JP5589916B2 - スリット電極及びこれを備えた荷電粒子ビーム発生装置 - Google Patents

スリット電極及びこれを備えた荷電粒子ビーム発生装置 Download PDF

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Description

本発明は、イオンビーム照射装置のイオン源や電子ビーム照射装置の電子源といった荷電粒子ビーム発生装置で用いられるスリット電極及びこれを備えた荷電粒子ビーム発生装置に関する。
従来から、イオンビーム照射装置のイオン源よりイオンビームを引き出す為の引出し電極系として、複数のスリット状開口部を有するスリット電極が用いられている。このようなスリット電極は、イオン源運転時の熱によって開口部形状の変形を防止する為の構成を備えている。このスリット電極についての具体例が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されている電極は、開口部を有する電極枠体と当該枠体の開口部内におおよそ等間隔に並べられた複数本の電極棒とを備えている。各電極棒の間には、スリット状開口部が形成されている。そして、長手方向において各電極棒の熱による伸縮が許容できるように、各電極棒の端部は固定されておらず、各電極棒がその長手方向に移動可能な状態で電極枠体に支持されている。
また、特許文献2にも特許文献1と同様の電極構成が開示されている。ここでは、矩形状の電極支持枠に複数のロッド通し穴を設けておき、この穴に複数本のロッドが挿入された時、ロッド通し穴の終端部とロッドの長手方向端部との間に余裕部(隙間)が形成される構成のスリット電極が開示されている。このスリット電極では、各ロッド間にスリット状開口部が形成されている。
特公平7−34358号公報(図2、図2) 特開平8−148106号公報(図2、図4〜図6)
イオン源や電子源の引出し電極系に特許文献1や特許文献2に挙げられるスリット電極を用いた場合、スリット状開口部を形成する電極棒やロッドにイオンビームが衝突して、電極棒やロッドは高温に熱せられる。一方で、電極棒に比べて高温に加熱されないにしろ、電極棒を支持する部材もイオン源や電子源の運転時にはある程度高温に加熱されている。
その為、電極棒の支持部材も熱によって伸縮する。特許文献1や特許文献2には、電極棒やロッドの熱による伸縮を許容する構成が開示されているが、電極棒やロッドを支持する支持部材となる電極枠体や電極支持枠の熱による伸縮に対してどのように対処するのかについては何ら開示されていなかった。
電極棒の支持部材が熱変形すると、それに伴ってスリット状開口部の形状が変形してしまう。このような形状変化に伴って、スリット状開口部の位置ずれが生じる。そして、このようなスリット状開口部の変形や位置ずれは、スリット電極の寸法が大きくなるのに従って、益々大きなものになる。その為、特許文献1や特許文献2に開示されているスリット電極の構成では、電極の熱による歪みを十分に抑制出来ているとは言えず、電極棒の支持部材が熱変形した場合には、所望するイオンビームや電子ビームの引出しを達成することが出来なくなるといった不具合が生じてしまう。
そこで本発明では、荷電粒子ビーム発生装置の運転時に、スリット状開口部の形状が熱変形し難いスリット電極を提供することを所期の目的とする。
本発明のスリット電極は、開口部を有する電極枠体と、前記電極枠体に個別に着脱可能に取り付けられた複数の電極ユニットからなるスリット電極であって、各電極ユニットは、前記開口部内に並設された複数本の電極棒と、前記開口部を挟んで各電極棒の長手方向の端部を支持する一組の電極棒支持部材とを有していることを特徴としている。
このように、電極棒を支持する電極棒支持部材を複数組設けておき、これらを電極ユニットとして電極枠体に取り付けるように構成しているので、従来の構成に比べて、スリット状開口部の熱による変形量を小さくすることができる。
また、前記電極ユニットは、各電極ユニット間に隙間が形成されるようにして配置されていることが望ましい。
