以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置は、(A)検査対象物の表面に成形される凹部の内部に、許容値を超える寸法の突起や残留物や付着物など(以下、これらを、単に『突起物』と称する)が存在するか否かを検査することができる。換言すると、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置は、凹部の内部に突起物が存在する場合に、当該突起物が許容値以下の寸法(特に、凹部の底面からの高さ寸法)であるか許容値を超える寸法であるかを判定することができる。なお、突起物の寸法の『許容値』は、適宜設定できる。また、この検査を、以下『検査(A)』と称することがある。
本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置は、前記の検査(A)に加えて、次の検査を行うことができる。(B)検査対象物の表面に所定の凸状の構造物が設けられる場合において、当該凸状の構造物の表面に、許容値を超える異常な凹部(たとえば、亀裂など)が存在するか否かを検査すること(以下、『検査(B)』と称することがある)。(C)検査対象物の表面に、許容値を超える異常な凸部(たとえば、突起や付着物など)が存在するか否かを検査すること(以下、『検査(C)』と称することがある)。(D)凹部のエッジ部に、許容値を超える『バリ(burr,flash)』などが存在するか否かを検査すること(以下、『検査(D)と称することがある』)。なお、本発明の実施形態においては、『凹部のエッジ部』とは、凹部が成形される面と、凹部の内周面との境界部をいうものとする。すなわち、『凹部のエッジ部』は、『凹部の輪郭』である。
説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置による検査対象物として、略円盤形状の部材を例に示して説明する。この検査対象物は、厚さ方向の一方の面(以下、『第一の面』と称する)に凹部が成形され、厚さ方向の他方の面(以下、『第二の面』と称する)に凸状の構造物が成形される構成を有する。なお、この検査対象物の構成は、説明のための例であり、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置の対象となる検査対象物は、この構成に限定されるものではない。
本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置により、検査対象物の第一の面に成形される凹部の検査が行われる(検査(A)が実施される)。そして、検査(A)と並行して、第二の面に設けられる凸状の構造物に異常な凹部が存在するか否かの検査(検査(B))と、第一の面および第二の面に異物が存在するか否かの検査(検査(C))と、第一の面に成形される凹部のエッジ部に許容値を超えるバリが存在するか否かの検査(検査(D))とが実施される。
図1は、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1(=本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法で使用する検査装置)の構成を、模式的に示した図である。図1に示すように、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1は、第一の撮像手段11と、第二の撮像手段12と、第一の照明手段13と、第二の照明手段14と、第三の照明手段15と、第四の照明手段16と、画像処理手段17と、制御手段18とを有する。
第一の撮像手段11は、検査対象物5の第一の面51(=凹部511が成形される面)を撮像して画像データを生成することができる。このため、第一の撮像手段11は、検査対象物5の第一の面51に成形される凹部511の内部を撮像できるように配設される。検査対象物5の第一の面51に複数の凹部511が成形される場合には、すべての凹部511を欠けることなく撮像できる位置に配設される。たとえば、第一の撮像手段11は、検査対象物5の第一の面51から、その法線方向に所定の距離だけ離れた位置(=第一の撮像手段11の視野に、検査対象物5の第一の面51の全域を入れることができる距離だけ離れた位置)に、第一の撮像手段11の光軸と検査対象物5の第一の面51の法線とが略平行となる姿勢(換言すると、第一の撮像手段11の光軸と、凹部511の深さ方向とが略平行になる姿勢)で配設される。
第二の撮像手段12は、検査対象物5の第二の面52(=凸状の構造物521が設けられる面)を撮像して画像データを生成することができる。このため、第二の撮像手段12は、検査対象物5の第二の面52に設けられる凸状の構造物521の表面のうち、異常な凹部が存在するか否かを検査したい面(以下、この面を凸状の構造物の『検査対象面522』と称する)を撮像できるように配設される。検査対象物5の第二の面52に複数の凸状の構造物521が設けられる場合には、すべての凸状の構造物521を欠けることなく撮像できる位置に配設される。たとえば、第二の撮像手段12は、検査対象物5の第二の面52から、その法線方向に所定の距離だけ離れた位置(=第二の撮像手段12の視野に、検査対象物5の第二の面52の全域を入れることができる距離だけ離れた位置)に、第二の撮像手段12の光軸と検査対象物5の第二の面52の法線とが略平行となる姿勢(換言すると、第二の撮像手段12の光軸と、凸状の構造物521の検査対象面522の法線とが略平行になる姿勢)で配設される。
第一の撮像手段11および第二の撮像手段12には、二次元カメラ(『エリアスキャンカメラ』、『エリアセンサ』とも称する)が適用される。たとえば、公知の各種の二次元CCDカメラが適用できる。第一の撮像手段11および第二の撮像手段12に二次元カメラが適用される構成であると、第一の撮像手段11と第二の撮像手段12のそれぞれを走査させなくとも、検査対象物の第一の面と第二の面のそれぞれを撮像して画像データを生成することができる。なお、第一の撮像手段11および第二の撮像手段12が生成する画像データは、一般的な二次元のグレースケール画像やカラー画像が適用できる。
第一の照明手段13は、検査対象物5に対して光を照射することにより、第一の面51に成形される凹部511のエッジ部が、他の部分(=第一の面51の凹部511以外の部分)よりも明るく見えるようにする機能を有する。このため、第一の照明手段13は、検査対象物5の第一の面51に対して、第一の面51の面方向の外側から、第一の面51の面方向に略平行な光を照射することができる構成を有する。
図2は、第一の照明手段13から照射される光と、検査対象物5の第一の面51に成形される凹部511との関係を、模式的に示した断面図である。『凹部のエッジ部512』とは、凹部511が成形される面(=第一の面51)と、凹部511の内周面との境界部をいうものとする。すなわち、『凹部のエッジ部512』は、凹部512の輪郭である。また、図中の矢印は、第一の照明手段13から照射される光を模式的に示す。
図2に示すように、第一の照明手段13から照射される光は、検査対象物5の第一の面51の面方向に略平行に進行する(ただし、完全に平行ではなく、第一の面51に対して所定の微小な角度を有する成分が含まれる)。そして、そのうちの一部は、凹部511のエッジ部512において反射し、他の一部は第一の面51のうちの凹部511ではない部分において反射する。凹部511のエッジ部512は、平面ではないから、凹部511のエッジ部512において反射した光は、乱反射のような態様で様々な向きに向かって進行する。これに対して、第一の面51のうちの凹部511以外の部分は、略平面であるから、第一の面51のうちの凹部511以外の部分で反射した光の反射角は、入射角と略等しくなる。このため、第一の照明手段13が光を照射している状態で、第一の撮像手段11から第一の面51を見ると、凹部511のエッジ部512が他の部分に比較して明るく見える。
