車両のドアの裏側(車内側)には、車両の側面衝突時の衝撃エネルギー吸収(Energy Absorption:EA)のために、硬質ウレタンフォームよりなる衝撃エネルギー吸収材(以下、EA材と略すことがある。)が取り付けられている。このEA材をドアトリムに取り付ける方法として、特開2005−47225(特許文献1)には、EA材にクリップを設けておき、このクリップを、ドアトリムに設けられたクリップ係止用突起に係合させることにより、EA材をドアトリムに取り付けることが記載されている。特許文献1では、このクリップは、一部がEA材本体に埋設されるようにして該EA材本体と一体化されている。
第6図は、特許文献1の図6に記載のクリップ及びEA材取付構造の説明図である。第6図(a)は、このEA材取付構造を示す断面図、第6図(b)は、このEA材取付構造のクリップ係止用突起の斜視図、第6図(c)は、このEA材取付構造に用いられたクリップの縦断面斜視図である。
このEA材取付構造においては、EA材101がドアトリム102に対しクリップ104及びクリップ係止用突起108を介して取り付けられている。
このクリップ係止用突起108は、ドアトリム102から突出する1対の突出部108b,108bを有している。各突出部108b,108bの先端側の側面に、それぞれ側方へ張り出す爪部108aが設けられている。この爪部108aは、各突出部108bの基端側ほど側方への張り出し高さが大きくなっている。
各突出部108bは、弾性を有した合成樹脂により形成されており、これらの突出部108b,108b同士は、互いに接近方向に弾性的に変形可能となっている。
クリップ104は、このクリップ係止用突起108が挿入される挿入穴112を有した円筒状のクリップ本体106と、該クリップ本体106の筒軸心線方向の一端側から外向き鍔状に張り出すアンカー部105と、該クリップ本体106の筒軸心線方向の他端側から外向き鍔状に張り出すフランジ部107とを備えている。挿入穴112は、クリップ本体106をその筒軸心線方向の一端面から他端面まで貫通している。挿入穴112の内周面には、周方向に凹段部113が凹設されている。
第6図(a)の通り、クリップ104は、クリップ本体106及びアンカー部105がEA材101中に埋設されている。
このクリップ104を備えたEA材101をドアトリム102に取り付ける場合には、クリップ係止用突起108を挿入穴112に挿入しながらEA材101をドアトリム102に押し付ける。これにより、クリップ係止用突起108の各爪部108aが挿入穴112内の凹段部113に弾性的に係合してクリップ104が該クリップ係止用突起108に係止され、EA材101がドアトリム102に固定される。
第7図は、特許文献1の図1に記載のクリップとEA材成形用金型との係合関係を示す断面図である。第7図(a)は、このクリップをEA材成形用金型のクリップ固定用突起に係合させる前の状態を示し、第7図(b)は、このクリップをEA材成形用金型のクリップ固定用突起に係合させた後の状態を示している。
第7図のクリップ140は、ドアトリムのクリップ係止用突起(第7図では図示略)が挿入される挿入穴142を有した角筒状のクリップ本体141を備えている。挿入穴142は、クリップ本体141をその筒軸心線方向の一端面から他端面まで貫通している。
このクリップ140にあっては、挿入穴142は、クリップ本体141の筒軸心線方向の一端側と他端側とが大口径部142a,142cとなっており、両者の間が小口径部142bとなっている。この小口径部142bと大口径部142cとの間に、該挿入穴142の内方へ張り出す凸段部143が形成されている。小口径部142の内周面には、後述のクリップ固定用突起150に当接する凸部147が設けられている。
クリップ本体141の該他端側には外向き鍔状のアンカー部144が設けられ、該一端側には外向き鍔状のフランジ部145が設けられている。クリップ本体141の該アンカー部144側の端面には、挿入穴142(大口径部142c)を封鎖した封体148が取り付けられている。
このクリップ140を備えたEA材を製造する場合には、EA材成形用金型160の内面から突設された角柱状のクリップ固定用突起150を挿入穴142に挿入してクリップ140を該EA材成形用金型160の内面に取り付けておく。このクリップ固定用突起150は、挿入穴142の小口径部142bに差し込まれる。この際、小口径部142bの内周面の凸部147が押し縮められるようにしてクリップ固定用突起150の側面に当接することにより、クリップ140がクリップ固定用突起150に係止される。その後、該EA材成形用金型160内で発泡合成樹脂原料を発泡させてEA材本体を成形することにより、クリップ140が一体化されたEA材が製造される。
特許文献1では、クリップ本体141は、挿入穴142が方形断面形状の角筒状となっている。また、クリップ固定用突起150は、この挿入穴142に内嵌する方形断面形状の角柱状となっている。そのため、これらの角を合わせるようにしてクリップ固定用突起150を挿入穴142に挿入することにより、クリップ140を容易に且つ確実に所定の向きにしてEA材成形用金型160の内面に取り付けることができる。
このクリップ140を備えたEA材をドアトリムに取り付ける場合には、第6図のEA材取付構造と同様に、ドアトリムに設けられたクリップ係止用突起を挿入穴142に押し込んで該挿入穴142内の凸段部143にクリップ係止用突起の爪部を係合させる。