このような配置にすることで、電極ユニットの熱による伸縮をある程度許容させることができる。
さらに、前記電極ユニットは、前記電極支持部材に対して着脱可能に取り付けられているとともに、前記電極棒の長手方向における端部上面を覆うように配置された蓋体を備えていることが望ましい。
このような構成にすることで、蓋体を取り外すだけで電極棒を交換することが可能となる。その為、電極棒のみの交換が必要な場合であっても、電極ユニットごと交換する必要がないので、部材交換時の部材費用を安く抑えることができる。
電極棒を支持する電極棒支持部材を複数組設けておき、これらを電極ユニットとして電極枠体に取り付けるように構成しているので、従来の構成に比べて、スリット状開口部の熱による変形量を小さくすることができる。
本発明のスリット電極の一例を表し、(A)はその平面図であり、(B)は(A)に記載のA‐A線での断面図である。 図1のスリット電極を構成する複数の電極ユニットが電極枠体に取り付けられる様子を表す斜視図である。 本発明のスリット電極の別の例を表し、(A)はその平面図であり、(B)は(A)に記載のB‐B線での断面図である。 図3のスリット電極より蓋体を取り除いた時の様子を表し、(A)はその平面図であり、(B)は(A)に記載のC‐C線での断面図である。 図3のスリット電極を構成する複数の電極ユニットが電極枠体に取り付けられる様子を表す斜視図である。 本発明のスリット電極に用いられる電極枠体の変形例を表す斜視図である。
以下の実施形態において、各図に描かれているX、Y、Zの各軸は互いに直交している。
図1には本発明のスリット電極1の一例が描かれている。図1(A)の平面図に描かれるように、このスリット電極1は、主に開口部3を有する電極枠体2と開口部3内に配置された複数本の電極棒5(図1(A)中、ハッチングされている部材)とで構成されている。
各電極棒5は、長手方向がX方向に沿うように電極枠体2に取り付けられた電極支持部材6に支持されているとともに、Y方向に沿って略等しい間隔を空けて開口部3内に並設されている。
Y方向に沿って開口部3内に並設された各電極棒5の間やY方向の端部に位置する各電極棒5と電極枠体2との間には、スリット状開口部4が形成されている。
図1(B)には、図1(A)に記載のA−A線での断面の様子が描かれている。電極棒5の長手方向における端部を支持する支持部7を備えた電極棒支持部材6は、X方向に開口部3を挟むようにして、電極枠体2上にネジ8によって取り付けられている。そして、電極棒5はその長手方向において、移動可能となるように支持部7内に支持されており、このような構成によって、従来と同様に、電極棒5の熱による伸縮が許容されている。
X方向に開口部3を挟んで配置されている一組の電極棒支持部材6はY方向に沿って、複数組設けられている。そして、開口部3を挟んで配置された一組の電極棒支持部材6と電極棒支持部材6の支持部7に支持される複数本の電極棒5とがひとまとまりとなって、電極ユニットUとして、電極枠体2に取り付けられる。この様子が図2に描かれている。
図2に描かれているように、各電極ユニットU(ここでは、3つのユニット)は、図示される矢印の方向に沿って電極枠体2内に運ばれて、電極枠体2に取り付けられる。この取り付けについては、前述したように、ネジ8を用いて行われる。具体的には、電極ユニットUを構成する電極棒支持部材6の図示されない貫通穴にネジ8を挿通し、電極枠体2に形成されたネジ穴9に螺合させることで行われる。一方、部材の交換時には、このネジ8を緩めることで、電極ユニットUを電極枠体2より取り外すことができる。
図1(A)に示されるように、XY平面において、各電極ユニットUの間や各電極ユニットUと電極枠体2との間には、ある程度の隙間が設けられていることが望ましい。このような隙間があれば、電極枠体2や電極ユニットUの熱伸縮によって起こりうる部材同士の干渉を防止することが可能となる。なお、電極ユニットUを構成する電極棒支持部材6の形状が長方形状である場合、短手方向(図1中のX方向)で発生する熱伸縮は、長手方向(図1中のY方向)に比べて小さくなる。この短手方向における熱伸縮が無視できる程度の小さいものであれば、前述した隙間は、各電極ユニットUの長手方向にのみ形成されていれば良い。
