JP2005024191A - ボイラ室の清掃装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボイラ室のダスト等付着物を効率良く除去することができるボイラ室の清掃装置を提供する。
【解決手段】本発明の清掃装置は、研掃材又は水を噴射するノズル4と、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、ノズル4の位置及び姿勢を変化させる移動機構5とを備える。移動機構5は、先端にノズルが取り付けられたアーム10と、ノズルを昇降させることができるように、アーム10を垂直面内で回転させる動作軸13と、動作軸13を水平面内で旋回させる旋回軸14と、旋回軸14を水平面内でX軸方向に走行させるとともにX軸と直交するY軸方向に横行させるXY軸移動機構16と、を有する。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の清掃装置は、研掃材又は水を噴射するノズル4と、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、ノズル4の位置及び姿勢を変化させる移動機構5とを備える。移動機構5は、先端にノズルが取り付けられたアーム10と、ノズルを昇降させることができるように、アーム10を垂直面内で回転させる動作軸13と、動作軸13を水平面内で旋回させる旋回軸14と、旋回軸14を水平面内でX軸方向に走行させるとともにX軸と直交するY軸方向に横行させるXY軸移動機構16と、を有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物が付着するボイラ室の清掃装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばごみ焼却プラントでは、ごみを焼却炉で燃焼させた後、廃熱を回収するためにボイラが設けられる。ボイラの一種である水管ボイラは、多数の水管に水を通し、管の外から燃焼ガスで加熱し蒸気を発生する。水管は燃焼ガス通路の壁面を構成する水冷壁管として設けられることもあるし、燃焼ガスが通る空間に燃焼ガスの流れに対して直交する方向に伸びる水平蒸発管として設けられることもある。水冷壁管や水平蒸発管には、燃焼炉で燃焼させたごみの灰、飛灰、又はクリンカ等の付着物が当然ながら付着する。付着物を除去しないと、付着物が次第にたまってきて熱交換が悪くなるので、定期的に付着物を除去・清掃する必要がある。従来、付着物の除去は以下のように行われていた。
【0003】
(1)人がケレン棒や振動工具や衝撃工具やバキュームのホースを手で持ちながら、付着物をはつって落とす手作業による除去。
(2)付着物に研掃材を吹き付けるブラストによる清掃。
(3)付着物に高圧水や超高圧水を噴射することによる清掃。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のボイラ室の清掃には以下の問題点があった。
【0005】
プラントの経済設計から、ボイラ室の水平蒸発管も水冷壁管も配置が密であり、清掃のためのスペースが狭い。人が這いつくばりながら作業する状況になるので、作業性が極端に悪い。
【0006】
水平蒸発管は水管の密集集合であり、水冷壁管は周囲に配置された平板構造である。同じ水管でも清掃対象としてはまったく異なる作業形態が必要になり、作業が困難になる。
【0007】
ごみ焼却プラントにおいては、ばいじんやダイオキシンが水管に付着するダスト等付着物に多く存在しており、衛生環境が劣悪になる。
【0008】
水平蒸発管も水冷壁管も耐圧部材であり、その寿命は管の肉厚が決定要素になる。清掃によって管の肉厚を減少させ、あるいは傷付けることは許されない。従来のケレン、硬質研掃材によるブラストでは、その肉厚が減少し、あるいは傷付くことがよくあり、水管の寿命を短縮させていた。
【0009】
そこで本発明は、ボイラ室のダスト等付着物を安全で効率良く除去することができるボイラ室の清掃装置及び方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。上記課題を解決するために本発明は、ボイラ室に付着した灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物を除去する清掃装置であって、研掃材又は水を噴射するノズルと、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させる移動機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
