JP5599458B2 - ポリイミド膜 - Google Patents

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Description

本発明は、2つの非混和性相を接触させ、第一の相から第二の相へ溶質を抽出するための、相接触装置における非対称ポリイミド膜の使用に関する。本発明は、かかる非対称ポリイミド膜を用いて第一の相から第二の相へ様々な物質を抽出する方法に関する。
化学種を1つの相から第二の非混和性相へ選択的に輸送するために溶媒抽出法を使用することは、工業的な慣行である(Kirk−Othmer Encyclopaedia of Chemical Technology,4thed.,Wiley Blackwell.)。これは化学種を分離または精製するために化学プロセス工業全体で広く使用されているプロセスである。
抽出を実行するため、2つの液相を合わせて接触させ、完全に混合して、抽出した種の物質移動が起こるための界面積を生成する。混合の間、相のうちの1つ、通常、低いほうの体積分率に存在する相は、離散した液滴を第二の相の中に形成して、迅速な物質移動のための高い界面積を提供する分散液を生成する。溶媒抽出法の重要な運転パラメータには、溶媒の選択、抽出温度、2つの相が接触した場合の流量もしくは容積比、場合により、抽出圧、使用する抽出装置の種類、および抽出装置における混合強度が含まれる(Perry’s Chemical Engineers’Handbook,6thed.,DW Green and RH Perry,McGraw−Hill)。これらのパラメータは、抽出した種の目標収量および/または純度を得るために最適化されなければならない。しかし、さらなる非常に重要な要素は、抽出が完了したらどのくらい容易に2つの相が相互に分離し、2つの別個の連続相を再形成するかということである。かなりの割合の用途において、これはこのプロセスの問題のある局面であり、さらに、2つの相間の界面を安定化させる可能性がある表面活性種(例えば、界面活性剤、タンパク質、生物学的ポリマーなど)が存在する用途では、相分離の困難さによって、安定した分散液/乳濁液の形成に起因して溶媒抽出法の使用が除外される場合がある。
安定した分散液/乳濁液形成に起因する制限を試み、克服するために、いくつかのアプローチが調査され、開発された。例えば、乳濁液または分散液が形成された後にそれを壊すための二次的単位操作の導入(一例としてUS3865732参照)、あるいは乳濁液または分散液を壊す界面活性剤の直接使用(一例としてUS5445765参照)。
しかし、代わりとなるアプローチは、最初の工程で乳濁液または分散液の形成を阻止するか最小限にすることである。これを達成する一つの方法は、乳濁液/分散液を形成する系の固有の能力を妨げるさらなる化学物質を系に添加することによっている(例えば、「Causes of emulsion formation during solvent extraction of fermentation broths and its reduction by surfactants」,(2004),S.Lennie,P.J.Halling,and G.Bell,Biotech.Bioneng.,35(9),948−950)。
これを達成するさらなる手段は、低エネルギー/低剪断抽出系、例えば、バケット接触装置またはカラムの使用による。これらの種類の装置は抽出系に大量のエネルギーを付与しないため、より安定した乳濁液または分散液を特徴付ける小さな液滴(0.1〜100ミクロン)を生成しない傾向がある。このこともまた、これらの接触装置の重大な不利点であり、これらの接触装置が微細な液滴を生成しないという事実は、これらの接触装置がより高いエネルギー/より高い剪断技術と同じくらい大きい物質移動用の表面積を生成しないことを意味するため、装置はより大きく、より高価となりがちである。
乳濁液または分散液の形成を阻止するかまたは最小限にするさらなるアプローチは、流体を混合することによって界面積を生成するよりも、物質移動に対する固定した界面積をもたらすことである。このアプローチでは、1つの液相の流体の境界は、固定した界面をもたらす多孔質媒体中またはその表面に位置する。次に、第二の液相を、第一の液相を含有する多孔質媒体、および第二の液相から第一の液相への抽出輸送体となる種と接触させる。2つの液相は混ざり合わないので、乳濁液/分散液は生じない。この種類のプロセスのための多孔質媒体は、一般に合成膜材料、例えば精密濾過膜または限外濾過膜であり、このアプローチは、一般に膜溶媒抽出または膜相接触と呼ばれる(例えば、CA1025368Aまたは「Hollow fiber solvent extraction of pharmaceutical products:A case study」,(1989),R.Prasad and K.K.Sirkar,J.Memb.Sci,47(3),235−259、またはUS5714072参照)。
膜相接触装置の固有の利点にも関わらず、それらの用途における1つの重大な問題は、相の破過(breakthrough)の排除である(例えば、「Aqueous−organic membrane bioreactors.I.A guide to membrane selection」,1991,A.M.Vaidya,G.Bell,and P.J.Halling,J.Memb.Sci.,71(1−2),139−149,および「Aqueous−Organic Membrane Bioreactors.2.Breakthrough Pressure Measurement」,1994,A.M.Vaidya,G.Bell,and P.J.Halling,J.Memb.Sci.,97,13−26参照)。この現象は、非浸透性の液相を膜の細孔に強制的に通過させるために膜に加えなければならない圧力である、膜の破過圧が低下した時に起こる。破過圧は、細孔サイズと界面張力の両方の関数である。Laplace−Youngの式によれば、破過圧は、次の式で説明することができる。
