JP5595825B2 - 舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法及び装置 - Google Patents
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Description
ボイラの蒸発管、過熱器管、スクリーン管及び炉底耐火材に亜硫酸が付着している状態で水洗を実施すると、H2O+SO3→H2SO4の化学反応により硫酸が生成されて酸性廃液となる。この酸性側になった硫酸含有水は蒸発管、過熱器管及びスクリーン管に対して低温腐食と呼ばれる硫酸腐食が起こる。
ボイラの外面を覆っているスキンケーシングと呼ばれる鋼板が破孔すると、燃焼ガスが機関室内に漏れることになり、人命に関わる大変危険な状態となる。また、炉底部に溜まった洗浄廃水の水質は、スケール中に含まれている亜硫酸により酸性側になり、別途、排水処理作業を実施する必要がある。
そのため、本発明者らは、舶用ボイラにおいて、洗浄水を用いることなく蒸発管、過熱器管およびスクリーン管からスケールを除去することができる方法について鋭意研究を行ったものである。
まず、本発明者らは、蒸発管、過熱器管およびスクリーン管の表面状態を分析するとともに鋼管に付着したスケールを分析した。その結果、蒸発管、過熱器管およびスクリーン管の母材の表面には、薄い酸化皮膜が形成されており、この酸化皮膜の表面にスケールが付着して堆積していることを見出した。
また、スケールの主成分は下記の3種類であった。
・酸化バナジウム(V205):40〜50%
・ヘマタイト(Fe2O3):20〜25%
・硫黄酸化物:約10%
・その他:Ni,Na,Si,Al,Cr等の酸化物で、いずれも数%以下
そこで、本発明者らは、各種ブラスト材を用いて伝熱管のブラスト洗浄を繰り返し行った結果、植物系ブラスト材または樹脂系ブラスト材を用いることで伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができるという知見を得たものである。
本発明によれば、植物系ブラスト材を用いてブラスト洗浄することにより、伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができる。伝熱管に形成された酸化皮膜は、四酸化三鉄(Fe3O4)を主体とする緻密な構造の酸化鉄皮膜であり、耐摩耗性や耐食性に富んでいるため、酸化皮膜により伝熱管の母材を保護することができる。
植物系ブラスト材を用いてブラスト洗浄することにより、0.6MPaの噴射圧力で30秒以上といった高圧・長時間の洗浄であっても伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができる。
本発明によれば、樹脂系ブラスト材を用いてブラスト洗浄することにより、伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができる。伝熱管に形成された酸化皮膜は、四酸化三鉄(Fe 3 O 4 )を主体とする緻密な構造の酸化鉄皮膜であり、耐摩耗性や耐食性に富んでいるため、酸化皮膜により伝熱管の母材を保護することができる。
樹脂系ブラスト材を用いてブラスト洗浄することにより、0.6MPaの噴射圧力で30秒以上といった高圧・長時間の洗浄であっても伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができる。
本発明によれば、ブラスト洗浄後に仕上げとして洗浄面を湿潤化させ、スケール中の水溶性成分を溶解させた後再度ブラスト洗浄を実施することによって、最初のブラスト洗浄で除去しにくかったスケールが容易に除去できる。
本発明の好ましい態様は、前記被洗浄面の湿潤化は、水を噴霧することにより行うことを特徴とする。
本発明によれば、圧縮空気はタンクの上部に供給されるとともにタンクの下端のブラスト材調整部に供給され、タンク内のブラスト材は、圧縮空気により加圧されブラスト材調整部へ落下し、ブラスト材調整部に直接接続されている圧縮空気と混合されノズルユニットに圧送される。そして、ブラスト材は、ノズルユニットから所定の圧力で噴射され伝熱管をブラスト洗浄する。ブラスト材に植物系ブラスト材または樹脂系ブラスト材を用いてブラスト洗浄することにより、伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができる。伝熱管に形成された酸化皮膜は、四酸化三鉄(Fe3O4)を主体とする緻密な構造の酸化鉄皮膜であり、耐摩耗性や耐食性に富んでいるため、酸化皮膜により伝熱管の母材を保護することができる。
