以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、発泡成形部材はEA材であり、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造を例示しているが、本発明の発泡成形部材は、EA材に限定されない。また、本発明において、被取付部材は、ドアトリムに限定されない。
第1図(a)は、実施の形態に係るクリップのクリップ本体の筒軸心線に沿う断面斜視図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線矢視図(クリップの平面図)であり、第1図(c)は第1図(a)のC−C線に沿う断面図であり、第1図(d)は第1図(c)のD−D線矢視図(クリップの側面図)である。第2図(a)は、このクリップを製造するためのクリップ成形用金型の縦断面図(第2図(b)のA−A線に沿う断面図)であり、第2図(b)は第2図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第2図(c)は、このクリップ成形用金型の型開き状態における第2図(a)と同様部分の縦断面図である。第3図(a)は、このクリップを備えた発泡成形部材としてのEA材を製造するためのEA材成形用金型の縦断面図であり、第3図(b)は、クリップが取り付けられる前のEA材成形用金型のクリップ固定用突起付近の拡大断面図であり、第3図(c)は第3図(b)のC−C線矢視図であり、第3図(d)は、該クリップ固定用突起にクリップが取り付けられた状態を示す第3図(b)と同様部分の断面図である。なお、第3図(a),(b),(d)は、それぞれ、該クリップ固定用突起の軸心線に沿う断面にて図示されている。第4図(a)は、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造の水平断面図であり、第4図(b)は、EA材を取り付ける前のドアトリムの水平断面図であり、第4図(c)は第4図(b)のC−C線矢視図である。なお、第4図(a)は、クリップ本体の筒軸心線に沿う断面を示しており、第4図(b)は第4図(a)と同様部分の断面を示している。
EA材1は、第3図(a)及び第4図(a)の通り、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂成形体よりなるEA材本体2と、該EA材本体2をドアトリム20に取り付けるためのクリップ10とを備えている。クリップ10は、インサート成形によりEA材本体2と一体化されている。このクリップ10が、ドアトリム20に設けられたクリップ係止用突起21(第5図(a)〜(c))に係止されることにより、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。EA材本体2のドアトリム20との対峙面には、クリップ10が複数個、所定位置に配設されており、ドアトリム20のEA材取付面には、これらのクリップ10とそれぞれ対応する位置関係にて、複数個のクリップ係止用突起21が設けられている。このクリップ係止用突起21の詳細については後述する。
EA材本体2を構成する発泡合成樹脂は、コア部分の静的圧縮試験によって求められる硬さが2.5〜15kgf/cm2以下であることが好ましい。この静的圧縮試験は、以下の手順で行われるものである。即ち、まずEA材本体2の構成材料として使用される発泡合成樹脂材料から厚み50mm×幅50mm×長さ50mmのサンプルを取得する。次いで、このサンプルを、全面圧縮で厚み方向に10〜50mm/秒のスピードにて元の厚みの20%の厚みとなるまで圧縮する。その際、このサンプルを元厚みの50%の厚みまで圧縮したときの荷重を測定し、この測定値をサンプルの圧縮方向と垂直な断面の断面積で割った計算値を、その発泡合成樹脂材料の硬さとする。
クリップ10は、該クリップ係止用突起21が挿入される挿入穴12を有した略円筒形状のクリップ本体11と、該クリップ本体11の筒軸心線方向の一端側(以下、後端側ということがある。なお、説明の便宜上、この実施の形態における「一端側」及び後述の「他端側」は、請求項1における『一端側』及び『他端側』とは逆となっている。)から放射方向へ外向き鍔状に張り出したフランジ部14と、該クリップ本体11の該フランジ部14よりも筒軸心線方向の他端側(以下、先端側ということがある。)の外周面から突設された複数個(この実施の形態では4個)の突起部17等を備えている。該挿入穴12は、クリップ本体11をその筒軸心線方向に貫通している。該挿入穴12の内径は、クリップ本体11の先端側から後端側まで実質的に一定となっている。フランジ部14は、該クリップ本体11の後端側の端面と面一状に形成されている。挿入穴12の内周面には、クリップ係止用突起21から側方へ張り出した後述の爪部23が係合する係合部15が設けられている。