ボイラ室の水管群は、6面体の隙間を形成する。この発明によれば、隙間に装入された清掃装置が6面体の全面を清掃することができるので、効率的にボイラ室を清掃することができる。
【0012】
前記移動機構は、先端に前記ノズルが取付けられたアームと、前記ノズルを昇降させることができるように、前記アームを垂直面内で旋回させる動作軸と、前記動作軸を水平面内で旋回させる旋回軸と、前記旋回軸を水平面内でX軸方向に走行させるとともに前記X軸と直交するY軸方向に横行させるXY軸移動機構と、を有することが望ましい。
【0013】
この発明によれば、6面体の全面にノズルを効率的に移動させることができる。
【0014】
前記研掃材は、ボイラ室の水管よりも軟質の軟質研掃材であり、前記水は、5〜30MPaの水圧を有する中圧水であることが望ましい。
【0015】
この発明によれば、水管を傷付けたり、減肉させたりすることなく、ダスト等付着物を除去することができる。
【0016】
前記清掃装置はさらに、ボイラ室内に設置される監視カメラと、前記監視カメラで撮影した画像を表示する表示装置と、を備え、前記移動機構が遠隔操作されることが望ましい。
【0017】
また本発明は、ボイラ室に付着した灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物を湿潤させる前処理工程と、研掃材又は水を噴射するノズルと、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させる移動機構とを備える清掃装置を用いて、湿潤させた前記ダスト等付着物を除去する除去工程と、を備えることを特徴とするボイラ室の清掃方法として構成してもよい。
【0018】
ボイラ室に付着するダスト等付着物は、程度の差はあるものの吸湿性を持つ物質であり、それ自体は固くても水分を吸って湿潤状態になると軟らかくなり、付着力も弱くなる性質を持っている。湿潤させて除去し易い状態にした後にダスト等付着物に研掃材又は水を噴射することで、容易にダスト等付着物を除去することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について説明する。本発明の清掃装置は、例えばごみ焼却プラントのボイラ室の清掃に使用される。
【0020】
図1はボイラ室の斜視図を示す。ボイラ室は、例えば1パス1、2パス2、3パス3の燃焼ガス通路を有する。1パス1及び2パス2の四方の周壁は水冷壁管から構成される。3パス3の四方の周壁も水冷壁管から構成される。3パス3にはさらに、燃焼ガスが流れる方向に対して直交する方向に伸びる水平蒸発管が配置される。3パスで最終的に燃焼ガスを設定温度まで冷やすので、3パスの水管群は密に配置される。ごみ焼却炉からの燃焼ガスが1パス1〜3パス3を順次通過する際、水管内を通る水が管の外から燃焼ガスで加熱され、蒸気になる。
【0021】
ボイラ室の水冷壁管や水平蒸発管には、ごみ焼却炉で燃焼させた灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物が付着する。これらの水管にダスト等付着物が付着すると熱効率が悪くなるので、定期的にダスト等付着物を除去しなければならない。
【0022】
以下ダスト等付着物を除去する清掃装置の構成について詳述する。図2は本発明の第1の実施形態における清掃装置を示す。清掃装置が装入されるボイラ室の水冷壁管及び水平蒸発管群は、直方体形状の6面体の隙間(図1中矢印で示す)を形成する。すなわち清掃装置の上方には水平蒸発管があり、下方には水平蒸発管があり、横には水冷管壁がある。清掃装置は、6面体の全面をブラストできるように、軟質研掃材又は水を噴射するノズル4と、ノズル4の位置及び姿勢を変化させる移動機構5とを備える。ノズル4には、軟質研掃材が充填されるブラストユニット6を介してエアーコンプレッサ7が接続されるか、水タンク8に充填される水を吐出する水ポンプ9が接続される。
【0023】
ノズル4はアーム10の先端に取り付けられる。アーム10にはノズル4の姿勢を変化させるべく、ノズル4を垂直面内で回転させるノズル上下軸11、並びにノズル4を研掃材又は水を噴射する方向の回りに旋回させるためのノズル旋回軸12が設けられる。
【0024】
一方アーム10の基部には、ノズル4を昇降させることができるように、アーム10を垂直面内で旋回させる動作軸13が設けられる。動作軸13は旋回軸14により水平面内で旋回され、これによりアーム10の先端に取り付けられたノズル4が水平面内で旋回する。なお、これらノズル上下軸11、ノズル旋回軸12、動作軸13、及び旋回軸14は、モータ、ギヤ等の駆動機構により回転駆動される。
【0025】
旋回軸14は、XY軸移動機構16によって水平面内で移動される。XY軸移動機構16は、6面体の下部の対辺に配置された一対の走行レール17,17と、走行レール17,17間に掛け渡された横行レール18とを有する。走行レール17,17は、清掃する都度設置されることになる。
