定義
明細書を通して、以下の段落で定義される複数の用語が利用される。
本明細書で使用するように、「約(about)」および「約(approximately)」は数に関連して、別途示さない限り、または状況から別途明らかでない限り、その数の両方向で(より大きいまたはより小さい)20%、10%、5%、または1%の範囲内に入る数を含むために本明細書で使用される(このような数が考えられる値の100%を超える場合を除く)。
本明細書で使用するように、「アネキシンA2」という用語は、その正式な記号が(ヒトで)ANXA2であり、http://www.ncbi.nlm.nih.govのEntrez Geneリスティングでのその正式名称が「アネキシンA2」である、遺伝子のタンパク質生成物である(ANXA2転写産物の多様な配列は、たとえばGenBankアクセション番号M62899、NM_001002857、NM_001002858、NM_004039で見出される)。アネキシンA2はとりわけ、「アネキシンII」、および「リポコルチン2」としても公知である。
「生物活性」という用語は、ポリペプチドを特徴付けるために本明細書で使用するとき、親ポリペプチドとの十分なアミノ酸配列相同性を共有して、そのポリペプチドよりも同様または同一の特性(たとえば癌細胞に特異的に結合するおよび/または癌細胞中に内部移行するおよび/または癌細胞を死滅させる能力)を呈する分子を示す。
本明細書で使用するように、「癌」という用語は、制御されない細胞増殖を通例特徴とする哺乳類の生理的状態を指す、または説明する。癌の例は、これに限定されるわけではないが癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含む。さらに詳細には、このような癌の例は、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸がん、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織の肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫を含む。
本明細書で使用するように、「癌細胞」という用語は、望ましくない制御されない細胞増殖または組織の異常な存続もしくは異常な浸潤を受けるインビボの哺乳類(たとえばヒト)の細胞を指す。インビトロでは、この用語は、適切な新鮮培地および空間が与えられれば、制御されない方式で無限に増殖するであろう、永久に不死化された樹立細胞培養物である細胞株も指す。
本明細書で使用するように、「癌患者」という用語は、癌に罹患している、または罹患しやすい個人を指すことができる。癌患者は、癌と診断されていることも、または診断されていないこともある。この用語は、癌療法を以前に受けた個人も含む。
「化学療法薬」および「抗癌剤または薬」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは癌または癌性状態を処置するために使用される薬物を指す。抗癌薬は、慣例的に以下の群の1つに分類される:アルキル化剤、プリン拮抗薬、ピリミジン拮抗薬、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生物質、アロマターゼ阻害薬、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害薬、増殖因子阻害薬、細胞周期阻害薬、酵素、トポイソメラーゼ阻害薬、生物応答修飾薬、抗ホルモンおよび抗アンドロゲン。このような抗癌剤の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、パクリタキセル、テモゾロミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカバジン、デカルバジン、アルトレタミン、メトトレキセート、メルカプトプリン、チオグアニン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、アザシチジン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタンおよびアミフォスチンを含む。
「併用療法」という用語は本明細書で使用するように、被験体が両方の薬剤に同時に暴露されるように、2つ以上の医薬品が重複した計画で投与される状況を指す。
「細胞傷害性」という用語は、部分、化合物、薬物または薬剤を特徴付けるために本明細書で使用するときに、細胞の機能を阻害もしくは防止するおよび/または細胞の破壊を引き起こす部分、化合物、薬物または薬剤を指す。
「投薬計画」は、この用語が本明細書で使用されるように、時間的期間によって隔てられて個別に投与される(通例は1つ以上の)単位用量のセットを指す。特定の医薬品に推奨される用量のセット(すなわち量、タイミング、投与経路など)は、その投薬計画を構成する。
本明細書で使用するように「有効量」および「有効用量」という用語は、許容されるベネフィット/リスク比でその所期の目的、すなわち組織または被験体における所望の生物学的または医薬的応答を満足するのに十分である化合物または組成物の任意の量または用量を指す。たとえば、本発明のある実施形態において、目的は:血管新生を阻害すること、新生血管系の退行を引き起こすこと、アネキシンA2などの別の生物活性分子の活性を妨害することなどであり得る。関連する所期の目的は、客観的(すなわちある試験またはマーカーによって測定可能)または主観的(すなわち被験体が効果の指摘を与える、または効果を感じる)であり得る。治療的有効量は、複数の単位用量を含み得る投薬計画で普通に投与される。任意の特定の医薬品では、治療的有効量(および/または有効な投薬計画内での適切な単位用量)は、たとえば投与経路に、他の医薬品との併用に応じて変化し得る。いくつかの実施形態において、任意の特定の患者に対する具体的な治療的有効量(および/または単位用量)は、処置される障害および障害の重症度;利用される具体的な医薬品の活性;利用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、および/または利用した特定の医薬品の排出もしくは代謝速度;処置期間;ならびに医療分野で周知であるような同様の因子を含む多様な因子に依存し得る。
本明細書で使用するように、「フルオロフォア」、「蛍光部分」、「蛍光標識」、「蛍光染料」および「蛍光標識部分」は、本明細書では互換的に使用される。これらは、溶解して適切な波長の光によって励起されたときに、光を再び放出する分子を指す。多種多様の構造および特徴の多くの蛍光染料が本発明の実施で使用されるのに好適である。同様に、核酸を蛍光標識するための方法および物質が公知である(たとえばR.P.Haugland,“Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992−1994”,5thEd.,1994,Molecular Probes,Inc.を参照)。フルオロフォアを選択するにあたって、蛍光分子が高い効率で光を吸収して、蛍光を放出し(すなわちそれぞれ高いモル吸収係数および蛍光量子収率)、光安定性である(すなわちフルオロフォアが、分析を実施するために必要な時間に光励起で著しい分解を受けない)ことがしばしば所望である。
本明細書で使用するように「融合タンパク質」という用語は、その個々のペプチド主鎖を介して共有結合によって結合された2つ以上のタンパク質またはその断片を含む分子を指し、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現によって生成されることが多い。
本明細書で使用するように、「相同の」(または「相同性」)という用語は、2つのポリペプチド分子間のまたは2つの核酸分子間の同一性の程度を指す。両方の比較された配列内の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されているとき、ここで各分子はその位置において相同である。2つの配列間の相同性のパーセンテージは、2つの配列によって共有される一致または相同位置の数を比較した位置の数で割り、100を掛けたものに相当する。一般に、2つの配列が整列されて最大の相同性を得られるときに比較が行われる。相同性アミノ酸配列は同一または同様のアミノ酸残基を共有する。同様の残基は、参照配列内の対応するアミノ酸残基に対する保存的置換であるか、またはアミノ酸残基の「許容された点突然変異」である。参照配列内の残基の「保存的置換」は、たとえば同じサイズ、形状、電荷、共有または水素結合を形成する能力を含む化学的特性などを有する、対応する参照残基に物理的または機能的に類似した置換である。いくつかの実施形態において、本発明によって利用される保存的置換は、Dayhoffらによって「認められた点突然変異」について定義された基準を満足する保存的置換である(“Atlas of Protein Sequence and Structure”,1978,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,DC,Suppl.3,22:354−352)。
本明細書で使用するように、「相同体」という用語は、別のポリペプチドまたは遺伝子との指定された程度の配列同一性(および/または類似性)を示すポリペプチドまたは遺伝子を指す。たとえば少なくとも約30〜40%の、しばしば約50%、60%、70%、または80%を超える、別のポリペプチドとの配列全体の同一性を示し、通常は少なくとも3〜4個の、しばしば20個以上までのアミノ酸を含む、1つ以上の高度に保存された領域においてしばしば90%またはなお95%、96%、97%、98%、または99%を超える、別のポリペプチドとの同一性がはるかに高い少なくとも1つの領域をさらに含む任意のポリペプチドが、そのポリペプチドの相同体である。多くの実施形態において、ポリペプチドの相同体は、ポリペプチドとの配列類似性および/またはポリペプチドの少なくとも1つの機能的属性または活性をさらに共有する。遺伝子またはヌクレオチド配列に関して、(i)別の遺伝子もしくはヌクレオチド配列との少なくとも60%の配列全体の同一性を示す;およびまたは(ii)他方の遺伝子もしくはヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの相同体をコードする、任意の遺伝子またはヌクレオチド配列は、その遺伝子またはヌクレオチド配列の相同体である。当業者に公知であるように、同一性および/または類似性の程度を評価する目的でアミノ酸またはヌクレオチド配列の比較を実施するために、多様な方法が公知であり、ツールが利用できる。これらの方法は、たとえば手動アラインメント、コンピュータ支援配列アラインメントおよびその組合せを含む。配列アラインメントを実施するための(一般にコンピュータで実行される)いくつかのアルゴリズムは、幅広く利用可能であり、または当業者によって作成することができる。代表的なアルゴリズムは、たとえばSmith and Watermanの局所相同性アルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2:482);NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J.Mol.Biol.,1970,48:443);PearsonおよびLipmanの類似性検索法(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),1988,85:2444);ならびに/またはこれらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(たとえばGAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis)を含む。このようなアルゴリズムを含む、ただちに入手可能なコンピュータプログラムは、たとえばBLASTN、BLASTP、Gapped BLAST、PILEUP、CLUSTALWなどを含む。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用するときに、各プログラムのデフォルトパラメータが使用され得る。代わりに実施者は、その実験的および/または他の要件に応じた非デフォルトパラメータを使用し得る(たとえばURL www.ncbi.nlm.nih.govを有するウェブサイトを参照)。
「個人」および「被験体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患または障害(たとえば癌、黄斑変性症など)に罹患し得るまたは罹患しやすいが、疾患または障害を有することも有さないこともある、ヒトまたは別の哺乳動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)を指す。多くの実施形態において、被験体はヒトである。多くの実施形態において、被験体は患者である。別途指摘しない限り、「個人」および「被験体」という用語は、特定の年齢を示さず、それゆえ成人、小児、および新生児を含む。
本明細書で使用するように、「阻害する」という用語は、何かが起きるのを防止すること、起きていることの発生を遅延すること、および/または起きていることの程度および尤度を低下させることを意味する。それゆえ「血管新生を阻害すること」および「新生血管系の形成を阻害すること」は、血管新生の発生を防止、遅延する、および/または血管新生の発生の尤度を低下させるのはもちろんのこと、新生血管の数、増殖速度、サイズなどを低減することも含むことを意図する。
「標識した」および「検出可能な薬剤または部分によって標識した」という用語は、実体(たとえばクロロトキシンまたはクロロトキシンコンジュゲート)が、たとえば別の実体(たとえば新生腫瘍組織)に結合された後に描出できることを規定するために、本明細書で互換的に使用される。検出可能な薬剤または部分は、薬剤または部分が測定可能であるシグナルを発生する、およびその強度が結合された実体の量に関連付けられる(たとえば比例する)ように選択され得る。タンパク質およびペプチドを標識および/または検出する多種多様なシステムが当分野で公知である。標識タンパク質およびペプチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的または他の手段によって検出できる標識の包含、または標識へのコンジュゲーションによって調製できる。標識もしくは標識部分は、直接検出可能であり得る(すなわち標識もしくは標識部分は、任意のさらなる反応もしくは操作が検出される必要がない、たとえばフルオロフォアは直接検出可能である)、または標識もしくは標識部分は、間接的に検出され得る(すなわち標識もしくは標識部分は、検出可能である別の実体との反応または結合によって検出可能とされ、たとえばハプテンは、フルオロフォアなどのレポータを含む適切な抗体との反応後に免疫染色することによって検出可能である)。好適な検出可能な薬剤は、これに限定されるわけではないが、放射性核種、フルオロフォア、化学発光剤、微粒子、酵素、比色標識、磁性標識、ハプテン、分子ビーコン、アプタマービーコンなどを含む。
本明細書で使用するように、「黄斑変性症」という用語は、網膜への損傷のために視野中心(黄斑)で失明を生じる病状を指す。黄斑変性症には複数の形が存在することが公知であり、別途規定しない限り、「黄斑変性症」という用語はすべての形を含む。「滲出型黄斑変性症」(新生血管または滲出型としても公知)は、網膜後ろの脈絡膜からの血管の増殖を含む黄斑変性症を指す。滲出型黄斑変性症において、網膜は時々、剥離することがある。「乾性黄斑変性症」において(非滲出型としても公知)、ドルーゼンと呼ばれる細胞残屑は、網膜と脈絡膜との間に蓄積するが、血管形成は発生しない。「加齢性黄斑変性症」(ARMD)は、黄斑変性症の最も一般的な形を指し、通例、高齢期に開始して、網膜の黄色沈着物を特徴とする。ARMDは、黄斑変性の湿性または乾性のどちらかの形で発生し得る。
本明細書で使用するように、「転移(metastasis)」(時々、「mets」と省略され、複数形「metastases」)は、1つの器官または組織から別の位置への腫瘍細胞の広がりを指す。この用語は、転移の結果として新たな位置に生成する腫瘍組織も指す。「転移癌」は、元の、すなわち原発性位置から広がる癌であり、「続発性癌」または「続発性腫瘍」とも呼ばれ得る。一般に、転移性腫瘍は、腫瘍が発生する原発性腫瘍の組織にちなんで命名される。それゆえ、肺に転移した乳癌は、いくつかの癌細胞が肺に位置しても、「転移性乳癌」と呼ばれ得る。
本明細書で使用するように、「新生血管系」という用語は、まだ完全に成熟していない、すなわち密着細胞接合部を備える完全に形成された内皮内層または周囲平滑筋細胞の完全な層を有さない、新たに形成された血管を指す。本明細書で使用するように、「新生血管」という用語は、新生血管系の血管を指すために使用される。
「正常な」または「健康な」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、腫瘍を有さない個人または個人の群を指す。「正常な」という用語は、本明細書では、健康な個人から単離された組織試料を限定するためにも使用される。
「医薬品」、「治療剤」および「薬物」は、本明細書では互換的に使用される。これらは疾患、障害、または臨床状態の処置、抑制、および/または検出に有効な物質、分子、化合物、薬剤、因子または組成物を指す。
「製薬組成物」は本明細書では、少なくとも1つの活性成分(たとえば標識され得るまたは標識され得ないクロロトキシンまたはクロロトキシンコンジュゲート)の有効量、および少なくとも1つの製薬的に許容される担体を含む組成物として定義される。
本明細書で使用するように、「製薬的に許容される担体」という用語は、活性成分の生物活性の有効性を妨害しない、およびそれが投与される濃度で宿主に対して過度に毒性でない担体媒体を指す。この用語は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。製薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当分野で周知である(たとえば参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,E.W.Martin,18thEd.,1990,Mack Publishing Co.:Easton,PAを参照)。
本明細書で使用するように、「予防すること」という用語は、薬剤のプロセス(たとえば血管新生)に対する作用を指すために使用するとき、薬剤(たとえば治療剤)がそのプロセスと関連する1つ以上の症状または属性の発症前に投与される場合に、このようなプロセスの程度を低下させることおよび/またはこのようなプロセスの開始を遅延させることを意味する。
本明細書で使用するように、「原発性腫瘍」という用語は、最初に発生した元の部位にあり、すなわちその部位に広がったのとは対照的である腫瘍を指す。
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、中性(非荷電)形でまたは塩としてのどちらかで、および未修飾のまたはグリコシル化、側鎖酸化、もしくはホスホリル化によって修飾されているかのどちらかの、多様な長さのアミノ酸配列を指す。ある実施形態において、アミノ酸配列は、全長未変性タンパク質である。他の実施形態において、アミノ酸配列は、全長タンパク質のより短い断片である。なお他の実施形態において、アミノ酸配列は、アミノ酸側鎖に結合されたさらなる置換基、たとえばグリコシル単位、脂質、またはホスフェートなどの無機イオンによってはもちろんのこと、鎖の化学変換に関連する修飾、たとえばスルフヒドリル基の酸化によっても修飾される。それゆえ、「タンパク質」(またはその同等語)は、その特異的な特性は変化させないこのような修飾を受ける、全長未変性タンパク質のアミノ酸配列を含むことを意図する。特に、「タンパク質」という用語は、タンパク質アイソフォーム、すなわち同じ遺伝子によってコードされるが、そのpIもしくはMW、または両方が異なるバリアントを含む。このようなアイソフォームは、そのアミノ酸配列が異なることが可能であり(たとえば代わりのスライシングまたは制限タンパク質分解の結果として)、または代わりに、翻訳後修飾の違い(たとえばグリコシル化、アシル化またはホスホリル化)から発生し得る。
「タンパク質類似体」という用語は、本明細書で使用するように、親ポリペプチドと同様または同一の機能を有するが、親ポリペプチドのアミノ酸配列と同様もしくは同一であるアミノ酸配列を必ずしも含む必要がない、または親ポリペプチドの構造と同様もしくは同一である構造を有するポリペプチドを指す。本発明の状況において、タンパク質類似体は、親ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%(いくつかの実施形態において、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を有し得る。さらに、当業者は、タンパク質配列が活性を破壊することなく、ある置換に一般に耐えることを理解するであろう。それゆえ、活性を保持して、少なくとも約30〜40%の、しばしば約50%、60%、70%、または80%を超える、親ポリペプチドとの配列全体の同一性を共有し、通常は少なくとも3〜4個の、しばしば20個以上までのアミノ酸を含む、1つ以上の高度に保存された領域においてしばしば90%、96%、97%、98%または99%を超える、親ポリペプチドとの同一性がはるかに高い少なくとも1つの領域を通常さらに含む任意のポリペプチドが、「タンパク質類似体)という用語に含まれる。
本明細書で使用するように、「タンパク質断片」という用語は、第2のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。タンパク質の断片は、親ポリペプチドの機能活性を所有し得るか、または所有し得ない。
「退行する」という用語は、血管および/または血管系(新生血管系および/または新生血管を含む)を指すために使用するとき、本明細書では縮退すること、収縮することなどを意味するために使用される。
本明細書で使用するように、「小型分子」という用語は、生物プロセスに影響を及ぼすように作用できる任意の化学的または他の部分を含む。小型分子は、現在公知であり使用されている任意の数の治療剤を含むことができるか、または生物機能をスクリーニングする目的のこのような分子のライブラリで合成された小型分子であることが可能である。小型分子は、サイズによって巨大分子と区別される。本発明での使用に好適な小型分子は通常、約5,000ダルトン(Da)未満の、約2,500Da未満の、約1,000Da未満の、または約500Da未満の分子量を有する。
本明細書で使用するように、「罹患しやすい」という用語は、(通例、遺伝的素因、環境因子、個人歴、またはその組合せに基づいて)何かに、すなわち疾患、障害、または状態、たとえば転移癌に対して、一般集団で見られるよりも高いリスクおよび/または傾向を有することを意味する。この用語は、状態に「罹患しやすい」個人がその状態と診断され得ないことを考慮する。