この実施の形態では、第1図(a),(d)の通り、突起部17同士は、クリップ本体11の筒軸心線方向に間隔をあけて配置されている。各突起部17は、第1図(b),(c)の通り、クリップ本体11の周方向に延在している。この実施の形態では、各突起部17は、クリップ本体11の外周面を全周にわたって周回した円環形状となっている。この実施の形態では、第1図(a),(d)の通り、各突起部17は、そのクリップ本体11の外周面からの張り出し方向の基端側から先端側まで、該クリップ本体11の筒軸心線方向における厚さが略一定の平板状となっている。第1図(a),(d)の通り、最もクリップ本体11の先端側に位置する突起部17(第1図(a),(d)において最も上方に位置する突起部17)は、クリップ本体11の該先端側の端面11fよりもクリップ本体11の後端側に後退した位置に設けられている。このクリップ10にあっては、クリップ本体11の最先端部には、前述の第5図のクリップ104におけるアンカー部105のような、該クリップ本体11の外周から放射方向に張り出す大径円盤状のアンカー部は設けられていない。クリップ本体11の外周面からの各突起部17の張り出し高さは、該クリップ本体11の外周面からのフランジ部14の張り出し高さよりも小さいものとなっている。
クリップ本体11の外周面からの各突起部17の張り出し高さは2〜10mm特に3〜5mm程度が好適である。隣り合う突起部17,17同士の間隔は2〜10mm特に4〜6mm程度が好適である。クリップ本体11の筒軸心線方向における各突起部17の厚さは0.5〜3mm特に0.5〜1mm程度が好適である。
なお、突起部17の形状や個数、配置等はこれに限定されない。例えば、この実施の形態では、各突起部17は、クリップ本体11の全周にわたって連続したものとなっているが、クリップ本体11の周方向に間隔をおいて複数個の突起部17が配設されてもよい。この実施の形態では、第1図(a),(d)の通り、各突起部17は、クリップ本体11の筒軸心線と垂直に延在したものとなっているが、クリップ本体11の筒軸心線に対し斜めに(例えば螺旋状に)延在していてもよく、あるいはジグザグ状など、一部又は全体が屈曲ないし湾曲した形状などであってもよい。第1図(b),(c)の通り、この実施の形態では、クリップ10をクリップ本体11の先端側から見たときの突起部17の外周形状は、実質的にクリップ本体11の筒軸心を中心とする円形となっているが、例えば多角形等の円形以外の形状であってもよい。互いに形状の異なる突起部17が存在していてもよい。
この実施の形態では、第1図(c)の通り、クリップ本体11の筒軸心線と垂直な断面において、挿入穴12の内周面は、該挿入穴12の弦方向に延在した平坦部12aと、クリップ本体11の外周側に凸に湾曲した湾曲部12bとを有している。この実施の形態では、第1図(c)の通り、クリップ本体11の筒軸心線と垂直な断面において、挿入穴12の内周面は、該クリップ本体11の筒軸心線を挟んで対向する1対の平坦部12a,12aと、これらの平坦部12a,12aの一端側同士及び他端側同士をそれぞれ繋いだ1対の湾曲部12b,12bとを有した略小判形の断面形状となっている。
第1図(a)の通り、各平坦部12a及び各湾曲部12bは、それぞれ、クリップ本体11の先端側から後端側まで連続して形成されている。第1図(b),(c)の通り、これらの平坦部12a,12a同士は、互いに略平行に延在している。各平坦部12aの幅(クリップ本体11の筒軸心線と直交方向の幅。以下、同様。)は、該クリップ本体11の筒軸心線方向の一端側から他端側まで実質的に一定となっている。各平坦部12aの幅は、挿入穴12の最大内径(各平坦部12aの幅方向と平行方向における湾曲部12b,12b同士の間隔の最大値)の20〜80%特に30〜70%程度であることが好ましい。平坦部12a,12a同士の間隔は、この挿入穴12の最大内径の70〜95%特に80〜90%程度であることが好ましい。この実施の形態では、湾曲部12b,12b同士は、実質的にクリップ本体11の軸心を共通の曲率中心とし、実質的に同一の曲率半径にて湾曲した円弧形断面形状となっている。なお、挿入穴12の断面形状はこれに限定されない。例えば、平坦部12aは、1個だけ、あるいはクリップ本体11の周方向に隣接させて又は間隔をあけて3個以上設けられてもよい。湾曲部12bは、挿入穴12の中心を曲率中心として湾曲していなくてもよく、湾曲部12b,12b同士は、異なる曲率中心及び曲率半径を有するものであってもよい。本発明においては、挿入穴12の断面形状は、平坦部12aを有しない円形状や、湾曲部12bを有しない多角形状などであってもよい。
