JP5590339B2 - 窒化処理方法 - Google Patents

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本発明は、例えば医療用メス、剃刀、包丁等の刃物の刃部に電子ビーム励起プラズマによる窒化処理を施し、刃部表面に薄状硬化層を形成して耐久性を向上させることができる窒化処理方法に関する。
従来のプラズマ窒化処理方法においては、鋼鉄製の被処理物を陰極として気体放電を発生させ、それによって生成されたプラズマ中のイオンが被処理物へ衝突するエネルギーにより処理温度を制御することによって、被処理物表面から100μm以上の厚さの硬化層が形成される。このとき、被処理物の最表面には、数μmの厚さの鉄窒素化合物の層が形成される。
この種の窒化処理方法が例えば特許文献1に記載されている。この窒化処理方法は、ガス供給口から窒素ガスと水素ガスを含む反応ガスを供給し、放電プラズマから引き出して加速した電子ビームにより反応ガスをプラズマ化して被窒化処理物としての鉄鋼材料に作用させるものである。この窒化処理方法により、被窒化処理物表面には窒素化合物層を介してその内部に窒素拡散層が形成される。
特開2002−356764号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載された従来構成においては、窒素ガスのほかに水素ガスが含まれた反応ガスが使用されている。この水素ガスの存在により、被窒化処理物表面に窒素化合物の層が形成される。この窒素化合物の層はセラミック質のものであって、硬度は高くなる一方脆くなるという性質を有することから、靭性が低下するとともに、耐摩耗性が低下するという問題があった。
さらに、窒素拡散層は被窒化処理物の表面より例えば20〜70μmという深さまで形成されることから、硬化層が厚くなり過ぎる傾向があり、被窒化処理物自体が持つ靭性等の特性が損なわれ、耐久性に欠けるおそれがあるという問題があった。従って、例えば被窒化処理物が刃物である場合には、その刃部で切断を繰り返すことによって次第に切れ味が悪くなり、その寿命が短くなるという結果を招く。
本発明はそのような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであって、その目的とするところは、被窒化処理物が持つ靭性等の特性を維持しつつ、表面の硬度を高めることができるとともに、耐久性を向上させることができる窒化処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の窒化処理方法は、被窒化処理物として刃物用ステンレス鋼の表面に窒素プラズマを照射して窒化処理を行い、窒素原子の拡散層を形成する窒化処理方法であって、不活性ガスのプラズマから電子ビームを引き出し、該電子ビームにより窒素ガスから窒素プラズマを生成させ、窒化処理の温度を350〜500℃、窒化処理の時間を2〜6時間の条件下に該窒素プラズマにより被窒化処理物の表面から内部へ窒素原子を拡散させ、厚さが10μm以下の窒素原子の拡散層を形成し、該拡散層中の窒素の濃度を0.16質量%以下にすることを特徴とする。
請求項に記載の発明の窒化処理方法は、請求項1に係る発明において、前記窒素プラズマによる窒化処理において、被窒化処理物に印加されるバイアス電圧は−50V〜−5Vであることを特徴とする。
請求項に記載の発明の窒化処理方法は、請求項1又は請求項に係る発明において、前記不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とする。
請求項に記載の発明の窒化処理方法は、請求項1から請求項のいずれか一項に係る発明において、前記窒素プラズマによる窒化処理は減圧下に行われることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の窒化処理方法においては、不活性ガスのプラズマから電子ビームを引き出し、該電子ビームにより窒素ガスから窒素プラズマを生成させ、該窒素プラズマにより被窒化処理物の表面から内部へ窒素原子を拡散させる。そして、被窒化処理物の表面には、厚さが10μm以下の窒素原子の拡散層が形成される。このように、被窒化処理物の表面には窒素の化合物層が形成されることなく、窒素原子の薄い拡散層が形成される。このため、被窒化処理物の表面に薄状の硬化層が形成されるとともに、その内部には被窒化処理物自体が存在し、その特性が発現される。
