類を除去できるような吸着剤であればよく、活性炭、シリカゲル、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、粘土類、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、キレート樹脂等の吸着剤が使用できる。中でも、触媒を効率的に除去でき、さらに触媒である貴金属を回収するのが容易となる、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、キレート樹脂が好ましい。陽イオン交換樹脂としては、スルホン酸基を持つ強酸性陽イオン交換樹脂、カルボン酸基を持つ弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられ、陰イオン交換樹脂としては、4級アンモニウム基を持つ強塩基性陰イオン交換樹脂、1〜2級アミノ基を持つ弱塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。また、キレート樹脂としては、イミノジ酢酸型やポリアミン型、グルカミン型が挙げられる。これらの中で、触媒として銅やパラジウムを含む化合物を用いた場合に、銅やパラジウムを効率的に除去できるという点では強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。また、触媒と酸類とを同時に除去できるという点では、強塩基性陰イオン交換樹脂及び/又は弱塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。なお、吸着除去の際にこれらの吸着剤を併用したり、繰り返し用いたりしてもなんら問題は無く、触媒と酸類とを効率よく除去できるという面では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを併用することが好ましく、吸着効率の面では、むしろ繰り返し用いて除去する方が好ましい。また、抽出を行う場合には、抽出溶剤としてアンモニア、アミン化合物、チオ化合物、リン化合物、窒素含有複素環式化合物等の水溶液が使用できる。これらの吸着や抽出を行うことにより、反応液に含まれる金属成分及び不純物としての酸成分を、重合禁止剤の働きを阻害しない程度に充分に除くことが可能となる。
本発明における蒸留工程は、重合禁止剤の存在下、70℃以上で行われることになる。蒸留温度を70℃以上とすると、蒸留装置内を高真空状態にしなくてもメチレンラクトン類をその置換基の鎖長に関わらず蒸留精製することが可能となるため、工業的なメチレンラクトン類の製造にも適用することが可能となる。蒸留温度は、70℃以上であることが好ましい。より好ましくは、80℃以上であり、更に好ましくは、90℃以上である。また、300℃以下であることが好ましい。蒸留温度が300℃を超えると、生成物の分解や異性化などが起こるおそれがあり、また製品品質に悪影響を与える可能性がある。より好ましくは250℃以下であり、更に好ましくは、200℃以下である。
上記蒸留工程における真空度は、上述のとおり余りに高真空とならない範囲で適宜設定することが好ましい。重合性の物質を蒸留により精製するためには、温度が低い方が好ましい。すなわち真空度が高い方が好ましいが、工業的なメチレンラクトン類の製造においてはコスト面等からあまり真空度を高くすることは好ましくない。本発明の製造方法は、高温条件下での蒸留を可能とするものであり、高真空としなくても効率良く蒸留することができる。蒸留工程における真空度は1mmHg(130Pa)以上であることが好ましい。より好ましくは、3mmHg(400Pa)以上であり、更に好ましくは、5mmHg(770Pa)以上である。また、蒸留工程における真空度の上限は760mmHg(1.0×10Pa)であることが好ましい。
上記蒸留工程において、その他の条件は、金属成分及び/又は酸成分以外の不純物が充分に取り除かれ、メチレンラクトン類の重合が抑制される限りにおいて適宜設定すればよい。
通常では、上記蒸留工程において、重合禁止剤がどの程度重合を抑制する効果を発揮するかは、蒸留の条件、メチレンラクトン類や原料として用いられる化合物の種類、溶媒の種類、反応液中に含まれる不純物の種類や量等の各種条件によって異なることになるが、70℃以上の高温条件下で蒸留を行う場合には、蒸留工程の前に金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去する工程を行わずに単に蒸留だけを行うと、メチレンラクトン類の重合は著しく進行してしまう。しかし、本発明のように不純物除去工程を蒸留工程の前に行うことで、重合禁止剤が蒸留工程において優れた重合抑制効果を発揮するようになる。
本発明における精製工程においては、重合禁止剤の存在下、70℃以上で蒸留して精製する上記蒸留工程の他に、溶媒や他の副生成物などを除去する目的での蒸留工程を含んでいてもよい。その場合、2段階以上の蒸留工程を含むことになる。
本発明の好ましい精製工程としては、合成反応液中に存在する、メチレンラクトン類よりも軽沸の物質(軽沸分)をあらかじめ除去する蒸留を行った後、メチレンラクトン類を蒸留して精製することが好ましい。この場合、軽沸分を除去する工程を軽沸カット工程といい、それに続いて行われる上記蒸留工程を精留工程という。軽沸カット工程は、70℃以上で行っても、70℃未満で行ってもよいが、70℃以上で行う場合は、軽沸カット工程の前に金属成分及び/又は不純物としての酸成分を取り除く除去工程を行う必要がある。また、70℃未満で金属成分及び/又は不純物としての酸成分を取り除くために軽沸カット工程を行う場合は、該軽沸カット工程は本発明における不純物除去工程に含まれる。