【0026】
横行レール18の両端には、走行レール17,17に沿って転がるローラ19・・・が取り付けられ、これにより横行レール18が走行レール17,17の延びるX軸方向にスライドする。横行レール18は例えば、走行レール17の両端に配置されたプーリ20,20間に掛け渡される無端状のワイヤ29等に固定される。ワイヤ29を駆動することによって、横行レール18が走行レール17,17に沿って走行する。
【0027】
横行レール18には、横行レール18に沿ってY軸方向に横行できるスライド部材21が取り付けられる。スライド部材21には、アーム10が取り付けられている。スライド部材21は、横行レール18の両端に配置したプーリ23,23間に掛け渡される無端状のワイヤ24等に固定される。ワイヤ24を駆動することによって、スライド部材21が横行レール18に沿って横行する。
【0028】
これらXY移動機構16及び各軸11〜14を操作することにより、ノズル4を直方体形状の6面体の全面に移動させることができ、且つノズル4の姿勢も例えばその吹き出し口を6面体の全面に向かい合うように最適に変化させることができる。したがって、清掃装置の周囲の6面全面に渡って自由自在にブラストできるようになる。
【0029】
ボイラ室内には監視カメラ26が設置される。監視カメラ26が撮影する位置はコントロールユニット28により調整される。監視カメラ26で撮影した画像はモニタ等の表示装置27で表示される。作業員はボイラの外で表示装置27を見ながら遠隔操作によりXY移動機構16及び各軸11〜14を遠隔操作する。
【0030】
図4は本発明の第2の実施形態における清掃装置を示す。この実施形態の清掃装置も、6面体の全面をブラストできるように、研掃材又は水を噴射するノズル31と、ノズル31の位置及び姿勢を変化させる移動機構32とを備える。ノズル31には、軟質研掃材が充填されるブラストユニット33を介してコンプレッサ34が接続されるか、水タンク35に充填される水を吐出する水ポンプ36が接続される。
【0031】
水管群間の隙間には、スートブロー配管37が固定的に設置されることがある。スートブロー配管37は、定常運転時にダスト等付着物を除去するために設置され、パイプに開けられた複数の穴から蒸気を吹き出し、吹き出した蒸気をダスト等付着物にぶつけて定期的に除去する。本実施形態では、このスートブロー配管37にレール38を抱かせて、レール38の上に清掃装置ユニットを組み付けている。なお上記第1の実施形態の清掃装置では、邪魔にならないようにスートブローが予め取り外されている。
【0032】
移動機構32は、ノズル31をレール38に沿うY軸方向に移動させるY軸移動機構39と、Y軸方向と直交するX軸方向に移動させるX軸移動機構40と、X軸及びY軸と直交するZ軸方向(すなわち上下方向)に移動させるZ軸移動機構41とを有する。各移動機構39〜41は、例えばピニオンとラックと、ピニオンを回転駆動させるモータを有する。Z軸移動機構41には、ノズル31の姿勢を変化させるためのノズル旋回軸等の複数の軸が設けられる。
【0033】
移動機構32及び各軸を操作することにより、ノズルを直方体形状の6面体の全面に移動させることができ、且つノズルの姿勢も例えばノズルの吹き出し口を6面体の全面に向かい合うように最適に変化させることができる。これら移動機構32及び各軸は、上記実施形態と同様に遠隔操作される。
【0034】
ダスト等付着物の除去方法について説明する。まず、清掃装置でダスト等付着物を除去する前に、ダスト等付着物を霧又は少量の水で湿潤させて軟らかく、またその付着力を弱くする。ダスト等付着物は、程度の差はあるものの、吸湿性を持つ物質であり、それ自体は固くても水分を吸って湿潤状態になると軟らかくなり、機器との付着面まで湿潤すると付着力も弱くなる性質を持っている。
【0035】
ダスト等付着物を湿潤させる方法としては、ダスト等付着物に水のみを噴射する一流体噴射法と、水と空気を混同させた霧状の流体を噴射する二流体噴射法とがある。吸湿速度が速く、使用水量(使用後の水処理の量を少なくする意味からも)を少なくできるのは後者である。この実施形態では、ポンプとエアーコンプレッサとを併用して、二流体ノズルから水と空気が混合した流体を噴射する二流体噴射法が使用される。空気との二流体霧の水粒子径は100μm以下、好ましくは70μm以下が高効率であり、これは市販の二流体ノズルを使用することで10μm程度迄実施可能である。さらに二流体霧の温度は活性度(ダスト等付着物の吸湿力)から10℃以上、好ましくは20℃以上が望ましい。
【0036】