このように、第一の照明手段13は、第一の面51の面方向に略平行な光を第一の面51に対して照射することによって、凹部511のエッジ部512を、他の部分に比較して明るく見えるようにすることができる。したがって、第一の照明手段13により光を照射している状態で、第一の撮像手段11により第一の面51を撮像すると、凹部511のエッジ部512の輝度値が他の部分の輝度値よりも高い画像データが生成される。
第一の照明手段13は、たとえば、次のような構成を有する。図1に示すように、第一の照明手段13は、枠体131と光源132とを有する。枠体131は、たとえば中心部に開口部が成形される環状や額縁状の構造を有する部材である。光源132は、枠体131に配設され、枠体131の開口部の内側に向かって光を照射できる。枠体131に成形される開口部の寸法および形状は、検査対象物5の第一の面51の寸法および形状に応じて設定される。たとえば、枠体131の開口部の寸法および形状は、検査対象物5の第一の面51の寸法および形状よりも大きく設定される。換言すると、枠体131と検査対象物5の第一の面51とを重ね合わせると、枠体131の開口部の輪郭が、検査対象物5の第一の面51の輪郭の外側に位置するように設定される。そして、図1に示すように、第一の照明手段13は、検査対象物5の第一の面51からゼロ距離または至近距離(この『距離』は、第一の面51の法線方向の距離をいう)に配設される。
このような構成によれば、第一の照明手段13は、検査対象物5の第一の面51に対して、その面方向の外側から、その面方向に略平行な光を照射できる。また、枠体131に成形される開口部を通じて、第一の撮像手段11が、検査対象物5の第一の面51を撮像することができる。
なお、第一の照明手段13は、前記構成に限定されるものではない。要は、検査対象物5の第一の面51の面方向に略平行な光を、当該第一の面51に照射できる構成を有していればよい。また、第一の照明手段13の光源132も、各種電球やLEDなどの公知の光源が適用できる。
また、前記のとおり、第一の照明手段13は、第一の面51の面方向に略平行な光を照射することにより、第一の面51に成形される凹部511のエッジ部が、他の部分(=第一の面51の凹部511以外の部分)よりも明るく見えるようにする機能を有する。換言すると、第一の照明手段13から照射される光は、第一の撮像手段11から見ると、第一の面51に成形される凹部511のエッジ部が、他の部分(=第一の面51の凹部511以外の部分)よりも明るく見えるような角度であればよい。具体的には、第一の照明手段13から照射される光と検査対象物5の第一の面51との角度は、10°以下であることが好ましい。このような角度とすると、凹部511のエッジ部512と第一の表面51の他の部分との輝度の差を大きくすることができる。このため、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法において、凹部511の輪郭の抽出と凹部511の位置の特定の精度の向上を図ることができる(後述)。
第二の照明手段14は、検査対象物5の第一の面51に対して、所定の角度をもって光を照射することができる。この『所定の角度』は、第一の照明手段13から照射される光よりも大きい角度が適用される。そして、凹部511の内部に存在する突起物591のうち、凹部51の底面からの高さが所定の高さよりも高い部分に直接的に光を照射することができる。そしてこれにより、突起物591のうち、凹部511の底面からの高さが所定の高さよりも高い部分を、他の部分よりも明るく見えるようにできる。
図3は、第二の照明手段14から照射される光と、検査対象物5の第一の面51に成形される凹部511との関係を、模式的に示した断面図である。それぞれ、図3(a)は、凹部511の内部に突起物591が存在しない状態を示し、図3(b)は、所定の高さよりも高い突起物591が存在する状態を示し、図3(c)は、所定の高さ以下の突起物591が存する状態を示す。図中の矢印は、照射される光を模式的に示し、図中のハッチングが施される領域は、第二の照明手段14からの光が直接的には照射されない部分を示す。
検査対象物5の第一の面51に対して所定の角度をもって光を照射すると、照射された光の一部は、凹部511のエッジ部512に遮られる。このため、第二の照明手段14からの直射光は、凹部の底面から所定の高さHの位置までは到達し、それより低い部分には到達しない。そうすると、図3(b)に示すように、凹部511の内部に所定の高さHを超える突起物591が存在する場合には、当該突起物591のうちの所定の高さを超える部分には、第二の照明手段591からの光が直接的に照射される。ただし、突起物591のうちの所定の高さ以下の部分および凹部511の底面には、第二の照明手段14からの光は直接的には照射されない。これに対して、図3(c)に示すように、凹部511の内部に所定の高さH以下の突起物591が存在する場合には、当該突起物591および凹部511の底面には、第二の照明手段14から光は直接的には照射されない。
このため、第二の照明手段14により光を照射している状態で、第一の面51に成形される凹部511を第一の撮像手段11から見ると、次のように見える。凹部511の内部に所定の高さHを超える突起物591が存在する場合には、当該突起物591のうちの所定の高さHを超える部分が、その周囲(=突起物591の所定の高さ以下の部分および凹部511の底面)よりも明るく見える。一方、凹部511の内部に所定の高さHを超える突起物591が存在しない場合には(=突起物591の高さが所定の高さH以下である場合には)、凹部511の内部においては明るさの差が生じないか、または明るさの差が小さい。
したがって、第二の照明手段14により光を照射している状態で、第一の撮像手段11により第一の面51を撮像すると、凹部511の内部に所定の高さHを超える突起物591が存在する場合には、当該突起物591の所定の高さHを超える部分の輝度値が他の部分の輝度値よりも高い画像データが得られる。一方、凹部511の内部に所定の高さHを超える突起物591が存在しない場合には(=突起物591が存在する場合であっても、当該突起物591の高さが所定の高さH以下であれば)、凹部511の内部には輝度値に差が生じない(または、輝度の差が小さい)。
なお、『所定の高さH』は、第二の照明手段14から照射される光の第一の面51に対する角度を変更することにより調整できる。図4は、『所定の高さH』を調整する構成を、模式的に示した断面図である。図4(a)に示すように、第二の照明手段14から照射される光の第一の面51に対する角度θを大きくすると、凹部511の内部に到達する深さが深くなるから、『所定の高さH』が低くなる。一方、図4(b)に示すように、第二の照明手段14から照射される光の第一の面51に対する角度θを小さくすると、凹部511の内部に到達する深さが浅くなるから、『所定の高さH』が高くなる。