上記重合禁止剤は、上記精製工程のいずれの工程においても添加することができ、蒸留工程の開始前にメチレンラクトン類を含む反応液に添加されてもよく、蒸留工程の途中に添加されてもよいが、少なくとも一部は蒸留工程の開始前から添加されていることが好ましい。より好ましくは、不純物除去工程の直後に添加されることである。また、蒸留工程が軽沸カット工程、精留工程によって行われる場合は、軽沸カット工程の前に添加されることが好ましい。
なお、蒸留工程の途中に添加される場合、重合禁止剤を一括添加、連続添加、分割添加、及び、等速滴下のうちのいずれかの方法で添加することが好ましく、例えば、蒸留塔において添加する場所は、ボトム部、塔頂部、中段等から適宜選択して添加することができる。
上記重合禁止剤としては、例えば、安定遊離基系、アミン系、フェノール系、リン系、ベンゾトリアゾール系、チオエーテル系等の重合禁止剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記アミン系の重合禁止剤とは、窒素原子に1又は2以上の炭化水素基が結合した構造を有する化合物である。例えば、フェノチアジンや、アルキル化ジフェニルアミン等の芳香族アミン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン等が挙げられる。
上記フェノール系重合禁止剤とは、芳香環に少なくとも1つ以上の水酸基が直接結合した構造を有し、ラジカルを補足することができる化合物である。
上記フェノール系の重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(トパノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,3−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記リン系の重合禁止剤とは、リン元素を有し、ラジカルを捕捉することができる化合物である。例えば、トリフェニルホスファイト、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系の重合禁止剤とは、ベンゾトリアゾール基を有し、ラジカルを捕捉することができる化合物である。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記チオエーテル系の重合禁止剤とは、チオエーテル結合を有し、ラジカルを捕捉することができる化合物である。例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、1,3,5−トリス−β−ステアリルチオプロピオニルオキシエチルイソシアヌレート、3,3’−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル等が挙げられる。
なお、安定遊離基系の重合禁止剤については、後述する。
上記重合禁止剤の中でも、安定遊離基系の重合禁止剤及び/又はアミン系の重合禁止剤を用いることが好ましい。より好ましくは、安定遊離基系の重合禁止剤を用いることである。すなわち安定遊離基系の重合禁止剤が主成分であることが好ましい。すなわち、上記重合禁止剤は、重合禁止剤100質量%中、安定遊離基系の重合禁止剤が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上である。なお、重合禁止剤として、安定遊離基系に属する化合物を1種又は2種以上用いてもよい。
上記安定遊離基系の重合禁止剤は、エキソメチレン基とラクトン環構造とを有するという構造に由来した特有の物性を有するメチレンラクトン類に対して、優れた重合禁止効果を発揮するものであり、これらの重合禁止剤を用いることによって、高温での蒸留時におけるメチレンラクトン類の重合が充分に抑制される等の効果が発揮されることになる。
上記安定遊離基系の重合禁止剤とは、長時間安定に存在できる遊離基が結合している化合物である。このような化合物としては、例えば、不対電子が電気陰性度の大きな酸素上にあり、更に非局在できる構造を有する化合物、又は、不対電子の近傍に立体的に嵩高い基を有し、不対電子の反応性を低下させる化合物が好適である。このような化合物としては、例えば、ガルビノキシル系化合物やN−オキシル系化合物等が挙げられる。
上記安定遊離基系の重合禁止剤の中でも、N−オキシル系重合禁止剤が特に好ましい。
N−オキシル系の重合禁止剤は、エキソメチレン基とラクトン環構造とを有するという構造に由来した特有の物性を有するメチレンラクトン類に対して、高温条件下での蒸留時において特に優れた重合禁止効果を発揮するものであり、これらの重合禁止剤を用いることによって、高温での蒸留時におけるメチレンラクトン類の重合がより顕著に抑制される等の効果が発揮されることになる。
なお、一般的には、上記N−オキシル系化合物もアミン系化合物に含まれ得るが、本発明では、上記N−オキシル系の化合物は、上記安定遊離基系重合禁止剤に分類されるものとする。
また、上記N−オキシル系重合禁止剤の中でも、下記一般式(1);
Figure 0005606701
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1以上30以下の有機基を表す。)で表されるものが好ましい。
上記R、R、R及びRは、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましい。より好ましくは、メチル基又はエチル基であり、特に好ましくは、メチル基である。
上記一般式(1)で表されるN−オキシル系重合禁止剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記一般式(1)で表されるN−オキシル系重合禁止剤の中でも、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、又は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体が好ましい。なお、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体の構造は、下記化学式(2)のようである。
