本発明に記載の「防錆処理剤」は、亜鉛粉末と亜鉛合金粉末とアルミニウム粉末との少なくとも1つを含む金属粉末と、有機ケイ素化合物と、有機チタネート化合物と、脂肪酸と、有機溶剤とを含有する。また、本発明に記載の「防錆処理部材」は、金属表面を有する被処理物と、上記防錆処理剤によって金属表面に形成される防錆塗膜とを備えている。
防錆処理剤に含まれる金属粉末は、亜鉛粉末と亜鉛合金粉末とアルミニウム粉末との少なくとも1つを含んでいればよい。亜鉛合金の例としては、Zn−Ni、Zn−Sn、Zn−Fe、Zn−Al、Zn−Al−Mg、等が挙げられる。
防錆処理剤における金属粉末の含有量は、20〜60質量%であることが好ましく、さらに言えば、30〜50質量%であることが好ましい。これは、含有量が多すぎると被処理物に薄膜状に塗布することが困難となったり、防錆塗膜の強度が低下するためである。一方、含有量が少なすぎるとクラックが進行し易くなったり、塗膜全体の耐食性が低下するためである。
金属粉末の形状は、鱗片形状であることが好ましい。金属粉末の形状を鱗片状とすることで、防錆塗膜中で金属粉末が厚み方向に積層する。これにより、バインダー成分の重合に起因する収縮によって防錆塗膜中にクラックが発生しても、その進行を抑制することが可能となる。
鱗片形状の金属粉末の平均厚さは、防錆塗膜の平均厚さの1/200〜1/2であることが好ましい。さらに言えば、防錆塗膜の平均厚さの1/200〜1/10であることが好ましく、特に、1/200〜1/20であることが好ましい。また、鱗片形状の金属粉末の長手方向の長さ(最長部分の長さ)の平均値は、防錆塗膜の平均厚さに対して1/20〜10倍であることが好ましい。さらに言えば、防錆塗膜の平均厚さに対して1/10〜5倍であることが好ましく、特に、2/5〜2倍であることが好ましい。
具体的には、例えば、塗膜の厚さが10μm程度である場合には、鱗片形状の金属粉末の平均厚さが0.05〜5μmであり、長手方向の長さの平均値が0.5〜100μmであることが好ましい。さらに言えば、鱗片形状の金属粉末の平均厚さが0.05〜1μmであり、長手方向の長さの平均値が1〜50μmであることが好ましい。特に、鱗片形状の金属粉末の平均厚さが0.05〜0.5μm、長手方向の長さの平均値が4〜20μmの範囲であることが好ましい。
また、防錆処理剤に含まれる有機ケイ素化合物は、アルコキシシランおよびその加水分解物からなる群から選ばれた一種または二種以上とする。アルコキシシランは、(X’)Si(X”)3なる一般式で表される化合物であることが好ましい。
ここで、X’は、ヒドロキシ基、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、等の低級アルコキシ基、メチル、エチル、等の低級アルキル基;ビニル基、等の低級アルケニル基;およびγ−グリシドキシプロピル、γ−メタクリロキシプロピル、γ−メルカプトプロピル、等の官能基含有低級アルキル基から選ばれる。X”は、ヒドロキシ基ならびにメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、等のアルコキシ基から選ばれるものであり、3個のX”は同一でも異なっていてもよい。
アルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、等が挙げられるが、それに限られるものではない。シランカップリング剤として市販されている各種のアルコキシシランを使用してもよい。
これらのアルコキシシランの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどのテトラアルコキシシランまたはこれらのオリゴマーが好ましく、特に好ましいのは炭素数が3以下のテトラアルコキシシランまたはこれらのオリゴマーである。焼き付け処理によって縮合反応を起こした際に、三次元架橋構造の塗膜を形成することができ、塗膜強度が向上しやすい。また、縮合する際の体積収縮が比較的少ないため、クラックが成長しにくい。
防錆処理剤における有機ケイ素化合物の含有量は、5〜40%であることが好ましい。これは、有機ケイ素化合物の含有量が5%未満の場合には、塗膜強度が低くなる傾向があるためである。さらに少ない含有量になると、金属粉末同士の間に明らかな空隙部(ボイド)が発生し、防錆性が低下する虞がある。一方、有機ケイ素化合物の含有量が40%より多くなると、防錆塗膜中での金属粉末の分散濃度が低下するため、防錆性が低下する虞がある。また、積層される金属粉末の重なり面積が少なくなり、クラック進展の抑制機能が低下する虞がある。このことを考慮すると、有機ケイ素化合物の含有量は、10〜35%であることが好ましい。
また、防錆処理剤に含まれる有機チタネート化合物は、一般式としてTi(X)4で表される有機化合物およびそのオリゴマーとする。ここで、Xは、水酸基、低級アルコキシ基、およびキレート性置換基から選ばれるものであり、4個のXは同一であってもよいし異なっていてもよい。
低級アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、等の炭素数6以下、好ましくは4以下のアルコキシ基である。
キレート性置換基は、キレート形成能を持つ有機化合物から誘導された基である。キレート形成能を持つ有機化合物としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸等のアルキルカルボニルカルボン酸およびそのエステル、乳酸等のヒドロキシ酸、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、等が挙げられる。また、キレート性置換基としては、具体的に、ラクテート、アンモニウムラクテート、トリエタノールアミネート、アセチルアセトネート、アセトアセテート、エチルアセトアセテート、等が挙げられる。
