しかしながら、後者でのアームを一旦分離させて一定角度範囲のみ制動させる構成においては、大きく開放した状態から急激に扉を閉じると所定角度位置にて再度連結した段階で非常に大きな慣性力が加わり、その力に対しても適正な減速動作が必要とされる。しかしシリンダータイプのダンパーを主とした減速機構として用いた場合ではストロークにも限界があり比較的重い扉等での急激な閉鎖動作を受け止めるまでの減速量は得にくい。かつその後の引き寄せ閉鎖動作も確実に実施されなくてはならず、ますます強い力のばねが必要になり減速機構自体がやはり複雑で非常に大きな力を機能させる構成になり、その結果全体としてコスト高になることは避けられないと想定される。つまり風などに煽られた場合での急激な閉鎖力をも一旦止めるだけの減速量と、極ゆっくりと閉鎖しようとするだけの場合のばねによる引き寄せ力とを同じ構成の中で常時実施しようとすることが両方の力を拡大させなければならない原因と想定され、その結果大きな減速量とその後の閉鎖を兼ね備えたものはまだなく、この部分において改良の余地があると想定される。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、アームにより扉と枠体を一旦分離させて所定角度範囲のみ制動させる構成で、シリンダータイプの複雑なオリフィス等を有した油圧の機構を用いず、比較的単純でかつコンパクトに形成できることを前提条件とし、急激な閉鎖時には大きな減速量が得られ、緩やかな閉鎖の場合はほとんど減速することなく引き込み動作のみを実施し、扉の閉鎖速度にかかわらず適した減速とその後の停止することなく緩やかに完全に引き込んで閉鎖する動作を可能とする扉の減速機構付き閉鎖装置を提供することを目的とする。
本発明では上記問題点を解決するために次の技術手段を設けた。まず、減速機能と引き込み閉鎖機構を備え、減速機構には回転により負荷が発生する構成のロータリーダンパーを扉の開閉時に略直線運動させ、ロータリーダンパーの歯車とラック等が噛み合って互いが係合して減速し、その距離を長くとることで全体として大きな減速量を得る構成を用い、その個々の閉鎖状況において最も適した減速量を係脱機構を採用することにより自動設定可能な構成を用いた。
まず最初の構成としては、本体装置は本体フタと前後移動ケースと板状の揺動アームを有し、軸装置と上下方向にて面対するように両者を扉と上枠に振り分けて配置しておく。また前後移動ケースには2本の長孔を設け、揺動アームには2本のガイドピンと係合円周面を有した減速部材と軸受け凹部を設けておく。そして本体フタに対して前後方向にのみ規制されて移動できるように前後移動ケースを組み付け、両者間に押しばねを配置して本体フタに対して前後移動ケースが常に前方向に付勢されているように設定しておく。
ここで、前後移動ケースの2本の長孔の内の片方を湾曲長孔にて形成し、他方の長孔をドア面と略平行な方向の直線長孔として形成しておく。そして揺動アームの先端にU字形状の軸受け凹部を設けておく。次に前後移動ケースの2本の長孔に2本のガイドピンを挿入した状態で揺動アームが水平面上で略曲線運動するように両者を組み付ける。このとき揺動アームは前後移動ケース内に収納された没入状態から略曲線動作して最も前後移動ケースから出っ張った突出状態までの一定角度範囲のみ固有の略曲線軌跡にて移動するように設定しておく。そして揺動アームが突出位置から没入位置に移動する際の固有の軌跡において、揺動アームの軸受け凹部の上部軸が挿入される奥位置が、扉の開閉のための丁番等を中心とした円弧の軌跡と同一になるように設定しておく。
そして扉の閉鎖状態では軸受け凹部の奥位置に配置されるように上部軸を装着する。さらに扉の開閉のための丁番等を中心とした円弧の軌跡に対して軸受け凹部を傾斜させておく。すると扉が開放する初期段階で上部軸の移動と共に揺動アームを引き出す動作になり、揺動アームを略曲線運動させることができる。そして揺動アームを一定角度位置にまで移動させた状態で、軸受け凹部の傾斜が扉の開閉のための丁番等を中心とした円弧の軌跡とほぼ一致するように設定しておくと、この段階以降は扉と共に上部軸が軸受け凹部から離脱する動作が得られる。
次に、揺動アームと前後移動ケースに引き込み用ばねを装着し、揺動アームが突出位置から没入位置に移動する範囲内で、最大突出位置の直前の位置を境として両方向に振り分けて付勢するように配置する。その結果境の位置より極僅かに移動した最大突出状態では揺動アームはその位置を保持し、上部軸が揺動アームの軸受け凹部の奥位置に挿入してさらに揺動アームを押し込んだ後の初期段階で引き込み用ばねは境の位置を越え、引き込み用ばねにより軸受け凹部が上部軸を抱き込んだまま閉鎖する方向に付勢する引き込み動作が得られる。
ここで、前後移動ケースの湾曲長孔に揺動アームの第一ガイドピンを、ドア面と平行方向に形成された直線長孔に第二ガイドピンを挿入するように設定しておくと、第二ガイドピンは当然ドア面と平行移動することになる。そして、第二ガイドピンの同軸位置に回転動作により負荷が発生する構成の減速部材を装着し、減速部材には係合円周面を設けておく。すると減速部材もドア面と平行に移動することになる。この減速部材の係合円周面が回転することにより一定の負荷を発生させる機構はどのようなものであっても良いが、ハウジング内に粘性の高いシリコンオイルと羽根状の部材とを収容して0リングにて密封されており、係合円周面が係合部材と係合して回転するとこの羽根状の部材が連動して回転し、オイルを押しのけながら回転することで負荷をかけるロータリーダンパーのような構成が適している。通常では係合円周面は歯車にて形成し、係合部材はラックを用いると噛み合わせとしては最も安定する。また、耐磨耗性能に優れた材質のワッシャ状の部材にて複数の皿ばね座金を挟み込んで係合円周面と連動して回転するように組付けた、ばねの押し圧力と摩擦力とを利用して回転時に負荷をかけるトルクヒンジ(スイーベルヒンジ)のような構成を用いても良い。
次に係合面を有した係合部材を設けて本体フタに装着する。このとき、係合面が前後移動ケースの直線長孔と平行になるように配置しておく。そして前後移動ケースが押しばねに押されて前方に位置している状態では係合面と係合円周面は一定の隙間を有した状態になるように配置しておく。すると、この状態のままでの引き込み用ばねによる揺動アームの動作においては、係合円周面と係合面とは接触することは無く、従って減速動作は発生しない。ところが前後移動ケースが押しばねを押し込んだ状態になると係合円周面が係合面に接触する係合動作が生じ、揺動アームの略曲線動作により減速部材の係合円周面と係合部材の係合面とが接触しながら直線運動し、減速部材が回転することにより負荷が発生し、その結果減速動作を得ることができる。ここで、係合円周面と係合面は接触した状態で大きな摩擦力を発生して減速部材を回転させる構成であればどのようなものでもよく、歯車とラックの組み合わせや、細かいローレット等の凹凸同士や、さらには両者共に目の粗い表面であっても良い。