上記第6図のクリップ104にあっては、挿入穴112の内周面に凹設された凹段部113にクリップ係止用突起108の各爪部108aを係合させるように構成されているが、この凹段部113はアンダーカット形状となっているので、このクリップ104を射出成形等により成形する場合には、クリップ成形用金型が複雑な構造となり、製造に手間がかかると共に、コスト高となる。
上記第7図のクリップ140にあっては、挿入穴142の内周面から該挿入穴142の内方に張り出す凸段部143にクリップ係止用突起の爪部を係合させるように構成されているので、挿入穴142内にアンダーカット部が存在しない。そのため、このクリップ140は、比較的簡易な構造のクリップ成形用金型を用いて製造することができる。
しかしながら、このクリップ140を備えたEA材を製造するに際し、EA材成形用金型160のクリップ固定用突起150を挿入穴142の小口径部142bに差し込んでクリップ140をEA材成形用金型160内に固定したときに、この小口径部142bの両側の大口径部142a,142cの内周面と該クリップ固定用突起150との間には、この凸段部143の分だけ隙間があく。そのため、EA材本体の発泡成形時に、この隙間に発泡合成樹脂が侵入しないようにするために、前述の通りクリップ本体141のアンカー部144側の端面に封体148を設けて挿入穴142(大口径部142c)を塞ぐ必要がある。
本発明は、比較的簡易な構造の金型を用いて製造することが可能であり、且つクリップ本体の端面に挿入穴を塞ぐ封体を設けることを不要とすることが可能であると共に、より容易に且つ確実に所定の向きにして発泡成形体成形用金型に取り付けることが可能なクリップを提供することを目的とする。また、本発明は、このクリップが発泡成形体に埋設されるようにして該発泡成形体と一体化されてなる発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法と、この発泡成形部材を被取付部材に取り付けた取付構造とを提供することを目的とする。
本発明(請求項1)のクリップは、発泡成形体を被取付部材に取り付けるためのクリップ(10)であって、該被取付部材に設けられたクリップ係止用突起が挿入される挿入穴(12)と4側面(11a〜11d)とを有した角筒状のクリップ本体(11)と、該挿入穴の内周面に設けられた、該クリップ係止用突起が係合する係合部とを備えており、該挿入穴は、該クリップ本体をその筒軸心線方向に貫通しており、該挿入穴は、第1の側面、第2の側面、第3の側面及び第4の側面によって囲まれた方形断面形状となっており、少なくとも該クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体に埋設されるようにして該発泡成形体と一体化されるクリップにおいて、該係合部は、該第1〜第4の側面(11a〜11d)を該クリップ本体の外周側から該挿入穴まで貫通した貫通孔(16)よりなり、前記クリップ本体(11)は、合成樹脂の射出成形品よりなり、該クリップ(10)は、前記クリップ本体(11)と、該クリップ本体(11)の筒軸心線方向の一端側から放射方向へ外向き鍔状に張り出したアンカー部(13)と、該クリップ本体(11)の筒軸心線方向の他端側から放射方向へ外向き鍔状に張り出したフランジ部(14)とを備えており、該クリップ(10)を射出成形するためのクリップ成形用金型(30)は、クリップ本体(11)の外周側の各側面(11a,11b,11c,11d)と、これらに連なるアンカー部(13)のフランジ部(14)側の面及びフランジ部(14)のアンカー部(13)側の面を成形するための第1〜第4の型(31〜34)と、該アンカー部(13)のフランジ部(14)と反対側の面を成形する第5の型(35)と、該フランジ部(14)のアンカー部(13)と反対側の面を成形する第6の型(36)とを有しており、第1〜第4の型(31〜34)のうち、クリップ本体(11)の外周側の各側面(11a,11b,11c,11d)を成形するキャビティ面からは、それぞれ、貫通孔(16)を形成するための貫通孔形成用凸部(37)が突設されており、第5の型(35)のキャビティ面からは、挿入穴(12)を形成するための角柱状の挿入穴形成用凸部(38)が突設されており、これらの型(31〜36)を合体させて型締めした状態にあっては、挿入穴形成用凸部(38)の先端が第6の型(36)のキャビティ面に当接し、各貫通孔形成用凸部(37)の先端がそれぞれこの挿入穴形成用凸部(38)の4側面に当接するようになっており、成形時に挿入穴形成用凸部(38)が存在していた部分が脱型後に挿入穴(12)となり、貫通孔形成用凸部(37)が存在していた部分が貫通孔(16)となっていることを特徴とするものである。
請求項2のクリップは、請求項1において、前記挿入穴は、実質的に正方形断面形状となっており、前記第1〜第4の側面にそれぞれ前記貫通孔が設けられていることを特徴とするものである。
請求項3のクリップは、請求項1又は2において、前記合成樹脂は、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、又はポリアセタール樹脂であることを特徴とするものである。
請求項4のクリップは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記クリップ本体の外周側に、前記貫通孔を封鎖した封体が設けられていることを特徴とするものである。
請求項5のクリップは、請求項4において、前記封体は不織布よりなることを特徴とするものである。
