JP5590512B1 - レドックスフロー電池用電解液、およびレドックスフロー電池 - Google Patents

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Abstract

電池反応の際における水素の発生を抑制することができるレドックスフロー電池用電解液、および、この電解液を備えるレドックスフロー電池を提供する。
レドックスフロー電池用電解液は、白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下である。前記白金族元素イオンの濃度が、ロジウムイオンの濃度が1質量ppm以下、パラジウムイオンの濃度が1質量ppm以下、イリジウムイオンの濃度が1質量ppm以下、白金イオンの濃度が1質量ppm以下の少なくとも一つを満たすことが挙げられる。

Description

本発明は、レドックスフロー電池用電解液、およびこのレドックスフロー電池用電解液を用いたレドックスフロー電池に関する。
昨今、地球温暖化への対策として、太陽光発電、風力発電といった自然エネルギー(所謂、再生可能エネルギー)を利用した発電が世界的に活発に行なわれている。これらの発電出力は、天候などの自然条件に大きく左右される。そのため、全ての発電電力に占める自然エネルギー由来の電力の割合が増えると、電力系統の運用に際しての問題、例えば周波数や電圧の維持が困難になるといった問題が予測される。この問題の対策の一つとして、大容量の蓄電池を設置して、出力変動の平滑化、負荷平準化などを図ることが挙げられる。
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池は、正極電極と負極電極との間に隔膜を介在させた電池セルに正極電解液及び負極電解液をそれぞれ供給して充放電を行う二次電池である。このようなレドックスフロー電池に用いられるレドックスフロー電池用電解液は通常、酸化還元により価数が変化する金属元素を活物質として利用している。例えば、正極活物質として鉄(Fe)イオンを、負極活物質としてクロム(Cr)イオンを用いた鉄(Fe2+/Fe3+)−クロム(Cr3+/Cr2+)系レドックスフロー電池や、両極の活物質にバナジウム(V)イオンを用いたバナジウム(V2+/V3+−V4+/V5+)系レドックスフロー電池を挙げることができる。
特開2011−233372号公報
一般的に、電池にはエネルギー密度がより高いことが望まれる。エネルギー密度を高めるためには、例えば、電解液中の活物質の溶解度を高めたり、電解液の利用率、即ち、活物質の利用率を高めたりすることが考えられる。この利用率とは、上記活物質の理論電池容量(Ah)に対して実際に使用可能な電池容量(放電容量)の比率(放電容量/理論電池容量)をいう。放電容量とは、下限の充電状態(SOC:State of Charge)における電池容量と、上限の充電状態における電池容量との差をいう。
しかし、上記利用率を極力高めて充電した場合、換言すれば上限の充電状態における放電容量を高めたい場合、次のような問題が生じる。レドックスフロー電池の代表的な形態では水溶液を電解液に利用する。よって、電池反応の際(特に充電運転末期)に、負極では、水の分解による水素の発生といった副反応が生じる。
上記副反応は、(1)電流損失(充電時に利用される電気量(Ah)の一部が電池反応(価数変化)に利用されず、水などの分解といった別の反応に利用されることによる損失)として電流量を低下させる、(2)正負極の充電状態を異ならせる原因となり、使用可能な電池容量を小さくさせる、(3)電極の劣化によって電池寿命を短くする、などの多くの弊害をもたらす。したがって、実際の電池の運用では、上記副反応が生じない範囲で使用するように充電停止の電圧(上限充電電圧)を定めるため、充電状態を90%以上にすることが難しい。
特許文献1では、バナジウム系レドックスフロー電池において、少なくとも負極電解液にバナジウムイオンよりも卑な電位の金属イオンを含有させるレドックスフロー電池を開示している。このレドックスフロー電池では、充電末期において、上記副反応が生じる前にこの卑な電位の金属イオンが還元されることで、負極における水素の発生を抑制する。これにより、上記の(1)から(3)の弊害を抑制することができ、上限の充電状態における電池容量を理論上のそれの100%近くまで高められるので、エネルギー密度の高いレドックスフロー電池としている。特許文献1では、バナジウムイオンよりも卑な電位の金属イオンとして、クロム(Cr)イオンおよび亜鉛(Zn)イオンを例示している。
しかし、上記特許文献1のレドックスフロー電池でも、水素が発生する場合があった。即ち、水素が発生する要因を特定しきれていない可能性がある。