つまり扉の閉鎖時において、揺動アームの軸受け凹部に上部軸が挿入される際に、扉の閉鎖速度が極小さくゆっくりと上部軸が軸受け凹部に挿入されると、押しばねを押し込むだけの力が前後移動ケースに掛からず、その結果減速部材の係合円周面と係合面は接触しないことになり減速の負荷は発生することなくそのまま引き込み用ばねの付勢力により閉鎖する動作を得ることになる。また急激に上部軸が軸受け凹部に挿入されると、その閉鎖力により前後移動ケースが押しばねの力を上回って押し込まれ、係合円周面と係合面とが接触することで減速部材の係合円周面が回転する負荷により減速動作が得られることになる。
また扉の急激な閉鎖の際の減速動作において、一定速度にまで扉の閉鎖速度が弱まった段階で、残っている閉鎖力より押しばねの力が上回った段階で前後移動ケースが再度前方に移動し、減速部材の係合円周面と係合面が離脱して減速動作が収束する動作を得、その後は引き込み用ばねの力により扉が最後まで閉鎖する動作を得ることができる。従って扉の閉鎖速度の強弱にかかわらず、どのような条件においても一旦閉鎖速度を減速させ、引き続き最後まで完全に閉じる引き込み動作が可能になる。
さらには、揺動アームの軸受け凹部に傾斜面を有した移動ピースを装着し、移動ピースは揺動アームの閉鎖状態で常にばね部材にて軸受け凹部を包み込む方向に付勢させておき、軸装置と本体装置が離脱している状態で誤作動により上部軸が挿入されることなく揺動アームが閉鎖位置に戻ってしまった状態においても、扉が閉鎖してきた最終段階で上部軸が移動ピースを押しのけて軸受け凹部に挿入可能とし、さらにその段階で移動ピースが元の位置に自然復帰保持されるように構成しておくと良い。
また別の構成としては、本体ケースと左右移動板と揺動アームとスイッチ板と減速部材と係合部材とから本体装置を構成する。このとき本体ケースは直線長孔と湾曲長孔とL型部分を有した異型長孔を備え、揺動アームは2本のガイドピンと軸受け凹部を有し、本体ケースの直線長孔と湾曲長孔に揺動アームの2本のガイドピンを挿入し、揺動アームが本体ケースに対して略曲線運動しながら出没するように両者を組み付ける。そして左右移動板にも本体ケースの直線長孔に挿入したガイドピンを同時に貫通させて揺動アームの略曲線運動に連動して本体ケース内を左右方向のみ移動可能にする。次に本体ケースに係合部材を、左右移動板に減速部材を配置してかつ両者に引き込み用ばねを装着し、揺動アームの没入動作時に連動する左右移動板の移動動作で減速部材と係合部材とによる減速動作を得る。また軸装置は円柱形の上部軸を有しており、本体装置と軸装置を扉の上部と枠体の上部に振り分けて配置する。
次に揺動アームは2本のガイドピンと湾曲長孔と直線長孔により案内され、本体ケース内に収納された没入状態から最も本体ケースから出っ張った突出状態までの一定角度範囲を固有の略曲線軌跡にて移動するように設定しておく。また前記揺動アームの先端にU字形状の軸受け凹部を設け、扉の閉鎖状態では上部軸が軸受け凹部の奥位置に挿入された状態で配置されており、扉の開放による上部軸の移動で揺動アームを略曲線運動させることが出来る。そして扉が所定角度位置にまで開放した段階で揺動アームは突出状態になり、更なる扉の開放で上部軸が揺動アームの軸受け凹部から離脱することになる。したがって揺動アームの軸受け凹部の形状は、扉の丁番等を中心とした円弧の軌跡上と同一に設定しておくとよい。そしてスイッチ板にスイッチピンを設け、揺動アームに重ねた状態で回転動作可能に配置し、本体ケースの異型長孔にスイッチピンを差込む。そしてスイッチ板先端の突起斜面が揺動アームの軸受け凹部に被さった揺動アームの出没可能な状態と、スイッチ板先端の突起斜面が揺動アームの軸受け凹部に被さっておらずにスイッチピンが異型長孔のL型部分に挿入した状態とを、上部軸の軸受け凹部の奥位置からの出入動作にて実施可能にする。
そして本体ケースの直線長孔をドア面と略平行な左右方向に配置し、係合円周面を備えかつ係合円周面が回転することにより一定量の負荷が発生する機構の減速部材を左右移動板に装着し、揺動アームの出没動作で同様に減速部材も連動して左右方向に移動するように構成しておく。そして本体ケースの左右方向に係合面を設けた係合部材を設けておき、揺動アームの出没動作による左右移動板の動作時に減速部材の係合円周面が係合部材の係合面に面対した状態で移動する動作を得る。また減速部材としては最初の構成と同様にオイル式のロータリーダンパーを用い、係合円周面を歯車形状にて形成し、係合部材の係合面を歯車と噛み合うラック形状にて形成する構成が適している。
次にさらに係脱突部を有した係脱プレートを設けて減速部材を乗せた状態で装着し、係脱プレートを左右移動板上で首振り可能な状態で装着する。そして左右移動板の移動動作により係合円周面と係合面が噛み合う配置と、噛み合わない配置を首振り動作により可能とし、さらに係脱ばねを常に係合円周面と係合面が噛み合わない方向に付勢させて配置しておく。
次に本体ケースに押し込み面を有した押し込み部材を装着し、減速部材を装着した係脱プレートと一定間隔隔てた状態で面対させて配置しておく。そして左右移動板の移動動作中の一定範囲内においては係脱プレートの係脱突部と押し込み面が当接して強制的に係脱プレートが首振り移動し、係合円周面と係合面が噛み合った係合状態での左右移動板の動作つまり減速部材による減速動作が得られる用に構成しておく。また残りの範囲においては係脱ばねの付勢力により係脱プレートが移動して係合円周面と係合面が噛み合わない解除状態で左右移動板が移動するように構成しておく。この係合円周面と係合面との係合状態の範囲を任意に設定することで、全体の減速量と一定速度にまで減速した段階での係合部材と係合円周面とが離脱する位置を選択することが出来る。
また減速部材に用いるオイル式のロータリーダンパーは係合円周面を有する歯車の片方向の回転時にのみ負荷が発生する構成のもので、その理想条件としては、低速回転時は発生負荷が小さく高速回転になるほど大きな負荷が発生する機構のものが良い。つまり引き込み用ばねを左右移動板と本体ケースに常に揺動アームが没入する方向に付勢させ、係合円周面と係合面が噛み合った状態においても減速部材の負荷より引き込み用ばねの力が勝っている状態においてはゆっくりと揺動アームが没入するように設定しておく。そして急激に揺動アームが没入して左右移動板が速い速度で移動すると、今度は逆に揺動アームの没入速度を減速させる動作になるように設定しておく。
実際の扉の開閉動作においては、揺動アームが本体ケースに没入しており、かつ上部軸が軸受け凹部に挿入されている閉鎖状態から扉を開放すると、上部軸に引かれて揺動アームが略曲線運動しながら突出し、引き込み用ばねを撓ませながら左右移動板が移動する。すると所定位置にて押し込み部材の押し込み面と係脱プレートの係脱突部が当接して持ち上がり、係脱プレート上の減速部材が係合部材側に移動し、係合円周面と係合面が噛み合った状態になる。そして揺動アームが最も突出した段階で上部軸が軸受け凹部から抜け出すと同時にスイッチ板が押されて移動してスイッチピンが異型長孔のL型部分に入り込み、そのまま揺動アームを最も突出した位置にて保持する。
また大きく開放した状態から扉を閉鎖すると、突出している揺動アームの軸受け凹部に上部軸が挿入し、スイッチ板を逆方向に回転させてスイッチピンが異型長孔のL型部分から外れて揺動アームの保持を解除させる。すると瞬時に引き込み用ばねと扉の閉鎖力によって揺動アームが没し始め、同時に左右移動板が元の方向に移動し、係合円周面と係合部材が噛み合っているため減速動作が得られる。そして所定の閉鎖力にまで減速した状態で減速部材に配置された係脱ばねの力によって係脱プレートが移動して係合円周面と係合部材が離脱する。すると減速動作は収束するため、その後は残っている引き込み用ばねの力により扉は最後まで完全に閉鎖する。