有機チタネート化合物は、後述するように高温での焼付け処理が施された際に、硬化剤あるいは触媒として機能し、有機ケイ素化合物の三次元的な架橋反応を促進する。これにより、バインダー成分の硬化速度が速まり、クラックの進行が抑制される。また、有機ケイ素化合物と金属粉末との化学的な結合、および有機ケイ素化合物と被処理部材の表面にある金属との化学的な結合もこの有機チタネート化合物の存在によって促進され、結合強度が高まる。これにより、金属粉末とバインダーとの界面剥離や、被処理物とバインダーとの界面剥離が抑制され、クラックの進行が抑制される。
防錆処理剤における有機チタネート化合物の含有量は、0.05〜2%であることが好ましい。これは、有機チタネート化合物の含有量が少なすぎると、上記効果が得られなくなり、大きなクラックが生じる虞があるためである。一方、有機チタネート化合物の含有量が多すぎると、防錆処理剤が大気中の湿度を吸収して加水分解しやすくなり、防錆処理剤のポットライフが短くなる。このことを考慮すると、有機チタネート化合物の含有量は、0.1〜1.5%であることが好ましく、特に、0.1〜1%であることが好ましい。
また、防錆処理剤の溶媒は、有機系溶媒を含有する。有機溶剤を含有させることで、被処理物への液なじみがよく、密着性が高い塗膜が形成される。また、有機溶剤を含有させることで、防錆処理剤中での各種の成分の分散性が向上し、防錆処理剤の均一性を高めることが可能となる。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、メトキシブタノール、メトキシメチルブタノール等のアルコール類;これらのアルコール類の酢酸エステル、プロピオン酸エステル等のエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類;およびこれらのグリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテルなどのエーテル類が例示される。また、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどの炭化水素類を使用してもよい。これらは、単独でも数種類の混合物として用いてもよい。
防錆処理剤における有機溶剤の含有量は、10〜60%であることが好ましく、さらに言えば、20〜30%であることが好ましい。
また、防錆処理剤には、増粘剤として脂肪酸が含まれる。増粘剤としては、脂肪酸アミドが採用されることが多いが、脂肪酸アミドを増粘剤として用いた防錆処理剤は、経時的に粘度が上昇する傾向にある。このため、本発明の防錆処理剤では、増粘剤として脂肪酸を用いることで、経時的な防錆処理剤の粘度上昇を抑制している。また、防錆処理剤に脂肪酸を含有することで、防錆処理剤による塗膜が緻密化し、防錆性が向上する。
脂肪酸としては、脂肪酸アミドと異なり、アミド結合を有していなければ、飽和脂肪酸,不飽和脂肪酸の何れを採用してもよいが、不飽和脂肪酸の方が、防錆処理剤の経時的な粘度上昇を抑制する効果が高い。なお、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸、パルミトール酸、リシノール酸、エレオステアリン酸等、種々のものを採用することが可能である。これらは、単独でも数種類の混合物として用いてもよい。
防錆処理剤における脂肪酸の含有量は、0.03〜0.15%であることが好ましい。これは、脂肪酸の含有量が少なすぎると、防錆処理剤の粘度が低過ぎて、防錆処理剤による防錆塗膜を適切に形成できない虞があるためである。一方、脂肪酸の含有量が多すぎると、防錆処理剤の経時的な粘度上昇を抑制する効果が低下するためである。このことを考慮すると、脂肪酸の含有量は、0.04〜0.1%であることが好ましく、特に、0.05〜0.07%であることが好ましい。
また、防錆処理剤に、脂肪酸に加えて、増粘剤としてチクソ剤を含むことで、防錆処理剤の経時的な粘度上昇をさらに効果的に抑制することが可能となる。また、チクソ性の向上により、防錆処理剤による防錆塗膜形成時における液だれ等を抑制し、均一な防錆塗膜を形成することが可能となる。
チクソ剤としては、オレフィン系ワックス、置換尿素ワックス、高分子化合物、無機粒子が挙げられる。オレフィン系ワックスとしては、カスターワックス(硬化ひまし油=水添ひまし油)、蜜ロウ、カルナウバロウなどが挙げられる。置換尿素ワックスとしては、N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素などが挙げられる。高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。無機粒子としては、シリカ粒子、カオリン粒子などが挙げられる。これらは、単独でも数種類の混合物として用いてもよい。
防錆処理剤におけるチクソ剤の含有量は、0.03〜0.15%であることが好ましい。これは、チクソ剤の含有量が少なすぎると、チクソ性が低くなり、均一な防錆塗膜を適切に形成できない虞があるためである。一方、チクソ剤の含有量が多すぎると、防錆処理剤の経時的な粘度上昇を抑制する効果が低下するためである。このことを考慮すると、チクソ剤の含有量は、0.04〜0.1%であることが好ましく、特に、0.05〜0.07%であることが好ましい。
