JP2005050600A - イオン源用電極板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマ中にろう材等の不純物の混入や、熱変形、冷媒漏れの恐れがなく、しかも冷却効果の良い安価なイオン源用電極板とすることにある。
【解決手段】プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板において、所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプ2と、これら各冷却パイプ2の両端開口部を閉止するプラグ3と、各冷却パイプ2の両端部側を保持する保持体4と、所定間隔を存して対向配設され各冷却パイプ2をその両端部側の保持体を介して支持すると共に、各冷却パイプ2に連通させて設けられた冷却孔を通して冷却水を給排水する一対のヘッダー5とから構成され、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面にろう材を介して一体化し、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔2aとして形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板において、所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプ2と、これら各冷却パイプ2の両端開口部を閉止するプラグ3と、各冷却パイプ2の両端部側を保持する保持体4と、所定間隔を存して対向配設され各冷却パイプ2をその両端部側の保持体を介して支持すると共に、各冷却パイプ2に連通させて設けられた冷却孔を通して冷却水を給排水する一対のヘッダー5とから構成され、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面にろう材を介して一体化し、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔2aとして形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核融合装置の中性粒子入射装置やイオンミキシング装置などに適用されるイオン源において、プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン加速電極板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核融合装置の中性粒子入射装置やイオンミキシング装置などにおいては、プラズマから高速イオンビームを生成するイオン源が用いられている。
【0003】
例えば、中性粒子入射装置のイオン源は、水素などのガスが導入されたフィラメントを有するプラズマ生成部において、当該フィラメントを介してアーク放電を行うことによりプラズマを生成させ、このプラズマ中のガスが電離したイオンを電極板に形成した電界によりプラズマから引出して加速し、高エネルギーを有する高速イオンビームを発生させるものである。
【0004】
上記イオン源におけるイオン加速電極板は、当該電極板に多数形成されたイオンビーム引出し孔を介してプラズマからイオンビームを引出すものであり、当該イオン加速電極板が高温のイオンビームと直接接触する構造となっている。従って、イオン加速電極板では、熱負荷を低減して耐久性能を維持するために、イオンビーム引出し孔間に冷却チャンネルを設けて冷却を行っている。
【0005】
図11(a)は従来のイオン加速電極板の構造を示す断面図、同図(b)は(a)の要部拡大図である。
【0006】
このイオン加速電極板90は、イオンビーム引出し用の多数のビーム引出し孔91を有する電極板本体90aのプラズマ93側の表面に半円形の溝92を設け、その溝92に冷却パイプ94の半円弧部分を埋込んでろう付けしたものである。
【0007】
この冷却パイプ94をプラズマ側93に設けたのは、次のような理由によるものである。即ち、イオン源電極板90のブラズマ側とは反対側には図示しない他の電極板が存するので、その電極板側に冷却パイプ94を設ける場合、電極板との間の電界が冷却パイプ94にて乱されないようにするには、イオン源電極板90と電極板との間の距離が制限されるためである。
【0008】
なお、冷却パイプ94は、ろう材95により固定されており、冷却パイプ94には冷媒が通される。
【0009】
ところが、上記のような電極板90をプラズマ電極板に用いてイオンビームを引出す際に、冷却パイプ94やろう材95がプラズマに直接さらされ、プラズマによるスパッタ作用にて、さらにはプラズマ中のイオン入射やプラズマおよびフィラメントからの輻射熱による加熱にて、ろう材95や冷却パイプ94を構成する物質が不純物となってプラズマ中に混じり、それによって不要な元素がイオンビーム中に混入するという問題がある。
【0010】
また、冷却パイプ94と電極板本体90aとの接触部は、ろう付けしたパイプの半円弧部分であり、接触面積が小さいために冷却効果が悪く、従って電極板本体90aとして使用できる素材はモリブデンなどの熱的に安定した金属に限定される。しかし、このような金属は高価なため、電極板の製造コストが嵩むという問題がある。
【0011】
さらに、冷却パイプ94を電極板本体90aにろう付けする場合の条件として、例えば使用するろう材95の材質などによっては冷却パイプ94に冷媒漏れが発生する恐れがある。
【0012】
そこで、最近では上記したイオン加速電極板に代るものとして以下に述べるような種々のイオン加速電極板やその製造方法が公開されている。
【0013】
(1)イオン源用電極として、2枚の電極板間に冷媒を通す冷却パイプを挟み込むと共に、これら3者間をろう付けあるいは熱間等方圧加圧法(HIP法)により接着するようにしたもの(例えば、特許文献1)。
【0014】
(2)イオン加速電極板の製造方法として、冷却水通路用の溝を設けた溝付モリブデン板の溝表面にニッケルを被覆しておき、この溝付モリブデン板の溝上面にニッケルにて被覆されたモリブデン平板を重ね、拡散接合により溝付モリブデン板とモリブデン平板とを固着して一体化し、ニッケルにて被覆された複数の冷却水通路孔を形成し、その後この冷却水通路孔にビーム孔を穿設してイオン源加速電極板を製造する方法(例えば、特許文献2)。特に、この電極板はプラズマ生成部の開口部側に装着され、電界を形成する電極板に用いられるために、高融点材料であるモリブデンにて構成されている。
【0015】
(3)イオン加速電極板として、モリブデン材を主体とし、冷却通路用冷却孔を形成したモリブデン板とモリブデン平板とが拡散接合により一体化された重合構造のもの(例えば、特許文献3)。この場合、冷却通路用冷却孔の周面部にはセラミックを蒸着することによりセラミックの被覆層を形成する製造方法が採られている。
【0016】
(4)イオン加速電極板として、タンタル材を主体とし、冷却通路用冷却孔を形成したタンタル板とタンタル平板とがチタンを介して拡散接合により一体化された重合構造のもの(例えば、特許文献4)。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)のイオン源用電極では、イオン源における2枚の電極板間に冷媒を通す冷却パイプを挟み込むとともに、これら3者間を接着する方法がろう付け、あるいは熱間等方加工法(HIP法)であるため、次のような問題がある。
【0018】
すなわち、ろう付けの問題として、ろう付けは真空機器を用いた真空中にて例えば銀ろうを用いるなど、電極板の接合面積が400m2以上のものは一般的な接合面として比較的大面積の部類に入り、接合面の全面にわたって欠陥なくろう付けすることは、過去の実績から見て非常に困難である。
【0019】
もし、接合面にろう付けによる未接合部分が顕在する場合は、冷媒を通す冷却パイプを2枚の電極板間に挟み込むことで、従来のような冷媒が漏れるトラブルを回避することができる特徴があるが、電極板としてはイオンビームによる高熱負荷を除去するという機能上、熱伝導が悪くなるために冷却効率が低下する。
