JP2006037152A - 硬質皮膜被覆部材の製造方法及びその製法による皮膜 - Google Patents

硬質皮膜被覆部材の製造方法及びその製法による皮膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 硬質皮膜の基体との密着性、耐酸化性、耐摩耗性に優れた硬質皮膜の特徴を保持した上で、耐溶着特性に優れ、高潤滑特性が付与された硬質皮膜を被覆した部材を提供することである。
【解決手段】 基体表面にTi、Cr、Alから選択される1種類以上の金属元素と、C、N、Oから選択される1種類以上の非金属元素とからなる硬質皮膜を被覆した部材において、該硬質皮膜はCl、S、P、B、Si、Fから選択される1種類以上の添加元素を含有し、該金属元素と該添加元素とは化学結合を有することを特徴とする硬質皮膜被覆部材と該添加元素をイオン注入法により添加する硬質皮膜被覆部材の製造方法及びその製法により製造される硬質皮膜被覆部材である。
【選択図】図1

Description

本願発明は、硬質皮膜を被覆した部材に関し、特に超硬合金、高速度鋼、ダイス鋼等を基体とし、これに被覆される硬質皮膜被覆工具に関するものである。
最近の切削加工分野においては、安定的に、無人で、安価に加工が行えることが重要な要件となる傾向にある。この様な背景から、硬質皮膜を被覆した工具では、硬質皮膜の密着性、硬度、耐熱特性を維持し、更に潤滑特性も向上させる事が、国際的なニーズに対応するために必要である。そこで、様々な研究成果の開示が行われている。この中で、硬質皮膜に各種イオンを注入する技術が特許文献1からに7開示されている。
特許文献1、2には、硬質皮膜の耐摩耗特性や耐酸化特性の向上のために、金属元素やハロゲン元素を注入する技術が開示されている。しかし、両者は、物理蒸着法(以下、PVD法と記す。)により形成した皮膜であるTiN、(TiAl)N皮膜表面にイオン注入することで、耐熱性の向上とイオン注入により発生する結晶格子歪から高硬度化を狙ったものである。ここでは、潤滑特性を向上させる技術の記載はない。
特許文献3には、硬質皮膜にClイオンを注入する技術が開示されている。しかし、Clは硬質皮膜中に化合物としてではなく、不安定な単独状態で存在するため、切削加工等、発熱を伴う使用環境下では、Clが抜けてしまい、十分な潤滑効果を得ることが出来ない。
特許文献4には、硬質皮膜にCイオンを注入する技術が開示されている。Cイオンの注入は低摩擦係数の材料が得られるが、硬質皮膜の耐熱性が低下するといった不具合がある。
特許文献5には、(TiAl)N、(TiAl)(CN)等の硬質皮膜にOイオンの注入する技術が開示されている。
また、別のアプローチにより硬質皮膜の耐酸化性、耐摩耗性をより向上させる技術の開示が行われている。特許文献6、7には、硬質皮膜に濃度分布を形成させる技術や、連続的に組成の変化する組成変化の繰り返し層を持った膜を形成することによって、耐摩耗性を向上させる技術が開示されている。しかし、切削工具の刃先に溶着が発生しやすい被削材の場合、耐溶着特性の改善が優先されるが、これに関する技術の開示はなされていない。
特開平7−331410号公報 特開平7−310170号公報 特開平11−302830号公報 特開平10−265944号公報 特開平11−1764号公報 特開2003−225807号公報 特許第3460288号公報
本発明の目的は、硬質皮膜の基体との密着性、耐酸化性、耐摩耗性に優れた硬質皮膜の特徴を保持した上で、耐溶着特性に優れ、高潤滑特性が付与された硬質皮膜を被覆した部材を提供することである。本発明の他の目的は、耐溶着性を抑制させ、硬質皮膜中への被削材元素の拡散を抑制し、切削加工の乾式化、高速化、高送り化に対応する著しく環境に配慮された硬質皮膜で被覆された工具を提供することである。