また、防錆処理剤に、マグネシウム化合物を含むことで、防錆性が飛躍的に向上する。詳しくは、マグネシウムは、腐食環境下で中和効果を発揮するため、塗膜表面のpHが中性から弱アルカリ性に保たれる。これにより、腐食環境下において早期に、亜鉛の腐食生成物が塗膜表面に形成される。腐食生成物は、緻密な保護膜となり、腐食の進行を妨げる役割を果たし、特に、塩基性塩化亜鉛は、強固な保護膜となる。防錆処理剤にマグネシウム化合物が含まれることで、後述するように、腐食環境下の初期に、X線回折における亜鉛のピーク強度が低下し、塩基性塩化亜鉛のピーク強度が上昇する。これにより、腐食環境下の初期に、被処理物の塗膜が塩基性塩化亜鉛によって覆われることで、防錆性が飛躍的に向上する。
マグネシウム化合物としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群から選ばれた一種または二種以上であればよいが、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの少なくとも一方であることが好ましい。
防錆処理剤におけるマグネシウム化合物の含有量は、0.05〜10%であることが好ましい。これは、マグネシウム化合物の含有量が少なすぎると、上記効果が得られなくなり、塩基性塩化亜鉛が好適に生成されなくなるためである。一方、マグネシウム化合物の含有量が多すぎると、皮膜性が低下する虞がある。このことを考慮すると、マグネシウム化合物の含有量は、0.1〜5%であることが好ましく、特に、1〜4%であることが好ましい。
また、防錆処理剤には、必要に応じて、各種の添加剤を含有することが可能である。具体的には、例えば、防錆顔料、コロイド状シリカ微粒子、等が挙げられる。
コロイド状シリカ微粒子は、粒径が約1μm以下の微細なゾル状のシリカ粒子であり、塗膜の耐食性と塗膜強度を改善する効果がある。コロイド状シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカを有機溶媒に分散させたオルガノシリカゾル(たとえば日産化学工業株式会社製スノーテックス)、フュームドシリカ(気相シリカ)、等が挙げられる。
さらに、防錆処理剤に、湿潤剤、消泡剤、等の塗料用添加剤も含有させることが可能である。これらの添加剤の含有量は、合計で0.1〜10%の範囲とすることが好ましい。添加剤の含有量が0.1%未満の場合には、添加剤の効果が得られない虞がある。一方、添加剤の含有量が10%を超えると、主剤である金属粉末やバインダー成分の含有量が相対的に低下し、耐食性が低下する虞がある。
防錆処理剤は、上述した各成分を混合し攪拌することにより調整される。各成分の混合する順番は、限定されるものではなく、任意の順番で混合することが可能である。そして、調整された防錆処理剤が、被処理物の金属表面に塗布される。金属表面への塗布は、浸漬,ロール塗布,スプレー,刷毛塗り,スピンコート等、被処理物の大きさ,形状等に応じて種々の手法を採用することが可能である。
なお、防錆処理剤が塗布される被処理物は、金属表面を有するものであればよく、被処理物自体が金属製のものであってもよく、基材の表面に金属製の耐食膜が形成されたものであってもよい。ちなみに、基材は、金属製の部材であってもよく、被金属製の部材であってもよい。その基材上に生成される耐食膜は、例えば、亜鉛,亜鉛合金等からなるメッキ層であってもよく、そのメッキ層に化成処理を施した化成処理層であってもよい。さらに、その化成処理層に耐食性,外観向上,摩擦係数安定化等を目的とした仕上げ処理を施した仕上げ処理層であってもよい。
防錆処理剤の金属表面への塗布は、加熱処理後に形成される塗膜の厚みが2〜30μmとなるように行うことが好ましい。さらに言えば、加熱処理後に形成される塗膜の厚みは、5〜20μmであることが好ましく、とくに、7〜15μmであることが好ましい。なお、防錆処理剤の塗布時における防錆処理剤の液温は特に制限されず、通常は、常温の防錆処理剤が塗布される。
また、防錆処理剤が被処理物に塗布される際に、被処理物の形状、処理量等に応じて、防錆処理剤が希釈される場合がある。このような場合に、増粘剤として脂肪酸アミドが採用された防錆処理剤では、希釈により防錆性が著しく低下する。一方、増粘剤として脂肪酸が採用された防錆処理剤では、防錆処理剤を希釈しても、殆ど、防錆性は低下しない。このことからも、増粘剤として脂肪酸を採用することが好ましい。なお、希釈による防錆性の低下を好適に抑制できる希釈率、つまり、希釈前の防錆処理剤の質量に対する希釈液の質量の比率は、2〜30%であることが好ましい。
また、金属表面上に塗布された防錆処理剤を加熱することで、防錆塗膜が形成されるが、加熱温度は、200〜400℃であることが好ましく、さらに言えば、250〜350℃であることが好ましい。また、加熱時間は、塗膜の厚さに応じて調整されるが、10〜120分であることが好ましく、さらに言えば、15〜80分、特に、20〜40分であることが好ましい。この加熱処理により、有機ケイ素化合物が、硬化剤または触媒として機能する有機チタネート化合物と縮合反応して、多量の金属粉末を含む塗膜が、被処理物の金属表面上に形成される。
上述した手法により得られた防錆処理剤の経時的な粘度上昇を指標するべく、下記の手法に従った試験を行う。詳しくは、防錆処理剤の粘度を測定する。次に、防錆処理剤を所定時間、攪拌し、攪拌後の防錆処理剤の粘度を測定する。そして、攪拌前の防錆処理剤の粘度に対する攪拌後の防錆処理剤の粘度の比率を演算する。この比率を、防錆処理部材の経時的な粘度上昇の指標値として用いる。これにより、演算された比率が低いほど、防錆処理剤は経時的に粘度が上昇し難く、演算された比率が高いほど、防錆処理剤の粘度が上昇し易いことが解る。