この実施の形態では、第1図(b),(c)の通り、クリップ本体11の外周面は、挿入穴12と相似形の断面形状となっている。即ち、この実施の形態では、クリップ本体11の筒軸心線と垂直な断面において、クリップ本体11の外周面は、挿入穴12の各平坦部12aに沿って延在した1対の平坦部11aと、該挿入穴12の各湾曲部12bに沿ってクリップ本体11の外方に凸に湾曲するように延在し、該平坦部11a,11aの一端側同士及び他端側同士をそれぞれ繋いだ1対の湾曲部11bとを有した略小判形の断面形状となっている。なお、クリップ本体11の外周面の断面形状はこれに限定されない。例えば、クリップ本体11の外周面の断面形状と挿入穴12の断面形状とは、互いに異なる形状であってもよい。この実施の形態では、クリップ本体11の筒軸心線の延長方向から見たフランジ部14の平面視形状は円形となっているが、これに限定されない。
第1図(a)〜(c)及び第2図(c)の通り、この実施の形態では、クリップ本体11を外周側から挿入穴12内まで貫通する貫通孔16が設けられており、この貫通孔16により前記係合部15が設けられている。即ち、挿入穴12にクリップ係止用突起21が挿入されると、該クリップ係止用突起21の爪部23がこの貫通孔16に入り込んでこの貫通孔16の縁部に係合するようになる。
この実施の形態では、第1図(a),(b)及び第2図(c)の通り、2個の貫通孔16がクリップ本体11の中心を挟んで正対するように設けられている。この実施の形態では、これらの貫通孔16は、各平坦部12aにそれぞれ配置されている。各貫通孔16は、クリップ本体11を各平坦部12aの延在方向と直交方向に貫通している。各貫通孔16は、各平坦部12aの幅方向の中間部に配置されている。また、各貫通孔16は、クリップ本体11の筒軸心線方向の中間部に配置されている(即ち、各貫通孔16は、クリップ本体11の先端面及び後端面からそれぞれ等距離に位置している)。この実施の形態では、第1図(c)の通り、クリップ10を側面視したときの各貫通孔16の開口形状は、直交する2辺がそれぞれクリップ本体11の筒軸心線と平行方向及びこれと直交方向に延在した略正方形状となっている。
なお、貫通孔16の個数及び配置、開口形状はこれに限定されない。例えば、貫通孔16は、1個又は3個以上設けられてもよい。挿入穴12の各湾曲部12bにそれぞれ貫通孔16が設けられてもよい。挿入穴12の各平坦部12aと各湾曲部12bの双方にそれぞれ貫通孔16が設けられてもよい。隣り合う平坦部12aと湾曲部12bとに跨って貫通孔16が設けられてもよい。貫通孔16の開口形状は、クリップ係止用突起21の爪部23の形状に応じて種々の形状とすることができる。あるいは、例えばクリップ10の取付誤差を吸収するために、この貫通孔16を、クリップ本体11の周方向に長い長穴状としてもよい。
この実施の形態では、第1図(a),(d)の通り、複数設けられた突起部17のうちの1個が、クリップ本体11の筒軸心線方向において各貫通孔16の中間付近を通るように配置されている。この突起部17は、各貫通孔16で分断されることなく、各貫通孔16をクリップ本体11の周方向に横切って各貫通孔16の両側部分と連続するように形成されている。即ち、この実施の形態では、各貫通孔16は、この突起部17によってクリップ本体11の先端側と後端側とに二分されたものとなっている。これにより、該第1図(a),(d)の通り、クリップ本体11の外周面に露呈する各貫通孔16の開口面積がこの突起部17の分だけ小さなものとなっている。この実施の形態では、第1図(b),(c)の通り、この突起部17は、各貫通孔16の内部にまで入り込んでおり、その内周側の縁部は、挿入穴12の内周面(平坦部12a)と面一状となっている。なお、各貫通孔16を横切る突起部17の個数は1個に限定されるものではなく、2個以上の突起部17が各貫通孔16を横切るように設けられてもよい。
本発明においては、クリップ本体11の外周面に、各貫通孔16を塞ぐ封体を設けてもよい。この場合、突起部17は、各貫通孔16を横切るように設けられなくてもよい。突起部17を、各貫通孔16を横切るように設け、さらに各貫通孔16を封体で塞ぐようにしてもよい。
このクリップ10は、合成樹脂の射出成形品よりなる。このクリップ10を構成する材料としては、例えばABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)等が好適であるが、これに限定されない。