第二の照明手段14は、第一の照明手段13と同じ構成が適用できる。そして、図1に示すように、第二の照明手段14は、検査対象物5の第一の面51から所定の距離をおいた位置(この『距離』は、第一の面51の法線方向の距離をいう)に配設される。このような構成によれば、第二の照明手段14は、検査対象物5の第一の面51に対して、その面方向の外側から、その面方向に所定の角度を有する光を照射できる。そして、第二の照明手段14と検査対象物5の第一の面51との距離を調整することにより、第一の面51に対する光の角度を調整することができるから、『凹部511の底面から所定の高さH』を調整することができる。さらに、枠体に成形される開口部を通じて、第一の撮像手段11が、検査対象物5の第一の面51を撮像することができる。
なお、図1においては、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1が、別個独立する第一の照明手段13と第二の照明手段14とを有する構成を示すが、一個の照明手段が第一の照明手段13および第二の照明手段14として機能する構成であってもよい。すなわち、当該一個の照明手段を検査対象物5の第一の面51に接近させると、当該一個の照明手段から検査対象物5の第一の面51に対して照射される光は、検査対象物5の第一の面51の面方向に略平行となる。このため、当該一個の照明手段は、第一の照明手段13として機能する。一方、当該一個の照明手段を検査対象物5の第一の面51から遠ざけると、当該一個の照明手段から検査対象物5の第一の面51に対して照射される光は、検査対象物5の第一の面51に対して所定の角度をもつようになる。このため、当該一個の照明手段は、第二の照明手段14として機能する。このように、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1は、第一の照明手段13および第二の照明手段14として機能する一個の照明手段と、当該一個の照明手段と検査対象物5の第一の面51との間の距離を調整する機構とを備える構成であってもよい。
第三の照明手段15は、検査対象物5に対して光を照射することにより、第二の面に設けられる凸状の構造物521が、他の部分(=第二の面52のうちの凸状の構造物521以外の部分)よりも明るく見えるようにする機能を有する。このような機能のため、第三の照明手段15は、検査対象物5の第二の面52に対して、第二の面52の面方向の外側から、第二の面52の面方向に略平行な光を照射することができる構成を有する。
図5(a)は、第三の照明手段15から照射される光と、検査対象物5の第二の面52に設けられる凸状の構造物521との関係を、模式的に示した断面図である。図中の矢印は、第三の照明手段15から照射される光を模式的に示す。図5(a)に示すように、第三の照明手段15から照射される光は、検査対象物5の第二の面52の面方向に略平行に進行する。そして、そのうちの一部は、直接的に、または第二の面52に反射して凸状の構造物521に照射される。このため、第二の撮像手段12から検査対象物5の第二の面52を見ると、凸状の構造物521が、検査対象物5の第二の面52の他の部分(=凸状の構造物521が設けられない部分)よりも明るく見える。したがって、第三の照明手段15が光を発している状態で、第二の撮像手段12により検査対象物5の第二の面52を撮像すると、凸状の構造物521の輝度値が他の部分の輝度値よりも高い画像データが生成される。
第四の照明手段16は、検査対象物5の第二の面52に設けられる凸状の構造物521に対して、所定の角度をもって光を照射することができる。特に、凸状の構造物521の検査対称面522に対して、所定の角度をもって光を照射することができる。そして、凸状の構造物521の検査対象面521に異常な凹部592が存在する場合には、当該異常な凹部592を、他の部分よりも暗く見えるようにできる。
図5(b)は、第四の照明手段16から照射される光と、検査対象物5の第二の面52に設けられる凸状の構造物521の検査対象面522との関係を、模式的に示した断面図である。図中の矢印は、第四の照明手段16から照射される光を示し、図中のハッチングが施される領域は、第四の照明手段16からの光が直接的には照射されない領域を示す。
図5(b)に示すように、凸状の構造物521の検査対象面522に異常な凹部592が存在する場合には、検査対象物5の第二の面52(=凸状の構造物521の検査対象面522)に対して所定の角度をもって光を照射すると、異常な凹部592の内部には、第四の照明手段16からの光が直接的に照射されない領域が成形される(図5(b)中のハッチングが施される領域)。このため、第四の照明手段16により検査対象物5の第二の面52に光を照射している状態で、凸状の構造物521の検査対象面522を、第二の撮像手段12から見ると、凸状の構造物521の検査対象面522に異常な凹部592が存在する場合には、当該異常な凹部592が他の正常な部分に比較して暗く見える。
したがって、第四の照明手段16により光を照射している状態で、第二の撮像手段12により検査対象物5の第二の面52を撮像すると、第二の面52に設けられる凸状の構造物521の検査対象面522に異常な凹部592が存在する場合には、当該異常な凹部592の輝度値が他の部分の輝度値よりも低い画像データが得られる。
なお、第三の照明手段15は、第一の照明手段13と同じ構成および配置態様が適用できる。第四の照明手段16は、第二の照明手段14と同じ構成および配置態様が適用できる。したがって、説明は省略する。
また、図1においては、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1が、別個独立する第三の照明手段15と第四の照明手段16とを有する構成を示すが、一個の照明手段が第三の照明手段15および第四の照明手段16として機能する構成であってもよい。この構成は、一個の照明手段が第一の照明手段13および第二の照明手段14として機能する構成と同様である。
画像処理手段17は、第一の面に成形される凹部の検査のために、次のような機能を有する。(a)撮像した画像データを白黒二値化すること、(b)第一の撮像手段および第二の撮像手段が生成した画像データをターゲットパターンとし、所定の基準画像データ(後述)をマスターパターンとしてパターンマッチングすること、(c)パターンマッチングの結果に基づいて、撮像手段が生成した画像データから第一の面に成形される凹部を抽出すること、(d)抽出した凹部の内部に存在する所定の輝度よりも高い部分の面積を算出すること、(e)面積の算出結果に基づいて検査対象物の良否を判定すること。
画像処理手段17は、第二の面51に成形される凸状の構造物521の検査のために、次のような機能を有する。(f)第三の撮像手段および第四の撮像手段が生成した画像データをターゲットパターンとし、所定の基準画像データをマスターパターンとしてパターンマッチングすること、(g)パターンマッチングの結果に基づいて、第二の撮像手段12が生成した画像データから第二の面52に成形される凸状の構造物521を抽出すること、(h)抽出した凸状の構造物52の表面(=検査対象面)に存在する所定の輝度よりも低い部分の面積を算出すること(i)面積の算出結果に基づいて検査対象物5の良否を判定すること。
さらに、画像処理手段17は、検査対象物5の第一の面51および第二の面52に異物が存在するか否かを検査するために、次のような機能を有する。(j)第一の撮像手段11が生成した画像データのうち、凹部511のエッジ部512以外の輝度が高い部分を検出すること、(k)第二の撮像手段12が生成した画像データのうち凸状の構造物521以外の輝度が高い部分を検出すること(l)当該輝度が高い部分の面積を算出すること、(m)面積の算出結果に基づいて検査対象物5の良否を判定すること。
