JP5594119B2 - 水冷パイプの断熱構造 - Google Patents
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Description
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 加熱炉内に設置される水冷パイプの周囲を被覆する水冷パイプの断熱構造であって、
前記水冷パイプを囲む環状の耐火物製ブロックが、前記水冷パイプの延出方向に複数積み重ねられた構造であり、
前記耐火物製ブロックの積み重ね方向の端面には、相対する端面と嵌合するように、
積み重ね方向を法線とする平面に対して径方向に傾斜する環状の傾斜面が少なくとも
一部に形成され、
前記耐火物製ブロックは、環状の周方向に少なくとも2個以上に分割され、
積み重ねられる前記耐火物製ブロックの周方向分割面の目地位置が、上下の耐火物製ブロックの周方向の中央部付近にくるように1段ずつ交互にずれていることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
(2) 前記(1)に記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記傾斜面は、前記耐火物製ブロックの積み重ね方向を法線とする平面に対して、5°以上、40°以下傾斜していることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
(3) 前記(1)又は(2)に記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記傾斜面は、前記耐火物製ブロックの積み重ね方向の端面全体に形成されることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
(4) 前記(1)又は(2)に記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記耐火物製ブロックの積み重ね方向の端面には、積み重ね方向に段差が形成され、前記傾斜面は、前記段差をつなぐ面として形成されることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
(5) 前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記耐火物製ブロックの水冷パイプ側に、耐火物製ブロックよりも熱伝導率が小さい断熱材が配置されたことを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
(6) 前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記耐火物製ブロックが、CaO・6Al2O3の化学組成からなる粒子が50質量%以上、100質量%以下含まれることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る水冷パイプの断熱構造が示されている。この水冷パイプの断熱構造は、水冷パイプ1と、この水冷パイプ1の周りに巻装されたヒュームドシリカ質断熱材2と、さらにその外側に巻装されたセラミックファイバー質断熱材3と、最外周に設けられる耐火物製ブロック4とを炉床5の上に備えている。耐火物製ブロック4は、水冷パイプ1を囲むように環状に形成され、水冷パイプの延出方向に複数積み重ねられて形成される。前記耐火物製ブロック4の積み重ね方向の端面6は、積み重ね方向を法線とする平面に対して径方向に傾斜している。前記耐火物製ブロック4は、環状の周方向に少なくとも2個以上に分割され、積み重ねられる一対の前記耐火物製ブロック4のうち、一方の前記耐火物製ブロック4の周方向分割面の目地位置と、他方の耐火物製ブロック4の周方向分割面の目地位置とが、環状の周方向にずれている。
本実施の形態は金属製のスタッドを用いない構造なため、断熱性に優れている。
水冷パイプ1を垂直に配置する場合、この構造によれば、耐火物製ブロック4が膨張した際、すなわち外向きに変形する際に、下(または上)の耐火物製ブロック4が抵抗となり、周方向分割面の目地が開くことを防止できる。水冷パイプ1を垂直に配置する場合のこのメカニズムは以下の通りである。