よって、本発明の刃物の窒化処理方法によれば、被窒化処理物が持つ靭性等の特性を維持しつつ、表面の硬度を高めることができるとともに、耐久性を向上させることができるという効果を発揮することができる。
本発明の一実施形態における窒化処理装置を模式的に示す概略断面図。 表面からの深さと窒素濃度との関係を示すグラフ。 切断回数と切断された枚数との関係を示すグラフ。 摩耗距離と摩擦係数との関係を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。
まず、本実施形態の窒化処理方法を実施するための窒化処理装置について説明する。
図1に示すように、窒化処理装置10を構成する装置本体11は電気的に絶縁性を有する真空容器で形成され、該装置本体11内の一端側にはアルゴンプラズマの放電室12が設けられるとともに、他端側には窒素プラズマが形成される窒化処理室13が設けられている。前記放電室12には不活性ガス供給口14が開口され、放電室12内に不活性ガスが導入されるようになっている。不活性ガスとしては通常アルゴン(Ar)が使用されるが、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)等を使用することも可能である。
一方、窒化処理室13には窒素ガス供給口15が開口され、窒化処理室13内に窒素ガスを導入して窒素プラズマを形成するようになっている。この窒化処理室13内の中央部には被窒化処理物16を支持する支持体17が配設され、該支持体17に支持された被窒化処理物16を窒素プラズマにより窒化処理するように構成されている。被窒化処理物16としては、医療用メス、剃刀、包丁等の刃物が挙げられる。この被窒化処理物16の材質としては、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。ステンレス鋼としては、SUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼などが用いられる。
また、窒化処理室13には真空用排気口18が開口され、窒化処理室13内を真空状態に設定するようになっている。不活性ガスや窒素ガスを供給しないときには、窒化処理室13内の圧力は5×10−4Pa以下であることが好ましい。この圧力を上回る場合には、窒化処理室13内の真空度が不足して窒化処理室13内に空気(酸素)が存在するおそれがあり、被窒化処理物16表面に酸化物の層が形成されたりして好ましくない。窒化処理時の窒化処理室13内の圧力は、真空用排気口18から排気されつつ窒素ガス供給口15から窒素が供給された状態で、0.1〜0.5Paであることが好ましい。この圧力が0.1Paを下回る場合には、窒素ガスの供給量を抑制しなければならず、窒素プラズマの密度(濃度)が低下して好ましくない。一方、0.5Paを上回る場合には、窒化処理室13内のプラズマ密度が高くなり過ぎるため、被窒化処理物16表面に窒化物の層が形成されたりして好ましくない。
前記被窒化処理物16には支持体17を介してバイアス電圧が印加されるが、そのバイアス電圧は被窒化処理物16に衝突するイオンのエネルギーを低くし、例えば被窒化処理物16としての刃物の刃先を変形させないようにするために−50V〜−5Vであることが好ましい。このバイアス電圧が−50Vより低いときには、被窒化処理物16に衝突するイオンのエネルギーが高くなり、刃物の刃先が変形するおそれがある。一方、−5Vより高いときには、被窒化処理物16に対する窒化処理が不十分になる。なお、装置本体11の外部には図示しない外部ヒータが配設され、装置本体11の内部を所定温度に設定できるようになっている。
前記放電室12内の端部にはカソード19が配置されるとともに、そのカソード19に対向するように予備アノード20が配置され、カソード19と予備アノード20との間に放電形成領域が形成され、その放電形成領域で放電を生じさせて不活性ガスのプラズマとして例えばアルゴンプラズマ21を発生させるようになっている。予備アノード20の中心部には通過孔20aが貫通形成され、アルゴンプラズマ21が通過できるようになっている。予備アノード20より窒化処理室13側にはアノード22と加速電極23が併設され、放電室12で生成したアルゴンプラズマ21が予備アノード20の通過孔20aを通って窒化処理室13側へ導かれるようになっている。なお、予備アノード20、アノード22及び加速電極23は互いに電気的に絶縁されている。