請求項6のクリップは、請求項2において、クリップ本体(11)の外周の側面(11a〜11d)と挿入穴(12)の側面(12a〜12d)とが平行に延在していることを特徴とするものである。
本発明(請求項7)の発泡成形部材は、発泡成形体と、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のクリップとを有し、該クリップは、少なくとも前記クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体に埋設されることにより該発泡成形体と一体化されていることを特徴とするものである。
本発明(請求項8)の発泡成形部材の製造方法は、請求項7に記載の発泡成形部材を製造するための方法であって、発泡成形体成形用金型の内面に設けられたクリップ固定用突起を前記挿入穴に挿入して前記クリップを該発泡成形体成形用金型の内面に取り付けるクリップ取付工程と、該発泡成形体成形用金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程とを有しており、該クリップ固定用突起は、該挿入穴に挿入された状態において、その外周面が該挿入穴の内周面に密着するように構成されていることを特徴とするものである。
請求項9の発泡成形部材の製造方法は、請求項8において、前記クリップ固定用突起は、前記挿入穴に内嵌する方形断面形状の角柱状となっていることを特徴とするものである。
本発明(請求項10)の発泡成形部材の取付構造は、請求項7に記載の発泡成形部材を被取付部材に取り付けた構造であって、該被取付部材にクリップ係止用突起が設けられており、該クリップ係止用突起が前記クリップの前記挿入穴に挿入されて前記係合部に係合したことにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられているものである。
請求項11の発泡成形部材の取付構造は、請求項10において、前記クリップ係止用突起は、前記被取付部材から突出した突出部と、該突出部から側方へ張り出した爪部とを備え、該爪部が前記係合部に係合していることを特徴とするものである。
本発明(請求項1)のクリップは、被取付部材に設けられたクリップ係止用突起がクリップ本体の挿入穴に挿入され、該クリップ係止用突起が該挿入穴の内周面の係合部に係合することにより、被取付部材に係止される。本発明では、この係合部は、クリップ本体を外周側から挿入穴まで貫通した貫通孔よりなる。即ち、本発明にあっては、挿入穴の内周面に、前述の第6図のクリップ104における凹段部113のようなアンダーカット部は存在しない。従って、本発明のクリップは、比較的簡易な構造の金型を用いて製造することが可能である。
また、本発明にあっては、挿入穴の内周面に、前述の第7図のクリップ140の凸段部143のような、該挿入穴の内方へ張り出す段部も存在しない。そのため、このクリップを備えた発泡成形部材を製造するに際し、発泡成形体成形用金型のクリップ固定用突起を挿入穴に挿入してクリップを該発泡成形体成形用金型の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起を挿入穴の内周面に密着させることが可能である。これにより、クリップ本体の端面に封体を設けて挿入穴を塞がなくても、発泡成形体の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴とクリップ固定用突起との間に侵入することを防止することが可能である。
このように、本発明にあっては、クリップを比較的簡易な構造の金型を用いて製造することが可能であり、且つクリップ本体の端面に挿入穴を塞ぐ封体を設けることを不要とすることが可能であるため、クリップを低コストにて構成することが可能である。
本発明では、この挿入穴は、実質的に、第1〜第4の側面によって囲まれた方形断面形状となっている。そのため、例えば発泡成形体成形用金型のクリップ固定用突起を、この挿入穴に内嵌する方形断面形状の角柱状とし、この挿入穴の角をクリップ固定用突起の角に合わせるようにしてクリップ固定用突起を挿入穴に挿入することにより、クリップをより容易に且つ確実に所定の向きにして発泡成形体成形用金型に取り付けることが可能となる。
請求項2の通り、この挿入穴を正方形断面形状とし、第1〜第4の側面の全てにそれぞれ貫通孔を設けておくことにより、クリップ固定用突起を挿入穴に挿入する際にこれらの角を合わせるようにするだけで、確実に、所定方向を向いた側面に貫通孔(係合部)が存在するようにクリップを発泡成形体成形用金型に取り付けることができる。
本発明のクリップは、比較的簡易な構造の金型を用いて合成樹脂の射出成形により容易に製造することが可能である。
請求項4の通り、クリップ本体の外周側に、前記貫通孔を閉鎖する封体を設けてもよい。このように構成することにより、発泡成形体の成形時に、この貫通孔に発泡合成樹脂が侵入することが防止される。
請求項5の通り、この封体を不織布により構成した場合には、発泡成形体の成形時に、この不織布に発泡合成樹脂が含浸することにより、クリップと発泡成形体との結合強度が向上する。
本発明の態様では、クリップ本体の一端側に、該クリップ本体の外周面から放射方向に張り出すアンカー部が設けられている。このアンカー部が発泡成形体に埋設されることにより、クリップの発泡成形体からの抜け留め効果が高いものとなる。
本発明(請求項7)の発泡成形部材は、かかる本発明のクリップを備えているため、比較的低コストにて製造することが可能であると共に、クリップの取付精度を高くすることが可能である。