【0020】
これにより、電極板がイオンビームの熱により加熱されて変形する。さらに、この電極板が変形することにより、イオンビームを引出す無数のビーム孔の位置にずれが生じ、さらにはこの変形により所定のイオン源の電極板としての機能を失うという問題があった。
【0021】
また、もう一方の熱間等方加工法(HIP法)による問題として、冷却パイプを2枚の電極板間に挟み込んでこれら3者間を熱間等方加工法により接合するために必要となる接合面全周の真空シールの溶接法が、真空中にて行う電子ビーム溶接機を用いることで容易に行うことができるが、イオン加速電極板の板厚が略5〜10mm程度の比較的薄物であるとともに熱伝導のよい銅および銅合金からなるため、電子ビーム溶接の条件として比較的に入熱を高めに設定する必要がある。しかし、入熱を高くすると電極板が溶接中に変形し、曲がりやうねりが生じる。従って、真空シール溶接の後に行う熱間等方加工法による接合後も曲がりやうねりのある電極板となる。
【0022】
曲がりやうねりのある電極板は、接合後に修正加工により所定の形状や平坦度を得ることが困難である。このように電極板の所定の形状や平坦度が得られないとイオンビームを引出す無数のビーム孔の位置がずれ、さらに電極板が加熱されると変形して所定のイオン源の電極板としての機能を失うという問題がある。
【0023】
また、熱間等方加工法による接合であるために、接合面全周の真空シール溶接部をヘリウム・リークディテクターを用いて漏れ試験をし、1×10−9Trr・1/sec以下のリーク量であることを確認する必要がある。
【0024】
なお、この試験は静的な状態にて行う必要があるが、接合面全体の真空シール溶接部は実際の熱間等方加工法による接合中(高温、高圧雰囲気)でも健全なシール性が要求される。
【0025】
万が一、真空シールが破損した場合は接合面に高温、高圧のガスが侵入し、所定の接合が得られない。このように3者間を熱間等方加工法により接合するためには、極めて難易度の高いシール溶接技術が要求され、その実現には溶接機の高度化および溶接作業者の技能向上など、解決すべき課題が多く残されている。
【0026】
また、上記(2)〜(4)のイオン加速電極板は、いずれも高溶融点材料であるモリブデンやタンタル材にて構成され、その構造は溝付板と平板とを拡散接合法にて一体的に固着する方法が採られている。
【0027】
この拡散接合法には、温度、雰囲気、加圧力を一定時間保持するという条件が必要となり、その条件としては拡散接合法に必要な温度が一般にその材料の融点に対して0.7倍以上の温度、あるいはその材料の再結晶温度以上であるといわれており、雰囲気は拡散接合に必要な温度での材料の酸化などが問題にならない必要がある。このため、例えば真空中あるいはガス雰囲気中での接合が要求される。また、加圧力は接合面の面粗さや接合温度により適正加圧力が決定される。
【0028】
従って、温度が高ければ加圧力を低く、温度が低ければ加圧力を高く設定しなければならない。面粗さについては、接合面の凹凸が細かい場合には加圧力を低く、逆に接合面の凹凸が粗い場合は加圧力を高く設定しなければならない。
【0029】
要するに、接合面の面コンタクト(密着)が重要であり、これらの条件を保持する時間は温度、雰囲気、加圧力に左右される。従って、温度が高く、かつ加圧力が高ければ、相互拡散は積極的に進み、保持時間も短くてすむ。
【0030】
しかし、拡散接合法によるイオン加速電極板の接合は、接合を容易にする接合面の精度、例えば面粗さ5S以下を得ようとした場合、機械加工後にバフ研磨が必要となり、またその平坦度や静浄度を保つためには、加工中および加工後の管理にも注意が必要である。
【0031】
さらには、高温且つ高真空あるいはガス雰囲気中での接合を容易にする加圧装置を備えた拡散接合装置は、国内においても数台しか存在しない程度の高価なものである。特にイオン加速電極板の板厚は略5〜10mm程度の比較的薄いものであり、この材料の接合面全体を均等に加圧し、且つ溝の変形を抑えた加圧力を制御することは難しい。このような装置を作るとしても、非常に複雑且つ高価な設備となる。
【0032】
以上のような拡散接合法では、生産、製造コストが高く、その信頼性もイオン加速電極板のような大面積を有するが故に接合面全体の健全性および再現性に乏しいという問題がある。
【0033】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、プラズマ中にろう材等の不純物が混入することがなく、かつ熱変形や冷媒漏れの恐れがなく、しかも冷却効果の良い安価な素材を用いたイオン源用電極板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段および方法によりイオン源用電極板を構成およびその製造するものである。
【0035】
請求項1に対応する発明は、プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板において、所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプと、これら各冷却パイプの両端開口部を閉止するプラグと、前記各冷却パイプの両端部側を保持する保持体と、所定間隔を存して対向配設され前記各冷却パイプをその両端部側の保持体を介して支持すると共に、前記各冷却パイプに連通させて設けられた冷却孔を通して冷却水を給排水する一対のヘッダーとから構成され、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面にろう材を介して一体化し、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔として形成したものである。
【0036】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明のイオン源用電極板において、前記冷却パイプは、引抜きあるいは押出し加工品を用いたものである。
【0037】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明のイオン源用電極板において、前記冷却パイプおよび保持体の少なくとも一方の材料がアルミナ分散強化鋼(ODS)あるいはクロム鋼、または銀入り銅などの強化鋼を用いたものである。
【0038】
請求項4に対応する発明は、プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板の製造方法において、所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプの両端開口部をプラグにより閉止する工程と、前記各冷却パイプの両端部側を保持体に保持させる工程と、所定間隔を存して対向配設され前記各冷却パイプに冷却水を給排水するための一対のヘッダーに前記各冷却パイプをその両端部側の保持体を介して支持させる工程と、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面をろう付けにより接合して一体化する工程により、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔として形成する。
【0039】
請求項5に対応する発明は、請求項4に対応する発明のイオン源用電極板の製造方法において、前記冷却パイプ、支持板およびヘッダーの各部品は、ニッケルろう、銀ろうあるいはインジューム入り銀ろうにより接合される。
【0040】
請求項6に対応する発明は、請求項4に対応する発明のイオン源用電極板の製造方法において、前記冷却パイプ、支持板およびヘッダーの各部品は、真空または無酸化雰囲気中での高周波ろう付けにより接合される。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0042】