また、上述した手法により得られた防錆処理部材の防錆性を指標するべく、JIS Z 2371に基づく方法に準拠した塩水噴霧試験によって赤錆が発生するまでの時間を計測する。
さらに、上述した手法により得られた防錆処理部材に対して、塩水噴霧試験とは異なる腐食試験を行う。腐食試験は、塩分濃度50±10g/L、水温25℃、pH6.5〜7.2とされた塩水に防錆処理部材を浸漬する塩水浸漬腐食試験である。この試験により、腐食環境下における腐食生成物、特に、塩基性塩化亜鉛の生成の進行度合を確認するとともに、亜鉛の消失の進行度合も確認する。つまり、この試験により、腐食環境下において早期に、亜鉛が塩基性塩化亜鉛となっているか否かを確認する。
詳しくは、塩水浸漬腐食試験を行う前のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度および亜鉛のピーク強度を測定する。さらに、塩水浸漬腐食試験を所定時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度および亜鉛のピーク強度を測定する。そして、塩水浸漬腐食試験を行う前のX線回折における亜鉛のピーク強度に対する、塩水浸漬腐食試験を所定時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度の比(以下、「亜鉛低下率」という場合がある)に基づいて、亜鉛の消失の進行度合を確認する。塩水浸漬腐食試験の行われる試験時間が短く、亜鉛低下率が低ければ、亜鉛の消失の進行度合が速いことを示している。なお、亜鉛低下率での試験時間は、24時間,72時間,240時間,480時間,720時間とする。
亜鉛の消失の進行度合の目安として、試験時間が72時間での亜鉛低下率は、2/3以下であることが好ましい。さらに言えば、1/2以下であることが好ましく、特に、1/3以下であることが好ましい。また、試験時間が24時間での亜鉛低下率は、3/4以下であることが好ましい。さらに言えば、2/3以下であることが好ましく、特に、1/2以下であることが好ましい。また、試験時間が240時間以上での亜鉛低下率は、1/2以下であることが好ましい。さらに言えば、1/3以下,1/4以下,1/5以下であることが好ましく、特に、1/6以下であることが好ましい。
また、塩水浸漬腐食試験を基準時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度に対する、塩水浸漬腐食試験を所定時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の比(以下、「塩基性塩化亜鉛上昇率」という場合がある)に基づいて、塩基性塩化亜鉛の生成の進行度合を確認する。塩基性塩化亜鉛上昇率での所定時間と基準時間との差が小さく、塩基性塩化亜鉛上昇率が高ければ、塩基性塩化亜鉛の生成の進行度合が速いことを示している。なお、塩基性塩化亜鉛上昇率での基準時間は、24時間とし、塩基性塩化亜鉛上昇率での所定時間、つまり、試験時間は、72時間,240時間,480時間,720時間とする。
塩基性塩化亜鉛の生成の進行度合の目安として、試験時間が72時間での塩基性塩化亜鉛上昇率は、4倍以上であることが好ましい。さらに言えば、5倍以上であることが好ましく、特に、6倍以上であることが好ましい。また、試験時間が240時間以上での塩基性塩化亜鉛上昇率は、5倍以上であることが好ましい。さらに言えば、6倍以上であることが好ましく、特に、7倍以上であることが好ましい。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
図1ないし図5に示す配合の各原料から、実施例および比較例の表面処理部材に塗布するための防錆処理剤およびトップコート剤を調整した。図1ないし図5における防錆処理剤およびトップコート剤の原料の詳細を以下に示す。
・ソルベントナフサ:商品名「ソルベッソ#150」 株式会社クラレ製
・エチレングリコールモノブチルエーテル:ブチセロ 三協化学株式会社製
・ブタノール:商品名「n−ブタノール」 和光純薬工業株式会社製
・アルミ粉末:商品名「アルペースト0200M」 東洋アルミニウム株式会社製
・エチルポリシリケート:商品名「エチルシリケート40」 コルコート株式会社製
・テトラブトキシチタンポリマー:商品名「TBTポリマーB−5」 日本曹達株式会社製
・リチウムシリケート:商品名「リチウムシリケート75」 日産化学工業株式会社製
鱗片状の亜鉛粉末を以下のようにして作製した。平均粒径5μmの金属亜鉛粉末100重量部をミネラルスピリット200重量部中に分散させ、さらに少量の脂肪酸を加えて、金属亜鉛粉末の分散濃度が約30重量%のスラリーとした。このスラリーをビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製スターミルZRS)で粉砕処理し、処理後のスラリーを減圧下で蒸発乾燥させて、径の分布の中心値が10μm、厚さの分布の中心値が0.3μmの鱗片状亜鉛粉末を得た。
防錆処理剤およびトップコート剤は、塗料用高速攪拌機を用いて、図に示す原料を所定の時間攪拌することで調整される。そして、調整された防錆処理剤が、予め脱脂・洗浄処理の施されたM10六角ボルト(表面積0.291dm2)に塗布され、加熱により防錆塗膜が形成される。