一方、本実施の形態では、積み重ね方向の端面には傾斜がつけられており、さらに周方向分割面の目地の位置が上下で違えていることで、図3(B)に示すように目地が開こうとすると下(または上)に配置された耐火物製ブロック4から目地を閉じる方向に力を受け、耐火物製ブロック4の水平断面に図3(B)のb−b’断面の矢印に示すような抵抗が発生する。これにより、耐火物製ブロック4を拘束でき、目地が開くことを防止できる(図3(A)、図3(C))。
このように積み重ね方向の端面6に傾斜がつけられ、円周方向の分割面の目地がずらされたことによって、耐火物製ブロック4の崩落を防止し、かつ局部的な応力が小さいので割れることを防止でき、高耐用化を図れる。
次に、本発明の第2の実施形態について図5により説明する。尚、以下の説明では、すでに説明した部材と同一の部材については、同一符号を付してその説明を省略する。前記の第1の実施形態に係る耐火物製ブロック4は、傾斜面がブロックの外側から内側に向かう平面状の傾斜面として端面全体に形成されていた。
これに対し、第2の実施形態に係る耐火物製ブロック7は、積み重ね方向の端面の傾斜面の少なくとも一部が湾曲している点で相違する。積み重ね方向の端面8は、一部が湾曲による傾斜面を形成することにより、本発明の効果が得られる。
次に、本発明の第3の実施形態について図6により説明する。耐火物製ブロック9の積み重ね方向の端面10の一部に、互いに嵌合する段差を有した構造である点で第1の実施の形態及び第2の実施の形態と相違する。
段差は、前述の傾斜と同様に耐火物製ブロック9の外向きの熱膨張を拘束する。上述の傾斜に比べ連続的な傾斜ではないため、段差がかみ合う部分に局部的な応力が発生するが、そこに傾斜が付けられるとさらに応力が分散できて好ましい。周方向分割面の目地は第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様にずらされる。
段差は、水冷パイプ側に配置されることが好ましい。水冷パイプ側(内側)は、加熱時に外側に比べ温度が低いため熱膨張が小さく、外向きに変形する際に抵抗となって耐火物製ブロック9を拘束する。
耐火物製ブロック9の延出方向の形状は、作業性の観点から50〜500mmが好ましく、さらに100mm〜200mmが好ましい。大きすぎると単品重量が大きくなり施工時の負荷が増大する。また小さすぎると施工数量が増え施工効率が悪化する。
耐火物製ブロック9の外径や内径は加熱炉の設計によって選択されるものである。
最良の形態としては、水冷パイプ側から、ヒュームドシリカおよびセラミックファイバーからなる熱伝導率が0.02〜0.05Wm-1K-1の断熱材(以下、ヒュームドシリカ質断熱材と記す。)を3〜20mmの厚みで配置され、その外側にセラミックファイバーを主とした熱伝導率0.08〜0.2Wm-1K-1の断熱材(以下、CF質断熱材と記す。)が10〜50mmの厚みで配置され、さらにその外側に耐火物製ブロックが30mm〜150mm配置された構造が好ましい。
従来のAl2O3・SiO2質の耐火キャスタブルは、耐熱性は1600℃と高いが熱伝導率が2.0Wm-1K-1と高く断熱性に劣る。又従来の断熱キャスタブルは、熱伝導率は0.4 Wm-1K-1と低いが耐熱性が1400℃と劣り、耐スケ−ル性にも劣る。
CA6を90質量%含むCA6質耐火物(以下、90質量%CA6質耐火物という。)を水冷パイプの断熱に1層だけ適用した試験を行った。CA6以外の含有物はAl2O3である。実施結果を表1に示す。
比較例2及び実施例1では水冷パイプに直接モルタルを塗り、90質量%CA6質耐火物製ブロックをはめ込んで固定した。高さは1500mm(10段)とし、最上部は粘土状の耐火物を塗り込んで固定した。
なお、耐火物製ブロックの製作は、各耐火物を型枠に流し込み、12時間養生したあと脱枠し、350℃の熱風乾燥を行った。
実施例1は、熱抵抗値が0.30W-1m2Kと、キャスタブルライニングをスタッドで固定した比較例1の0.17W-1m2Kに比べ、約2倍大きく、断熱性に優れる。また、6ヵ月使用後の目地の隙間はいずれも1mmと小さく、さらにそのまま1年間使用しても隙間は1mmで変化せず、耐用性に優れることが確認できた。
次に、水冷パイプに最も近い1層目にヒュームドシリカ質断熱材、2層目にCF質断熱材、3層目に種々の断熱材を配置した3層の断熱構造を、水冷パイプの断熱に適用した場合の試験を行った。実施結果を表3に示す。各断熱構造の断熱性能は、前記表2に記載した耐火物および断熱材の物性値を用い、前記式1によって求めた熱抵抗値で評価した。