本発明によれば、ブラスト洗浄後に仕上げとして洗浄面を霧吹きにより湿潤化させ、再度ブラスト洗浄を実施することによって、最初のブラスト洗浄で除去しにくかったスケールが容易に除去できる。
本発明によれば、使用済のブラスト材は、負圧に保たれているブラスト材吸引ダクトにより、伝熱管から除去されたスケールとともに吸引され、回収用タンクに返送される。ブラスト材およびスケールは、回収用タンク内で分級され、ブラスト材は回収用タンクに回収され再利用され、粉塵を含む排気は回収用タンクから集塵部に送られる。粉塵は、集塵部に捕捉され、排気は大気に放出される。
前記軟質の材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金などがある。
本発明によれば、アダプタの長さをボイラの伝熱管群のサイズに応じて選定することにより、ノズルが伝熱管群の末端まで届くようになる。
本発明によれば、アダプタに軟質材料であるアルミニウムを用いているため、ブラスト洗浄中にアダプタが伝熱管やボイラ内構造物に接触しても、これらを損傷させることがない。
(1)舶用ボイラの蒸発管、過熱器管およびスクリーン管に付着したスケールをブラスト洗浄によって除去することができるため、洗浄水を用いる必要がなく、硫酸含有水が生成されることがなく、蒸発管、過熱器管およびスクリーン管の硫酸腐食が起こるという問題点や耐火材が劣化したり酸性側廃液の処理をする必要がある等の問題点を解消することができる。
(2)植物系ブラスト材または樹脂系ブラスト材を用いてブラスト洗浄することにより、伝熱管から酸化皮膜を取り除くことなくスケールのみを除去することができる。伝熱管に形成された酸化皮膜は、四酸化三鉄(Fe3O4)を主体とする緻密な構造の酸化鉄皮膜であり、耐摩耗性や耐食性に富んでいるため、酸化皮膜により伝熱管の母材を保護することができる。
(3)舶用ボイラの蒸発管、過熱器管およびスクリーン管をブラスト洗浄するだけで済むため、誰もが使いやすい操作で安全に作業でき、ボイラ管理上においても安全な作業が提供できる。
(4)植物系ブラスト材を用いることにより、ブラスト材が洗浄後に炉内に残留してもボイラを運転することにより焼却可能であり、また植物材料を使用するため環境に負荷を与えないでブラスト洗浄が可能である。
(5)ブラスト洗浄後に仕上げとして洗浄面を湿潤化させ、再度ブラスト洗浄を実施することによって、最初のブラスト洗浄で除去しにくかったスケールが容易に除去できる。
図1は、本発明の舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法及び装置が適用される舶用ボイラを示す縦断面図であり、図2は舶用ボイラの水平断面図である。図1および図2に示すように、舶用ボイラは、蒸気ドラム1、スクリーン管2、過熱器管3、水ドラム4、蒸発管6等から構成されている。ボイラ外面の各部には、作業員出入用のアクセスホール5が設置されている(図1では1つのアクセスホール5のみを示している)。
一般的にブラスト洗浄に使用されるブラスト材としては、ハードタイプ、セミハードタイプ、ソフトタイプがあり、ハードタイプのブラスト材としては金属系、セラミック系等があり、セミハードタイプのブラスト材としてはガラス系、金属系があり、ソフトタイプとしては樹脂系、植物系等がある。
本発明において洗浄の対象となる舶用ボイラの伝熱管を、セラミック系、金属系、ガラス系、樹脂系、植物系の各種ブラスト材を用いてブラスト洗浄を行った。使用したブラスト材の名称(市販品名)、硬度、比重、粒径、ブラスト洗浄時の噴射圧力およびその洗浄結果を表1に示す。表1において、粒径値の幅は最低粒径と最高粒径の幅を示し、篩い分けにて選別している。ブラスト洗浄の対象となる舶用ボイラの伝熱管は過熱器管であり、材質は合金鋼管の“STBA22”及び“火STBA28”からなる過熱器管をブラスト洗浄した。ここで、母材が露出するとは、スケールとともに伝熱管の表面に形成された酸化皮膜が除去されて伝熱管の材質が見えることをいう。
試験例1に示すように、セラミック系ブラスト材を使用した場合には、研削力が強く、伝熱管からスケールが除去されるが、伝熱管の母材まで研削されてしまうため、舶用ボイラのブラスト洗浄に使用するブラスト材としては不適切であった。
試験例2においては、金属系のブラスト材を使用した。この場合、研削力は試験例1の場合よりは弱いが伝熱管の母材の一部が露出してしまうことと、ブラスト材が金属系であるため、ブラスト洗浄により伝熱管を構成する金属とブラスト材を構成する金属とが接触し、異種金属接触に起因する腐食を引き起こす可能性を考慮しなければならないため、ブラスト材としては不適切であった。
