JP5591152B2 - タービン動翼 - Google Patents
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Description
蒸気タービンの動翼は、翼の植込み法、翼の連結法等に応じて種々のタイプがあるが、その代表例として、シュラウドを有するインテグラルシュラウド翼が挙げられる。
例えば、特許文献1には、翼根部及びシュラウドの形状を工夫することで、動翼の振動減衰効果を持続させるようにしたインテグラルシュラウド翼が記載されている。このインテグラルシュラウド翼では、翼根部の端面の一部およびシュラウドの端面の一部を、軸方向に対し互いに逆方向に傾斜した傾斜面とすることで、隣接する動翼が傾斜面で面圧を持って組み立てられる際に発生する回転モーメントを、翼根部とシュラウドとで互いに相殺するようになっている。
そこで、特許文献2には、タービン翼と一体的に形成されたシュラウドカバーのうち、隣接する動翼のシュラウドカバーとの接触面に耐摩耗性を有するコバルト基合金を肉盛溶接したインテグラルシュラウド翼が記載されている。耐摩耗性を有するコバルト基合金をシュラウドカバー接触面に設けたことにより、シュラウドの摩耗が防止されるようになっている。
また、近年、蒸気タービンの効率化の観点から蒸気温度及び圧力は上昇する傾向にあり、これに伴って、動翼の母材は高温強度に優れた高級材(高Cr鋼やNi基合金等)を選定する必要が生じている。このような高級材は一般的に振動エネルギーの吸収特性が低い硬質材料であるから、高級材を用いたインテグラルシュラウド翼の場合、シュラウドの衝突によって動翼の振動を即座に減衰させることができない。このため、動翼の高温強度と振動減衰力とを両立させることが困難だった。
さらに、長翼の場合であっても、何らかの原因で動翼の振動が発生してしまうことを想定して、動翼の振動を即座に減衰させることが望まれる。
すなわち、特許文献1に記載のインテグラルシュラウド翼は、そもそも、隣接する動翼同士の翼根部及びシュラウドに面圧が生じるように組み立てを行い、動翼を全周連続させることで振動抑制を図るものであって、振動発生時にシュラウドを衝突させて動翼の振動を減衰させることを意図したものではない。
また特許文献2に記載のインテグラルシュラウド翼は、シュラウドカバーの端面に耐摩耗性に優れるコバルト基合金を肉盛溶接することで、シュラウドカバーの摩耗を防止し、シュラウドカバーの寸法形状が所定値から外れることがないようにして、所期の振動減衰を維持するものであって、振動減衰力の向上を意図したものではない。しかも、コバルト基合金は硬質材料であるから、隣接する動翼同士のシュラウドの肉盛溶接部(コバルト基合金)が衝突しても、振動エネルギーを十分に吸収できず、動翼の振動を即座に減衰させることができない。
また、上記タービン動翼では、専らタービン動翼の振動減衰のために、翼根部、翼部及びシュラウドの母材とは異なる材質の高ダンピング被膜を設けたので、この母材及び高ダンピング被膜の選択自由度が向上し、タービン動翼の高温強度と振動減衰力との両立を図ることができる。すなわち、隣接するタービン動翼との接触面に母材とは異なる材質の高ダンピング被膜を設けることで、タービン運転時に応力集中がみられるタービン動翼の翼部(特に翼根部に近い側)を含む母材全体を高Cr鋼やNi基合金等の硬質材料で形成してタービン動翼の高温強度を確保するとともに、高ダンピング被膜によるタービン動翼の振動減衰効果を十分に得ることができる。
なお、衝撃試験として、例えばシャルピー衝撃試験では、所定の高さに持ち上げたハンマを振り下ろして試験片を破壊し、持ち上げられたハンマの位置エネルギーと、試験片の破壊後にはね上がったハンマの位置エネルギーとの差から試験片を破壊するのに費やした衝撃エネルギーを求める。「衝撃値」とは、この衝撃エネルギーを試験片の断面積で割った値である。
また、本発明によれば、専らタービン動翼の振動減衰のために、母材とは異なる材質の高ダンピング被膜を設けたので、母材及び高ダンピング被膜の選択自由度が向上し、タービン動翼の高温強度と振動減衰力との両立を図ることができる。すなわち、隣接する動翼との接触面に母材とは異なる材質の高ダンピング被膜を設けることで、タービン運転時に応力集中がみられるタービン動翼の翼部(特に翼根部に近い側)を含む母材全体を高Cr鋼やNi基合金等の硬質材料で形成して動翼の高温強度を確保するとともに、高ダンピング被膜による動翼の振動減衰効果を十分に得ることができる。
図1は、第1実施形態に係る動翼の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示す動翼を矢印A方向から見た平面図である。
図1に示す例では、シュラウド16のうち、蒸気タービン内の蒸気流れ(図中の矢印方向)の上流側の端面がシュラウドコンタクト面に相当するので、ここに高ダンピング被膜18を設けている。
これにより、動翼10に振動が発生した際、隣接する動翼10(10A,10B)の高ダンピング被膜18(18A,18B)を互いに衝突させて振動エネルギーを吸収するため、動翼10の振動を減衰させるようになっている。
ここで、高ダンピング被膜18が「高いダンピング性」を有するとは、振動発生によって隣接する動翼10の高ダンピング被膜18が互いに衝突した場合に、より多くの振動エネルギーを吸収することをいい、ダンピング性は、例えば、アイゾット衝撃試験やシャルピー衝撃試験の結果から見積もることができる。