=2σCosθ/r(式1)
(式中、P=破過圧、σ=液液界面での界面張力、θ=湿潤液と膜との間の接触角、およびr=細孔半径である。)
この式から、破過圧は細孔半径が増大するにつれて低下することが明白であるが、重要なことには、破過圧は界面張力が低下するにつれても低下する。表面張力を低下させることのできる材料には、界面活性剤およびタンパク質などの化学物質、ならびに粉塵などのその他の材料が含まれる。ほぼ全ての工業環境において、表面張力を低下させることができ、従って破過圧を低下させることのできる材料が存在する。しかし、タンパク質などの生物学的高分子は、破過圧を容易に低下する非常に強力な界面活性剤であるため、膜相接触装置を生体溶液とともに使用する場合は特に問題である(「Surfactant−induces breakthrough effects during the operation of two−phase biocatalytic membrane reactors」,A.M.Vaidya,P.J.Halling,G.Bell(1994),Biotechnol.Bioeng.,44(6),765−771)。より小さい細孔をもつ膜は、多くの場合、表面張力の低下に対抗するために使用されるが、ナノ濾過膜および緊密な限外濾過膜は、多くの場合、多孔度が低く、結果的にそれらの物質移動率は、緩い限外濾過膜および精密濾過膜と比較して低い。
Valadez−Blanco et al.の研究は、Lenzing P84ポリイミドポリマーを用いて調製した有機溶媒ナノ濾過膜が、全細胞生体触媒を伴う膜相接触装置用途での使用に適していることを示した(「A membrane bioreactor for biotransformations of hydrophobic molecules using organic solvent nanofiltration(OSN) membranes」,R.Valadez−Blanco,F.Castelo Ferreira,R.F.Jorge and A.G.Livingston(2008),J.Memb.Sci.,317(1−2),50−64)。P84ポリイミドポリマーは、約20%の以下の構造Aのポリイミドと、約80%の以下の構造Bのポリイミドとを含有するコポリイミドである。
Figure 0005599458
この研究において、これらの膜では、より緩い膜で起こる相の破過が起こらないことが見出された。しかし、相の破過のレベルの低下は、物質移動率の同時低下を引き起こす。測定された単位膜面積あたりの溶質の物質移動率は、直接接触二相系よりも高い体積生産性をもたらすのに十分高くはなく、従って実行可能な工業溶液を提供しないことが判明した。そのため、膜の「緊密性」の増加は、物質移動率の低下を引き起こすことが考えられる。そして、このことは、相接触のための膜としての、この膜の全体的な実用性を低下させる。残念ながら、良好な相分離を確保するために、「緊密な」すなわち、多孔性の低い膜が必要とされる。従って、これら2つの特性は相互に排他的であると思われるので、良好な物質移動率と良好な相分離を妥協して解決することが必要である。
本発明は、良好な物質移動率および優れた相分離特性をもつ膜を提供する際の先行技術の問題に対処する。本発明者らは、所定の溶質の物質移動率を少なくとも5倍、より通常には少なくとも10倍増加させることを可能とすると同時に、物質移動のための安定した界面を維持する、Matrimid 5218ポリイミドに基づく膜のクラスを見出した。Matrimid 5218ポリイミド膜はLenzing P84膜よりもさらに緊密であるので、この結果は意外である。言い換えれば、本発明の膜の多孔質性は、Lenzing P84膜と比べて低下しているが、性能は大きく改善されている。より緊密なMatrimid 5218型の膜は、Lenzing P84膜の物質移動率よりもさらに低い物質移動率を有すると予測される。この思いがけない結果は、先行技術の重要な限界、すなわち、低い物質移動率に対処する。
そのため、本発明の目的は、新規な非対称ポリイミド膜を提供することである。また、本発明の目的は、新規なナノ濾過膜または限外濾過膜を提供することである。また、本発明の目的は、膜相接触装置で使用する場合に、その他の既知のナノ濾過膜または限外濾過膜と比較して改良された物質移動率を有するナノ濾過膜または限外濾過膜を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、膜相接触装置で使用する場合に、既知のナノ濾過膜の物質移動率の少なくとも10倍の物質移動率を有するナノ濾過膜または限外濾過膜を提供することである。もう一つの目的は、良好な相分離特性を有するナノ濾過膜または限外濾過膜を提供することである。理想的には、膜は良好な物質移動と分離特性の両方を有するべきである。さらに本発明のさらなる目的は、第一の相から第二の相へ溶質を抽出するための相接触の際の非対称ポリイミド膜の使用を提供することである。
本発明は、上記目的の1以上を達成する膜を提供する。
理論に縛られるものではないが、物質移動率を増加させる効果は、使用するポリマーによって決まると考えられる。膜のポリイミドの疎水性の増加が、本発明の膜の有利な特性、例えば良好な相分離特性に連動した物質移動率の増加に寄与すると考えられる。本発明のMatrimid型の膜の明らかに低下した多孔度、すなわち、増加した「緊密性」にかかわらず、それは本発明の膜の有利な特性に寄与する。従って、Matrimid 5218ポリイミドのジアミン部分は、Lenzing P84ポリイミドのジアミン部分よりも疎水性が高い。