Figure 0005606701
上記重合禁止剤は、蒸留工程においてメチレンラクトン類に対して0.1〜10000ppmの濃度で用いることが好ましい。より好ましくは10〜7500ppmであり、更に好ましくは100〜5000ppmである。特に好ましくは150〜2000ppmである。重合禁止剤が上記濃度で用いられると、メチレンラクトン類の重合が更に充分に抑制され、目的生成物であるメチレンラクトン類を収率良く得ることができる。なお、ここで言う10000ppmは、1質量%のことである。
本発明において合成されるメチレンラクトン類は、下記一般式(3);
Figure 0005606701
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、1価の有機基を表す。)で表されることが好ましい。更に、R、R、R及びRが下記のようなものであると、特に好ましい。
上記R、R、R及びRとしては、水素原子、水酸基、炭素数1以上60以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基もしくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数1以上60以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、ハロゲン基、イソニトリル基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸基、カルボニル基(例えば、ケトンやアルデヒド)、オキシカルボニル基、アミノ基、アミンオキシド基、ニトロン基、アミド基、アジド基、アセタール基、アゾ基、アゾキシ基、アジン基、イミノ基、イミド基、エナミン基、エナミド基、オルトエステル基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケタール基、オニウム塩、複素環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ元素等を有する原子団であることが好ましい。より好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上30以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基、脂環式不飽和アルキル基、及び、炭素数1以上30以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、オニウム塩を有する原子団である。更に好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上18以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、及び、炭素数1以上18以下のエステル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミノ基を有する原子団である。更に好ましくは、水素原子、水酸基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下の炭化水素基、又は、炭素数1以上12以下のオキシカルボニル基である。特に好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、炭素数1以上8以下のオキシカルボニル基である。最も好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、又は、アセトキシ基である。なお、上記R、R、R及びRは、結合し、環構造を形成してもよい。
なお本発明における好ましいメチレンラクトン類は、R及びRが水素原子であり、R及びRのどちらか一方が水素原子であり、他方が水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、アセトキシ基のものである。より好ましくは、R及びRが水素原子であり、R及びRのどちらか一方が水素原子であり、他方が水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は、アセトキシ基のものである。
本発明におけるメチレンラクトン類として特に好ましい化合物の具体例としては、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−バレロラクトン、γ−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−プロピル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ペンチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ,γ−ジメチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−メチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−プロピル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−ブチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−ペンチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β,β−ジメチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−フェニル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−メチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−アセトキシ−α−メチレン−γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