ここで、減速動作を解除させるときの閉鎖速度の設定が重要であり、理想としては急激な閉鎖時と緩やかな閉鎖時のどちらにおいても同じ程度の速度にまで一旦減速してから解除させる設定が良い。そこで強制的に減速動作を実施する範囲を、極緩やかに扉が閉鎖するときの動作においても扉が停止しない範囲に設定しておく。そして急激に閉鎖した場合においては係合円周面と係合部材との間に発生する摩擦力が係脱ばねの力に勝って、そのまま減速動作を継続させるようにしておくとよい。するとより広範囲の閉鎖速度において一旦所定速度まで確実に減速後、適切な状態での解除動作が得られることになる。
そのためには揺動アームの没入時から最大突出時までの動作による左右移動板の左右移動距離の全域にて引き込み用ばねの付勢力が持続するように設定しなくてはならない。しかしばねの特性としては撓みに略比例して力が大きくなるため、係合距離が長くなると非常に大きな撓み代が必要になり、さらには最大撓み状態と最小撓み状態での付勢力に大きな差が生じる。しかし減速部材の減速量は係合距離に略比例し、こちらにおいては長い距離係合させることが重要である。そこで両方の用件を兼ね合わせる別途手段として、新たに歯車やカム等を用いて減速部材の係合円周面と係合部材とを噛み合わせ可能な移動距離に対する引き込み用ばねの撓み長さの比率を小さくする構成を付加させると良い。
最初の構成では、扉の閉鎖速度が速いときにのみ係合円周面と係合面を係合させて減速動作を得、さらに一定速度にまで減速後には両者を離脱させる係脱機構を設けたため、この係合動作が発生するときの扉の閉鎖速度と減速後に離脱するときの速度を各々任意に設定することにより閉鎖速度の大小に比例した減速量が得られることになる。その結果どのような閉鎖条件であっても扉を比較的遅い所定速度にまで一旦減速し、引き続きそのまま緩やかに閉じる閉鎖動作を実現することが可能になる。
最初の構成では、扉の閉鎖速度が遅い場合には係合円周面と係合面が接触しないため減速動作にはならず、したがって確実に最後まで扉を引き寄せて閉鎖させることができる。その結果扉が最終閉鎖段階で閉まりきらないような誤作動を排除することが可能になる。
最初の構成では、上部軸が軸受け凹部から脱出した後の揺動アームの突出状態での傾斜角度を任意に設定することで、扉が閉鎖して上部軸が軸受け凹部に挿入されるときの奥方向へ押す力と左右方向に押す力の配分を自由に変えることが出来る。また本体ケースと前後移動ケース間の押しばねの強さも任意に設定することが出来る。つまり引き込み閉鎖力と減速量のバランスを簡単に変更できることになり、その結果あらゆる扉の閉鎖条件に適した減速機構付き閉鎖装置を提供することができる。
最初の構成では、減速部材の係合円周面が係合部材の係合面に接触して回転しながら直線移動する動作で減速させるため、その移動距離にて減速量を設定することができる。その結果、減速時の負荷を一定の移動距離にて分散させて受けることになり、減速部材の必要とする単位回転角度あたりの負荷はそれほど強いものでなくても可能である。すると短い閉鎖角度での急激な減速動作ではなく、比較的大きな閉鎖角度範囲にて減速動作を実施し、円滑に徐々に減速させることが可能になる。
最初の構成では、揺動アームの軸受け凹部に傾斜面を有した移動ピースを装着し、移動ピースを揺動アームの閉鎖状態で常にばね部材にて軸受け凹部を包み込む方向に付勢させておくと、上部軸が大きく本体装置から離脱している扉の開放状態で、上部軸が軸受け凹部に挿入せずに誤作動により揺動アームが閉鎖位置に戻ってしまった状態においても、扉が閉鎖してきた最終段階で上部軸が移動ピースを押しのけて軸受け凹部に挿入可能になり、誤作動を防止することが出来る。さらに上部軸が軸受け凹部の奥位置に挿入された段階で移動ピースが元の位置に復帰保持するように構成しておくと、次回の扉の開閉操作にも全く支障をきたさない構成を得ることができる。
最初の構成では、係合円周面と係合面との接触による負荷の発生頻度は扉が一定速度以上で閉鎖してきたときのみに限定されるため、減速部材の機能としては耐久回数における性能面で簡易なものを採用することができる。従って減速部材に複雑なオリフィス等を有した油圧の高価なものを使用する必要は無く、皿ばねの押し圧力と摩擦力とを利用して回転時に負荷をかけるトルクヒンジ(スイーベルヒンジ)のような単純な構成や、ハウジング内に粘性の高いオイルと羽根状の部材とを収容して密封するだけの、回転動作で羽根状の部材がオイルを押しのけながら回転する安価なロータリーダンパー程度でも十分対応可能である。
別の構成においては、一旦必ず減速動作を実施し、閉鎖速度の大小によって減速動作である係合円周面と係合部材との係合距離を係脱機構により適宜調整する構成のため、より細かく減速及びその後の閉鎖条件を設定することが可能である。
別の構成においては、スイッチピンを有したスイッチ板の採用により開閉時の揺動アームの突出位置を確実に保持することが出来、扉の開放中に揺動アームが戻ってしまうような誤作動を確実に防止することが可能である。
別の構成においては、揺動アームの出没動作に連動した左右移動板の移動距離に対して、別途ギアやカム等を用いてそれぞれを連結することにより引き込み用ばねの撓み代を小さくし、減速部材の係合円周面と係合部材との最大係合距離を長くすることが可能であり、さらに条件の良い減速閉鎖動作を実施することが可能である。
どちらの構成においても比較的簡単な構成であり、部品点数も少なく安価に提供可能である。さらには減速部材のサイズを一定の負荷を確保した状態でさらに薄くできると、本体装置全体の厚みを薄くすることが可能になり、上枠に本体装置を掘り込んで装着する内蔵タイプとして適応させることも可能である。また、扉に面付けした場合においても全体としては比較的コンパクトなサイズにできるためデザイン性に優れた形態にて提供可能である。
以下図面に基づいて本発明に関する減速機構付き閉鎖装置の実施の形態を説明する。図1〜図17は本発明の第一の実施形態を示しており、図1は本発明の減速機構付き閉鎖装置の本体装置aの上面図であり、図2は本体装置aの正面図である。図1及び図2に示すように本体装置aは本体フタ1と前後移動ケース2と揺動アーム3と引き込み用ばね4と減速部材5を主な部材として構成している。また、図3は軸装置bの上面図であり、図4は軸装置bの正面図である。軸装置bは図3及び図4に示すように上部軸6と軸移動片7と軸取り付けベース8とから構成されている。そして図1での本体装置aは扉45が閉じた状態を示しており、図5に示すように枠体と扉45からなるドアの、上枠44に本体装置aを、扉45の上部に軸装置bを振り分けて配置しておく。また図5は扉45が所定角度位置よりもさらに僅かに開いており、本体装置aと軸装置bとが離脱している状態を示している。
