JP5591159B2 - ポリスチレン系多孔性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ポリスチレン系多孔性フィルムに関し、特に、反射シートとして用いられるポリスチレン系多孔性フィルムに関する。
近年、液晶表示装置用の反射板、投影用スクリーンや面状光源の部材、照明器具用反射板、及び照明看板用反射板等の分野で、反射シートが使用されている。例えば、液晶表示装置のディスプレイ用反射板では、装置の大型化及び表示性能の高度化の要求から、少しでも多くの光を液晶に供給するべくバックライトユニットの性能向上のために反射性能の高い反射シートが求められている。
反射シートとして、例えば、特許文献1には、脂肪族ポリエステル系樹脂に酸化チタン等の微粉状充填剤を添加した内部に空隙を有する反射フィルムが開示されており、特許文献2には、芳香族ポリエステル樹脂に高融点の非相溶ポリマーを添加し、延伸させてシート内に微細気泡を形成させて光拡散反射を生じさせた白色ポリエステルフィルムが開示されている。また、例えば、特許文献3には、ポリプロピレン樹脂に無機充填剤を添加して延伸させた多孔性樹脂シートが開示されている。これらの反射シートは、充填剤等を添加して延伸することにより、充填剤等とマトリックスとの間に空孔が形成されて、光学反射特性が付与されている。
上記方法以外でも、シート内に空孔を形成させる方法があり、例えば、化学発泡法や物理発泡法による発泡技術が挙げられる。化学発泡法は、低分子量の化学発泡剤をベース樹脂に混合し、発泡剤の分解温度以上に加熱することにより発泡成形する方法である。また、物理発泡法は、ブタン等の低沸点有機化合物をベース樹脂に供給して混練した後、低圧域に押し出すことにより発泡する方法である。物理発泡法は、樹脂中への発泡剤の添加量を調整すれば、低倍率から高倍率まで種々の発泡体を容易に製造できるという特徴を有する。
一般的に化学発泡法では、化学発泡剤の種類によっては分解時の残留物が生じることがあり、そのため、得られる発泡体が変色したり、食品衛生上等の問題を生じやすい。また、化学発泡剤自体が粒度分布を有しているため、樹脂を溶融押出すると、得られる成形体の厚みは密度が不均一になる等の問題が生じる。
また、一般的に物理発泡では得られる多孔体の空孔サイズが大きく、反射シートとしては所望する反射特性を得ることができないものであった。
このような物理発泡法に対して、発泡体の気泡を極微細化することにより、発泡倍率の増加に伴う強度低下の抑制または強度の向上を図ることが可能な技術としてマイクロセルラープラスチックと呼ばれる技術がある。この技術は、具体的には(1)高圧容器内で熱可塑性樹脂に窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを高圧もしくは超臨界状態で浸透させ、次いで(2)不活性ガスを浸透させた熱可塑性樹脂を高圧容器より取り出し、オイルバス等で熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度まで昇温し、(3)核生成を誘発して気泡成長させることにより微細気泡の発泡体を得る方法である。
上記技術を用いてなる発泡体としては、例えば特許文献4に超臨界状態の流体を樹脂組成物内に浸透させ、核生成を誘発して形成された多孔構造を有する樹脂発泡体を含む光反射部材が開示されている。この技術を用いれば、光反射効率が従来の反射部材と比較して優れたものが得られるが、樹脂組成物中に超臨界状態の流体を浸透させるのに時間がかかるため生産効率が悪いという問題があった。
WO2004/104077 特開平4−239540号公報 特開平11−174213号公報 特開2006−146120号公報
本発明の目的は、光学反射特性が良好なポリスチレン系多孔性フィルムを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリスチレン系樹脂組成物を用いてなるフィルムを少なくとも1方向に延伸して空孔を形成し、多孔性フィルムとすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、
(A)成分と(B)成分とを質量比で、(A)/(B)=55〜80/20〜45(但し、(A)+(B)=100)の割合で含むポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る成形体を、少なくとも1方向に延伸した空孔を有するフィルムであり、該(A)成分がポリスチレン系樹脂であり、該(B)成分が示差走査熱量計を用いて、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂であり、かつ、
(a)該空孔の平均長径セル径が0.1〜1.0μmの範囲内であり、
(b)該空孔のアスペクト比(平均値)が1.0〜6.0の範囲内であり、
(c)該空孔のセル密度(/cm)が1.0×10 10 〜1.0×10 12 の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明のポリスチレン系多孔性フィルムの別の態様としては、
(A)成分と(B)成分とを含むポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る成形体を、少なくとも1方向に延伸した空孔を有するフィルムであり、該(A)成分がスチレン系樹脂であり、該(B)成分が示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂であり、該ポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る成形体中の該(B)成分のドメイン直径のMD(成形体の流れ方向)とTD(MDと垂直をなす方向)の異方性が1.0〜2.0であり、かつ、
(a)該空孔の平均長径セル径が0.1〜1.0μmの範囲内であり、