次に、本発明におけるメチレンラクトン類の合成工程について詳しく説明する。
上述のとおり、本発明のメチレンラクトン類の合成方法は、好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを触媒の存在下で反応させる方法、塩基性化合物存在下でγ−ブチロラクトンと蟻酸エチルとを反応させ、続いて得られた化合物をホルムアルデヒドと反応させる方法、アルキリデン無水コハク酸又はアルキル無水マレイン酸を接触還元することにより得られた置換基を持つγ−ブチロラクトン化合物とシュウ酸エステルとを塩基性化合物存在下で反応させ、続いて得られた化合物をホルムアルデヒドと反応させる方法、亜鉛存在下でα−ハロゲン化メチルアクリル酸とカルボニル化合物とを反応させる方法、金属酸化物や塩基性触媒等の存在下でγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとを反応させる方法、及び、レブリン酸より得られた置換基を持つγ−ブチロラクトン化合物とホルムアルデヒトとを塩基性触媒存在下で反応させる方法のいずれかの方法である。更に好適な形態としては、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを遷移金属を含む金属触媒の存在下で反応させる方法、亜鉛存在下でα−ハロゲン化メチルアクリル酸とカルボニル化合物とを反応させる方法、及び、金属酸化物や塩基性触媒等の存在下でγ−ブチロラクトンとホルムアルデヒドとを反応させる方法のいずれかの方法である。最も好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを遷移金属を含む金属触媒の存在下で反応させる方法である。
上記遷移金属を含む金属触媒としては、例えば、Pd、Cu、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo、W等を含む金属触媒が挙げられる。中でも、Pd、Cuを含むものが好ましい。Pd、Cuを含む金属触媒を用いることによって、副生成物である非環状不飽和化合物の生成が抑制され、効率的にメチレンラクトン類を合成することができる。
なお、本発明におけるメチレンラクトン類の合成工程においては、これらの金属触媒を1種用いてもよいし、更に助触媒として2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のメチレンラクトン類の製造方法においては、金属触媒の使用量は、メチレンラクトン類合成の原料となる化合物全体を100質量%とすると、0.0000001〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.000005〜10質量%である。
本発明の製造方法において、メチレンラクトン類がα,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物との反応で合成される場合、α,β−不飽和カルボン酸は、目的とするメチレンラクトン類の構造に応じて適宜選択されるが、アクリル酸を用いることが好ましい。
上記不飽和有機化合物は、目的とするメチレンラクトン類の構造に応じて適宜選択されるが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1−ペンテン、イソプレン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレン、酢酸ビニル等を用いることができる。これらの中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、酢酸ビニルを用いることが好ましい。
上記メチレンラクトン類がα,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物との反応で合成される場合、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とのモル比としては、1:0.01〜1:1000であることが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸に対する不飽和有機化合物の比率が0.01未満である場合や、1000より大きい場合には、反応が効率的に進行せず、メチレンラクトン類を高収率で得ることが困難となる。より好ましくは、1:0.03〜1:500であり、更に好ましくは、1:0.05〜1:200である。
上記メチレンラクトン類の合成工程において用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、アニソール、クレゾール等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン類、α−ビニル−γ−ブチロラクトン類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のエステル系溶媒;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロへキシルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、アセトフェノン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、2,4−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン等のケトン系溶媒;塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記溶媒の使用量としては、原料化合物、触媒等を含む反応原料溶液全体を100質量%とすると、原料化合物濃度は1〜100質量%が好ましく、5〜90質量%がより好ましく、10〜80質量%となるように設定することが更に好ましい。原料化合物濃度が低い場合には生産性が低くなり、高い場合がプロセスを簡略化できるため好ましいが、触媒が失活する可能性がある。