図6は本体フタ1の上面図であり、ハット型形状で両端に取り付け孔を有し、奥位置に係合面10を有する係合部材9を係合面10がドア面と平行方向になるように装着しておく。そして係合部材9の両側に押しばね接地面11を設けておく。図7はコの字形状の前後移動ケース2の上面図であり、中央位置に湾曲長孔12と直線形状でドア面と平行方向の直線長孔13を設け、奥位置に2ヵ所の押しばね接地面11を設け、湾曲長孔12の横位置に前方から奥方向に向かって上部軸挿入溝14を形成し、さらにばね掛けピン15を装着しておく。そして前後移動ケース2の立ち上げ両側面位置に前後長孔16を設け、図2に示すように本体フタ1に前後移動ケース2が嵌まり込むように組み込み、前後長孔16内に貫通されるように案内ピン17を本体フタ1に差し込んだ状態で構成しておく。このとき本体フタ1と前後移動ケース2の押しばね接地面11同士が面対するように設定しておき、互いの押しばね接地面11間に押しばね18を挿入しておく。図8は本体フタ1に前後移動ケース2を組み付けた状態の上面図であり、本体フタ1に対して前後移動ケース2は前後方向に前後長孔16にて設定された距離のみ移動可能なことになり、押しばね
18により前後移動ケース2が常に前方向に付勢されている状態になっている。
図9は揺動アーム3の上面図であり、揺動アーム3は板状で先端位置に傾斜角度を有したU字形状の軸受け凹部19を設けておく。そして揺動アーム3の水平面位置から下向きに第一ガイドピン20と第二ガイドピン21を装着し、第一ガイドピン20の上側をばね掛けピン15としても形成しておく。図10は揺動アーム3に減速部材5を装着した状態の上面図であり、図11は正面図である。図11に示すように減速部材5を第二ガイドピン21と同軸上の揺動アーム3の上面に配置する。減速部材5は円形の係合円周面22を有し、回転動作により一定の負荷が発生する機構を具備した構成が適している。
また第一実施形態では減速部材5の係合円周面22や係合部材9の係合面10を細かい歯車とラックのように表現しており、この組み合わせが両者の噛み合わせという点で最も優れている。しかしこの係合円周面22や係合面10の表面状態に関しては特に制限は無く、両者が接触したときに滑らずに摩擦によって係合円周面22が回転することが重要である。従ってより細かい凹凸を有したローレットのような表面同士や、さらにはサンドペーパーの表面のような摩擦面同士であってもよい。
さらには減速部材5の回転動作により負荷が発生する構成として、図10や図11では耐磨耗性能に優れた材質のワッシャ状の部材にて複数の皿ばね座金を挟み込んで回転するように組付けた、ばねの押し圧力と摩擦力とを利用して回転時に負荷をかけるトルクヒンジ(スイーベルヒンジ)のような構成にて表記している。しかしこれらの構成も特に制限されるものではなく、ハウジング内に粘性の高いオイルと羽根状の部材とを収容して0リングにて密封されており、係合円周面22が回転するとこの羽根状の部材が連動して回転し、オイルを押しのけながら回転することで負荷をかけるロータリーダンパーのような構成も適しており、さらには他のどのようなものを用いても良い。また第一実施形態では回転により発生する負荷の回転の方向性には制限は無いため、ロータリーダンパーを用いるときは、どちらの方向に回転させても同じだけの負荷がかかる最も単純で安価とされているものでよい。
そして図1及び図2に示すように減速部材5を取り付けた揺動アーム3を前後移動ケース2に乗せたような状態で、第一ガイドピン20を湾曲長孔12に、かつ第二ガイドピン21を直線長孔13に挿入した状態で装着する。また、引き込み用ばね4は捻りばねが適しており、両腕の先端を円形に巻き込んだ形状にし、前後移動ケース2のばね掛けピン15と揺動アーム3のばね掛けピン15に装着する。このとき引き込み用ばね4の自然形状は両腕が直線状になっている状態に設定しておく。つまりこの引き込み用ばね4は圧縮されて両腕の角度が小さくなった状態からは広がろうとする方向に付勢することになる。そして図1に示す扉45が閉じた揺動アーム3が両ケース内に収納された状態で、本体フタ1の係合部材9の係合面10が減速部材5の係合円周面22に一定の隙間を有して面対するように設定しておく。
上記のように構成することで、揺動アーム3は前後移動ケース2に対して湾曲長孔12と第一ガイドピン20、同時に直線長孔13と第二ガイドピン21とにより案内されて、固有の軌跡のみ移動可能に設定することができる。その軌跡を揺動アーム3を重ねて配置した状態で図12に示している。図1に示す閉鎖状態では、第一ガイドピン20は湾曲長孔12の奥端部に配置されており、同時に第二ガイドピン21及び減速部材5は直線長孔13の片端部に配置されている。この状態から図12に示すように、第一ガイドピン20は湾曲形状の湾曲長孔12を手前側に移動し、同時に第二ガイドピン21は直線長孔13を他端部に直線移動する動作になり、両ガイドピンが両長孔の逆端部に至った状態にまで揺動アーム3は略曲線移動することになる。
この揺動アーム3の略曲線移動において重要な点が二点あり、最初の一点は第二ガイドピン21と同軸上に配置された減速部材5はドア面と平行に移動する点である。またもう一点としては、ドア全体の開閉軌跡に関係することで、図5に示す開放位置でのドア全体の横断面図である図13に基づいて説明する。ここで軸装置bの上部軸6は当然扉45と共に回転動作するため、図13に示すように揺動アーム3の軸受け凹部19のU字形状の奥位置が、扉45の上部に配置した上部軸6の丁番等の開閉保持金具42を中心とした円弧軌跡上を移動するように設定しておく必要がある。そして、さらに両ガイドピンが両長孔の逆端部に至った状態で軸受け凹部19の方向も同様に上部軸6の丁番等の開閉保持金具42を中心とした円弧軌跡に沿うように設定しておくことが重要である。
次に図14にて、図1に示す扉45の閉鎖状態から扉45を開放して軸受け凹部19から上部軸6が離脱するまでの動作を揺動アーム3と引き込み用ばね4の移動を主に説明する。また図14では分かりやすく表記するために軸装置bと扉45は省略し、上部軸6のみを記載しておく。図14(a)は図1と同様の扉45の閉鎖状態を示しており、揺動アーム3は前後移動ケース2内に没入しており、第一ガイドピン20は湾曲長孔12の奥端部に位置し、同時に第二ガイドピン21及び減速部材5は直線長孔13の片端部に位置している。そして上部軸6は揺動アーム3の上部軸挿入溝14の奥位置に配置されており、傾斜角度を有した軸受け凹部19が被さった状態になっている。この状態から扉45を開くと上部軸6が上部軸挿入溝14内を移動しようとするのであるが、軸受け凹部19が被さっているため揺動アーム3が引き出される動作になる。
その結果、図14(b)に示すように両ガイドピンが両長孔内を移動することになり、引き込み用ばね4を圧縮しながら図14(c)を経て図14(d)にまで移動することになる。するとこの図14(d)の段階で両ガイドピンが両長孔の逆端部に到達して停止し、同時に軸受け凹部19の方向がちょうど上部軸6の丁番等の開閉保持金具42を中心とした円弧軌跡と同方向になり、上部軸6が揺動アーム3の軸受け凹部19から離脱する。ここで、この図14(d)の状態での扉45の開き角度を所定角度位置とする。そして所定角度位置以降においても引き続き扉45は本体装置aと軸装置bが分離された状態のままでさらに大きく開放することができる。また上記の扉45を開放する動作においては、前後移動ケース2は押しばね18に押された状態で前方位置にて保持されており、従って図14に示すように減速部材5の係合円周面22と係合部材9の係合面10間に一定の隙間を有した状態で揺動アーム3は移動することになる。