また、加速電極23により、アルゴンプラズマ21から電子のみを加速し、電子ビームを窒化処理室13に導くようになっている。そして、窒化処理室13内において、電子ビームが窒素ガス供給口15から供給された窒素ガスに照射され、窒素原子濃度の高い窒素プラズマ(電子ビーム励起プラズマ)24を得るようになっている。この窒素プラズマ24により、被窒化処理物16表面に厚さが10μm以下の窒素原子の拡散層を形成するようになっている。
この窒素原子の拡散層は、厚さが10μm以下の薄い層であって、厚さが通常1〜8μm程度である。この窒素原子の拡散層の厚さが10μmを超える場合には、拡散層が厚くなり過ぎて、その分被窒化処理物16自体のもつ靭性等の特性が発揮され難くなり、被窒化処理物16の耐久性が悪化する。
前記窒化処理の温度は、窒素プラズマ24により被窒化処理物16表面に窒素原子の拡散層を有効かつ迅速に形成するために350〜600℃であることが好ましく、350〜480℃であることがさらに好ましい。窒化処理の温度が350℃より低い場合には、被窒化処理物16表面に窒素原子の拡散層が十分に形成されず、被窒化処理物16表面の硬化が不十分になる傾向を示す。その一方、600℃より高い場合には、窒素原子の拡散層より表面側に硬く、脆い窒素化合物の層が形成されやすく、耐摩耗性等の特性が低下する。
また、窒化処理の時間は1〜8時間であることが好ましく、2〜6時間であることがさらに好ましい。窒化処理の時間が1時間より短時間の場合、窒素原子が被窒化処理物16表面から内部へ十分に拡散できず、被窒化処理物16表面の硬度を高めることが難しくなる。一方、8時間より長時間の場合、被窒化処理物16表面に窒素化合物の層が形成され、耐摩耗性等の特性が低下しやすい傾向を示す。
前記窒化処理の温度と時間を適宜組合せて制御することにより、窒化処理によって形成される窒素原子の拡散層を10μm以下の薄い層に形成することができる。例えば、被窒化処理物16としてのステンレス鋼に窒化処理を施す場合、窒化処理の温度を400〜450℃とし、窒化処理の時間を4〜5時間に設定することにより、ステンレス鋼表面に厚さ1〜8μm程度の窒素原子の拡散層を形成することができる。
次に、上記のような窒化処理装置10を用いた窒化処理方法を作用とともに説明する。
さて、図1に示すように、被窒化処理物16として例えばステンレス鋼製の刃物を図1に示す窒化処理装置10の窒化処理室13内の支持体17上に設置した後、窒化処理温度付近まで図示しない外部ヒータで加熱する。次いで、放電室12に不活性ガス供給口14からアルゴンガスを供給し、カソード19と予備アノード20との間で放電させ、アルゴンプラズマ21を発生させる。その後、カソード19とアノード22との間に放電を移行し、アルゴンプラズマ21を予備アノード20の通過孔20aからアノード22側へ導く。
そして、このアルゴンプラズマ21から、加速電極23によって電子のみを加速して電子ビームを形成し、その電子ビームを窒化処理室13へ引き出す。該電子ビームは、加速電極23の電圧等によりエネルギーが制御されるとともに、加速され、窒素ガス供給口15から窒化処理室13内に導入された窒素ガスを解離及び電離し、窒化処理室13内に窒素原子濃度の高い窒素プラズマ24を生成する。この窒素プラズマ24中に、被窒化処理物16を所定の温度及び所定の時間置くことにより、被窒化処理物16表面から内部へ窒素原子が拡散し、窒素原子の10μm以下という薄い拡散層が形成される。このとき、窒化処理室13には水素ガスは供給されないため、硬くて脆い窒素化合物の層は形成されない。
窒化処理後、外部ヒータと窒素プラズマ24を停止して自然空冷を行い、室温程度まで冷却してから被窒化処理物16を装置本体11内から取り出す。このようにして、刃物の特に刃部に窒化処理が施される。
以上詳述した実施形態により発揮される効果を以下にまとめて説明する。