画像処理手段17は、凹部511のエッジ部512に許容値を超えるバリが存在するか否かを検査するために、次のような機能を有する。(n)第一の撮像手段11が生成した画像データをターゲットパターンとし、所定の基準画像データをマスターパターンとしてパターンマッチングすること、(o)パターンマッチングの結果に基づいて、検査対象物5の良否を判定すること。
なお、画像処理手段16には、公知の各種画像処理装置が適用できる。したがって、構成の説明は省略する。
制御手段18は、画像処理手段17を制御できる。制御手段18には、公知の各種シーケンサが適用できる。したがって、構成の説明は省略する。
なお、画像処理手段17および制御手段18は、別個独立した画像処理装置やシーケンサに限定されるものではない。たとえば、画像処理手段17および制御手段18は、CPUや記憶手段や出力手段を備えるパーソナルコンピュータやワークステーションと、このパーソナルコンピュータやワークステーションの記憶手段に記憶されるとともにCPUにおいて作動するプログラム(=前記(a)〜(o)の機能を有するプログラム)により実現される構成であってもよい。
このほか、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1は、複数の被検査体5を順次搬送できる搬送手段(図略)を備える構成であってもよい。なお、搬送手段は、被検査体5を第一の撮像手段11および第二の撮像手段12により撮像する際に、被検査体5を、第一の撮像手段11および第二の撮像手段12に対して位置決めをすることができる構成であることが好ましい。すなわち、複数の検査対象物5のそれぞれを第一の撮像手段11と第二の撮像手段12とにより撮像する際に、第一の撮像手段11および第二の撮像手段12と、各検査対象物5との相対的な位置関係(ここでは、検査対象物5の面方向の位置関係をいう。換言すると、第一の撮像手段11と第二の撮像手段12の光軸と検査対象物5との位置関係をいう)を均一にすることができる。ただし、第一の撮像手段および第二の撮像手段と検査対象物の向きとは統一しなくてもよい。換言すると、第一の撮像手段11と第二の撮像手段12の光軸に平行な方向を回転軸とする回転方向の向きは、検査対象物5ごとに相違していてもよい。
次いで、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法の工程について説明する。図6は、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法の工程(検査(A)の工程)の概略を示したフローチャートである。
図6に示すように、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法は、(S1−1)第一の照明手段により検査対象物の表面に略平行に光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第一の画像データを生成する工程と、(S1−2)第一の画像データに基づいて、凹部の輪郭を抽出して前記凹部の位置を特定する工程と、(S1−3)第二の照明手段により検査対象物の表面に対して所定の角度をもって傾斜する方向から光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第二の画像データを生成する工程と、(S1−4)第二の画像データに含まれる凹部の位置を特定する工程と、(S1−5)凹部の位置の特定の結果に基づいて第二の画像データから凹部を抽出する工程と、(S1−6)凹部の内部に存在する所定の閾値を超える領域の面積を算出する工程と、(S1−7)前記面積の算出結果に基づいて、検査対象物の良否を判定する工程と、を有する。
各工程の内容の詳細は、次のとおりである。
(S1−1)第一の照明手段により検査対象物の表面に略平行に光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第一の画像データを生成する工程
この工程においては、第一の照明手段13により検査対象物5の第一の面51に光を照射しながら、第一の撮像手段11により検査対象物5の第一の面51を撮像して画像データを生成する。制御手段18が画像処理手段17を制御し、画像処理手段17が、制御手段18による制御に基づいて、第一の照明手段13と第一の撮像手段11とを同期させて作動させる。そして、第一の照明手段13が検査対象物5の第一の面51に対して光を照射している間に、第一の撮像手段11が検査対象物5の第一の面51を撮像して画像データを生成する。この工程で生成された画像データを「第一の画像データ」と称する。
前記のとおり、第一の照明手段13により検査対象物5の第一の面51に光を照射すると、凹部511のエッジ部512が他の部分に比較して明るくなる。このため、生成された第一の画像データにおいては、凹部511のエッジ部512に対応する画素(=凹部511のエッジ部512が写っている画素)の輝度値が、他の部分に対応する画素(=他の部分が写っている画素)の輝度値よりも高くなる。
(S1−2)第一の画像データに基づいて、凹部の輪郭を抽出して前記凹部の位置を特定する工程
この工程では、第一の画像データに写っている検査対象物5の第一の面51に成形される凹部511の位置を特定する。画像処理的な表現をすると、第一の画像データに含まれる画素の中から、凹部511のエッジ部512に対応する画素を特定する。凹部511の位置の特定には、たとえばパターンマッチングが適用できる。簡単に説明すると、次のとおりである。ここでは、『残差マッチング』が適用される構成を記す。
まず、あらかじめ、パターンマッチングに使用するマスターパターンを用意しておく。図7(a)は、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法で用いるマスターパターン61を模式的に示した平面図である。図中のハッチングが施されていない部分(=画素の集合)が、凹部511のエッジ部に対応する部分612(相対的に輝度値が高い部分)であり、ハッチングが施されている部分が、それ以外の部分(相対的に輝度値が低い部分)である。なお、第一の面51の輪郭611を一点鎖線で示す。このマスターパターン61は、第一の照明手段13が検査対象物5に光を照射しながら第一の撮像手段が検査対象物5の第一の面51を撮像して得られる画像データの理想形である。そして、このマスターパターン61は、凹部511に対応する部分612があらかじめ特定されている画像データである。このマスターパターン61は、たとえば、被検査体5の設計データに基づいて作成される。
図7(b)は、ターゲットパターンにマスターパターンを重ね合わせて回転させる工程を、模式的に示した平面図である。図中の矢印は、マスターパターンの回転方向を示す。図7(b)に示すように、第一の画像データ62をターゲットパターンとして、第一の画像データ62にマスターパターン61を重ね合わせる。そして、マスターパターン61を回転させて、『重ね合わせの残差』が最小となる位置を求める。『重ね合わせの残差』が最小となる位置が、第一の画像データ62に映り込んでいる凹部511のエッジ部512に対応する部分622(=画素の集合)と、マスターパターン61の凹部511のエッジ部512に対応する部分612とが一致した位置であるとみなす。このため、マスターパターン61の凹部511のエッジ部512の初期位置と回転量とから、第一の画像データ62に映り込んでいる凹部511のエッジ部512の位置(=凹部511のエッジ部512に対応する部分の位置)を特定することができる。