(b)該空孔のアスペクト比(平均値)が1.0〜6.0の範囲内であり、
(c)該空孔のセル密度(個/cm )が1.0×10 10 〜1.0×10 12 の範囲内であることを特徴とする。
前記ポリスチレン系樹脂組成物は、(C)成分としてビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体を、更に含有することが好ましい。
ここで、該(A)成分と該(B)成分と該(C)成分との割合は、質量比で、(A)/(B)/(C)=50〜80/20〜45/1〜20(但し、(A)+(B)=100)であることが好ましい。
本発明においては、前記ポリスチレン系樹脂組成物が、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した時の損失正接のピーク温度が少なくとも2つ存在し、かつ、低温側のピーク温度が−100℃〜−30℃の範囲内に存在し、かつ高温側のピーク温度が100〜150℃の範囲内に存在することが好ましい。
本発明によれば、優れた光反射特性を備えたポリスチレン系多孔性フィルムを得ることができた。
図1は、実施例1で得られたポリスチレン系多孔性フィルムの空孔の状態を示す図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表記した場合には、特にことわりのない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を限定するものではないが、主成分とは例えば組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%も含む)を占めることをいう。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表記した場合には、特にことわりのない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。ここで、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含する。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、(A)成分と(B)成分とを主成分として含むポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る。この(A)成分は、ポリスチレン系樹脂であり、(B)成分は、示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂である。なお、本発明では、「フィルム」と称する場合には肉厚が比較的厚い500μm以上のものも含み、フィルムと称してもシートの概念も含むものとする。
(A)成分と(B)成分との混合割合は、質量比で、(A)/(B)=55〜80/20〜45(但し、(A)+(B)=100)であることが好ましい。(A)成分と(B)成分との配合割合がかかる範囲内であれば、延伸により空孔を形成することができる。なお、上記範囲外であっても空孔を形成することができる場合があり、それについては後述する。
(A)成分を構成するポリスチレン系樹脂は、例えば、スチレンのみからなる単独重合体が挙げられ、GPPS(General Purpose Polystyrene)等が代表的なものとして例示される。また、ポリスチレン系樹脂には共重合体も含まれ、スチレンに、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート等の共重合体成分を20モル%以下程度の範囲で共重合させた共重合体、あるいは、スチレンにメタクリル酸を共重合させた耐熱性を有するポリスチレン系共重合体、あるいは、ポリスチレンに少量のブタジエンゴム粒子を混合したもの、いわゆる耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等も用いることができる。
上記したように、(B)成分は示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量(ΔHc)が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂である。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、延伸による多孔化のし易さの観点より、結晶化熱量(ΔHc)が40J/g以下であることが重要である。本発明では、一般的なポリプロピレン系樹脂(結晶化熱量ΔHc>40J/gであり、通常ΔHcが60〜100J/g程度)よりも低い結晶化熱量を有する特定のポリプロピレン系樹脂(B)を使用しているので、ポリスチレン系樹脂(A)との弾性率差が大きくなり、延伸による多孔化が向上し易くなる。延伸による多孔化のし易さをより向上させるという観点からは、ポリプロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量(ΔHc)は30J/g以下であることが好ましく、25J/g以下であることが更に好ましく、20J/g以下であることが特に好ましい。また結晶化熱量が発現しない非晶性のポリプロピレン系樹脂も好適に用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量(ΔHc)を40J/g以下に設定するための手段としては、例えば、共集合体とする手段や、立体規則性を低減させる手段などが好適なものとして挙げられる。前者の手段に好適に用いられるポリプロピレン系樹脂の共重合体としては、例えば、プロピレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。この共重合成分であるα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数2乃至20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが例示される。本発明においては、結晶化熱量を40J/g以下に設定し易くするという観点から、α−オレフィン単位の含有量が5質量%以上、好ましくは7質量%以上30質量%以下であるプロピレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられる。また共重合成分であるα−オレフィンは、1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