本発明(請求項8)の発泡成形部材の製造方法にあっては、発泡成形体成形用金型の内面に設けられたクリップ固定用突起をクリップの挿入穴に挿入して該クリップを発泡成形体成形用金型の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起を該挿入穴の内周面に密着させるため、クリップ本体の端面に封体を設けて該挿入穴を塞がなくても、発泡成形体の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴とクリップ固定用突起との間に侵入することを防止することが可能である。
請求項9の通り、このクリップ固定用突起を、クリップの挿入穴に内嵌する方形断面形状の角柱状とすることにより、これらの角を合わせるようにしてクリップ固定用突起を挿入穴に挿入することにより、クリップをより容易に且つ確実に所定の向きにして発泡成形体成形用金型に取り付けることが可能である。
本発明(請求項10)の発泡成形部材の取付構造にあっては、被取付部材のクリップ係止用突起をクリップの挿入穴に挿入して係合部に係合させることにより、簡単に発泡成形部材を被取付部材に取り付けることができる。
請求項11の通り、このクリップ係止用突起に、側方へ張り出す爪部を設け、この爪部をクリップの係合部(貫通孔)に係合させることにより、クリップをしっかりとクリップ係止用突起に係止することができる。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、発泡成形部材はEA材であり、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造を例示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材及びその被取付部材への取付構造にも適用可能である。
第1図(a)は、実施の形態に係るクリップのクリップ本体の筒軸心線に沿う断面斜視図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第1図(c)は第1図(b)のC−C線矢視図(クリップの側面図)である。第2図(a)は、このクリップを製造するためのクリップ成形用金型の縦断面図(第2図(b)のA−A線に沿う断面図)であり、第2図(b)は第2図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第2図(a),(b)は、このクリップ成形用金型の型閉め状態を示している。第3図(a),(b)は、それぞれ、このクリップ成形用金型の型開き状態を示す第2図(a),(b)と同様部分の断面図である。第4図(a)は、このクリップを備えた発泡成形部材としてのEA材を製造するためのEA材成形用金型の縦断面図であり、第4図(b)は、クリップが取り付けられる前のEA材成形用金型のクリップ固定用突起付近の拡大断面図であり、第4図(c)は第4図(b)のC−C線矢視図であり、第4図(d)は、該クリップ固定用突起にクリップが取り付けられた状態を示す第4図(b)と同様部分の断面図である。なお、第4図(a),(b),(d)は、それぞれ、該クリップ固定用突起の軸心線に沿う断面にて図示されている。第5図(a)は、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造の水平断面図であり、第5図(b)は、EA材を取り付ける前のドアトリムの水平断面図であり、第5図(c)は第5図(b)のC−C線矢視図である。なお、第5図(a)は、クリップ本体の筒軸心線に沿う断面を示しており、第5図(b)は第5図(a)と同様部分の断面を示している。
EA材1は、第4図(a)及び第5図(a)の通り、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂成形体よりなるEA材本体2と、該EA材本体2をドアトリム20に取り付けるためのクリップ10とを備えている。クリップ10は、インサート成形によりEA材本体2と一体化されている。このクリップ10が、ドアトリム20に設けられたクリップ係止用突起21(第5図(a)〜(c))に係止されることにより、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。EA材1(EA材本体2)のドアトリム20との対峙面には、クリップ10が複数個、所定位置に配設されており、ドアトリム20のEA材取付面には、これらのクリップ10とそれぞれ対応する位置関係にて、複数個のクリップ係止用突起21が設けられている。このクリップ係止用突起21の詳細については後述する。
クリップ10は、該クリップ係止用突起21が挿入される挿入穴12を有した略角筒形状のクリップ本体11と、該クリップ本体11の筒軸心線方向の一端側から放射方向へ外向き鍔状に張り出したアンカー部13と、該クリップ本体11の筒軸心線方向の他端側から放射方向へ外向き鍔状に張り出したフランジ部14等を備えている。該挿入穴12は、クリップ本体11をその筒軸心線方向に貫通している。アンカー部13及びフランジ部14は、それぞれ、該クリップ本体11の筒軸心線方向の両端側の端面と面一状に形成されている。