前記のとおり、第一の照明手段13から照射される光と検査対象物5の第一の面51との角度が10°以下であると、凹部52のエッジ部521と第一の表面51の他の部分との輝度の差を大きくすることができる。そうすると、第一の画像データ62において、凹部511のエッジ部512に対応する部分622と、それ以外の部分との輝度差が大きくなる。このため、パターンマッチングの精度の向上を図ることができる。したがって、パターンマッチングにおいて、凹部511のエッジ部512の位置を誤って特定することを防止できる。
(S1−3)第二の照明手段により検査対象物の表面に対して所定の角度をもって傾斜する方向から光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第二の画像データを得る工程
この工程においては、第二の照明手段14により検査対象物5の第一の面51に光を照射しながら、第一の撮像手段11により検査対象物5の第一の面51を撮像して画像データを生成する。制御手段18が画像処理手段17を制御し、画像処理手段17は、制御手段18による制御に基づいて、第二の照明手段14と第一の撮像手段11とを同期させて作動させる。そして、第二の照明手段14が検査対象物5の第一の面51に対して光を照射している間に、第一の撮像手段11が検査対象物5の第一の面51を撮像して画像データを生成する。この工程で生成された画像データを「第二の画像データ」と称する。
凹部511の内部に突起物591が存在し、かつ、この突起物591の高さが所定の高さを超える場合には、この突起物591の所定の高さを超える部分には、第二の照明手段14により直接的に光が照射される。このため、この突起物591の所定の高さを超える部分は、他の部分や凹部511の底面に比較して明るく見える。したがって、生成された第二の画像データにおいては、突起物591のうちの所定の高さを超える部分に対応する画素(=突起物591のうちの所定の高さを超える部分が写っている画素)の輝度値が、他の部分および凹部511の底面に対応する画素(=他の部分および凹部511の底面が写っている画素)の輝度値よりも高くなる。
なお、工程(S1−1)と工程(S1−3)においては、第一の撮像手段11と検査対象物5の第一の面51との位置関係(特に、検査対象物5の第一の面51の面方向の位置関係と、検査対象物5の回転方向の位置関係との両方の位置関係)とが同一である。このため、第一の画像データと第二の画像データには、検査対象物5の第一の面51が、同じ位置および範囲に同じ向きで写っている。換言すると、第一の画像データと第二の画像データとを重ね合わせると、凹部511に対応する画素が一致する。
(S1−4)第二の画像データに含まれる凹部の位置を特定する工程
この工程においては、前記工程(S1−2)における凹部511の抽出結果に基づいて、第二の画像データに写っている凹部511の位置を特定する。前記工程(S1−2)により、第一の画像データにおいては、凹部511のエッジ部512の位置が特定されている(=凹部511のエッジ部512に対応する画素が特定されている)。そして、前記のとおり、第一の画像データと第二の画像データには、検査対象物5の第一の面51の凹部511が、同じ位置および範囲に写っている(=凹部511のエッジ部512に対応する画素が同じ位置にある)。このため、前記工程(S1−2)における凹部511の抽出結果を、第二の画像データにそのまま適用することにより、第二の画像データに写っている凹部511の位置を特定できる(凹部511のエッジ部512に対応する画素を特定できる)。
(S1−5)凹部の位置の特定の結果に基づいて第二の画像データから凹部を抽出する工程
この工程では、第二の画像データに写っている凹部511を抽出する(=凹部511に対応する画素を抽出する)。前記工程(S1−5)により、凹部511のエッジ部512の位置が特定されたから、凹部511のエッジ部512に囲まれる領域(=凹部511のエッジ部512に対応する画素の内側に位置する画素)が、凹部511の内部に相当する。このように、第二の画像データから凹部511を抽出すことができる。
(S1−6)凹部の内部に存在する所定の閾値を超える領域の面積を算出する工程
この工程では、画像処理手段17が、凹部511の内部に存在する突起物591のうち、所定の高さを超える部分の面積(ここでは、検査対象物5の第一の面51の面方向に投影した面積)を算定する。画像処理手段17は、まず、抽出した凹部51の画像データを、第二の照明手段14から光が直接的に照射された部分に対応する画素を「白画素」化し、第二の照明手段14から光が直接的に照射されない部分に対応する画素を「黒画素」化する二値化処理を行う。第二の照明手段14から光が直接的に照射された部分に対応する画素は、光が直接的に照射されない部分に対応する画素よりも輝度値が高いから、これらの輝度値の間に閾値を設定することによって、前記のような二値化処理を行うことができる。
そして、画像処理手段17は、『白画素になった領域の面積』を算出する。白画素になった領域の面積は、突起物591のうちの所定の高さを超える部分の面積であるから、白画素になった領域の面積を算出することにより、凹部511の内部に存在する突起物591のうち、所定の高さを超える部分の面積を算出できる。
『白画素になった領域の面積』は、突起物591の所定の高さを超える部分の面方向寸法(ここでは、第一の表面に平行な平面の面方向寸法)が大きくなるにしたがって大きくなり、面方向寸法が小さくなるにしたがって小さくなる。このように、『白画素になった領域の面積』は、突起物591の所定の高さを超える部分の面方向寸法を示す指標となる。また、突起物591が先細り形状である場合には、『白画素になった領域の面積』は、突起物の高さが高くなるにしたがって大きくなり、突起物の高さが低くなるにしたがって小さくなる。このように、『白画素になった領域の面積』は、突起物591の所定の高さを超える部分の高さを示す指標にもなる。したがって、『白画素になった領域の面積』は、突起物591の高さおよび面方向寸法を示す指標となる。
(S1−7)前記面積の算出結果に基づいて、検査対象物の良否を判定する工程
この工程では、画像処理手段17は、『白画素になった領域の面積』が所定の閾値以下であるか、所定の閾値を超えるかを検査する。そして、『白画素になった領域の面積』が所定の閾値未満である場合には、突起物591の高さおよび面方向寸法が許容範囲内にあるとみなし(=許容範囲内の寸法であるとみなし)、当該検査対象物5は良品であると判定する。一方、『白画素になった領域の面積』が所定の閾値以上である場合には、突起物591の面方向寸法および高さが許容範囲内にはないとみなし(=許容範囲を超えるとみなし)、当該検査対象物5は不良品であると判定する。突起物591の具体的な許容面方向面積および高さは、検査対象物5に要求される品質などに応じて適宜設定される。そして、第二の照明手段により照射される光の角度や、工程(S1−6)において算出した『白画素になった領域の面積』の閾値を適宜設定することにより、設定できる。
なお、検査(B)〜(D)を併せて実施する場合には、検査対象物が良品であるか否かは、検査(B)〜(D)の結果も考慮して判定する。