本願発明は、基体表面にTi、Cr、Alから選択される1種類以上の金属元素と、C、N、Oから選択される1種類以上の非金属元素とからなる硬質皮膜を被覆した部材において、該硬質皮膜はCl、S、P、B、Si、Fから選択される1種類以上の添加元素を含有し、該金属元素と該添加元素とは化学結合を有することを特徴とする硬質皮膜被覆部材の製造方法であり、その製法により製造した硬質皮膜被覆部材である。より好ましくは、該添加元素から選択される1種の元素が、該硬質皮膜の表面から膜厚方向に向かって濃度勾配をもつことを特徴とする硬質皮膜被覆部材である。本構成を採用することによって、硬質皮膜の潤滑特性が向上し、耐溶着特性にも優れた硬質皮膜被覆部材が得られる。
本発明の硬質皮膜の適用によって、最表面層は優れた潤滑特性を有し、耐溶着特性にも優れた硬質皮膜被覆部材が得られる。しかも、硬質皮膜の密着性、耐酸化性、耐摩耗を損なうことが無い。本発明の硬質皮膜を例えば、切削工具等に適用することにより、溶着が激しく発生する被加工物の切削加工、乾式の高能率な切削加工や金型の切削加工時に工具の安定性と長寿命が得られる。従って、切削加工における生産性の向上に極めて有効である。
本願発明の最表面の硬質皮膜は、該金属元素と該添加元素とが化学結合を有することが必要であり、これにより、添加元素は熱の影響を受けずに硬質皮膜中に残存する。切削加工によって発生する高温状態においても、添加元素による耐溶着効果、内向拡散保護膜として作用や潤滑効果などを享受できるのである。
例えば、組成元素として(TiAlSi)Nからなる硬質皮膜について、金属元素と添加元素との化学結合の有無を比較する。
第1に、金属元素との化学結合が有の状態として、(TiAl)Nに添加元素の1種であるSiをイオン注入により添加した場合は、主にTi−Si結合が得られる。この皮膜は、大気中の高温状態において酸化の生成自由エネルギーの差から、皮膜表面にSi−O系の酸化保護膜が形成される。
第2に、金属元素との化学結合が無しの状態として、TiAlSiターゲットを用いて、アークイオンプレーティング(以下、AIPと記す。)法やスパッタリング法を採用し被覆を行った場合、この皮膜はSi元素そのものが優先的にまたは選択的に酸化され、十分に効果的な潤滑特性を示さない。従って、潤滑特性をもつ保護膜を形成させるためには、添加元素が硬質膜中の金属元素との結合をもち、その中で自由生成エネルギーの差により、硬質皮膜表面上に酸化保護膜を形成させることが必要である。AIP法やスパッタリング法の場合、硬質皮膜中でSiとNの結合が存在することにより、高い残留圧縮応力を示し、硬質皮膜の表層付近における貝殻上の破壊が発生しやすい。
第3に、硬質皮膜中に該添加元素が化学結合を有さず、化合物を形成しない状態で添加元素が硬質皮膜中に残存するだけ場合には、高温状態となると、添加元素が硬質皮膜の外に放出されてしまう。これと同時に、酸素が皮膜内に内向拡散しやすい状態となる。このような現象から、例えば切削加工において、使用初期に耐溶着効果は得られても、長時間の使用においては、十分な効果が得られない。これは例えば、プラズマ化学蒸着(以下、プラズマCVDと記す。)法などによる硬質皮膜の被覆において、Cl元素が皮膜内に残存する様な場合に相当する。プラズマCVD法によって得られる硬質皮膜は、成膜時に使用されるCl化合物等の反応ガス成分が硬質皮膜中に残存し、硬度は上昇するものの靭性が著しく劣化する傾向を示す。
本願発明で、Cl、S、P、Fを添加元素として採用する理由は、例えば鋼を被削材とする切削加工において、切削熱により被削材成分のFeと化学反応を生じる元素だからである。例えば、Fe−Clの化学結合を有する脆性材料を形成して、その結果工具刃先近傍への溶着を抑制する効果がある。B、Siを添加元素として採用する理由は、大気中300度以上の高温下において酸化されやすく、形成したB−Oの化学結合やSi−Oの化学結合を有する材料は硬質皮膜表面を覆い保護膜として作用するからである。従って、被削材成分が硬質皮膜内へ内向拡散するのを抑制する効果がある。