詳しくは、M10六角ボルト(表面積0.291dm2)が、調整された防錆処理剤に浸漬される。そして、M10六角ボルトが防錆処理剤から取り出され、スピン処理により、M10六角ボルトへの塗布量が調整される。具体的には、塗布量が120mg/dm2となるように、M10六角ボルトのスピン速度が調整される。次に、防錆処理剤の塗布されたM10六角ボルトは、280℃で30分間加熱される。これにより、M10六角ボルトの表面に各防錆処理剤からなる防錆塗膜が形成され、実施例の表面処理部材および比較例の表面処理部材が作製される。また、比較例9の表面処理部材には、さらに、トップコート剤が塗布される。そして、トップコート剤が塗布された比較例9の表面処理部材を、100℃で20分間加熱する。これにより、比較例9の表面処理部材が製作される。
上述したようにして作製された実施例1〜6の表面処理部材および比較例1〜6の表面処理部材に対して、防錆性を評価するべく、JIS Z 2371に基づく方法に準拠した塩水噴霧試験によって赤錆が発生するまでの時間を計測した。この試験結果を、図6および図7の「塩水噴霧試験」の欄に示しておく。なお、この試験では、スガ試験機株式会社製の試験機を用いた。
また、希釈された防錆処理剤によって形成された防錆塗膜の防錆性を評価するべく、図に示す配合の防錆処理剤(以下、「原液処理剤」と記載する)により形成された表面処理部材と、希釈率、つまり、原液処理剤の質量に対する希釈液の質量の比率が5%とされた防錆処理剤(以下、「5%希釈処理剤」)により形成された表面処理部材と、希釈率が10%とされた防錆処理剤(以下、「10%希釈処理剤」)により形成された表面処理部材に対して、JIS Z 2371に基づく方法に準拠した塩水噴霧試験によって赤錆が発生するまでの時間を計測した。なお、この試験は、実施例5の表面処理部材および、比較例1の表面処理部材に対して行っている。また、この試験に用いられる表面処理部材では、防錆塗膜形成時のスピン処理において、塗布量が100mg/dm2、若しくは、150mg/dm2となるように、M10六角ボルトのスピン速度が調整されている。この試験結果を、図8の「塩水噴霧試験(100mg/dm2)」および「塩水噴霧試験(150mg/dm2)」の欄に示しておく。なお、「塩水噴霧試験(100mg/dm2)」の欄には、塗布量が100mg/dm2の表面処理部材に対する試験結果が示され、「塩水噴霧試験(150mg/dm2)」の欄には、塗布量が150mg/dm2の表面処理部材に対する試験結果が示されている。
また、実施例1,7〜10の表面処理部材および比較例7〜9の表面処理部材に対して、各表面処理部材の防錆塗膜の腐食による亜鉛の塩基性塩化亜鉛への変化速度を評価するべく、X線回折装置により各成分のピーク強度を測定した。つまり、防錆塗膜に含まれる亜鉛の消失の進行度合を評価するべく、亜鉛のピーク強度を測定し、腐食生成物の塩基性塩化亜鉛の生成度合を評価するべく、塩基性塩化亜鉛のピーク強度を測定した。
具体的には、実施例1,7〜10の表面処理部材および比較例7〜9の表面処理部材を、塩分濃度50±10g/L、水温25℃、pH6.5〜7.2とされた塩水に所定の時間、浸漬する。ここで、所定の時間は、24時間,72時間,240時間,480時間,720時間とする。そして、上記所定時間浸漬後に、X線回折装置により亜鉛のピーク強度および塩基性塩化亜鉛のピーク強度を測定した。X線回折装置の詳細および、ピーク強度の測定条件の詳細を、以下に示す。
X線回折装置;試料水平型X線回折装置 PW3050 フィリップ製
測定条件;対陰極:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スキャン軸:20θ
2θ:10°〜90°
スキャンステップ:0.02°
ステップ時間:0.5秒/ステップ
上記X線回折装置による亜鉛のピーク強度の測定結果を、図9および図11に示し、X線回折装置による塩基性塩化亜鉛のピーク強度の測定結果を、図10および図12に示す。なお、浸漬時間が0時間でのピーク強度は、塩水浸漬腐食試験を行っていない各表面処理部材の亜鉛のピーク強度および塩基性塩化亜鉛のピーク強度である。
また、実施例1〜6の表面処理部材および比較例1〜6の表面処理部材の防錆塗膜形成時に用いられた防錆処理剤の粘度上昇率を測定した。具体的には、600mlブラスチック容器に500mlの防錆処理剤を計量し、その防錆処理剤の粘度を粘度測定器により測定する。次に、プラスチック容器に計量された防錆処理剤を所定条件のもとで攪拌し、攪拌後の防錆処理剤の粘度を粘度測定器により測定する。そして、攪拌前の防錆処理剤の粘度に対する攪拌後の防錆処理剤の粘度の比率を、防錆処理剤の粘度上昇率として演算する。この演算値を、図6および図7の「粘度上昇率」の欄に示しておく。なお、粘度測定条件、および防錆処理剤の攪拌条件の詳細を、以下に示す。
粘度測定条件;粘度測定器:VISCOMETER TVB−10 東機産業株式会社製
使用ローター:ローターNo.21
回転速度:60rpm
攪拌条件;攪拌機:ホモミキサー プライミクス株式会社製
温度:25℃
攪拌時間:3時間
攪拌速度:800rpm
また、実施例1〜6の表面処理部材および比較例1〜6の表面処理部材の断面および表面を、目視にて観察し、評価を行った。その観察結果を、図6および図7の「断面観察」および「表面観察」の欄に示しておく。ちなみに、「○」は、良好な観察結果であり、「△」は、ある程度良好な観察結果であり、「×」は、良好でない観察結果であることを示している。