本発明においては、延伸による多孔化のし易さと耐熱性とのバランス、及び、工業的に比較的容易に入手可能であること等を考慮すると、ポリプロピレン系樹脂(B)としてプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いることが好ましい。
本発明において、プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:230℃、荷重:21.18N)が0.5g/10分以上、好ましくは1.0g/10分以上であり、15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下であるものが用いられる。ここで、MFRは、溶融混練性を考慮した場合、ポリスチレン系樹脂(A)に近い溶融粘度の材料を選ぶことが好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂(B)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法などが挙げられる。
本発明におけるポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成された成形体は、ポリスチレン系樹脂(A)のマトリックスとポリプロピレン系樹脂(B)のドメインからなる海島構造を有するものである。本発明においては、該ドメインの平均粒径(ドメインサイズ)が0.5〜3.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.5〜2.0μmの範囲内であることが更に好ましい。本発明において、ドメインサイズとは、ドメインの直径の平均値を言う。本発明において、ドメインサイズは、形成された成形体に染色前処理(Ru4気相染色)を施し、透過電子顕微鏡(日本電子製のJEM−1200EX)を用いて、成形体の断面中心付近を観察し、無造作に100個のドメインを選択して直径を測定し、その平均値を求めることにより得られる。
本発明においては、海島構造におけるドメインの大きさ(粒径)を制御し易くするために、ポリスチレン系樹脂組成物には、ポリスチレン系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)のほかに、さらに(C)成分としてビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体が混合されていることが好ましい。該(C)成分を更に混合することにより、(A)成分中の(B)成分であるドメインの大きさ(粒径)を容易に調整することができるようになる。(A)成分と(B)成分と(C)成分との混合割合は、質量比で、(A)/(B)/(C)=55〜80/20〜45/1〜20(但し、(A)+(B)=100)であることが好ましい。
上記ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体(C)を構成するビニル芳香族化合物としては、スチレンが代表的なものであるが、α−メチルスチレンなどのスチレン同族体も用いることができる。また(C)成分を構成する共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等を用いることができる。本発明におけるビニル芳香族と共役ジエン化合物との共重合体(C)は、第3成分として、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物以外の成分を少量含んでいてもよい。また、上記ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体(C)は、共重合体の二重結合部分に水素を添加した水添誘導体でも良い。
ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、および、その他ランダムSBRの水素添加ポリマー(HSBR)等が挙げられる。本発明においては、(A)成分中の(B)成分のドメインの大きさ(粒径)の調整の観点から、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体(C)としてスチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)を用いることが好ましく、スチレン含有量が20〜80質量%となるSBBSが更に好ましく、スチレン含有量が60〜80質量%となるSBBSが特に好ましく用いられる。
