JP5587829B2 - トルクロッド - Google Patents

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この発明は、エンジン側部材および車体側部材のそれぞれに取り付けられる二個の弾性ブッシュの相互を、連結ロッドで連結するとともに、その連結ロッド内に、二個のそれぞれの弾性ブッシュの配設方向に延びるシャフトに沿って、マス部材を往復動させるアクティブ制御の振動相殺手段を配設してなるトルクロッドに関するものであり、とくには、振動相殺手段の、主としてそれ自身の電気的な発熱に起因する故障の発生等を防止して、トルクロッドに、常に有効な制振特性を発揮させることができる技術を提案するものである。
車両のパワープラント(この出願では、単に「エンジン」という。)を、車体側に取り付けるに当り、振動の発生源であるエンジンの、ロール軸周りの変位を抑制するべく、エンジンと車体側部材との間に配設されて、それらの相互を弾性的に連結するトルクロッドとして、出願人は先に、特願2010―185728号で、二個の弾性ブッシュの相互を連結する連結ロッド内に、アクティブ制御の振動相殺手段を配設してなるものを提案した。
このトルクロッドによれば、エンジン側部材および車体側部材のそれぞれに取り付けたそれぞれの弾性ブッシュによって、エンジン側からの入力振動を吸収するとともに、振動相殺手段のマス部材を、振幅および周波数の制御の下で、エンジン側からの、トルクロッドの軸線方向の入力振動と逆位相で変位させることで、入力振動の、弾性ブッシュで吸収できなかった周波数成分を相殺することができるので、エンジン側からの、振幅および周波数の様々な入力振動に対して有効な制振特性を発揮することができる。
ところで、上述したようなトルクロッドでは、車両内に配設して使用に供する際に、駆動源から電気的に駆動力を付与されて作動する振動相殺手段の、水の浸入や粉塵の混入による漏電、ショートその他の動作不良および故障を防止するためには、たとえば、連結ロッドの内部に、振動相殺手段の収納空間を形成するとともに、この収納空間の開口部を、振動相殺手段の配設状態で蓋部材で覆うこと等によって、連結ロッドに、振動相殺手段を密閉収納するケース部分を設けることが有効である。
しかるに、このように、振動相殺手段を、連結ロッドのケース部分に密閉収納した場合は、振動相殺手段の収納空間が、ケース部分の外側域から遮へいされることから、振動相殺手段を作動させるに際しての、主にはコイルへの通電に起因する発熱によって、ケース部分の内部の温度が上昇し、振動相殺手段が直接的に空気冷却されない結果として、振動相殺手段の、温度上昇に起因する故障および、振動相殺手段に近接させて配置した弾性ブッシュの弾性部材の熱伝導に起因する劣化等を招くおそれがあった。
しかも、トルクロッドでは、車体側部材およびエンジン側部材へのいずれの取付け箇所にも、弾性ブッシュの、熱伝導率の低いゴム材料等からなる弾性部材を介在させているので、振動相殺手段に発生した熱を、車体側部材およびエンジン側部材に伝導させることによる放熱効果を期することはできない。
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、振動相殺手段への水の浸入、粉塵の混入を防止するべく、連結ロッドのケース部分に密閉収納した振動相殺手段が発生する熱を、効果的に放熱することで、ケース部分内の温度上昇に起因する、振動相殺手段の故障および、弾性部材の熱劣化のおそれを取り除いて、エンジン側からの入力振動に対して常に効果的に防振機能を発揮することができるトルクロッドを提供するにある。
この発明のトルクロッドは、エンジン側部材および車体側部材のそれぞれに取り付けられる二個の弾性ブッシュの相互を、連結ロッドで連結するとともに、その連結ロッド内に、二個のそれぞれの弾性ブッシュの配設方向に延びるシャフトに沿って、マス部材を往復動させるアクティブ制御の振動相殺手段を配設してなるものであって、連結ロッドに、振動相殺手段の周囲を取り囲んで、振動相殺手段を密閉収納するケース部分を形成し、ケース部分の外面の少なくとも一部に、外方に向けて突出するとともに、連結ロッドの延在方向と直交する向きに延びる放熱フィンを、連結ロッドの延在方向に所要の間隔をおいて複数個設けてなるものである。
ここでいう「密閉」は、ケース部分の内部の、振動相殺手段の収納空間が、気密であることまでを要するものではなく、液密であれば足りることを意味する。
なおここで、連結ロッドの前記ケース部分の内面には、複数の突起部を突出形成することが好ましい。