したがって、本発明の目的の一つは、水素の発生を抑制することができるレドックスフロー電池用電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このレドックスフロー電池用電解液を備えるレドックスフロー電池を提供することにある。
本願発明のレドックスフロー電池用電解液は、白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下である。
上記レドックスフロー電池用電解液によれば、レドックスフロー電池における水素の発生を抑制することができる。
レドックスフロー電池の動作原理図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(A)実施形態に係るレドックスフロー電池用電解液(以下、RF電解液と呼ぶ)は、白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下である。
本発明者らは、レドックスフロー電池(以下、RF電池と呼ぶ)の電池反応の際における水素の発生には、RF電解液中の不純物元素イオンの種類や濃度が大きく影響することを発見した。特に、白金族元素イオンの合計濃度(総量)が一定以上であると、水素の発生を促進することを発見し、この総量を規定することで、水素の発生を抑制できることを見出した。よって、本実施形態のRF電解液によれば、水素の発生を抑制することができ、ひいては、RF電池のエネルギー密度を高めることができる。
ここで、元素イオンとは、同一の元素から生じるすべての価数のイオンの総称である。また、濃度に関しても同一の元素から生じるすべての価数のイオンの合計濃度を示す。不純物元素イオンとは、RF電解液中に含まれる元素イオンであって、電池反応に寄与しない元素イオンをいう。よって、元素イオンには、活物質も含まれるが、活物質は電池反応に寄与するので不純物元素イオンには含まれない。白金族元素は電池反応に寄与しないので、不純物元素イオンである。白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、および、白金(Pt)の総称をいう。
(B)前記白金族元素イオンの濃度が、下記(1)から(4)の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
(1)ロジウム(Rh)イオンの濃度が1質量ppm以下
(2)パラジウム(Pd)イオンの濃度が1質量ppm以下
(3)イリジウム(Ir)イオンの濃度が1質量ppm以下
(4)白金(Pt)イオンの濃度が1質量ppm以下
上記の各白金族元素イオンは、白金族元素イオンの中でも、特に水素の発生を促進しやすい。よって、上記の各白金族元素イオンの濃度を調整したRF電解液は、電池反応の際、特に充電末期に発生する水素を抑制でき、ひいては活物質の利用率を高めることでRF電池のエネルギー密度を高めることができる。
(C)上記(A)および(B)のいずれか一方の実施形態に係るRF電解液において、Vイオンの濃度が1mol/L以上3mol/L以下、フリーの硫酸の濃度が1mol/L以上4mol/L以下、リン酸の濃度が1.0×10−4mol/L以上7.1×10−1mol/L以下、アンモニウムの濃度が20質量ppm以下、ケイ素の濃度が40質量ppm以下であることが好ましい。
上記の構成を備えるRF電解液は、電池反応の際、特に充電末期において水素の発生を抑制でき、ひいては活物質の利用率を高めることでRF電池のエネルギー密度を高めることができる。また、後述するように、上記の構成を備えるRF電解液は、電池反応の際に発生する析出物を抑制でき、ひいては電池性能の経時的な低下を抑制することができる。
(D)実施形態に係るRF電池は、上記(A)から(C)のいずれかの実施形態に記載のRF電解液を備える。
本実施形態のRF電池は、水素の発生が抑制されたRF電解液を備えることで、電池性能の経時的な劣化を防ぐとともに、高いエネルギー密度のRF電池とすることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の実施形態に係るRF電解液を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1を参照し、正極活物質および負極活物質にVイオンを使用したRF電池1を例に用いて実施形態に係るRF電池及びRF電解液を説明する。なお、図1において、実線矢印は充電時の価数変化、破線矢印は放電時の価数変化を示す。また、図1において、活物質(Vイオン)の価数は代表的な形態のみを示しており、図示する以外の価数もとり得る。Vイオン以外の活物質が含まれる場合がある。
<RF電池の全体構成>
RF電池1は、代表的には、交流/直流変換器を介して、発電部(例えば、太陽光発電装置や風力発電装置、その他一般の発電所など)と負荷(需要家など)との間に接続され、発電部で発電した電力を充電して蓄え、又は、蓄えた電力を放電して負荷に供給する。このRF電池1は、従来のRF電池と同様に、電池セル100と、この電池セル100に電解液を供給する循環機構(タンク、配管、ポンプ)とを備える。
