JP5585999B2 - ポリエステル樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。)
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、重合原料として使用する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)におけるトランス体とシス体の異性体比率が、トランス体/シス体=90/10〜100/0であることが好適である。
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、重合原料として使用するビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物(B)が、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンであることが好適である。
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、重合原料として使用する炭素数2〜4の脂肪族ジオール化合物(C)が、エチレングリコールであることが好適である。
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、1.4倍延伸時の複屈折が5.0×10−4以下であることが好適である。
また、前記ポリエステル樹脂組成物において、アッベ数が25以上であることが好適である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)を含む酸成分と、一般式(I)で表されるビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物(B)と、炭素数2〜6の脂肪族ジオール化合物(C)とからなるジオール成分とを重合反応させてなるポリエステル樹脂を含む組成物であって、該ポリエステル樹脂に含まれる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基のトランス体/シス体の比率が80/20〜95/5であり、該ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)が130〜150℃であることを特徴とするものである。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、重合原料として使用される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)は、通常ポリエステル原料モノマーとして用いられるエステル化物であれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜10のアルキルエステル、より具体的には、ジメチルエステル、ジエチルエステル等が挙げられ、特にジメチルエステルを好適に使用することができる。なお、未置換の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を重合原料として使用し、直接エステル化により重合すると、重合反応中にトランス体からシス体への異性化が生じやすくなるため、樹脂中に含まれるトランス体/シス体の比率を80/20〜95/5の範囲内に制御することが困難となる。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、重合原料として使用されるビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物(B)は、下記一般式(I)により表される化合物である。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、重合原料として使用される炭素数2〜6の脂肪族ジオール化合物(C)としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、特にエチレングリコールが、得られる樹脂の耐熱性及び光学特性の点から好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、樹脂組成物中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基のトランス体/シス体の成分比率は、80/20〜95/5である必要があり、好ましくは85/15〜95/5である。トランス体比率が80%未満の場合、ポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度が低下し、耐熱性に劣ることになる。なお、トランス体比率が高いほど耐熱性の高い樹脂が得られると考えられるものの、重合工程においてトランス体からシス体への異性化が生じるため、95%を超えるトランス体比率を得ることは非常に困難であるとともに、95%を超えた場合であっても、その製造の困難さ、煩雑さと比較して得られる効果は小さい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記(A)〜(C)の特定組成の酸成分及びジオール成分を用い、樹脂中の(A)の残基が特定の異性体比率となるように製造することによって、130℃以上の高いガラス転移温度を有しており、耐熱性に優れている。なお、本発明のポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度は130〜150℃であり、好ましくは135〜145℃である。例えば、電子部品等に使用する光学材料用途の樹脂としては、一般に、130℃以上のガラス転移温度が要求される。すなわち、ガラス転移温度が130℃未満の場合、電子部品等に組み込まれた場合に耐熱性が不足し、使用中に変形したり、性能が変化する場合があるため、好ましくない。一方で、ガラス転移温度が150℃を超えると、樹脂が脆くなり易く、機械物性に劣る場合があり、また、複屈折が増大してしまう場合があるため、好ましくない。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、屈折率が1.600以上の樹脂として得られる。高い屈折率を有する樹脂材料は、特に光学レンズに使用する場合には、屈折率が大きい程レンズの厚さを薄くすることができるため好ましい。本発明のポリエステル樹脂組成物において、さらに好ましい屈折率は1.605以上である。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、1.4倍延伸した樹脂フィルムとして測定したときの複屈折が5.0×10−4以下の樹脂として得られる。複屈折は光学異方性の指標であり、一般的な光学レンズ用途においては、より小さい複屈折を有することが望まれる。本発明のポリエステル樹脂組成物において、さらに好ましい複屈折は、3.0×10−4以下である。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、アッベ数が25以上の樹脂として得られる。アッベ数は色収差を評価する数値であり、数値が大きい程色収差が少ないことを意味する。アッベ数が小さい場合、色収差が大きく発現し、一般的な光学レンズ素子として使用する場合に不都合が生じ易いため、特に光学レンズ用途においては色収差が少ないことが望まれる。本発明のポリエステル樹脂組成物において、さらに好ましいアッベ数は26以上である。
以下、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の触媒を使用して公知の重合方法によって行うことができる。なお、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造に際しては、十分な反応速度を得るため、第一段階として、公知の触媒を使用して常圧下でエステル交換反応を実施し、引き続く第二段階として、公知の触媒を使用して減圧下で重縮合反応を実行することが望ましい。
ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR装置(DPX400型)を使用し、重水素化クロロホルムに試料を溶解し、テトラメチルシランを標品として混合し、プロトンNMRスペクトルを測定した。得られたNMRスペクトルより、試料中の成分組成を算出した。
〈固有粘度(IV)〉
フェノール:テトラクロロエタン=60:40(重量比)の混合液を溶媒として用い、サン電子工業(株)製、自動粘度計AVL−6Cを使用して、20℃条件下の樹脂の固有粘度(IV)を測定した。
パーキンエルマー社製、示差走査熱量測定装置(DSC−7)を使用し、樹脂を窒素雰囲気中で30℃から10℃/分で昇温しながら吸熱挙動を観察し、ガラス転移による吸熱挙動の中間点温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。