また、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法における各工程の順序は、前記順序に限定されるものではない。たとえば、最初に工程(S1−1)を実施して第一の画像データを生成し、引き続いて工程(S1−3)を実施して第二の画像データを生成し、その後、工程(S1−2)を実施して凹部の位置を特定する、という順序であってもよい。このほか、最初に工程(S1−3)を実施して第二の画像データを生成し、その後、工程(S1−1)を実施して第一の画像データを生成し、引き続いて工程(S1−2)を実施して凹部の位置を特定する、という順序であってもよい。
本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置1は、次のような作用効果を奏することができる。
本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法と凹部の検査装置によれば、第一の撮像手段11により対象物5の表面(=第一の面51)を撮像して第一の画像データおよび第二の画像データを生成し、画像処理手段17により第二の画像データに写っている凹部511の位置を特定することができる。そして、画像処理手段17により、位置を特定した凹部511の内部に、許容値を超える寸法(=面方向寸法および高さ)の突起物591が存在するか否かを検査することができる。
このような構成によれば、凹部511の位置が不定または不明であっても、凹部511の内部に存在する突起物591の寸法が許容範囲内にあるか否かを検査することができる。すなわち、検査対象物の表面を第一の撮像手段11により撮像する際に、検査対象物5を第一の撮像手段11に対して特定の向き(=第一の撮像手段11の光軸を回転軸とする回転方向の向き)に合わせる必要がない。このため、検査における手間を省略することができ、検査に要する時間の短縮を図ることができる。
そして、このような構成であると、複数の検査対象物5を順次検査する場合において、検査対象物5の向きが不定であっても検査を行うことができる。換言すると、複数の検査対象物5の向きを統一しなくても、検査を行うことができる。したがって、複数の検査対象物5の検査を行うに際し、それぞれの検査対象物5の向きを考慮する必要がないから、検査対象物5の取り扱いの手間を削減することができる。
さらに、複数の検査対象物5を自動で搬送して順次検査を行う場合において、複数の検査対象物5を搬送する機構や装置に、検査対象物5の向きを統一するための機構を設ける必要がなくなる。このため、検査対象物5を搬送する機構や装置の構成を単純化することができ(または複雑化を防止もしくは抑制でき)、検査に必要な設備のコストの削減をはかることができる(または、コストの上昇の防止もしくは抑制を図ることができる)。
また、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法と凹部の検査装置1によれば、従来のように、人間が目視によって検査する構成と比較して、検査の精度の向上を図ることができる。さらに、レーザー変位計などを適用する構成と比較すると、処理内容の単純化を図ることができる。
たとえば、レーザー変位計などを適用する構成では、凹部511の内部に存在する突起物591の寸法を測定した後、所定の許容値を超える高さを有する部分を抽出する必要があり、さらに抽出した部分がどの程度の大きさを有するか算出する必要がある。
これに対して本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法と凹部の検査装置1によれば、検査対象物5の表面(=第一の面51)に対して、第二の照明手段14により所定の角度をもって傾斜する方向から光を照射することにより、凹部511の内部に存在する突起物591のうち、所定の高さを超える部分にのみ直接的に光を照射することができる。直接的に光が照射された部分は、他の部分に比較して明るくなるから、明るくなった部分(=所定の閾値を超える輝度値を有する部分)の面積が、突起物591のうちの所定の高さを超える部分の寸法を示すことになる。したがって、画像処理手段17によって、明るくなった部分の面積を測定するだけで、突起物591のうちの所定の高さを超える部分の寸法が明確となる。このため、処理内容の単純化を図ることができる。
そして、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法と凹部の検査装置1によれば、検査対象物5の表面に照射する光の角度を変更することによって、突起物591に直接的に光を照射できる部分の高さを変更できる。このため突起物591の寸法の許容値(または、突起物591の検出すべき高さ)の設定や変更が容易である。
さらに、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法と凹部の検査装置1によれば、第一の撮像手段11と第二の撮像手段12のそれぞれに、エリアスキャンカメラが適用できる。このため、ラインスキャンカメラ(=ラインセンサ)を用いる構成と比較して、短時間に検査を行うことができる。
すなわち、撮像手段としてラインスキャンカメラが用いられる構成であると、撮像手段を走査して検査対象物の表面を撮像する必要がある。このため、検査装置には、撮像手段を走査させるための機構(=撮像手段と検査対象物とを相対的に移動させる機構)が必要となる。そうすると、装置の大型化や複雑化を招き、装置の価格が上昇する。さらに、撮像手段を走査する必要があるから、検査対象物を撮像して画像データを生成するために長い時間が必要となり、検査に要する時間が長くなる。検査に要する時間の短縮のために、走査速度を大きくすると、たとえば、微小な突起物を検出できなくなり、検査の精度が低下するおそれがある。
これに対して、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法と凹部の検査装置1によれば、第一の撮像手段11と第二の撮像手段12のそれぞれに、エリアスキャンカメラが適用できるから、一時に検査対象物5の表面の全体(=第一の面51と第二の面52のそれぞれ。すなわち、検査対象となる領域の全体)を撮像できる。このため、第一の撮像手段11と第二の撮像手段12を走査させる必要がない。したがって、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1の小型化や構成の単純化を図ることができる(または、本発明の実施形態にかかる凹部の検査装置1の大型化の防止もしくは抑制や、構成の複雑化の防止もしくは抑制を図ることができる)。また、検査対象物5を撮像して画像データを生成するために必要な時間を、ラインスキャンカメラを用いる構成に比較して短くできるから、検査の精度を低下させることなく、検査に要する時間の短縮を図ることができる。
凹部511の位置を特定する工程において、パターンマッチングが適用される構成であると、画像処理の内容を単純化することができる。たとえば、従来のように、レーザー変位計を用いる構成であると、凹部511を抽出するための処理が複雑となるが、画像データをパターンマッチングする構成であると、処理内容を簡単にすることができる。
次に、(B)凸状の構造物に異常な凹部(たとえば、亀裂など)が存在するか否かを検査する方法(検査(B))について説明する。図8は、凸状の構造物に異常な凹部(たとえば、亀裂など)が存在するか否かを検査する方法の概略を示したフローチャートである。