本明細書で使用するように、「全身投与」という用語は、薬剤が有意な量で体内に広く分布して、血中で生物効果、たとえばその所望の効果を有し、および/または血管系を介して所望の作用部位に到達するような、薬剤の投与を指す。代表的な全身投与経路は、(1)薬剤を血管系に直接導入すること、または(2)薬剤が吸収され、血管系に入り、血液を介して1つ以上の所望の作用部位に輸送される、経口、経肺、もしくは筋肉内投与による投与を含む。
「組織」という用語は、本明細書ではその最も広い意味で使用される。組織は、腫瘍細胞を含むことができる(しかし必ずしも含まない)任意の生物的実体であり得る。本発明の状況において、インビトロ、インビボおよびエクスビボ組織が考慮される。それゆえ組織は、個人の一部であり得るか、または個人から(たとえば生検によって)採取され得る。組織は、組織の切片、たとえば組織学的目的で採取した冷凍切片または公知の診断、処置および/もしくは成績履歴を有するアーカイブ試料も含み得る。組織という用語は、組織試料を処理することによって得た任意の物質も含む。得られた物質は、これに限定されるわけではないが、組織から単離した細胞(またはその子孫)を含む。組織試料の処理は:濾過、蒸留、抽出、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加などの1つ以上を含み得る。
「処置」という用語は、本明細書では、(1)疾患、障害、もしくは状態の開始を遅延または防止すること;(2)疾患、障害、もしくは状態の症状の1つ以上の進行、増悪、または悪化を低速化または停止すること;(3)疾患、障害、もしくは状態の症状の改善を引き起こすこと;(4)疾患、障害、もしくは状態の重症度もしくは発生率を低下させること;または(5)疾患、障害、もしくは状態を治癒することを目的とする方法またはプロセスを特徴付けるために使用される。処置は、予防または防止作用のために疾患、障害、または状態の開始前に投与され得る。代わりにまたはさらに、処置は、治療的作用のために疾患、障害、または状態の開始後に投与され得る。
ある実施形態の詳細な説明
本発明は、とりわけ、血管新生を阻害する、および/または減少させる方法に関する。本明細書で提供する方法は、細胞傷害性部分、第2の治療剤、標識部分および/またはその組合せと会合され得るまたは会合され得ないクロロトキシン剤の投与を含むことが多い。クロロトキシン剤は、たとえばポリエチレングリコールなどのポリマーに共有結合され得る。ある実施形態において、新しい血管の形成が阻害される、および/または既存の新生血管系が退行する。
本発明により、当分野の技能の範囲内で慣例的な分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技法が使用され得る。このような技法は、文献で十分に説明されている。たとえばManiatis,Fritsch&Sambrook,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1982;“DNA Cloning:A Practical Approach,” Volumes I and II,D.N.Glover(Ed.),1985;“Oligonucleotide Synthesis”,M.J.Gait(Ed.),1984;“Nucleic Acid Hybridization”,B.D.Hames&S.J.Higgins(Eds.),1985;“Transcription and Translation”B.D.Hames&S.J.Higgins(Eds.),1984;“Animal Cell Culture”,R.I.Freshney(Ed.),1986;“Immobilized Cells And Enzymes”,IRL Press,1986;B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”,1984を参照。
I.試薬および部分
本発明の方法は、被験体(異常な血管新生を特徴とする状態または疾患を有する、有した、または発症するリスクに瀕した被験体など)への、血管新生を対照と比較して減少させるのに有効な量のクロロトキシン剤の投与を含み得る。
A.クロロトキシン剤
本明細書で使用するように、「クロロトキシン剤」という用語は、少なくとも1つのクロロトキシン部分を含む化合物を指す。ある実施形態において、クロロトキシン剤は、第2の治療剤(たとえば抗癌剤)と会合されている。クロロトキシン剤(および/または治療剤)は、少なくとも1つの標識部分と会合され得る。
本明細書で使用するように、「クロロトキシン部分」という用語は、クロロトキシン、生物活性クロロトキシンサブユニットまたはクロロトキシン誘導体を指す。
ある実施形態において、「クロロトキシン」という用語は、Leiurus quinquestriatusサソリ毒に天然由来の全長の36アミノ酸ポリペプチドを指し(DeBinら、Am.J.Physiol.,1993,264:C361−369)、この毒は、その内容が参照により本明細書に組み入れられている国際出願番号WO 2003/101474の配列番号1に示すような未変性クロロトキシンのアミノ酸配列を含む。「クロロトキシン」という用語は、(その全体が参照により本明細書に組み入れられている)米国特許第6,319,891号に開示されたものなどの、合成または組み換えにより産生された配列番号1を含むポリペプチドを含む。
「生物活性クロロトキシンサブユニット」は、クロロトキシンの36未満のアミノ酸を含み、クロロトキシンの少なくとも1つの特性または機能を保持するペプチドである。本明細書で使用するように、クロロトキシンの「特性または機能」は、これに限定されるわけではないが、新生血管の形成を阻害する、および/または新生血管の退行を引き起こすその能力;(たとえばアネキシンA2を含み得る)その結合パートナーの活性を妨害する能力;異常な細胞増殖を停止させる能力;正常細胞と比較して、腫瘍/癌細胞に特異的に結合する能力;正常細胞と比較して、転移性腫瘍/癌細胞または転移した腫瘍/癌細胞に結合する能力;腫瘍/癌細胞に内部移行する能力;腫瘍/癌細胞を死滅させる能力を含む。腫瘍/癌細胞は、インビトロ、エクスビボ、インビトロで、被験体、培養細胞、または細胞株からの転移、原発性単離物の部分であり得る。
本明細書で使用するように、「生物活性クロロトキシン誘導体」という用語は、(上述のような)クロロトキシンの少なくとも1つの特性または機能を保持する、クロロトキシンおよび関連ペプチドの多種多様の誘導体、類似体、バリアント、ポリペプチド断片およびミメティックのいずれも指す。クロロトキシン誘導体の例は、これに限定されるわけではないが、クロロトキシンのペプチドバリアント、クロロトキシンのペプチド断片、たとえば国際出願番号WO 2003/101474に示すような配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7の連続10マーペプチドを含むもしくは10マーペプチドから成る、または国際出願番号WO 2003/101474に示すような配列番号1の残基10−18または21−30を含む断片、コア結合配列、およびペプチドミメティックを含む。
クロロトキシン誘導体の例は、クロロトキシンの活性と関連する、少なくとも約7の、約8の、約9の、約10の、約15の、約20の、約25の、約30または約35の連続アミノ酸残基を有する、国際出願番号WO 2003/101474の配列番号1で示すアミノ酸配列の断片を有するペプチドを含む。このような断片は、顕著な親水性の領域と同様に、公知のペプチドドメインに相当するアミノ酸配列の領域として同定される、クロロトキシンペプチドの機能性領域を含有し得る。このような断片は、任意の順序で相互に連結された2つのコア配列も含むことがあり、介在アミノ酸は除去されるか、またはリンカーによって置換されている。
クロロトキシンの誘導体は、誘導体配列およびクロロトキシン配列を最大限に整列させたときに、少なくとも1つのアミノ酸残基の保存的または非保存的置換を含むポリペプチドを含む。置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を向上させる、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を阻害する、またはクロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能に対して中立である、置換であり得る。
本発明の実施での使用に好適なクロロトキシンの誘導体の例は、国際出願番号WO 2003/101474(その全体が参照により本明細書に組み入れられている)に記載されている。詳細な例は、この国際出願に示されるような配列番号8もしくは配列番号13を含む、または配列番号8もしくは配列番号13から成るポリペプチドはもちろんのこと、そのバリアント、類似体、および誘導体も含む。
クロロトキシン誘導体の他の例は、たとえば相同組換え、部位特異的またはPCR変異誘発による所定の突然変異を含むこれらのポリペプチド、およびペプチドのファミリーの対立遺伝子または他の天然型バリアント;ならびにペプチドが置換、化学的、酵素的または他の適切な手段によって、天然型アミノ酸以外の部分(たとえば酵素または放射性同位体などの検出可能な部分)で共有結合的に修飾されている誘導体を含む。
クロロトキシンおよびそのペプチド誘導体は、当分野で公知であるような標準固相(または液相)ペプチド合成法を含む、多種多様の方法のいずれを使用しても調製できる。さらに、これらのペプチドをコードする核酸は、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を使用して合成することができ、タンパク質は、標準組換え産生システムを使用して組換え産生され得る。
他の好適なクロロトキシン誘導体は、クロロトキシンの3次元構造を模倣するペプチドミメティックを含む。このようなペプチドミメティックは、たとえば、より経済的な産生、より高い化学安定性、薬理学的特性の向上(半減期、吸収、効力、有効性など)、改変された特異性(たとえば広範囲の生物活性、抗原性の低下およびその他)を含む、天然型ペプチドを超える著しい利点を有し得る。
ある実施形態において、ミメティックは、クロロトキシンペプチド2次構造の要素を模倣する分子である。タンパク質のペプチド主鎖は主に、抗体および抗原の分子間相互作用などの、分子間相互作用を促進するような方法でアミノ酸側鎖を配向させるために存在する。ペプチドミメティックは、天然分子に類似した分子間相互作用を可能にすることが予想される。ペプチド類似体は、テンプレートペプチドの特性に類似した特性を備えた非ペプチド薬として、製薬業界で一般に使用される。このような種類の化合物は、ペプチドミメティック(peptide mimetic)またはペプチドミメティック(peptidomimetic)とも呼ばれ(たとえばFauchere,Adv.Drug Res.,1986,15:29−69;Veber&Freidinger,1985,Trends Neurosci.,1985,8:392−396;Evansら、J.Med.Chem.,1987,30:1229−1239を参照)、通常はコンピュータによる分子モデル化を用いて開発される。
一般に、ペプチドミメティックは、パラダイムポリペプチド(すなわち生化学特性または薬理活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、非ペプチド結合によって場合により置換される1つ以上のペプチド結合を有する。ペプチドミメティックの使用は、薬物ライブラリを作製するためのコンビナトリアルケミストリの使用によって強化することができる。ペプチドミメティックの設計は、ペプチドの、たとえば腫瘍細胞への結合を増強または低減するアミノ酸突然変異を同定することによって補助できる。使用可能な手法は、酵母2ハイブリッド法(たとえばChienら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1991,88:9578−9582を参照)およびファージ提示法の使用を含む。2ハイブリッド法は、酵母中のタンパク質間相互作法を検出する(Fieldら、Nature,1989,340:245−246)。ファージ提示法は、固定化タンパク質と、ラムダおよびM13などのファージ表面で発現されるタンパク質との間の相互作用を検出する(Ambergら、Strategies,1993,6:2−4;Hogrefeら、Gene,1993,128:119−126)。これらの方法によって、ペプチド−タンパク質相互作用の正および負の選択ならびにこれらの相互作用を判定する配列の同定が可能となる。
ある実施形態において、クロロトキシン剤は、上述のクロロトキシンに類似または関連した活性を提示する別のサソリ種のポリペプチド毒素を含む。本明細書で使用するように、「クロロトキシンに類似または関連した」という用語は、特に、腫瘍/癌細胞への選択的/特異的結合を指す。好適な関連するサソリ毒の例は、これに限定されるわけではないが、クロロトキシンに対するアミノ酸および/またはヌクレオチド配列同一性を提示するサソリ起源の毒素または関連するペプチドを含む。関連するサソリ毒の例は、これに限定されるわけではないが、Mesobuthus martenssiによるCT神経毒(GenBankアクセション番号AAD473730)、Buthus martensii karschによる神経毒BmK 41−2(GenBankアクセション番号A59356)、Buthus martensiiによる神経毒Bm12−b(GenBankアクセション番号AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeuによるProbable Toxin LGH 8/6(GenBankアクセション番号P55966)、およびMesubutus tamulus sindicusによるSmall toxin(GenBankアクセション番号P15229)を含む。
本発明での使用に好適な関連するサソリ毒は、国際出願番号WO 2003/101474(その全体が参照により本明細書に組み入れられている)の配列番号1で示すようなクロロトキシン配列全体との配列同一性が少なくとも約75%の、少なくとも約85%の、少なくとも約90%の、少なくとも約95%の、または少なくとも約99%のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。ある実施形態において、関連するサソリ毒は、国際出願番号WO 2003/101474に示すようなクロロトキシンの配列番号8または配列番号13と相同の配列を有するこのようなサソリ毒を含む。
修飾
ある実施形態において、クロロトキシン剤は未標識である。ある実施形態において、クロロトキシン剤は標識されている。標識方法および標識部分の例は、本明細書に記載されている。
ある実施形態において、クロロトキシン剤は、ポリマーなどの巨大分子への共有結合によって修飾される。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、たとえばポリマーの共有結合は、動物の体内でのクロロトキシン剤の生物学的利用能および/または耐性が改善されるように、クロロトキシン剤を抗原的にマスキングし得る。このようなポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG)であり、ペプチドおよび/もしくはポリペプチドのNおよび/もしくはC末端にならびに/またはシステインに共有結合可能であることが多い。「PEG化」は、PEGの分子への共有結合的付加を指す。
いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤はいずれの部位でも修飾されない。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は、分子1個につき1つの部位で修飾される(たとえばPEG化による)。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は、分子1個につき1つを超える部位で修飾される(たとえばPEG化による)。
いくつかの実施形態において、このような修飾によって、インビボでのクロロトキシン剤の半減期が延長される。たとえば半減期は、少なくとも約10時間、少なくとも約16時間などであり得る(たとえば実施例7を参照)。このように改善された生物学的利用能によって、いくつかの実施形態において、より低い投薬頻度を含む投薬計画が促進される(投薬計画は本明細書で議論する)。
クロロトキシン剤の細胞への結合
クロロトキシン剤はたとえば、細胞膜の外面に存在する抗原を介して細胞に結合し得る。
本明細書で紹介および議論するデータによって、アネキシンA2がクロロトキシンの潜在的な結合パートナーであることが示される。いくつかの実施形態において、抗原は、アネキシンA2または関連するファミリーメンバである。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤はアネキシンA2を直接結合する。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤はアネキシンA2を間接的に、たとえば他の分子との結合を介して結合する。クロロトキシン剤およびアネキシンA2はたとえば、他の分子を含む複合体として存在し得る。
ある実施形態において、クロロトキシン剤は癌細胞に結合する;いくつかのこのような実施形態において、クロロトキシン剤は、正常細胞よりも癌細胞を選択的に標的とする。
B.第2の治療剤
すでに上述したように、ある実施形態において、クロロトキシン剤は第2の治療剤と会合され得るか、および/または方法は、第2の治療剤を投与することを含むさらなるステップを含み得る。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤および第2の治療剤は、同時に投与される。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は、第2の治療剤を投与する前および/または後に投与される。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤および第2の治療剤は、体内でのその活性および/または有効性の期間が重複するような時間ウィンドウ内に投与される。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤と組合せて第2の治療剤を投与することによって、血管新生の阻害および/または防止に対する相加および/または相乗効果が提供され得る。
好適な治療剤は、疾患または臨床状態の処置に有効である多種多様の物質、分子、化合物、薬剤または因子のいずれも含む。ある実施形態において、第2の治療剤は化学療法薬(すなわち抗癌薬)である。好適な抗癌薬は、癌細胞に直接または間接的に毒性または有害である多種多様の物質、分子、化合物、薬剤または因子のいずれも含む。
当業者によって認識されるように、治療剤は、合成または天然化合物:単一分子、異なる分子の混合物または異なる分子の複合体であり得る。好適な治療部分は、これに限定されるわけではないが、小型分子、ペプチド、タンパク質、サッカライド、ステロイド、抗体(その断片およびバリアントを含む)、融合タンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA、ペプチドミメティック、放射性核種などを含む、各種の化合物のクラスのいずれかに属することができる。
第2の治療剤が抗癌薬を含むとき、抗癌薬はたとえば抗癌薬の以下のクラス:アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗有糸分裂抗生物質、血管新生阻害薬、アルカロイド抗腫瘍剤、ホルモンおよび抗ホルモン、インターフェロン、非ステロイド性抗炎症薬、ならびに各種の他の抗腫瘍剤、たとえばキナーゼ阻害薬、プロテアソーム阻害薬およびNF−κB阻害薬に見出すことができる。
抗癌薬の例は、これに限定されるわけではないが、いくつか挙げると、アルキル化薬(たとえばメクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミドなど)、代謝拮抗薬(たとえばメトトレキセートなど)、プリン拮抗薬およびピリミジン拮抗薬(たとえば6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン(cytraribine)、ゲムシタビンなど)、紡錘体毒(たとえばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセルなど)、ポドフィロトキシン(たとえばエトポシド、イリノテカン、トポテカンなど)、抗生物質(たとえばドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンなど)、ニトロソ尿素(nitrosurea)(たとえばカルムスチン、ロムスチン、ノムスチンなど)、無機イオン(たとえばシスプラチン、カルボプラチンなど)、酵素(たとえばアスパラギナーゼなど)、およびホルモン(たとえばタモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、メゲストロールなど)を含む。最新の癌療法のさらなる包括的な議論については、その内容が参照により本明細書に組み入れられている、http://www.cancer.gov/、FDA承認腫瘍薬のリストhttp://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm、およびThe Merck Manual,Seventeenth Ed.1999を参照。
いくつかの抗癌薬は、癌細胞の増殖および/または複製を停止させることによって作用する。このような薬物は一般に、「細胞増殖抑制性」として分類される。ある実施形態において、治療剤は細胞増殖抑制剤を含む。細胞増殖抑制剤の例は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、植物アルカロイド(aklyloid)およびテルペノイド(ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサンなどを含む;VP−16は植物アルカロイドの例である)、トポイソメラーゼ阻害薬、抗腫瘍抗体、ホルモンなどを含む。