本発明の膜を形成するために使用したMatrimid型のポリマーは、下に示される化学式(I)により定義され、全てMatrimid 5218に由来する。従って、本発明には、ポリマー主鎖上の疎水性修飾置換基の選択を置換することを可能とする、下に定義される様々な修飾されたMatrimid 5218ポリイミド膜が含まれる。特定の用途では、親、すなわち、Matrimid 5218ポリイミド自体は、膜フィルターとして特に効果的である。
第一の態様によれば、本発明は、
(i)多孔質支持基材と、(ii)式(I):
Figure 0005599458
(式中、各々のR、R、R、R、R、R、R、RおよびR11は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキルおよびハロを含む群から独立して選択され、
Xは、結合および
Figure 0005599458
を含む群から選択され、かつ、Yは存在せず、または、XおよびYは、各々、結合および
Figure 0005599458
を含む群から独立して選択され、または、XおよびYは、式(II):
Figure 0005599458
の縮合芳香族構造を形成するために各々存在せず、
各々のRは、存在する場合、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキルおよびハロを含む群から独立して選択され、
各々のR10は、存在する場合、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキルおよびハロを含む群から独立して選択され、
Zは、結合およびCR −を含む群から選択され、
pは、0〜4であり、
qは、0〜3である)
の繰り返し単位を有するポリイミドとを含む、非対称ポリイミド膜を提供する。
式(I)のポリイミドは、多孔質支持基材の上にコーティングされている。実際には、これは、多孔質支持基材の一表面を少なくともコーティングするポリイミド材料のシートまたはウェブを形成する。また、コーティングは、基材の多孔質構造に浸透して「定着(keying)」作用をもたらし、基材からのコーティングの剥離または分離を防ぐこともできる。
一実施形態では、ポリイミドは、20,000ダルトン〜1,000,000ダルトンの範囲の分子量を有する。好ましくは、ポリイミドは、50,000ダルトン〜500,000ダルトン、より好ましくは70,000ダルトン〜300,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
一実施形態では、非対称ポリイミド膜のポリイミドは、式(III):
Figure 0005599458
を有する。
一実施形態では、Rは、Hである。
一実施形態では、Rは、Hである。
一実施形態では、Rは、Hである。
一実施形態では、Rは、Hである。
一実施形態では、Xは、C=Oである。
一実施形態では、Yは、存在しない。
一実施形態では、pは、0である。
一実施形態では、qは、0である。
一実施形態では、Rは、Hである。
一実施形態では、Rは、Hである。
一実施形態では、Rは、Meである。
一実施形態では、Rは、Meである。
一実施形態では、R11は、Meである。
一実施形態では、Zは、存在しない。
一実施形態では、各々のC1−3アルキルは、独立に、Me、EtまたはPrである。好ましくは、各々のC1−3アルキルは、Meである。
一実施形態では、各々のC1−3ハロアルキルは、独立に、C1−3フルオロアルキルである。好ましくは、各々のC1−3ハロアルキルは、−CHF、−CHFまたは−CFである。
一実施形態では、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。一実施形態では、各々のハロは、FおよびClを含む群から独立して選択される。好ましくは、各々のハロは、独立に、Fである。
本発明の一実施形態では、非対称ポリイミド膜のポリイミドは、式(IV):
Figure 0005599458
を有さない。
一実施形態では、非対称ポリイミド膜は、積層スキン型非対称ポリイミド膜である。
第二の態様によれば、本発明は、第一の相から第二の相への溶解した溶質の抽出における非対称ポリイミド膜の使用を提供し、該非対称ポリイミド膜は、第一の態様で定義される膜である。
実施形態では、第一の相から第二の相への溶解した溶質の抽出において使用される非対称ポリイミド膜のポリイミドは、様々な好ましい実施形態において上記に定義される式(I)を有する。
同様に、本発明者らは、Matrimid 5218ポリマー自体が、特定の材料、特に天然脂質由来の遊離脂肪酸などのバイオマテリアルの分離を達成するために、その相分離および物質移動性能の点で特に良好であることを見出した。
従って、一実施形態では、膜フィルターとして使用される非対称ポリイミド膜のポリイミドは、式(IV):
Figure 0005599458
を有する。
別の態様では、本発明は、水性流体から溶質を除去する方法を提供し、該方法は、
(i)溶質を含む水性流体を、第一の態様で定義される非対称ポリイミド膜の第一の面と接触させるステップと、
(ii)第一の態様で定義される非対称ポリイミド膜の第二の面を、非水性流体と接触させるステップと
を含む。
別の態様では、本発明は、有機流体から溶質を除去する方法を提供し、該方法は、
(i)溶質を含む有機流体を、第一の態様で定義される非対称ポリイミド膜の第一の面と接触させるステップと、
(ii)第一の態様で定義される非対称ポリイミド膜の第二の面を、水性流体と接触させるステップと
を含む。
一実施形態では、溶質は汚染物質を含む。一実施形態では、溶質は触媒を含む。一実施形態では、溶質は遊離脂肪酸を含む。一実施形態では、溶質は生体触媒反応からの反応生成物を含む。