図8に示すように、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法は、(S2−1)第二の照明手段により検査対象物の表面に略平行に光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第三の画像データを生成する工程と、(S2−2)第三の画像データに基づいて、凸状の構造物の位置を特定する工程と、(S2−3)第四の照明手段により検査対象物の表面に対して所定の角度をもって傾斜する方向から光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第四の画像データを得る工程と、(S2−4)第四の画像データに含まれる凸状の構造物の検査対象面の位置を特定する工程と、(S2−5)凸状の構造物の位置の特定の結果に基づいて第四の画像データから凸状の構造物の検査対象面を抽出する工程と、(S2−6)凸状の構造物の検査対象面に存在する所定の閾値よりも低い輝度の領域の面積を算出する工程と、(S2−7)前記面積の算出結果に基づいて、検査対象物の良否を判定する工程と、を有する。
各工程の内容の詳細は、次のとおりである。
(S2−1)第二の照明手段により検査対象物の表面に略平行に光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第三の画像データを得る工程
この工程においては、第三の照明手段15により検査対象物5の第二の面52に光を照射しながら、第二の撮像手段12により検査対象物5の第二の面52を撮像して画像データを生成する。制御手段18が画像処理手段17を制御し、画像処理手段17は、制御手段18による制御に基づいて、第三の照明手段15と第二の撮像手段12とを同期させて作動させる。そして、第三の照明手段15が検査対象物5の第二の面52に対して光を照射している間に、第二の撮像手段12が検査対象物5の第二の面52を撮像して画像データを生成する。この工程で生成された画像データを「第三の画像データ」と称する。
第三の照明手段15により検査対象物5の第二の面52に光を照射すると、凸状の構造物521が他の部分に比較して明るくなる。このため、生成された第三の画像データにおいては、凸状の構造物521に対応する画素(=凸状の構造物521が写っている画素)の輝度値が、他の部分に対応する画素(=他の部分が写っている画素)の輝度値よりも高くなる。
(S2−2)第三の画像データに基づいて、凸状の構造物の位置を特定する工程
この工程では、第三の画像データに写っている検査対象物5の第二の面52に設けられる凸状の構造物521の検査対象面522の位置を特定する。凸状の構造物521の検査対象面522の位置の特定には、検査(A)の工程(S1−2)と同じ方法が適用できる。したがって、説明は省略する。検査(A)の工程(S1−2)の説明における『第一の画像データ』『凹部511のエッジ部512』『第一の照明手段11』を、それぞれ、『第三の画像データ』『凸状の構造物521』『第三の照明手段15』に読み替えればよい。また、検査(A)の工程(S1−2)の結果を利用することにより、この検査(B)においては、この工程(S2−2)を省略することも可能である。
(S2−3)第四の照明手段により検査対象物の表面に対して所定の角度をもって傾斜する方向から光を照射しながら検査対象物の表面を撮像して第四の画像データを得る工程
この工程においては、第四の照明手段16により検査対象物5の第二の面52に光を照射しながら、第二の撮像手段12により検査対象物5の第二の面52を撮像して画像データを生成する。制御手段18が画像処理手段17を制御し、画像処理手段17は、制御手段18による制御に基づいて、第四の照明手段16と第二の撮像手段12とを同期させて作動させる。そして、第四の照明手段16が検査対象物5の第二の面52に対して光を照射している間に、第二の撮像手段12が検査対象物5の第二の面52を撮像して画像データを生成する。この工程で生成された画像データを「第四の画像データ」と称する。
凸状の構造物521の検査対象面522に異常な凹部592が存在すると、異常な凹部592の内部には、第四の照明手段16からの光が直接的に照射されない部分が生じる。このため、異常な凹部592は、他の部分に比較して暗く見える。したがって、生成された第四の画像データにおいては、異常な凹部592の内部であって第四の照明手段16からの光が直接的に照射されない領域に対応する画素の輝度値が、他の部分の画素の輝度値よりも低くなる。
なお、工程(S2−1)と工程(S2−3)においては、第二の撮像手段12と検査対象物5の第二の面52との位置関係(ここでは、検査対象物5の第二の面52の面方向の位置関係と、検査対象物5の回転方向の位置関係との両方の位置関係)とが同一である。このため、第三の画像データと第四の画像データには、検査対象物5の第二の面52が、同じ位置および範囲に同じ向きで写っている。換言すると、第三の画像データと第四の画像データとを重ね合わせると、凸状の構造物521に対応する画素が一致する。
(S2−4)第四の画像データに含まれる凸状の構造物の検査対象面の位置を特定する工程
この工程においては、工程(S2−2)における凸状の構造物の抽出結果に基づいて、第四の画像データに写っている凸状の構造物521の検査対象面522の位置を特定する。工程(S2−2)により、第三の画像データにおいては、凸状の構造物521の位置が特定されている(=凸状の構造物521に対応する画素が特定されている)。そして、第三の画像データと第四の画像データには、凸状の構造物521の検査対象面522が、互いに同じ位置および範囲に写っている。このため、工程(S2−2)における凸状の構造物521の抽出結果を、第四の画像データにそのまま適用することにより、第四の画像データに写っている凸状の構造物521の検査対象面522の位置を特定できる(凸状の構造物521の検査対象面522に対応する画素を特定できる)。
(S2−5)凸状の構造物の位置の特定の結果に基づいて第四の画像データから凸状の構造物の検査対象面を抽出する工程
この工程では、第四の画像データに写っている凸状の構造物521の検査対象面522を抽出する(=凸状の構造物521の検査対象面522に対応する画素を抽出する)。工程(S2−4)により、凸状の構造物521の位置が特定されており(=凸状の構造物521に対応する画素が特定されており)、検査対象面522が凸状の構造物のどの部分に位置するは既知である(設計において明確である)から、第四の画像データから凸状の構造物521の検査対象面522を抽出すことができる。
(S2−6)凸状の構造物の検査対象面に存在する所定の閾値よりも低い輝度の領域の面積を算出する工程
この工程では、画像処理手段17が、凸状の構造物521の検査対象面522に存在する異常な凹部592の面積(=検査対象物5の第二の面52の面方向に投影した面積)を算定する。画像処理手段17は、まず、抽出した凸状の構造物521の検査対象面522の画像データについて、第四の照明手段16から光が直接的に照射された部分に対応する画素を「白画素」化し、第四の照明手段16から光が直接的に照射されない部分に対応する画素を「黒画素」化する二値化処理を行う。第四の照明手段16から光が直接的に照射された部分に対応する画素の輝度値は、光が直接的に照射されない部分に対応する画素の輝度値よりも高いから、これらの間に閾値を設定することにより、前記のような二値化を行うことができる。
そして、この二値化処理が行われると、『黒画素になった領域』の面積が、凸状の構造物521の検査対象面に存在する異常な凹部のうちの第四の照明手段16からの光が直接的に照射されない部分の面積となる。このように、『黒画素になった領域の面積』は、異常な凹部の寸法を示す指標となる。そして、画像処理手段は、『黒画素になった領域の面積』を算出する。