(電池セル及び循環機構)
RF電池1における電池セル100は、正極電極104を内蔵する正極セル102と、負極電極105を内蔵する負極セル103と、両セル102,103を分離すると共にイオンを透過する隔膜101とを備える。正極セル102には、正極電解液を貯留する正極用タンク106が配管108,110を介して接続されている。負極セル103には、負極電解液を貯留する負極用タンク107が配管109,111を介して接続されている。また、配管108,109にはそれぞれ、両極の電解液を循環させるポンプ112,113が設けられている。電池セル100は、配管108〜111とポンプ112,113によって、正極セル102(正極電極104)及び負極セル103(負極電極105)にそれぞれ正極用タンク106の正極電解液及び負極用タンク107の負極電解液を循環供給して、両極における電解液中の活物質となる金属イオン(本実施形態ではVイオン)の価数変化に伴って充放電を行う。
電池セル100は通常、正極電極104(正極セル102)と負極電極105(負極セル103)と隔膜101とを構成要素とする単セルを複数積層したセルスタックと呼ばれる形態で利用される。セルスタックには、一面に正極電極104、他面に負極電極105が配置される双極板(図示せず)と、電解液を供給する給液孔及び電解液を排出する排液孔を有し、上記双極板の外周に形成される枠体(図示せず)とを備えるセルフレームが利用される。複数のセルフレームを積層することで、上記給液孔及び排液孔は電解液の流路を構成し、この流路は配管108〜111に接続される。セルスタックは、セルフレーム、正極電極104、隔膜101、負極電極105、セルフレーム、…の順に積層して構成される。なお、RF電池の基本構成は、公知の構成を適宜利用することができる。
(RF電解液)
本実施形態のRF電解液は、溶媒中に活物質となる元素イオンを含有させた液体であって、白金族元素イオンの濃度が非常に低い。また、後述する試験例から明らかなように、析出物の発生に関与する不純物元素イオンの濃度を必要に応じて所定値以下にすることができる。本実施形態では、正極電解液および負極電解液で、Vイオンを活物質として含有するRF電解液を使用している。ここでは、正極電解液および負極電解液におけるVイオンの平均価数は3.3以上3.7以下、濃度は1mol/L以上3mol/Lとすることが好ましい。より好ましい平均価数は3.4以上3.6以下、Vイオン濃度は1.5mol/L以上1.9mol/L以下である。
RF電解液の溶媒としては、例えば、HSO、KSO、NaSO、HPO、H、KHPO、NaPO、KPO、HNO、KNO、HCl及びNaNOから選択される少なくとも1種の水溶液を用いることができる。その他、RF電解液の溶媒として有機酸溶媒を利用することもできる。
〔白金族元素イオン〕
本発明者らの検討の結果、RF電解液中の白金族元素イオンの合計濃度を4.5質量ppm以下とすれば、水素の発生を効果的に抑制できることが判明した。特に水素の発生を促進する白金族元素イオンとしては、下記のものが挙げられ、個々の白金族元素イオンの濃度は併記した濃度を満たすことが好ましいことも見出した。
(1)Rhイオン:1質量ppm以下
(2)Pdイオン:1質量ppm以下
(3)Irイオン:1質量ppm以下
(4)Ptイオン:1質量ppm以下
〔不純物元素イオン濃度の調整〕
不純物元素イオンの合計濃度を調整したRF電解液とするためには、できるだけ不純物元素イオンの含有量が少ない活物質の原料、および溶媒(例えば硫酸)を用いることが好ましい。しかし、製造工程等で、RF電解液に不純物元素イオンが混入してしまうおそれもある。よって、必要に応じて、RF電解液に対して、凝集沈殿、溶媒抽出、イオン交換樹脂やキレート樹脂を用いたろ過、電解析出、膜分離等の公知の方法を行うことで、不純物元素イオンの合計濃度を低減させてもよい。特に、キレート樹脂を用いたろ過であれば、キレート樹脂の物性やRF電解液のpHを調整することで特定の元素イオンを選択的にろ過できるので好ましい。ろ過の方法としては、キレート樹脂製のフィルター、キレート樹脂をビーズ状にして充填したカラム等にRF電解液を通液すればよい。
〔他の分類〕
本発明者らは、白金族元素イオンを、9族に属する元素イオン(9族元素イオン)と、10族に属する元素イオン(10族元素イオン)と、これら以外の族に属する元素イオン(以下、他族の元素イオンという)とに分類した場合に、9族元素イオンと10族元素イオンとが満たすと好ましい合計濃度が存在することを見出した。