挿入穴12は、第1図(a),(b)の通り、実質的に、第1の側面12a、第2の側面12b、第3の側面12c及び第4の側面12dを有した方形の断面形状(クリップ本体11の筒軸心線方向と直交方向の断面形状。以下、同様。)となっている。特にこの実施の形態では、該挿入穴12は、実質的に、側面12a〜12dの幅(クリップ本体11の筒軸心線と直交方向の幅。以下、同様。)が同一であり、且つ隣り合う側面12a,12b同士、12b,12c同士、12c,12d同士及び12d,12a同士が直角に交わっている正方形断面形状となっている。各側面12a〜12dの幅は、それぞれ、実質的にクリップ本体11の筒軸心線方向の一端側から他端側まで一定となっている。なお、挿入穴12の断面形状は正方形に限定されるものではなく、長方形や菱形、台形など、正方形以外の方形断面形状であってもよい。
この実施の形態では、クリップ本体11の外周面も、挿入穴12と相似形で且つ各側面11a〜11d(第3図(b))が該挿入穴12の各側面12a〜12dと平行に延在した正方形断面形状となっているが、クリップ本体11の外周面の断面形状はこれに限定されない。例えば、クリップ本体11の外周面の断面形状と挿入穴12の断面形状とは、互いに異なる形状であってもよい。この実施の形態では、クリップ本体11の筒軸心線の延長方向から見たアンカー部13及びフランジ部14の平面視形状は円形となっているが、これに限定されない。
第1図(b)及び第3図(b)の通り、クリップ本体11には、挿入穴12の各側面12a〜12dをそれぞれ該クリップ本体11の外周側から該挿入穴12内まで貫通した貫通孔16が設けられている。この貫通孔16により、挿入穴12にクリップ係止用突起21が挿入されたときに、該クリップ係止用突起21から側方へ張り出した後述の爪部23が係合する係合部15が構成されている。即ち、挿入穴12にクリップ係止用突起21が挿入されると、爪部23がこの貫通孔16に入り込んでこの貫通孔16の縁部に係合するようになる。
この実施の形態では、第1図(a),(b)及び第3図(b)の通り、対向する側面12a,12c同士又は12b,12同士の間では、各々の貫通孔16,16同士もクリップ本体11の筒軸心線と直交方向に正対するように配置されている。各貫通孔16は、クリップ本体11の筒軸心線方向の中間部に配置されている(即ち、各貫通孔16は、クリップ本体11の筒軸心線方向の一端側の端面及び他端側の端面からそれぞれ等距離に位置している。)。この実施の形態では、第1図(c)の通り、クリップ10を側面視したときの各貫通孔16の開口形状は、直交する2辺がそれぞれクリップ本体11の筒軸心線と平行方向及びこれと直交方向に延在した略正方形状となっている。
なお、貫通孔16の個数及び配置、開口形状はこれに限定されない。例えば、この実施の形態では、挿入穴12の全ての側面12a〜12dにそれぞれ貫通孔16が設けられているが、対向するいずれか1対の側面12a,12c同士又は12b,12d同士にのみ貫通孔16が設けられてもよい。貫通孔16の開口形状は、クリップ係止用突起21の爪部23の形状に応じて種々の形状とすることができる。あるいは、例えばクリップ10の取付誤差を吸収するために、この貫通孔16を、各側面12a〜12dの幅方向に長い長穴状としてもよい。隣り合う側面12a,12b同士、12b,12c同士、12c,12d同士又は12d,12a同士に跨って貫通孔16が形成されてもよい。
第1図(a)〜(c)の通り、この実施の形態では、クリップ本体11の外周面に、各貫通孔16を封鎖する封体17が設けられている。この実施の形態では、該封体17は、帯状のものであり、クリップ本体11の外周を1周するように設けられている。これにより、1枚の封体17によって全ての貫通孔16が封鎖されたものとなっている。なお、封体17の形状や配置はこれに限定されない。例えば、小片状の封体17を貫通孔16と同数個用意し、この小片状の封体17で各貫通孔16を個別に封鎖するようにしてもよい。この封体17は、構成材料によっても異なるが、接着や粘着、溶着等の結合手段によりクリップ本体11の外周面に結合されている。なお、例えばこの実施の形態のように、封体17を、クリップ本体11の外周を周回するように設ける場合には、封体17をクリップ本体11の外周に巻き付けた後、この封体17の両端同士を連結して環状とすることにより、この封体17とクリップ本体11との結合を省略することも可能である。
この封体17を構成する材料としては、例えば不織布等の布材や、合成樹脂製のテープ等が好適である。なお、封体17を構成する材料はこれに限定されない。本発明においては、この封体17は省略されてもよい。
このクリップ10は、合成樹脂の射出成形品よりなる。このクリップ10を構成する材料としては、例えばABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)等が好適であるが、これに限定されない。
以下に、このクリップ10の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、クリップ10の製造方法はこれに限定されない。
第2図(a),(b)及び第3図(a),(b)の通り、このクリップ10を製造するためのクリップ成形用金型30は、クリップ本体11の外周側の各側面11a,11b,11c,11dと、これらに連なるアンカー部13のフランジ部14側の面及びフランジ部14のアンカー部13側の面の略1/4周分とをそれぞれ成形する第1の型31、第2の型32、第3の型33及び第4の型34と、該アンカー部13のフランジ部14と反対側の面を成形する第5の型35と、該フランジ部14のアンカー部13と反対側の面を成形する第6の型36とを有している。