この発明のトルクロッドによれば、それを、エンジン側部材と車体側部材との間に配設して使用に供する際に、振動相殺手段を収納したケース部分は、電気的に駆動力を付与されて作動する振動相殺手段の発熱によって昇温することになるも、ケース部分の外面の少なくとも一部に、外方に向けて突出するとともに、連結ロッドの延在方向と直交する向きに延びる複数個の放熱フィンを設けることにより、主として、連結ロッドの延在方向の入力振動を受けてロッド延在方向に往復動されるトルクロッドのケース部分の外面近傍に、放熱フィンによって空気の乱流を生じさせることができて、ケース部分の空冷効果を大きく高めることができるので、振動相殺手段の、ケース部分への放熱を効果的に促進して、振動相殺手段の温度上昇に起因する故障および、弾性ブッシュの弾性部材の熱劣化等を有効に防止することができる。
これはすなわち、ケース部分の外面に、複数個の放熱フィンを設けることにより、主には、連結ロッドの延在方向の振動が入力されるトルクロッドの、ロッド延在方向への変位、および、トルクロッドを配設した車両の走行時の、エンジン側から流入される車両外気の流れ等に起因して、車両の進行方向の前方側から後方側へ流動する、トルクロッドの周囲の空気が、ケース部分の外面の近傍では、その流動を堰き止める向きに延びる放熱フィンの頂上側に上昇されて、放熱フィンを乗り越えた後に、ケース外面から離れた位置の冷たい空気を巻き込みつつ、ケース外面の、複数の放熱フィンの相互間に流れ込むことになり、このようにして各放熱フィンで発生する乱流が、振動相殺手段の発熱に起因して高温となったケース部分の、すぐれた冷却効果をもたらすので、振動相殺手段から発生する熱を、効果的に放散することができる。
このことに加えて、上記のトルクロッドでは、ケース部分の外面から突出する複数個の放熱フィンを設けたことによって、ケース部分の外面の表面積、すなわち、ケース部分の外気接触面積が大きく増加することから、上述したような、ケース部分の外面からの放熱がより効率的に行われることになる。
これがため、振動相殺手段の温度上昇が十分に抑制されて、振動相殺手段および弾性ブッシュのそれぞれの、入力振動に対する制振機能の低下のおそれなしに、長期間にわたってすぐれた制振特性を十分に発揮することができる。
ここで、ケース部分の内面に、複数の突起部を突出形成したときは、ケース内面の、突起部の形成による表面積の増大に基き、振動相殺手段の発熱によって温度上昇する、ケース内部の空気からの、上記のように空冷効果を高めたケース部分への熱伝達がより一層促進されるので、振動相殺手段の放熱をさらに効果的に行わせることができる。
この発明の一の実施形態を示す斜視図である。 図1のII―II線に沿う断面図である。 ケース部分の外面近傍での空気の流れの状況を模式的に示す部分拡大断面図である。 図1のトルクロッドを、一方の蓋部材を取り除いた状態で示す斜視図である。
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に例示するトルクロッドは、いずれも図示しないエンジン側部材および車体側部材のそれぞれに取り付けられる二個の弾性ブッシュ1,2と、それらの弾性ブッシュ1,2の相互を連結する連結ロッド3と、連結ロッド3内に、図2に断面図で例示するような、二個のそれぞれの弾性ブッシュ1,2の配設方向に延びるシャフト4に沿って、マス部材5を往復動させるアクティブ制御の振動相殺手段6とを具えてなる。
図示のトルクロッドによれば、それを、エンジン側と車体側との間に配設して使用に供する場合、エンジン側からの、トルクロッドの延在方向の入力振動を、たとえば弾性ブッシュ1で吸収し、また、かかる入力振動の、弾性ブッシュ1で吸収し得なかった周波数成分を、振動相殺手段6の、電気的に加振力を付与したマス部材5の、入力振動とは逆位相の往復変位によって相殺できるので、図示しない制御手段で、マス部材5の振動の振幅および周波数をコントロールすることによって、エンジン側からの様々な入力振動を車体側に対して有効に制振することができる。
ここで、図1および2に示すところでは、連結ロッド3の内部に、連結ロッド3の外面にそれぞれ開口する二個の開口部を有する直方体状の収納空間7を形成するとともに、収納空間7の開口部のそれぞれに、各開口部を覆って収納空間7を密閉するそれぞれの蓋部材8,9を、たとえばビス止め等によって取り付けることで、連結ロッド3に設けたケース部分10に、振動相殺手段6を密閉収納する。
このことにより、トルクロッドを使用に供する際に、図示しない駆動源からの電気的な駆動力の付与によって作動する振動相殺手段6が、水や粉塵等から有効に保護されるので、振動相殺手段6に、長期間にわたって所望の制振特性を発揮させることが可能となる。