また図14に示す一連の動作にて徐々に引き込み用ばね4は圧縮されることになる。そこで、湾曲長孔12の曲線に合わせて、前後移動ケース2側のばね掛けピン15の位置を適宜設定するとよく、このとき上部軸6が軸受け凹部19から離脱した後も図14(d)の位置で引き込み用ばね4及び揺動アーム3が停止保持されるように構成することが重要である。その手段の一例としては、揺動アーム3が図14(a)の閉鎖位置から最大突出位置である図14(d)の状態に移動する範囲内で、最大突出位置直前の位置を境として両方向に振り分けて付勢するように引き込み用ばね4を配置するとよい。つまり引き込み用ばね4が付勢する方向(両ばね掛けピン15を結んだ線)に対して図14(d)での湾曲長孔12の接線方向がほぼ直角に近い範囲内に設定しておくと、引き込み用ばね4は図14(d)の位置から戻ろうとすること無くその位置を保持する動作が得られる。また別の案としては、図示はしないが、揺動アーム3が移動する最終段階での図14(d)の直前位置に別途弾性部材等を装着し、軽い力で乗り越えてから図14(d)の位置に到達するように設定し、この軽い力が引き込み用ばね4の戻ろうとする力より極僅かのみ勝るように設定しておく等の手段でも揺動アーム3を最大突出位置で保持することが可能になる。
次に扉45を大きく開放した状態から閉鎖した時の動作について説明する。このときの動作においては扉45の閉鎖速度が重要になり、まず扉45を比較的低速度で閉鎖する場合において説明する。この場合はほぼ図14(d)から図14(a)への逆の動作になる。順を追って説明すると、本体装置aから軸装置bが離脱している状態から扉45を閉じると、図14(d)に示すように上部軸6が揺動アーム3の軸受け凹部19に挿入され、揺動アーム3を押し込もうとする力が掛かる。ここで揺動アーム3は最大突出位置でドア面に対して傾斜した状態で保持されており、従ってこの押し込もうとする力は斜め方向に、つまり前後方向と左右方向の両方向の総和としてかかることになる。ところが、前後移動ケース2は本体フタ1に対して押しばね18により手前方向に付勢されている状態である。従って閉鎖時に上部軸6が揺動アーム3を押し込むときの前後方向への力が押しばね18の付勢力より小さくなる速度範囲では、押しばね18が圧縮されること無く前後移動ケース2の位置はそのままで、係合円周面22と係合面10間に一定の隙間を有したまま揺動アーム3のみが移動することになる。
そして、この図14(d)から図14(c)に至る動作の初期段階で、引き込み用ばね4が付勢する境の位置を越えることになり、引き込み用ばね4の両腕が広がりながら上部軸6と共に揺動アーム3を引き込み、図14(b)を経て図14(a)の閉鎖状態にまで扉45を引き寄せる動作になる。ここで軸受け凹部19の向きが重要であり、図14(d)の状態で軸受け凹部19は扉45の開閉のための丁番等の開閉保持金具42を中心とした円弧の軌跡とほぼ一致しており、図14(c)の段階ではすでに軸受け凹部19の角度が変化して上部軸6に被さった状態になっている。したがって閉鎖途中で上部軸6が軸受け凹部19から抜けることなく揺動アーム3と共に扉45を引き寄せる動作になり、確実に扉45を閉鎖させることが可能になる。また図14(a)に示すように、この状態においても引き込み用ばね4は僅かに圧縮されてもう少し力を余らせておくとより確実に最後まで扉45を閉鎖させることができる。
今度は扉45が急激に閉鎖した場合の動作について図15にて説明する。図15(a)は図14(d)と同じ状態を示しており、この揺動アーム3の最大突出状態で上部軸6が軸受け凹部19に強く挿入されると当然前述の前後方向への押す力が大きくなり、この力が前後移動ケース2を前方に押し付けている押しばね18の力を上回った段階で揺動アーム3を含む前後移動ケース2全体が奥方向に移動することになる。すると図15(b)に示すように減速部材5の係合円周面22が係合部材9の係合面10に押し付けられながら接触する係合動作が生じることになる。そして同時に扉45の閉鎖による左右方向への力と引き込み用ばね4による左右方向への付勢力が掛かっているため、図15(c)に示すように揺動アーム3は略曲線動作を実施する。この略曲線動作で減速部材5は左右直線移動するため、係合円周面22と係合面10の係合動作で係合円周面22が回転して減速部材5により負荷が発生する。この負荷が扉45の閉鎖速度を減少させ、その結果扉45自身が持っていた閉鎖力も徐々に減少する。すると当然前後方向に押し込もうとする力も減少していくことになり、この前後方向に押し込む力が押しばね18の力より小さくなった段階で、図15(d)に示すように再度揺動アーム3を含む前後移動ケース2が手前方向に持ち出されることになり、減速部材5の係合円周面22と係合部材9の係合面10が離脱する。すると減速部材5による負荷は無くなり、この状態では引き込み用ばね4による左右方向への閉鎖力が残っており、そのまま連続して扉45は閉鎖される。
この係合円周面22が係合面10と接触して係合することで発生する減速量は、係合円周面22の回転角度と減速部材5の単位角度あたりの負荷の積になり、係合円周面22と係合面10が接触しながら減速部材5が移動する距離により決定されることになる。また本体フタ1と前後移動ケース2間に挿入されている押しばね18の力は任意に設定できるため、係合円周面22と係合面10が離脱するときの扉45の閉鎖速度も任意に設定することが可能になる。つまり減速動作が発生する所定速度以上の閉鎖条件であっても、かろうじて押しばね18を押し込む程度の閉鎖速度であれば、係合円周面22と係合面10の係合距離は短く全体の減速量は小さくなり、非常に急激な閉鎖では係合距離が長く続き大きな減速量が得られることになる。つまり扉45の閉鎖速度の大小によって自動的に減速量が変化することになり、その結果扉45の閉鎖速度の強弱にかかわらず、常に適正な速度にまで減速動作を実施し、その後緩やかに最後まで完全に閉鎖させる扉45の引き寄せ閉鎖動作を得ることが可能になる。
以上の閉鎖条件をまとめると、扉45の閉鎖速度が小さい場合は、押しばね18を押し込むだけの力が前後移動ケース2に掛からず、その結果減速のための負荷は発生することなくそのまま引き込み用ばね4の付勢力により閉鎖する動作を得ることになる。また一定速度以上で閉鎖する場合は、前後移動ケース2が押しばね18の力を上回って押し込まれ、係合円周面22と係合面10とが接触し、閉鎖力の大小に比例した適切な減速動作が得られ、一定の速度まで閉鎖速度が減少した段階で減速動作が収束し、その後は引き込み用ばね4の力により扉45が最後まで閉鎖する動作になる。
ここで上記のような減速動作が発生し、かつ一定速度にまで減速された後に係合動作が解除される係脱動作の分離点となる速度の設定が重要である。この設定方法に関しては、扉45の開放状態で揺動アーム3が最大突出状態で保持されるときのドア面に対する傾斜角度が大きいほど前後方向への掛かる力の比率が増すことになり、前後移動ケース2を手前方向に付勢している押しばね18の強さとの兼ね合わせにおいて適宜設定してやるとよい。また減速部材5の単位回転角度あたりの負荷の大きさと、引き込み用ばね4の付勢力をバランスよく設定することで最適な減速動作とその後の引き寄せ閉鎖動作を実施することができる。