一実施形態では、水性流体は生物学的流体を含み、溶質は天然脂質由来の遊離脂肪酸を含む。従って、本発明の方法は、水相から有機相へ脂肪酸を選択的に除去する一方、水相中に多くの生体分子を保持することを含み得る。一実施形態では、水性流体は、生体触媒(例えば、酵素または全細胞生体触媒)および生体触媒反応からの反応生成物(例えば、キラル水素化反応またはキラル酸化反応からの生成物などのキラルシントン)を含む。そのため、反応を用いて、非対称水素化および非対称酸化などの多様な生物学的に制御された反応からの最終生成物を分離することができる。
従って、本発明は、膜相接触装置での使用に特に適した、転相により形成される非対称ポリイミド膜を提供する。
また、本発明は、
(a)以下の
(i)ドープ溶液の5〜30重量%の量で存在するポリイミドポリマー(該ポリイミドポリマーは第一の態様で定義されるとおりである)、
(ii)水混和性である、前記ポリイミドポリマーのための溶媒系
(iii)場合により、前記ドープ溶液の5重量%未満の量で存在する増粘剤、
(iv)場合により、前記ドープ溶液の10重量%未満の量で存在する空隙抑制剤、
(v)場合により、前記ドープ溶液の50重量%未満の量でドープ溶液中に分散している、離散した有機マトリックスもしくは無機マトリックス
を含むドープ溶液を調製するステップと、
(b)前記ドープ溶液のフィルムを多孔質支持基材の上に流延してフィルムキャストを形成するステップと、
(c)随意の蒸発期間の後に、基材上のフィルムキャストを凝固媒体に浸漬するステップと、
(d)場合により、キャストフィルムを架橋剤で処理して架橋を生じさせるステップと、
(e)場合により、キャストフィルムを洗浄浴またはコンディショニング剤を含有する浴で処理するステップと、
(e)場合により、キャストフィルムを乾燥させるステップと
を含む、膜相接触装置において使用するための、積層スキン型非対称膜を形成するためのプロセスも提供する。
非対称膜は、当業者によく知られており、それには、同じ材料のより厚い多孔質構造の上の、高密度で極薄な最上層の「スキン」層からなるもの、すなわち、積層スキン型のものが含まれる。一般に、平らなシート形式の場合、非対称膜は適した多孔質の裏地または支持材に支持される。
本発明のポリイミド膜は、US5264166およびGB2437519の特許などの先行技術に記載の方法に従ってポリイミドから製造することができる。ポリイミドポリマーは、テトラカルボン酸無水物とジアミンの重縮合反応から合成される。テトラカルボン酸無水物および芳香族部分を含有するジアミンが本発明に好ましい。これらの種類のポリイミドの限定されない例としては、P84(HP Polymers,Austria)およびMatrimid 5218(Huntsman,Belgium)が挙げられる。
膜は、本発明に従って、所望のポリイミドを、随意の増粘剤、随意の空隙抑制剤、および場合により非混和性マトリックスの離散した粒子とともに溶媒に溶解して、粘性のポリマードープ溶液を得ることにより製造することができる。ポリマー溶液は、多孔質支持体上に広げられてフィルムを形成し、場合により一部の溶媒を蒸発させ、ポリイミドに対する非溶媒(すなわち、凝固媒体)を含有する浴中で膜フィルムをクエンチする。これによりポリマーが沈殿し、転相プロセスにより非対称膜が形成される。
ポリイミドポリマードープ溶液は、ポリイミドポリマーを、1種類の水性溶媒および/もしくは有機溶媒、または水性溶媒および/もしくは有機溶媒の混合物に溶解することにより調製することができる。溶媒には次の水混和性溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4ジオキサン、γ−ブチロラクトン、水、アルコール、ケトンおよびホルムアミドが含まれる。
溶液中のポリイミドポリマーの重量パーセントは、最も広義では5%〜30%の範囲であってよいが、15%〜25%の範囲が好ましく、20%〜25%の範囲がさらにより好ましい。
増粘剤などの添加剤は、前記ポリイミドポリマードープ溶液の10重量%までの量で存在してよく、これらには、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよびウレタンが含まれる。細孔構造に影響を及ぼし得る界面活性剤などの添加剤は、前記ポリイミドポリマードープ溶液、例えばTriton X−100(Sigma−Aldrich UK Ltd.より市販されている(オクチルフェノキシ−ポリエトキシエタノール))の5重量%までの量で使用することができる。
粉末固体の形態の有機マトリックスまたは無機マトリックスは、前記ポリマードープ溶液の50重量%までの量で存在してよい。炭素モレキュラーシーブマトリックスは、米国特許第6,585,802号に記載されるような任意の適した材料の熱分解により調製することができる。
米国特許第6,755,900号に記載されるように、ゼオライトも無機マトリックスとして使用することができる。金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛および二酸化ケイ素など、例えばDegussa AG(Germany)よりAerosolおよびAdNanoの商標名で市販されている材料を使用してよい。セリウム、ジルコニウム、およびマグネシウムの混合物などの複合金属酸化物を使用してよい。好ましいマトリックスは、直径1.0ミクロン未満、好ましくは直径0.1ミクロン未満、好ましくは直径0.01ミクロン未満の粒子である。一部の例では、マトリックスをドープ溶液とは別の溶液、好ましくは有機溶媒溶液に分散させ、その後にポリマーを含有するドープ溶液にこの溶液を添加することが有利であり得る。好ましい実施形態では、無機マトリックス、例えばゼオライトまたは金属酸化物の結晶またはナノ粒子を、選択したサイズまでドープ溶液とは別の溶液中で成長させ、その後にポリマーを含有するドープ溶液にこの分散溶液を添加することができる。この別の溶液は、連続した液相中にナノ粒子が分散した水または有機溶媒を含み得る。なおさらに好ましい実施形態では、マトリックスが分散している溶媒は、揮発性であってよく、膜流延の前に蒸発によりドープ溶液から除去することができる。