なおここで、連結ロッド3と各蓋部材8,9の間には、図2に示すように、たとえば、ゴム材料からなるリング状のシール部材8a,9aのそれぞれを介在させることができる。このことにより、振動相殺手段6を、ケース部分10に液密に収納することができる。
ところで、このように、振動相殺手段6を、連結ロッド3のケース部分10に密閉収納した場合は、ケース部分10の収納空間7が、ケース外部から遮へいされることから、振動相殺手段6の、たとえば、後述するコイルへの通電に起因する発熱によって、振動相殺手段6とともに、ケース内部の温度もまた上昇することになり、振動相殺手段6が高温となっても直接的に空冷されず、しかも、エンジン側部材等との取付け箇所に存在する弾性ブッシュ1,2の、熱伝導率の低い弾性部材が、振動相殺手段6の熱の、エンジン側部材等への伝導を阻害することから、トルクロッドを構成する各部材間および、トルクロッド外への熱伝達によっては十分な放熱効果を得ることができない。
そこで、この発明では、振動相殺手段6の温度上昇に起因する、振動相殺手段6の故障や、弾性ブッシュ1,2の弾性部材の熱劣化を防止するべく、図1に例示するように、ケース部分10の外面に、連結ロッド3の延在方向と直交する向きに延びる、たとえばプレート状の放熱フィン11を、連結ロッド3の延在方向に所要の間隔をおいて複数個配設する。
ケース部分10の外面にこのような放熱フィン11を設けることにより、トルクロッドの使用に際しての、エンジン側からの入力振動による、トルクロッドの、ロッド延在方向の往復変位および、車両の走行下でエンジン側から流入される外気の流れ等に基き、ロッド延在方向と直交する向きに延びる放熱フィン11の周囲に、空気の乱流が生じることになり、そのような空気の乱流によって、ケース部分10の、とくに、フィン11を設けた外面の冷却効果が高まるので、ケース部分10からの放熱が促進されることになる。
しかも、複数個の放熱フィン11によって、ケース部分10の外面の表面積が増加するので、ケース部分10からの上記の放熱を、より効率的に行わせることができる。
これらの結果として、振動相殺手段6の温度上昇が抑制されて、振動相殺手段6の故障や、弾性ブッシュ1,2の弾性部材の熱劣化が有効に防止されることになる。
ここで、放熱フィン11を設けたケース部分10の外面での放熱は、より詳細には、以下のようにして行われる。
トルクロッドを、エンジン側と車体側との間に配設して使用に供する場合は、エンジン側から、主としてロッド延在方向の振動が入力されることによって、トルクロッドの、ロッド延在方向の往復変位が生じ、また、トルクロッドは、それの延在方向が、車体の前後方向と一致する姿勢で、車両内に配置されることから、車両の走行時に、車両の外気が、エンジン側から、車体の前後方向、すなわちロッド延在方向に流入するので、トルクロッドの周囲の空気は、ロッド延在方向に流動することになる。
ここにおいて、放熱フィン11を設けたケース部分10の外面では、図3に、ケース外面を、ロッド延在方向に沿う部分拡大断面図で例示するように、ケース部分10の外面の近傍で流動する空気の流れが、ケース外面からの突出姿勢でロッド延在方向と直交する方向(図では紙面の表裏方向)に延びる放熱フィン11によって部分的に堰き止められ、このように堰き止められた空気が、図に白抜き矢印で示すように、放熱フィン11の頂面側、つまり、ケース部分10の外面から離隔する方向に向かうとともに、放熱フィン11を乗り越えて流動する。
このとき、放熱フィン11を乗り越えた空気は、振動相殺手段6の発熱によって温められたケース部分10の外面から離れた位置の冷たい空気を巻き込みつつ、放熱フィン11の相互間の、温度の高い、ケース部分10の外面付近に流れ込んで、低温の空気がケース外面を冷却することになる。
以上のような空気の流れが、ケース部分10の外面に複数個設けた放熱フィン11のそれぞれで生じることにより、ケース部分10の外面の近傍で、空気の、ロッド延在方向の流動に乱れが生じ、ケース部分10からの放熱が促進される。
ここで、ケース部分10での十分な放熱効果を得るためには、ケース部分10の全面にわたって、複数の放熱フィン11を設けることが好ましいが、放熱フィンは、図1に示すように、ケース部分10の外面の一側面だけに設けることができるとともに、図示は省略するが、ケース部分10の外面の一側面の、とくに冷却する必要のある一部分だけに設けることもできる。