このように、本実施形態の動翼10では、動翼10の母材よりも衝撃値が大きい高ダンピング被膜18を用いることで、動翼10の振動発生時に、高ダンピング被膜18によって振動エネルギーを確実に吸収して、発生した振動を即座に減衰させることができる。
動翼10の母材が高Cr鋼の場合、高ダンピング被膜18として、低Cr鋼(例えば2.25Cr系鋼)、Ni鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料、Al、Ni、Mgやこれらの合金等の非鉄系金属材料、炭素繊維をはじめとする樹脂材料、並びにこれらの複合材料を用いることができる。
また、動翼10の母材がNi基合金の場合、高ダンピング被膜18として、高Cr鋼(例えば12Cr系鋼)、低Cr鋼(例えば2.25Cr系鋼)、Ni鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料、Al、Ni、Mgやこれらの合金等の非鉄系金属材料、炭素繊維をはじめとする樹脂材料、並びにこれらの複合材料を用いることができる。
また、本実施形態では、専ら動翼10の振動減衰のために、動翼10の母材とは異なる材質の高ダンピング被膜18を設けたので、動翼10の母材及び高ダンピング被膜18の選択自由度が向上し、動翼10の高温強度と振動減衰力との両立を図ることができる。すなわち、隣接する動翼との接触面に母材とは異なる材質の高ダンピング被膜18を設けることで、タービン運転時に応力集中がみられる動翼10の翼部14(特に翼根部12に近い側)を含む母材全体を高Cr鋼やNi基合金等の硬質材料で形成して動翼10の高温強度を確保するとともに、高ダンピング被膜18による動翼10の振動減衰効果を十分に得ることができる。
次に、第2実施形態の動翼について説明する。
本実施形態の動翼は、動翼の母材よりも高いダンピング性を有する高ダンピング被膜18の配置を除けば、第1実施形態の動翼10と共通する。したがって、ここでは、第1実施形態の動翼10と共通する部材には同一の符号を付してその説明を省略し、高ダンピング被膜18の配置を中心に説明する。
これにより、振動発生時に、隣接する動翼20の高ダンピング被膜18が互いに衝突し、振動エネルギーが十分に吸収され、動翼20の振動が即座に減衰される。また、専ら動翼20の振動減衰のために、動翼20の母材とは異なる材質の高ダンピング被膜18を設けることで、動翼20の母材及び高ダンピング被膜18の選択自由度が向上し、動翼20の高温強度と振動減衰力との両立を図ることができる。
次に、第3実施形態の動翼について説明する。
本実施形態の動翼は、動翼の母材よりも高いダンピング性を有する高ダンピング被膜18の配置を除けば、第1実施形態の動翼10と共通する。したがって、ここでは、第1実施形態の動翼10と共通する部材には同一の符号を付してその説明を省略し、高ダンピング被膜18の配置を中心に説明する。
これにより、振動発生時に、隣接する動翼30の高ダンピング被膜18が互いに衝突し、振動エネルギーが十分に吸収され、動翼30の振動が即座に減衰される。また、専ら動翼30の振動減衰のために、動翼30の母材とは異なる材質の高ダンピング被膜18を設けることで、動翼30の母材及び高ダンピング被膜18の選択自由度が向上し、動翼30の高温強度と振動減衰力との両立を図ることができる。
また、必要に応じて、隣接する動翼同士の複数の接触面に高ダンピング被膜18を設けてもよく、例えばシュラウド16、スナバー22、プラットホームのうち2箇所以上に高ダンピング被膜18を設けてもよい。
12 翼根部
14 翼部
16 シュラウド
18 高ダンピング被膜
20 動翼
22 スナバー
30 動翼
Claims (5)
- 翼根部と、該翼根部から延びる翼部と、該翼部の先端に有するシュラウドとを備えるタービン動翼であって、
前記翼根部、前記翼部及び前記シュラウドの母材よりも高いダンピング性を有する高ダンピング被膜を、隣接するタービン動翼との接触面に設け、
前記高ダンピング被膜は、前記シュラウドのうち、隣接するタービン動翼のシュラウドとの接触面に設けられる
ことを特徴とするタービン動翼。 - 翼根部と、該翼根部から延びる翼部と、該翼部の先端に有するシュラウドとを備えるタービン動翼であって、
前記翼根部、前記翼部及び前記シュラウドの母材よりも高いダンピング性を有する高ダンピング被膜を、隣接するタービン動翼との接触面に設け、
前記高ダンピング被膜は、前記翼部のスナバーのうち、隣接するタービン動翼のスナバーとの接触面に設けられる
ことを特徴とするタービン動翼。 - 翼根部と、該翼根部から延びる翼部と、該翼部の先端に有するシュラウドとを備えるタービン動翼であって、
前記翼根部、前記翼部及び前記シュラウドの母材よりも高いダンピング性を有する高ダンピング被膜を、隣接するタービン動翼との接触面に設け、
前記高ダンピング被膜は、前記翼根部のプラットホームのうち、隣接するタービン動翼のプラットホームとの接触面に設けられる
ことを特徴とするタービン動翼。 - 前記高ダンピング被膜は、衝撃試験で測定される衝撃値が前記母材よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のタービン動翼。
- 翼根部と、該翼根部から延びる翼部と、該翼部の先端に有するシュラウドとを備えるタービン動翼であって、
前記翼根部、前記翼部及び前記シュラウドの母材よりも高いダンピング性を有する高ダンピング被膜を、当該高ダンピング被膜が互いに衝突するように隣接するタービン動翼との接触面に設けた
ことを特徴とするタービン動翼。
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