図1〜図9は本発明によるイオン源用電極板およびその製造方法を説明するための第1の実施形態をそれぞれ示し、図1はイオン加速電極板全体の斜視図、図2〜図9はイオン加速電極板の製造工程を説明するための図である。
【0043】
図1に示すように本発明の第1実施形態のイオン源用電極板1は、冷却パイプ2、プラグ3、保持体4およびヘッダー5から構成される。
【0044】
上記冷却パイプ2は、断面がイオン源用電極板の厚み方向に対して細長い楕円形または矩形あるいは円形(本例では断面形状が楕円形をした長辺12mm、短辺6mm、肉厚2mm)のもので、その中空部を冷媒を流す冷却孔6とし、両端開口部に閉止を目的としたプラグ3を挿入して冷却パイプ2とプラグ3とを組立てる。
【0045】
また、冷却パイプ2の両端部側を保持体4に有する略U字状の保持溝4a内に嵌め込んで保持させ、冷却パイプ2と保持体4とを組立てる。
【0046】
さらに、これらプラグ3および保持体4を組立てた冷却パイプ2を複数本用意し、これらの冷却パイプ2をその両端部側の保持体4が所定間隔を存して対向配設された一対のヘッダー5上に載置されるように並設し、各冷却パイプ2と一対のヘッダー5とを組立てる。
【0047】
上記ヘッダー5は、上面部がくし歯型に形成され、その歯元に保持体4が差込み可能になっている。また、ヘッダー5内には長手方向に冷却水を通流させる冷却孔が設けられている。
【0048】
このように組立てられる冷却パイプ2とプラグ3、保持体4およびヘッダー5は、組立時に挿入面あるいは接合面をろう付けにより接合して一体化し、イオン源用電極板1を構成する。
【0049】
このような構成のイオン源用電極板1とすれば、一対のヘッダー5間に跨って並設された複数本の冷却パイプ2相互間の間隙にはイオンビーム引出し孔2aが形成される。
【0050】
ここで、かかるイオン電源用電極板1の製造方法について詳細に説明する。
【0051】
まず、図2に示すように鋼材から引抜きあるいは押出し加工により製造された断面が楕円形状の冷却パイプ2の両端開口部に突起付きのプラグ3を差込み挿入する。
【0052】
この場合、突起付きのプラグ3は、冷却パイプ2と同様に鋼材からエンドリングなどの機械で加工すると共に、この突起付きのプラグ3にろう材を挿入する例えばφ0.9mmのろう溝を加工し、このろう溝に例えばφ0.8mmの銀および銅からなる銀ろうの線材を挿入する。
【0053】
このプラグ付き冷却パイプ2の外観を図3に示す。
【0054】
その後、図4に示すようにプラグ付きの冷却パイプ2の両端部側を保持体4に有する断面がU字形の保持溝に嵌め込んで保持させる。この場合、保持体4は突起付きプラグと同様の材料を機械加工により製作されると共に、冷却パイプ2と保持体4とをろう付けするために、その接合面に図示しない銀ろうの例えば50ミクロンの箔を介在させ、図5に示すように嵌め込んで保持させる。
【0055】
このようにプラグ3および保持体4を組立てた冷却パイプ2を複数本(本例では13本)用意し、冷却パイプ1とプラグ3および保持体4をそれぞれろう付けする。
【0056】
このようにプラグ3および保持体4がろう付けされた冷却パイプ2は、図1に示したイオン源用電極板1として構成するため、所定間隔を存して対向配設され、且つ長手方向に冷却水を給排水するための冷却孔6を有する支持枠を兼ねた一対のヘッダー5上に冷却パイプ2の両端部側に嵌め込まれた保持体4を介して平行に設けられる。
【0057】
この場合、一対のヘッダー5の上面部は、図6に示すようにくし歯型に形成され、その歯元に冷却パイプ2とのろう付け接合を行うための厚みが例えば50ミクロンの図示しない銀ろうの箔を配した後、保持体4がくし歯型の歯元に差込まれる。
【0058】
また、上記ヘッダー5の歯元、保持体4のろう付け接合面および冷却パイプ2にそれぞれ貫通する冷却孔7が設けられ、ヘッダー5の冷却孔6を通して冷却水の給排水が可能になっている。
【0059】
従って、ろう付け接合時には冷却パイプ2などの各冷却孔に溶融したろう材が侵入しないように、ろう材の形状の選定あるいはろう材の挿入方法、ろう溝の形状等ろう付け施工に当たっての工夫が施されている。
【0060】
このように組立てられた冷却パイプ2、プラグ3、保持体4およびヘッダー5のろう付け方法としては、イオン源用電極板1の使用条件や使用環境を考慮し、真空中で行う真空ろう付けが行われる。
【0061】
図7(a)はろう付けする前の形状であるヘッダー部分の断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して示す図である。
【0062】
図7(b)において、9は冷却パイプ2と保持体4のU字状の溝との間に挿入されたろう箔のろう付け部であり、また10は保持体4とヘッダー5のくし歯型の歯部間に挿入されたろう箔のろう付け部である。
【0063】
次に以上のよう手順で段取りされたイオン源用電極板1の真空ろう付けの施工方法について述べる。
【0064】
図8はイオン源用電極板1のヘッダー5部分を示す断面図である。図8に示すように冷却パイプ2を下部にし、ヘッダー5を上部にした姿勢で、下部には平面度を必要とするために一度真空脱ガス処理した厚み例えば20mmのカーボン治具11を配置し、ヘッダー5の上部には下部同様の形状および真空脱ガス処理したカーボン治具12を配置して真空ろう付けを行った。
【0065】
真空ろう付けは、図9に示すように真空炉13が用いられる。この真空炉13は、内部に炉内温度を上昇させ、且つ一定の温度に保つことが可能なヒータ14が備えられ、外部には内部を真空状態にするための排気装置15が連設され、バルブ16の開閉により炉内を排除して真空状態に保持可能になっている。
【0066】
まず、準備として真空炉13内で図8に示すようにイオン源用電極板1にカーボン治具11および12を組合せて下部台17上に載置する。次にこの状態を保ちつつ排気装置15のバルブ16を開いて真空炉13内を排気し、炉内の真空度1×10−4Trr程度を維持しつつ排気を続ける。
【0067】
引続いてヒータ14により真空炉13内をろう付けが可能な適正な温度810℃(実体温度)に加熱し、この温度を5分間維持してろう材9,10を溶融させる。この場合、ろう付け接合面の相互間が図8に示した上部のカーボン治具12の押圧力により密着することにより、ろう材9,10の溶融に拡散現象が現れ、ろう付け接合面全体にろう材の溶融が均等に行き渡って確実にろう付けが行われる。
【0068】
この融液は、使用するろう材9,10の厚さが約50μmと比較的薄めであり、晶出する融液の量が極めて少ないために、冷却孔6,7に流れ込んで該孔を埋める恐れがない。従って、冷却効率が低下するという問題は生じない。
【0069】
このようにして真空炉13内でろう付けされたイオン源用電極板1は、炉内の温度が100℃前後に降下した後に取り出し、イオン源用電極板1を構成する冷却パイプ2、プラグ3、保持体4およびヘッダー5のそれぞれの部品が冷却水路を保ちつつ、強固にかつ精密で冷却水の漏れがない気密性の高い、高品質のイオン源用電極板1が得られる。
【0070】
その後、図10(a),(b)に示すようにヘッダー5に有する冷却孔の両端開口部にプラグ18,19を電子ビーム溶接で固着して塞ぐ。さらに、ヘッダー5に冷却水を供給するために、複数本のフランジ付き配管20をティグ溶接により取付けて、イオン源用電極板を製作する。
【0071】
このように本発明の第1の実施形態では、所定間隔を存して配設された一対のヘッダー5間に跨って平行に所定の間隙を存して複数本の冷却パイプ2を配設し、各冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビームが通過するイオンビーム引出し孔として形成するようにしたので、従来のように機械加工により無数のビーム孔を設けるものとは異なり、複雑な加工や仕上げ加工などを不要とし、構造上および製作上簡便になり、生産効率の向上および低コスト化を図ることができる。
【0072】