ボイラ室の焼却炉側には焼却炉に水分がいかないように図示しないシール板が設けられる。ボイラ室の排出側にも図示しない集塵機等に水分(この水分は付着物を湿潤させる水又は付着物を除去するジェットの水である)がいかないようにシール板が設けられる。
【0037】
ダスト等付着物を湿らせた後は、ダスト等付着物が水を吸収するまで時間をおく(この時間を「湿化時間」と定義する)。次工程である清掃装置による除去工程において、軟質研掃材もしくはジェット噴射水によるダスト等付着物の除去を容易にするためには、ダスト等付着物に吸収させる水分(質量%)としては7〜15%が適切である。水分が7%未満だと、ダスト等付着物の軟らかさが不十分であり、逆に15%を超えると、粘土にブラストするみたいになり、ダスト等付着物が剥離し難くなる。図3はダスト等付着物に吸収される水分(質量%)と湿化時間との関係を示す。ダスト室内の任意のA〜C地点で測定している。湿潤装置の容量にもよるが、1〜数時間以内でダスト等付着物の水分を7〜15%にすることができる。
【0038】
次に、清掃装置によりボイラ室の水管から湿潤させたダスト等付着物を除去する。この除去工程では、ダスト等付着物に軟質研掃材を吹き付けるブラスト、あるいはダスト等付着物に5〜30MPaの水圧を有する中圧水を噴射するジェットのいずれか一つの方法が使用される。
【0039】
軟質研掃材を吹き付けるブラストでは、エアーコンプレッサ7から圧縮空気が配管中に送り込まれ、ブラストユニット6から研掃材が配管中に送られる。あらかじめダスト等付着物が湿潤されているので、ブラスト処理をボイラ室の内部で行うにしても、ダスト等付着物が舞い上がることもなく、容易に剥離することもできる。軟質研掃材としては、水管よりも軟らかい軟質研掃材が使用される。軟質研掃材としては、廃プラスチック、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ユリア、メラミン、フェノールビーズ等の樹脂系化学物質、コーン、ナッツ、アプリコット、くるみ、木を刻んだチップ材等の植物等があげられる。廃プラスチックの研掃材には、例えばポリプロピレンとポリエチレンを溶かしてペレット状に再生したものが用いられる。ブラストユニット6を考慮すると、粒径が7mm以下が望ましく、また安価でかつ後処理が容易なもの(埋立処分、焼却処分)が望ましいものは言うまでもない。
【0040】
ダスト等付着物に水を噴射するジェットでは、水のインパクトによって湿潤させたダスト等付着物を剥離させる。ダスト等付着物は付着力が弱くなっているので、水をダスト等付着物に当てた瞬間に当てた部分のダスト等付着物が剥離する。ジェットのみでダスト等付着物を剥離させる場合と異なり、あらかじめダスト等付着物を湿潤させているので、噴射する水の圧力及び量は少なくて済む。噴射する水の圧力としては、例えば(50〜300kgf/cm2,5〜30MPa)の圧力が使用され、また噴射する水の量はノズルを絞ってできるだけ少量に設定される。ボイラ室中で溜まる灰はダストシュートから取り出される。
【0041】
なお本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。本発明の清掃装置の移動機構は、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させることができるものであれば、上記実施形態に限られることはなく、例えば自走式にすることもできる。また本発明の清掃装置は、ボイラ室の水平蒸発管及び水冷壁管を清掃するのに限られず、過熱器管、エコマイザ管を清掃するのに用いられても良い。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、ボイラ室の熱交換器(水平蒸発管)群は、6面体の隙間を形成する。本発明によれば、隙間に装入された清掃装置が6面体の全面を清掃することができるので、効率的に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボイラ室を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態における清掃装置を示す斜視図。
【図3】ダスト等付着物の湿化時間と付着水mass%との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の第2の実施形態における清掃装置を示す斜視図。
【符号の説明】
4,31・・・ノズル
5,32・・・移動機構
10・・・アーム
13・・・動作軸
14・・・旋回軸
16・・・XY軸移動機構
26・・・監視カメラ