9族元素イオン、および10族元素イオンには、水素の発生を促進する白金族元素イオンが含まれる。同族元素はそれぞれ類似の性質を備えるので、RF電解液から不純物元素イオンを除去する際に同様の(単一の)条件で除去することができる場合が多い。また、9族元素イオン、および10族元素イオンの一方の除去が難しい場合には、除去しやすい族の元素イオンの合計濃度を調整すればよい。よって、この分類では、個々の元素イオンを除去するために条件を変更する必要がない。
したがって、このように分類することで、RF電解液を効率的に製造することができる。この際、白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下のRF電解液において、白金族元素イオンが、次の(a)および(b)の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
(a)9族元素イオンの合計濃度が2質量ppm以下
(b)10族元素イオンの合計濃度が2質量ppm以下
これにより、RF電池における水素の発生を効果的に抑制できるからである。
更に、後述する析出物の発生に関与する不純物元素イオンと白金族元素イオンとを合わせた群を9族、10族、それ以外の族とに分類した場合には、上述の(a)合計濃度が4質量ppm以下、および(b)合計濃度が7質量ppm以下の少なくとも一方を満たすと、水素の発生に加えて、析出物の発生をも抑制できる。
〔その他〕
RF電解液の活物質をバナジウムとし、溶媒を硫酸とする場合においては、Vイオンの濃度を1mol/L以上3mol/L以下、フリーの硫酸の濃度を1mol/L以上4mol/L以下、リン酸の濃度を1.0×10−4mol/L以上7.1×10−1mol/L以下、アンモニウム(NH)の濃度を20質量ppm以下、ケイ素(Si)の濃度を40質量ppm以下とすることが好ましい。
Vイオン濃度とフリーの硫酸の濃度とを上記の特定の範囲とすることで、RF電解液の平均価数はおよそ3.3以上3.7以下となる。このような平均価数のRF電解液は、正極側の電解液としても負極側の電解液としても各価数のVイオン濃度のバランスが良い。そのため、このような平均価数のRF電解液を用いてRF電池を構成した場合、RF電池の容量を非常に高くすることができる。また、リン酸の濃度を上記の特定の範囲とし、NHの濃度を上記の特定の濃度以下とすることで、電池反応の際に析出する析出物(例えば、アンモニウム−バナジウム化合物)の析出を抑制することができる。さらに、Siは隔膜に悪影響を与えうるので、上記の特定の濃度以下とすることで、この悪影響を抑制することができる。
(タンクおよび配管)
正極用タンク106、負極用タンク107、および配管108〜111は、上記RF電解液が接触する部材である。そのため、これらの部材(106〜111)に電池反応の際に析出物の発生に関与する不純物元素イオンや、白金族元素イオンが含有されていたり付着したりしているおそれがある。この場合、RF電池1の運転に伴いRF電解液における上記不純物元素イオンや白金族元素イオンの含有量が上昇する可能性がある。そこで、これらの部材(106〜111)の構成材料には、上記不純物元素イオンや白金族元素イオンを含まない材料を用いることが好ましい。また、これらの部材(106〜111)の製造工程において、上記不純物元素イオンや白金族元素イオンを含まないもの(例えば、部材を作製する金型の離型剤に上記不純物元素イオンや白金族元素イオンを含まないもの)を用いることが好ましい。例えば、部材(106〜111)の構成材料には、密度(ASTM D 1505)が0.080g/cm以上0.960g/cm以下の範囲内にあり、メルトフローレート(ASTM D 1238,測定条件:190℃、荷重2.16kg)が0.01g/10分以上20g/10分以下の範囲内にあるエチレン単独重合体、あるいは上記の範囲の密度とメルトフローレートのエチレン・αオレイン共重合体などが挙げられる。なお、RF電解液を輸送する輸送タンクにおいても、上記部材(106〜111)と同様のことが言える。
<試験例1>
試験例1では、実際の運用に供するRF電池を想定して充放電試験を行なった。まず、電極面積が500cmの炭素フェルト製の正極電極と負極電極とを用意した。両電極の合計質量は約35gであった。また、RF電解液として、不純物元素イオンの濃度が異なる3種類のRF電解液を用意し、それぞれのRF電解液を用いて3種類の2時間容量のRF電池を作製した。用意したRF電解液は、下記の共通基本構成を備える。
(共通基本構成)
・Vイオンの濃度:1.7mol/L
・Vイオンの平均価数:3.5
・フリーの硫酸の濃度:2.0mol/L
・リン酸の濃度:0.14mol/L
・ケイ素の濃度:40質量ppm以下
・アンモニウムの濃度:20質量ppm以下