本発明におけるポリスチレン系樹脂組成物は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が少なくとも2つ存在し、かつ、低温側のピーク温度が−100℃〜−30℃の範囲に存在し、高温側のピーク温度が100℃〜150℃の範囲に存在することが好ましい。なお、本発明における損失正接のピーク温度とは、損失正接(tanδ)がピーク値(極大値)を示す温度のことである。損失正接のピーク温度が上記範囲に少なくとも2つ存在することにより、延伸性と延伸による多孔化のし易さとを両立できるようになる。すなわち、損失正接のピーク温度が低温側(−100℃〜−30℃)に少なくとも1つ以上存在すれば、少なくとも1方向に延伸した際に良好な延伸性を示し、延伸時にフィルムの破断トラブルが生じにくくなり、高温側(100℃〜150℃)にピーク温度が少なくとも1つ以上存在すれば、延伸時の多孔化のし易さが良好になると共に、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの耐熱性が良好になる。本発明においては、上記損失正接のピーク温度は3つ以上存在しても構わないが、現実的な損失正接のピーク温度の個数の上限は5つである。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、ポリスチレン系樹脂組成物を用いて成形体を形成し、次いで、少なくとも1方向に延伸して空孔を形成することにより得られる。なお、本発明においては、延伸する前のシート状物(シート、フィルム等)を「成形体」と表示する。
以下に、本発明の成形体の製造方法について説明する。本発明の成形体は、公知の方法、例えばTダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法、インフレーション法等により製造することができるが、製膜性や生産安定性等の観点からはTダイを用いる押出キャスト法を採用することが好ましい。この押出キャスト法での成形温度は、スチレン系樹脂組成物の流動特性や製膜性等を考慮して適宜調整されることが好ましいが、概ねスチレン系樹脂組成物の流動開始温度以上260℃以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは180℃〜230℃の範囲である。
成形体の厚みは、通常300μm〜5mmの範囲であることが好ましい。成形体の厚みが300μm未満では、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの光学反射特性が劣る傾向にあり、一方、5mmを越えると、(後述する)延伸時の延伸(応)力が高くなりすぎるので生産性が低下し易い。
次に本発明の成形体を延伸する方法について説明する。延伸方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。例えば、一対以上のロール群を用いて延伸するロール延伸、ロールを用いた圧延、テンターを用いて延伸するテンター延伸等を挙げることができるが、これらの中ではロール延伸及び/又はテンター延伸が、延伸条件の選択幅が広いために単独であるいは組み合わせて適用することができ、少なくとも1方向に延伸することができるので、好適に用いられる。具体的には、ロール延伸等により縦方向(MD)に延伸する一軸延伸法、縦方向への延伸後、引き続きテンター延伸等により横方向(TD)に延伸する逐次二軸延伸法、又はテンター延伸により縦方向および横方向に同時に延伸する同時二軸延伸法が用いられる。
以下に一軸延伸法、逐次二軸延伸法および同時二軸延伸法について説明する。
(一軸延伸法)
一軸延伸法とは、成形体を一方向に延伸する方法である。その延伸温度は10〜100℃であることが好ましく、より好ましくは15〜80℃である。延伸温度が10℃未満では、スチレン系樹脂組成物のガラス転移温度以下となるため、延伸時に脆化し易く、延伸が困難となる場合が多い。一方、延伸温度が100℃を超えると、延伸時の多孔化性が乏しくなり易く、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの光学反射特性が大幅に低下し易い。
また、延伸倍率は、1.3倍〜10倍であることが好ましい。延伸倍率が1.3倍未満では、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの多孔構造のムラが大きくなり易く、延伸倍率が10倍を超えると、延伸中に高度に配向して延伸応力が高くなりすぎる傾向にあり、延伸時に破れを生じ易い等の問題が発生したり、得られるフィルムの光学反射特性が逆に悪くなる場合がある。延伸倍率の条件は延伸温度との兼ね合いもあり一概には言えないが1.5倍〜8.0倍が特に好ましく、1.75倍〜5.0倍が更に好ましい。
ロール延伸、圧延、テンター延伸等による延伸時の延伸速度は、100〜100,000%/minの範囲であることが好ましく、100〜80,000%/minの範囲が更に好ましく、500〜50,000%/minの範囲が特に好ましい。延伸速度が100%/min未満では工業生産的に非効率であり、100,000%/minを超えると、延伸製膜時のハンドリングが難しくなる等の問題が発生する場合がある。
(逐次二軸延伸法)
逐次二軸延伸法とは、成形体を一方向に延伸(一段目の延伸)した後、該方向とは直角の方向に延伸(二段目の延伸)する方法である。その延伸温度は上述の一軸延伸法と同様の理由から、一段目の延伸および二段目の延伸共に10℃〜150℃であることが好ましく、15℃〜120℃がであることが更に好ましい。
延伸倍率は、一段目で1.3倍〜4.0倍に延伸し、二段目で1.5倍〜4倍に延伸することが好ましい。一段目の延伸倍率が1.3倍未満では、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの多孔構造のムラが大きくなり易く、光学反射特性が乏しくなる場合があり、一方、延伸倍率が4.0倍を超えると、二段目の延伸時に破断するといったトラブルが発生することがある。
逐次二軸延伸法では、一段目の延伸をロール延伸等により縦方向(MD)に延伸し、二段目の延伸をテンター延伸等により横方向(TD)に延伸することができる。
延伸速度については、上述した一軸延伸法と同様の観点から、一軸延伸法と同様の条件が好ましい。また、予熱条件については、延伸温度以下であることが好ましい。予熱温度が延伸温度を超えると延伸時の多孔化性が乏しくなり易く、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの光学反射特性が大幅に低下し易くなる場合がある。