電極ユニットUを電極枠体2に取り付ける構成にしておくと、部材の交換作業の点でもメリットがある。特許文献1や特許文献2の構成では、電極棒やロッドを1本ずつ交換する必要があった。また、特許文献1の別の構成では、電極枠体を分割して、電極棒を取り外す必要があった。これに対して、本発明の構成では電極ユニットUごとに部材交換が可能となる。その為、短時間で複数本の電極棒を一挙に交換することが可能となり、しかも交換作業が簡単となる。
本発明のスリット電極1の別の例が図3に描かれている。図3(A)にはその平面図が描かれており、図3(B)には図3(A)に記載のB−B線での断面の様子が描かれている。この例では、電極棒5の長手方向における端部上面を覆うように配置された蓋体10が電極棒支持部材6に取り付けられている。この点が、図1の例と異なっている。この相違点について、以下に詳述し、図1の例と同じ構成である部分については、その説明を省略する。
図3(B)に記載されているように、この例では電極棒支持部材6の開口部3側に位置する上面端部に凹部12が形成されており、その凹部12上方を電極棒支持部材6に取り付けられた蓋体10が覆うことで、支持部7が形成されている。図3(A)と図3(B)に記載されるように、図1の例と同じく、電極棒支持部材6は電極枠体2にネジ8によって取り付けられている。一方、蓋体10は電極棒支持部材6上にネジ8によって取り付けられており、電極枠体2に対して直接取り付けられていない。その為、電極棒支持部材6が電極枠体2に取り付けられている状態で、蓋体10のみの取り外しが可能となる。
図4には、図3に示したスリット電極1より蓋体10を取り外した時の様子が描かれている。図4(A)にはその平面図が描かれており、図4(B)には図4(A)に記載のC−C線での断面の様子が描かれている。これらの図からわかるように、蓋体10を取り外した時、電極棒5を支持する支持部7の上方が開放されるので、そこから複数本の電極棒5を個別に取り付け、あるいは、取り外しすることが可能となる。
図3に示すスリット電極1の場合、電極枠体2への電極ユニットUの取り付けは、図5に示すようにして行われる。この場合、図5に示されるように、電極棒支持部材6に蓋体10を取り付けた後に、電極枠体2へ電極ユニットUとして取り付けられる。一方で、このような取り付け方ではなく、各部材を個別に取り付けるようにしても良い。具体的には、電極枠体2に対して電極棒支持部材6を取り付けておき、その後、電極棒5を電極棒支持部材6に取り付ける。最後に、電極棒支持部材6に対して蓋体10を取り付ける。このような取り付け方をしても構わない。
このような蓋体10を備えたスリット電極1であれば、部材交換時に要する部材費用を低額に抑えることが可能となる。例えば、電極棒支持部材6自体の熱変形は許容できる程度のものであるが電極棒5の交換が必要とされる場合には、蓋体10を電極棒支持部材6より取り外すことで、電極棒5のみを交換することができる。この場合、電極ユニットUの全体を交換する必要がないので、その分、部材交換に要する費用が安くなる。
図6には、電極枠体2の変形例が描かれている。この図6に記載されているように、電極枠体2には電極ユニットUの取り付け時の基準となる突起11が形成されていても良い。このような構成にすれば、電極ユニットUの取り付け時の位置調整が簡単になり、取り付けに要する時間が短くて済む。
本発明の構成は、長尺状の電極を用いる場合や荷電粒子ビーム発生装置の引出し電極系として複数枚の電極を用いる場合に、特に有利となる。
長尺状の電極では、電極の長辺方向における端部と中央部分とを比較した時、電極の熱による変形の程度に大きな差が生じていた。具体的には、電極端部では熱による変形が大きいが、中央部分では熱による変形が小さい。この場合、スリット状開口部の形状が電極の場所によって異なってしまう為、電極を通して所望する荷電粒子ビームを引き出すことが難しくなる。これに対して、本発明の構成では、各電極ユニットUの熱による変形量が小さいので、電極の長手方向における端部と中央部分とで、スリット状開口部の熱変形量にはほとんど差が生じない。その為、電極を通して容易に所望する荷電粒子ビームを引き出すことができる。