ある実施形態において、第2の治療剤は血管新生阻害薬を含む。好適な血管新生阻害薬は、これに限定されるわけではないが、αVβ3(インテグリン)拮抗薬、AG3340、AGM−1470(フマギリン類似体)、アンギオポエチン−2、アンギオスタチン、アンギオスタチン−エンドスタチン融合タンパク質、アンギオザイム(商標)、抗Flk/KDR、抗浸潤因子、抗VEカドヘリン、抗VEGF、BMS−275291、VEGFのアプタマー拮抗薬、バチマスタット、ベバシズマブ(Avastin(商標))、カンスタチン、カプトプリル、カルボキシアミドトリアゾール(CAI)、軟骨由来阻害薬(CDI)、CM101、COL−3、コンブレスタチンA4、EMD−121974、エンドスタチン、エルロチニブ(タルセバ(商標))、エストラジオール誘導体、flt−1、フマギリン、ゲフィニチブ(イレッサ(商標))、ゲニステイン、IM862、インターフェロン−アルファ、インターロイキン−12、K5、ラベンダスチン、レナリドマイド(Alenalidomide)、LM609(αVβ3に対する抗体)、マリマスタット、マスピン、メタスタット、2−メトキシ−エストラジオール、neoretna、ネオバスタット、NX1838、ペガプタニブ(Macugen(商標))、PD−173074、PI−88、オキシインドール誘導体、パクリタキセル、psovascar、PTK787/ZK22584、ラニビズマブ(ranabizumab)(Lucentis(商標))、レチノイン酸、RG8803、スクアラミン、S−836、SC−68448、SU5416、SU6668、SU11248(スニチニブ)、TBC−1635、TBC−2653、TBC−3685、サリドマイド、チアゾロピリミジン誘導体、トロンボスポンジン2、TNP470(フマギリン類似体)、トロポニンI、バスキュロスタチン、ビタキシン、ZD0101などを含み得る(本リストは包括的ではない)。
VEGF阻害薬は、VEGFに対する抗体および抗体断片(たとえばAvastin(商標)(ベバシズマブ)およびLucentis(商標)(ラニビズマブ(ranabizumab))など)、抗VEGFリボザイム、VEGFのアプタマー阻害薬などを含む。
いくつかの実施形態において、第2の治療剤は、広範囲の阻害薬である。いくつかの実施形態において、第2の治療剤は、VEGF、bFGF、LPS、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、およびHPFからなる群より選択される1つ以上の因子によって刺激された血管新生を阻害する。いくつかの実施形態において、第2の治療剤は、VEGF、bFGF、LPS、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、またはHPFによって刺激された血管新生を阻害しない。
いくつかの実施形態において、第2の治療剤は、Avastin(商標)(ベバシズマブ)、Lucentis(商標)(ラニビズマブ(ranabizumab))、またはその組合せである。
ある実施形態において、第2の治療剤は、細胞傷害剤を含む。細胞傷害剤の例は、毒素、他の生物活性タンパク質、通常の化学療法剤、酵素、および放射性同位体を含む。
好適な細胞傷害性毒素の例は、これに限定されるわけではないが、細菌毒素および植物毒素、たとえばゲロニン、リシン、サポニン、Pseudomonas体外毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素などを含む。
好適な細胞傷害性生物活性タンパク質の例は、これに限定されるわけではないが、補体系のタンパク質(または補体タンパク質)を含む。補体系は、生物からの病原体の除去を補助して、治癒を促進する複雑な生化学的カスケードである(B.P.Morgan,Crit.Rev.Clin.Lab.Sci.,1995,32:265)。補体系は、35を超える溶解性および細胞結合タンパク質から成り、そのうち12は補体経路に直接関与している。
好適な細胞傷害性化学療法剤の例は、これに限定されるわけではないが、タキサン(たとえばドセタキセル、パクリタキセルなど)、メイタンシン、デュオカルマイシン、CC−1065、オーリスタチン、カリケアマイシン(calicheamincin)および他のエンジイン抗腫瘍抗生物質を含む。他の例は、葉酸拮抗薬(たとえばアミノプテリン、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセドなど)、ビンカアルカロイド(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、ビンデシン、ビノレルビンなど)、およびアントラサイクリン(たとえばダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンなど)を含む。
好適な細胞傷害性酵素の例は、これに限定されるわけではないが、核酸分解酵素を含む。
好適な細胞傷害性放射性同位体の例は、腫瘍部位に局在しているときに、細胞破壊を引き起こす任意のα−、β−またはγ−エミッタを含む(S.E.Order,“Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら(Eds.),Academic Press,1985)。このような放射性同位体の例は、これに限定されるわけではないが、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−211(211At)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、イットリウム−90(90Y)、サマリウム−153(153Sm)、およびルテチウム−177(117Lu)を含む。
代わりにまたはさらに、本発明の使用に好適な治療剤は、その内容全体は参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、2007年8月7日に出願された“Chlorotoxins as Drug Carriers”という名称の共有仮出願(USSN 60/954,409)、2007年10月12日に出願された“Systemic Administration of Chlorotoxin Agents for the Diagnosis and Treatment of Tumors”(USSN 60/979,714)に記載されている治療部分のいずれでもよい。このような治療剤のクラスの例は、これに限定されるわけではないが、貧水溶性抗癌剤、薬物耐性に関連する抗癌剤、アンチセンス核酸、リボザイム、トリプレックス剤、低分子干渉RNA(siRNA)、放射線増感剤、超抗原、プロドラッグ活性化酵素、および抗血管新生剤を含む。
ある実施形態において、クロロトキシン剤と会合される治療(たとえば抗癌、抗血管新生など)剤は、核酸剤である。
多くの癌および腫瘍が、点突然変異、遺伝子欠失、または重複などの、さまざまな程度の遺伝子障害に関連していることが示されている。遺伝子の発現を調節するための多くの新しい癌処置方法、たとえば「アンチセンス」、「アンチジーン」、および「RNA干渉」が開発されている(A.Kalotaら、Cancer Biol.Ther.,2004,3:4−12;Y.Nakataら、Crit.Rev.Eukaryot.Gene Expr.,2005,15:163−182;V.Wacheck and U.Zangmeister−Wittke,Crit.Rev.Oncol.Hematol.,2006,59:65−73;A.Kolataら、Handb.Exp.Pharmacol.,2006,173:173−196)。このような手法はたとえば、アンチセンス核酸、リボザイム、トリプレックス剤、または低分子干渉RNA(siRNA)を使用して、mRNAをアンチセンス核酸でもしくはDNAをトリプレックス剤でマスキングすること、ヌクレオチド配列をリボザイムで切断すること、またはRNA干渉に関与する複雑な機構によるmRNAの破壊のいずれかによって、標的遺伝子の特定のmRNAまたはDNAの転写または翻訳を遮断する。これらの方法のすべてで、主にオリゴヌクレオチドが活性剤として使用されるが、小型分子および他の構造も利用されている。遺伝子発現を調節するためのオリゴヌクレオチドベースの方法は一部の癌の処置には大きな可能性を有するが、主にこれらの化合物の癌細胞内のその作用部位への送達が無効であることによって、オリゴヌクレオチドの薬理利用は妨げられてきた。(P.Herdewijnら、Antisense Nucleic Acids Drug Dev.,2000,10:297−310;Y.Shoji and H.Nakashima,Curr.Charm.Des.,2004,10:785−796;A.W Tongら、Curr.Opin.Mol.Ther.,2005,7:114−124)。
いくつかの実施形態において、薬剤は、治療(たとえば抗癌)剤として有用である核酸分子を含む第2の治療剤と組合せて投与される、および/または第2の治療剤を含む。核酸の多様な種類および構造形がこのような方法に好適であり得る。これらは、非制限的な例として、1本鎖(ssDNA)および2本鎖(dsDNA)を含むDNA;これに限定されるわけではないが、ssRNA、dsRNA、tRNA、mRNA、rRNA、酵素RNAを含むRNA;RNA:DNAハイブリッド、3本鎖DNA(たとえば短鎖オリゴヌクレオチドに会合したdsDNA)などを含む。
本発明のいくつかの実施形態において、核酸剤は約5〜2000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、核酸剤は、少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50以上のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、核酸剤は、約2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、45、40、35、30、25、20未満のヌクレオチド長である。
いくつかの実施形態において、核酸剤は、プロモータおよび/または転写を制御する他の配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸剤は、複製起点および/または複製を制御する他の配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸剤は、プロモータおよび/または複製起点を含まない。
本発明の実施での使用に好適な核酸抗癌剤は、腫瘍形成および細胞増殖または細胞形質転換に関連する遺伝子(たとえば細胞分割を刺激するタンパク質をコードする、癌原遺伝子)、血管新生/抗血管新生遺伝子、腫瘍サプレッサ遺伝子(細胞分割を抑制するタンパク質をコードする)、腫瘍増殖および/または腫瘍移動に関連するタンパク質をコードする遺伝子、ならびにアポトーシスまたは他の形の細胞死を誘発する自殺遺伝子、特に急速に分割する細胞において最も活性である自殺遺伝子を標的とする核酸抗癌剤を含む。
腫瘍形成および/または細胞形質転換に関連する遺伝子配列の例は、MLL融合遺伝子、BCR−ABL、TEL−AML1、EWS−FLI1、TLS−FUS、PAX3−FKHR、Bcl−2、AML1−ETO、AML1−MTG8、Ras、Fos PDGF、RET、APC、NF−1、Rb、p53、MDM2など;多剤耐性遺伝子などの過剰発現配列;サイクリン;ベータ−カテニン;テロメラーゼ遺伝子;c−myc、n−myc、Bcl−2、Erb−B1およびErb−B2;ならびにRas、Mos、Raf、およびMetなどの変異配列を含む。腫瘍サプレッサ遺伝子の例は、これに限定されるわけではないが、p53、p21、RB1、WT1、NF1、VHL、APC、DAPキナーゼ、p16、ARF、ニューロフィブロミン、およびPTENを含む。抗癌療法で有用な核酸分子によって標的化できる遺伝子の例は、インテグリン、セレクチンおよびメタロプロテイナーゼなどの腫瘍移動に関連するタンパク質をコードする遺伝子;血管内皮増殖因子(VEGF)またはVEGFrなど新しい血管の形成を促進するタンパク質をコードする抗血管新生遺伝子;エンドスタチン、アンギオスタチン、およびVEGF−R2などの新生血管形成を阻害するタンパク質をコードする抗血管新生遺伝子;ならびにインターロイキン、インターフェロン、線維芽細胞増殖因子(α−FGFおよびβ−FGF)、インスリン様増殖因子(たとえばIGF−1およびIGF−2)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、形質転換増殖因子(たとえばTGF−αおよびTGF−β)、上皮増殖因子(EGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、幹細胞因子およびその受容体c−Kit(SCF/c−Kit)リガンド、CD40L/CD40、VLA−4 VCAM−1、ICAM−1/LFA−1、ヒアルロン(hyalurin)/CD44などのタンパク質をコードする遺伝子を含む。当業者によって認識されるように、上述の例は排他的ではない。
本発明による使用のための核酸は、たとえば、抗癌剤または他の治療剤として、プローブ、プライマーなどを含む、多様な活性のいずれかを有し得る。核酸は、酵素活性(たとえばリボザイム活性)、遺伝子発現阻害活性(たとえばアンチセンスまたはsiRNA剤などとして)、および/または他の活性を有し得る。核酸は、それ自体活性であり得るか、または(たとえば送達された核酸の複製および/または転写によって)活性核酸剤を送達するベクターであり得る。本明細書の目的では、このようなベクター核酸は、それらが治療活性剤をコードする、またはそうでなければ送達する場合は、それら自体が治療活性を有していなくても、「治療剤」と見なされる。
ある実施形態において、クロロトキシン剤は、アンチセンス化合物を含むまたはコードする核酸治療剤と組合せて投与される、および/または核酸治療剤を含む。「アンチセンス化合物または剤」、「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」および「アンチセンスオリゴヌクレオチド類似体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アンチセンス化合物をRNA中の標的配列にWatson−Crick塩基対合によってハイブリダイズさせて、標的配列内にRNAオリゴマーヘテロ2本鎖を形成させる、ヌクレオチド塩基およびサブユニット対サブユニット主鎖の配列を指す。オリゴマーは、標的配列内で正確な配列相補性または準相補性を有し得る。このようなアンチセンスオリゴマーは、標的配列を含有するmRNAの翻訳を遮断もしくは阻害し得る、または遺伝子転写を阻害し得る。アンチセンスオリゴマーは、2本鎖または1本鎖配列に結合し得る。
本発明の実施での使用に好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、たとえば以下の総説:R.A Stahelら、Lung Cancer,2003,41:S81−S88;K.F.Pirolloら、Pharmacol.Ther.,2003,99:55−77;A.C.Stephens and R.P.Rivers,Curr.Opin.Mol.Ther.,2003,5:118−122;N.M.Dean and C.F.Bennett,Oncogene,2003,22:9087−9096;N.Schiavoneら、Curr.Pharm.Des.,2004,10:769−784;L.Vidalら、Eur.J.Cancer,2005,41:2812−2818;T.Aboul−Fadl,Curr.Med.Chem.,2005,12:2193−2214;M.E.Gleave and B.P.Monia,Nat.Rev.Cancer,2005,5:468−479;Y.S.Cho−Chung,Curr.Pharm.Des.,2005,11:2811−2823;E.Rayburnら、Lett.Drug Design&Discov.,2005,2:1−18;E.R.Rayburnら、Expert Opin.Emerg.Drugs,2006,11:337−352;I.Tamm and M.Wagner,Mol.Biotechnol.,2006,33:221−238で言及されたものを含む(そのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられている)。
好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドの例はたとえば、アポトーシスの強力な阻害薬であり、濾胞性リンパ腫、乳癌、結腸癌および前立腺癌、ならびに中間型/高悪性度リンパ腫を含む多くの癌で過剰発現される、bcl−2 mRNAの開始コドン領域を標的としたホスホロチオエートオリゴマーである、オリマーソン(olimerson)ナトリウム(Genta,Inc.,Berkeley Heights,NJが開発したGenasense(商標)またはG31239としても公知)を含む(C.A.Steinら、Semin.Oncol.,2005,32:563−573;S.R.Frankel,Semin.Oncol.,2003,30:300−304)。他の好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、cAMP依存性タンパク質キナーゼA(PKA)に向けられた混合主鎖オリゴヌクレオチドである、GEM−231(HYB0165,Hybridon,Inc.,Cambridge,MA)(S.Goelら、Clin.Cancer Res.,203,9:4069−4076);PKC−アルファのアンチセンス阻害薬である、アフィニタク(ISIS 3521またはアプリノカルセン、ISIS pharmaceuticals,Inc.,Carlsbad,CA);細胞周期、組織リモデリング、脂質輸送および細胞死の制御に関与し、乳癌、前立腺癌および結腸癌で過剰発現される糖タンパク質であるクラスタリンに対する2’−メトキシエチル修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドである、OGX−011(Isis 112989,Isis Pharmaceuticals,Inc.);c−raf−1 mRNAの3’−非翻訳領域の配列に相補的なホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである、ISIS 5132(Isis 112989,Isis Pharmaceuticals,Inc.)(S.P.Henryら、Anticancer Drug Des.,1997,12:409−420;B.P.Moniaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93:15481−15484;C.M.Rudinら、Clin.Cancer Res.,2001,7:1214−1220);ヒトH−ras mRNA発現のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドアンチセンス阻害薬である、ISIS 2503(Isis Pharmaceuticals,Inc.)(J.Kurreck,Eur.J.Biochem.,2003,270:1628−1644);GEM 640(AEG 35156,Aegera Therapeutics Inc.and Hybridon,Inc.)などの、アポトーシス経路の実質的部分を遮断するアポトーシスタンパク質のX結合阻害薬(XIAP)を標的とする、または2’−O−メトキシエチルキメラオリゴヌクレオチドのISIS 23722(Isis Pharmaceuticals,Inc.)などの、アポトーシスタンパク質(IAP)の阻害薬であるスルビビンを標的とする、オリゴヌクレオチド;DNAメチルトランスフェラーゼを標的とするMG98;およびヒトリボヌクレオチド還元酵素のR2小型サブユニット成分のmRNAのコード領域に相補的である20マーオリゴヌクレオチドの、GTI−2040(Lorus Therapeutics,Inc.Toronto,Canada)を含む。
他の好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Her−2/neu、c−Myb、c−Myc、およびc−Rafに対して開発されているアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む(たとえばA.Biroccioら、Oncogene,2003,22:6579−6588;Y.Leeら、Cancer Res.,2003,63:2802−2811;B.Luら、Cancer Res.,2004,64:2840−2845;K.F.Pirolloら、Pharmacol.Ther.,2003,99:55−77;およびA.Raitら、Ann.N.Y.Acad.Sci.,2003,1002:78−89を参照)。
ある実施形態において、本発明による使用のための核酸抗癌剤は、干渉RNA分子を含む、または干渉RNA分子をコードする。「干渉RNA」および「干渉RNA分子」という用語は、本明細書では互換的に使用され、遺伝子発現を阻害もしくは下方制御できる、または配列特異的方法で、たとえばRNA干渉(RNAi)を媒介することによって遺伝子を発現停止させることができる、RNA分子を指す。RNA干渉(RNAi)は、相補的標的1本鎖mRNAの分解および対応する翻訳配列の「発現停止」を誘発する、2本鎖RNA(dsRNA)によって引き起こされる進化的に保存された配列特異的機構である(McManus and Sharp,2002,Nature Rev.Genet.,2002,3:737)。RNAiは、より長いdsRNA鎖の、約21−23ヌクレオチド長の生物活性のある「低分子干渉RNA」(siRNA)配列への酵素切断によって機能する(Elbashirら、Genes Dev.,2001,15:188)。RNA干渉は、癌療法への有望な手法として浮上してきた。
本発明の実施での使用に好適な干渉RNAは、複数の形のいずれかで提供することができる。たとえば干渉RNAは、単離低分子干渉RNA(siRNA)、2本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)の1つ以上として提供することができる。
本発明での使用に好適な干渉RNA分子の例は、たとえば以下の総説:O.Milhavetら、Pharmacol.Rev.,2003,55:629−648;F.Biら、Curr.Gene.Ther.,2003,3:411−417;P.Y.Luら、Curr.Opin.Mol.Ther.,2003,5:225−234;I.Friedrichら、Semin.Cancer Biol.,2004,14:223−230;M.Izquierdo,Cancer Gene Ther.,2005,12:217−227;P.Y.Luら、Adv.Genet.,2005,54:117−142;G.R.Devi,Cancer Gene Ther.,2006,13:819−829;M.A.Behlke,Mol.Ther.,2006,13:644−670;およびL.N.Putralら、Drug News Perspect.,2006,19:317−324に引用されたiRNAを含む(そのそれぞれはその全体が参照によって本明細書に組み入れられている)。