(同時二軸延伸法)
同時二軸延伸法とは、成形体を互いに直交する二方向に同時に延伸する方法である。その延伸温度は、上述の一軸延伸法及び逐次二軸延伸法と同様の観点から、10℃〜100℃であることが好ましく、更に好ましくは、15℃〜85℃である。
また、延伸倍率は、面積倍率で1.3倍〜10倍であることが好ましく、更に好ましくは、1.5倍〜10倍である。延伸倍率が1.3倍未満では、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの多孔構造のムラが大きくなり易く、光学反射特性が乏しくなる場合があり、延伸倍率が10.0倍を超えると、延伸中に高度に配向し易く、延伸応力が高くなりすぎて延伸時に破れを起こしたりすることがあったり、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの光学反射特性が逆に悪くなる場合がある。延伸速度は、上述の一軸延伸法及び逐次二軸延伸法と同様の観点から、同様の速度範囲が好ましい。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは空孔を有する。空孔は、ポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成された成形体を延伸することにより形成される。例えば、上記したように、ポリスチレン系樹脂組成物の(A)成分と(B)成分との混合割合を、質量比で、55〜80/20〜45にすることにより、空孔を形成することができるし、あるいは、(A)成分と(B)成分との混合割合が上記範囲外であっても、(B)成分のドメイン粒径の異方性を所定範囲内とすることにより空孔を形成することができる、すなわち、ポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成された成形体中の(B)成分である特定のポリプロピレン系樹脂(示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂)のドメイン直径のMD(成形体の流れ方向)とTD(MDと垂直をなす方向)の異方性を1.0〜2.0の範囲とすることで、空孔を形成することができる。上記範囲内のドメイン直径の異方性の数値は、(A)成分と(B)成分の溶融粘度比を調整すること、具体的には(A)成分に対する(B)成分の溶融粘度を高くすることや、(A)成分と(B)成分を混練する際の混練スピードを調整すること、具体的には混練りスピードを上げることで達成することができる。
本発明においては、(a)空孔の平均セル径が0.1〜1.0μmの範囲内であること、(b)空孔のアスペクト比(平均値)が1.0〜6.0の範囲であること、(c)空孔のセル密度(/cm)が1.0×10 10 〜1.0×10 12 の範囲内であることが必要である。
空孔サイズ(平均セル径)及び空孔のアスペクト比は、形成されたポリスチレン系多孔性フィルムのMD断面(Edge View)の中心付近を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率3,000倍で観察し、顕微鏡視野の像中のすべての空孔の短径と長径を測定し、また、アスペクト比を求め、各々、その平均値を求めて平均セル径およびアスペクト比(平均値)とする。また、空孔のセル密度(N)は、像中の空孔の数(n)と、像全体の面積(A)を求めて、下記式に代入して算出した値である。
=(n/A)3/2
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、ポリスチレン系樹脂をベース樹脂とするフィルム中に空孔を有することで光学反射特性を向上させている。すなわち、ポリスチレン系樹脂の平均屈折率は1.59前後であり、空気の平均屈折率は1.0であるのでフィルム中に空孔が形成されると、ポリスチレン系樹脂と空孔との界面で光の反射が生じて、光学反射特性を向上させることができる。よって、ポリスチレン系多孔性フィルムの多孔構造は光学特性に大きく影響するものである。
空孔の平均セル径が上記範囲内であれば、可視光領域の光(一般的な可視光の波長領域は380〜750nm)を反射するのに十分な大きさであり、厚みを大幅に厚くしなくても反射特性を付与することができる。また、空孔のアスペクト比が上記範囲内であれば、得られるポリスチレン系多孔性フィルム中の空孔の厚み方向の空孔のサイズが可視光領域の光よりも小さくなることがなく、空孔形成による光学反射特性の向上効果が得られる。また、空孔のセル密度が上記範囲内であれば、光学反射特性を付与することができ、かつ、得られるポリスチレン系多孔性フィルムの機械物性の低下を最小限にすることができる。
空孔の平均セル径を上記範囲内とするためには、成形体を形成するスチレン系樹脂組成物において、(B)成分である、示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂(B)のドメインサイズを0.5〜3μmにすることが好ましく、0.5〜2μmにすることが更に好ましい。かかる範囲へのドメインサイズの調整は、上述したように、(A)成分と(B)成分の溶融粘度比の調整、(A)成分と(B)成分を混練する際の混練スピードの調整、あるいは、(A)成分及び(B)成分に更に(C)成分を混合することにより達成することができる。
空孔のアスペクト(平均値)の上記範囲内への調整は、延伸時の延伸倍率を調整することにより達成することができる。例えば、空孔のアスペクト比が大きすぎる場合には延伸倍率を下げればアスペクト比を小さくすることができる。