上記メチレンラクトン類の合成工程における反応容器中の気相部は、触媒を再酸化できるようなものであれば特に限定されないが、酸素が含まれることが好ましい。具体的には、酸素、空気、酸素/窒素標準ガス、酸素/二酸化炭素混合ガスが好ましく、酸素/窒素標準ガスであることがより好ましい。具体的な酸素濃度は、安全上問題が無ければ特に限定されないが、0.1mol%以上、21mol%以下であることが好ましい。酸素が0.1mol%以下であると反応が充分進行しない可能性があり、21mol%以上であると爆発の危険性があり、安全上問題がある。
また、反応容器中の圧力は、反応初期において常圧以上、ゲージ圧20MPa以下であることが好ましい。
上記メチレンラクトン類の合成工程における反応温度は、適宜設定することができるが、反応収率等の点から0〜300℃であることが好ましい。20〜200℃であることがより好ましく、40〜150℃であることが更に好ましい。
また、上記メチレンラクトン類の合成工程における反応時間は、適宜設定することができるが、反応収率及び/又は作業効率の点から1〜96時間であることが好ましい。2〜72時間であることがより好ましく、3〜48時間であることが更に好ましい。
本発明の製造方法の製造工程全体の一例を図1のフローを用いて説明する。
最初に、反応に用いる原料が反応装置に仕込まれ、合成工程(図中「反応工程」と記載)が行われる。反応原料は、最初に一括添加してもよく、反応を行いながら逐次添加してもよい。この合成工程で、合成されたメチレンラクトン類と触媒とを含む触媒含有反応溶液が得られることになる。この触媒含有反応溶液には、通常、目的化合物であるエキソ型環状不飽和化合物であるメチレンラクトン類の他、副生物や、反応原料、触媒、溶媒等が含まれる。
次いで、不純物除去工程(図中「不純物除去工程」と記載)が行われるが、金属成分及び/又は不純物としての酸成分が除去できれば特に制限されず、抽出、吸着、ろ過、中和、晶析等の方法を用いることができる。なお、図では特に不純物として触媒が含まれる場合を抽出又は吸着にて除去することを想定して記載しているが、金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去できれば、除去方法については特に制限されない。ここで分離された金属成分及び/又は不純物としての酸成分は、精製処理や再生処理等により、原料や触媒として再利用してもよく、再利用できない場合には廃棄してもよいが、高価な金属成分が含まれる場合は再利用することが好ましい。なお、上記反応液から回収した金属成分の再利用方法は特に制限されない。例えば、触媒として使用された金属成分を抽出により除去した場合には、金属成分を含む抽出液から溶媒を留去した後に、残渣を焙焼して金属成分を回収すればよく、吸着により除去した場合には、金属成分を含む吸着剤を焼成することで余分な有機物を除去した後、金属成分を回収すればよい。なお、回収された金属成分は、還元剤で還元し、その後触媒として使用できるような状態にするため、適宜酸化等の反応を行って再生させればよい。
そして、不純物除去工程を経たメチレンラクトン類を含む反応液は、蒸留により精製されることとなる。合成工程において、メチレンラクトン類よりも低沸点の溶媒を用いた場合には、まず低沸点溶媒を回収するための蒸留工程が行われ(図中「軽沸カット工程(蒸留工程(1))」と記載)、その後、製品(メチレンラクトン類)を精製するための蒸留(図中「精留工程(蒸留工程(2))」と記載)が行われて、メチレンラクトン類が留出取得される。合成工程において、メチレンラクトン類よりも高沸点の溶媒を用いた場合には、一度の蒸留で製品(メチレンラクトン類)と、溶媒を含む残液との分離が行われる。残液に含まれる溶媒は、その後、蒸留及び洗浄、抽出等により精製された後、リサイクルすることが可能である。ところで、上記製造工程はバッチ型反応での説明となるが、メチレンラクトン類は流通型反応で合成してもよく、その場合上記工程は一連の連続した工程となる。
なお、本発明においては、本発明の効果を奏することになる限り、これらの工程以外の工程が含まれていてもよく、工程を2度以上繰り返してもよい。
このような製造方法によって製造されるメチレンラクトン類は、工業的に実施容易であり、かつ充分に精製されたものを提供することができる手法でもって精製されたものであることから、工業製品としての有用性は高く、医農薬中間体や、重合体を製造するための単量体としての有用なものであり、その需要が大いに期待されるものである。
本発明のメチレンラクトン類の製造方法は、上述の構成よりなり、精製工程として、合成されたメチレンラクトン類を蒸留する工程の前に合成反応液中に含まれる金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去する工程を行うことにより、高温条件下での蒸留時に重合禁止剤が効果的に働くことを可能とし、メチレンラクトン類の重合を充分に抑制することができる方法である。このため、従来よりも工業的に好ましい条件下でのメチレンラクトン類の蒸留精製が可能となり、工業的なメチレンラクトン類の製造に好適に用いることができる製造方法である。