以下に、このクリップ10の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、クリップ10の製造方法はこれに限定されない。
第2図(a)〜(c)の通り、このクリップ10を製造するためのクリップ成形用金型30は、クリップ本体11の外周面及びフランジ部14の先端側面の半周分をそれぞれ成形する第1の型31と、該クリップ本体11の外周面及びフランジ部14の先端側面の残りの半周分をそれぞれ成形する第2の型32と、該クリップ本体11の先端側の端面11fを成形する第3の型33と、フランジ部14の後端側面を成形する第4の型34とを有している。
第1の型31及び第2の型32のうち、クリップ本体11の外周面を成形するキャビティ面からは、それぞれ、貫通孔16を形成するための貫通孔形成用凸部35が突設されている。また、この第1の型31及び第2の型32のキャビティ面には、それぞれ、クリップ本体11の筒軸心線方向に間隔をおいて、突起部17を形成するための複数個(この実施の形態では4個)の突起部形成用溝37が周設されている。この実施の形態では、これらの突起部形成用溝37のうちの1個は、貫通孔形成用凸部35をクリップ本体11の周方向に横切るように設けられている。
第3の型33のキャビティ面からは、挿入穴12を形成するための挿入穴形成用凸部36が突設されている。第2図(b)の通り、この挿入穴形成用凸部36は、その軸心線と垂直な断面形状が実質的に該挿入穴12の断面形状と合致する形状となっている。即ち、この挿入穴形成用凸部36の外周面は、挿入穴12の各平坦部12aを成形する1対の平坦部36aと、各湾曲部12bを成形する1対の湾曲部36bとを有した略小判形の断面形状となっている。
この実施の形態では、第1の型31と第2の型32とは、第2図(b)の通り、挿入穴形成用凸部36の各湾曲部36b,36bの周方向の中間付近で二分された構成となっている。これらの第1の型31と第2の型32とは、該挿入穴形成用凸部36の各平坦部36aの延在方向と直交方向に離反可能となっている。各貫通孔形成用凸部35は、それぞれ、軸心線をこの第1の型31と第2の型32との離反方向と平行方向として設けられている。第3の型33と第4の型34とは、第1の型31及び第2の型32から挿入穴12の軸心線の延長方向に離反可能となっている。
第2図(a),(b)の通り、これらの型31〜34を合体させて型締めした状態にあっては、挿入穴形成用凸部36の先端が第4の型34のキャビティ面に当接し、各貫通孔形成用凸部35の先端がそれぞれこの挿入穴形成用凸部36の外周面の各平坦部36aに当接するようになっている。なお、挿入穴形成用凸部36は、第4の型34のキャビティ面から突設されてもよい。あるいは、第3の型33のキャビティ面からこの挿入穴形成用凸部36の一半側が突設されると共に、第4の型34のキャビティ面からこの挿入穴形成用凸部36の他半側が突設され、型締めしたときにこれらの凸部36,36の先端同士が当接するように構成されてもよい。
第2図(a),(b)の通りこれらの型31〜34を合体させて型締めした後、クリップ10の成形材料を型内に注入する。この成形材料が硬化した後、第2図(c)の通り型開きしてクリップ10の成形品を取り出す。この成形時に挿入穴形成用凸部36が存在していた部分が脱型後に挿入穴12となり、各貫通孔形成用凸部35が存在していた部分が、それぞれ、クリップ本体11を外周側からこの挿入穴12まで貫通した貫通孔16となる。また、各突起部形成用溝37に成形材料が充填されることにより、クリップ本体11の外周面に複数個の突起部17が形成される。これらの突起部17のうちの1個は、各貫通孔16をクリップ本体11の周方向に横切っている。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業をすることにより、クリップ10が完成する。
次に、このクリップ10を備えたEA材1の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、EA材1の製造方法はこれに限定されない。
第3図(a)のEA材成形用金型40は、上型41と、下型42とを備えている。なお、EA材成形用金型40の構成はこれに限定されない。この実施の形態では、該EA材成形用金型40内において、EA材本体2は、ドアトリム20との対峙面を上向きにして成形される。上型41のキャビティ面からは、クリップ10を該キャビティ面に固定するためのクリップ固定用突起43が突設されている。上型41のキャビティ面には、前述のクリップ10の配置と対応する位置関係にて複数個のクリップ固定用突起43が配設されている。