(S2−7)前記面積の算出結果に基づいて、検査対象物の良否を判定する工程
この工程では、画像処理手段17は、『黒画素になった領域の面積』が所定の閾値以下であるか、所定の閾値を超えるかを検査する。そして、『黒画素になった領域の面積』が所定の閾値未満である場合には、異常な凹部592の寸法が許容範囲内にあるとみなし、当該検査対象物5は良品であると判定する。一方、『黒画素になった領域の面積』が所定の閾値以上である場合には、異常な凹部592の寸法が許容範囲内にないとみなし、当該検査対象物5は不良品であると判定する。なお、検査(A)(C)(D)を併せて実施する場合には、検査対象物が良品であるか否かは、これら検査(A)(C)(D)の結果も考慮して判定する。
この検査(B)は、検査(A)と同時並行的に行うことができる。なお、検査(B)の各工程の順序は、検査(A)と同様に、前記順序に限定されるものではない。
次に、(C)検査対象物の表面に異常な凸部(たとえば、突起や付着物など)が存在するか否かを検査する方法(検査(C))について説明する。
検査(C)は、検査(A)の工程(S1−1)において生成された第一の画像データと、検査(B)の工程(S2−1)において生成された第三の画像データを画像処理することによって行われる。画像処理手段17は、第一の画像データと第三の画像データについて、突起や異物などに対応する画素を白画素化し、他の画素を黒画素化する二値化処理を行う。検査対象物5の表面(=第一の面51と第二の面52のそれぞれ)に突起や異物が存在すると、第一の照明手段13や第三の照明手段15から発せられた光は、第一の面51や第二の面52に存在する突起や異物などに直接的に照射される。このため、第一の撮像手段11や第二の撮像手段12により撮像された第一の画像データや第三の画像データにおいては、突起や異物などに対応する画素の輝度値が、他の画素(ただし、穴部511のエッジ部に対応する画素や、凸状の構造物521に対応する画素は除く)の輝度値よりも高くなる。そこで、これらの輝度の間に閾値を設定することにより、前記のような二値化を行うことができる。
次いで、画像処理手段17は、第一の画像データおよび第二の画像データに、突起や異物などに起因する白画素が存在するかどうかを検査する。すなわち、画像処理手段は、第一の画像データおよび第二の画像データに、凹部511のエッジ部512に対応する白画素および凸状の構造物521に対応する白画素以外に、白画素が存在するか否かを検査する。そして、画像処理手段17は、白画素が検出された場合には、検査対象物5の第一の面51や第二の面52に、突起や異物などが存在すると判定する。
そして、画像処理手段は、白画素の検出結果に基づいて、検査対象物5が良品であるか不良品であるかを判定する。たとえば、一個でも白画素が検出された場合には、当該検査対象物5は不良品であると判定する構成であってもよい。また、複数の白画素からなる『白画素の集合』が検出され、かつ、『白画素の集合』の面積が所定の閾値を超える場合(=『白画素の集合』に含まれる白画素の数が所定の閾値を超える場合)には、当該検査対象物5は不良品であると判定する構成であってもよい。なお、所定の閾値は、検査対象物に要求される品質などに応じて適宜設定されるものであり、限定されるものではない。また、検査(A)(B)(D)を併せて実施する場合には、検査対象物5が良品であるか否かは、これら検査(A)(B)(D)の結果も考慮して判定する。
次に、(D)凹部のエッジ部に許容値を超えるバリなどが存在するか否かを検査する方法(検査(D))について説明する。
凹部511のエッジ部512にバリが存在する場合には、第一の照明手段13により検査対象物5の第一の面51に光を照射すると、第一の照明手段13から発せられた光がバリに照射される。このため、第一の照明手段13により光を照射しながら第一の撮像手段11により検査対象物5の第一の面51を撮像して画像データを生成すると、生成された画像データにおいては、バリに対応する画素が、他の部分に対応する画素よりも輝度が高くなる。そこで、画像処理手段17は、この画像データについて、バリに対応する画素が白画素になり、それ以外の部分に対応する画素が黒画素になるように閾値を設定し、二値化する。そうすると、二値化された画像データの白画素は、バリの形状になる。そして、画像処理手段17は、白画素の形状が、凹部512のエッジ部512の理想的な形状からどの程度相違するか測定することにより、バリが許容範囲内にあるか否かを判定する。
この検査には、パターンマッチングが適用される。このパターンマッチングのマスターパターンは、バリが存在しない場合の凹部511のエッジ部512(すなわち、凹部51の理想的なエッジ部512)を、第一の照明手段13により光を照射しながら第一の撮像手段11が撮像して生成される画像データが用いられる。このマスターパターンは、実際に第一の撮像手段11により検査対象物5の第一の面51を撮像して生成した画像データを用いてもよく、被検査体の設計データなどに基づいて生成した画像データであってもよい。一方、ターゲットパターンには、検査(A)の工程(S1−1)で生成した第一の画像データが用いられる。そして、マスターパターンをターゲットパターンである第一の画像データに適用してパターンマッチングを行い。重ね合わせの残差の最小値を算出する。
重ね合わせの残差の値は、マスターパターンとターゲットパターンとの一致の度合を示す指標であり、値が小さいほど、マスターパターンとターゲットパターンとの一致の程度が高い。したがって、重ね合わせの残差の値が小さいほど、凹部511のエッジ部512に存在するバリの寸法は小さいことを示している。そこで、画像処理手段17は、重ね合わせの残差が所定の値以下である場合には、凹部511のエッジ部512に存在するバリの寸法は許容範囲にあるとみなし、検査対象物5は良品であると判定する。一方、所定の値を超える場合には、バリの寸法は許容範囲にないとみなし、検査対象物5は不良品であると判定する。なお、検査(A)(B)(C)を併せて実施する場合には、検査対象物5が良品であるか否かは、これら検査(A)(B)(C)の結果も考慮して判定する。
この検査(D)は、検査(A)と併せて実施することができる。具体的には次のとおりである。検査(A)の工程(S1−1)において生成した第一の画像データを、この検査(D)のパターンマッチングのターゲットパターンとし、検査(A)の工程(S1−2)のマスターパターンを、この検査(D)のマスターパターンとする。そして、検査(A)の工程(S1−2)におけるパターンマッチングの結果を、この検査(D)のパターンマッチングの結果として用いる。
このように、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置1によれば、凹部の内部に許容値を超える突起物591が存在するか否かを検査できるとともに、検査対象物の表面に所定の凸状の構造物が設けられる場合において、当該凸状の構造物の表面に許容値を超える異常な凹部(たとえば、亀裂など)が存在するか否かの検査と、検査対象物の表面に許容値を超える異常な凸部が存在するか否かの検査と、凹部のエッジ部に許容値を超えるバリなどが存在するか否かの検査とを、並行的に行うことができる。したがって、本発明の実施形態にかかる凹部の検査方法および凹部の検査装置1は、種々の内容の検査を短時間で行うことができる。