以上の評価結果から、増粘剤として、オレイン酸を採用することで、防錆処理剤の経時的な粘度上昇を防止することが可能であることが解る。具体的には、図6から解るように、増粘剤としてオレイン酸を用いた実施例1〜6の防錆処理剤では、粘度上昇率は、5〜10%である。一方、図7から解るように、増粘剤としてオレイン酸アミドを用いた比較例1〜4,6の防錆処理剤では、粘度上昇率は、8〜25%である。このように、増粘剤として、オレイン酸アミドではなく、オレイン酸を採用することで、防錆処理剤の経時的な粘度上昇を防止することが可能となる。また、図7から解るように、増粘剤として変性ウレアを用いた比較例5の防錆処理剤では、粘度上昇率は5%であり、防錆処理剤の経時的な粘度上昇を防止することが可能である。しかしながら、その処理剤を用いた表面処理部材の断面観察および、表面観察の結果が良好でなく、適切な防錆塗膜が形成されていない。一方、増粘剤としてオレイン酸を用いた実施例1〜6の防錆処理剤では、その処理剤を用いた表面処理部材の断面観察および、表面観察の結果の殆どが、ある程度良好、若しくは良好である。このことからも、増粘剤として、オレイン酸を用いることが好ましい。
また、増粘剤として、オレイン酸を採用することで、防錆性が向上する。具体的には、図6から解るように、増粘剤としてオレイン酸を用いた実施例1〜6の表面処理部材では、塩水噴霧試験の結果は、120〜192時間である。一方、図7から解るように、増粘剤としてオレイン酸アミドのみを用いた比較例1〜4の表面処理部材では、塩水噴霧試験の結果は、48〜96時間である。このように、増粘剤として、オレイン酸アミドではなく、オレイン酸を採用することで、防錆性が向上する。
また、増粘剤として、オレイン酸だけでなく、変性ウレアをも併用することで、さらに防錆性が向上する。具体的には、実施例1,5,6の表面処理部材では、オレイン酸の含有量は同じであるが、変性ウレアを含有する実施例5,6の表面処理部材の塩水噴霧試験の結果は、144時間であり、変性ウレアを含有しない実施例1の表面処理部材の塩水噴霧試験の結果は、120時間である。また、実施例2の表面処理部材および、実施例4の表面処理部材では、オレイン酸の含有量は同じであるが、変性ウレアを含有する実施例4の表面処理部材の塩水噴霧試験の結果は、144時間であり、変性ウレアを含有しない実施例2の表面処理部材の塩水噴霧試験の結果は、120時間である。このように、増粘剤として、オレイン酸だけでなく、変性ウレアをも併用することで、さらに防錆性が向上する。
また、防錆処理剤を希釈して、表面処理部材を製作すると、通常は、防錆性が低下するが、オレイン酸を含む防錆処理剤を希釈して、表面処理部材を製作しても、防錆性は低下しない。具体的には、図8から解るように、増粘剤としてオレイン酸アミドを用いた比較例1の表面処理部材では、希釈された防錆処理剤により製作された表面処理部材の塩水噴霧試験の結果は、希釈されていない防錆処理剤、つまり、原液の防錆処理剤により製作された表面処理部材の塩水噴霧試験の結果の1/2〜2/3となっている。一方、増粘剤としてオレイン酸を用いた実施例5の表面処理部材では、希釈された防錆処理剤により製作された表面処理部材の塩水噴霧試験の結果は、原液の防錆処理剤により製作された表面処理部材の塩水噴霧試験の結果の5/6〜4/3となっている。このように、増粘剤として、オレイン酸を採用することで、希釈時の防錆性の低下を抑制することが可能となる。
また、酸化マグネシウムを含有する防錆処理剤によれば、防錆性が飛躍的に向上する。具体的には、表面処理部材の防錆塗膜に含まれる亜鉛が、塩基性塩化亜鉛に変化する度合、つまり、表面処理部材の防錆塗膜に含まれる亜鉛の消失度合と、塩基性塩化亜鉛の生成度合とに基づいて、防錆性を評価する。亜鉛の消失度合の評価は、塩水浸漬腐食試験を行う前(塩水浸漬腐食試験:0時間)のX線回折における亜鉛のピーク強度に対する、塩水浸漬腐食試験を所定時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度の比(以下、「亜鉛低下率」という場合がある)に基づいて行う。また、塩基性塩化亜鉛の生成度合の評価は、塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度に対する、塩水浸漬腐食試験を所定時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の比(以下、「塩基性塩化亜鉛上昇率」という場合がある)に基づいて行う。
酸化マグネシウムを含む実施例1および比較例7の表面処理部材の浸漬時間24時間での亜鉛低下率は、図9から解るように、1/2以下である。一方、酸化マグネシウムを含まない比較例8,9の表面処理部材の浸漬時間24時間での亜鉛低下率は、4/5以上である。また、実施例1および比較例7の表面処理部材の浸漬時間72時間での亜鉛低下率は、3/10以下である。一方、比較例8,9の表面処理部材の浸漬時間72時間での亜鉛低下率は、3/5以上である。さらに、実施例1および比較例7の表面処理部材の浸漬時間240時間での亜鉛低下率は、1/10以下である。一方、比較例8,9の表面処理部材の浸漬時間240時間での亜鉛低下率は、1/2以上である。
また、比較例7の表面処理部材の浸漬時間72時間での塩基性塩化亜鉛上昇率は、図10から解るように、6倍以上である。一方、比較例8,9の表面処理部材の浸漬時間72時間での塩基性塩化亜鉛上昇率は、4倍以下である。また、比較例7の表面処理部材の浸漬時間240時間での塩基性塩化亜鉛上昇率は、8倍以上である。一方、比較例8,9の表面処理部材の浸漬時間240時間での塩基性塩化亜鉛上昇率は、7倍以下である。