一実施形態では、ポリイミドポリマーを記載される溶媒系に溶解させ、マトリックスが十分に分散するように随意の添加剤および有機マトリックスまたは無機マトリックスをドープ溶液に添加すると、それを適した多孔質支持体または基材の上に流延して平らなシート膜を製造することができる(すなわち、フィルム流延)。支持体は、透過液の膜の通過を妨害せず、かつ、膜材料、流延溶液、ゲル化浴溶媒、または膜が使用時に透過性になる溶媒と反応しない不活性多孔質材料の形態をとり得る。かかる不活性支持体の典型は、金属メッシュ、焼結金属、多孔質セラミック、焼結ガラス、紙、多孔質非溶解プラスチック、および織布材料または不織布材料である。好ましくは、支持材は、不織布ポリマー材料、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニリン硫化物(PPS)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン(Halar(登録商標)ECTFE)、または炭素繊維材料などである。
流延工程の後に、高密度で極薄な最上層の「スキン」層をポリイミド膜の上に形成するのに十分な条件下で、一部の溶媒を蒸発させることができる随意の工程を行ってよい。この目的に適した典型的な蒸発条件には、100秒未満、好ましくは30秒未満の期間の間の空気への曝露が含まれる。なおさらなる好ましい実施形態では、空気は30秒未満の期間の間、15℃〜25℃で膜表面の上をブローする。
凝固剤または焼入れ剤は、水、アルコール、ケトンまたはその混合物、ならびに界面活性剤などの添加剤、例えば、Triton X−100(Sigma−Aldrich UK Ltdより市販されている(オクチルフェノキシ−ポリエトキシエタノール))からなってよい。血液凝固をもたらすための条件は、当業者によく知られている。
凝固媒体およびドープ溶液で用いる溶媒は異なる。しかし、ドープ溶液用の溶媒が凝固媒体に混和性を有することが重要である。
形成された非対称ポリイミド膜は、次の技法に従って洗浄することができる。一般に、水溶性有機化合物、例えば、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトンまたはその混合物および水とのブレンドなどの低分子量アルコールおよびケトン類などを、残存する流延溶媒(例えば、NMP)およびその他の添加剤を膜から除去するために使用することができる。あるいは、膜を水で洗浄してもよい。残存する流延溶媒の除去は、順次溶媒交換プロセスにおいて連続的な洗浄ブレンドを必要とし得る。
ポリイミドを架橋するのに適したアミン架橋剤は、第一級アミンおよび/または第二級アミンを包含する。適したアミン架橋剤としては、WO2006/009520A1および米国特許第4,981,497号に報告されるものが挙げられる。かかる材料の官能基は、モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、およびポリアミンを包含する。適したアミノ組成物の例としては、アンモニア、ヒドラジン、脂肪族アミン、脂肪族−芳香族アミンおよび芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンの具体例としては、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ポリエチレンイミン、JEFFアミン組成物(エチレンオキシド由来のポリエーテル主鎖を有するジアミン)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、および同類のものが挙げられる。脂肪族芳香族アミンの具体例としては、ベンジルアミン、メタ−キシリレンジアミン、パラ−キシリレンジアミンおよび同類のものが挙げられる。芳香族アミンの具体例としては、アニリン、アニリン誘導体、フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、オキシジアニリンおよび同類のものが挙げられる。好ましいアミノ化合物は、2個または3個のアミノ基と6〜30個の炭素原子を含有する芳香族化合物、または2〜6個のアミノ基と1〜40個の炭素原子を含有する脂肪族化合物である。
架橋剤は、溶媒に溶解して架橋溶液を形成することができる。溶媒は、ケトン、エーテル、アルコール、または架橋剤を溶解するあらゆる溶媒から選択される有機溶媒であってよい。好ましい実施形態では、架橋溶液中の溶媒も非対称膜を膨潤させて膜への架橋剤の良好な浸透を許容する。好ましい実施形態では、溶媒はアルコールであり、なおさらに好ましい実施形態では、溶媒はメタノールまたはエタノールである。架橋溶液中の架橋剤の濃度は、起こる架橋の程度を制御するために、溶液体積当たりに添加するポリイミド非対称膜の量に対して調節することができ、架橋溶液中のアミン基と膜中のイミド基の比が、0.0.01〜10、さらにより好ましくは0.1〜5の範囲である。
架橋する時間は0.5〜120時間の間、より好ましくは1〜30時間、さらにより好ましくは3〜60時間の間で変動し得る。架橋する温度は、0から溶媒の沸点の間、好ましくは0℃〜60℃の間、さらにより好ましくは10℃〜40℃の間で変動し得る。