27・・・表示装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物が付着するボイラ室の清掃装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばごみ焼却プラントでは、ごみを焼却炉で燃焼させた後、廃熱を回収するためにボイラが設けられる。ボイラの一種である水管ボイラは、多数の水管に水を通し、管の外から燃焼ガスで加熱し蒸気を発生する。水管は燃焼ガス通路の壁面を構成する水冷壁管として設けられることもあるし、燃焼ガスが通る空間に燃焼ガスの流れに対して直交する方向に伸びる水平蒸発管として設けられることもある。水冷壁管や水平蒸発管には、燃焼炉で燃焼させたごみの灰、飛灰、又はクリンカ等の付着物が当然ながら付着する。付着物を除去しないと、付着物が次第にたまってきて熱交換が悪くなるので、定期的に付着物を除去・清掃する必要がある。従来、付着物の除去は以下のように行われていた。
【0003】
(1)人がケレン棒や振動工具や衝撃工具やバキュームのホースを手で持ちながら、付着物をはつって落とす手作業による除去。
(2)付着物に研掃材を吹き付けるブラストによる清掃。
(3)付着物に高圧水や超高圧水を噴射することによる清掃。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のボイラ室の清掃には以下の問題点があった。
【0005】
プラントの経済設計から、ボイラ室の水平蒸発管も水冷壁管も配置が密であり、清掃のためのスペースが狭い。人が這いつくばりながら作業する状況になるので、作業性が極端に悪い。
【0006】
水平蒸発管は水管の密集集合であり、水冷壁管は周囲に配置された平板構造である。同じ水管でも清掃対象としてはまったく異なる作業形態が必要になり、作業が困難になる。
【0007】
ごみ焼却プラントにおいては、ばいじんやダイオキシンが水管に付着するダスト等付着物に多く存在しており、衛生環境が劣悪になる。
【0008】
水平蒸発管も水冷壁管も耐圧部材であり、その寿命は管の肉厚が決定要素になる。清掃によって管の肉厚を減少させ、あるいは傷付けることは許されない。従来のケレン、硬質研掃材によるブラストでは、その肉厚が減少し、あるいは傷付くことがよくあり、水管の寿命を短縮させていた。
【0009】
そこで本発明は、ボイラ室のダスト等付着物を安全で効率良く除去することができるボイラ室の清掃装置及び方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。上記課題を解決するために本発明は、ボイラ室に付着した灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物を除去する清掃装置であって、研掃材又は水を噴射するノズルと、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させる移動機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
ボイラ室の水管群は、6面体の隙間を形成する。この発明によれば、隙間に装入された清掃装置が6面体の全面を清掃することができるので、効率的にボイラ室を清掃することができる。
【0012】
前記移動機構は、先端に前記ノズルが取付けられたアームと、前記ノズルを昇降させることができるように、前記アームを垂直面内で旋回させる動作軸と、前記動作軸を水平面内で旋回させる旋回軸と、前記旋回軸を水平面内でX軸方向に走行させるとともに前記X軸と直交するY軸方向に横行させるXY軸移動機構と、を有することが望ましい。
【0013】
この発明によれば、6面体の全面にノズルを効率的に移動させることができる。
【0014】
前記研掃材は、ボイラ室の水管よりも軟質の軟質研掃材であり、前記水は、5〜30MPaの水圧を有する中圧水であることが望ましい。
【0015】
この発明によれば、水管を傷付けたり、減肉させたりすることなく、ダスト等付着物を除去することができる。
【0016】
前記清掃装置はさらに、ボイラ室内に設置される監視カメラと、前記監視カメラで撮影した画像を表示する表示装置と、を備え、前記移動機構が遠隔操作されることが望ましい。
【0017】
また本発明は、ボイラ室に付着した灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物を湿潤させる前処理工程と、研掃材又は水を噴射するノズルと、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させる移動機構とを備える清掃装置を用いて、湿潤させた前記ダスト等付着物を除去する除去工程と、を備えることを特徴とするボイラ室の清掃方法として構成してもよい。
【0018】