試験例3においては、ガラス系のブラスト材を使用した。ガラス系ブラスト材の研削力は試験例2の場合と同程度であるが、母材の露出を防ぐには、噴射圧力を低圧力(0.3MPa以下)に保つ必要があり、しかも一箇所のブラスト洗浄時間を短時間(一箇所を5秒以内)とする時間管理を行わなければならず、ブラスト材としては不適切であった。
試験例5においては、ブラスト材として植物系のクルミ#30を使用し、噴射圧力を0.4MPaの場合と0.65MPaの場合のブラスト洗浄を行った。その結果、伝熱管のスケールのみ除去することができ、伝熱管の酸化皮膜は残り母材は露出しなかった。また、ブラスト材として植物系のピーチ#30を使用し、噴射圧力を0.6MPaとしてブラスト洗浄を行った。その結果、伝熱管のスケールのみ除去することができ、伝熱管の酸化皮膜は残り母材は露出しなかった。植物系のブラスト材は舶用ボイラのブラスト洗浄に使用するブラスト材として最適であった。
ここで使用した植物系のブラスト材である“クルミ”は、木の実であるクルミの殻を原材料として所望の粒度になるように破砕加工された研磨材であり、“ピーチ”は、果実である桃の種を原材料として同様に加工された研磨材である。
図5(a)は、ブラスト洗浄を行う前の過熱器管の表面状態を示しており、スケールが表面に厚く付着している。図5(b)は、ブラスト洗浄後の過熱器管の表面状態を示しており、ほとんどのスケールは除去されているが、若干のスケールが残っている。図5(c)は、図5(b)に示す洗浄後の過熱器管の表面にさらに仕上げ処理としてのブラスト洗浄を施した後の過熱器管の表面状態を示している。すなわち、図5(c)においては、ほとんど全てのスケールが除去されているが、酸化皮膜は除去されることなく残されている。
上述の仕上げ処理としてのブラスト洗浄とは、ブラスト洗浄した後、ブラスト洗浄面を湿潤化させて、再度ブラスト洗浄を実施することである。ブラスト洗浄面の湿潤化は、ブラスト洗浄後に霧吹きなどで水分を噴霧することによって行う。
ブラスト洗浄面に残留しているスケールの主成分のひとつである硫黄酸化物が水と反応して水溶性物質になることにより、スケール残留部分が脆弱になり洗浄除去しやすくなると考えられる。
図6において、黒い菱形で示す点は舶用ボイラの試運転時のデータを示している。すなわち、舶用ボイラの過熱器管にスケールが付着していない状態でボイラを稼働させたときの運転効果を示している。黒い菱形で示すグラフから明らかなように、ボイラの蒸発量(ボイラ負荷)が70%に到達したのちは過熱器出口の蒸気温度は515°C(設定温度)で維持されている。
図6において、黒い四角形で示す点は、所定期間、舶用ボイラを稼働させた後の運転効果を示している。ボイラの蒸発量が70%の時点で、過熱器出口の蒸気温度は480°Cにも満たず、ボイラの負荷を90%にしても設定温度の515°Cに到達していない。
図6において、△および×で示す点は、それぞれ異なる舶用ボイラに本発明によるブラスト洗浄を施した後のボイラの運転効果を示している。
ここで、△で示されるデータは、ブラスト材としてクルミを使用し、噴射圧力を0.5MPaにして行ったブラスト洗浄により得られたものであり、×で示されるデータは、ブラスト材としてクルミを使用し、噴射圧力を0.5MPaにして行ったブラスト洗浄により得られたものである。
図6の△及び×で示されるデータから明らかなように、舶用ボイラにブラスト洗浄を施した後は、ボイラの負荷が70%に到達した時点で、過熱器出口の蒸気温度は設定温度の515°Cに到達している。すなわち、本発明によるブラスト洗浄を行うことによって舶用ボイラの運転効率を回復することができる。また、過熱器出口の蒸気温度が回復したことにより燃料の消費量も大幅に低減することができる。
2 スクリーン管
3 過熱器管
4 水ドラム
5 アクセスホール
6 蒸発管
10 ブラスト洗浄装置
11 コンプレッサ
12 ブラスト装置
13 ブラストノズルユニット
14 耐圧ホース
15 ブラストホース
16 ブラスト材吸引ダクト
121 加圧タンク
122 回収用タンク
123 フィルタ
124 エジェクタ部
125 ホース
131 ノズル
131n 噴射口
132 アダプタ管
Claims (11)
- 舶用ボイラの伝熱管にブラスト材を噴射して伝熱管に付着したスケールを除去する洗浄方法であって、
前記ブラスト材に植物系ブラスト材を用いることにより、前記伝熱管に付着したスケールを除去し、かつ前記伝熱管の表面に形成された酸化皮膜は除去せずに残すようにし、