本発明の硬質皮膜被覆部材において、添加元素はイオン注入法によって添加されることが好ましい。その理由は、添加元素に高エネルギーを与えることが可能である事と、選択した添加元素の原子量を配慮した印加電圧の設定によって、硬質皮膜内の所定の領域に添加元素の注入が可能となるからである。例えば、AIP法によって硬質皮膜を得た後、基体を加熱させながら、Cl元素を100keV程度の印加電圧によりイオン注入を行うことで、硬質皮膜被覆部材表面近傍の温度が上昇し、硬質皮膜表面近傍で、硬質皮膜中に含まれる金属元素と、イオン注入によって添加したCl元素との化学結合が得られる。イオン注入法は、イオンへの印加電圧を例えば通常のAIP法で印加する電圧の約1000倍以上ものエネルギーを与えることが可能である。この高エネルギーは添加元素と硬質皮膜中に含まれる金属元素との化学結合を形成するために好都合である。また選択した添加元素の原子量が軽元素の場合には、硬質皮膜の深部に注入され易いことから、印加電圧の制御可能な手段は有効である。更に、硬質皮膜中に所定の元素を注入する場合、イオンを加速させる印加電圧が大きくなりすぎると基体又は基体と硬質皮膜との界面へも到達可能となり、界面に歪が発生しその結果、硬質皮膜の剥離が発生しやすい状況になることから、これらを回避するこができる。
また、安全性の観点からもイオン注入法によって添加させることが望ましい。この理由は、第1にCl、F元素が高い腐食性を有する物質であることによる。従来の物理蒸着(以下、PVDと記す。)プロセス、CVDプロセスによって硬質皮膜中に添加元素を含有させる場合、高真空排気設備などを腐食させ、装置トラブルの原因となるからである。従って、PVDで得られる硬質皮膜は、既存被覆法が可能な設備で処理した後、別の装置でイオン注入を行うか、既存被覆法も可能なイオン注入設備で行うことが好ましい。CVDで得られる硬質皮膜の場合は、処理後に一度基体を取り出した上で別のイオン注入設備を用いて、所定の元素を注入させることが好ましい。第2に、Cl、F元素が高温処理過程によって昇華し易い材料であることによる。ターゲットを製作するにあたって、Cl、Fといったガス元素を塩化物、フッ化物としてターゲットに含有させることは困難であり、危険性も伴う作業である。
本発明の硬質皮膜被覆部材は、該添加元素から選択される1種の元素が、該硬質皮膜の表面から膜厚方向に向かって濃度勾配をもつことが好ましい。更に、この濃度勾配は、硬質皮膜表面から内部に向かって添加元素が減少する様に濃度勾配を制御することがより好ましい。この理由は、添加元素をより効果的に活用するためである。例えば、切削工具に適用した場合、硬質皮膜の表面近傍で添加元素の含有量が最大となる様にすることによって、切削加工における被削材との潤滑特性が得られ、耐溶溶着性が改善する効果がある。この濃度勾配は、オ−ジェ電子分光法(以下、AES法と記す。)により目的の組成を膜厚方向に分析することによって確認できる。本発明での分析条件は、加速電圧が10kV、試料電流が15mA、電子線プローブ径が0.1μm以下、エッチングにはアルゴンイオン銃を使用した。また、エッチング速度は、SiO2換算にして、14nm/分であった。また、基体との界面から表面に向かって0.1μm以内の範囲では添加元素は検出されない様に制御することは、更に好ましい形態である。ここで、硬質皮膜と基体との界面から表面に向かって0.1μm以内の範囲としたのは、本発明の硬質皮膜被覆部材を、量産設備を用いて安定的に提供するための制御限界値であると考えたからである。
AIP法で得られる(TiAl)Nの皮膜に、Clイオンをイオン注入法によって添加した場合、硬質皮膜の表面近傍にTi−Cl結合が形成され、切削など発熱を伴う使用環境下において、硬質皮膜を化学的に安定化させる効果を有する。このTi−Cl結合等の存在は、X線光電子分光法(以下、XPS法と記す。)によって解析することができる。分析条件は、分析領域をΦ100μmとし、X線源はAlKα、電子中和銃を使用した。硬質皮膜の表面近傍にTi−Cl結合が形成されると、硬質皮膜表面において300度位から酸化保護膜を形成し、Feなどの溶着や内向拡散を抑制し、耐溶着特性を向上させる効果を有する。更に、Clのもつ潤滑特性を併せ持つことが可能となる。このような事象はC添加についても同様の傾向である。