次に、膜に含浸させるために溶媒に溶解したコンディショニング剤と膜を接触させることにより、非対称膜を状態調節する。コンディショニング剤は、低揮発性の有機液体である。コンディショニング剤は、合成油(例えば、ポリオレフィン系油、シリコーン油、ポリアルファオレフィン系油、ポリイソブチレン油、合成ワックス異性化油、エステル油およびアルキル芳香油)、および、溶剤精製油および水素化処理鉱油を含む鉱油、および石油ワックス異性化油、植物油脂、高級アルコール類、例えばデカノール、ドデカノール、ヘプタデカノール、グリセロール、グリコール類、例えばポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどから選択することができる。コンディショニング剤を溶解するために適した溶媒としては、アルコール、ケトン、芳香族、もしくは炭化水素、またはそれらの混合物が挙げられる。本発明に従うコンディショニング剤の使用により、膜が、高流量を維持すると同時に、非芳香族の存在下で芳香族を透過させる高い選択性を示すことが可能となる。また、コンディショニング剤は、膜を炭化水素溶媒で湿らせること、適した細孔構造を芳香族の透過のために乾燥状態で維持すること、および改良された柔軟性および取扱特性をもつ平らなシート膜を製造することも可能にする。
コンディショニング剤での処理に続いて、膜を典型的に周囲条件下で空気乾燥して残存した溶媒を除去する。
上記の膜は、溶質を水相から有機溶媒相に抽出する膜相接触装置工程に使用することができる。特に、それらの膜はその他のポリイミドポリマーから製造した膜よりも少なくとも5倍高い溶質の物質移動率を提供する。この膜は、その他のポリイミドポリマーから製造した膜よりも少なくとも10倍高い溶質の物質移動率を提供し得る。このことは、所定の用途のためにはるかに少ない膜面積しか必要としないことを意味し、先行技術の非対称ポリイミド膜に優る大きな利点である。
用語「膜相接触装置」とは、膜が、流体の混合によって生じる物質移動面積ではなく、プロセスにおいて物質移動のための固定された界面積をもたらす膜プロセスを意味する。膜相接触装置では、1つの液相の流体の境界は、膜の中または表面に位置し、固定された界面を提供する。次に、第二の液相は、第一の液相を含有する膜と接触され、抽出される種は第二の液相から第一の液相の中へ拡散する。大型の分子(2,000g.mol−1を超える)およびポリマー種は、膜によって保持され、第一の液相に入らない。従って、2,000g.mol−1未満の分子は、大型の分子種が混入することなく、複合媒体、例えば、発酵またはバイオマスに由来する溶液から単離することができる。2つの液相は混ざり合わないので、乳濁液/分散液は生じない。
有機溶媒という用語は、当業者に十分理解されるものであり、それには、300ダルトン未満の分子量をもつ有機液体が含まれる。溶媒という用語には溶媒の混合物が含まれることも理解される。
限定されない例として、溶媒には、芳香族炭化水素、アルカン、ケトン、グリコール、塩素系溶剤、エステル、エーテル、アミン、ニトリル、アルデヒド、フェノール、アミド、カルボン酸、アルコール、フラン、およびそれらの混合物が含まれる。
限定されない例として、溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、スチレン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエーテルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、エチレングリコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘキサン、シクロヘキサン、ジメトキシエタン、メチルtertブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、アジポニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ピリジン、二硫化炭素、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランおよびそれらの混合物が挙げられる。
用語「溶質」は、当業者に十分理解されるものであり、それには、液体中の溶質の重量分率が、溶媒または水の重量分率よりも低く、溶質の分子量が溶媒の分子量よりも少なくとも20g.mol−1高いように、水または有機溶媒および少なくとも1つの溶質分子を含む液体溶液中に存在する有機分子が含まれる。
本発明の膜は、当業者に知られているデザイン、例えばスパイラル型、プレートアンドフレーム、シェルアンドチューブ、ならびにその派生デザインなどのいずれかに従って設定することができる。
本発明を、次の図面で説明する。
スチレンオリゴマー(PS)のトルエン溶液を用いるP84膜およびMatrimid膜に関する分子量カットオフ曲線、MWCOを示す図である。 各々の膜について、水性相と有機相の両方におけるDHAの総質量の経時的な変化を示す図である。 各々の膜について、水性相と有機相の両方におけるDHA濃度の経時的な変化を示す図である。
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
[実施例]
実施例1−膜形成
ポリイミド膜(P84ポリイミド(HP Polymers,Austria)またはMatrimid(登録商標)5218ポリイミド(Huntsman,Belgium)に基づく)を、Yoong Hsiang See−Toh et al.(2008)に記載の方法に従って調製した。膜を流延したドープ溶液の詳細な組成を表1、2および3に示す。
Figure 0005599458
Figure 0005599458
Figure 0005599458
膜を流延した後、それをPEG400(VWR,UK)に含浸させてから膜を乾燥させた。