次に、上記にて説明した減速付き閉鎖動作をより確実に実施するための他の諸条件に付いて説明する。前述では扉45の閉鎖時に上部軸6が揺動アーム3の軸受け凹部19に適切に挿入されることが重要であると記したが、ここで枠体に対して扉45の位置は丁番等の開閉保持金具42に装備されている建付け調整機能にて位置調整することがある。すると上部軸6と軸受け凹部19の位置関係が微妙に変化することも想定される。そこで上部軸6を扉45に対して常に左右移動のみ可能なように構成し、他方向へはぐらつくことなく、かつ移動後には一定の力でその位置を保持する手段を設けておくとよい。
その構成の一例としては、図3及び図4に示すように垂直方向に円柱形状の上部軸6を板状の軸移動片7に固定しておき、軸取り付けベース8に軸移動片7を左右方向にのみ移動可能な状態で組みつけて軸装置bを構成しておく。そして軸取り付けベース8を扉45上部に装着する。さらに軸取り付けベース8に対して軸移動片7がばね部材23に押されて摩擦を有した状態で移動可能にしておくと、上部軸6を軸受け凹部19に対して適正な位置に左右移動させることができ、さらに移動後の位置を常にそのままの状態で保持することが可能になる。
また扉45の開放時には、揺動アーム3は最大突出位置にて保持されているのであるが、扉45の閉鎖動作での上部軸6の挿入以外であっても何らかの別の動作で揺動アーム3を押し込むと、揺動アーム3は閉鎖位置に戻ってしまうことが問題点として想定される。すると扉45は開放したままなのに揺動アーム3は没した状態になってしまい、そのまま扉45を閉じると揺動アーム3の軸受け凹部19の手前辺に上部軸6が当接して完全に扉45が閉じなくなる誤作動が生じる。通常の通行時にはこのような現象は発生しないのであるが、例えば背の高い荷物を持ってドアを通る場合などに荷物の上部を揺動アーム3にぶつけてしまうようなことは十分有り得ると考えられる。
単純な対策手段としては再度扉45を開放し、上枠44を見上げたような状態で棒状の細いものを没した状態の揺動アーム3の軸受け凹部19に差し込んで揺動アーム3を最大突出位置にまで引き戻すことは可能である。しかし誤って揺動アーム3を没してしまったことに気付かず、そのまま強く扉45を閉鎖させてしまうと軸受け凹部19の手前辺に上部軸6が衝突し、破損させてしまう等の危険性も生じる。そこでさらに確実に誤作動を排除する手段を図16にて説明する。
まず、軸受け凹部19の手前辺を排除した形状にて揺動アーム3を形成し、傾斜面24を有した移動ピース25を揺動アーム3の軸受け凹部19の手前位置に装着する。このとき移動ピース25の奥辺にて手前辺を排除する前の軸受け凹部19と同じ形状を形成し、さらに傾斜面24が上部軸挿入溝14の外向きになるように配置しておく。そして移動ピース25にばね部材23を装着し、常に軸受け凹部19の内面形状を形成するように付勢させておくとよい。すると、誤動作が生じて揺動アーム3が没した状態からでも、そのまま扉45を閉鎖させると上部軸6が移動ピース25の傾斜面24に当接し、移動ピース25を押しのけて軸受け凹部19の奥位置に挿入できるように構成しておくとよい。
その移動ピース25の動作の一例としては、図16(a)に示すように移動ピース25を直線動作させる構成があり、揺動アーム3が没した状態から上部軸6が押し込まれると、傾斜面24に当たって移動ピース25はスライド移動し、軸受け凹部19の奥位置にまで上部軸6は挿入可能となり、その最終段階でばね部材23により移動ピース25が元の位置に復帰保持し、適正な閉鎖状態に戻すことが可能である。また他の例としては図16(b)に示すように移動ピース25を回転動作させる構成があり、同様に揺動アーム3が没してしまった状態であっても、扉45の閉鎖と共に上部軸6が傾斜面24に当たって移動ピース25がばね部材23に逆らって回転し、上部軸6は軸受け凹部19の奥位置に挿入し、その最終段階で移動ピース25が元の位置に復帰保持するように構成しておくとよい。また、どちらにおいても上部軸6が軸受け凹部19の奥位置に挿入された状態から扉45が開放する動作では移動ピース25は移動しないように規制しておくとよい。また誤作動防止の手段としては図16に示す2件に限らず、他のどのような方法を用いてもよい。
ここで、上記の移動ピース25を用いた誤作動防止の構成と前述の軸移動片7と軸取り付けベース8を有する上部軸6の位置調整手段を複合させることで、さらに発展させた自動調整機構を得ることも可能である。その手段としては、上部軸挿入溝14の入り口付近を大きなC面若しくはR面にて形成しておき、揺動アーム3には上記のいずれかの移動ピース25を装着しておく。次にあえて軸装置bと本体装置aが分離した扉45の開放状態のままで揺動アーム3を本体装置a内に収納された閉鎖位置に戻しておく。そして、その状態から扉45を閉鎖させると、本体装置aの上部軸挿入溝14と軸装置bの上部軸6の位置関係がずれていたとしても、上部軸6が上部軸挿入溝14の入り口のC面等に当接して自動的に左右方向に案内されることになり、そのまま挿入されて最終段階で移動ピース25を移動させて軸受け凹部19の奥位置に配置されることになる。この構成は使用途中での誤作動を防止するだけではなく、最初にドアを施工するときの枠体に扉45を吊り込む際においても有効であり、特に意識して本体装置aと軸装置bの位置を調整する手間を省くことが可能になる。
また、本発明の扉用減速機構付き閉鎖装置はドアの上部に配置されるため、当然デザイン性においても考慮する必要がある。ここでデザイン面を重要視すると本体装置a及び軸装置bを両方上枠44と扉45の上部に振り分けて掘り込んで内蔵させ、外部からほとんど見えない構成が最もデザイン的にはよいと想定される。しかしその反面上枠44の掘り込み等が複雑になり、また大きく掘り込みすぎると上枠44自体の強度を損ねることも有り得る。そこで上記実施形態においては図13に示すように軸装置bを扉45の上面の厚み方向内に配置し、本体装置aは上枠44にほぼ内蔵されているが、一部前面のみ露出したような構成にしている。これは通常頻繁に使用されているドアの上枠44のサイズに対して製作しようとする本体装置aのサイズが若干大きいため、上枠44の戸当たり43を切断してまで完全に内蔵させるよりも前部を露出させた構成のほうが優れていると判断したものである。
そこで少しでもデザイン性を向上させるために、本体装置aの前部露出部分に樹脂の化粧カバー等を被せるとよい。図17は本体装置aに化粧カバーを取り付けた状態を示しており、図17(a)は上面図であり図17(b)は正面図である。図17(a)に示すように化粧カバーは本体装置aの露出部分のみをなだらかな曲面で覆うようなものでよく、突出した感覚を持たせないような形状がよいと想定される。また本体装置aの揺動アーム3は板状で薄い形状であり、図12に示すように略曲線動作しながら出没するため、図17(b)に示すように化粧カバーの正面の揺動アーム3出没用の窓は比較的小さくてよいことも好条件である。