空孔のセル密度の上記範囲内への調整は、延伸時の延伸条件を調整することにより達成することができる。例えば、空孔のセル密度が小さすぎる場合には、延伸温度を下げたり、延伸倍率を上げることでセル密度を大きくすることができ、逆に、空孔のセル密度が大きすぎる場合には、延伸温度を上げたり、延伸倍率を下げることでセル密度を小さくすることができる。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、必要に応じて、延伸後に熱処理を行っても良い。熱処理温度については60〜120℃であることが好ましい。熱処理温度が60℃未満では、熱処理の効果がほとんど無く、熱収縮率の軽減には効果が無い場合がある。一方、120℃を超えると、熱処理により延伸時に形成された空孔が閉塞してしまう場合があり、熱処理により光学反射特性が低下する場合がある。ここで熱処理の方式や時間は、特に制限されるものではないが、例えば、製膜ライン内で、熱処理ロールや熱風炉等により熱処理する方法(インライン熱処理)、製膜ライン外で、熱処理ロールや熱風炉等により熱処理する方法、恒温槽や熱プレス等により熱処理する方法(アウトライン熱処理)等の熱処理方法を用いることができる。また、熱処理時間は、数秒〜数時間であることが好ましく、数十秒から数十分であることが更に好ましい。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、ポリスチレン系樹脂組成物を用いてなる単層フィルムでも、ポリスチレン系樹脂を用いてなる2層以上の層を積層した積層フィルムであっても良い。2層以上の積層フィルムの場合には、各層は同一でも異なっていても良い。あるいはまた、2層以上の積層フィルムは、更に、他の層を積層した積層フィルムであっても良い。他の層を形成する樹脂としては、フィルム状に成形できる熱可塑性樹脂であり、本発明の効果を阻害しないものであれば、特に限定されることなく使用することができる。例えば、良好な平面性を付与できるという観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂等を主成分として使用することが好ましい。
このような積層フィルムの層構成としては、ポリスチレン系樹脂組成物を用いてなる層をα層と表示し、他の層をβ層と表示すると、α層/β層/α層、或いは、β層/α層/β層の三層構造を例示することができる。また、更に多くの層を有する四層以上の構造とすることもできるし、あるいはα層とβ層の二層構造でも良い。本発明において、積層構造のフィルムは、例えば、押出しラミネート、サンドラミネート、共押出等の方法により形成することができる。また、α層とβ層の間に接着剤(接着性フィルムを含む)を介在させて積層しても良いし、α層とβ層を熱融着して積層しても良い。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムには、該フィルムの裏面側(すなわち反射使用面とは反対側)に金属薄膜層を設けてもよい。
金属薄膜層は、金属を蒸着することにより形成することができ、例えば、真空蒸着法、イオン蒸着法、スパッタリング蒸着法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。蒸着する金属材料としては、反射率が高い材料であれば特に制限されることなく使用することができるが、一般的には、銀、アルミニウム等が好ましく、これらの中では光学反射特性の観点から銀が特に好ましい。
金属薄膜層は、金属の単層でも積層でも良く、あるいは、金属酸化物の単層でも積層でも良い。また、1層以上の金属の単層と、1層以上の金属酸化物の単層との積層体であっても良い。金属薄膜層の厚みは、材料の種類や層形成方法等によっても異なるが、通常は10nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜200nmの範囲内であることが更に好ましい。金属薄膜層の厚みが300nm以下であれば、生産効率が良好である。
金属薄膜層は、ポリスチレン系多孔性フィルムに、直接、金属蒸着して形成しても良いが、予め、別の樹脂フィルム等に金属薄膜層を形成した積層体を作製しておき、この積層体をポリスチレン系多孔性フィルムと積層させても良い。積層の仕方は、積層体の金属薄膜層とポリスチレン系多孔性フィルムとを重ねても良いし、あるいは、別の樹脂フィルム面とポリスチレン系多孔性フィルムとを重ね合わせて積層しても良い。積層には、各種接着剤を用いて公知の方法により接着しても良いし、公知の熱接着法等を使用して接着しても良い。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムに金属薄膜層を設けた場合の層構成を例示すると、ポリスチレン系多孔性フィルム/(必要に応じて、アンカーコート層)/金属薄膜層/(必要に応じて保護層)の層構成、或いは、ポリスチレン系多孔性フィルム/別の樹脂フィルム/(必要に応じて、アンカーコート層)/金属薄膜層/(必要に応じて保護層)の層構成等が挙げられる。ただし、ポリスチレン系多孔性フィルムは光が照射される側に配置される。なお、保護層、アンカーコート層等は一般的に使用されているものを使用することができる。また、これらの層の間に、更に他の層を有しても良いし、ポリスチレン系多孔性フィルム、金属薄膜層などがそれぞれ独立に複数の構成となっていても良い。
本発明においては、ポリスチレン系多孔性フィルム、上記別の樹脂フィルム等には、本発明の効果を阻害しない範囲内で添加剤等を適宜配合することができる。添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤が挙げられる。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムを用いて反射板を形成することができる。すなわち、本発明のポリスチレン系多孔性フィルム、あるいは、ポリスチレン系多孔性フィルムを含む上記したような層構成の積層体等(以下、「ポリスチレン系多孔性フィルム等」と称すこともある)を、金属板もしくは樹脂板に被覆して反射板を形成することができる。この反射板は、液晶表示装置、照明機器、照明看板等に組み込まれる。