次に、膜を、MET細胞全量濾過ユニット(Membrane Extraction Technology Ltd.,UK)における膜流束性能およびMWCO(分子量カットオフ)曲線(排除されている分子の分子量の関数としてプロットした膜排除率)の決定に関して特徴付けた。
膜流束を、式2を用いて得た。
Figure 0005599458
(式2)
式中、V=浸透した容積(L)、A=膜面積(m)、および、t=該容積が浸透する時間(h)である。
膜排除率Rは、溶質が膜によってどのくらい分離されるかについての当業者に知られている一般的な尺度であり、次のように定義される。
Figure 0005599458
(式3)
式中、CP,i=透過液中の溶質iの濃度であり(透過液は膜を通過した液体である)、かつCR,i=保持液中の溶質iの濃度であり、保持液は膜を通過しなかった液体である。100%の排除値は、溶質が膜により完全に保持されていることを意味し、0%の排除値は、溶質が溶媒と同じ割合で膜を通過した(すなわち、溶質は膜に全く保持されていない)ことを意味する。
DMF中P84膜およびNMP中MAT膜に関する膜流束およびMWCOの測定は、トルエンおよびスチレンオリゴマーの同族列(10〜300kDa、以下の表および図中で「PS」と表示する)からなるトルエン溶液に対して5バールの濾過圧力で実施した。DMF中MAT膜のMWCOの特徴付けのため、一連のPEG溶液(ポリエチレングリコール、3kDaから35kDaまで)を別々に試験した。
測定した流束値を表4に表し、スチレンオリゴマー溶液PSおよびPEG溶液についてのMWCO曲線(特定のオリゴマーの分子量に対する、各オリゴマーの測定排除率のプロット)を、それぞれの場合に使用した溶液に従って、研究中の全ての膜について図1に示す。
Figure 0005599458
Figure 0005599458
図1:対応するオリゴマー溶液(トルエン中の1g/LのPS1、PS2またはPEG)を用いる排除試験から得た、研究中の各々の膜に対する分子量カットオフ曲線、MWCO。A−NMP中MATおよびDMF中P84、PS(5〜315kDa);B−DMF中MAT、PEG(3〜35kDa)。
このデータから、圧力濾過条件下で、調製した全ての膜が限外濾過膜の特徴を示す、すなわち、スチレンまたはポリエチレングリコールオリゴマーの90%排除を2,000g.mol−1(2kDa)を超える分子量で達成することが明らかである。P84膜は、両方のMatrimid膜よりも高い流束を有し、予測通りMatrimid膜よりも低いあらゆる所定の溶質の排除を示す。P84膜は、「緩い」限外濾過膜(すなわち、高MWCO、>>315kDa)と特徴付けられ、Matrimid膜は「緊密な」限外濾過膜(すなわち、低MWCO)と特徴付けられる。しかし、流束およびMWCOへの重大な違いは、2種類のMatrimid膜間で観察することができる。NMP中MATは、DMF中MAT(約35kDaおよび255L.m−2.h−1)よりも低い分子量カットオフ(約5kDa)および結果的にそれよりも低い流束(55L.m−2.h−1)を示した。その結果、溶媒とポリマーの組合せが、膜形成に重要な役割を果たし、結果的に膜流束および排除性能に重要な役割を果たすことを確認することが可能である。
実施例2−膜層接触装置における膜性能
相当な割合の生物学的界面活性剤を含有する複合溶液を膜性能を実証するために選択し、微細藻類の直接化学的加水分解によって脂肪酸に富む溶液を生成した。
5gの凍結乾燥した微細藻類を、150mlのエタノール中0.5MのKOHに溶解した。次に、バイオマス懸濁液を60℃の水浴中で2時間インキュベートした。室温まで冷却した後、75mlの蒸留水を添加した。不鹸化物の除去は行わなかった。次に、遊離脂肪酸を得るために、脂肪酸の塩を含有する水溶液を、6M塩酸の溶液を用いてpH1.5まで酸性にした。
次に、脂肪酸試験溶液を膜相接触装置で使用して膜性能を評価した。試験で使用した2種類の液体溶液は、(1)脂肪酸富化相(pH約1.5)および(2)有機溶媒相(ヘキサン)であった。これら2つの相を、異なる流速でギアポンプを用いて、膜槽の両側に1つずつ連続的に循環させた。脂肪酸富化溶液は、90L/hで循環させ、ヘキサンは20L/hで循環させた。膜特性(ポリイミドおよび膜カットオフ)がどのように膜全体の物質移動に影響を及ぼすかを解明するために、実施例1で特徴付けられた3種類の膜(DMF中P84、NMP中MATおよびDMF中MAT)を試験した。全ての実験は、室温および大気圧にて実施した。
サンプルを、各々の実験(最大45時間の濾過時間)を通して定期的に回収した。特定の脂肪酸(FAと表示する)の組成を決定するために、サンプルをメチル化し、DB−FFAPキャピラリーカラム(30m×0.25mm内径およびフィルム厚0.25μm(J&W Scientific))を用いるガスクロマトグラフィーによりさらに分析した。脂肪酸組成の定量化は、公知の標準液(混合物ME81および標準試薬C21:0、Larodan Fine Chemicals(Sweden))を用いて実行された。
図2は、研究において膜の各々についての実験を通して得た、水性相および有機相中のFAの絶対質量のプロフィールを示す。
Figure 0005599458
図3:各々の膜についての水性相(脂肪酸富化相)と有機相の両方におけるFA絶対質量の経時的変化。
図2のプロットから、4つの膜が完全に異なる抽出性能を示すことが見出される。同じ作業期間(22時間)の後、Matrimid膜を用いる場合の有機相中のFA含有量は、FAの絶対質量の点でP84膜に関するよりも少なくとも5倍高かった。これは、圧力濾過結果から予測されるものとは反対である。圧力濾過結果は、P84がMatrimid膜よりもはるかに緩く高い流束膜であり、その結果としてP84膜がより高い物質移動係数を示し、従ってP84膜について抽出がより速く起こると予測されることを示す。