また、イオンビーム孔周辺の冷却パイプにはろう付けなどの接合部が存在しないため、蒸気圧の高い低融点材料からのガスや蒸発によりイオンビームの加速が乱れる恐れ、あるいはガスの発生などによる汚れや低真空化によるイオン源の電極板およびイオン源機器としての機能低下などを生じることがなく、真空雰囲気の保持および高い冷却効率の維持が可能となる。従って、イオン源用電極板およびイオン機器としての信頼性を向上させることができる。
【0073】
さらに、冷却パイプ2の断面がイオン源用電極板1の厚み方向に対して細長い楕円あるいは矩形の断面形状であることから、ビーム孔を通過するビームによる高熱負荷に対し、冷却パイプ2による除熱および冷却効率に優れたものとなり、イオン源用冷却板1が変形しないばかりか、イオンビーム引出し孔の変形もなく、従って照射したビームが冷却パイプ2に当たり、冷却パイプ2を溶融するなどの危険あるいは溶損によるガスの発生や真空度の低下を抑制できると共に、イオン源用電極板1として長寿命化を図ることができる。
【0074】
一方、冷却パイプ2は、引抜きあるいは押出し加工部品として製作しているので、照射するビームのエネルギーの熱負荷に対し、断面の縦、横のアスベクト比などが任意にその断面形状を設計することができる。従って、照射したビームの熱により、冷却パイプが損傷しないように、且つ冷却効率を高めた構造の冷却パイプを製作することで、イオン源用電極板の長寿命化を図ることができる。
【0075】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
【0076】
本発明のイオン源用電極板の性能を最も左右させる構成部品は、冷却パイプ相互間に形成されたイオンビーム引出し孔に近接する冷却パイプである。
【0077】
そこで、図示しないが第2の実施形態では、その冷却パイプの材料に0.2%銀入り無酸化銅を用いて、第1の実施形態と同様の手順でイオン源用電極板を製作した。
【0078】
第2の実施形態によると0.2%銀入り無酸化銅を用いることで、イオン源用電極板およびイオンビームを照射する負荷に対し、冷却パイプが受ける熱負荷に対しても冷却パイプおよび冷却パイプ間の寸法変化や変形などは認められず、初期に設計した寸法が維持できる。従って、イオン源用電極板を用いたイオン源としての所定のビームパワーを出力でき、安定したイオン源用電極板とすることができると共に、中性子入射装置やイオンミキシング装置を長時間運転することが可能となる。
【0079】
また、冷却パイプの材料には、0.2%銀入り無酸化銅の代替に析出強化型のクロム銅やアルミナの粒子を分散したアルミナ分散強化銅(ODS)を用いても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、冷却パイプのみに0.2%銀入り無酸化銅やアルミナ分散強化銅(ODS)、クロム銅を用いた場合の作用効果について述べたが、イオン源用電極板1を構成する保持板4やヘッダー5に強化銅を用いても、前述同様の作用効果が得られる。
【0081】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。
【0082】
本発明の第3の実施形態では、イオン源用電極板1を構成する複数本の冷却パイプ2と、この冷却パイプを保持する保持体4および冷却パイプ2に冷却水を給排水するヘッダー5の各部品を真空中あるいは無酸化雰囲気のチャンバーなどの容器の中で、高周波加熱によりろう付け接合するものである。
【0083】
図示しないが、冷却パイプと保持体とを接合する場合、真空あるいは無酸化雰囲気が得られるチャンバーなどの容器内に高周波加熱電源と高周波コイルあるいは高周波コイルのみを配置し、その高周波コイルの誘導加熱によりろう付け接合すべき冷却パイプと保持体を、銀ろうなどのろう材を用いて高周波ろう付けを行い、その後保持体およびヘッダーのろう付け接合も同様に、これらの接合面に応じて製作された特殊な形状の高周波コイルを用いることで、ろう付け接合が可能である。
【0084】
本実施形態のような高周波加熱によるろう付けを行うことで、イオンビームが照射される周辺の冷却パイプへのろう付けによる入熱は、高周波加熱の特徴である局部加熱のために、冷却パイプと保持体のろう付け部は必要最小限の入熱であり、冷却パイプの加熱による劣化も最小限に抑えることができる。
【0085】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、イオン源用電極板を廉価な冷却パイプ、保持体、プラグ、ヘッダーなど単品で加工でき、またこれらをろう付け接合することで所定の形状に構成することができるので、製造コストの大幅な削減が可能となる。
【0086】
また、イオン源用電極板で重要なのは、イオンビームを長時間または高出力のビームを照射した際に、イオン源用電極板の変形やビーム孔の変化が生じないかであるが、本発明ではイオンビーム引出し孔の周辺は冷却パイプだけでろう材や異物がないので、ガスの発生や真空度の低下もなく、安定したイオン源用電極板を提供できる。
【0087】
さらに、冷却パイプの材料として高温強度の高い銀入り銅やクロム銅を用いているので、イオンビームの熱による変形が小さく、イオン源用電極板の長寿命化を図ることが可能となる。また、加熱源に高周波加熱源を用いることで局部加熱が実現できるので、構成部品の熱による劣化を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態のイオン源用電極板を示す斜視図。
【図2】同実施形態における冷却パイプとプラグとの組立工程を示す斜視図。
【図3】図2の組立工程でプラグが取付けられた冷却パイプを示す斜視図。
【図4】同実施形態におけるプラグが取付けられた冷却パイプと保持体との組立工程を示す斜視図。
【図5】図3の組立工程で保持体に保持された冷却パイプを示す斜視図。
【図6】同実施形態における保持体に保持された複数本の冷却パイプと一対のヘッダーとの組立工程を示す斜視図。
【図7】図6の組立工程でヘッダーに支持された複数本の冷却パイプを示すもので、(a)はヘッダー部分の断面図、(b)は(a)のA部を拡大して示す図。
【図8】同実施形態において、全工程で組立てられた真空ろう付け前のイオン源用電極板の上下部にカーボン治具を取付けた状態を示すヘッダー5部分の断面図。
【図9】図8に示す上下部にカーボン治具を取付けたイオン源用電極板を真空炉内で真空ろう付けを施工する状況を説明するための図。
【図10】(a)は本発明により製作したイオン源用電極板の平面図、(b)は(a)をX−X線に沿う矢視断面図。
【図11】(a)は従来のイオン源用電極板を説明するための断面図、(b)はその一部の拡大図。
【符号の説明】
1…イオン源用電極板
2…冷却パイプ
2a…イオンビーム引出し孔
3…プラグ
4…保持体
5…ヘッダー
6,7,8…冷却孔
9,10…ろう付け部
11,12…上部、下部のカーボン治具
13…真空炉
14…ヒータ
15…排気装置
16…バルブ
17…下部台
18,19…プラグ
20…フランジ付き配管
【発明の属する技術分野】
本発明は、核融合装置の中性粒子入射装置やイオンミキシング装置などに適用されるイオン源において、プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン加速電極板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核融合装置の中性粒子入射装置やイオンミキシング装置などにおいては、プラズマから高速イオンビームを生成するイオン源が用いられている。
【0003】
例えば、中性粒子入射装置のイオン源は、水素などのガスが導入されたフィラメントを有するプラズマ生成部において、当該フィラメントを介してアーク放電を行うことによりプラズマを生成させ、このプラズマ中のガスが電離したイオンを電極板に形成した電界によりプラズマから引出して加速し、高エネルギーを有する高速イオンビームを発生させるものである。
【0004】