ポリスチレン系多孔性フィルム等を金属板もしくは樹脂板に被覆するには、接着剤を使用しても良いし、接着剤を使用せずに熱融着しても良いし、接着性シートを介して接着しても、押出しコーティングにより接着しても良い。例えば、金属板もしくは樹脂板の貼り合わせ側面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、ポリスチレン系多孔性フィルム等を貼り合わせることができる。この方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的なコーティング設備を使用して、金属板等の表面に乾燥後の膜厚が2〜4μm程度となるように接着剤を塗布した後、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、金属板等の表面を所定温度に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、ポリスチレン系多孔性フィルム等を被覆し、冷却することにより得ることができる。
以下に、実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。なお、実施例に示す測定値は以下のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの引き取り(流れ)方向を縦方向(MD)、その直交方向を横方向(TD)と記載する。
測定方法および評価方法:
(1)結晶化温度(Tc)、結晶融解温度(Tm)
「Pyris 1 DSC」(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて、使用したポリオレフィン系樹脂10mgを、日本工業規格JIS K7121に準じて、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解温度(Tm)(℃)、および、結晶化温度(Tc)(℃)を求めた。
(2)結晶化熱量(ΔHc)
「Pyris 1 DSC」(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて、使用しポリオレフィン系樹脂10mgを、JIS K7122に準じて、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定されたサーモグラムから結晶化熱量(ΔHc)(J/g)を求めた。
(3)空孔の平均セル径、平均アスペクト比、セル密度
多孔性フィルムのMD断面(Edge View)の中心付近を、走査型電子顕微鏡(日立製作所製の「S−4500」)を用いて倍率3,000倍で観察し、顕微鏡視野の像中のすべての空孔の短径と長径を測定し、また、アスペクト比を得た。空孔の長径の平均値、および、アスペクト比の平均値を求めて、平均セル径および平均アスペクト比とした。
また、像中の空孔の数(n)と、顕微鏡視野の像全体の面積(A)を求めて、下記式に代入し、空孔のセル密度(N)を算出した。

=(n/A)3/2
(4)動的粘弾性の測定
延伸する前の成形体について、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法に基づき、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーター「VES−F3」を用いて、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度が3℃/分、温度範囲が−100℃〜150℃で動的粘弾性測定を行い、損失正接(tanδ)のピーク温度を求めた。
(5)反射率(%)
(株)日立製作所製の分光光度計「U−4000」に積分球を取り付け、波長550nmの光に対する反射率を測定した。ただし、測定前にアルミナ白板の反射率が100%となるよう光度計を設定してから、反射率の測定を実施した。
(6)フィルム厚み
1/1000mmのダイヤルゲージを用いて、フィルムの面内の不特定の10箇所を測定し、その平均値を算出した。
(実施例1)
ポリスチレン系樹脂(A)としてHIPS(PSジャパン社製の「H9152」(MFR=5.5:200℃×5kgf)(以下、「A−1」と略記することがある)を70質量%と、ポリプロピレン系樹脂(B)としてプロピレン−α−オレフィン共重合体であるダウケミカル社製の「バーシファイ2400」(α−オレフィン:エチレン(比率11.5%))、ΔHc=6.8J/g、Tc=34℃、Tm=126℃、MFR=2.0g/10min:230℃×2.16kgf)(以下、「B−1」と略記することがある)を30質量%と、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体(C)として、旭化成(株)製の「タフテックP2000」(スチレン含有量=67%、MFR=3.0g/10min:190℃×2.16kg)(以下「C−1」と略記することがある)を6質量%とからなる混合物を、Tダイを具備した押出機を用いて、設定温度210℃で溶融混練し、賦形し、キャストロールで急冷製膜して成形体を形成した。次いで、得られた成形体をフィルムロール縦延伸機を用いて、表1に示す条件1の延伸温度及び延伸倍率で延伸を行ってポリスチレン系多孔性フィルムを得た。
キャストロールで急冷製膜して得られた成形体および得られたポリスチレン系多孔性フィルムについて、上述の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。また、ここで得られたポリスチレン系多孔性フィルムの空孔の状態を図1に示すが、図1は、走査電子顕微鏡を用いて倍率3,000倍で観察した時の顕微鏡写真である。
(比較例1)