この実施の形態では、第3図(a)〜(d)の通り、該クリップ固定用突起43は、該上型41のキャビティ面からEA材成形用金型40の内方へ突出した軸部43aを有している。第3図(c)の通り、この軸部43aの軸心線と垂直な断面形状は、クリップ10の挿入穴12と実質的に相似形状となっている。即ち、この軸部43aの外周面も、挿入穴12の各平坦部12aに対応する1対の平坦部43bと、各湾曲部12bに対応する1対の湾曲部43cとを有した略小判形の断面形状となっている。この軸部43aは、クリップ10の挿入穴12に挿入されたときに、その外周面が該挿入穴12の内周面に実質的に密着する太さ(好ましくは、クリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入したときに、後述の張出部44以外の部分において、該軸部43aの外周面と挿入穴12の内周面との間に0.05〜0.5mm特に0.05〜0.2mm程度の隙間があく太さ)となっている。
上型41のキャビティ面からの軸部43aの起立高さは、第3図(d)の通り、クリップ10のフランジ部14が該上型41のキャビティ面に当接するまでクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入した状態において、該軸部43aの先端が各貫通孔16よりもクリップ本体11の先端側に位置し、且つクリップ本体11の該先端側の端面11fから突出しない大きさとなっている。具体的には、この軸部43aの起立高さは、クリップ本体11のアンカー部13側の端面からフランジ部14側の端面までの距離(即ちクリップ本体11の筒軸心線方向の長さ)の85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。
この実施の形態では、第3図(c)の通り、軸部43aの外周面に、該外周面から僅かに側方へ張り出した張出部44が設けられている。軸部43aの外周面からの張出部44の張り出し高さは、0.05〜0.2mm特に0.05〜0.1mm程度であることが好ましい。第3図(c)の通り、この実施の形態では、1対の張出部44が該軸部43aの各平坦部43bにそれぞれ設けられている。各張出部44の張り出し方向の先端側の端面は、各平坦部43bと平行に延在した平坦面となっている。ただし、張出部44の個数や配置、形状はこれに限定されない。
この張出部44の分だけクリップ固定用突起43の太さが挿入穴12の内径よりも大きくなるので、クリップ固定用突起43が挿入穴12に圧入されるようになる。即ち、クリップ固定用突起43が挿入穴12に挿入された状態においては、各張出部44が挿入穴12の内周面に食い込み、その他の部分では軸部43aの外周面が実質的に該挿入穴12の内周面に密着するようになる。これにより、発泡成形中におけるクリップ固定用突起43の挿入穴12からの抜け出し、即ちクリップ10のクリップ固定用突起43からの脱落が防止される。また、クリップ固定用突起43の外周面と挿入穴12の内周面との間に発泡合成樹脂が侵入することが防止される。
なお、各張出部44は、それぞれ、挿入穴12にクリップ固定用突起43が挿入されたときに各貫通孔16に係合するように設けられてもよい。
EA材1を製造する場合には、まず、上型41と下型42とを型開きした状態において、上型41の各クリップ固定用突起43に、それぞれ、第3図(d)の通りフランジ部14が該上型41のキャビティ内面に対面するようにクリップ10を装着する。この際、該挿入穴12の内周面の各平坦部12aをクリップ固定用突起43の軸部43aの外周面の各平坦部43bに合わせるようにして該挿入穴12にクリップ固定用突起43を挿入する。これにより、クリップ10は、各貫通孔16(各係合部15)が所定方向を向いた姿勢で上型41のキャビティ面に取り付けられる。上記の通り、この実施の形態では、クリップ固定用突起43がクリップ10の挿入穴12に圧入されるため、発泡成形中にクリップ10がクリップ固定用突起43から脱落しないようにしっかりと固定される。その後、下型42内にEA材本体2の発泡合成樹脂原料を注入し、上型41と下型42とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂は、第4図(a)の通り、下型42のキャビティ底面から上型41のキャビティ天井面まで膨張して金型40内のキャビティ空間を充填する。これにより、EA材本体2が成形される。また、この際、各クリップ10のクリップ本体11とフランジ部14の裏面側が該発泡合成樹脂中に埋没することにより、各クリップ10がEA材本体2と一体化される。