上記イオン源におけるイオン加速電極板は、当該電極板に多数形成されたイオンビーム引出し孔を介してプラズマからイオンビームを引出すものであり、当該イオン加速電極板が高温のイオンビームと直接接触する構造となっている。従って、イオン加速電極板では、熱負荷を低減して耐久性能を維持するために、イオンビーム引出し孔間に冷却チャンネルを設けて冷却を行っている。
【0005】
図11(a)は従来のイオン加速電極板の構造を示す断面図、同図(b)は(a)の要部拡大図である。
【0006】
このイオン加速電極板90は、イオンビーム引出し用の多数のビーム引出し孔91を有する電極板本体90aのプラズマ93側の表面に半円形の溝92を設け、その溝92に冷却パイプ94の半円弧部分を埋込んでろう付けしたものである。
【0007】
この冷却パイプ94をプラズマ側93に設けたのは、次のような理由によるものである。即ち、イオン源電極板90のブラズマ側とは反対側には図示しない他の電極板が存するので、その電極板側に冷却パイプ94を設ける場合、電極板との間の電界が冷却パイプ94にて乱されないようにするには、イオン源電極板90と電極板との間の距離が制限されるためである。
【0008】
なお、冷却パイプ94は、ろう材95により固定されており、冷却パイプ94には冷媒が通される。
【0009】
ところが、上記のような電極板90をプラズマ電極板に用いてイオンビームを引出す際に、冷却パイプ94やろう材95がプラズマに直接さらされ、プラズマによるスパッタ作用にて、さらにはプラズマ中のイオン入射やプラズマおよびフィラメントからの輻射熱による加熱にて、ろう材95や冷却パイプ94を構成する物質が不純物となってプラズマ中に混じり、それによって不要な元素がイオンビーム中に混入するという問題がある。
【0010】
また、冷却パイプ94と電極板本体90aとの接触部は、ろう付けしたパイプの半円弧部分であり、接触面積が小さいために冷却効果が悪く、従って電極板本体90aとして使用できる素材はモリブデンなどの熱的に安定した金属に限定される。しかし、このような金属は高価なため、電極板の製造コストが嵩むという問題がある。
【0011】
さらに、冷却パイプ94を電極板本体90aにろう付けする場合の条件として、例えば使用するろう材95の材質などによっては冷却パイプ94に冷媒漏れが発生する恐れがある。
【0012】
そこで、最近では上記したイオン加速電極板に代るものとして以下に述べるような種々のイオン加速電極板やその製造方法が公開されている。
【0013】
(1)イオン源用電極として、2枚の電極板間に冷媒を通す冷却パイプを挟み込むと共に、これら3者間をろう付けあるいは熱間等方圧加圧法(HIP法)により接着するようにしたもの(例えば、特許文献1)。
【0014】
(2)イオン加速電極板の製造方法として、冷却水通路用の溝を設けた溝付モリブデン板の溝表面にニッケルを被覆しておき、この溝付モリブデン板の溝上面にニッケルにて被覆されたモリブデン平板を重ね、拡散接合により溝付モリブデン板とモリブデン平板とを固着して一体化し、ニッケルにて被覆された複数の冷却水通路孔を形成し、その後この冷却水通路孔にビーム孔を穿設してイオン源加速電極板を製造する方法(例えば、特許文献2)。特に、この電極板はプラズマ生成部の開口部側に装着され、電界を形成する電極板に用いられるために、高融点材料であるモリブデンにて構成されている。
【0015】
(3)イオン加速電極板として、モリブデン材を主体とし、冷却通路用冷却孔を形成したモリブデン板とモリブデン平板とが拡散接合により一体化された重合構造のもの(例えば、特許文献3)。この場合、冷却通路用冷却孔の周面部にはセラミックを蒸着することによりセラミックの被覆層を形成する製造方法が採られている。
【0016】
(4)イオン加速電極板として、タンタル材を主体とし、冷却通路用冷却孔を形成したタンタル板とタンタル平板とがチタンを介して拡散接合により一体化された重合構造のもの(例えば、特許文献4)。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)のイオン源用電極では、イオン源における2枚の電極板間に冷媒を通す冷却パイプを挟み込むとともに、これら3者間を接着する方法がろう付け、あるいは熱間等方加工法(HIP法)であるため、次のような問題がある。
【0018】
すなわち、ろう付けの問題として、ろう付けは真空機器を用いた真空中にて例えば銀ろうを用いるなど、電極板の接合面積が400m2以上のものは一般的な接合面として比較的大面積の部類に入り、接合面の全面にわたって欠陥なくろう付けすることは、過去の実績から見て非常に困難である。
【0019】
もし、接合面にろう付けによる未接合部分が顕在する場合は、冷媒を通す冷却パイプを2枚の電極板間に挟み込むことで、従来のような冷媒が漏れるトラブルを回避することができる特徴があるが、電極板としてはイオンビームによる高熱負荷を除去するという機能上、熱伝導が悪くなるために冷却効率が低下する。
【0020】
これにより、電極板がイオンビームの熱により加熱されて変形する。さらに、この電極板が変形することにより、イオンビームを引出す無数のビーム孔の位置にずれが生じ、さらにはこの変形により所定のイオン源の電極板としての機能を失うという問題があった。
【0021】
また、もう一方の熱間等方加工法(HIP法)による問題として、冷却パイプを2枚の電極板間に挟み込んでこれら3者間を熱間等方加工法により接合するために必要となる接合面全周の真空シールの溶接法が、真空中にて行う電子ビーム溶接機を用いることで容易に行うことができるが、イオン加速電極板の板厚が略5〜10mm程度の比較的薄物であるとともに熱伝導のよい銅および銅合金からなるため、電子ビーム溶接の条件として比較的に入熱を高めに設定する必要がある。しかし、入熱を高くすると電極板が溶接中に変形し、曲がりやうねりが生じる。従って、真空シール溶接の後に行う熱間等方加工法による接合後も曲がりやうねりのある電極板となる。
【0022】
曲がりやうねりのある電極板は、接合後に修正加工により所定の形状や平坦度を得ることが困難である。このように電極板の所定の形状や平坦度が得られないとイオンビームを引出す無数のビーム孔の位置がずれ、さらに電極板が加熱されると変形して所定のイオン源の電極板としての機能を失うという問題がある。
【0023】
また、熱間等方加工法による接合であるために、接合面全周の真空シール溶接部をヘリウム・リークディテクターを用いて漏れ試験をし、1×10−9Trr・1/sec以下のリーク量であることを確認する必要がある。
【0024】
なお、この試験は静的な状態にて行う必要があるが、接合面全体の真空シール溶接部は実際の熱間等方加工法による接合中(高温、高圧雰囲気)でも健全なシール性が要求される。
【0025】
万が一、真空シールが破損した場合は接合面に高温、高圧のガスが侵入し、所定の接合が得られない。このように3者間を熱間等方加工法により接合するためには、極めて難易度の高いシール溶接技術が要求され、その実現には溶接機の高度化および溶接作業者の技能向上など、解決すべき課題が多く残されている。
【0026】
また、上記(2)〜(4)のイオン加速電極板は、いずれも高溶融点材料であるモリブデンやタンタル材にて構成され、その構造は溝付板と平板とを拡散接合法にて一体的に固着する方法が採られている。
【0027】
この拡散接合法には、温度、雰囲気、加圧力を一定時間保持するという条件が必要となり、その条件としては拡散接合法に必要な温度が一般にその材料の融点に対して0.7倍以上の温度、あるいはその材料の再結晶温度以上であるといわれており、雰囲気は拡散接合に必要な温度での材料の酸化などが問題にならない必要がある。このため、例えば真空中あるいはガス雰囲気中での接合が要求される。また、加圧力は接合面の面粗さや接合温度により適正加圧力が決定される。
【0028】
従って、温度が高ければ加圧力を低く、温度が低ければ加圧力を高く設定しなければならない。面粗さについては、接合面の凹凸が細かい場合には加圧力を低く、逆に接合面の凹凸が粗い場合は加圧力を高く設定しなければならない。