好適な干渉RNA分子の他の例は、これに限定されるわけではないが、p53干渉RNA(たとえばT.R.Brummelkampら、Science,2002,296:550−553;M.T.Hemmanら、Nat.Genet.,2003,33:396−400);慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病の発症に関連するbcr−abl融合を標的とする干渉RNA(たとえばM.Scherrら、Blood,2003,101:1566−1569;M.J.Liら、Oligonucleotides,2003,13:401−409)、未分化大細胞リンパ腫の75%に見られ、腫瘍形成に関連する構成的活性型キナーゼの発現を引き起こすタンパク質である、NPM−ALKの発現を阻害する干渉RNA(U.Ritterら、Oligonucleotides,2003,13:365−373);Raf−1(T.F.Louら、Oligonucleotides,2003,13:313−324)、K−Ras(T.R.Brummelkampら、Cancer Cell,2002,2:243−247)、erbB−2(G.Yangら、J.Biol.Chem.,2004,279:4339−4345)などの癌遺伝子を標的とする干渉RNA;結腸直腸癌での主な形質転換イベントと考えられているT細胞因子標的遺伝子のトランス活性化をその過剰発現によって引き起こす、b−カテニンタンパク質を標的とする干渉RNA(M.van de Weteringら、EMBO Rep.,2003,4:609−615)を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するようなクロロトキシン剤は、治療計画と組合せてまたは治療計画の一部として投与され、1つ以上の治療計画が血管新生に関連する疾患、障害、または状態の処置のために推奨されている。ほんの数例を挙げると、癌処置に推奨される投薬計画は、www.cancer.govのURLを有するウェブサイト、すなわち国立癌研究所のウェブサイトに見出すことができる。黄斑変性症の処置に推奨される投薬計画は、URL www.mayoclinic.org/macular−degeneration/treatment.htmlを有するウェブサイトに見出すことができる。処置投薬計画は、化学療法、外科手術および/または放射線療法を含み得る。
C.標識部分
ある実施形態において、クロロトキシン剤は、少なくとも1つの標識部分によって標識される。たとえば1つ以上のクロロトキシン部分および/または1つ以上の治療部分は、標識部分によって標識され得る。
標識部分は、試験される組織への結合後に、クロロトキシン剤の検出を促進し得る。標識部分は、標識部分が測定可能であるシグナルを発生する、およびその強度が組織に結合された診断剤の量に関連付けられる(たとえば比例する)ように選択され得る。
いくつかの実施形態において、標識は、クロロトキシン剤の所望の生物または製薬活性を実質的に妨害しない。ある実施形態において、標識は、1つ以上の標識部分のクロロトキシン部分への、たとえばクロロトキシン部分のペプチド配列上の非干渉部分への結合または包含を含む。このような非干渉位置は、クロロトキシン部分の腫瘍細胞への特異的結合に関与しない位置である。
標識部分は、興味のある組織または系への結合後に、クロロトキシン剤の検出を可能にする任意の実体であり得る。多種多様の検出可能な薬剤のいずれも、本発明のクロロトキシン剤の標識部分として使用することができる。標識部分は直接検出され得るか、または間接的に検出され得る。標識部分の例は、これに限定されるわけではないが:各種のリガンド、放射性核種(たとえば3H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Luなど)、蛍光染料(詳細な例示的な蛍光染料については、下を参照)、化学発光剤(たとえばアクリジニウム(acridinum)エステル、安定化ジオキセタンなど)、生物発光剤、スペクトル分解型無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち量子ドット)、金属ナノ粒子(たとえば金、銀、銅、白金など)ナノクラスタ、常磁性金属イオン、酵素(酵素の詳細な例については下を参照)、比色標識(たとえば染料、コロイド金など)、ビオチン、ジゴキシゲニン(dioxigenin)、ハプテン、および抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能であるタンパク質を含む。
ある実施形態において、標識部分は蛍光標識を含む。多種多様の化学構造および物理的特徴の多数の公知の蛍光標識部分は、本発明の診断方法の実施での使用のために好適である。好適な蛍光染料は、これに限定されるわけではないが、フルオレセインおよびフルオレセイン染料(たとえばフルオレセインイソチオシアニンまたはFITC、ナフトフルオレセイン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセインまたはFAMなど)、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル染料、オキソノール染料、フィコエリトリン、エリトロシン、エオシン、ローダミン染料(たとえばカルボキシテトラメチル−ローダミンまたはTAMRA、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン(TMR)など)、クマリンおよびクマリン染料(たとえばメトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリン、アミノメチルクマリン(AMCA)など)、オレゴングリーン染料(たとえばオレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514など)、テキサスレッド、テキサスレッド−X、スペクトラムレッド(商標)、スペクトラムグリーン(商標)、シアニン染料(たとえばCy−3(商標)、Cy−5(商標)、Cy−3.5(商標)、Cy−5.5(商標)など)、アレクサフルオール染料(たとえばアレクサフルオール350、アレクサフルオール488、アレクサフルオール532、アレクサフルオール546、アレクサフルオール568、アレクサフルオール594、アレクサフルオール633、アレクサフルオール660、アレクサフルオール680など)、ボディーピー染料(たとえばボディーピーFL、ボディーピーR6G、ボディーピーTMR、ボディーピーTR、ボディーピー530/550、ボディーピー558/568、ボディーピー564/570、ボディーピー576/589、ボディーピー581/591、ボディーピー630/650、ボディーピー650/665など)、IRDyes(たとえばIRD40、IRD700、IRD800など)などを含む。好適な蛍光染料のさらなる例および蛍光染料をタンパク質およびペプチドなどの他の化学的実体にカップリングする方法については、たとえば“The Handbook of Fluorescent Probes and Research Products”,9thEd.,Molecular Probes,Inc.,Eugene,ORを参照。蛍光標識剤の好ましい特性は、高いモル吸収係数、高い蛍光量子収率、および光安定性を含む。ある実施形態において、標識フルオロフォアは望ましくは、スペクトルの紫外範囲(すなわち400nm未満)よりもむしろ可視(すなわち400〜750nm)における吸収および放出波長を示す。
ある実施形態において、標識部分は酵素を含む。好適な酵素の例は、これに限定されるわけではないが、ELISAで使用される酵素、たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼなどを含む。他の例は、ベータ−グルクロニダーゼ、ベータ−D−グルコシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなどを含む。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアナート、グルタルアルデヒドなどのリンカー基を使用して、クロロトキシン部分にコンジュゲートされ得る。
ある実施形態において、標識部分は、単光子放出型コンピュータ断層撮影法(SPECT)または陽電子(Position)放出断層撮影法(PET)によって検出可能である放射性同位体を含む。このような放射性核種の例は、これに限定されるわけではないが、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−221(211At)、銅−67(67Cu)、銅−64(64Cu)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、サマリウム−153(153Sm)、ルテチウム−177(117Lu)、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、インジウム−111(111In)、およびタリウム−201(201Tl)を含む。
ある実施形態において、標識部分はガンマカメラによって検出可能である放射性同位体を含む。このような放射性同位体の例は、これに限定されるわけではないが、ヨウ素−131(131I)、およびテクネチウム−99m(99mTc)を含む。
ある実施形態において、標識部分は、磁気共鳴映像法(MRI)での良好な造影強調剤である常磁性金属イオンを含む。このような常磁性金属イオンは、これに限定されるわけではないが、ガドリニウムIII(Gd3+)、クロムIII(Cr3+)、ジスプロシウムIII(Dy3+)、鉄III(Fe3+)、マンガンII(Mn2+)、およびイッテルビウムIII(Yb3+)を含む。ある実施形態において、標識部分はガドリニウムIII(Gd3+)を含む。ガドリニウムは、FDAが承認したMRI用造影剤であり、異常な組織に蓄積して、このような異常な範囲を磁気共鳴画像で非常に明るく(強調)する。ガドリニウムは、体の各種の範囲において、特に脳において正常組織と異常組織との間に強いコントラストを与えることが公知である。
ある実施形態において、標識部分は、核磁気共鳴分光法(MRS)によって検出可能である安定な常磁性同位体を含む。好適で安定な常磁性同位体の例は、これに限定されるわけではないが、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)を含む。
D.クロロトキシン剤と治療剤および/または標識部分との会合
ある実施形態において、クロロトキシン剤は、少なくとも第2の治療剤および/または標識部分と会合する部分である。
クロロトキシン剤と治療剤および/または標識部分との会合は、共有結合的または非共有結合的であり得る。結合、相互作用、またはカップリングの性質とは無関係に、クロロトキシン剤と治療剤との会合は、いくつかの実施形態において、第2の治療剤が腫瘍へのおよび腫瘍中への輸送/送達の前または間に、クロロトキシン剤から解離しないほど十分に選択的、特異的および強力である。クロロトキシン剤と第2の治療剤との会合は、当業者に公知の任意の化学的、生化学的、酵素的または遺伝的カップリングを使用して達成され得る。
ある実施形態において、クロロトキシン剤と治療剤および/または標識部分との会合は非共有結合的である。非共有結合的相互作用の例は、これに限定されるわけではないが、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、および水素結合を含む。
ある実施形態において、クロロトキシン剤と治療剤および/または標識部分との会合は共有結合的である。当業者によって認識されるように、部分は直接的または間接的(たとえば後述するようにリンカーを介して)のどちらかで相互に結合され得る。
ある実施形態において、クロロトキシン剤と治療剤および/または標識部分は、相互に直接共有結合される。直接共有結合は、アミド、エステル、炭素間、ジスルフィド、カルバメート、エーテル、チオエーテル、尿素、アミン、またはカーボネート結合などの結合によることが可能である。共有結合は、クロロトキシン剤および/または治療剤に存在する官能基を利用することによって達成可能である。代わりに、重要でないアミノ酸は、カップリング目的で有用な基(アミノ、カルボキシまたはスルフヒドリル)を導入するであろう別のアミノ酸によって置換され得る。代わりに、さらなるアミノ酸をクロロトキシン剤に添加して、カップリング目的で有用な基(アミノ、カルボキシまたはスルフヒドリル)を導入することができる。部分を共に結合するために使用できる好適な官能基は、これに限定されるわけではないが、アミン、無水物、ヒドロキシル基、カルボキシ基、チオールなどを含む。活性化剤、たとえばカルボジイミドを使用して直接結合を形成することができる。多種多様の活性化剤が当分野で公知であり、治療剤とクロロトキシン部分との結合に好適である。
他の実施形態において、クロロトキシン剤と治療剤および/または標識部分とは、リンカー基を介して相互に間接的に共有結合される。これは、ホモ官能性剤およびヘテロ官能性剤を含む、当分野で周知の任意の数の安定な2官能性剤を使用して達成することができる(このような薬剤の例は、たとえばPierce Catalog and Handbookを参照)。2官能性リンカーの使用が活性化剤の使用と異なるのは、2官能性リンカーが得られたクロロトキシン剤に存在する結合部分を生成するのに対して、活性化剤は反応に関与する2つの部分の間に直接カップリングを生成するという点である。2官能性リンカーの役割は、2つのそうでなければ不活性な部分の間の反応を可能にすることであり得る。代わりにまたはさらに、反応生成物の一部となる2官能性リンカーは、そのリンカーがある程度の立体配座上の柔軟性をクロロトキシン剤に与えるように選択され得る(たとえば、2官能性リンカーは、複数の原子を含有するアルキル直鎖を含み、たとえばアルキル直鎖は2〜10個の炭素原子を含有する)。代わりにまたはさらに、2官能性リンカーは、クロロトキシン剤と治療剤との間に形成された結合が切断可能である、たとえば加水分解可能であるように選択され得る(このようなリンカーの例については、たとえば米国特許第5,773,001号;同第5,739,116号および同第5,877,296号を参照、そのそれぞれはその全体が参照によって本明細書に組み入れられている)。このようなリンカーはたとえば、コンジュゲートの加水分解後にクロロトキシン剤および/または治療剤により高い活性が見られるときに使用され得る。治療剤がクロロトキシン剤から切断され得る例示的な機構は、リソソーム(ヒドラゾン、アセタール、およびシス−アコニテート様アミド)の酸性pHでの加水分解、リソソーム酵素(カテプシン(capthepsin)および他のリソソーム酵素)によるペプチド切断、およびジスルフィドの還元)を含む。治療剤がクロロトキシン剤から切断される別の機構は、細胞外または細胞内での生理的pHにおける加水分解を含む。この機構は、治療剤をクロロトキシン部分にカップリングするために使用される架橋剤が生分解性/生腐食性実体、たとえばポリデキストランなどであるときに適用される。
たとえばヒドラゾン含有クロロトキシン剤は、所望放出特性を与える導入されたカルボニル基によって生成することができる。クロロトキシン剤は、1端にジスルフィド基を、反対端にヒドラジン誘導体を備えたアルキル鎖を含むリンカーによって生成することもできる。ヒドラゾン以外の官能基を含有するリンカーは、リソソームの酸性環境で切断される可能性も有する。たとえばクロロトキシン剤は、エステル、アミド、およびアセタール/ケタールなどの、細胞内で切断可能であるヒドラゾン以外の基を含有するチオール反応性リンカーから生成できる。
pH感受性リンカーのクラスの別の例は、アミド基に隣接したカルボン酸基を有するシス−アコニテートである。カルボン酸は、酸性リソソーム中でのアミド加水分解を加速する。同様の種類の加水分解速度の加速を複数の他の種類の構造によって達成するリンカーも使用できる。
クロロトキシン剤のための別の考えられる放出方法は、リソソーム酵素によるペプチドの酵素加水分解である。一例において、ペプチド性毒素は、アミド結合を介してパラ−アミノベンジルアルコールに結合され、次にカルバメートまたはカーボネートがベンジルアルコールと治療剤との間に生成される。ペプチドの切断によって、アミノベンジルカルバメートまたはカーボネートの崩壊、および治療剤の放出が引き起こされる。別の例において、フェノールは、カルバメートの代わりにリンカーの崩壊によって切断することができる。別の変形では、ジスルフィド還元を使用して、パラ−メルカプトベンジルカルバメートまたはカーボネートの崩壊を開始する。
治療剤および/または標識部分がタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドである実施形態において、クロロトキシン剤および治療剤は、融合タンパク質から共に生成し得る。上ですでに定義したように、融合タンパク質は、その個々のペプチド主鎖を介した共有結合によって結合された2つ以上のタンパク質またはペプチドを含む分子である。本発明の方法で使用する融合タンパク質は、当分野で公知の任意の好適な方法によって産生することができる。たとえば融合タンパク質は、ポリペプチド合成装置を使用する直接タンパク質合成方法によって産生することができる。代わりに、遺伝子断片のPCR増幅は、アンカープライマーを使用して実施することができ、アンカープライマーによって2つの連続遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを生じ、続いて遺伝子断片はアニーリング、再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成させることができる。融合タンパク質は、標準組換え方法によって得ることができる(たとえばManiatisら“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2ndEd.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring,N.Y.を参照)。これらの方法は一般に(1)所望の融合タンパク質をコードする核酸分子の構築;(2)核酸分子の組換え発現ベクターへの挿入;(3)発現ベクターによる好適な宿主細胞の形質転換;および(4)宿主細胞での融合タンパク質の発現を含む。このような方法によって産生された融合タンパク質は、当分野で公知であるように、培地から直接、または細胞の溶解のどちらかによって回収および単離され得る。形質転換宿主細胞によって産生されたタンパク質を精製する多くの方法が、当分野で周知である。これらは、これに限定されるわけではないが、沈殿、遠心分離、ゲル濾過、および(イオン交換、逆相、およびアフィニティ)カラムクロマトグラフィーを含む。他の精製方法が記載されている(たとえばDeutscherら、“Guide to Protein Purification”in Methods in Enzymology,1990,Vol.182,Academic Press)。
当業者がただちに認識できるように、本発明の方法で使用するクロロトキシン剤は、任意の数のクロロトキシン部分を含むことができ、任意の数の異なる方法で相互に会合された任意の数の治療剤および/または標識部分と会合させることができる。コンジュゲートの設計は、その所期の目的およびその使用の特定の状況で望ましい特性に影響されるであろう。クロロトキシン部分を治療剤に会合または結合させてクロロトキシン剤を形成する方法の選択は、当業者の知識の範囲内であり、一般に部分間で望ましい相互作用の性質(すなわち共有結合的対非共有結合的および/または切断可能対切断不可能)、治療剤の性質、含まれる部分の官能化学基の存在および性質などによって変わるであろう。
標識クロロトキシン剤では、クロロトキシン剤(または治療剤)と標識部分との間の会合は、共有結合的または非共有結合的であり得る。共有結合的会合の場合、クロロトキシン(または治療剤)および標識部分は、上述のように直接または間接的のどちらかで相互に結合され得る。
ある実施形態において、クロロトキシン部分(または治療剤)と標識部分との間の会合は非共有結合的である。非共有結合的会合の例は、これに限定されるわけではないが、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、および水素結合を含む。たとえば標識部分は、クロロトキシン剤(または治療剤)にキレート化によって非共有結合させることができる(たとえば金属アイソトープは、クロロトキシン部分に結合、たとえば融合されたpolyHis領域にキレート化させることができる)。
ある実施形態において、クロロトキシン剤(または治療剤)は、同位体標識される(すなわちクロロトキシン剤(または治療剤)は、通常自然界に見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換された1個以上の原子を含有する)。代わりにまたはさらに、同位体は、クロロトキシン剤および/または治療剤に結合され得る。
当業者がただちに認識できるように、本発明のある方法で使用する標識クロロトキシン剤は、任意の数の標識部分を含むことができ、任意の数の治療剤と会合させることができる。このような薬剤および標識部分は、任意の数の異なる方法で相互に会合させることができる。標識クロロトキシン剤の設計は、その所期の目的、その使用の状況で望ましい特性、および検出から選択された方法に影響されるであろう。
II.血管新生を減少させる方法
本発明の血管新生を減少させる方法は、クロロトキシン剤の量を被験体に投与することをしばしば含み、ここでクロロトキシンの量は、クロロトキシン剤が投与されない対照被験体で観察または予想されるものと比較して、血管新生の程度が低下されるように有効である。
A.適応
本発明の方法は、異常な血管新生を含む疾患または状態を改善および/または処置するのに有用であり得る。「異常な血管新生」は、本明細書で使用するように、発生、再生、および創傷修復などの正常な生物学的プロセスで発生しない血管新生を指す。本発明の方法を使用して減少され得る血管新生は、いくつかの実施形態において、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、リポ多糖類(LPS)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン−6(IL−6)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子(TNFα)、肝細胞増殖因子(HGF)、およびその組合せからなる群より選択される因子によって刺激され得る。
血管新生は多様な病的プロセスに関与するため、本発明の方法は、たとえば癌(転移癌を含む)、眼の新生血管形成(黄斑変性症など)、炎症性疾患(関節炎など)などの疾患を処置および/または改善するのに有用であり得る。
腫瘍は、転移の増殖および/または発症を継続するために、新たな血管の形成に依存するようになることが多い。それゆえ本発明の方法は、腫瘍を改善および/または処置するのに有用であり得る。クロロトキシン剤を投与され得る被験体は、転移を開始している、またはすでに転移した腫瘍を有し得る。被験体は、1つ以上の転移を有し得る。いくつかの実施形態において、腫瘍および/または転移のサイズが縮小される。