小型真空装置内に蒸発源が設置されたAIP装置を用いて、基体となる超硬合金製インサートに硬質皮膜を被覆した。蒸発源の金属成分は、Ti、Cr、Alから選択される1種類以上の金属元素とした。反応ガスには、N2ガス、CH4ガス、Ar/O2混合ガスより目的に応じて選択し、酸素や炭素が含まれる硬質皮膜も被覆を可能にした。被覆条件は、基体温度400度、バイアス電圧は、−40Vから−150Vの範囲の電圧を印加した。皮膜の膜厚は2〜5μmの範囲とした。次にイオン注入法を用いて、Cl、S、P、B、Si、Fから選択される添加元素を、硬質皮膜に添加した。イオン注入の条件は、イオン加速させる印加電圧を100keVとし、基体温度を200度に維持して行った。表1に、硬質皮膜の組成と添加元素との組み合わせを示す。
Figure 2006037152
得られた硬質皮膜をXPS法によって硬質皮膜の化学結合状態を解析した。図1は本発明例5について化学構造を解析した結果を示す。図1に示す様に、(Ti34Al66)(CN)皮膜に、イオン注入法を用いてCl元素を注入した本発明例5には、Ti−Cl結合が確認された。また、本発明例5における分析については、Al−Cl結合も確認される可能性が考えられるが、今回は確認されなかった。この理由としては、(TiAl)Nの結晶構造がfcc構造であるため、Ti−N結合が主体の結晶であり、そのためTiとClの結合が優先されたものと考えられた。逆に多量のAlを含有させたときに得られるhcp構造の(TiAl)Nの場合は、Al−N結合が主体の結晶になるため、Al−Cl結合が形成される可能性が考えられるが、硬質皮膜そのものの硬度が低下してしまう。(TiAl)Nの場合、Al含有量が70原子%を越えるとhcp構造となり好ましくない。
図2に示す様に比較例20の化学構造を解析した結果、Cl元素は化合物を形成せず単独で存在していることが確認された。また、図3は本発明例5を対象に各種元素の濃度勾配を、AES法により解析した結果を示す。図3より本発明例5の皮膜を表面から膜厚方向に向かって解析した結果、Cl元素の含有量は表面近傍で最も多く5原子%程度であった。Cl添加元素の濃度勾配は表面から膜厚方向に向かって減少し、400nm手前で濃度は0となっていることから、Cl添加元素は基体との界面から表面に向かって0.1μm以内の範囲では検出されないことを確認した。
得られた硬質皮膜被覆インサートは、以下に示す切削条件により切削試験を行った。評価方法は、刃先の欠損又は摩耗等により工具が切削不能となるまで加工を行い、使用不能になったときの切削距離を工具寿命とした。表1に切削試験の結果を併記した。
(切削条件)
切削工具:正面フライス
インサート形状:SDE53タイプ形状
切削方法:センターカット方式
被削材形状:巾100mm×長さ250mm
被削材:SKD61、硬さHRC45、ダイカスト金型用鋼種
切り込み量:2.0mm
切削速度:100m/min
1刃送り量:1.0mm/刃
切削油:なし
表1より、本発明例は、硬質皮膜種並びに硬質皮膜中に添加される元素によって性能差は生じるものの、硬質皮膜の高い潤滑特性が要求される鋼種の加工においては、その効果を十分に発揮することを確認した。本発明例2、5、8、12、14は、切削初期から欠損時まで、インサート刃先部における溶着現象がほとんど発生せず、正常な摩耗状態で推移し寿命に至った。特に、本発明例2は、(TiAl)N皮膜の硬度や潤滑特性を改善させるためにCを添加し、更に潤滑特性を向上させるためにSをイオン注入法により添加し、Ti−S結合の存在が確認されたものである。潤滑特性が要求される今回の評価条件において、添加したCやSが相乗効果を発揮し、高い工具寿命を得ることができた。硬質皮膜中に添加した元素のうち、ClやS添加を行ったものについては特に良好な傾向を示した。本発明例5は、切削加工前の硬質皮膜表面についてTi−Cl結合の存在が確認されたもので、硬質皮膜組成のCとTi−Cl結合との相乗効果によって、最も良い結果を示した。