またここで、このような放熱フィン11は、ケース部分10の外面に一体的に形成することができる他、ケース部分10とは別個の部材として形成したフィン部材を、ケース部分10の外面に事後的に取り付けることによっても設けることができる。
一方、ケース部分10の内面には、図4に、一方の蓋部材を取り除いた状態で示すところから明らかなように、複数の、たとえば棒状の突起部12を突出形成することができ、このことによれば、複数の突起部12の形成により、ケース内面の表面積が増大することから、振動相殺手段6の発熱によって温められた収納空間7の空気の、上述したように、外面の空気冷却効果を高めたケース部分10への熱伝達を促進して、振動相殺手段6の温度上昇をさらに効果的に抑制することができる。
なおここで、突起部12の形状等は、ケース内面の表面積を増大させ得るものであればとくに限定されず、たとえば、ロッドの延在方向と直交する方向に延在させた棒状をなす図示の形状を有するものとする他、図示は省略するが、ロッド延在方向に対して傾斜させて延在させた棒状をなすものとすることができ、あるいは、収納空間7内へピン状に突出するものとすることもできる。
また、図1に示すところでは、弾性ブッシュ1,2のそれぞれを、金属材料等の剛性材料からなる外筒1a,2aの内側に、これもまた剛性材料からなる内筒1b,2bを、たとえば同心に配置するとともに、外筒1a,2aの内周面と、内筒1b,2bの外周面とを、ゴム材料等からなる弾性部材1c,2cで連結することにて構成している。
そしてここでは、これらの二個の弾性ブッシュ1,2のそれぞれの、ばね定数を相互に相違させるべく、両弾性ブッシュ1,2を、互いに大きさが相互に異なるものとし、また、大径の弾性ブッシュ1のばね定数をさらに低減するため、大径の弾性ブッシュ1の弾性部材1cに、トルクロッドの軸線方向で内筒1bを隔てて位置して、平面視で略M字状をなす空所1dおよび、略弓形状をなす空所1eのそれぞれを、弾性部材1cの厚み方向に貫通させて設けている。
このことによれば、大径の弾性ブッシュ1を、エンジン側部材に取り付けるとともに、小径側の弾性ブッシュ2を、車体側部材に取り付けることにより、ばね定数の小さい大径の弾性ブッシュ1に、エンジン側からの入力振動の多くの部分を吸収させて、振動相殺手段6の振動吸収能力をそれほど高めることなしに、入力振動を有効に抑制することができる。
また、振動相殺手段6は、図2に例示するような、リニア可動型アクチュエータとすることができる。
すなわち、振動相殺手段6の図示のアクチュエータでは、連結ロッド3に設けたケース部分10の内側の、ロッド延在方向の対向壁面のそれぞれに、シャフト4の両端部のそれぞれを嵌め込み固定し、そして、このシャフト4の周りに、外輪郭形状が直方体状をなす筒状マス部材5を配置し、このマス部材5の、図では大径の弾性ブッシュ1側の端部を、それの全周にわたって、たとえば板バネ等の、薄肉板状の連結部材13で、シャフト4に連結固定する。
さらに、筒状のマス部材5の内周面に、シャフト4を隔てて位置する、互いに隣り合う各一対の永久磁石14を、相互に逆極性とした配置状態で取り付ける。
この一方で、シャフト4には、コイル15および巻芯16を、前記永久磁石14から所定の間隔をおいて配設し、コイル15に、トルクロッドの外部の、図示しない制御手段からの通電のためのリード線17の一端を連結する。
1,2 弾性ブッシュ
1a,2a 外筒
1b,2b 内筒
1c,2c 弾性部材
1d,1e 空所
3 連結ロッド
4 シャフト
5 マス部材
6 振動相殺手段
7 収納空間
8,9 蓋部材
8a、9a シール部材
10 ケース部分
11 放熱フィン
12 突起部
13 連結部材
14 永久磁石
15 コイル
16 巻芯
17 リード線

Claims (2)

  1. エンジン側部材および車体側部材のそれぞれに取り付けられる二個の弾性ブッシュの相互を、連結ロッドで連結するとともに、該連結ロッド内に、二個のそれぞれの弾性ブッシュの配設方向に延びるシャフトに沿って、マス部材を往復動させるアクティブ制御の振動相殺手段を配設してなるトルクロッドであって、
    連結ロッドに、振動相殺手段の周囲を取り囲んで、該振動相殺手段を密閉収納するケース部分を形成し、ケース部分の外面の少なくとも一部に、外方に向けて突出するとともに、連結ロッドの延在方向と直交する向きに延びる放熱フィンを、連結ロッドの延在方向に間隔をおいて複数個設けてなるトルクロッド。
  2. 連結ロッドの前記ケース部分の内面に、複数の突起部を突出形成してなる請求項1に記載のトルクロッド。
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