本試験例に用いた各RF電解液の、不純物元素イオンの濃度を表1に示す。表1中の数値は、濃度(質量ppm)を表す。不純物元素イオンの濃度の調整は、必要に応じてキレート樹脂を充填したカラムに各RF電解液を通液させることで行った。また、不純物元素イオンの測定は、Clイオンの測定をイオンクロマトグラフィーシステム(日本ダイオネクス(株)製、ICS−1500)、NaイオンおよびKイオンの測定を偏光ゼーマン原子吸光分光光度計((株)日立ハイテクフィールディング製、Z−6100)、これら以外の不純物元素イオンの測定をICP発光分析装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)又はICP質量分析装置(Agilent Technologies. Inc.製、Agilent 7700 ICP−MS)を用いて行った。
Figure 0005590512
各RF電池に対して、20サイクルの充放電試験を行ない、析出物の発生および電池抵抗(セル抵抗)の増加、並びに水素の発生が認められるかを調べた。析出物の発生は目視にて観察し、水素の発生は可燃性ガス検知器(新コスモス電機(株)製、XP−311A)にて検出した。セル抵抗は、充放電中の平均電圧及び平均電流を求め、セル抵抗=平均電圧/平均電流とした。そして、第1サイクルのセル抵抗と、最終サイクルのセル抵抗とを比較し、セル抵抗が増加したかを調べた。充放電条件は次のとおりである。
(充放電条件)
充放電方法 :定電流
電流密度 :70(mA/cm
充電終了電圧:1.55(V)
放電終了電圧:1.00(V)
温度 :25℃
表1に示すように、この試験からは、不純物元素イオンの合計濃度が190質量ppm以下である試験例1−1、および、試験例1−2では、水素の発生が検出されず、析出物の発生およびセル抵抗の増加も認められなかった。一方、不純物元素イオンの合計濃度が250質量ppmを超えるRF電解液を用いた試験例1−3のRF電解液は、負極における水素の発生が検出され、正極における析出物の発生およびセル抵抗の増加も認められた。以上のことから、不純物元素イオンの多寡が水素の発生および析出物の発生に関与することが判った。
<試験例2>
試験例1の結果から、各不純物元素イオンのうち、水素の発生を促進するものを特定するために、不純物元素イオンを金属元素と非金属元素とに分類した。さらに、金属元素を重金属元素と軽金属元素とに、重金属元素とそれ以外とに分類した。そして、各分類の元素イオンの合計濃度が異なる複数の電解液を用意し、いずれの分類が水素の発生を促進するかを検討した。本試験例に用いた各RF電解液の不純物元素イオンの濃度を表2から表4に示す。各表中の数値は、濃度(質量ppm)を表す。なお、不純物元素イオンの濃度の調整方法、および、充放電条件は試験例1と同様である。
Figure 0005590512
Figure 0005590512
Figure 0005590512
表2から表4に示すように、この試験からは、不純物元素イオンを上記のように分類した場合において、白金族元素イオンは水素の発生に、それ以外の不純物元素イオンは析出物の発生にそれぞれ関与することが判った。
更に、表1から表4より、以下のことが分かる。
・白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下であれば、水素の発生を抑制できる。
・析出物の発生に関与する不純物元素イオンの合計濃度が220質量ppm以下であると、析出物の発生を抑制できる。
・析出物の発生に関与する不純物元素イオンのうち、金属元素イオンの合計濃度は195質量ppm以下が好ましい(例えば、試験例2−4など参照)。
・析出物の発生に関与する不純物元素イオンのうち、非金属元素イオンの合計濃度は21質量ppm以下が好ましい(例えば、試験例1−2など参照)。
・析出物の発生に関与する不純物元素イオンのうち、重金属元素イオンの合計濃度は85質量ppm以下が好ましい(例えば、試験例1−2と試験例1−3とを比較参照)。
・析出物の発生に関与する不純物元素イオンのうち、軽金属元素イオンの合計濃度は120質量ppm以下が好ましい(例えば、試験例1−2と試験例1−3とを比較参照)。
・析出物の発生に関与する不純物元素イオンのうち、重金属元素イオンの合計濃度は85質量ppm以下、かつ、軽金属元素イオンの合計濃度は120質量ppm以下が好ましい(例えば、試験例2−2を参照)。
・不純物元素イオンのそれぞれをみた場合、以下が好ましい(例えば、表1参照。
(1)Rhイオン:1質量ppm以下、(2)Pdイオン:1質量ppm以下、(3)Irイオン:1質量ppm以下、(4)Ptイオン:1質量ppm以下(5)Crイオン:10質量ppm以下、(6)Mnイオン:1質量ppm以下、(7)Feイオン:40質量ppm以下、(8)Coイオン:2質量ppm以下、(9)Niイオン:5質量ppm以下、(10)Cuイオン:1質量ppm以下、(11)Znイオン:1質量ppm以下、(12)Moイオン:20質量ppm以下、(13)Sbイオン:1質量ppm以下、(14)Naイオン:30質量ppm以下、(15)Mgイオン:20質量ppm以下、(16)Alイオン:15質量ppm以下、(17)Kイオン:20質量ppm以下、(18)Caイオン:30質量ppm以下、(19)Clイオン:20質量ppm以下、(20)Asイオン:1質量ppm以下