さらには本体装置aと軸装置b両方を上枠44と扉上部に面付けする構成も当然可能であり、図13に表記した状態の本体装置aと軸装置b全体を、扉が開く方向に持ち出して面付けする配置や、図示はしないが、上枠44の戸当たり43より下部位置に両者を配置し、閉鎖時の扉45位置に対して戸当たり43側に本体装置aと軸装置b両方が面付け状態で配置されるような構成であってもよい。また実施形態では上枠44に本体装置aを、扉上部に軸装置bを装着しているが、この配置に限定されるものではなく、本体装置aを扉上部に、軸装置bを上枠44に装着する逆の構成も可能である。
次に図18〜図28に基づいて本発明の第二実施形態を説明する。図18は第二実施形態での扉45が所定角度位置付近まで開放されている状態の上面図である。図19は第二実施形態での本体ケース26の上面図であり、図20は揺動アーム3の上面図であり、図21は本体フタ1の上面図である。軸装置bに関しては第一実施形態とほぼ同様のものが使用可能であり、したがって具体的な説明は省く。また本体装置aと軸装置bを上枠44と扉45の上部に振り分けて配置する構成も、第一実施形態と同様に掘り込み状態や面付け状態等が可能であり、図18では両者を面付け状態で装着して表記しているが、施工性を重視するかデザイン性を重視するか等にて適宜対応することが可能である。
本体ケース26は図19に示すように第一実施形態の前後移動ケース2に類似しており、同様の役割を果たす湾曲長孔12と直線長孔13と上部軸挿入溝14を有している。そして軸受け凹部19を有する揺動アーム3には同様に第一ガイドピン20と第二ガイドピン21を設け、第一ガイドピン20を湾曲長孔12に、第二ガイドピン21を直線長孔13に挿入させた状態で本体ケース26に組み付けておく。また第二ガイドピン21は上方向にも突出させておくと良い。すると第二実施形態においても本体ケース26に対する揺動アーム3の出没動作は第一実施形態での前後移動ケース2に対する揺動アーム3の出没動作と同じ略曲線運動が得られることになる。ここでさらに第二実施形態では本体ケース26にさらにL型部分33を有する異型長孔32を設けておく。
そして第二実施形態では図22に示すように板状のスイッチ板27を設け、片端にスイッチピン28を垂直方向に立てた状態で装着し、他端に突起斜面29と上部軸受面30を配置し、中央位置にスイッチ板回転軸31を設けておく。そして揺動アーム3にはスイッチピン28を貫通させる長孔を設けておき、揺動アーム3にスイッチ板27を乗せた状態でスイッチ板回転軸31にて回転可能にしておく。そしてスイッチピン28を本体ケース26の異型長孔32に挿入しておく。このとき揺動アーム3に対するスイッチ板27の回転可能角度は小さくてよく、揺動アーム3の軸受け凹部19にスイッチ板27の突起斜面29か上部軸受面30のどちらかのみが被さっている範囲を回転移動するように設定しておく。図23はその状態を示した上面図であり、図23(a)は揺動アーム3の没入状態を、図23(b)は最大突出状態でスイッチ板27が回転移動する状態を示している。
扉の閉鎖状態である図23(a)ではスイッチピン28は異型長孔32の奥端部に配置しており、異型長孔32の幅はスイッチピン28の直径よりも僅かにのみ広く設定してあり、揺動アーム3の出没時の略曲線動作に対してスイッチピン28がそのまま移動可能である軌跡にて形成されている。したがってスイッチ板27は揺動アーム3に対して回転不可な状態になっている。そして揺動アーム3の軸受け凹部19にスイッチ板27先端の突起斜面29が被さり、上部軸受面30はぎりぎり被さっていないように設定しておく。次にこの状態を保持したまま揺動アーム3が図23(b)に示す突出状態にまで移動すると、スイッチピン28は異型長孔32のL型部分33との交差点に移動する。ここで本体ケース26のL型部分33の形状を揺動アーム3の突出状態でのスイッチ板回転軸31を中心とした円弧軌跡にて形成しておくと、最大突出状態ではスイッチ板27の回転動作が可能になる。
ここで、上部軸6は第一実施形態同様に軸受け凹部19に配置されており、揺動アーム3が突出した図23(b)の状態にて離脱しようとするのであるが、スイッチ板27の突起斜面29が被さっており、その結果上部軸6は突起斜面29を押してスイッチ板27を回転させて離脱することになる。するとスイッチピン28はスイッチ板回転軸31を中心に回転してL型部分33の奥に移動することになり、最大突出位置で上部軸6が抜けた段階で揺動アーム3の没入を阻止することが出来る。また同時に揺動アーム3の上部軸受面30が軸受け凹部19の奥部に被さるように設定しておくと、今度は扉45が閉鎖してきて上部軸6が軸受け凹部19に挿入された段階で上部軸受面30を押し込む動作になり、スイッチ板27の逆方向の回転が実施され、その結果揺動アーム3の没入動作が可能になる。
また第二実施形態ではさらに図24に示すような、第二ガイドピン挿入孔38を備えた左右移動板34を設け、直線長孔13に挿入された揺動アーム3の第二ガイドピン21に差し込んで両者を連動させ、本体ケース26に対してドア面と平行な左右方向にのみ移動可能な状態で装着する。すると左右移動板34は揺動アーム3の出没動作に連動して本体ケース26内で左右方向に移動することになる。そして常に揺動アーム3が没入する方向に力がかかるように本体ケース26と左右移動板34間にばね掛けピン15を用いて引き込み用ばね4を装着しておく。第二実施形態では図19に示すように本体ケース26に直線長孔13をもう一個形成しておき、左右移動板34にももう一個ガイドピンを設けて互いを差込み左右移動板34の直線運動の案内としている。
次に図25に示すような板状で係脱突部36を有した係脱プレート35を設け、その上に減速部材5を乗せた状態で一体化しておく。また第二実施形態では減速部材5には係合円周面22である歯車の片方向の回転時にのみ負荷が発生する構成のオイル式のロータリーダンパーを用いるとよく、その理想条件としては、低速回転時は発生負荷が小さく高速回転になるほど大きな負荷が発生する機構のものが良い。そして係脱プレート35を左右移動板34上で一定角度範囲のみ首振り可能な状態にて装着し、係脱プレート35と左右移動板34間に係脱ばね37を設けて常に係合円周面22と係合面10が離れる方向に付勢させておく。この係脱ばね37には捻りばねが適している。また第二実施形態では係脱プレート35にも第二ガイドピン挿入孔38を設け、揺動アーム3の第二ガイドピン21に差し込んで左右移動板34と連結しておく。
次に図26に示すような係脱用斜面41と押し込み面40を有した押し込み部材39を設け、本体ケース26の直線長孔13の手前位置に装着する。また図21に示すように本体フタ1に係合面10を有した係合部材9と、ばね掛けピン15を装着しておく。そして本体ケース26に被せるようにして本体フタ1を装着して本体装置aを構成する。このとき係合部材9の係合面10と減速部材5の係合円周面22が同一水平面上で面対した状態になる用に設定しておく。
図27(a)は第二実施形態での扉45が閉じている状態の本体装置aの上面図であり、上部軸6は簡略化して軸部のみを円形にて表示している。この状態では揺動アーム3は本体ケース26内に没入しており、左右移動板34も引き込み用ばね4により本体ケース26内の片端部に位置している。また図27では引き込み用ばね4は引きばねにて表示しているが、特に限定されるものではない。この状態で係脱プレート35は係脱ばね37により係合部材9とは離れる方向に首振りしている。そして係脱突部36は押し込み部材39とは一定距離離れた状態で配置してあり、押し込み部材39の係脱用斜面41と係脱プレート35の係脱突部36が同一左右線上になるように構成しておく。