いくつかの実施形態において、被験体は、脈絡膜新生血管形成を特徴とする状態もしくは疾患に罹患しているか、または状態もしくは疾患のリスクに瀕している。このような状態は、これに限定されるわけではないが、黄斑変性症、近視、眼球外傷、弾性線維性仮性黄色腫、およびその組合せを含む。
黄斑変性症は、65歳以上のアメリカ人における失明および盲目の主な原因である。黄斑変性症は、通例は加齢性(AMDまたはARMDと呼ばれることが多い)として発生することが多いが、若年性黄斑変性症も同様に発生する。AMD/ARMDでは、黄斑、すなわち明瞭な中心視に関与する脈絡膜の一部が変性する。黄斑変性症は通例、乾性(非血管新生)または湿性(血管新生)のどちらかとして診断される。
乾性黄斑変性症では、ドルーゼンとして公知の(knwn)黄色がかった斑点が、たいていは黄斑周囲の劣化した組織による沈着または残屑から蓄積を開始する。中心視の喪失(less)は通常は徐々に発生して、滲出型黄斑変性症の失明ほど重篤ではない。
滲出型黄斑変性症は、「血管新生」と呼ばれることで示唆されるように、たとえば黄斑で異常増殖する新たな血管を特徴とする。このような新たな血管は、網膜の下で増殖することがあり、血液および体液を漏出させる。このような漏出によって、光感受性網膜細胞に対して永久的な損傷が引き起され、網膜細胞は死に、中心視に盲点が生成する。滲出型黄斑変性症は、さらに2つの種類に分類され得る。潜在型の滲出型黄斑変性症では、網膜下での新たな血管増殖は顕著でなく、漏出はあまり明らかではなく、通例、あまり重篤でない失明(vision less)が起きる。古典的な形の滲出型黄斑変性症では、血管の増殖および瘢痕形成は、網膜の下に観察できる非常に明瞭に線引きされた輪郭を有する。古典的な滲出型黄斑変性症は、古典的な脈絡膜新生血管形成としても公知であり、通常はより重篤な失明(vsion loss)を引き起こす。
多くのAMD/ARMDを含む滲出型黄斑変性症における血管新生を役割を考えると、本発明の方法は、このような障害を処置および/または改善するのに有用であり得る。滲出型黄斑変性症の現在の療法は、薬物を特定の細胞に標的化するための光線力学的療法(PDT)と場合により組合される、Lucentis(商標)、Macugen(商標)および/またはビズダイン(商標)などの血管新生阻害薬を含む。高エネルギーのレーザー光を使用して異常な血管のある脈絡膜の範囲に小規模な火傷を精製する光凝固も、滲出型黄斑変性症を処置するために使用される。
いくつかの実施形態において、被験体は、滲出型黄斑変性症および/または加齢性黄斑変性症に罹患している。滲出型黄斑変性症に罹患している被験体の中では、被験体は潜在型または古典型に罹患し得る。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は、既存の新生血管系の退行を引き起こす。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は新たな血管の出芽を防止する。ある実施形態において、クロロトキシン剤は、滲出型黄斑変性症の他の処置、たとえば光凝固、他の血管新生阻害薬を用いた処置、光線力学的療法などと組合される。
B.投薬量および投与
本発明の方法では、クロロトキシン剤、またはその製薬組成物は一般に、少なくとも1つの所望の結果を達成するのに必要または十分であるような量および時間で投与されるであろう。たとえばクロロトキシン剤は、血管の形成を低速化もしくは阻害する、および/または既存の新生血管系の退行を引き起こすような量および時間で投与することができる。このような効果は、たとえば他の方法で検出可能であり得る臨床的利益を生じ得る。たとえば、癌患者での血管新生の減少によって、腫瘍サイズの縮小、転移の数の減少、転移の形成の防止などが引き起こされ得る。同様に、黄斑変性症患者での血管新生の減少によって、視力の改善が引き起こされ得る。別の例として、関節炎患者では、血管新生の減少によって、炎症が低減され、症状が軽減され得る。
本発明による投薬計画は、単回用量またはある期間にわたる複数回用量より成り得る。投与は、1日1回または複数回、毎週(また他の数日間隔で)または間欠的なスケジュールであり得る。投与されるクロロトキシン剤、またはその製薬組成物の正確な量は、被験体間で異なり、複数の因子に依存するであろう(以下を参照)。実施例7で議論するように、たとえばPEG化によるクロロトキシン剤の修飾は、血管新生に対する有効性を維持しながら、投与頻度を低下させ得る。本発明のいくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は、週に5回未満投与される。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は、週に2回未満投与される。
クロロトキシン剤、またはその製薬組成物は、所望の治療効果を達成するために有効な任意の投与経路を使用して投与され得る。本発明のある実施形態において、クロロトキシン剤(またはその製薬組成物)は全身に送達される。代表的な全身投与経路は、これに限定されるわけではないが、筋肉内、静脈内、肺、および経口経路を含む。全身投与はまた、たとえば輸液もしくはボーラス注入によって、または上皮層もしくは粘膜皮膚層(たとえば経口、粘膜、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって実施され得る。ある実施形態において、クロロトキシン剤は静脈内投与される。
他の投与経路も使用され得る。ある実施形態において、クロロトキシン剤は、静脈内、頭蓋内、筋肉内、腫瘍内、皮下、眼内、眼周囲、局所適用からなる群より選択される経路によって、またはその組合せによって投与される。
眼新生血管形成疾患における血管新生の程度を低下させることが所望であり得る。いくつかの実施形態において、クロロトキシン剤は眼に送達され得る。眼への送達は、たとえば硝子体内注射、結膜下注射などの眼内および/または眼周囲経路を使用して達成され得る。クロロトキシン剤の眼への局所適用は、たとえば点眼薬を使用しても達成され得る。
眼投与経路は、黄斑変性症などの眼の新生血管形成疾患の処置に特に有用であり得る。
投与経路に応じて、有効用量は、処置される被験体の体重;体表面積;原発臓器/腫瘍サイズ;ならびに/または転移の数、サイズ、および/もしくは種類に従って計算され得る。適切な投薬量の最適化は、ヒト臨床試験で観察された薬物動態データを考慮して、当業者がただちに行うことができる。最終的な投薬計画は、薬物の作用を変更する各種の因子、たとえば薬物の特異的活性、損傷の重症度および患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の存在する感染症の重症度、投与時間、他の療法の使用(または不使用)、ならびに他の臨床因子を考慮して、主治医が決定するであろう。クロロトキシン剤を使用して試験を実施するときに、適切な投薬レベルおよび処置期間に関するさらなる情報が生じるであろう。
代表的な投薬量は、1.0pg/kg体重〜100mg/kg体重を含む。たとえば全身投与では、投薬量は、100.0ng/kg体重〜10.0mg/kg体重であり得る。
さらに詳細には、クロロトキシン剤が静脈内投与される、ある実施形態において、薬剤の投薬は、約0.005mg/kg〜約5mg/kg、たとえば約0.005mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約4mg/kg、約0.02mg/kg〜約3mg/kg、約0.03mg/kg〜約2mg/kgまたは約0.03mg/kg〜約1.5mg/kgのクロロトキシンを含む1回以上の用量の投与を含み得る。たとえば、ある実施形態において、それぞれ約0.03mg/kg、約0.04mg/kg、約0.05mg/kg、約0.06mg/kg、約0.07mg/kg、約0.09mg/kg、約1.0mg/kgまたは1.0mg/kg超のクロロトキシンを含有する、クロロトキシン剤の1回以上の用量が投与され得る。他の実施形態において、それぞれ約0.05mg/kg、約0.10mg/kg、約0.15mg/kg、約0.20mg/kg、約0.25mg/kg、約0.30mg/kg、約0.35mg/kg、約0.40mg/kg、約0.45mg/kg、約0.50mg/kg、約0.55mg/kg、約0.60mg/kg、約0.65mg/kg、約0.70mg/kg、約0.75mg/kg、約0.80mg/kg、約0.85mg/kg、約0.90mg/kg、約0.95mg/kg、約1.0mg/kg、または約1mg/kg超のクロロトキシンを含有する、クロロトキシン剤の1回以上の用量が投与され得る。また他の実施形態において、それぞれ約1.0mg/kg、約1.05mg/kg、約1.10mg/kg、約1.15mg/kg、約1.20mg/kg、約1.25mg/kg、約1.3mg/kg、約1.35mg/kg、約1.40mg/kg、約1.45mg/kg、約1.50mg/kg、または約1.50mg/kg超のクロロトキシンを含有する、クロロトキシン剤の1回以上の用量が投与され得る。このような実施形態において、処置は単回用量のクロロトキシン剤の投与または2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量もしくは6回を超える用量の投与を含み得る。2回連続用量は、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、または7日超の間隔(たとえば10日、2週間、または2週間超)で投与され得る。
C.血管新生の程度
血管新生を減少させる本発明の方法において、血管新生の程度は、対照との比較で決定され得る。当業者によって理解されるように、対照レベルは、多様な方法で取得および/または推定され得る。投与されている被験体に類似している対照被験体からのデータが比較に使用され得る。代わりにまたはさらに、標準値が対照値として使用され得る。このような標準値は、たとえば臨床記録、アーカイブ、文献などで入手され得る公知のデータ、値、パラメータなどから計算および/または外挿され得る。
血管新生の程度は、多様な方法で測定され得る。たとえば、ヘモグロビン含有量、新生血管形成の面積、所与の視野でカウントした分枝点の数などは、血管新生の程度の表示として作用し得る。転移の数(たとえば癌患者における)、視力スコア(たとえば眼の新生血管形成疾患に罹患している被験体における)などの臨床測定値も、血管新生の程度の尺度として作用し得る。
いくつかの実施形態において、血管新生の程度は、対照被験体と比較して少なくとも50%低下される。
D.併用療法
本発明の方法は、さらなる療法と組合せて利用できることが認識されるであろう(すなわち本発明による処置は、1つ以上の所望の治療薬もしくは医療的手技と同時に、その前に、またはそれに続いて投与することができる)。このような併用投薬計画で使用される療法(治療薬または手技)の詳細な組合せは、所望の治療薬および/または処置の適合性および達成される所望の治療効果を考慮するであろう。
たとえば癌の血管新生を減少させるために、本発明の方法は、処置される腫瘍に応じて、外科手術、放射線療法(たとえばガンマ線放射、中性子線(neuron beam)放射線療法、電子線放射線療法、陽子線療法、近接照射療法、全身放射性同位体)、内分泌療法、温熱療法、および寒冷療法を含む他の手技と共に使用することができる。
転移性脳腫瘍の多くの症例において、本発明の方法は、原発腫瘍を除去する外科手術の後に投与されることが多いであろう。脳腫瘍の処置では、外科手術の主な目標は、肉眼的全摘出、すなわち眼に見えるすべての原発腫瘍の除去を達成することである。このような目標を達成する際の問題の1つは、これらの腫瘍が浸潤性であること、すなわちこれらの腫瘍が正常な脳構造内を縫うように進む傾向があることである。さらに、患者の脳から安全に除去できる腫瘍の量に大きなばらつきがある。腫瘍の一部または全部が脳制御の重要な機能の領域に位置する場合には、除去は一般に不可能である。さらに、外科手術のみによって離れた部位の転移を除去および/または破壊することは不可能であるか、または実際的でないかもしれない。
転移性脳腫瘍の多くの症例において、本発明の処置は、放射線療法と組合せて(すなわち放射線療法と同時に、その前に、またはその後に)投与されることが多いであろう。通常の処置では、放射線療法は一般に、外科手術の後である。放射線は一般に、数週間にわたって一連の日常的な処置(フラクションと呼ばれる)として投与される。放射線を投与するこの「フラクション化された」手法は、腫瘍細胞の破壊を最大限にして、正常な隣接する脳に対する副作用を最小限にするために重要である。放射線が投与される面積(放射野と呼ばれる)は、できる限り正常な脳の多くが含まれないようにするために、慎重に計算される。
代わりにまたはさらに、本発明の方法は、任意の副作用を弱める薬剤(たとえば制吐薬など)などの他の治療剤および/または他の承認された化学療法薬と組合せて投与することができる。化学療法剤の例は、これに限定されるわけではないが、いくつか挙げると、アルキル化薬(たとえばメクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミドなど)、代謝拮抗薬(たとえばメトトレキセートなど)、プリン拮抗薬およびピリミジン拮抗薬(たとえば6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビンなど)、紡錘体毒(たとえばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセルなど)、ポドフィロトキシン(たとえばエトポシド、イリノテカン、トポテカンなど)、抗生物質(たとえばドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンなど)、ニトロソ尿素(nitrosurea)(たとえばカルムスチン、ロムスチン、ノムスチンなど)、無機イオン(たとえばシスプラチン、カルボプラチンなど)、酵素(たとえばアスパラギナーゼなど)、およびホルモン(たとえばタモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、メゲストロールなど)を含む。最新の癌療法のさらなる包括的な議論については、その内容が参照により本明細書に組み入れられている、http://www.cancer.gov/、FDA承認腫瘍薬のリストhttp://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm、およびThe Merck Manual,Seventeenth Ed.1999を参照。
本発明の方法はまた、処置投薬計画の一部としての細胞傷害剤の1つ以上のさらなる組合せと共に使用可能であり、ここで細胞傷害剤のさらなる組合せは:CHOPP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);COP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);CAP−BOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);m−BACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン);ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、メクロレタミン(mechloethamine)、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、シタラビン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン);MACOP−B(メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン);MOPP(メクロレタミン(mechloethamine)、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン);ABV(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、およびビンブラスチン)と交互の、MOPP(メクロレタミン(mechloethamine)、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン);ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)と交互の、MOPP(メクロレタミン(mechloethamine)、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ChlVPP(クロラムブシル、ビンブラスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン);IMVP−16(イホスファミド、メトトレキセート、およびエトポシド);MIME(メチル−gag、イホスファミド、メトトレキセート、およびエトポシド);DHAP(デキサメタゾン、高用量シタラビン(cytaribine)、およびシスプラチン);ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン(methylpredisolone)、高用量シタラビン、およびシスプラチン);CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン);CAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン);CVP−1(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、ESHOP(エトポシド、メチルプレドニゾロン(methylpredisolone)、高用量シタラビン、ビンクリスチンおよびシスプラチン);EPOCH(シクロホスファミドのボーラス用量および経口プレドニゾンと共に、96時間にわたるエトポシド、ビンクリスチン、およびドキソルビシン)、ICE(イホスファミド、シクロホスファミド、およびエトポシド)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CHOP−B(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CEPP−B(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、およびブレオマイシン)、およびP/DOCE(エピルビシンまたはドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)から選択される。
当業者によって認識されるように、本発明の処置方法と組合せて投与される1つ以上の治療剤の選択は、処置される転移性腫瘍に依存するであろう。
たとえば脳腫瘍に処方される化学療法薬は、これに限定されるわけではないが、経口摂取される、テモゾロミド(テモダール(登録商標))、プロカルバジン(マチュレーン(登録商標))、およびロムスチン(CCNU);静脈内投与される、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標)またはビンカサール(Vincasar)PFS(登録商標))、シスプラチン(プラチノール(登録商標))、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、およびカルボプラチン(パラプラチン(登録商標));ならびに経口、静脈内または髄腔内(すなわち髄液中に直接注射される)投与することができる、メトトレキセート(mexotrexate)(リウマトレックス(登録商標)またはトレクサール(登録商標))を含む。BCNUは、外科手術中にポリマー・ウェハー・インプラント(グリアデル(Giadel)(登録商標)ウェハー)の形でも投与される。脳腫瘍で最も普通に処方される併用療法の1つは、PCV(プロカルバジン、CCNU、およびビンクリスチン)であり、通常は6週間おきに投与される。
処置される腫瘍が神経外胚葉起源の脳腫瘍である実施形態において、本発明の方法は、痙攣および脳浮腫などの症状の管理のための薬剤と組合せて使用され得る。脳腫瘍に関連する痙攣を制御するためにうまく投与される抗痙攣薬の例は、これに限定されるわけではないが、フェニトイン(ジランチン(登録商標))、カルバマゼピン(テグレトール(登録商標))およびジバルプロエクスナトリウム(デパコート(登録商標))を含む。脳の膨張は、ステロイド(たとえばデキサメタゾン(デカドロン(登録商標))によって処置され得る。
D.製薬組成物
上述のように、本発明の血管新生の程度を低下させる方法は、クロロトキシン剤のそれ自体での、または製薬組成物の形での投与を含む。製薬組成物は一般に、少なくとも1つのクロロトキシン剤の有効量および少なくとも1つの製薬的に許容される担体または賦形剤を含む。
製薬組成物は、当分野で周知の通常の方法を使用して調合され得る。最適な製薬的製剤は、投与経路および所望の投薬量に応じて変更することができる。このような製剤は、投与した化合物の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランスに影響し得る。製剤によって、固体、液体または半液体製薬組成物が産生され得る。
製薬組成物は、投与を容易にして、投薬量を均一にするために、投薬単位形で調合され得る。「単位投薬形」という表現は、本明細書で使用するように、処置される患者のためのクロロトキシン剤の物理的に別個の単位を指す。各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定の量を含有する。しかし組成物の総投薬量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医によって決定されるであろうことが理解されるであろう。
上述のように、ある実施形態において、クロロトキシン剤は注射または輸液によって静脈内投与される。注射または輸液による投与に好適な製薬組成物は、好適な分散化剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用する公知の技術に従って調合され得る。製薬組成物は、非毒性希釈剤または溶媒中の、たとえば2,3−ブタンジオールの溶液としての、滅菌注射用液剤、懸濁剤または乳剤でもあり得る。使用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液(米薬局方)および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに滅菌固定油は、液剤または懸濁剤の媒体として慣習的に使用される。この目的で、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を使用することができる。オレイン酸などの脂肪酸も、注射用製剤の調製に使用され得る。