各々の実験について算出した、(水性供給相からヘキサン相への輸送に関する)FA物質移動係数の値を表5に示す。実施した各々の実験に関する水性脂肪酸富化相中のFAの初期濃度(CFA,0)も表5に示す。
Figure 0005599458
表5の総括物質移動係数データは、相接触膜として使用する場合、Matrimid膜が、P84膜よりも10倍高い総括物質移動係数を有することを示す。従来の圧力駆動の濾過で使用した場合に、P84膜はMatrimid膜よりもはるかに高い流束および高いMWCO膜を有することを考えると、これは非常に思いがけない結果である。しかし、膜カットオフの物質移動率への影響が2つのMatrimid膜間で見られ、DMF中MATは最良の性能を示し、20時間の濾過の後に80%を上回る総脂肪酸が膜を通じて輸送された。この驚くべき結果は、Matrimid膜が当分野の用途に非常に優れ、強化された性能をもたらすことを示す。

Claims (15)

  1. 第一の相から第二の相への溶解した溶質の抽出における非対称ポリイミド膜の使用であって、前記非対称ポリイミド膜が、(i)多孔質支持基材と、(ii)式(I):
    Figure 0005599458
    (式中、各々のR、R、R、R、R、R、R、RおよびR11は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキルおよびハロを含む群から独立にして選択され、
    Xは、結合および
    Figure 0005599458
    を含む群から選択され、かつ、Yは存在せず、または、XおよびYは、各々、結合および
    Figure 0005599458
    を含む群から独立して選択され、または、XおよびYは、式(II):
    Figure 0005599458
    の縮合芳香族構造を形成するために各々存在せず、
    各々のRは、存在する場合、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキルおよびハロを含む群から独立して選択され、
    各々のR10は、存在する場合、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキルおよびハロを含む群から独立して選択され、
    Zは、結合およびCR −を含む群から選択され、
    pは、0〜4であり、
    qは、0〜3である)
    の繰り返し単位を有するポリイミドとを含む、使用
  2. 前記ポリイミドが、式(III):
    Figure 0005599458
    を有する、請求項1に記載の使用
  3. XがC=Oであり、Yが存在しない、請求項1または請求項2に記載の使用
  4. Zが存在しない、及び/又は
    、R 、R およびR の少なくとも1つが、−F、−CH 、−CH F、−CF Hおよび−CF を含む群から独立して選択され、残りがHである、及び/又は
    、R およびR 11 の少なくとも1つが、−CH F、−CF Hおよび−CF を含む群から独立して選択され、残りが−CH である、及び/又は
    およびR の少なくとも1つが、−F、−CH 、−CH F、−CF Hおよび−CF を含む群から独立して選択され、R およびR の残りがHである、及び/又は
    pが、1または2である、及び/又は
    が、−F、−CH 、−CH F、−CF Hおよび−CF を含む群から選択される、及び/又は
    qが1または2であり、R 10 が、−F、−CH 、−CH F、−CF Hおよび−CF を含む群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の使用
  5. 前記非対称ポリイミド膜が、式(IV):
    Figure 0005599458
    に従う構造を有する、請求項1に記載の使用。
  6. 有機架橋剤と前記膜ポリマーとの反応から形成された架橋を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の使用
  7. 離散した有機マトリックスが、前記非対称膜中に前記膜の50重量%までの量で分散している、請求項1〜のいずれかに記載の使用
  8. 離散した無機マトリックスが、前記非対称膜中に前記膜の50重量%までの量で分散している、請求項1〜のいずれかに記載の使用
  9. 前記離散したマトリックスの平均粒径が、0.1ミクロン未満である、請求項またはに記載の使用
  10. 前記溶解した溶質が、50〜5,000g mol−1の範囲の分子量を有する、請求項またはに記載の使用。
  11. 前記溶媒が有機溶媒であり、前記膜が前記有機溶媒に対し安定である、請求項1、5、または10に記載の使用。
  12. (i)溶質を含む水性流体を、請求項1〜8のいずれかに定義される非対称ポリイミド膜の第一の面と接触させるステップと、
    (ii)請求項1〜8のいずれかに定義される前記非対称ポリイミド膜の第二の面を、非水性流体と接触させるステップと
    を含む、水性流体から溶質を除去する方法。
  13. (i)溶質を含む有機流体を、請求項1〜8のいずれかに定義される非対称ポリイミド膜の第一の面と接触させるステップと、
    (ii)請求項1〜8のいずれかに定義される前記非対称ポリイミド膜の第二の面を、水性流体と接触させるステップと
    を含む、有機流体から溶質を除去する方法。
  14. 前記溶質が汚染物質、触媒、遊離脂肪酸、または生体触媒反応からの反応生成物を含む、請求項12または13に記載の方法。
  15. 前記水性流体が生物学的流体を含み、前記溶質が天然脂質由来の遊離脂肪酸を含む、請求項12または13に記載の方法。
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