また、Cl濃度は表面から皮膜内部に向かって減少していた。この様に工具の高寿命化を図るための硬質皮膜設計が重要である。他の本発明例についても、イオン注入法により硬質皮膜中にClやS添加を行ったものについては良好な傾向を示した。本発明例4、6に示したF添加皮膜は、皮膜の硬度が若干低下する傾向にあり、本発明例の中では、比較的低い性能であったが、溶着に関しては十分な効果が確認された。耐溶着性を示す傾向は本発明例10のP添加皮膜でも確認された。この結果より、溶着が激しく発生する被削材の加工については、従来技術にある様な硬質皮膜の硬度を上げ、耐摩耗性を重視した検討だけでは満足のいく性能が得られないことが判る。本発明例8、9、12、13、14、15のように、B、Si、Cl元素を添加した場合、添加後の硬質皮膜に存在する化学結合によっては、硬質皮膜の潤滑特性が著しく向上し、良好な切削結果を示した。例えば、本発明例8、9に示したAl含有量が異なる場合、Al量が比較的少ない試料の方が好結果をもたらす傾向が確認された。本発明例8はBを添加した場合である。本発明例8は、切削初期段階の切削長1mの所で一時試験を中断し、硬質皮膜表面の化学構造をXPS法により調査した。その結果を図4に示す。図4より、B−O結合の存在が確認された。これは、硬質皮膜に添加したBが、切削初期の状態で潤滑特性を有する酸化物を形成し、保護膜として機能する事によって耐溶着特性を向上させる効果を示した事例である。このように、硬質皮膜への添加元素が切削加工時の発熱によって酸素との化学結合を形成し、硬質皮膜の潤滑特性を向上させる傾向は、Siについても同様であった。
添加元素の無い従来例35に対して、他の従来例や比較例は添加元素の効果が多少確認された。しかし、従来例や比較例の硬質皮膜中には化学結合が存在しないため、硬質皮膜の種類により多少の差異は認められるものの、被覆インサートは切削加工初期における欠損もしくは、溶着が激しく満足のいくような評価結果は得られなかった。比較例20は、切削試験前でのClの化学状態が化合物を形成せず、単独で存在している場合である。加工の初期はClの潤滑効果を示すものの、長時間持続するまでには至らなかった。比較例18、19や22、23、従来例32のように添加元素の金属成分が化合物を形成せず単独で存在する場合、添加される金属の影響で硬質皮膜の靭性は多少向上しているものの、潤滑特性は持続せず、逆に劣化する傾向にあった。例えば、比較例18、19に示したような硬質皮膜中のAl含有量が異なった場合、Al含有量が少ない方が切削寿命は長かった。これは、Al添加量が多くなると硬質皮膜硬度低下を起こすことに加え、潤滑特性が失われるからである。このような傾向は、試料番号29、30でも確認された。
図1は、本発明例5のXPS分析結果を示す。 図2は、比較例20のXPS分析結果を示す。 図3は、本発明例5のAES分析結果を示す。 図4は、本発明例8のXPS分析結果を示す。

Claims (3)

  1. 基体表面にTi、Cr、Alから選択される1種類以上の金属元素と、C、N、Oから選択される1種類以上の非金属元素とからなる硬質皮膜を被覆した部材において、該硬質皮膜はCl、S、P、B、Si、Fから選択される1種類以上の添加元素を含有し、該金属元素と該添加元素とは化学結合を有することを特徴とする硬質皮膜被覆部材の製造方法。
  2. 基体表面にTi、Cr、Alから選択される1種類以上の金属元素と、C、N、Oから選択される1種類以上の非金属元素とからなる硬質皮膜を被覆した部材において、該硬質皮膜はCl、S、P、B、Si、Fから選択される1種類以上の添加元素を含有し、該金属元素と該添加元素とは化学結合を有することを特徴とする硬質皮膜被覆部材。
  3. 請求項2記載の硬質皮膜被覆部材において、該添加元素から選択される1種の元素が、該硬質皮膜の表面から膜厚方向に向かって濃度勾配をもつことを特徴とする硬質皮膜被覆部材。
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