このクリップ10にあっては、クリップ本体11の最先端部に、該クリップ本体11の外周面から放射方向に張り出す大径円盤状のアンカー部が設けられていないので、このクリップ10が比較的小型であったり、発泡合成樹脂が比較的粘度の高いものであったりしても、クリップ本体11の周囲に発泡合成樹脂が回り込み易く、クリップ本体10の外周面に十分に発泡合成樹脂が密着するようになる。この際、クリップ本体11の外周面に設けられた複数個の突起部17が該発泡合成樹脂に食い込むようになる。
この発泡合成樹脂が硬化した後、上型41と下型42とを型開きしてEA材本体2及び各クリップ10を脱型する。各クリップ10は、各々のフランジ部14が該EA材本体2のドアトリム20との対峙面に露出したものとなっている。このフランジ部14の中央に挿入穴12が開口している。脱型後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、EA材1が完成する。
次に、このEA材1のドアトリム20への取付構造について説明する。
前述の通り、ドアトリム20のEA材取付面には、EA材1の各クリップ10とそれぞれ対応する位置関係にてクリップ係止用突起21が設けられている。第4図(a)〜(c)の通り、この実施の形態では、該クリップ係止用突起21は、ドアトリム20のEA材取付面から立設された2個の突出部22を備えている。第4図(c)の通り、これらの突出部22は、それぞれ、挿入穴12に挿入されたときに該挿入穴の内周面の各平坦部12aに対峙する位置に配置されている。また、これらの突出部22は、相互間に所定の間隔をあけて配置されている。これらの突出部22は、弾性を有した合成樹脂により形成されており、向かい合う突出部22,22同士が互いに接近方向に弾性的に変形可能となっている。なお、この実施の形態では、該突出部22はドアトリム20と同一の材料により一体に形成されている。
この実施の形態では、ドアトリム20のEA材取付面からの各突出部22の突出高さは、第4図(a)の通り、クリップ本体11の筒軸心線方向の長さと実質的に同一か、それよりも若干小さいものとなっている。具体的には、各突出部22の突出高さは、クリップ本体11の筒軸心線方向の長さの85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。これにより、クリップ10のフランジ部14がドアトリム20のEA材取付面に当接するまで各突出部22を挿入穴12に挿入した状態において、各突出部22の先端がクリップ本体11のアンカー部13側の端面から突出しないようになっている。
第4図(b)の通り、各突出部22の側面には、それぞれ、側方(突出部22のEA材取付面からの突出方向と直交方向)へ張り出す爪部23が設けられている。突出部22,22同士の間では、爪部23,23同士は、互いに反対方向に張り出している。この実施の形態では、各爪部23は、第4図(a),(b)の通り、各突出部22の先端側ほど該突出部22の側面からの張り出し高さが小さくなるテーパ形状となっている。
なお、クリップ係止用突起21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、挿入穴12の各平坦部12a及び各湾曲部12bの4面全てに貫通孔16が設けられている場合には、クリップ係止用突起21は、これらの平坦部12a及び湾曲部12bにそれぞれ対面するように配置された4個の突出部22と、これらの突出部22から各貫通孔16に係合するように側方へ張り出した4個の爪部23とを有した構成とされてもよい。
EA材1をドアトリム20に取り付ける場合、ドアトリム20の各クリップ係止用突起21を対応するEA材1の各クリップ10の挿入穴12に挿入しつつ、EA材1をドアトリム20に押し付ける。この際、各クリップ係止用突起21においては、各爪部23が挿通穴12の内周面に押し付けられることにより、突出部22,22同士が接近方向に撓みながら該挿入穴12に差し込まれる。そして、第4図(a)の通り、クリップ10のフランジ部14がドアトリム20のEA材取付面に当接するまで突出部22,22が挿入穴12に差し込まれると、各爪部23が各貫通孔16に達する。これにより、突出部22,22同士を接近方向に撓ませていた力が解除されて該突出部22,22がそれぞれ元形状に復帰し、これにより各爪部23が各貫通孔16に入り込んで該貫通孔16の縁部(即ち係合部15)に係合する。これにより、各クリップ10が各クリップ係止用突起21に係止され、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。
<クリップ10の作用効果>
前述の通り、このクリップ10にあっては、クリップ本体11の外周面に、複数個の突起部17が設けられている。そのため、クリップ本体11をEA材本体2に埋設したときに、これらの突起部17がそれぞれ該EA材本体2に食い込むようになる。これにより、クリップ本体11の外周面にEA材本体2がしっかりと結合するようになり、クリップ10とEA材本体2との結合強度の高いEA材1を得ることが可能となる。