ボイラ室に付着するダスト等付着物は、程度の差はあるものの吸湿性を持つ物質であり、それ自体は固くても水分を吸って湿潤状態になると軟らかくなり、付着力も弱くなる性質を持っている。湿潤させて除去し易い状態にした後にダスト等付着物に研掃材又は水を噴射することで、容易にダスト等付着物を除去することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について説明する。本発明の清掃装置は、例えばごみ焼却プラントのボイラ室の清掃に使用される。
【0020】
図1はボイラ室の斜視図を示す。ボイラ室は、例えば1パス1、2パス2、3パス3の燃焼ガス通路を有する。1パス1及び2パス2の四方の周壁は水冷壁管から構成される。3パス3の四方の周壁も水冷壁管から構成される。3パス3にはさらに、燃焼ガスが流れる方向に対して直交する方向に伸びる水平蒸発管が配置される。3パスで最終的に燃焼ガスを設定温度まで冷やすので、3パスの水管群は密に配置される。ごみ焼却炉からの燃焼ガスが1パス1〜3パス3を順次通過する際、水管内を通る水が管の外から燃焼ガスで加熱され、蒸気になる。
【0021】
ボイラ室の水冷壁管や水平蒸発管には、ごみ焼却炉で燃焼させた灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物が付着する。これらの水管にダスト等付着物が付着すると熱効率が悪くなるので、定期的にダスト等付着物を除去しなければならない。
【0022】
以下ダスト等付着物を除去する清掃装置の構成について詳述する。図2は本発明の第1の実施形態における清掃装置を示す。清掃装置が装入されるボイラ室の水冷壁管及び水平蒸発管群は、直方体形状の6面体の隙間(図1中矢印で示す)を形成する。すなわち清掃装置の上方には水平蒸発管があり、下方には水平蒸発管があり、横には水冷管壁がある。清掃装置は、6面体の全面をブラストできるように、軟質研掃材又は水を噴射するノズル4と、ノズル4の位置及び姿勢を変化させる移動機構5とを備える。ノズル4には、軟質研掃材が充填されるブラストユニット6を介してエアーコンプレッサ7が接続されるか、水タンク8に充填される水を吐出する水ポンプ9が接続される。
【0023】
ノズル4はアーム10の先端に取り付けられる。アーム10にはノズル4の姿勢を変化させるべく、ノズル4を垂直面内で回転させるノズル上下軸11、並びにノズル4を研掃材又は水を噴射する方向の回りに旋回させるためのノズル旋回軸12が設けられる。
【0024】
一方アーム10の基部には、ノズル4を昇降させることができるように、アーム10を垂直面内で旋回させる動作軸13が設けられる。動作軸13は旋回軸14により水平面内で旋回され、これによりアーム10の先端に取り付けられたノズル4が水平面内で旋回する。なお、これらノズル上下軸11、ノズル旋回軸12、動作軸13、及び旋回軸14は、モータ、ギヤ等の駆動機構により回転駆動される。
【0025】
旋回軸14は、XY軸移動機構16によって水平面内で移動される。XY軸移動機構16は、6面体の下部の対辺に配置された一対の走行レール17,17と、走行レール17,17間に掛け渡された横行レール18とを有する。走行レール17,17は、清掃する都度設置されることになる。
【0026】
横行レール18の両端には、走行レール17,17に沿って転がるローラ19・・・が取り付けられ、これにより横行レール18が走行レール17,17の延びるX軸方向にスライドする。横行レール18は例えば、走行レール17の両端に配置されたプーリ20,20間に掛け渡される無端状のワイヤ29等に固定される。ワイヤ29を駆動することによって、横行レール18が走行レール17,17に沿って走行する。
【0027】
横行レール18には、横行レール18に沿ってY軸方向に横行できるスライド部材21が取り付けられる。スライド部材21には、アーム10が取り付けられている。スライド部材21は、横行レール18の両端に配置したプーリ23,23間に掛け渡される無端状のワイヤ24等に固定される。ワイヤ24を駆動することによって、スライド部材21が横行レール18に沿って横行する。
【0028】
これらXY移動機構16及び各軸11〜14を操作することにより、ノズル4を直方体形状の6面体の全面に移動させることができ、且つノズル4の姿勢も例えばその吹き出し口を6面体の全面に向かい合うように最適に変化させることができる。したがって、清掃装置の周囲の6面全面に渡って自由自在にブラストできるようになる。
【0029】
ボイラ室内には監視カメラ26が設置される。監視カメラ26が撮影する位置はコントロールユニット28により調整される。監視カメラ26で撮影した画像はモニタ等の表示装置27で表示される。作業員はボイラの外で表示装置27を見ながら遠隔操作によりXY移動機構16及び各軸11〜14を遠隔操作する。
【0030】