【0029】
要するに、接合面の面コンタクト(密着)が重要であり、これらの条件を保持する時間は温度、雰囲気、加圧力に左右される。従って、温度が高く、かつ加圧力が高ければ、相互拡散は積極的に進み、保持時間も短くてすむ。
【0030】
しかし、拡散接合法によるイオン加速電極板の接合は、接合を容易にする接合面の精度、例えば面粗さ5S以下を得ようとした場合、機械加工後にバフ研磨が必要となり、またその平坦度や静浄度を保つためには、加工中および加工後の管理にも注意が必要である。
【0031】
さらには、高温且つ高真空あるいはガス雰囲気中での接合を容易にする加圧装置を備えた拡散接合装置は、国内においても数台しか存在しない程度の高価なものである。特にイオン加速電極板の板厚は略5〜10mm程度の比較的薄いものであり、この材料の接合面全体を均等に加圧し、且つ溝の変形を抑えた加圧力を制御することは難しい。このような装置を作るとしても、非常に複雑且つ高価な設備となる。
【0032】
以上のような拡散接合法では、生産、製造コストが高く、その信頼性もイオン加速電極板のような大面積を有するが故に接合面全体の健全性および再現性に乏しいという問題がある。
【0033】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、プラズマ中にろう材等の不純物が混入することがなく、かつ熱変形や冷媒漏れの恐れがなく、しかも冷却効果の良い安価な素材を用いたイオン源用電極板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段および方法によりイオン源用電極板を構成およびその製造するものである。
【0035】
請求項1に対応する発明は、プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板において、所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプと、これら各冷却パイプの両端開口部を閉止するプラグと、前記各冷却パイプの両端部側を保持する保持体と、所定間隔を存して対向配設され前記各冷却パイプをその両端部側の保持体を介して支持すると共に、前記各冷却パイプに連通させて設けられた冷却孔を通して冷却水を給排水する一対のヘッダーとから構成され、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面にろう材を介して一体化し、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔として形成したものである。
【0036】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明のイオン源用電極板において、前記冷却パイプは、引抜きあるいは押出し加工品を用いたものである。
【0037】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明のイオン源用電極板において、前記冷却パイプおよび保持体の少なくとも一方の材料がアルミナ分散強化鋼(ODS)あるいはクロム鋼、または銀入り銅などの強化鋼を用いたものである。
【0038】
請求項4に対応する発明は、プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板の製造方法において、所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプの両端開口部をプラグにより閉止する工程と、前記各冷却パイプの両端部側を保持体に保持させる工程と、所定間隔を存して対向配設され前記各冷却パイプに冷却水を給排水するための一対のヘッダーに前記各冷却パイプをその両端部側の保持体を介して支持させる工程と、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面をろう付けにより接合して一体化する工程により、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔として形成する。
【0039】
請求項5に対応する発明は、請求項4に対応する発明のイオン源用電極板の製造方法において、前記冷却パイプ、支持板およびヘッダーの各部品は、ニッケルろう、銀ろうあるいはインジューム入り銀ろうにより接合される。
【0040】
請求項6に対応する発明は、請求項4に対応する発明のイオン源用電極板の製造方法において、前記冷却パイプ、支持板およびヘッダーの各部品は、真空または無酸化雰囲気中での高周波ろう付けにより接合される。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0042】
図1〜図9は本発明によるイオン源用電極板およびその製造方法を説明するための第1の実施形態をそれぞれ示し、図1はイオン加速電極板全体の斜視図、図2〜図9はイオン加速電極板の製造工程を説明するための図である。
【0043】
図1に示すように本発明の第1実施形態のイオン源用電極板1は、冷却パイプ2、プラグ3、保持体4およびヘッダー5から構成される。
【0044】
上記冷却パイプ2は、断面がイオン源用電極板の厚み方向に対して細長い楕円形または矩形あるいは円形(本例では断面形状が楕円形をした長辺12mm、短辺6mm、肉厚2mm)のもので、その中空部を冷媒を流す冷却孔6とし、両端開口部に閉止を目的としたプラグ3を挿入して冷却パイプ2とプラグ3とを組立てる。
【0045】
また、冷却パイプ2の両端部側を保持体4に有する略U字状の保持溝4a内に嵌め込んで保持させ、冷却パイプ2と保持体4とを組立てる。
【0046】
さらに、これらプラグ3および保持体4を組立てた冷却パイプ2を複数本用意し、これらの冷却パイプ2をその両端部側の保持体4が所定間隔を存して対向配設された一対のヘッダー5上に載置されるように並設し、各冷却パイプ2と一対のヘッダー5とを組立てる。
【0047】
上記ヘッダー5は、上面部がくし歯型に形成され、その歯元に保持体4が差込み可能になっている。また、ヘッダー5内には長手方向に冷却水を通流させる冷却孔が設けられている。
【0048】
このように組立てられる冷却パイプ2とプラグ3、保持体4およびヘッダー5は、組立時に挿入面あるいは接合面をろう付けにより接合して一体化し、イオン源用電極板1を構成する。
【0049】
このような構成のイオン源用電極板1とすれば、一対のヘッダー5間に跨って並設された複数本の冷却パイプ2相互間の間隙にはイオンビーム引出し孔2aが形成される。
【0050】
ここで、かかるイオン電源用電極板1の製造方法について詳細に説明する。
【0051】
まず、図2に示すように鋼材から引抜きあるいは押出し加工により製造された断面が楕円形状の冷却パイプ2の両端開口部に突起付きのプラグ3を差込み挿入する。
【0052】
この場合、突起付きのプラグ3は、冷却パイプ2と同様に鋼材からエンドリングなどの機械で加工すると共に、この突起付きのプラグ3にろう材を挿入する例えばφ0.9mmのろう溝を加工し、このろう溝に例えばφ0.8mmの銀および銅からなる銀ろうの線材を挿入する。
【0053】
このプラグ付き冷却パイプ2の外観を図3に示す。
【0054】
その後、図4に示すようにプラグ付きの冷却パイプ2の両端部側を保持体4に有する断面がU字形の保持溝に嵌め込んで保持させる。この場合、保持体4は突起付きプラグと同様の材料を機械加工により製作されると共に、冷却パイプ2と保持体4とをろう付けするために、その接合面に図示しない銀ろうの例えば50ミクロンの箔を介在させ、図5に示すように嵌め込んで保持させる。
【0055】
このようにプラグ3および保持体4を組立てた冷却パイプ2を複数本(本例では13本)用意し、冷却パイプ1とプラグ3および保持体4をそれぞれろう付けする。
【0056】