第1〜第4の型31〜34のうち、クリップ本体11の外周側の各側面11a,11b,11c,11dを成形するキャビティ面からは、それぞれ、貫通孔16を形成するための貫通孔形成用凸部37が突設されている。第5の型35のキャビティ面からは、挿入穴12を形成するための角柱状の挿入穴形成用凸部38が突設されている。第2図(a),(b)の通り、これらの型31〜36を合体させて型締めした状態にあっては、挿入穴形成用凸部38の先端が第6の型36のキャビティ面に当接し、各貫通孔形成用凸部37の先端がそれぞれこの挿入穴形成用凸部38の4側面に当接するようになっている。なお、挿入穴形成用凸部38は、第6の型36のキャビティ面から突設されていてもよい。あるいは、第5の型35のキャビティ面からこの挿入穴形成用凸部38の一半側が突設されると共に、第6の型36のキャビティ面からこの挿入穴形成用凸部38の他半側が突設され、型締めしたときにこれらの凸部38,38の先端同士が当接するように構成されてもよい。
第3図(b)の通り、第1〜第4の型31〜34は、挿入穴形成用凸部38から四方(各々が成形するクリップ本体11の各側面11a〜11dと直交方向)に離反可能となっている。各貫通孔形成用凸部37は、軸心線を、各々が設けられた型31〜34の離反移動方向と平行方向として設けられている。また、第3図(a)の通り、第5の型35と第6の型36とは、第1〜第4の型31〜34から挿入穴12の軸心線の延長方向に離反可能となっている。
第2図(a),(b)の通りこれらの型31〜36を合体させて型締めした後、クリップ10の成形材料を型内に注入する。この成形材料が硬化した後、第3図(a),(b)の通り型開きしてクリップ10の成形品を取り出す。この成形時に挿入穴形成用凸部38が存在していた部分が脱型後に挿入穴12となり、各貫通孔形成用凸部37が存在していた部分が、それぞれ、クリップ本体11の外周側からこの挿入穴12に連通した貫通孔16となる。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業をした後、クリップ本体11の外周面に、各貫通孔16を覆うように封体17を巻き付けることにより、クリップ10が完成する。
次に、このクリップ10を備えたEA材1の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、EA材1の製造方法はこれに限定されない。
第4図(a)のEA材成形用金型40は、上型41と、下型42とを備えている。なお、EA材成形用金型40の構成はこれに限定されない。この実施の形態では、該EA材成形用金型40内において、EA材本体2は、ドアトリム20との対峙面を上向きにして成形される。上型41のキャビティ面からは、クリップ10を該キャビティ面に固定するためのクリップ固定用突起43が突設されている。上型41のキャビティ面には、前述のクリップ10の配置と対応する位置関係にて複数個のクリップ固定用突起43が配設されている。
この実施の形態では、第4図(b),(c)の通り、該クリップ固定用突起43は、実質的にクリップ10の挿入穴12の断面形状と相似形の正方形断面形状を有する角柱状の軸部43aを有している。この軸部43aは、クリップ10の挿入穴12に挿入されたときに、その外周側の各側面が該挿入穴12の各側面12a〜12dに実質的に密着する太さとなっている。具体的には、この軸部43aの各側面の幅(軸部43aの軸心線と直交方向の幅)は、挿入穴12の各側面12a〜12dの幅−0.05〜−0.2mm程度であることが好ましい。
上型41のキャビティ面からの軸部43aの起立高さは、第4図(d)の通り、クリップ10のフランジ部14が該上型41のキャビティ面に当接するまでクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入した状態において、該軸部43aの先端が各貫通孔16よりもアンカー部13側に位置し、且つクリップ本体11の該アンカー部13側の端面から突出しない大きさとなっている。具体的には、この軸部43aの起立高さは、クリップ本体11のアンカー部13側の端面からフランジ部14側の端面までの距離(即ちクリップ本体11の筒軸心線方向の長さ)の85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。
この実施の形態では、第3図(c)の通り、軸部43aの側面に、僅かに側方へ張り出した張出部44が設けられている。この張出部44の該側面からの張り出し高さは、0.1〜0.5mm特に0.2〜0.3mm程度であることが好ましい。第4図(c)の通り、この張出部44の張り出し方向の先端側の端面は、この張出部44が設けられた軸部43aの側面と平行な平坦面となっている。この実施の形態では、軸部43aの対向する1対の側面にそれぞれ張出部44が設けられている。ただし、張出部44の個数や配置、形状はこれに限定されない。
この張出部44の分だけクリップ固定用突起43の太さが挿入穴12よりも大きくなるので、クリップ固定用突起43が挿入穴12に圧入されるようになる。即ち、クリップ固定用突起43が挿入穴12に挿入された状態においては、各張出部44が挿入穴12の1対の側面12a,12c又は12b,12dに食い込み、その他の部分では軸部43aの外面が実質的に該挿入穴12の内面に密着するようになる。これにより、発泡成形中におけるクリップ固定用突起43の挿入穴12からの抜け出し、即ちクリップ10のクリップ固定用突起43からの脱落が防止される。また、クリップ固定用突起43の外面と挿入穴12の内面との間に発泡合成樹脂が侵入することが防止される。