次に、析出物の発生に関与する不純物元素イオンと、白金族元素イオンとを合わせた群に含まれる元素イオンを、9族元素イオンと、10族元素イオンと、他族の元素イオンとに分類した場合についての結果を表5に示す。
Figure 0005590512
表5に示すように、白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下であると、水素の発生を抑制でき、更に不純物元素イオンの合計が224.5質量ppm以下であれば、水素の発生、および、析出物の発生を抑制できることが判る。白金族元素イオンを9族元素イオンと、10族元素イオンと、他族の元素イオンとに分類した際に、9族元素イオンの合計濃度が2質量ppm以下、および10族元素イオンの合計濃度が2質量ppm以下の少なくとも一方をとりうる。また、不純物元素イオンを、9族元素イオンと、10族元素イオンと、他族の元素イオンとに分類した際に、9族元素イオンの合計濃度が4質量ppm以下、10族元素イオンの合計濃度が7質量ppm以下、他族の元素イオンの合計濃度が190質量ppm以下の少なくとも1つを満たす範囲をとりうる。
以上の説明に関して、さらに以下の各項を開示する。
(付記1)
白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下のRF電解液において、白金族元素イオンが、次の(a)および(b)の少なくとも一方を満たすレドックスフロー電池用電解液。
(a)9族元素イオンの合計濃度が2質量ppm以下
(b)10族元素イオンの合計濃度が2質量ppm以下
(付記2)
電池反応の際に析出物の発生に関与する不純物元素イオンの合計濃度が220質量ppm以下であり、かつ、白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下であり、
析出物の発生に関与する不純物元素イオンと、白金族元素イオンとを合わせた群に含まれる元素イオンを、9族に属する元素イオンと、10族に属する元素イオンと、9族に属する元素イオンおよび10族に属する元素イオン以外の元素イオンとに分類した場合に、下記(c)から(e)の少なくとも1つを満たすレドックスフロー電池用電解液。
(c)9族に属する元素イオンの合計濃度が4質量ppm以下
(d)10族に属する元素イオンの合計濃度が7質量ppm以下
(e)9族に属する元素イオンおよび10族に属する元素イオン以外の元素イオンの合計濃度が190質量ppm以下
本発明のレドックスフロー電池用電解液は、レドックスフロー電池といった二次電池の電解液として好適に利用することができる。また、本発明のレドックスフロー電池は、負荷平準用途や瞬低・停電対策用の電池として好適に利用することができる。
1 レドックスフロー電池(RF電池)
100 電池セル
101 隔膜 102 正極セル 103 負極セル
104 正極電極 105 負極電極
106 正極用タンク 107 負極用タンク
108〜111 配管
112,113 ポンプ

Claims (5)

  1. 活物質としてバナジウムイオンを含み、
    白金族元素イオンの合計濃度が4.5質量ppm以下であるレドックスフロー電池用電解液。
  2. 前記白金族元素イオンの濃度が、下記(1)から(3)の少なくとも一つを満たす請求項1に記載のレドックスフロー電池用電解液。
    (1)ロジウムイオンの濃度が1質量ppm以下
    (2)パラジウムイオンの濃度が1質量ppm以下
    (3)イリジウムイオンの濃度が1質量ppm以下
  3. 前記白金族元素イオンの濃度が、下記(4)を満たす請求項1又は請求項2に記載のレドックスフロー電池用電解液。
    (4)白金イオンの濃度が1質量ppm以下
  4. 前記バナジウムイオンの濃度が1mol/L以上3mol/L以下、フリーの硫酸の濃度が1mol/L以上4mol/L以下、リン酸の濃度が1.0×10−4mol/L以上7.1×10−1mol/L以下、アンモニウムの濃度が20質量ppm以下、ケイ素の濃度が40質量ppm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池用電解液。
  5. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池用電解液を備えるレドックスフロー電池。
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