〈屈折率〉
樹脂1gを200℃で熱プレス成形し、厚さ約150μの透明なフィルムを作成し、アタゴ社製のアッベ屈折計(DR−M2型)を使用し、20℃条件下で、樹脂の波長589nmでの屈折率を測定した。
樹脂1gを160〜240℃でプレス成形し、厚み100〜400μmのフィルムとし、得られたフィルムを15×40mmの短冊状に切り出し、さらにTg+10℃の温度により20%/secで40%延伸後、急冷し、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムについて、大塚電子(株)製リタデーション測定装置RETS−100を用いて、550nmの単色光で複屈折を測定した。
〈アッベ数〉
屈折率測定と同様の試料及び装置を用い、樹脂の波長589nm、486nm、656nmでの屈折率を測定し、以下の数式を用いてアッベ数(νd)を算出した。
νd=(nD−1)/(nF−nC)
nD:フラウンホーファーのD線である波長が589nmの光に対する樹脂の屈折率
nF:フラウンホーファーのF線である波長が486nmの光に対する樹脂の屈折率
nC:フラウンホーファーのC線である波長が656nmの光に対する樹脂の屈折率
攪拌機、還流冷却器、加熱装置、圧力計、温度計、減圧装置及び窒素供給装置を装備し、且つ樹脂の押し出し口を有する容量1リットルのガラス製反応器に、トランス体比率が98%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(以下、CHDA−M)80.2質量部、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEF)140.8質量部、エチレングリコール(以下、EG)7.4質量部を投入し系内を窒素置換した後160℃で原料を溶解した。しかる後、エステル交換触媒として酢酸マンガン0.021質量部及び酢酸カルシウム0.060質量部を投入し、260℃まで3時間かけて徐々に昇温し、更に260℃に保持したまま2時間反応を継続し、副生物の留出が無くなり且つ所定の副生物が留出したことを確認した。しかる後、トリメチルホスフェート0.075質量部、二酸化ゲルマニウム0.104質量部を0.9%の水溶液として添加した。内温が230℃に到達した後、徐々に昇温と減圧を開始し、90分後には内温を265℃且つ0.13kPaとし、この状態で重縮合反応を継続し、所定のトルクに到達するまで反応を継続した。所定のトルクに到達後、窒素で反応容器内を加圧にし、樹脂を冷却水中にストランド状に押し出し、カッティングしてペレットを得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例1と同じCHDA−MとBPEFを使用し、EGの使用量を代える以外は、実施例1と同じ装置及び反応条件でエステル交換反応及び重縮合反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例7
トランス体比率が85%であるCHDA−Mを使用した以外は、実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例1で使用したCHDA−Mを74.5質量部、BPEFを146.8質量部、EGを4.6質量部使用し、BPEF/全酸成分モル比を0.90にする以外は実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例9
BPEFの使用量を131.9質量部、EGを8.7質量部使用し、BPEF/全酸成分モル比を0.75にする以外は、実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例1で使用したCHDA−Mの一部をテレフタル酸ジメチル(DMT)に変更した以外は、実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例1と同じCHDA−MとBPEFを使用し、EGの使用量を代え、実施例1と同じ装置及び反応条件でエステル交換反応及び重縮合反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
比較例4
トランス体比率が75%であるCHDA−Mを使用した以外は、実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例1で使用したCHDA−Mとテレフタル酸ジメチル(DMT)のモル比を50/50及び75/25に変更した以外は、実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
比較例7
実施例1で使用したCHDA−Mを使用せずに、酸成分を全量テレフタル酸ジメチル(DMT)に変更し85.2質量部、BPEFを134.8質量部、EGを62.6質量部使用した以外は、実施例1と同じ反応を実施し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
実施例1で使用したCHDA−Mに代えてCHDAを69.0質量部、BPEFを140.8質量部、EGを29.8質量部使用し、230℃で3時間触媒を使用せずにエステル化反応を実施し、エステル化反応終了後、実施例1と同じトリメチルリン酸とGeO2を添加し、同じ反応条件で重縮合反応を実施して、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性は下記表2に示すとおりであった。
Claims (11)
- 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)を含む酸成分と、
下記一般式(I)で表されるビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物(B)と、
炭素数2〜6の脂肪族ジオール化合物(C)とからなるジオール成分と
を重合反応させてなるポリエステル樹脂を含む組成物であって、
該ポリエステル樹脂組成物に含まれる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基のトランス体/シス体の比率が80/20〜95/5であり、
該ポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が130〜150℃であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。) - 重合原料として使用する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 重合原料として使用する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)のトランス体とシス体の異性体比率が、トランス体/シス体=90/10〜100/0であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 重合原料として使用する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のエステル化物(A)が、全酸成分中80〜100モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 重合原料として使用するビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物(B)が、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 重合原料として使用するビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物(B)と全酸成分とのモル比が、ジヒドロキシ化合物(B)/全酸成分=0.70〜0.95であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 重合原料として使用する炭素数2〜4の脂肪族ジオール化合物(C)が、エチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 屈折率が1.600以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 1.4倍延伸時の複屈折が5.0×10−4以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- アッベ数が25以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形加工してなることを特徴とするポリエステル成形体。
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