なお、各張出部44は、それぞれ、挿入穴12にクリップ固定用突起43が挿入されたときに各貫通孔16に係合するように設けられてもよい。
EA材1を製造する場合には、まず、上型41と下型42とを型開きした状態において、上型41の各クリップ固定用突起43にそれぞれ第4図(d)のようにクリップ10を装着する。この際、挿入穴12の角とクリップ固定用突起43の角とを合わせるようにしてクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入する。これにより、クリップ10は、挿入穴12の各側面12a〜12d即ち各貫通孔16が所定の方向を向いた姿勢で上型41のキャビティ面に取り付けられる。上記の通り、この実施の形態では、クリップ固定用突起43がクリップ10の挿入穴12に圧入されるため、発泡成形中にクリップ10がクリップ固定用突起43から脱落しないようにしっかりと固定される。その後、下型42内にEA材本体2の発泡合成樹脂原料を注入し、上型41と下型42とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂は、第4図(a)の通り、下型42のキャビティ底面から上型41のキャビティ天井面まで膨張して金型40内のキャビティ空間を充填する。これにより、EA材本体2が成形される。また、この際、各クリップ10のクリップ本体11、アンカー部13、並びにフランジ部14の該アンカー部13側の面が該発泡合成樹脂中に埋没することにより、各クリップ10がEA材本体2と一体化される。
この発泡合成樹脂が硬化した後、上型41と下型42とを型開きしてEA材本体2及び各クリップ10を脱型する。各クリップ10は、各々のフランジ部14が該EA材本体2のドアトリム20との対峙面に露出したものとなっている。このフランジ部14の中央に挿入穴12が開口している。脱型後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、EA材1が完成する。
次に、このEA材1のドアトリム20への取付構造について説明する。
前述の通り、ドアトリム20のEA材取付面には、EA材1の各クリップ10とそれぞれ対応する位置関係にてクリップ係止用突起21が設けられている。この実施の形態では、該クリップ係止用突起21は、ドアトリム20のEA材取付面から立設された4個の突出部22を備えている。これらの突出部22は、それぞれ、挿入穴12に挿入されたときに該挿入穴の各側面12a〜12dに対峙する位置に配置されている。また、これらの突出部22は、相互間に所定の間隔をあけて配置されている。これらの突出部22は、弾性を有した合成樹脂により形成されており、向かい合う突出部22,22同士が互いに接近方向に弾性的に変形可能となっている。なお、この実施の形態では、該突出部22はドアトリム20と同一の材料により一体に形成されている。
この実施の形態では、ドアトリム20のEA材取付面からの各突出部22の突出高さは、第5図(a)の通り、クリップ本体11の筒軸心線方向の長さと実質的に同一か、それよりも若干小さいものとなっている。具体的には、各突出部22の突出高さは、クリップ本体11の筒軸心線方向の長さの85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。これにより、クリップ10のフランジ部14がドアトリム20のEA材取付面に当接するまで各突出部22を挿入穴12に挿入した状態において、各突出部22の先端がクリップ本体11のアンカー部13側の端面から突出しないようになっている。
各突出部22の側面には、それぞれ、側方(突出部22のEA材取付面からの突出方向と直交方向)へ張り出す爪部23が設けられている。第5図(c)の通り、対向する突出部22,22同士の間では、爪部23,23同士は、互いに反対方向に張り出している。この実施の形態では、各爪部23は、第5図(a),(b)の通り、各突出部22の先端側ほど該突出部22の側面からの張り出し高さが小さくなるテーパ形状となっている。
なお、クリップ係止用突起21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、クリップ係止用突起21は、1対の突出部22と、これらの突出部22から互いに反対方向に張り出した爪部23とを有し、このクリップ係止用突起21が挿入穴12に挿入されたときには、これらの爪部23が、該挿入穴12の対向するいずれか1対の側面12a,12c又は12b,12dの各貫通孔16に係合するように構成されてもよい。
EA材1をドアトリム20に取り付ける場合、ドアトリム20の各クリップ係止用突起21を対応するEA材1の各クリップ10の挿入穴12に挿入しつつ、EA材1をドアトリム20に押し付ける。この際、各クリップ係止用突起21においては、各爪部23が挿通穴12の各側面12a〜12dに押し付けられることにより、各突出部22同士が接近方向に撓みながら該挿入穴12に差し込まれる。そして、第5図(a)の通り、クリップ10のフランジ部14がドアトリム20のEA材取付面に当接するまで各突出部22が挿入穴12に差し込まれると、各爪部23が各貫通孔16に達する。これにより、突出部22同士を接近方向に撓ませていた力が解除されて各突出部22がそれぞれ元形状に復帰し、これにより各爪部23が各貫通孔16に入り込んで該貫通孔16の縁部(即ち係合部15)に係合する。これにより、各クリップ10が各クリップ係止用突起21に係止され、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。