注射用製剤は、たとえば細菌保持フィルタによる濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を包含することによって、滅菌することができる。
薬物の効果を延長するために、注射からの薬物の吸収を低速化することがしばしば望ましい。このことは、活性成分を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成され得る。注射用デポー形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって作製される。薬物のポリマーに対する比および使用した特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。体組織に適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を封入することによって、デポー注射用製剤も調製することができる。
本明細書で議論するように、クロロトキシン剤への修飾(たとえばポリマーへの共有結合など)は、クロロトキシン剤の生物学的利用能を向上させるために使用され得る。
III.アネキシンA2の結合剤および調節剤
アネキシンA2(アネキシンII、ANX2、リポコルチンなどとしても公知)は、上皮細胞表面の細胞膜に結合しているのを見出すことができる。アネキシンA2は、細胞増殖制御、シグナル伝達経路、およびプラスミン生成を含む広範囲の役割に関係している。アネキシンはA2は、癌細胞で過剰発現することが示されている。
本明細書で紹介するデータは、クロロトキシンの結合パートナーとしてのアネキシンA2の役割を裏付けている。クロロトキシンの抗血管新生および抗腫瘍効果(本明細書および当分野で確立された)を考えると、アネキシンA2とのその潜在的な相互作用は特に興味深い。アネキシンA2は、内皮細胞でのプラスミン(セリンプロテアーゼ)の生成を促進する。この作用は、tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)およびプラスミノーゲンに結合するアネキシンA2によって媒介され得る。プラスミン過剰産生は、血管新生および転移に関連してきた。同時に、プラスミン切断β−2−糖タンパク質1は、血管新生を阻害することが観察されている。
本明細書で紹介するデータは、血管新生に対するクロロトキシンの観察された効果とその潜在的な結合パートナーとの間の興味深い関連を提供する。
クロロトキシンの潜在的な相互作用パートナーとしてアネキシンA2を同定することによって、アネキシンA2が新規療法開発のための標的として確認される。アネキシンA2に結合する、および/またはアネキシンA2を調節する薬剤は、クロロトキシンが潜在的にそうであるように、有用な治療剤として作用し得る。このような調製剤のスクリーニングによって新たな療法が明らかとなり得て、そのいくつかはクロロトキシンとは異なる特徴を有し得る。このような新たな療法によって、たとえばより広範囲の疾患の処置および/または改善、異なる細胞種類への標的化、異なる投薬計画および投与経路による投薬などが可能になり得る。
ある実施形態において、アネキシンA2に結合する薬剤を同定する方法が提供される。このような薬剤は、たとえば血管新生関連障害のためのさらなる療法を開発するのに有用であり得る。このような方法は通例、アネキシンA2を発現する細胞を含む試料を提供するステップと;試料と試験剤とを接触させるステップと;試験剤がアネキシンA2に結合するか否かを決定するステップと;決定に基づいて、試験剤をアネキシンA2に結合する薬剤として同定するステップと;を含む。いくつかの実施形態において、試験剤がアネキシンA2機能を調節するか否かを決定するさらなるステップが実施される。
ある実施形態において、アネキシン活性が変更されるように、細胞にアネキシンA2を調節する薬剤を接触させることを含む、アネキシンA2を発現する細胞中でアネキシンA2活性を調節する方法が提供される。
多様な試験剤のいずれも、本発明の方法で使用され得る。小型分子(たとえば化合物ライブラリで見出すことができる小型分子など)は、並行アッセイでスクリーニング可能であり、アネキシンA2に結合するおよび/またはアネキシンA2活性を調節する小型分子を同定することができる。化合物の歴史的コレクションからのライブラリおよび/または多様性指向型合成からのライブラリなどの化合物ライブラリは、本発明での使用に好適であり得る。
代わりにまたはさらに、クロロトキシン断片、誘導体、および/またはバリアントは、ある新規のおよび/または所望の特徴を有するクロロトキシン断片、誘導体、および/またはバリアントを同定するために、本発明の方法を使用してスクリーニングされ得る。別の例として、他の毒素ならびにその断片、誘導体、およびバリアントは、アネキシンA2に結合する、および/またはアネキシンA2を調節する(modulcate)能力について試験され得る。関連するサソリ毒は、本明細書で議論されてきた。
調節され得るアネキシンA2の活性は、いくつかの実施形態において、プラスミノーゲン/プラスミン活性化因子系の制御を含み得る。たとえばアネキシンA2は、プラスミノーゲンおよびtPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)と相互作用して、プラスミン生成に関与する。
いくつかの実施形態において、アネキシンA2活性は、ある結合パートナーへの結合を含む。アネキシンA2の公知の結合パートナーは、これに限定されるわけではないが、プラスミノーゲン、tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)、S100A10(S100カルシウム結合タンパク質A10、カルパクチン軽鎖およびアネキシンII軽鎖としても公知)、F−アクチン、β2−糖タンパク質I、ホスホリパーゼA2、およびRac−1含有複合体を含む。
いくつかの実施形態において、アネキシンA2活性は、細胞膜表面への局在、内皮(endothelian)細胞への局在、カルシウム依存性リン脂質膜への局在、内皮接着結合での局在、上皮接着結合での局在、Fアクチン集合プラットフォームでの局在、および/またはエンドソームへの局在を含む。
いくつかの実施形態において、アネキシンA2活性は、細胞増殖制御、シグナル伝達を含む。いくつかの実施形態において、アネキシンA2活性は、ホスホリパーゼA2の抑制を含む。
アネキシンA2は、細胞内部のある機能に関与するとも考えられている。いくつかの実施形態において、アネキシンA2活性は、アクチン集合への関与、エンドソームのソーティング、膜ドメインの安定化、またはその組合せを含む。
アネキシンA2はまた、細胞外である機能を有することが考えられている、またはそのことが公知である。このような活性は、抗凝固反応への関与(おそらくプラスミン/プラスミノーゲン活性化因子系の介在物質としてのその効果による)および破骨細胞形成(ofrmation)および骨吸収に関与する自己分泌因子としての作用を含む。
以下の実施例は、本発明の作製および実施の方式のいくつかを説明する。しかし、これらの実施例が例証目的のためだけであり、本発明の範囲を制限するものでないことが理解されるべきである。さらに、実施例の説明が過去形で示されていない限り、本文は、明細書の残りの部分と同様に、実験が実際に実施され、データが実際に得られたことを示すものではない。
(実施例1)
ニワトリ胚漿尿膜(CAM)アッセイでのクロロトキシンの抗血管新生活性
本実施例は、TM−601(クロロトキシンの合成形)が血管新生に対して用量依存性阻害効果を有することを証明する。ニワトリ胚漿尿膜(CAM)アッセイでは、血管新生促進因子(血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、リポ多糖類(LPS)、上皮増殖因子(EGF)、IL−6、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子(TNFα)および肝細胞増殖因子(HGF)をTM−601と組合せて試験した。TM−601は、用量依存的方式でこれらの因子のそれぞれによって刺激された血管新生を阻害した。
物質および方法
CAMアッセイは以前に公開されたように実施した(たとえばMousa S.S.ら、Effect of resveratrol on angiogenesis and platelet/fibrin−accelerated tumor growth in the chick chorioallantoic membrane model.Nutrition and Cancer.2005;52(1):59−65、その内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられている)。ニワトリ受精卵を37℃、湿度55%で孵化させた。受精10日後に、気室を隠している卵殻の範囲に、皮下注射針で穿刺して小さな穴を作った。鶏卵側面の卵殻の、胚膜の無血管部分の上に直接、第2の穴を穿刺した。第1の穴に陰圧を印加することによって、第2の穴の下に偽の気室を作ると、それにより膜が卵殻から分離した。脱落したCAMの上の卵殻に、小型の砥石車を使用して面積が約1.0cm2の窓を切り取り、下にあるCAMに直接アクセスできるようにした。フィルタディスクを3mg/mL酢酸コルチゾンに浸漬し、続いて滅菌条件下で風乾した。
各実験は、負の対照群(PBS)、正の対照群(血管新生促進因子)、ならびに血管新生促進因子および異なる用量のTM−601による処置群を含んでいた。VEGF(2μg/mL)、bFGF(1μg/mL)、LPS(5μg/mL)、EGF(100μg/mL))IL−6(10μg/mL)、PDGF(10μg/mL)、TNFα(10μg/mL)またはHGF(10μg/ml)を含む滅菌フィルタディスクを成長中のCAM上に置いた。24時間後に、TM−601(0.001〜100μg)または対照ビヒクルをCAMに局所的に添加した。刺激の第3日に、CAMを収集した。フィルタディスク直下のCAM組織を胚から除去して、組織をPBSで3回洗浄した。5mmフィルタディスク範囲の血管分枝点を血管出芽オペレータの定量的指標として、倍率30倍でカウントして、平均測定値を報告した。以下の式を使用して、VEGF刺激による血管新生阻害の平均パーセントを計算した:
実験は1群当り卵8個を有するように設計した。しかし、技術上の理由で、大半の実験群に残った評価可能な卵は、もっと少なかった。さらにbFGF実験は、それぞれその独自の生理食塩水対照および正のbFGF対照を用いる2つの別個の実験で実施した。このデータは、TM−601の濃度範囲で用量依存性阻害効果を示すためにプールされた。
結果
血管新生促進因子はそれぞれ、CAMアッセイで血管新生を強く刺激した(図1)。血管分枝点の数の定量的測定値を使用して、血管新生出芽を評価した。新生血管形成阻害のパーセントは、各試験品の用量で計算した。TM−601は、試験を行った血管新生促進化合物それぞれ(VEGF、bFGF、LPS、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、およびHGF)に対して、用量依存方式での強力な血管新生阻害薬であった(図2および3)。このような広範囲の血管新生阻害は、多くの他の血管新生阻害薬とは異なる。公知の血管新生阻害薬は通例、血管新生に関与する経路の一部またはサブセットのみを阻害して、他のシグナル伝達経路に適応できる、および/または他のシグナル伝達経路を使用できる腫瘍に対しては有効でない。
bFGF、LPS、またはEGF刺激血管新生に対するTM−601の観察された最大の阻害効果は、試験を行った用量範囲では約75〜85%であった。IL−6、PDGF、TNFα、またはHGF刺激血管新生に対するTM−601の観察された最大の阻害効果は、試験を行った用量範囲では約65〜75%であった。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、発明者らは、TM−601のより高い阻害効果はTM−601のなお高い用量によって観察されるであろうと推測している。
考察/結論
CAMアッセイを使用して、TM−601が抗血管新生活性を有するか否かについて試験を行った。TM−601は、異なる血管新生促進化合物によって刺激された血管新生に対して強力な阻害効果を有することを示した。VEGF刺激およびEGF刺激血管新生の阻害は、最も強力な効果を有すると思われ、試験を行った最大用量で90%超の阻害に達した。VEGF刺激血管新生の阻害は、0.001μgという低用量でも50%超の阻害に達した。
LPS−刺激血管新生に対するTM−601の阻害効果の試験を行った。LPSは、グラム陰性細菌の外膜の主成分である。LPSは、強い免疫応答を誘導して、血管新生も直接誘導する(たとえばPolletら、Bacterial lipopolysaccharide directly induces angiogenesis through TRAF6−mediated activation of NF−κB and c−Jun N−terminal kinase.Blood.2003.102(5):1740−2を参照、その全体の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている)。TM−601は、LPSによって刺激された血管新生を遮断することも見出された。
試験を行った血管新生促進化合物はそれぞれ異なる受容体に結合するが、いくつかは下流シグナル伝達経路を共有する。たとえばVEGF、bFGF、およびLPSはすべて、p38 MAPKおよびERK1/2経路を介してシグナル伝達を行う。
(実施例2)
インビボでのマトリゲル・プラグ・アッセイによって測定したTM−601の抗血管新生活性
本実施例に記載する実験によって、各種の投与経路によって送達されたTM−601がマウスでのインビボのマトリゲル・プラグ・アッセイで血管新生を阻害する能力を試験した。全身送達されたTM−601(週3回の静脈内注射による10mg/kg TM−601)によって、新たな血管の形成が著しく減少したのに対して、局所送達された(すなわちTM−601をマトリゲル中に混合することによる)または皮下注射(10mg/kg TM−601を毎日注射)によるTM−601によっては減少しなかった。実験群の被験体では、いずれの体重減少も観察されず、TM−601処置が重篤な毒性を発生しないという概念と一致した。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、発明者らは、これらの実験結果によってクロロトキシンの投与経路が抗血管新生能力に影響を有し得ることが示唆されることを提唱する。
物質および方法
高濃度マトリゲルマトリクス(BD Biosciences製)を100ng/mL VEGF、100ng/mL bFGF、および3ng/mLへパリンと、4℃にて混合した。8周齢メスC57BL/6は5群に無作為に割当て、各群にマウス5匹とした。試験の実験設計を表1に示す。
マウスの1群に上述のようにマトリゲルを移植して、正の対照とした。マウスの第2および第3の群には、移植前にマトリゲルにTM−601を添加したマトリゲルを移植した。第2群のマウスにはそれぞれ、プラグ1個当たりTM−601 500μgを含有するプラグを移植した;第3群のマウスにはそれぞれ、プラグ1個当たりTM−601 5μgを含有するプラグを移植した。第4群および第5群のマウスには、(TM−601を添加しない)マトリゲルを移植して、試験期間を通じて10mg/kg/注射にて、静脈内に週3回または皮下に毎日のどちらかによってTM−601の用量を投与した。500μLマトリゲルプラグ2個を与えた各マウスには、左右相称で皮下組織に注射した。円形プラグを形成するために、通常の皮下挿入の後に、針先を左右に移動させることによって、幅広の皮下ポケットを形成した。注射は、内容物全体がプラグ中に送達されるように、21−25G針(needled)を用いて迅速に実施した。マトリゲルプラグを試験の第0日に移植して、処置は第1日に開始した。処置期の間、動物の体重を第1、4、8、11、および14日に測定した。
14日後、プラグを収集した。マウスを安楽死させて、プラグの上の皮膚を引き戻した。プラグは、組織学的分析のために、切開して、固定し、パラフィンに包埋した。評価可能な各プラグからの厚さ5μmの切片3枚をCD31抗体によって免疫染色して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)によって対比染色した。顕微鏡下でプラグの断面積の血管数を測定することによって、各マトリゲルプラグを分析した。各処置群について、少なくとも6個のマトリゲルプラグを分析して、微細血管の平均数を計算した。
結果
血管新生は、VEGF、bFGF、およびへパリンを添加した皮下マトリゲルプラグによって刺激された。TM−601がこのマウスモデルで抗血管新生効果を有するか否かを評価するために、TM−601を、移植前にマトリゲルと混合するか、または動物に全身的に投与した。14日後、各群の平均微細血管数によって、処置群の1つがマトリゲルプラグ中への血管増殖の著しい減少を示したことが指摘された(図4)。週3回投与した静脈内注射(10mg/kg/注射)によって、血管数の1.9分の1への低下が生じた(p<0.01対対照)。同じ用量だが皮下投与した、TM−601のより頻繁な全身送達は、血管新生の遮断に有効でなかった。試験開始時のTM−601 5または500μgのマトリゲルプラグ中への局所送達によって、血管新生は著しく減少しなかった。微細血管染色結果の例を図5に示す。
試験を通じて、すべてのマウス群で体重減少は観察されず、TM−601処置には重篤な毒性が関連していないことが示唆された(図6)。
考察/結論
マトリゲル・プラグ・アッセイでは、10mg/kgの静脈内用量で週3回投与されたTM−601によって、新たな血管形成は著しく減少した。対照的に、10mg/kgでのより頻繁な皮下注射は同様の効果を示さず、TM−601の抗血管新生活性が投与経路に感受性であり得ることが示唆された。マウスにおけるTM−601の薬物動態を測定した以前の実験では、静脈内経路は、皮下注射と比較してTM−601のより高い循環濃度を生じることが示された。より頻繁な投薬スケジュールによっても、このモデルでは10mg/kgでの皮下送達によって血管新生は減少しなかった。
実施例1に記載した実験では、CAMアッセイを使用して、TM−601の抗血管新生活性を測定した。CAMアッセイでは、血管新生促進化合物(VEGF、bFGF、LPS、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、またはHGF)で飽和させた濾紙にTM−601を直接加えた。TM−601は、これらの各血管新生促進化合物の用量依存性阻害を示し、最大の阻害は、試験を行った最大用量である100μgにて観察された(図3)。血管新生部位へのTM−601の同様の局所送達によってこのような結果を再現する試みではTM−601の5μgまたは500μgのどちらかを移植時にマトリゲルプラグに直接添加した。これらの特別な実験でCAMアッセイによって観察された結果とは対照的に、このような局所薬物送達様式によって、マトリゲル・プラグ・アッセイでの血管新生は遮断されなかった。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、発明者らは、2つの実験モデルにおけるTM−601の吸収、分布、代謝、および/または排出の相違が異なる結果の原因であり得ると推測している。
(実施例3)
インビトロ・マトリゲル・プラグ・アッセイでのTM−601の抗血管新生活性に対する投与の用量、経路、および頻度の効果
本実施例に記載する実験は、各種の用量で、各種の投与経路によって、および各種の頻度にて送達されたTM−601の抗血管新生活性を調べるために実施した。マウスに移植されたマトリゲルプラグ中への血管増殖は、多様な条件について測定した。0.4、2、10、および50mg/kgの用量はもちろんのこと、静脈内および皮下経路による投与ならびに週3回、週2回、および週1回の投薬スケジュールでも試験を行った。週3回の静脈内注射による10mg/kgまたは50mg/kg TM−601の送達によって、マトリゲルプラグでの新たな血管の形成は著しく減少した。試験を行った他の投薬パラメータでは(すなわちより低い用量にて、皮下注射による、およびより低頻度の投薬)、いずれのTM−601も血管新生に対して阻害効果を有さないことが観察された。
物質および方法
高濃度マトリゲルマトリクス(BD Biosciences製)を100ng/mL VEGF、100ng/mL bFGF、および3ng/mLへパリンと、4℃にて混合した。8周齢メスC57BL/6は9群に無作為に割当て、各群にマウス6匹とした。500μLマトリゲルプラグ2個を与えた各マウスには、左右相称で皮下組織に注射した。円形プラグを形成するために、通常の皮下挿入の後に、針先を左右に移動させることによって、幅広の皮下ポケットを形成した。注射は、内容物全体がプラグ中に送達されるように、21−25G針(needled)を用いて迅速に実施した。マトリゲルプラグを試験の第0日に移植して、処置は第1日に開始した。試験の実験設計を表2に示す。
マウスの1群に上述のように調製したマトリゲルを移植して、正の対照とした。他の動物には、試験期間を通じてTM601を全身的に投薬した。処置期の間、動物の体重を第1、5、8、12および14日に測定した。
第14日の終わりに、プラグ除去前に2〜7群のマウスから、最終用量の1分後および30分後(各群の動物1〜3)ならびに最終用量の15分後および60分後(各群の動物4〜6)に血液を収集した。血液は、CO2/O2麻酔下での後眼窩穿刺により、未コートヘマトクリット管を使用してリチウムへパリン管内へ収集した。血液を1,500×gで15分間遠心分離して、血漿を新たな管に移した。試料を−70℃で貯蔵して、分析のために別の研究所に出荷した。
14日後、プラグを収集した。マウスを安楽死させて、プラグの上の皮膚を引き戻した。プラグは、組織学的分析のために、切開して、固定し、パラフィンに包埋した。評価可能な各プラグからの厚さ5μmの切片3枚をCD31抗体によって免疫染色して、H&Eによって対比染色した。顕微鏡下でプラグの断面積の血管数を測定することによって、各マトリゲルプラグを分析した。各処置群について、7から10個のマトリゲルプラグを分析して、微細血管の平均数を計算した。