図1は、本発明の製造方法の製造工程全体の一例を示すフロー図である。合成工程(図中「反応工程」と記載)、不純物除去工程、蒸留工程の順にプロセスが行われ、精製されたメチレンラクトン類が製造されることが示されている。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例、参考例及び比較例では、下記装置を用いて測定を行った。
(1)ガスクロマトグラフィー分析
装置名:GC−2014((株)島津製作所製)
カラム:キャピラリーカラム TC−WAX(ジーエルサイエンス(株)製)
又は
装置名:6890N(Agilent Technologies, Inc.製)
カラム:キャピラリーカラム InertCap(ジーエルサイエンス(株)製)
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー分析
装置名:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSK−Gel SuperHZM−M(東ソー(株)製)
(3)誘導結合プラズマ発光分光(ICP−AES)分析
装置名:ICPE−9000((株)島津製作所製)
(4)水素イオン濃度分析
装置名:pHメーター F−22((株)堀場製作所製)
また、α−メチレン−γ−バレロラクトンは、東京化成工業(株)から購入した試薬(淡黄色)を減圧蒸留して精製したものを使用した。減圧蒸留して精製したものは、重合禁止剤、酸成分、遷移金属成分は検出されなかった。
α−メチレン−γ−ブチロラクトンは、減圧蒸留ではなくカラムクロマトグラフィーにより精製(無色)した以外は、米国特許第5166357号明細書を参考に合成した。減圧蒸留して精製したものは、重合禁止剤、酸成分、遷移金属成分は検出されなかった。
(合成工程)
実施例1
オートクレーブにα、β−不飽和カルボン酸としてアクリル酸(1.0mmol)、触媒としてトリフルオロ酢酸パラジウム(0.01mmol)、助触媒として酢酸銅(0.014mmol)、不飽和有機化合物として1−ブテン(5.3mmol)、溶媒としてトルエン(3.0mL)を加えた。気相部は酸素が7%の酸素/窒素標準ガスで全圧5MPaに加圧し、70℃で8時間攪拌した。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、γ−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンの収率が61.4mol%であった。
反応で出た固形物をろ過した後のパラジウムの濃度は、0.0002mol/Lで、銅の濃度は、0.004mol/Lであった。また、酸類の濃度は、0.05mmol/Lであった。
(合成工程)
実施例2
不飽和有機化合物として1−オクテンを4.1mmol添加した以外は、合成工程実施例1と同様に行った。その結果、γ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンの収率が38.0mol%であった。
反応で出た固形物をろ過した後のパラジウムの濃度は、0.0002mol/Lで、銅の濃度は、0.004mol/Lであった。また、酸類の濃度は、0.12mol/Lであった。
(不純物除去工程)
実施例3
上記合成工程実施例1で得られた反応液を、1.4mol/Lのアンモニア水を反応液中の酸類とパラジウムと銅とを合計した量の5倍量用いて抽出した。その結果、触媒として用いた遷移金属であるパラジウム、銅、及び、未反応のアクリル酸等の酸類が水溶液中に抽出された。金属成分については、有機溶媒をICP−AES分析により測定し、上記銅やパラジウムだけでなく他の遷移金属成分についても有機溶媒中に存在しない(金属成分の合計が0.0001mol/L以下)ことを確認した。酸成分については、抽出液のpHが7を超えることで確認した。
(不純物除去工程)
実施例4
合成工程実施例2で得られた反応液を用いた他は、上記不純物除去工程実施例3と同様に行った。その結果、パラジウム、銅を含めた遷移金属成分についてはICP−AES分析で確認されず、抽出液のpHは7を超えていた。
(不純物除去工程)
実施例5
上記合成工程実施例2で得られた反応液500mLに、強酸性陽イオン交換樹脂であるオルガノ社製「アンバーリスト15DRY(商品名)」50gを加えて24時間攪拌させたところ、金属成分の合計が0.0001mol/L以下になることをICP−AES分析により確認した。また、酸類の除去は、上記処理液に更に弱塩基性陰イオン交換樹脂であるオルガノ社製「アンバーライトIRA96SB(商品名)」10gを加えて行った。そして、その液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、酸類のピークは検出されなかった。
(不純物除去工程)
実施例6
酸類の除去を、60℃、30mmHg(4kPa)の条件で蒸留により行った以外は、上記不純物除去工程実施例5と同様に行った。その結果、金属成分の合計が0.0001mol/L以下となることがICP−AES分析により確認され、ガスクロマトグラフィー分析から酸類のピークは検出されなかった。
(蒸留工程)
実施例7
上記不純物除去工程を行った実施例3で得られた有機溶媒に、安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(下記化学式(2))
Figure 0005606701
を0.001mol/Lになるように加えた。その後、トルエン等の軽沸分を55℃・100mmHg(13kPa)でカットした。その後、γ−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを100℃・12mmHg(1.6kPa)で3時間かけ単蒸留したところ、純度90%以上のサンプルが得られた。また、蒸留の残渣をゲル浸透クロマトグラフィー分析で分析したところ、メチレンラクトン類の重合物は確認されなかった。