前述の通り、本発明のクリップ10にあっては、この係合部15は、挿入穴12の各側面12a〜12dをクリップ本体11の外周側から挿入穴12内まで貫通した貫通孔16により形成されている。即ち、このクリップ10は、挿入穴12内にアンダーカット部を有していない。そのため、このクリップ10は、第2図(a),(b)及び第3図(a),(b)のような簡易な構造の金型30を用いた射出成形により容易に製造することができる。
また、本発明のクリップ10にあっては、挿入穴12内に、該挿入穴12の内方へ張り出す段部も形成されていない。そのため、第5図(a),(d)の通り、EA材本体2を発泡成形するに際し、EA材成形用金型40のクリップ固定用突起43を該挿入穴12に挿入してクリップ10を該EA材成形用金型40に取り付けたときに、このクリップ固定用突起43の軸部43aの外面を挿入穴12の内面に密着させることが可能である。これにより、クリップ本体12のアンカー部13側の端面に封体を設けて挿入穴12を塞がなくても、EA材本体2の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴12とクリップ固定用突起43との間に侵入することを防止することができる。
このように、本発明にあっては、クリップ10を比較的簡易な構造の金型30を用いて製造することが可能であり、且つ挿入穴12を塞ぐ封体を設けることを不要とすることが可能であるため、クリップ10を低コストにて構成することが可能である。
本発明のクリップ10にあっては、挿入穴12は、第1〜第4の側面12a〜12dによって囲まれた方形断面形状となっている。そのため、EA材成形用金型40に設けられた角柱状のクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入するに際し、これらの角を合わせるようにすることにより、クリップ10を容易に且つ確実に所定の向きにしてEA材成形用金型40に取り付けることが可能である。
この実施の形態では、挿入穴12は正方形断面形状となっており、且つ該挿入穴12の全ての側面12a〜12dにそれぞれ貫通孔16が設けられているので、クリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入するに際し、該挿入穴12の各側面12a〜12dがクリップ固定用突起43のいずれの側面に重なるかに関わらず、単にこれらの角を合わせるようにするだけで、確実に、所定方向を向いた側面に貫通孔16(係合部15)が存在するようにクリップ10をEA材成形用金型40に取り付けることができる。
この実施の形態では、クリップ本体11の外周側から各貫通孔16を閉鎖するように封体17が設けられているので、EA材本体2の発泡成形時に各貫通孔16内に発泡合成樹脂原料が侵入することが防止される。
この実施の形態では、該封体17は不織布よりなる。そのため、EA材本体2の発泡成形時に、この不織布に発泡合成樹脂が含浸し、クリップ10とEA材本体2との結合強度が向上する。
この実施の形態では、クリップ本体11の一端側に、該クリップ本体11の外周面から放射方向に張り出すアンカー部13が設けられており、このアンカー部13がEA材本体2に埋設されているので、クリップ10のEA材本体2からの抜け留め効果が高い。
かかる本発明のクリップ10を備えたEA材1は、比較的低コストにて製造することが可能である。
本発明では、EA材1を製造する際に、EA材成形用金型40のクリップ固定用突起43をクリップ10の挿入穴12に挿入して該クリップ10をEA材成形用金型40の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起43の外面を挿入穴12の内面に密着させるため、挿入穴12の端面を封体で塞がなくても、EA材本体2の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴12とクリップ固定用突起43との間に侵入することが防止される。
本発明のEA材1の取付構造にあっては、ドアトリム20のクリップ係止用突起21をクリップ10の挿入穴12に挿入して係合部15に係合させることにより、簡単にEA材1をドアトリム20に取り付けることができる。
この実施の形態では、このクリップ係止用突起21に、側方へ張り出す爪部23を設け、この爪部23をクリップ10の係合部15(貫通孔16)に係合させているので、クリップ10をしっかりとクリップ係止用突起21に係止することができる。
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
例えば、上記の実施の形態では、挿入穴12の全ての側面12a〜12dにそれぞれ貫通孔16(係合部15)を設けているが、これらのうちいずれか1個、2個又は3個の側面にのみ貫通孔16を設けてもよい。また、上記の実施の形態では、ドアトリム20のクリップ係止用突起21は、4個の爪部23を有しており、これらの爪部23が挿入穴12の全ての側面12a〜12dの貫通孔16にそれぞれ係合するように構成しているが、クリップ係止用突起21が爪部23を1個、2個又は3個のみ有し、挿入穴12のいずれかの側面の貫通孔16にのみ爪部23が係合するように構成してもよい。
上記の実施の形態は、EA材及びその取付用クリップ、並びにそのドアトリムへの取付構造への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材及びその取付用クリップ、並びにその取付構造にも適用可能である。