以上の結果から解るように、酸化マグネシウムを含む実施例1および比較例7の表面処理部材では、酸化マグネシウムを含まない比較例8,9の表面処理部材と比較して、亜鉛のピーク強度が、早期に低下し、塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、早期に上昇している。つまり、実施例1および比較例7の表面処理部材では、比較例8,9の表面処理部材と比較して、腐食環境下において早期に、亜鉛が塩基性塩化亜鉛となっている。亜鉛の腐食生成物である塩基性塩化亜鉛は、防錆性が非常に高いことが知られており、表面処理部材の塗膜が、早期に、塩基性塩化亜鉛によって覆われることで、表面処理部材の防錆性が向上する。つまり、酸化マグネシウムを含む表面処理部材は、酸化マグネシウムを含まない表面処理部材と比較して、非常に高い防錆性を発揮する。
また、0.5〜4質量%の酸化マグネシウムが防錆処理剤に含有されることで、非常に高い防錆性を発揮する。具体的には、0.5質量%未満の酸化マグネシウムを含む実施例8の表面処理部材では、図11から解るように、亜鉛のピーク強度が非常に速く低下し、非常に速く亜鉛が消失している。しかしながら、実施例8の表面処理部材では、図12から解るように、塩基性塩化亜鉛のピーク強度は、然程上昇せず、塩基性塩化亜鉛の生成率は、高くない。つまり、0.5質量%未満の酸化マグネシウムを含む表面処理部材では、亜鉛が消失するのみで、塩基性塩化亜鉛は、然程生成されないため、防錆性は然程高くない。一方、0.5〜4質量%の酸化マグネシウムを含む実施例1,9,10の表面処理部材では、図11から解るように、亜鉛のピーク強度が速く低下し、速く亜鉛が消失している。そして、実施例1,9,10の表面処理部材では、図12から解るように、塩基性塩化亜鉛のピーク強度は速く上昇し、塩基性塩化亜鉛の生成率は高い。特に、1.9質量%の酸化マグネシウムを含む実施例1の表面処理部材では、塩基性塩化亜鉛の生成率は非常に高い。つまり、0.5〜4質量%、特に、1〜3質量%の酸化マグネシウムが防錆処理剤に含有されることで、非常に高い防錆性を発揮する。
以下、本発明の諸態様について列記する。
(1)亜鉛粉末と亜鉛合金粉末とアルミニウム粉末との少なくとも1つを含む20〜60質量%の金属粉末と、
5〜40質量%の有機ケイ素化合物と、
0.05〜2質量%の有機チタネート化合物と、
10〜60質量%の有機溶剤と、
0.03〜0.15質量%の脂肪酸と
を含有することを特徴とする防錆処理剤。
(2)当該防錆処理剤が、
さらに、0.03〜0.15質量%のチクソ剤を含有することを特徴とする(1)項に記載の防錆処理剤。
(3)前記脂肪酸が、
オレイン酸であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の防錆処理剤。
(4)当該防錆処理剤が、
さらに、0.05〜10質量%のマグネシウム化合物を含有することを特徴とする(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の防錆処理剤。
(5)前記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの少なくとも一方であることを特徴とする(4)項に記載の防錆処理剤。
(6)前記マグネシウム化合物の含有量が、1〜5質量%であることを特徴とする(4)項または(5)項に記載の防錆処理剤。
(7)金属表面を有する被処理物と、
亜鉛粉末と亜鉛合金粉末とアルミニウム粉末との少なくとも1つを含む20〜60質量%の金属粉末と、5〜40質量%の有機ケイ素化合物と、0.05〜2質量%の有機チタネート化合物と、10〜60質量%の有機溶剤と、0.03〜0.15質量%の脂肪酸とを含有する防錆処理剤によって、前記金属表面に形成される防錆塗膜と
を備えたことを特徴とする防錆処理部材。
(8)前記防錆塗膜が、
前記防錆処理剤を、前記防錆処理剤の質量の2〜30%の質量の前記有機溶剤によって希釈した処理剤によって形成されることを特徴とする(7)項に記載の防錆処理部材。
(9)前記防錆処理剤が、
さらに、0.03〜0.15質量%のチクソ剤を含有することを特徴とする(7)項または(8)項に記載の防錆処理部材。
(10)前記脂肪酸が、
オレイン酸であることを特徴とする(7)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(11)前記防錆処理剤が、
さらに、0.05〜10質量%のマグネシウム化合物を含有することを特徴とする(7)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(12)前記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの少なくとも一方であることを特徴とする(11)項に記載の防錆処理部材。
(13)前記マグネシウム化合物の含有量が、1〜5質量%であることを特徴とする(11)項または(12)項に記載の防錆処理部材。
(14)前記金属粉末は、亜鉛粉末と亜鉛合金粉末との少なくとも1つを含み、
塩分濃度50±10g/L、水温25℃、pH6.5〜7.2とされた塩水に前記防錆処理部材を浸漬する試験を、塩水浸漬腐食試験と定義した場合に、
前記塩水浸漬腐食試験を72時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の2/3以下であり、
前記塩水浸漬腐食試験を72時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の4倍以上であることを特徴とする(7)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(15)前記塩水浸漬腐食試験を72時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の1/2以下であることを特徴とする(14)項に記載の防錆処理部材。