血液の酵素結合免疫吸着測定(ELISA)分析は、以下のように実施した。ELISA方法は、ウサギ抗TM−701抗体を使用して開発した。TM−701は、TM−601とアミノ酸が1つが異なり、残基29にチロシン置換がある。ウサギ抗TM−701抗血清は、TM−601と交叉反応することが示されている。96ウェルプレートの各ウェルを、PBS中の抗TM−701抗体 200ngによって4℃にて一晩コーティングした。プレートは、自動プレート洗浄器を使用して洗浄した。すべての洗浄は、洗浄緩衝液300μL(0.1%Tween−20を含有するPBS)による洗浄5回のサイクルで実施した。サイクルのうち最後の4回の洗浄には、各洗浄の間の20秒間の浸漬期間が含まれていた。試料または標準を希釈剤(1%ウシ血清アルブミンを含有する洗浄緩衝液)で希釈して、100μlを分析した。プレートを室温にて静かに振とうしながら75〜90分間インキュベートして、次に前と同様にプレートを洗浄した。標準手順を使用してビオチン化した抗TM−701抗体を各ウェルの希釈剤100μLの量に添加した。各ウェルは、ビオチン化抗体85ng(2.7mg/ml原液の1/3200希釈)を含有していた。プレートを静かに振とうしながら60分間インキュベートして、前と同様に洗浄した。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ・ストレプトアビジン(Vector Laboratories)を希釈剤で1/500に希釈して、100μLを各ウェルに添加した。プレートを静かに振とうしながら45〜60分間インキュベートした。次にプレートを前と同様に洗浄したが、ただし最後の洗浄液を除去せずに、代わりに液をプレート上に5分間残存させた。次にウェルをPBS 200μlですすいで、各ウェルにABTS(Calbiochem)100μlを添加した。プレートを5分ごとに混合して、20分後にBioRad Model 550プレートリーダーを使用して吸収を415nmにて読み取った。ソフトウェアパッケージ“Microplate Manager v.5.2.1.”を使用して、未知の試料濃度を計算した。
結果
血管新生は、VEGF、bFGF、およびへパリンを添加した皮下マトリゲルプラグによって刺激された。TM−601がこのマウスモデルで抗血管新生効果を有するか否かを評価するために、TM−601を全身注射した。14日後、各群の平均微細血管数によって、処置群の2つがマトリゲルプラグ中への血管増殖の著しい減少を示したことが指摘された:10または50mg/kgのどちらかの用量での、週3回の静脈内注射(図7)。週3回静脈内投与した、より低用量のTM601は統計的に有意な方式で血管新生に影響を及ぼさなかったが、用量依存性効果があるように思われた(図8)。
興味深いことに、(静脈内投与経路によって血管新生を減少させた)10mg/kg用量の5倍のTM601の毎日の皮下注射は、わずかではあるが、統計的に有意ではない血管新生の減少を引き起こした。さらに、投薬頻度を週3回から週2回または1回に減少させると、抗血管新生活性の損失が生じた。微細血管染色結果の例を図9に示す。
試験を通じて、いずれの処置群でも体重減少は観察されず、TM601処置に関連する重篤な毒性がないことが示唆された(図10)。
最終用量の後に血液試料を収集して、血漿TM601レベルを分析した(図11)。TM601レベルおよび半減期は、前の試験で見られたものと同様であった。
考察/結論
マトリゲル・プラグ・アッセイでは、10または50mg/kgの静脈内用量で週3回投与されたTM−601によって、新たな血管形成は著しく減少した。それにもかかわらず、50mg/kgまでのより頻繁な皮下注射は同様の効果を示さず、TM−601の抗血管新生活性が投与経路に感受性であり得ることが示唆された。50m/kgでの毎日の皮下投薬は、実験経過中の累積用量の10倍以上の増加に相当する(50mg/kg×14回の皮下注射が10mg/kg×6回の静脈内注射に匹敵した)。それゆえ、より頻繁な投薬スケジュールおよび著しくより多くの総累積用量によっても、50mg/kgの皮下送達によって、わずかではあるが、統計的に有意でない血管新生の減少のみが引き起こされた。同様の知見が実施例2に記載された。この実験を含めて、マウスにおけるTM601の薬物動態を測定した実験では、静脈内経路は、皮下注射と比較して、TM601のより高いピーク循環濃度を生じることが示された(たとえば図11を参照)。
本試験の別の興味深い知見は、静脈内送達の頻度がTM−601の抗血管新生効果にとって重要であるということである。週3回の投薬スケジュールによって著しい血管新生の阻害が引き起こされたのに対して、週2回または1回のどちらもこのモデルでは血管新生に影響を及ぼさなかった。
TM−601投与のすべての経路、用量レベル、およびスケジュールも、週3回投与した50mg/kgまでのTM601の静脈内送達も含めて、マウスでの耐容性は良好であった。すべての動物群で、14日間の試験を通じて体重が増加した。
(実施例4)
漿尿(choriallantoic)膜で培養されたヒト腫瘍に対するTM−601の抗腫瘍活性
実施例1で証明されたように、TM−601は、CAMアッセイでVEGF、bFGF、LPS、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、およびHGFによって刺激された血管新生を阻害する。本実施例に記載する実験は、TM−601が腫瘍増殖をこの抗血管新生活性によって低速化させられるか否かを判定するために実施した。
ニワトリ卵CAMの表面に移植された腫瘍細胞は、血管新生を刺激する。TM−601は、いくつかのヒト腫瘍細胞株のCAMアッセイで腫瘍増殖を低速化することが示されている。それにもかかわらず、TM−601は、インビトロで腫瘍細胞増殖を低速化せず、このことによってTM−601が腫瘍増殖に間接的に影響を及ぼすことが示唆される。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、TM−601は血管系に対するその効果によって腫瘍増殖に影響を及ぼすことが仮定される。この仮説を試験するために、CAM上で培養した腫瘍TM−601または生理食塩水のどちらかによって処置して、次にヘモグロビンレベルを分析した。TM−601は、腫瘍中のヘモグロビンの量を著しく減少させることが見出され、それゆえ腫瘍の血管新生をおそらく減少させた。
物質および方法
細胞培養
ヒト腫瘍細胞株はATCCから供給され、供給者からの勧告に従って培養した。例外は、D54−MG系統(Dr.Bigner提供、Duke University)および膵臓癌からの初代分離株であった。CAMへの添加前に、サブコンフルエントの培養物をトリプシン処理して、30μL中1×106細胞の濃度まで再懸濁させた。表3に、腫瘍−CAM実験で使用した腫瘍細胞株を挙げる。
細胞増殖試験
U87およびPC−3細胞は、ATCCによる勧告に従って培養した。U87増殖試験では、ウェル当り約200細胞を96ウェルトレーに平板培養して、37℃にて5%CO
2で一晩インキュベートした。次に各ウェルから培地を吸引して、TM−601を約100、33、10、3.3、1.0、0.33、0.1、0.03、0.01、0.03または0μM含有する新鮮な培地と交換して、72時間インキュベートした。この期間の終了時の細胞数を決定するために、スルホローダミン法を使用した(Sigmaカタログ番号TOX−6)。最初に50%TCA 25μLを各ウェルに添加して、プレートを4℃で1時間インキュベートした。次にウェルを水で4回洗浄して、風乾させた。次に、4%スルホローダミン溶液50μlを各ウェルに添加して、細胞を30分間染色した。次にウェルを1%酢酸で3回洗浄して、風乾させた。最後に、10mM Tris 100μlを各ウェルに添加して、5分後にトレーを混合し、次にプレートリーダーで565nmの吸収を読み取った。PC−3増幅試験では、細胞を24ウェルトレーにウェル当り約1×10
4細胞で平板培養して、37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした。各ウェルから培地を吸引して、無添加の、TM−601 20nM、または1μMを含有する新鮮な培地と交換した(2つずつ)。次に細胞をさらに72時間インキュベートして、トリプシン処理後に細胞を血球計でカウントした。
腫瘍CAM
受精ニワトリ卵を37℃、湿度55%で孵化させた。受精10日後に、気室を隠している卵殻の範囲に、皮下注射針で小さな穴を穿刺した。鶏卵側面の卵殻の、胚膜の無血管部分の上に直接、第2の穴を穿刺した。第1の穴への陰圧印加によって、第2の穴の下に偽の気室を作ると、それにより膜が卵殻から分離した。脱落したCAMの上の卵殻に、小型の砥石車を使用して面積が約1.0cm2の窓を切り取り、下にあるCAMに直接アクセスできるようにした。CAMの表面を乾燥させて、細胞(1×106細胞)30μLをCAMに加えた。同時に、TM−601 10μgを腫瘍表面に直接添加した。腫瘍の増殖を7日継続させ、このときに腫瘍塊を除去および秤量した。
腫瘍内のヘモグロビンの測定に同様の方法を使用した。1×106細胞をマトリゲル(増殖因子減少型、BD Biosciences製)と混合して、発生第10日にCAMに適用した。対照として、マトリゲルのみをCAMに適用した。細胞をTM−601の100μM原液0.9μL(360ng TM−601)と混合することによって、細胞をTM−601で処置した。さらに、100μM原液0.1μLをマトリゲル周囲に加えた(TM−601 40ng)。腫瘍を7日後に収集して、いずれの下部血管系からも切除した。腫瘍を2回蒸留した水0.5mL中でホモジナイズして、試料を4,000rpmにて10分間遠心分離した。次に上清を収集し、上清50μLをドラブキン試薬50μL(Sigma)と混合した。室温にて15〜30分後、この混合物を96ウェルプレートに配置した。545nmの光学密度を測定して、既知のヘモグロビン濃度の標準曲線と比較した。
結果
腫瘍−CAM実験は、3つの異なる場合で実施した。第1のパイロット実験では、3つの腫瘍系統に対して試験を行った(PC−3、U87およびSk−Mel−28)。CAM表面に移植した腫瘍は、未処置またはTM−601 10μgによる処置のどちらかであった。増殖7日後に、腫瘍を秤量して(表4)、各腫瘍の平均腫瘍値を比較した。腫瘍のTM−601処置によって、PC−3およびU87腫瘍にて腫瘍増殖の著しい低下が生じた(p<0.05)(図12)。
腫瘍の写真を腫瘍の外植時に撮影すると、腫瘍の血管形成の減少があるように見えた(図13)。この観察には2つの説明があった:TM−601が腫瘍増殖を減少させて、したがって血管新生の刺激の低下が生じたか、またはTM−601が血管新生を減少させて、これにより腫瘍増殖が低速化したかのどちらかである。これら2つの可能性を区別するために、PC−3およびU87のインビトロ培養物を各種の量のTM−601の存在下で増殖させた。増殖72時間後に、2つの異なる濃度のTM−601の存在下で増殖させたPC−3細胞の数は、TM−601の非存在下で増殖させた細胞と著しく異なっていなかった。平均細胞数は、20nM TM601の712,500個、1μM TM601の708,500個に対して、対照では740,000個であった。同様に、広範囲のTM−601濃度では、U87細胞の数は著しく減少しなかった(図14)。それゆえ、TM−601は培養中のPC−3またはU87細胞の増殖には影響を及ぼさず、TM−601は腫瘍細胞に直接作用しないことが示唆された。実施例1で上述したように、TM−601はCAMモデルで血管新生を阻害し、TM−601の主な効果が抗血管新生化合物としてであることが示唆される。
第2の腫瘍−CAM実験は、初期の知見を確認して、腫瘍細胞株の数を増やすために実施した。以前に試験を行った3つの細胞株に加えて、HS683、D54MG、H1299および原発性膵臓癌も調べた(表5)。これらの結果によって、U87およびPC−3腫瘍の腫瘍増殖に見られた効果が確認され、第1の実験では統計的に有意でなかったSK−Mel28腫瘍増殖が第2の実験では有意であることも示された。原発性膵臓癌単離物の腫瘍増殖もTM−601によって減少した。この実験でTM−601に応答しなかった腫瘍細胞株には、HS683、D54およびH1299が含まれていた。この知見の考えられる1つの理由は、これらの腫瘍がより低速で増殖し、したがって迅速な腫瘍増殖のためには血管による補助が必要な段階に到達し得なかったことである。このことがあてはまる場合、次に腫瘍血管系を減少させる抗血管新生化合物が有効であるとは予想されないであろう。
腫瘍−CAMモデルでTM−601が新生血管形成を減少させる理論をさらに裏付けるために、CAM上で増殖した腫瘍中の総ヘモグロビンを測定した。図16は、TM−601処置によって、試験した3つの腫瘍すべて(U87、D54および膵臓癌)のヘモグロビンレベルが著しく低下したことを示す。興味深いことに、D54腫瘍増殖は、1つの実験ではTM−601処置による影響は受けなかったが(図15)、別の実験のヘモグロビン測定値によって、D54腫瘍の血液レベルが低下したことが示された。
考察/結論
漿尿膜アッセイ(CAMアッセイ)によるデータによって、TM−601がVEGF、bFGF、リポ多糖、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、またはHGFによって刺激された血管新生を阻害することが示される。TM−601がこの抗血管新生効果によって腫瘍増殖を低速化できるか否かを判定するために、実験を実施してTM−601のCAM表面でのヒト腫瘍増殖に対する効果を評価した。CAM上で増殖する腫瘍細胞は、増殖を維持するために血液供給を刺激すると共に必要とする、固形塊を形成する。本報告で紹介するデータは、TM−601が抗血管新生効果によって腫瘍増殖を阻害するという仮説を裏付けている。CAMに移植したいくつかのヒト腫瘍の増殖は、TM−601によって減少した。これにはPC−3、U87、SK−Mel−28および膵臓癌細胞が含まれていた。それにもかかわらず、すべての腫瘍が応答したわけではなく、いくつかの細胞は、ある実験では応答したが、他の実験では応答しなかった。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、我々が示唆するのは、これらの観察の1つの説明が、腫瘍が血管による補助に依存するために、酸素および栄養素が制限されるようになる時点まで腫瘍が増殖する必要があるということである。このことは、実験開始時に移植される細胞がより少ない場合には発生しないかもしれない。TM−601に対する応答を示さなかった腫瘍は、応答した他のより大きい腫瘍よりも平均して小さい傾向があるので(図15を参照)、これがこの矛盾の原因であり得ることに注目された。TM−601が血管系に作用して、腫瘍細胞増殖には直接作用しないという証拠は図14および16に示されており、図では腫瘍細胞増殖はインビトロでTM−601に感受性でないことと、CAM上で増殖した腫瘍のTM−601処置によって腫瘍内でのヘモグロビンの減少が生じたこととが示されている。それゆえ、CAMアッセイを使用して、TM−601が特定の血管新生促進因子(たとえばVEGF、bFGF、リポ多糖、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、およびHGF)によって刺激された新生血管形成はもちろんのこと、ヒト腫瘍細胞によって刺激された血管新生も阻害することが示された。
(実施例5)
クロロトキシンの相乗作用性抗血管新生効果
ニワトリ胚漿尿膜(CAM)アッセイを使用する先の実験により、合成クロロトキシン(TM−601)がVEGF、bFGF、リポ多糖(LPS)、EGF、IL−6、PDGF、TNFα、またはHGFによって刺激された血管新生に対して用量依存性阻害効果(affect)を有することが示されている。現在の実施例では、この効果は、第2の契約研究所によって実施された、独立検証実験であった。さらに、抗血管新生効果は、抗VEGF抗体剤AvastinおよびLucentisに対して、同様の濃度のTM−601で発生した。TM−601がAvastinまたはLucentisのどちらかと共に投与された場合、効果は相加的または相乗的のどちらかであった。最後にTM−601は、CAMアッセイで静脈内注射されたときに、血管新生を阻害することが示された。
ニワトリ胚漿尿膜(CAM)アッセイを使用する実験を実施して、TM−601の抗血管新生特性をさらに評価した。CAMアッセイでの新生血管形成に対する効果は、実施例1に記載されている。本実施例では、非刺激型新生血管形成に対するTM−601の効果を調べるために;VEGF−、bFGF−およびLPS−刺激血管新生の阻害を示す実施例1に記載した条件を反復するために;静脈内注射したTM−601の抗血管新生効果を精査するために;TM−601と公知の血管新生阻害薬(AvastinおよびLucentis)の効力を比較するために;ならびにTM−601とAvastinまたはLucentisのどちらかとの組合せを試験するために、さらなるCAM実験を実施した。(AvastinまたはLucentis(Luentis)と組合せた実験は、少なくとも2回実施した)。
TM−601は、上で概説した実験それぞれにおいて血管新生を用量依存方式で阻害することが示された。観察された効果は、どちらも抗VEGF抗体剤であるAvastinおよびLucentisに対して、同様の濃度で発生した。結果によって、TM−601と2つの抗VEGF抗体との間に相加または相乗効果のどちらかがあることも示される。
物質および方法
CAMアッセイは、アッセイが実施された契約研究所に応じて、2つの異なる方法を使用して実施した。1つの契約研究所では受精ニワトリ卵を37℃、湿度55%で孵化させた。受精10日後に、気室を隠している卵殻の範囲に、皮下注射針で小さな穴を穿刺した。鶏卵側面の卵殻の、胚膜の無血管部分の上に直接、第2の穴を穿刺した。第1の穴への陰圧印加によって、第2の穴の下に偽の気室を作ると、それにより膜が卵殻から分離した。脱落したCAMの上の卵殻に、小型の砥石車を使用して面積が約1.0cm2の窓を切り取り、下にあるCAMに直接アクセスできるようにした。フィルタディスクを3mg/mL酢酸コルチゾン(rtisone acetate)に浸漬し、続いて滅菌条件下で風乾した。各実験は、対照群(PBS)、正の対照群(血管新生促進因子)および異なる用量のTM−601を添加した血管新生促進因子による処置群を含んでいた。2μg/mLのVEGFを含む滅菌フィルタディスクを成長中のCAM上に置いた。24時間後に、TM−601(0.001〜100μg)または対照ビヒクルをCAMに局所的に添加した。刺激の第3日に、CAMを収集した。フィルタディスク直下のCAM組織を胚から除去して、組織をPBSで3回洗浄した。5mフィルタディスク範囲の血管分枝点を、血管新生促進化合物に応答する血管出芽の定量的指標として、倍率30倍でカウントした。各卵を2つの異なるオペレータによって分析して、平均測定値を報告した。以下の式を使用して、VEGF刺激による血管新生阻害の平均パーセントを計算した:
第2の契約研究所では、CAMアッセイを以下のように実施した。受精ニワトリ卵を強制空気循環される加湿孵卵器で37.5℃にて孵化させた。胚齢3日に、卵を割り開き、胚を100mm3ペトリプレートに慎重に移して、細胞培養インキュベータ内で37.5℃にてその発生を続けた。直径約2mmの予め作製したメチルセルロースディスクを胚齢5日に、胚漿尿膜の上に静かに移植して、試験剤のみ、または血管新生刺激剤(VEGF、bFGF、LPS、対照溶液)のどちらかをメチルセルロースディスクの上に添加した。VEGFを40ng/ディスク、bFGFを20ng/ディスクで、そしてLPSを100ng/ディスクで添加した。胚を細胞培養インキュベータでさらに2日間インキュベートした。胚齢7日に、染色した脱脂粉乳溶液注射後に、CAM膜を調べて、新たな血管形成について定量分析した。血管新生に対する処置の効果は、生存ニワトリ胚のみを用いて、CAMの血管密度指数(indexed)(VDI)を決定することによって評価した。各CAMのVDIは、Image Pro Plusソフトウェアを使用して、メチルセルロースディスクに被覆された範囲での血管と3個の等距離中心円とによって作られた交点の数を表す。各群(N>5)の定量分析に基づく平均VDIを、生理食塩水対照のパーセントとして表6および7に示す。2つの研究所で生成されたデータ間の内部整合性および比較の目的で、阻害曲線を含む図は、上に挙げたPRI Albanyによって使用された同じ式を使用して評価した。血管新生刺激が印加されず、同じ式が使用できなかったため、図1は例外である。
2つのCAM方法の間には、2つの主要な相違がある。第2の契約研究所ではニワトリ卵を割り開けるのに対して、第1の研究所ではCAMアッセイを卵殻内で行う。また、薬物添加時点から血管新生分析時まで、第2の研究所ではアッセイを2日間実施し、第1の研究所はアッセイを3日間実施する。これらの方法には他のさらに微小な相違も存在し得る。
結果
第1の研究所では、TM−601が非刺激血管新生を用量依存方式で遮断することが見出された。対照の非刺激卵を、TM−610の各種量で処置した非刺激卵と比較した。この方法で、卵の正常な血管新生プロセスに対するTM−601の効果の試験を行った。生データを表6に示し、曲線のプロットを図17に示す。
第2の研究所も、TM−601がVEGF−、bFGF−およびLPS−刺激血管新生を阻害することを示す、実施例1に記載された結果を再現した。前と同様に、この効果も用量依存方式で見られた(表7および図18)。TM−601 0.001μgで処置したVEGF刺激によって刺激された胚の群を除いて、すべての値は、刺激剤のみの対照と比較して統計的に有意に減少された。図19に示す写真は、典型的であり、血管新生刺激剤のみで処置したCAMと比較した、TM−601で処置したCAMを示す。
現在までの知見によって、TM−601が血管形成に対して阻害効果を有することが示されている。しかし、効力が他の抗血管新生治療薬にどの程度匹敵するかを決定するために、CAM実験を実施し、その実験ではVEGF−刺激血管新生の阻害がTM−601はもちろんのこと、2つの承認抗血管新生治療薬、AvastinおよびLucentisについても測定された。AvastinおよびLucentisのどちらも、組換えヒト化抗VEGF抗体である。これらは、Lucentisがその浸透性を向上させるために設計されたより分子量の小さい抗体断片であるという点で異なる。CAMに添加した阻害薬の重量に基づく阻害曲線を比較すると、LucentisおよびTM−601は最も効力があった(阻害薬の最小質量にて最大の阻害、図21)。阻害薬のモル量に関してプロットすると、Avastin抗体のサイズが比較的大きく、TM−601のサイズがより小さいために、曲線が移動する(図22)。モル基準では、TM−601はAvastinまたはLucentisよりも効力が低い。
TM−601が複数の受容体経路(VEGF、bFGF、LPS、EGF、IL−6、PDGF、TNFαおよびHGF)によって刺激される血管新生を阻害し、Avastin/LucentisがVEGF経路のみに作用することを考えて、我々は次に、TM−601がAvastinまたはLucentisのどちらかと共に作用して、抗血管新生効果の効力を上昇させることができるか否かについて試験を行った。その場合、この効果は相加的(各阻害薬の和のみ)、または相乗的(相加的を超える)のどちらかであり得る。この実験は2回実施した。図23および24に示すように、TM−601およびAvastinまたはLucentisのどちらかの適用によって、どちらかの薬物単独よりも高い抗血管新生活性が生じた。この効果が相加的活性から生じるか否か、または相乗的効果が発生するか否かは、まだ明らかでない。
考察/結論