図4は本発明の第2の実施形態における清掃装置を示す。この実施形態の清掃装置も、6面体の全面をブラストできるように、研掃材又は水を噴射するノズル31と、ノズル31の位置及び姿勢を変化させる移動機構32とを備える。ノズル31には、軟質研掃材が充填されるブラストユニット33を介してコンプレッサ34が接続されるか、水タンク35に充填される水を吐出する水ポンプ36が接続される。
【0031】
水管群間の隙間には、スートブロー配管37が固定的に設置されることがある。スートブロー配管37は、定常運転時にダスト等付着物を除去するために設置され、パイプに開けられた複数の穴から蒸気を吹き出し、吹き出した蒸気をダスト等付着物にぶつけて定期的に除去する。本実施形態では、このスートブロー配管37にレール38を抱かせて、レール38の上に清掃装置ユニットを組み付けている。なお上記第1の実施形態の清掃装置では、邪魔にならないようにスートブローが予め取り外されている。
【0032】
移動機構32は、ノズル31をレール38に沿うY軸方向に移動させるY軸移動機構39と、Y軸方向と直交するX軸方向に移動させるX軸移動機構40と、X軸及びY軸と直交するZ軸方向(すなわち上下方向)に移動させるZ軸移動機構41とを有する。各移動機構39〜41は、例えばピニオンとラックと、ピニオンを回転駆動させるモータを有する。Z軸移動機構41には、ノズル31の姿勢を変化させるためのノズル旋回軸等の複数の軸が設けられる。
【0033】
移動機構32及び各軸を操作することにより、ノズルを直方体形状の6面体の全面に移動させることができ、且つノズルの姿勢も例えばノズルの吹き出し口を6面体の全面に向かい合うように最適に変化させることができる。これら移動機構32及び各軸は、上記実施形態と同様に遠隔操作される。
【0034】
ダスト等付着物の除去方法について説明する。まず、清掃装置でダスト等付着物を除去する前に、ダスト等付着物を霧又は少量の水で湿潤させて軟らかく、またその付着力を弱くする。ダスト等付着物は、程度の差はあるものの、吸湿性を持つ物質であり、それ自体は固くても水分を吸って湿潤状態になると軟らかくなり、機器との付着面まで湿潤すると付着力も弱くなる性質を持っている。
【0035】
ダスト等付着物を湿潤させる方法としては、ダスト等付着物に水のみを噴射する一流体噴射法と、水と空気を混同させた霧状の流体を噴射する二流体噴射法とがある。吸湿速度が速く、使用水量(使用後の水処理の量を少なくする意味からも)を少なくできるのは後者である。この実施形態では、ポンプとエアーコンプレッサとを併用して、二流体ノズルから水と空気が混合した流体を噴射する二流体噴射法が使用される。空気との二流体霧の水粒子径は100μm以下、好ましくは70μm以下が高効率であり、これは市販の二流体ノズルを使用することで10μm程度迄実施可能である。さらに二流体霧の温度は活性度(ダスト等付着物の吸湿力)から10℃以上、好ましくは20℃以上が望ましい。
【0036】
ボイラ室の焼却炉側には焼却炉に水分がいかないように図示しないシール板が設けられる。ボイラ室の排出側にも図示しない集塵機等に水分(この水分は付着物を湿潤させる水又は付着物を除去するジェットの水である)がいかないようにシール板が設けられる。
【0037】
ダスト等付着物を湿らせた後は、ダスト等付着物が水を吸収するまで時間をおく(この時間を「湿化時間」と定義する)。次工程である清掃装置による除去工程において、軟質研掃材もしくはジェット噴射水によるダスト等付着物の除去を容易にするためには、ダスト等付着物に吸収させる水分(質量%)としては7〜15%が適切である。水分が7%未満だと、ダスト等付着物の軟らかさが不十分であり、逆に15%を超えると、粘土にブラストするみたいになり、ダスト等付着物が剥離し難くなる。図3はダスト等付着物に吸収される水分(質量%)と湿化時間との関係を示す。ダスト室内の任意のA〜C地点で測定している。湿潤装置の容量にもよるが、1〜数時間以内でダスト等付着物の水分を7〜15%にすることができる。
【0038】
次に、清掃装置によりボイラ室の水管から湿潤させたダスト等付着物を除去する。この除去工程では、ダスト等付着物に軟質研掃材を吹き付けるブラスト、あるいはダスト等付着物に5〜30MPaの水圧を有する中圧水を噴射するジェットのいずれか一つの方法が使用される。
【0039】