(1)本実施形態の窒化処理方法においては、アルゴンプラズマ21から電子ビームを引き出し、該電子ビームにより窒素ガスから窒素プラズマ24を生成させ、該窒素プラズマ24により被窒化処理物16の表面から内部へ窒素原子を拡散させることにより、厚さが10μm以下の窒素原子の拡散層が形成される。このように、被窒化処理物16の表面には窒素の化合物層が形成されることなく、窒素原子の薄い拡散層が形成される。そのため、被窒化処理物16の表面に薄状の硬化層が形成されるとともに、その内部には被窒化処理物16自体が存在し、その特性が発現される。
従って、本実施形態の窒化処理方法によれば、被窒化処理物16が持つ靭性等の特性を維持しつつ、表面の硬度を高めることができるとともに、耐久性を向上させることができるという効果を発揮することができる。
(2)前記窒素プラズマ24による窒化処理の温度は好ましくは350〜600℃、さらに好ましくは350〜480℃である。このため、窒素プラズマ24により被窒化処理物16表面から内部への窒素原子の拡散を促進させることができる。
(3)前記窒素プラズマ24による窒化処理の時間は、好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは2〜6時間である。そのため、窒化処理を十分に行うことができ、被窒化処理物16の表面に所望とする窒素原子の薄い拡散層を形成することができる。
(4)前記被窒化処理物16に印加されるバイアス電圧は−50V〜−5Vである。従って、被窒化処理物16に衝突するイオンのエネルギーを低くすることができ、被窒化処理物16として例えば刃物の刃部の変形を抑制することができる。
(5)前記不活性ガスはアルゴンガスであることにより、窒素以外の不活性ガスとして好適に使用することができ、放電によりアルゴンプラズマ21を速やかに生成することができる。
(6)前記窒素プラズマ24による窒化処理は減圧下に行われる。このため、窒化処理室13内に窒素ガスを導入しつつ、被窒化処理物16に対する窒化処理を有効かつ円滑に行うことができる。
(7)前記被窒化処理物16はステンレス鋼で形成された刃物である。この場合、刃物の特に刃部において靭性を損なうことなく、硬度を高め、耐久性を向上させることができ、切れ味の低下を防止することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜3及び比較例1、2)
前記図1に示した窒化処理装置10を使用し、被窒化処理物16として刃物用特殊鋼(SUS420J2)を用い、窒化処理を行った。すなわち、窒化処理は、まず被窒化処理物16を窒化処理装置10の窒化処理室13内における支持体17上に設置した後、窒化処理温度付近まで図示しない外部ヒータで加熱した。次いで、窒素プラズマ24を発生させるために、放電形成領域に不活性ガス供給口14からアルゴンガスを導入し、カソード19と予備アノード20との間で放電を発生させ、アルゴンプラズマ21を生成させた。その後、カソード19とアノード22との間に放電を移行し、アルゴンプラズマ21を窒化処理室13側へ導いた。
このアルゴンプラズマ21から加速電極23によって電子のみを加速し、電子ビームを形成して窒化処理室13へ引き出した。該加速電極23の電圧等によりエネルギーが制御され、加速された電子ビームは、窒化処理室13内に導入された窒素ガスを解離及び電離し、窒素原子濃度の高い窒素プラズマ24を生成する。この窒素プラズマ24中に、被窒化処理物16を所定の時間置くことで窒化処理を行った。窒化処理後、外部ヒータと窒素プラズマ24を停止して自然空冷を行い、室温程度まで冷却してから窒化処理物を装置本体11から取り出した。
そして、前記窒化処理の時間を4.5時間で一定とし、窒化処理の温度を430℃(実施例1)、350℃(実施例2)、500℃(実施例3)及び300℃(比較例1)に変化させて窒化処理を行った。刃物用特殊鋼の表面からの深さ(μm)に対する窒素の拡散濃度(質量%)の結果を図2に示した。なお、窒化処理を行わない未処理の場合(比較例2)についても図2に示した。
この図2に示すように、実施例1〜3においては、いずれも窒素の拡散深さが10μm以下に抑えられるとともに、窒素の濃度も0.16質量%以下に抑えられていた。従って、窒素プラズマ24を用いた窒化処理方法により、刃物用特殊鋼の表面の極薄い部分に窒化処理層を形成することができたものと考えられる。