実施例8
上記不純物除去工程を行った実施例4で得られた有機溶媒を用いて、γ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを150℃・10mmHg(1.3kPa)で単蒸留した以外は、実施例7と同様に行ったところ、純度90%以上のサンプルが得られた。また、蒸留の残渣をゲル浸透クロマトグラフィー分析で分析したところ、メチレンラクトン類の重合物は確認されなかった。
実施例9
上記不純物除去工程を行った実施例5で得られた有機溶媒を用いた以外は、実施例8と同様に蒸留を行ったところ、純度90%以上のサンプルが得られ、また、蒸留残渣に重合物は見られなかった。
実施例10
上記不純物除去工程を行った実施例6で得られた有機溶媒を用いた以外は、実施例8と同様に蒸留を行ったところ、純度90%以上のサンプルが得られ、また、蒸留残渣に重合物は見られなかった。
実施例11
試薬を精製したα−メチレン−γ−バレロラクトンを90℃・10mmHg(1.3kPa)で単蒸留した以外は、実施例7と同様に行ったところ、純度99%以上のサンプルが得られた。なお、蒸留の残渣をゲル浸透クロマトグラフィー分析で分析したところ、メチレンラクトン類の重合物は確認されなかった。
実施例12
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンを84℃・10mmHg(1.3kPa)で単蒸留した以外は、実施例7と同様に行ったところ、純度99%以上のサンプルが得られた。なお、蒸留の残渣をゲル浸透クロマトグラフィー分析で分析したところ、メチレンラクトン類の重合物は確認されなかった。
比較例1
不純物除去工程を行わずに上記実施例1で得られた有機溶媒を用いた他は、実施例7と同様に行ったところ、蒸留中にγ−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンの重合物が得られ、一部固化した。
比較例2
不純物除去工程を行わずに上記実施例1で得られた有機溶媒を100℃に静置したところ、2時間以内に重合により固化した。
比較例3
不純物除去工程を行わずに上記実施例2で得られた有機溶媒を用いた他は、実施例8と同様に行ったところ、蒸留中にγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンの重合物が得られ、一部固化した。
比較例4
不純物除去工程を行わずに上記実施例2で得られた有機溶媒を150℃に静置したところ、1時間以内に重合により固化した。
比較例5
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンを60℃で静置したところ、7時間放置しても固化しなかった。
比較例6
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンを70℃で静置したところ、5時間以内に重合により固化した。
比較例7
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンを80℃で静置したところ、2時間以内に重合により固化した。
比較例8
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンを90℃で静置したところ、1時間以内に重合により固化した。
比較例9
試薬を精製したα−メチレン−γ−バレロラクトンを90℃で静置したところ、1時間以内に重合により固化した。
参考例1
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンに安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(上記化学式(2))を0.002mol/Lになるように加えた。この溶液を90℃で静置したところ、7時間放置しても重合しなかった。
参考例2
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンに安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(上記化学式(2))を0.004mol/Lになるように加えた。この溶液を90℃で静置したところ、7時間放置しても重合しなかった。
比較例10
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンに、不純物としての酸類を除去していない場合を想定し、パラトルエンスルホン酸を0.009mol/Lとなるように加えた。更に、安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(上記化学式(2))を0.004mol/Lになるように加えた。この溶液を90℃で静置したところ、3時間以内に重合により固化した。
参考例3
パラトルエンスルホン酸を0.004mol/Lとなるように加えたほかは、比較例10と同様に行ったところ、7時間放置しても重合しなかった。
比較例11
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンに、金属類を除去していない場合を想定し、アセチルアセトン銅を0.019mol/Lとなるように加えた。更に、安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(上記化学式(2))を0.004mol/Lになるように加えた。この溶液を90℃で静置したところ、7時間で重合により固化した。
参考例4
アセチルアセトン銅を0.007mol/Lとなるように加えた他は、比較例11と同様に行ったところ、7時間放置しても重合しなかった。
比較例12