軟質研掃材を吹き付けるブラストでは、エアーコンプレッサ7から圧縮空気が配管中に送り込まれ、ブラストユニット6から研掃材が配管中に送られる。あらかじめダスト等付着物が湿潤されているので、ブラスト処理をボイラ室の内部で行うにしても、ダスト等付着物が舞い上がることもなく、容易に剥離することもできる。軟質研掃材としては、水管よりも軟らかい軟質研掃材が使用される。軟質研掃材としては、廃プラスチック、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ユリア、メラミン、フェノールビーズ等の樹脂系化学物質、コーン、ナッツ、アプリコット、くるみ、木を刻んだチップ材等の植物等があげられる。廃プラスチックの研掃材には、例えばポリプロピレンとポリエチレンを溶かしてペレット状に再生したものが用いられる。ブラストユニット6を考慮すると、粒径が7mm以下が望ましく、また安価でかつ後処理が容易なもの(埋立処分、焼却処分)が望ましいものは言うまでもない。
【0040】
ダスト等付着物に水を噴射するジェットでは、水のインパクトによって湿潤させたダスト等付着物を剥離させる。ダスト等付着物は付着力が弱くなっているので、水をダスト等付着物に当てた瞬間に当てた部分のダスト等付着物が剥離する。ジェットのみでダスト等付着物を剥離させる場合と異なり、あらかじめダスト等付着物を湿潤させているので、噴射する水の圧力及び量は少なくて済む。噴射する水の圧力としては、例えば(50〜300kgf/cm2,5〜30MPa)の圧力が使用され、また噴射する水の量はノズルを絞ってできるだけ少量に設定される。ボイラ室中で溜まる灰はダストシュートから取り出される。
【0041】
なお本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。本発明の清掃装置の移動機構は、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させることができるものであれば、上記実施形態に限られることはなく、例えば自走式にすることもできる。また本発明の清掃装置は、ボイラ室の水平蒸発管及び水冷壁管を清掃するのに限られず、過熱器管、エコマイザ管を清掃するのに用いられても良い。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、ボイラ室の熱交換器(水平蒸発管)群は、6面体の隙間を形成する。本発明によれば、隙間に装入された清掃装置が6面体の全面を清掃することができるので、効率的に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボイラ室を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態における清掃装置を示す斜視図。
【図3】ダスト等付着物の湿化時間と付着水mass%との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の第2の実施形態における清掃装置を示す斜視図。
【符号の説明】
4,31・・・ノズル
5,32・・・移動機構
10・・・アーム
13・・・動作軸
14・・・旋回軸
16・・・XY軸移動機構
26・・・監視カメラ
27・・・表示装置
Claims (5)
- ボイラ室に付着した灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物を除去する清掃装置であって、
研掃材又は水を噴射するノズルと、
清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させる移動機構とを備えることを特徴とするボイラ室の清掃装置。 - 前記移動機構は、
先端に前記ノズルが取付けられたアームと、
前記ノズルを昇降させることができるように、前記アームを垂直面内で旋回させる動作軸と、
前記動作軸を水平面内で旋回させる旋回軸と、
前記旋回軸を水平面内でX軸方向に走行させるとともに前記X軸と直交するY軸方向に横行させるXY軸移動機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載のボイラ室の清掃装置。 - 前記研掃材は、ボイラ室の水管よりも軟質の軟質研掃材であり、
前記水は、5〜30MPaの水圧を有する中圧水であることを特徴とする請求項1又は2に記載のボイラ室の清掃装置。 - 前記清掃装置はさらに、
ボイラ室内に設置される監視カメラと、
前記監視カメラで撮影した画像を表示する表示装置と、を備え、
前記移動機構が遠隔操作されることを有する請求項1ないし3いずれかに記載のボイラ室の清掃装置。 - ボイラ室に付着した灰、飛灰、又はクリンカ等のダスト等付着物を湿潤させる前処理工程と、
研掃材又は水を噴射するノズルと、清掃装置の周囲に仮想される6面体の全面に研掃材又は水を吹き付けられるように、前記ノズルの位置及び姿勢を変化させる移動機構とを備える清掃装置を用いて、湿潤させた前記ダスト等付着物を除去する除去工程と、を備えることを特徴とするボイラ室の清掃方法。
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