このようにプラグ3および保持体4がろう付けされた冷却パイプ2は、図1に示したイオン源用電極板1として構成するため、所定間隔を存して対向配設され、且つ長手方向に冷却水を給排水するための冷却孔6を有する支持枠を兼ねた一対のヘッダー5上に冷却パイプ2の両端部側に嵌め込まれた保持体4を介して平行に設けられる。
【0057】
この場合、一対のヘッダー5の上面部は、図6に示すようにくし歯型に形成され、その歯元に冷却パイプ2とのろう付け接合を行うための厚みが例えば50ミクロンの図示しない銀ろうの箔を配した後、保持体4がくし歯型の歯元に差込まれる。
【0058】
また、上記ヘッダー5の歯元、保持体4のろう付け接合面および冷却パイプ2にそれぞれ貫通する冷却孔7が設けられ、ヘッダー5の冷却孔6を通して冷却水の給排水が可能になっている。
【0059】
従って、ろう付け接合時には冷却パイプ2などの各冷却孔に溶融したろう材が侵入しないように、ろう材の形状の選定あるいはろう材の挿入方法、ろう溝の形状等ろう付け施工に当たっての工夫が施されている。
【0060】
このように組立てられた冷却パイプ2、プラグ3、保持体4およびヘッダー5のろう付け方法としては、イオン源用電極板1の使用条件や使用環境を考慮し、真空中で行う真空ろう付けが行われる。
【0061】
図7(a)はろう付けする前の形状であるヘッダー部分の断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大して示す図である。
【0062】
図7(b)において、9は冷却パイプ2と保持体4のU字状の溝との間に挿入されたろう箔のろう付け部であり、また10は保持体4とヘッダー5のくし歯型の歯部間に挿入されたろう箔のろう付け部である。
【0063】
次に以上のよう手順で段取りされたイオン源用電極板1の真空ろう付けの施工方法について述べる。
【0064】
図8はイオン源用電極板1のヘッダー5部分を示す断面図である。図8に示すように冷却パイプ2を下部にし、ヘッダー5を上部にした姿勢で、下部には平面度を必要とするために一度真空脱ガス処理した厚み例えば20mmのカーボン治具11を配置し、ヘッダー5の上部には下部同様の形状および真空脱ガス処理したカーボン治具12を配置して真空ろう付けを行った。
【0065】
真空ろう付けは、図9に示すように真空炉13が用いられる。この真空炉13は、内部に炉内温度を上昇させ、且つ一定の温度に保つことが可能なヒータ14が備えられ、外部には内部を真空状態にするための排気装置15が連設され、バルブ16の開閉により炉内を排除して真空状態に保持可能になっている。
【0066】
まず、準備として真空炉13内で図8に示すようにイオン源用電極板1にカーボン治具11および12を組合せて下部台17上に載置する。次にこの状態を保ちつつ排気装置15のバルブ16を開いて真空炉13内を排気し、炉内の真空度1×10−4Trr程度を維持しつつ排気を続ける。
【0067】
引続いてヒータ14により真空炉13内をろう付けが可能な適正な温度810℃(実体温度)に加熱し、この温度を5分間維持してろう材9,10を溶融させる。この場合、ろう付け接合面の相互間が図8に示した上部のカーボン治具12の押圧力により密着することにより、ろう材9,10の溶融に拡散現象が現れ、ろう付け接合面全体にろう材の溶融が均等に行き渡って確実にろう付けが行われる。
【0068】
この融液は、使用するろう材9,10の厚さが約50μmと比較的薄めであり、晶出する融液の量が極めて少ないために、冷却孔6,7に流れ込んで該孔を埋める恐れがない。従って、冷却効率が低下するという問題は生じない。
【0069】
このようにして真空炉13内でろう付けされたイオン源用電極板1は、炉内の温度が100℃前後に降下した後に取り出し、イオン源用電極板1を構成する冷却パイプ2、プラグ3、保持体4およびヘッダー5のそれぞれの部品が冷却水路を保ちつつ、強固にかつ精密で冷却水の漏れがない気密性の高い、高品質のイオン源用電極板1が得られる。
【0070】
その後、図10(a),(b)に示すようにヘッダー5に有する冷却孔の両端開口部にプラグ18,19を電子ビーム溶接で固着して塞ぐ。さらに、ヘッダー5に冷却水を供給するために、複数本のフランジ付き配管20をティグ溶接により取付けて、イオン源用電極板を製作する。
【0071】
このように本発明の第1の実施形態では、所定間隔を存して配設された一対のヘッダー5間に跨って平行に所定の間隙を存して複数本の冷却パイプ2を配設し、各冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビームが通過するイオンビーム引出し孔として形成するようにしたので、従来のように機械加工により無数のビーム孔を設けるものとは異なり、複雑な加工や仕上げ加工などを不要とし、構造上および製作上簡便になり、生産効率の向上および低コスト化を図ることができる。
【0072】
また、イオンビーム孔周辺の冷却パイプにはろう付けなどの接合部が存在しないため、蒸気圧の高い低融点材料からのガスや蒸発によりイオンビームの加速が乱れる恐れ、あるいはガスの発生などによる汚れや低真空化によるイオン源の電極板およびイオン源機器としての機能低下などを生じることがなく、真空雰囲気の保持および高い冷却効率の維持が可能となる。従って、イオン源用電極板およびイオン機器としての信頼性を向上させることができる。
【0073】
さらに、冷却パイプ2の断面がイオン源用電極板1の厚み方向に対して細長い楕円あるいは矩形の断面形状であることから、ビーム孔を通過するビームによる高熱負荷に対し、冷却パイプ2による除熱および冷却効率に優れたものとなり、イオン源用冷却板1が変形しないばかりか、イオンビーム引出し孔の変形もなく、従って照射したビームが冷却パイプ2に当たり、冷却パイプ2を溶融するなどの危険あるいは溶損によるガスの発生や真空度の低下を抑制できると共に、イオン源用電極板1として長寿命化を図ることができる。
【0074】
一方、冷却パイプ2は、引抜きあるいは押出し加工部品として製作しているので、照射するビームのエネルギーの熱負荷に対し、断面の縦、横のアスベクト比などが任意にその断面形状を設計することができる。従って、照射したビームの熱により、冷却パイプが損傷しないように、且つ冷却効率を高めた構造の冷却パイプを製作することで、イオン源用電極板の長寿命化を図ることができる。
【0075】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
【0076】
本発明のイオン源用電極板の性能を最も左右させる構成部品は、冷却パイプ相互間に形成されたイオンビーム引出し孔に近接する冷却パイプである。
【0077】
そこで、図示しないが第2の実施形態では、その冷却パイプの材料に0.2%銀入り無酸化銅を用いて、第1の実施形態と同様の手順でイオン源用電極板を製作した。
【0078】
第2の実施形態によると0.2%銀入り無酸化銅を用いることで、イオン源用電極板およびイオンビームを照射する負荷に対し、冷却パイプが受ける熱負荷に対しても冷却パイプおよび冷却パイプ間の寸法変化や変形などは認められず、初期に設計した寸法が維持できる。従って、イオン源用電極板を用いたイオン源としての所定のビームパワーを出力でき、安定したイオン源用電極板とすることができると共に、中性子入射装置やイオンミキシング装置を長時間運転することが可能となる。
【0079】
また、冷却パイプの材料には、0.2%銀入り無酸化銅の代替に析出強化型のクロム銅やアルミナの粒子を分散したアルミナ分散強化銅(ODS)を用いても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、冷却パイプのみに0.2%銀入り無酸化銅やアルミナ分散強化銅(ODS)、クロム銅を用いた場合の作用効果について述べたが、イオン源用電極板1を構成する保持板4やヘッダー5に強化銅を用いても、前述同様の作用効果が得られる。
【0081】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。
【0082】