新生血管形成に対するTM−601の用量依存性阻害活性が、2つの独立した研究所で再現された。1つの研究所によるデータは、阻害のレベルが、血管新生を刺激するために血管新生促進因子を使用したときに(図25)、正常に発生しているニワトリ胚血管系に対する阻害効果(図24)と比較して、より顕著であることを示している。VEGF−刺激血管新生の阻害は、局所適用されたTM−601によってはもちろんのこと(図18)、単回静脈内注射後にも観察された(図20)。
TM−601処置から生じた血管新生阻害のレベルが他の抗血管新生化合物と同様であるか否かを判定するために、2つの抗VEGF抗体(AvastinおよびLucentis)をTM−601と同じ実験で個別に添加した。質量基準では、TM−601およびLucentisは最も有効であったが、LucentisおよびAvastinは、モル基準で表したときにTM−601よりも有効であった。TM−601および他の抗血管新生剤をさらに比較することを目的とした今後の実験には、黄斑変性症の眼モデルなどのインビボモデルが含まれ得る。このようなモデルは、TM−601がAvastinおよびLucentisと同じくらい有効であるか否かの判定を容易にし得る、クリアランス速度および副作用の検討を可能にし得る。
実験の別のセットでは、TM−601は、AvastinまたはLucentisのどちらかと共に投与された。本実施例の実験によって、TM−601がこれらの2つの抗VEGF抗体と相加的または相乗的に作用するか否かを最終的に判定することはできなかった。個別に投与した各薬物の阻害効果の和は、2つの薬物を同時に投与したときに観察される阻害効果とおおよそ等しく、相加効果が示唆される。
それにもかかわらず、別の方法で組合せ効果を分析することによって相乗効果が示唆され得る。Avastin用量を10倍(0.067ピコモルから0.67ピコモル)に増加させたとき、血管新生阻害のレベルは47%しか上昇しなかったのに対して、わずか0.25ピコモルのTM−601を0.067ピコモルのAvastinに添加すると、158%の上昇が生じた(図23A)。このような応答は、LucentisをTM−601と組合せたときにも観察された(図23B)。それゆえ、モル基準では、AvastinまたはLucentisのどちらかにTM−601を添加すると、どちらかの抗体薬物の濃度を単独で上昇させるよりも、血管新生の阻害に著しく有効であった。
(実施例6)
クロロトキシンによる脈絡膜新生血管形成の阻害および退行
新たな血管の形成(血管新生)およびこのような血管の維持は、転移の重要な要素と考えられる。本実施例によって、クロロトキシンが血管新生を阻害するおよび/または既存の新たに形成された血管の退行を引き起こす能力を、脈絡膜新生血管形成アッセイを使用して評価した。クロロトキシンを血管形成の誘導時付近から投与したときに、クロロトキシンによって新たな血管形成の著しい減少が引き起こされた。血管形成が誘導された数日後にクロロトキシンが投与された実験パラダイムでは、クロロトキシンによって脈絡膜新生血管形成の著しい退行が引き起こされた。
物質および方法
脈絡膜新生血管形成(CNV)は、マウスにおいて530nmレーザを用いた光凝固によって誘導した。各網膜に3個の火傷を、網膜後極の9、12、および3時の位置に与えた。ブルッフ膜の断裂は、レーザ誘導時に気泡が生じたときに成功であると判定した。気泡が観察された火傷だけを本試験に含めた。
第1の実験において、生理食塩水に溶解させたTM−601の50mg/mL溶液の硝子体内注射1μLを片眼に注射して(n=動物17匹、定量化可能な火傷49個)、生理食塩水1μLをーザ光凝固後に片方の眼に注射した(n=動物17匹、定量化可能な火傷44個)。7日後、注射を反復した。試験の第14日に、マウスにフルオレセイン標識デキストラン(2x106平均分子量、Sigma)を灌流させ、脈絡膜フラットマウントを作製して、蛍光顕微鏡法で検査した。
第2の実験では、第1日にレーザ光凝固を実施した。第7日に、処置開始前にCNVベースライン測定のために、マウス10匹の1群(定量化可能な火傷30個)にフルオレセイン標識デキストランを灌流させた。残りのマウスには、TM−601の50mg/mL溶液の1μLの眼内注射を片眼に(n=動物12匹、定量化可能な火傷34個)、生理食塩水を片方の眼に(n=動物13匹、定量化可能な火傷32個)投与した。第14日に、残りのマウスすべてにフルオレセイン標識デキストランを灌流させ、脈絡膜フラットマウントを作製して、蛍光顕微鏡法で検査した。
脈絡膜新生血管形成病変のサイズを脈絡膜フラットマウントで測定した。フルオレセイン標識デキストランによる灌流の後、眼を除去して、10%緩衝ホルマリン中で1時間固定した。角膜およびレンズを除去して、網膜全体を眼杯から切除した。脈絡膜の放射状切断を縁から赤道まで行い、眼杯でフラットマウントを作製した。フラットマウントは、蛍光顕微鏡法で検査して、画像をデジタル化した。Image−Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics)を使用して、各火傷に関連する脈絡膜新生血管形成の総面積を測定した。
結果
レーザ光凝固によるマウスのブルッフ膜の断裂によって脈絡膜新生血管形成(CNV)が生じ、これは新生血管加齢性黄斑変性症の患者で発生するCNVの多くの態様に似ている。TM−601がこのモデルにおける新たな血管形成に影響するかどうかを判定するために、TM−601 50μgの硝子体内注射をレーザ光凝固の日(第1日)および第7日に実施した。対照眼には、同じ時点で生理食塩水を注射した。ブルッフ膜断裂の14日後、各眼からの脈絡膜フラットマウントを分析した。TM−601処置は、50μgの眼内TM−601用量によって新たな血管の形成を著しく減少させる(図32および34)。
このモデルの先在する新生血管系に対するTM−601の効果を評価するために、TM−601 50μgの眼内注射による処置を、ブルッフ膜断裂の7日後まで遅延させた。この時点で、新生血管形成の大きな部位がすでに存在していた(図26のベースラインを参照)。第7日の単回生理食塩水注射は、第14日に測定した新たな血管形成に対する効果がなかったのに対して(図33の対照)、TM−601の単回注射はCNVの著しい退行を引き起こした(図26および27)。
考察/結論
本実施例によっては、局所投与TM−601がCNVを著しく抑制して、CNVの退行を引き起こせることが証明される。新たな血管の退行は、CNV病変内のアポトーシスによって起こることが示された。(たとえばLima R.ら、2006.Recombinant non−collagenous domain of a2(IV)collagen causes involution of choroidal neovascularization by inducing apoptosis.Journal of Cellular Physiology 208:161−166を参照、その内容全体は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている)。CNVマウスモデルは、黄斑変性症の湿性形の疾患状態に似ている。本試験で用いた硝子体内投与経路は、黄斑変性症の臨床的に承認された療法である、Lucentis(登録商標)の投与に使用される経路であるため、臨床的に重要であり得る。
(実施例7)
PEG化クロロトキシンの生物学的利用濃および抗血管新生効果
本実施例では、PEG化クロロトキシンを試験して、インビボでのクロロトキシンの半減期を延長させられるか否かを判定した。PEG化クロロトキシンの抗血管新生効果も調べた。
物質および方法
PEG化
TM−601は、多分散直鎖40kDa PEG−プロピオンアルデヒド(DowPharma)を使用する還元的アミノ化(animation)によって、ペプチドのN末端でPEG化した。
TM−601の半減期測定
非腫瘍保持C57BL/6マウスに、TM−601を(約2mg/kgの用量で)単回尾静脈注射によって静脈内注射した。血液試料を各種の時点で採取し、抗TM−601抗体を使用してELISAによってTM−601のレベルを決定した。
マウス・マトリゲル・プラグ
高濃度マトリゲルマトリクス(BD Biosciences製)を100ng/mL VEGF、100ng/mL bFGF、および3ng/mLへパリンと、4℃にて混合した。8周齢メスC57BL/6は各群に無作為に割当て、各群にマウス6匹とした。500μLマトリゲルプラグ2個を与えた各マウスには、左右相称で皮下組織に注射した。円形プラグを形成するために、通常の皮下挿入の後に、針先を左右に移動させることによって、幅広の皮下ポケットを形成した。注射は、内容物全体がプラグ中に送達されるように、21−25G針を用いて迅速に実施した。マトリゲルプラグを試験の第0日に移植して、処置は第1日に開始した。動物にビヒクル(生理食塩水)、TM−601、またはPEG化TM−601のいずれかを静脈内注射によって投薬した。3つの投薬計画:2週間にわたって週1回(第1日に1回および第8日に1回;「Q7D×2」)、2週間にわたって週2回(第1日、第4日、第8日、および第11日;「Q3D×2/2」)、および2週間にわたって週5回(第1日、第2日、第3日、第4日、第5日、第8日、第9日、第10に日、第11日、および第12日;「Q1D×5/2」)を使用した。14日後にプラグを収集した。マウスを安楽死させて、プラグの上の皮膚を引き戻した。プラグは、組織学的分析のために、切開して、固定し、パラフィンに包埋した。評価可能な各プラグからの厚さ5μmの切片3枚をCD31抗体によって免疫染色して、ヘマトキシリンおよびエオシンによって対比染色した。各マトリゲルプラグの断面積の血管数を顕微鏡下で分析した。
結果/考察
図28に示すように、PEG化TM−601は、未修飾TM−601と比較してインビボでの半減期の延長を示した。PEG化によってTM−601の半減期は約32倍、すなわち約25分(TM−601)が約16時間(TM−601−PEG)に延長された。
半減期の延長を、血管新生モデルで動物により低い頻度で投薬する能力に変換した。マウス・マトリゲル・プラグ・アッセイでは、多様なスケジュールに従ってTM−601またはPEG化TM−601(TM−601−PEG)のどちらかを動物に投与した。微細血管密度を測定して、このような密度の低下が抗血管新生効果を示すと解釈した。
TM−601およびTM−601−PEGはどちらも、試験を行った2つの最も頻繁な投薬スケジュール(2週間にわたって週2回、「Q3D×2/2」;および2週間にわたって週5回、「Q1D×5/2」)で抗血管新生効果を有した(図29)。TM−601は、試験を行った最も低頻度の投薬スケジュール(2週間にわたって週1回、「Q7D×2」)でいずれの抗血管新生効果も示さなかったのに対して、このような投薬スケジュールでTM−601−PEGを用いた処置では、微細血管密度の著しい低下が生じた(図29)。
いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、動物により低頻度で投薬する能力は、TM−601と比較した、TM−601−PEGのより長期間にわたる有効性によるものであり得る。このような有効性の向上によって、新たな血管形成の部位でのより長期間の暴露がもたらされ、より長期の効果が可能となる。
(実施例8)
結膜化注射によって送達されたクロロトキシンの抗血管新生効果
滲出型黄斑変性症などのいくつかの眼の障害には、異常な血管新生が含まれる。本実施例では、TM−601の抗血管新生効果について、血管新生の動物眼モデル(特にマウス脈絡膜新生血管形成モデル)で試験を行った。眼に投与するために一般に使用される経路である結膜下注射によってTM−601を送達して、血管新生に対するその有効性を調べた。
物質および方法
マウス脈絡膜新生血管形成モデル
マウスの脈絡膜新生血管形成(CNV)は、530nmレーザ光凝固によって誘導した。各網膜に3個の火傷を、網膜後極の9、12、および3時の位置に与えた。ブルッフ膜の断裂は、レーザ誘導時に気泡が生じたときに成功したことが明らかであった。気泡が観察された火傷だけを試験に含めた。
結膜下注射
生理食塩水に溶解させたTM−601 5μLの眼周囲(結膜下)注射を第1日および第8日に片眼に対して行った。TM−601は、総用量がそれぞれ約10、50、250および1000μgとなるように、約2、10、50および200mg/mlの濃度で調製した。動物の1群に同じ量の生理食塩水を注射した。試験の第14日に、マウスにフルオレセイン標識デキストラン(2×106平均分子量、Sigma)を灌流させ、脈絡膜フラットマウントを作製して、蛍光顕微鏡法で検査した。片方の眼(未処置眼)は対照として扱い、注射を投与しなかった。
脈絡膜新生血管形成の測定
脈絡膜新生血管形成病変のサイズを脈絡膜フラットマウントで測定した。フルオレセイン標識デキストランによる灌流の後、眼を除去して、10%緩衝ホルマリン中で1時間固定した。角膜およびレンズを除去して、網膜全体を眼杯から切除した。脈絡膜の放射状切断を縁から赤道まで行い、眼杯でフラットマウントを作製した。フラットマウントは、蛍光顕微鏡法で検査して、画像をデジタル化した。Image−Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics)を使用して、各火傷に関連する脈絡膜新生血管形成の総面積を測定した。
結果および考察
脈絡膜新生血管形成をマウスの眼で誘導して、マウスの片眼を結膜へのTM−601注射によって処置した。未処置眼は対照として扱った。図30に示すように、TM−601処置によって、新生血管形成の総面積の用量依存的な縮小が引き起こされた。結膜下送達TM−601の抗血管新生効果は、TM−601 約60μg(約20〜30mg/kgにほぼ等しい)で最大化するように思われる。このような縮小は、生理食塩水を注射した対照と比較したときに、有意に異なっていた(p<0.05)。興味深いことに、対照の未注射眼(「片方の眼」)の新生血管形成の総面積も用量依存方式で縮小するように思われたが、縮小は注射した眼で見られた縮小ほど大きくなかった。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、このような観察された効果は、片方の眼の注射部位から広がったTM−601の結果であり得る。それにもかかわらず、未注射の片方の眼で観察された効果は、アーチファクトであり得る。
これらの結果によって、TM−601は結膜下注射によって送達されたときに、用量依存方式で抗血管新生効果を及ぼすことが示される。
(実施例9)
TM−601含有点眼薬の局所適用
実施例8によって、TM−601は眼に送達されて、眼の新たな血管形成を遮断できることが証明された。実施例8では、TM−601を結膜下注射によって送達した。TM−601の送達について試験を行った他の投与経路は、眼内(実施例6を参照)、硝子体内(実施例6を参照)、および静脈内(実施例2を参照)を含み、そのすべてが抗血管新生的に有効なTM−601を送達するのにうまく使用された。
本実施例において、眼への別の投与経路が調べられた。TM−601は、点眼薬の形で局所送達され、抗血管新生効果について試験された。局所投与は、非侵襲性であるという利点を与える。点眼薬によって、血管新生関連障害(たとえば滲出型黄斑変性症)などの障害の処置のために、TM−601を眼に送達する代わりの方法が可能となり得る。
物質および方法
本実施例で使用する脈絡膜新生血管形成のマウスモデルおよびCNVを測定する手段は、実施例8に記載した通りであった。
TM−601は、試験の間、局所点眼薬によって1日3回投与した。TM−601は、70%デキストランおよび0.3%ヒプロメロース(活性成分)を含有する溶液に、約1、5または25mg/mLのいずれかの濃度で溶解させた。それゆえ、約10μLの各液滴によって、用量は約10、50または250μgであった。実施例8と同様に、第14日に、すべてのマウスにフルオレセイン標識デキストランを灌流させ、脈絡膜フラットマウントを作製して、蛍光顕微鏡法で検査した。
結果および考察
合計約0、0.03mg、0.15mg、または0.75mgのTM−601を点眼薬によって、脈絡膜新生血管形成が誘導されたマウスに送達した。図31に示すように、局所送達TM−601は、試験を行った最も高い用量(750μg;約25〜40mg/kg)で有効であった。試験を行ったいずれの用量においても、毒性は観察されなかった。これらの結果によって、TM−601は点眼薬によって送達されたときに血管形成を遮断できることが証明される。
(実施例10)
クロロトキシン結合パートナー
クロロトキシンがその抗血管新生効果を及ぼす機構をさらに理解するために、発明者らは、クロロトキシンの結合パートナーを同定するための一連の実験を実施している。先の実験によって、クロロトキシンが腫瘍細胞の表面で抗原(または複数の抗原)に特異的に結合することが示された。発明者らは、このような抗原または複数の抗原の同一性を解明するための実験を設計した。
いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、発明者らは、クロロトキシンと特異的に相互作用するタンパク質または抗原の関連する特性が:1)プルダウンアッセイでのクロロトキシンとの共沈、2)クロロトキシンを結合しない細胞株への結合がないこと、3)原形質膜中での存在、4)ビーズおよび/もしくは非クロロトキシン由来ペプチドなどの対照試薬との相互作用が存在しないこと、5)TM−601ペプチドによって競合的方式で混乱され得る、細胞株との相互作用、6)タンパク質/抗原がこのような細胞中でノックアウトおよび/もしくはノックダウンされたときの、細胞へのクロロトキシン結合の減少、ならびに/または7)タンパク質/抗原の発現が戻ったときの、このようなノックアウトおよび/もしくはノックダウン細胞へのクロロトキシン結合の回復の1つ以上を含み得ることを提唱する。
タンパク質架橋実験を使用して、クロロトキシンに結合し得るタンパク質を同定する。TM−601は、U87神経膠腫細胞に結合可能となるであろう。細胞は、クロロトキシンに結合し得る細胞の表面でタンパク質を架橋する膜不浸透性剤によって処理する。(タンパク質−クロロトキシン複合体を含むであろう)全細胞溶解液を、電気泳動によってポリアクリルアミドゲルで分離する。架橋複合体は、ウェスタンブロットで親和性精製抗TM−601抗体を使用してプローブする。クロロトキシンの潜在的結合剤は、ウェスタンブロットのバンドを使用して同定されるであろう。
クロロトキシンを合成ビオチン化したものであるTM−602を使用して、プルダウン実験も実施する。タンパク質架橋実験と同様に、TM−602はU87神経膠腫細胞に結合可能となるであろう。細胞は、表面タンパク質をクロロトキシンで架橋するために処理した。複合体は、全細胞溶解液から抗TM−601抗体が結合されたビーズを使用してプルダウンさせる。(抗TM−601抗体は、TM−602も認識する)。プルダウンされた複合体を電気泳動によってポリアクリルアミドゲルで分離する。ゲル上のタンパク質は、クロロトキシンの潜在的な結合剤に相当する。いくつかのタンパク質バンドをゲルから切除して、ガスクロマトグラフィー/質量分析法によって配列決定した。
最初のプルダウン実験によって、複数のタンパク質がクロロトキシンの潜在的な結合剤として同定された。細胞膜と会合するタンパク質であるアネキシンA2は、クロロトキシンの潜在的な結合パートナーの1つであった。アネキシンA2は、抗TM−601抗体によって複合体としてプルダウンさせて、抗アネキシンA2抗体を使用するウェスタンブロットで検出した。
アネキシンA2がクロロトキシンを結合する可能性を調べるために、アネキシンA2の発現に対して向けられたsiRNAを使用したノックダウン実験を実施した。次に、アネキシンA2についてノックダウンされた細胞に結合するクロロトキシンを評価した。
トレーサー量の放射性標識TM−601の細胞表面への結合を4℃にて実施した。さらに、表面受容体に対する競合を示すために、未標識TM−601の増加量を加えた。結合は、未処置Panc−1細胞または細胞中のアネキシンA2を減少させるsiRNAのセットを形質移入されたPanc−1細胞のどちらかに対して実施した。図32に示すように、アネキシンA2のsiRNAノックダウンは、TM−601の細胞表面への表面結合を著しく低下させることが見出された。
アネキシンA2は、内皮細胞表面で発現され、ある腫瘍タイプでは過剰発現される。アネキシンA2は、プラスミノーゲンおよびプラスミンなどの血管形成促進および/または抗血管形成タンパク質の変換を制御する結合位置として特徴付けられてきた。
インビボでのアネキシンA2とクロロトキシンの間に特異的な相互作用があるように思われる。アネキシンA2がクロロトキシンにインビボで結合するか否かを明らかにするさらなる実験が実施されている。いずれの特定の理論にも束縛されたくはないが、クロロトキシンが、アネキシンA2に結合して、それにより血管新生に関与する因子のアネキシンA2による制御を変化させることによって、その抗血管新生効果のいくつかを媒介し得ることが提唱されている。
アネキシンA2は、広範囲の役割に関係してきた。クロロトキシンの、抗(antio)血管新生効果およびアネキシンA2との潜在的な相互作用は、プラスミン/プラスミノーゲン活性化因子系を制御するアネキシンA2の提唱された役割の観点から興味深い。アネキシンA2は、内皮細胞でのプラスミン(セリンプロテアーゼ)の生成を促進する。この作用は、アネキシンA2のtPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)およびプラスミノーゲンへの結合によって媒介され得る。プラスミンの過剰産生は、血管新生および転移に関連してきた。同時に、プラスミン切断β−2−糖タンパク質1は、血管新生を阻害することが観察されている。クロロトキシン、アネキシンA2、およびプラスミンなどの下流制御タンパク質を含む正確な機構の詳細事項はまだ明らかになっていないが、本明細書で紹介したデータによって、クロロトキシンの血管新生に対する観察された効果とその潜在的な結合パートナーとの間に興味深い関連が与えられている。
クロロトキシンが多様な疾患および状態に有効な療法であることを考慮すると(本明細書および当分野で確証されたように)、本知見によって、クロロトキシンの潜在的な相互作用パートナーとしてのアネキシンA2が、新たな医薬品を同定するための所望の標的であることが確証される。アネキシンA2に結合する、および/またはアネキシンA2を調節する薬剤は、クロロトキシンが潜在的にそうであるように、有用な治療剤として作用し得る。このような調製剤のスクリーニングによって新たな療法が明らかとなり得て、そのいくつはクロロトキシンとは異なる特徴を有し得る。このような新たな療法によって、たとえばより広範囲の疾患の処置および/または改善、異なる細胞種類への標的化、異なる投薬計画および投与経路による投薬などが可能になり得る。
クロロトキシンの他の潜在的な結合剤(たとえば最初のプルダウン実験によって同定された)も、さらなる実験で調査され得る。
他の実施形態
本発明の他の実施形態は、明細書の検討または本明細書で開示した本発明の実施から当業者に明らかになるであろう。明細書および実施例は単なる例示と見なされるものとし、本発明の真の範囲は以下の請求項によって示される。