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンに、不純物としての金属類を除去していない場合を想定し、トリフルオロ酢酸銅を0.016mol/Lとなるように加えた。更に、安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(上記化学式(2))を0.004mol/Lになるように加えた。この溶液を90℃で静置したところ、7時間で重合により固化した。
参考例5
トリフルオロ酢酸銅を0.003mol/Lとなるように加えた他は、比較例12と同様に行ったところ、7時間放置しても重合しなかった。
比較例13
試薬を精製したα−メチレン−γ−ブチロラクトンに、金属類及び不純物としての酸類を除去していない場合を想定し、アセチルアセトン銅を0.007mol/Lとなるように加え、更にパラトルエンスルホン酸を0.003mol/Lとなるように加えた。そこに、安定遊離基系の重合禁止剤である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル体(上記化学式(2))を0.004mol/Lになるように加えた。この溶液を90℃で静置したところ、7時間で重合により固化した。
以上の結果をまとめると、下記表1のようになる。なお表中、メチレンラクトンの略号として、Hは、α−メチレン−γ−ブチロラクトンを、Meは、α−メチレン−γ−バレロラクトンを、Etは、γ−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを、Hexは、γ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンをそれぞれ表している。また、重合に関しては、〇は、メチレンラクトン類が重合したことを表し、×は、メチレンラクトン類が重合しなかったことを表している。
Figure 0005606701
表1から、次のことがわかる。
メチレンラクトン類は、重合禁止剤を入れないと、70℃以上で重合してしまう(比較例5〜8)が、反応液中に金属・酸がない状態では、重合禁止剤は効果的に働くことがわかった(実施例7〜12、参考例1、2)。次に、反応液中に金属・酸が下記数式(1);
Figure 0005606701
を満たさない量存在する場合、重合禁止剤の効果が阻害されてしまう(比較例1〜4、10〜13)が、反応液中に金属・酸が存在していても、上記数式(1)を満たすような場合、重合禁止剤は効果的に働くことがわかった(参考例3〜5)。そして更に、金属・酸単独では重合禁止剤が効果的に働く条件下(参考例3、4)でも、反応液中に双方が存在し、上記数式(1)を満たさない場合には、重合禁止剤の効果を阻害する(比較例13)。
以上より、70℃以上で蒸留する場合でも、重合禁止剤が効果的に働く条件、すなわち金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去した条件であれば、メチレンラクトン類を効果的に蒸留して精製することが可能であることがわかった。

Claims (6)

  1. メチレンラクトン類を合成し、蒸留して精製する工程を含むメチレンラクトン類の製造方法であって、
    該製造方法は、メチレンラクトン類を合成した反応液から金属成分及び/又は不純物としての酸成分を除去する工程を行った後、該反応液を重合禁止剤の存在下、70℃以上で蒸留して精製する工程を行う方法であり、かつ、不純物除去工程を行った後の反応液中の重合禁止剤の濃度、金属成分の濃度及び不純物としての酸成分の濃度が、下記数式(1);
    Figure 0005606701
    (式中、aは、重合禁止剤の官能基の数である。Xは、重合禁止剤の濃度(mol/L)である。Yは、反応液中に含まれる全ての金属成分の合計濃度(mol/L)である。Zは、反応液中に含まれる全ての酸成分の濃度(mol/L)である。)を満たす方法であって、
    該メチレンラクトン類は、下記一般式(3);
    Figure 0005606701
    (式中、R 、R 、R 及びR は、同一又は異なって、水素原子、又は、1価の有機基を表す。有機基とは、炭素数1以上60以下の、直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、炭素数1以上60以下のエステル基、炭素数1以上60以下のオキシカルボニル基、カルボン酸基、イソニトリル基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、又は、イソチオシアナート基である。)で表される
    ことを特徴とするメチレンラクトン類の製造方法。
  2. 前記重合禁止剤は、安定遊離基系の重合禁止剤及び/又はアミン系の重合禁止剤である
    ことを特徴とする請求項1に記載のメチレンラクトン類の製造方法。
  3. 前記金属成分は、遷移金属を含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のメチレンラクトン類の製造方法。
  4. 前記酸成分は、pKaが3以下である強酸を含む
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のメチレンラクトン類の製造方法。
  5. 前記製造方法は、遷移金属を含む金属触媒を用いてメチレンラクトン類を合成する工程を含む
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のメチレンラクトン類の製造方法。
  6. 前記重合禁止剤は、安定遊離基系の重合禁止剤である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のメチレンラクトン類の製造方法。
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