実施例2〜4は、3層目が90質量%CA6質耐火物製ブロックであり、積み重ね方向を法線とする平面の傾斜角度が5°〜25°であるブロックからなる構造である。実施例5は、3層目が50質量%CA6質耐火物製ブロックであり、積み重ね方向を法線とする平面の傾斜角度が15°であるブロックからなる構造である。CA6以外の含有物はAl2O3である。実施例6は3層目がAl2O3・SiO2質耐火物製ブロックであり、積み重ね方向を法線とする平面の傾斜角度が15°であるブロックからなる構造である。Al2O3含有量が60質量%、残りがSiO2である。実施例7は、3層目が90質量%CA6質耐火物製ブロックであり、積み重ね方向を法線とする平面の一部に傾斜角度が66°の面を有する段差のあるブロックからなる構造である。段差部の構造(周方向分割面)を図7に示す。
耐火物製ブロック単体の寸法は、上記比較例3の断熱構造の寸法と同様な構造になるよう内径260mmと外径420mmに設定し、高さ方向を150mmとした。施工する水冷パイプの径は178mmであった。円周方向の分割は均等な2分割とし、周方向分割面の目地はストレート形状とした。
まず、水冷パイプの表面にヒュームドシリカ質断熱材およびCF質断熱材を、接着材を用いて巻きつけ固定した。ここで使用したヒュームドシリカ質断熱材は、水分を含むと組織が崩壊してしまうため、アルミ箔およびポリエチレンフィルムによって真空パックしたものを用いた。また1枚の厚みを5mmとし、3層巻いて15mmの厚みとした。CF質断熱材はブランケット状のもので含水させ密度を高めたものとした。
比較例3の3層目の耐火物製キャスタブルの施工は、比較例1と同様な方法で行った。
比較例4と実施例2〜7の3層目は、耐火物製ブロックにモルタルを塗ってはめ込み1500mm(10段)の高さまで施工した。最上部は粘土状の耐火物を塗りこんで固定した。
実施例2〜7は、熱抵抗値が1.1〜1.26W-1m2Kと、キャスタブルライニングをスタッドで固定した従来構造である比較例1の0.21W-1m2Kの約5倍大きく、断熱性に優れる。また、6ヵ月使用後の目地の隙間はいずれも1mmと小さく、さらにそのまま1年間使用しても隙間は1mmで変化せず、耐用性に優れることが確認できた。
Claims (6)
- 加熱炉内に設置される水冷パイプの周囲を被覆する水冷パイプの断熱構造であって、
前記水冷パイプを囲む環状の耐火物製ブロックが、前記水冷パイプの延出方向に複数積み重ねられた構造であり、
前記耐火物製ブロックの積み重ね方向の端面には、相対する端面と嵌合するように、
積み重ね方向を法線とする平面に対して径方向に傾斜する環状の傾斜面が少なくとも
一部に形成され、
前記耐火物製ブロックは、環状の周方向に少なくとも2個以上に分割され、
積み重ねられる前記耐火物製ブロックの周方向分割面の目地位置が、上下の耐火物製ブロックの周方向の中央部付近にくるように1段ずつ交互にずれていることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。 - 請求項1に記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記傾斜面は、前記耐火物製ブロックの積み重ね方向を法線とする平面に対して、5°以上、40°以下傾斜していることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。 - 請求項1又は請求項2に記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記傾斜面は、前記耐火物製ブロックの積み重ね方向の端面全体に形成されることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。 - 請求項1又は請求項2に記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記耐火物製ブロックの積み重ね方向の端面には、積み重ね方向に段差が形成され、前記傾斜面は、前記段差をつなぐ面として形成されることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記耐火物製ブロックの水冷パイプ側に、耐火物製ブロックよりも熱伝導率が小さい断熱材が配置されたことを特徴とした水冷パイプの断熱構造。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の水冷パイプの断熱構造において、
前記耐火物製ブロックが、CaO・6Al2O3の化学組成からなる粒子が50質量%以上、100質量%以下含まれることを特徴とした水冷パイプの断熱構造。
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