次に、前記実施例1及び実施例3で得られた窒化処理後の刃物用特殊鋼について、刃物の切れ味の変化を試験した。なお、比較例2の窒化処理を行わない刃物用特殊鋼についても同様の試験を行った。この試験においては、被削材として新聞紙相当紙(ロール26kg)を用い、紙形状を長さ260mm、幅8mm及び厚み0.05mm/枚とし、紙束を400枚/束とし、温度294K、湿度20%の環境下で刃先に紙を750gの荷重で押し当てたまま刃物を15mm移動させた際に切断された紙の枚数を計数した。この切断回数を100回まで繰り返した。切断回数(回)と切断枚数(枚)との関係を図3に示した。
その図3に示したように、実施例1においては、試験開始直後の初期に切れ味の低下はなく、その後切断回数が増えると切れ味は低下する傾向があるが、切断回数が8回以降から切れ味が低下する比較例2と比べると大きな有意差があった。また、実施例3においては、切れ味が実施例1ほどではないが、比較例2に比べると維持されており、有意差があった。
さらに、窒化処理後の刃物用特殊鋼及び未処理の刃物用特殊鋼について、摩擦摩耗試験を行った。この摩擦摩耗試験では、潤滑剤を使用せず、室温下で100gのアルミナボール(直径4.7mm)を刃物用特殊鋼上に線速度33.5mm/秒で滑らせ、摩耗距離(m)に対する摩擦係数の変化を測定した。その結果を図4に示した。
図4に示したように、実施例1(窒化処理の温度が430℃)では摩擦係数の上昇が少なく、最も良い結果が得られた。実施例2(窒化処理の温度が350℃)では、摩耗距離が長くなると、摩擦係数が急に上昇する結果となった。これは、窒化処理の温度が実施例1に比べて低いことから、窒素原子の拡散層の形成が若干不足していることに起因していると考えられる。また、実施例3(窒化処理の温度が500℃)では、摩耗距離が短い時点で摩擦係数が上昇し、その後緩やかな上昇を示した。これは、窒素原子の拡散層より表面側に窒素と鉄の硬くて脆い化合物層が形成されているためと推測される。
一方、比較例1(窒化処理の温度が300℃)では、摩耗距離が短い段階で摩擦係数が上昇し、耐摩耗性が劣る結果を示した。窒化処理を行わなかった比較例2では、摩耗距離が極短い時点で摩擦係数が上昇し、耐摩耗性の向上は見られなかった。
なお、前記各実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 前記窒化処理装置10において、予備アノード20を省略して構成を簡略化することも可能である。
・ 前記窒化処理装置10における支持体17を、被窒化処理物16の表面が電子ビームに対向するように構成したりして、その位置や方向を適宜変更することができる。
・ 前記窒化処理室13において、支持体17に支持された被窒化処理物16に窒素プラズマ24が十分に晒されるように、窒素ガス供給口15及び真空用排気口18の位置や大きさを変更することもできる。
16…被窒化処理物、24…窒素プラズマ。

Claims (4)

  1. 被窒化処理物として刃物用ステンレス鋼の表面に窒素プラズマを照射して窒化処理を行い、窒素原子の拡散層を形成する窒化処理方法であって、
    不活性ガスのプラズマから電子ビームを引き出し、該電子ビームにより窒素ガスから窒素プラズマを生成させ、窒化処理の温度を350〜500℃、窒化処理の時間を2〜6時間の条件下に該窒素プラズマにより被窒化処理物の表面から内部へ窒素原子を拡散させ、厚さが10μm以下の窒素原子の拡散層を形成し、該拡散層中の窒素の濃度を0.16質量%以下にすることを特徴とする窒化処理方法。
  2. 前記窒素プラズマによる窒化処理において、被窒化処理物に印加されるバイアス電圧は−50V〜−5Vであることを特徴とする請求項1に記載の窒化処理方法。
  3. 前記不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化処理方法。
  4. 前記窒素プラズマによる窒化処理は減圧下に行われることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の窒化処理方法。
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