実施例1において、A−1とB−1の混合割合をA−1/B−1=50/50質量%に変更した以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムには内部に空孔が形成されていなかった。このフィルムについて、動的粘弾性測定および反射率の測定を行った。その結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例1において、延伸条件を表1に示す条件2の延伸温度及び延伸倍率に変更した以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系多孔性フィルムを作製した。得られたポリスチレン系多孔性フィルムについて実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
(実施例3)
実施例1において、延伸条件を表1に示す条件3の延伸温度及び延伸倍率に変更した以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系多孔性フィルムを作製した。得られたポリスチレン系多孔性フィルムについて実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例1において、延伸条件を表1に示す条件4の延伸温度及び延伸倍率に変更した以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系多孔性フィルムを作製した。得られたポリスチレン系多孔性フィルムについて実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、A−1とB−1の混合割合をA−1/B−1=100/0質量%に変更し、かつ、(C)成分を含有しないこと(すなわち、(C)成分=0)にした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムには延伸直後に破断した。


表2から明らかなように、本発明の実施例1〜4のポリスチレン系多孔性フィルムは、反射率が97%以上であり光学反射特性に優れていていることがわかった。
一方、空孔が形成されていない比較例1のフィルムは、反射率が低く、光学反射特性が発現されないことがわかった。また比較例2の場合には延伸時に破断することがわかった。
本発明のポリスチレン系多孔性フィルムは、優れた光学反射特性を有し、優れた光学反射性能が要求される用途に好適に利用することができる。例えば、反射シートとして好適であり、この反射シートは、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に使用される。あるいはまた、反射シートを金属板、樹脂板等に被覆してなる反射板として使用され、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に組み込まれる。

Claims (5)

  1. (A)成分と(B)成分とを質量比で、(A)/(B)=55〜80/20〜45(但し、(A)+(B)=100)の割合で含むポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る成形体を、少なくとも1方向に延伸した空孔を有するフィルムであり、該(A)成分がスチレン系樹脂であり、該(B)成分が示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂であり、かつ、(a)該空孔の平均長径セル径が0.1〜1.0μmの範囲内であり、(b)該空孔のアスペクト比(平均値)が1.0〜6.0の範囲内であり、(c)該空孔のセル密度(個/cm が1.0×10 10 〜1.0×10 12 の範囲内であることを特徴とするポリスチレン系多孔性フィルム。
  2. (A)成分と(B)成分とを含むポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る成形体を、少なくとも1方向に延伸した空孔を有するフィルムであり、該(A)成分がスチレン系樹脂であり、該(B)成分が示差走査熱量計を用いて加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定される結晶化熱量が40J/g以下であるポリプロピレン系樹脂であり、該ポリスチレン系樹脂組成物を用いて成る成形体中の該(B)成分のドメイン直径のMD(成形体の流れ方向)とTD(MDと垂直をなす方向)の異方性が1.0〜2.0であり、かつ、(a)該空孔の平均長径セル径が0.1〜1.0μmの範囲内であり、(b)該空孔のアスペクト比(平均値)が1.0〜6.0の範囲内であり、(c)該空孔のセル密度(個/cm )が1.0×10 10 〜1.0×10 12 の範囲内であることを特徴とするポリスチレン系多孔性フィルム。
  3. 前記ポリスチレン系樹脂組成物は更に(C)成分を含有し、該(C)成分がビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系多孔性フィルム。
  4. 前記ポリスチレン系樹脂組成物の(A)成分と(B)成分と(C)成分との割合が、質量比で、(A)/(B)/(C)=55〜80/20〜45/1〜20(但し、(A)+(B)=100)であることを特徴とする請求項3に記載のポリスチレン系多孔性フィルム。
  5. 前記ポリスチレン系樹脂組成物は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した時の損失正接のピーク温度が少なくとも2つ存在し、かつ、低温側のピーク温度が−100℃〜−30℃の範囲内に存在し、かつ高温側のピーク温度が100〜150℃の範囲内に存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリスチレン系多孔性フィルム。
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