また、荷電粒子ビーム引出し用の電極として複数枚のスリット電極を用いる場合、各電極に設けられたスリット状開口部を通して荷電粒子ビームを引き出す為に、各電極でスリット状開口部の位置を所定位置に合わせておくことが必要とされている。しかし、従来のスリット電極の構成では、熱による電極の変形量が大きい為、このような位置合わせを行うことが難しく、各電極でのスリット状開口部の位置にずれが生じた場合、荷電粒子ビームの引出しができなくなってしまう可能性があった。これに対して、本発明の構成を用いると、電極に形成されたスリット状開口部の熱による形状変化を小さなものにすることができるので、各電極でのスリット状開口部の位置ずれを従来の構成に比べて格段に小さくすることができる。その結果、安定して所望する荷電粒子ビームを引き出すことが可能となる。
<その他の実施形態>
本発明で用いられる電極枠体2、電極棒支持部材6、蓋体10、電極棒5には、熱膨張率が小さいモリブデンやタングステンのような高融点材料を使用することが望ましい。
また、電極枠体2に冷媒流路を設けておき、そこに冷媒を流すことで電極枠体2を冷却するように構成しておいても良い。
さらに、本発明が適用される電極枠体2に形成される開口部3の形状は長方形状である必要はなく、それ以外の形状であっても良い。例えば、円形状や楕円形状、多角形状のものであっても良く、開口部3内に電極棒5を配置した際に、荷電粒子ビームを通過させるスリット状開口部4が形成されるものであれば、どのような形状であっても良い。
また、これまで複数本の電極棒5の長手方向がX方向に沿って配置されている例について説明してきたが、それ以外の構成であっても良い。例えば、XY平面上でX方向に対して斜めとなる方向に各電極棒5の長手方向を配置しておき、各電極棒5がおおよそY方向に沿って並設されるようにしておいても良い。この場合、XY平面において、複数本の電極棒5の間に形成されるスリット状開口部4の形状はおおよそ平行四辺形になる。なお、本発明では各電極棒5の長手方向と開口部3内に各電極棒5が並設される並設方向とは、直交している必要はなく、交差していれば良い。
電極枠体2に対する電極ユニットUの取り付けや電極棒支持部材6への蓋体10の取り付けにあたって、ネジ8を用いることを例に挙げて説明してきたが、各部材の取り付けが着脱可能に行えるものであればその他の固定方法を用いても構わない。
前述した以外に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。
1・・・スリット電極
2・・・電極枠体
3・・・開口部
4・・・スリット状開口部
5・・・電極棒
6・・・電極棒支持部材
7・・・支持部
8・・・ネジ
10・・・蓋体
U・・・電極ユニット

Claims (4)

  1. 開口部を有する電極枠体と、
    前記電極枠体に個別に着脱可能に取り付けられた複数の電極ユニットからなるスリット電極であって、
    各電極ユニットは、前記開口部内に並設された複数本の電極棒と、前記開口部を挟んで各電極棒の長手方向の端部を支持する一組の電極棒支持部材とを有していることを特徴とするスリット電極。
  2. 前記電極ユニットは、各電極ユニット間に隙間が形成されるようにして配置されていることを特徴とする請求項1記載のスリット電極。
  3. 前記電極ユニットは、前記電極棒支持部材に対して着脱可能に取り付けられているとともに、前記電極棒の長手方向における端部上面を覆うように配置された蓋体を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のスリット電極。
  4. 荷電粒子ビーム引出し用の電極として、請求項1、2または3記載のスリット電極を備えていることを特徴とする荷電粒子ビーム発生装置。

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