本発明の第3の実施形態では、イオン源用電極板1を構成する複数本の冷却パイプ2と、この冷却パイプを保持する保持体4および冷却パイプ2に冷却水を給排水するヘッダー5の各部品を真空中あるいは無酸化雰囲気のチャンバーなどの容器の中で、高周波加熱によりろう付け接合するものである。
【0083】
図示しないが、冷却パイプと保持体とを接合する場合、真空あるいは無酸化雰囲気が得られるチャンバーなどの容器内に高周波加熱電源と高周波コイルあるいは高周波コイルのみを配置し、その高周波コイルの誘導加熱によりろう付け接合すべき冷却パイプと保持体を、銀ろうなどのろう材を用いて高周波ろう付けを行い、その後保持体およびヘッダーのろう付け接合も同様に、これらの接合面に応じて製作された特殊な形状の高周波コイルを用いることで、ろう付け接合が可能である。
【0084】
本実施形態のような高周波加熱によるろう付けを行うことで、イオンビームが照射される周辺の冷却パイプへのろう付けによる入熱は、高周波加熱の特徴である局部加熱のために、冷却パイプと保持体のろう付け部は必要最小限の入熱であり、冷却パイプの加熱による劣化も最小限に抑えることができる。
【0085】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、イオン源用電極板を廉価な冷却パイプ、保持体、プラグ、ヘッダーなど単品で加工でき、またこれらをろう付け接合することで所定の形状に構成することができるので、製造コストの大幅な削減が可能となる。
【0086】
また、イオン源用電極板で重要なのは、イオンビームを長時間または高出力のビームを照射した際に、イオン源用電極板の変形やビーム孔の変化が生じないかであるが、本発明ではイオンビーム引出し孔の周辺は冷却パイプだけでろう材や異物がないので、ガスの発生や真空度の低下もなく、安定したイオン源用電極板を提供できる。
【0087】
さらに、冷却パイプの材料として高温強度の高い銀入り銅やクロム銅を用いているので、イオンビームの熱による変形が小さく、イオン源用電極板の長寿命化を図ることが可能となる。また、加熱源に高周波加熱源を用いることで局部加熱が実現できるので、構成部品の熱による劣化を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態のイオン源用電極板を示す斜視図。
【図2】同実施形態における冷却パイプとプラグとの組立工程を示す斜視図。
【図3】図2の組立工程でプラグが取付けられた冷却パイプを示す斜視図。
【図4】同実施形態におけるプラグが取付けられた冷却パイプと保持体との組立工程を示す斜視図。
【図5】図3の組立工程で保持体に保持された冷却パイプを示す斜視図。
【図6】同実施形態における保持体に保持された複数本の冷却パイプと一対のヘッダーとの組立工程を示す斜視図。
【図7】図6の組立工程でヘッダーに支持された複数本の冷却パイプを示すもので、(a)はヘッダー部分の断面図、(b)は(a)のA部を拡大して示す図。
【図8】同実施形態において、全工程で組立てられた真空ろう付け前のイオン源用電極板の上下部にカーボン治具を取付けた状態を示すヘッダー5部分の断面図。
【図9】図8に示す上下部にカーボン治具を取付けたイオン源用電極板を真空炉内で真空ろう付けを施工する状況を説明するための図。
【図10】(a)は本発明により製作したイオン源用電極板の平面図、(b)は(a)をX−X線に沿う矢視断面図。
【図11】(a)は従来のイオン源用電極板を説明するための断面図、(b)はその一部の拡大図。
【符号の説明】
1…イオン源用電極板
2…冷却パイプ
2a…イオンビーム引出し孔
3…プラグ
4…保持体
5…ヘッダー
6,7,8…冷却孔
9,10…ろう付け部
11,12…上部、下部のカーボン治具
13…真空炉
14…ヒータ
15…排気装置
16…バルブ
17…下部台
18,19…プラグ
20…フランジ付き配管
Claims (6)
- プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板において、
所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプと、これら各冷却パイプの両端開口部を閉止するプラグと、前記各冷却パイプの両端部側を保持する保持体と、所定間隔を存して対向配設され前記各冷却パイプをその両端部側の保持体を介して支持すると共に、前記各冷却パイプに連通させて設けられた冷却孔を通して冷却水を給排水する一対のヘッダーとから構成され、
これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面にろう材を介して一体化し、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔として形成してなることを特徴とするイオン源用電極板。 - 請求項1記載のイオン源用電極板において、前記冷却パイプは、引抜きあるいは押出し加工品を用いたことを特徴とするイオン源用電極板。
- 請求項1記載のイオン源用電極板において、前記冷却パイプおよび保持体の少なくとも一方の材料がアルミナ分散強化鋼(ODS)あるいはクロム鋼、または銀入り銅などの強化鋼を用いたことを特徴とするイオン源用電極板。
- プラズマ中のイオンを加速して高速イオンビームを生成させるイオン源用電極板の製造方法において、
所定の間隙を存して平行に配設される複数本の冷却パイプの両端開口部をプラグにより閉止する工程と、前記各冷却パイプの両端部側を保持体に保持させる工程と、所定間隔を存して対向配設され前記各冷却パイプに冷却水を給排水するための一対のヘッダーに前記各冷却パイプをその両端部側の保持体を介して支持させる工程と、これら各冷却パイプ、プラグ、保持体およびヘッダーの各部品の接合面をろう付けにより接合して一体化する工程により、前記複数本の冷却パイプ相互間に存する間隙をイオンビーム引出し孔として形成することを特徴とするイオン源用電極板の製造方法。 - 請求項4記載のイオン源用電極板の製造方法において、前記冷却パイプ、保持体およびヘッダーの各部品は、ニッケルろう、銀ろうあるいはインジューム入り銀ろうにより接合されることを特徴とするイオン源用電極板の製造方法。
- 請求項4記載のイオン源用電極板の製造方法において、前記冷却パイプ、支持板およびヘッダーの各部品は、真空または無酸化雰囲気中での高周波ろう付けにより接合されることを特徴とするイオン源用電極板の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012195177A (ja) * | 2011-03-17 | 2012-10-11 | Nissin Ion Equipment Co Ltd | スリット電極及びこれを備えた荷電粒子ビーム発生装置 |
KR101251882B1 (ko) | 2011-06-21 | 2013-04-08 | 주식회사 테스 | 플라즈마 발생용 전극 및 이의 제조방법 |
CN106935459A (zh) * | 2015-12-31 | 2017-07-07 | 核工业西南物理研究院 | 一种长脉冲高功率离子源电极栅冷却水路及真空密封结构 |
RU2794724C1 (ru) * | 2022-09-29 | 2023-04-24 | Федеральное государственное бюджетное учреждение науки Институт ядерной физики им. Г.И. Будкера Сибирского отделения Российской академии наук (ИЯФ СО РАН) | Ионно-оптическая система источника ионов |
-
2003
- 2003-07-31 JP JP2003204347A patent/JP2005050600A/ja active Pending
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