(16)前記塩水浸漬腐食試験を72時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の5倍以上であることを特徴とする(14)項または(15)項に記載の防錆処理部材。
(17)前記塩水浸漬腐食試験を72時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の6倍以上であることを特徴とする(14)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(18)前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の3/4以下であることを特徴とする(14)項ないし(17)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(19)前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の2/3以下であることを特徴とする(14)項ないし(18)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(20)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の1/2以下であることを特徴とする(14)項ないし(19)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(21)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の1/3以下であることを特徴とする(14)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(22)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の1/4以下であることを特徴とする(14)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(23)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の1/5以下であることを特徴とする(14)項ないし(22)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(24)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験実行前のX線回折における亜鉛のピーク強度の1/6以下であることを特徴とする(14)項ないし(23)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(25)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の5倍以上であることを特徴とする(14)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(26)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の6倍以上であることを特徴とする(14)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(27)前記塩水浸漬腐食試験を240時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度が、前記塩水浸漬腐食試験を24時間行った際のX線回折における塩基性塩化亜鉛のピーク強度の7倍以上であることを特徴とする(14)項ないし(26)項のいずれか1つに記載の防錆処理部材。
(28)亜鉛粉末と亜鉛合金粉末とアルミニウム粉末との少なくとも1つを含む20〜60質量%の金属粉末と、5〜40質量%の有機ケイ素化合物と、0.05〜2質量%の有機チタネート化合物と、10〜60質量%の有機溶剤と、0.03〜0.15質量%の脂肪酸とを含有する防錆処理剤を、前記防錆処理剤の質量の2〜30%の質量の前記有機溶剤によって希釈する希釈工程と、
前記希釈工程において希釈された前記防錆処理剤を、金属表面を有する被処理物に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程において塗布された前記防錆処理剤を加熱し、防錆塗膜を形成する塗膜形成工程と
を含むことを特徴とする防錆処理方法。
(29)前記防錆処理剤が、
さらに、0.03〜0.15質量%のチクソ剤を含有することを特徴とする(28)項に記載の防錆処理方法。
(30)前記脂肪酸が、
オレイン酸であることを特徴とする(28)項または(29)項に記載の防錆処理方法。
(31)前記防錆処理剤が、
さらに、0.05〜10質量%のマグネシウム化合物を含有することを特徴とする(28)項ないし(30)項のいずれか1つに記載の防錆処理方法。
(32)前記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの少なくとも一方であることを特徴とする(31)項に記載の防錆処理方法。
(33)前記マグネシウム化合物の含有量が、1〜5質量%であることを特徴とする(31)項または(32)項に記載の防錆処理方法。