前記ブラスト材の噴射は、0.4〜0.65MPaで行い、
前記植物系ブラスト材は、クルミ殻または杏の種または桃の種を所定の粒径に砕いた粒状物からなり、
前記植物系ブラスト材の所定の粒径は、500〜700μmであることを特徴とする舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法。 - 舶用ボイラの伝熱管にブラスト材を噴射して伝熱管に付着したスケールを除去する洗浄方法であって、
前記ブラスト材に樹脂系ブラスト材を用いることにより、前記伝熱管に付着したスケールを除去し、かつ前記伝熱管の表面に形成された酸化皮膜は除去せずに残すようにし、
前記ブラスト材の噴射は、0.4〜0.65MPaで行い、
前記樹脂系ブラスト材は、ナイロンまたはポリカーボネートまたはユリア樹脂またはメラミン樹脂を所定の粒径に成形した粒状物からなり、
前記樹脂系ブラスト材の所定の粒径は、420〜595μmであることを特徴とする舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法。 - 前記伝熱管にブラスト材を噴射して伝熱管に付着したスケールを除去した後に、前記伝熱管の被洗浄面を湿潤化させ、その後、再度、前記伝熱管にブラスト材を噴射して伝熱管に付着したスケールを除去するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法。
- 前記被洗浄面の湿潤化は、水を噴霧することにより行うことを特徴とする請求項3記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法。
- 前記伝熱管が千鳥格子状又は直列格子状に密集している箇所に前記ブラスト材を噴きつけるために、ノズルユニットを用いることを特徴とする請求項1記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄方法。
- 舶用ボイラの伝熱管にブラスト材を噴射して伝熱管に付着したスケールを除去する洗浄装置であって、
ブラスト材を充填したタンクと、
圧縮空気源から供給される圧縮空気により前記タンク内のブラスト材を加圧するブラスト材調整部と、
前記ブラスト材調整部に接続され、前記ブラスト材を圧縮空気とともに吹き出すノズルユニットとを備え、
前記ブラスト材に植物系ブラスト材又は樹脂系ブラスト材を用いることにより、前記伝熱管に付着したスケールを除去し、かつ前記伝熱管の表面に形成された酸化皮膜は除去せずに残すようにし、
前記ブラスト材の噴射は、0.4〜0.65MPaで行い、
前記植物系ブラスト材は、クルミ殻または杏の種または桃の種を所定の粒径に砕いた粒状物からなり、
前記植物系ブラスト材の所定の粒径は、500〜700μmであり、
前記樹脂系ブラスト材は、ナイロンまたはポリカーボネートまたはユリア樹脂またはメラミン樹脂を所定の粒径に成形した粒状物からなり、
前記樹脂系ブラスト材の所定の粒径は、420〜595μmであることを特徴とする舶用ボイラの伝熱管の洗浄装置。 - さらに前記伝熱管の被洗浄面に水を噴霧する霧吹きを備えることを特徴とする請求項6記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄装置。
- さらに前記伝熱管に噴射された使用済みブラスト材を吸引するブラスト材吸引ダクトと、該ブラスト材吸引ダクトにより吸引されたブラスト材を回収する回収用タンクと、該回収用タンクに接続されブラスト材を吸引する排気から集塵する集塵部とを備えることを特徴とする請求項6記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄装置。
- 前記ノズルユニットは、前記伝熱管に接触する可能性がある部分に、軟質の材料を用いることを特徴とする請求項6記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄装置。
- 前記ノズルユニットは、前記ブラスト材を噴射するためのノズルと、該ノズルを保持するアダプタとからなることを特徴とする請求項6記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄装置。
- 前記アダプタはアルミニウム製であることを特徴とする請求項10記載の舶用ボイラの伝熱管の洗浄装置。
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