この状態から扉45を開けると、図27(b)に示すように上部軸6に引かれて揺動アーム3が突出し、その動作に連動して引き込み用ばね4を伸ばしながら左右移動板34が移動する。すると減速部材5と係脱プレート35も同方向に移動するが、その初期範囲においては係合円周面22と係合面10は離れた状態のままである。そして一定距離移動すると、係脱プレート35の係脱突部36が押し込み部材39の係脱用斜面41に当接し、強制的に首振り動作にて持ち上げられ、その後は係脱突部36が押し込み面40に接した状態で移動することになる。したがって押し込み面40は左右方向に対して平行な面で構成しておかなければならない。
そして係脱プレート35が首振り動作により持ち上がった状態で係合面10であるラックと係合円周面22である歯車が最も適正に噛み合うように設定しておき、その状態を係合状態とする。さらにこの係合面10と係合円周面22が噛み合う瞬間の左右方向の位置を係脱位置とする。そしてこの係合状態で第二ガイドピン21と、係合面10と係合円周面22の接点を結ぶ線が左右移動板34の移動する左右方向に対して一定の首振り角度を有しているように設定しておく。ここで、当然係脱位置からは係合円周面22である歯車は回転することになるのであるが、扉45の開放段階であるので開放操作が重くならないように減速部材5としては歯車の片方向の回転時にのみ負荷が発生するワンウエイクラッチのものを使用し、この方向での回転動作には負荷が発生しないようにしておくとよい。
そしてさらに引き込み用ばね4を伸ばしながら図27(c)に示すように揺動アーム3は最大突出位置にまで移動し、上部軸6が軸受け凹部19から抜ける際に前述のスイッチ板27の回転動作が実施され、スイッチピン28が異型長孔32のL型部分33に挿入されて揺動アーム3は最大突出位置を保持することになる。またこの状態で第二ガイドピン21は直線長孔13の逆の端部に移動しており、押し込み部材39の押し込み面40もこの位置まで係脱プレート35を持ち上げているように設定しておく。
次に扉45の閉鎖時について図27(c)から図27(a)に戻る動作として説明する。まず上部軸6が軸受け凹部19に挿入されると同時に前述のようにスイッチ板27が再度逆方向に回転して揺動アーム3の没入動作が可能になる。また引き込み用ばね4は最も伸びた状態であり、したがって揺動アーム3の没入動作とともに左右移動板34が移動し、係合面10であるラックと係合円周面22である歯車が噛み合って減速部材5による負荷が発生する。つまり第二実施形態では第一実施形態とは異なって閉鎖初期段階では必ず一旦減速動作が実施されることになる。そして、ここまでは扉45の閉鎖速度には関係しないが、その後の動作においては扉45の閉鎖速度により異なった動作になり、まず比較的ゆっくり低速度で扉45を閉鎖したときについて説明する。
扉45の閉鎖速度がゆっくりの場合は、減速動作が開始した直後に扉自体の閉鎖力はほぼなくなり、すると引き込み用ばね4の力だけが残ることになる。この段階では引き込み用ばね4はかなり伸ばされた状態であり、引き込み力もまだ強いため徐々に閉鎖方向に左右移動板34が移動する。しかし引き込み用ばね4の力は徐々に弱くなり、ここで減速部材5の負荷と引き込み用ばね4の力が同じになって、揺動アーム3が停止してしまっては誤作動になってしまう。そこで停止する直前の位置にて係合状態を解除する、つまり係脱位置をこの停止直前に設定しておくとよい。すると停止直前に係脱ばね37の付勢力により係脱プレート35が首振り移動して係合状態が解除され減速動作が終了する。すると残っている引き込み用ばね4の力で左右移動板34を移動させながら揺動アーム3は没入することになり、扉45を完全に閉鎖することが出来る。したがって引き込み用ばね4の力と減速部材5の負荷の大きさと扉45を引き込む時に発生する丁番等による摩擦力とを適宜考慮して、最も適正な状態にて係脱位置を設定するとよい。
また扉45の閉鎖速度が速い場合は、扉自体の閉鎖力と引き込み用ばね4の力により係合状態のまま左右移動板34が移動し、その距離に比例して減速部材5による減速動作が得られる。ここで重要なのが前述での係合状態における減速部材5の首振り角度であり、減速部材5の負荷に逆らって係合円周面22である歯車が回転すると係合面10であるラックとの接点に大きな摩擦力が発生する。そしてこの摩擦力は首振り角度によりますます係合状態を維持する方向、つまり係脱ばね37が付勢しているのとは逆の方向にかかる。その結果係脱位置を越えてもこの摩擦力が係脱ばね37の力より強い間は係合状態が維持され、引き続き減速動作が実施される。そして係脱位置を過ぎた後の閉鎖速度がかなり小さくなった所定の段階で両者の摩擦力が減少し、ようやく係脱ばね37により係脱プレート35が回転し、係合状態が解除されて減速動作が終了する。すると、やはり最後は引き込み用ばね4の力だけが残りそのまま最後まで扉45を閉鎖する動作が得られる。その結果、閉鎖力の大小にかかわらず常に適切な減速動作が得られ、一定の速度まで閉鎖速度が減少した段階で減速動作が収束し、その後は引き込み用ばね4の力により扉45が最後まで閉鎖する動作が得られることになる。
また、この急激に扉45が閉鎖したときに得られる減速量が多いほど幅広い条件の扉45に適用できることになり、したがって単位回転あたりの負荷が大きな減速部材5を用い、かつ係合状態で移動可能な距離を長くすることが重要になる。しかし通常での扉45の開放操作は軽いほうがよく、低速度での閉鎖動作時における条件においても引き込み用ばね4を最大に伸ばしたときの力は弱いほうが良い。そこで減速部材5として用いるオイル式のロータリーダンパーの理想条件としては、低速回転時は発生負荷が小さく高速回転になるほど極端に大きな負荷が発生する機構のものが望ましい。
また第二実施形態では引き込み用ばね4を本体ケース26と左右移動板34に直接装着した状態で構成しており、左右移動板34の移動距離と引き込み用ばね4の伸びは同じ距離になる。しかし全体の減速量を大きくするためには係合状態での移動距離を長くとらなければならず、すると引き込み用ばね4の伸びも非常に大きくなってしまいこの点において両者は矛盾する。したがって引き込み用ばね4としては伸びの大小にかかわらず力が大きく変化しない等荷重ばねのようなものが理想とされる。しかし図27で表記しているような通常のコイルばねなどを使用すると理想の条件にはならず、この点においてまだ改良の余地が残る。
そこで引き込み用ばね4の伸びは小さくかつ係合状態での減速部材5の移動距離を長くする手段の一例としては、別途複数の歯車やカムを用いて左右移動板34の移動距離に対する引き込み用ばね4の伸び、もしくは左右移動板34の移動距離に対する減速部材5の移動距離の比率を変更する構成が適している。図28はその一例であり、歯数の違う2段状の歯車におのおの同じ方向に移動するラックを噛み合わせて直線運動させる構成が簡単である。つまり円周の大きい歯車に噛み合わせたラックに左右移動板34や減速部材5を連結し、円周の小さい歯車に噛み合わせたラックに引き込み用ばね4を連結するとよく、さらに適正な減速引き込み動作を実施することが可能になる。