このように、本発明にあっては、クリップ本体11の外周面の突起部17がEA材本体2に食い込むことによってアンカー効果が得られるので、クリップ本体11の最先端部に、該クリップ本体11の外周面から放射方向に張り出す大径円盤状のアンカー部を設けることを不要とすることができる。これにより、例えばこのクリップ10が比較的小型であったり、EA材本体2を構成する発泡合成樹脂が比較的粘度の高いものであったりしても、クリップ本体11の周囲に発泡合成樹脂が回り込み易いものとなり、クリップ本体11の外周面に十分に発泡合成樹脂を密着させることができるようになる。
この実施の形態では、これらの突起部17は、クリップ本体11の筒軸心線方向に間隔をあけて配設されており、且つ各突起部17は、それぞれクリップ本体11の周方向に延在したものとなっているので、これらの突起部17がEA材本体2に食い込むことにより高いアンカー効果が得られる。
この実施の形態では、クリップ10の係合部15は、挿入穴12の各側面12a〜12dをクリップ本体11の外周側から挿入穴12内まで貫通した貫通孔16により形成されている。即ち、このクリップ10は、挿入穴12内にアンダーカット部を有していない。そのため、このクリップ10は、第2図(a)〜(c)のような簡易な構造の金型30を用いた射出成形により容易に製造することができる。
また、このクリップ10にあっては、挿入穴12内に、該挿入穴12の内方へ張り出す段部も形成されていない。そのため、第3図(a),(d)の通り、EA材本体2を発泡成形するに際し、EA材成形用金型40のクリップ固定用突起43を該挿入穴12に挿入してクリップ10を該EA材成形用金型40に取り付けたときに、このクリップ固定用突起43の軸部43aの外面を挿入穴12の内面に密着させることが可能である。これにより、クリップ本体12の先端面11fに封体を設けて挿入穴12を塞がなくても、EA材本体2の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴12とクリップ固定用突起43との間に侵入することを防止することができる。
以上のように、この実施の形態では、クリップ10を比較的簡易な構造の金型30を用いて製造することが可能であり、且つ挿入穴12を塞ぐ封体を設けることを不要とすることが可能であるため、クリップ10を低コストにて構成することが可能である。
この実施の形態では、1個の突起部17が各貫通孔16を横切るように設けられている。そのため、この突起部17の分だけ、クリップ本体11の外周面に露呈する各貫通孔16の開口面積が小さくなるので、EA材本体2の発泡成形時に各貫通孔16に発泡合成樹脂が侵入することを防止することが可能である。
かかる本発明のクリップ10を備えたEA材1にあっては、クリップ本体11の外周面の突起部17がEA材本体2中に埋設されているため、この突起部17がEA材本体2に食い付き、クリップ10とEA材本体2との結合強度が高い。
この実施の形態では、EA材1を製造する際に、EA材成形用金型40のクリップ固定用突起43をクリップ10の挿入穴12に挿入して該クリップ10をEA材成形用金型40の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起43の外面を挿入穴12の内面に密着させるため、挿入穴12の端面を封体で塞がなくても、EA材本体2の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴12とクリップ固定用突起43との間に侵入することが防止される。
本発明のEA材1の取付構造にあっては、ドアトリム20のクリップ係止用突起21をクリップ10の挿入穴12に挿入して係合部15に係合させることにより、簡単にEA材1をドアトリム20に取り付けることができる。
この実施の形態では、このクリップ係止用突起21に、側方へ張り出す爪部23を設け、この爪部23をクリップ10の係合部15(貫通孔16)に係合させているので、クリップ10をしっかりとクリップ係止用突起21に係止することができる。
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
上記の実施の形態は、EA材及びその取付用クリップ、並びにそのドアトリムへの取付構造への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材及びその取付用クリップ、並びにその取付構造にも適用可能である。