JP5585305B2 - 歯部の検査方法及び検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ギヤカップリングやスプラインカップリングなど、筒状部材の内径面に歯部が形成され、その歯部により回転トルクを伝達するトルク伝達要素における、上記歯部の磨耗程度を検査する技術に関する。
ギヤカップリングやスプラインカップリング等のカップリング(軸継手)では、外径面に歯部を有する内筒と、これに対応する歯部を内径面に有する外筒とを組み合わせて使用され、歯部同士が噛み合うことによって、一方から他方に向けて回転トルクが伝達される。したがって、カップリングを長期間使用すると経時的に上記歯部が磨耗してくる。その歯部の磨耗の程度が大きくなると、伝達制御や伝達効率に悪影響が生じ、完全に摩滅してしまうと動力の伝達が出来なくなる。このため、カップリングについて定期的に点検を行い歯部の磨耗状態を検査している。
ここで従前においては、上記歯部の点検は、一旦設備を停止してカップリングを開放(分解)し、内筒側と外筒側の歯の厚さなどをノギスやダイヤルゲージなどを用い測定することで検査していた。しかし、点検のたびにカップリングを開放することは、手間と費用が掛かる。また設備を停止している時間も長くなるので、機会損失にも繋がる。
これに対し、特許文献1には、カップリングを開放せずに歯部の磨耗量を測定する方法が開示されている。
特許文献1に記載の測定方法では、超音波の発振位置を外筒の周方向に沿って少しずつずらしながら、超音波の反射エコーを用いて外筒の肉厚の測定を行う。そして、その測定した外筒の肉厚に基づき、歯部構造の段差部(歯部と非歯部との境界)の位置を検出し、その段差部間の距離を歯部幅として検出するものである。
具体的には、外筒外径面側から垂直探触子によって超音波を入射し、底面から反射した反射エコーを捉えて演算器により解析することで行う。その解析によって、超音波の発振から受信までの時間差から歯部の厚さを求めると共に、続行反射パルスの強度の変化に基づき歯部幅を求める。すなわち、垂直反射パルスに続いて現れる複数の続行パルスの強度は垂直探触子の位置によって変わるが、この変化のパターンから歯部の段差位置を検出し、その幅を求める。
特開平6−82243号公報
ここで、カップリングの回転が正回転のみの場合は、歯部の片方の側面のみが摩耗し、カップリングの回転が正逆両回転の場合は歯部の両側面が磨耗する。また磨耗の形態も、段付状の磨耗や歯底側からの磨耗などさまざまの形態となっている。
しかし、上記特許文献1に記載の測定方法では、続行反射パルスの強度の変化から歯部幅を求めるために、続行パルスの強度が磨耗の形態に応じて変化してしまい、この点で歯幅測定の精度が悪くなる可能性がある。
また、上記特許文献1に記載の測定方法では、探触子の移動距離に基づき演算する必要があるため、車輪付エンコーダやワイヤ付きエンコーダなどによって、移動距離を正確に測定する必要がある。
このように、上記特許文献1に記載の測定方法は、所定以上の精度で測定しようとする程、測定に手間が掛かるという課題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、簡易に且つ所定精度で歯部の状態を検出可能な歯部の検査技術を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項に記載した発明は、筒状部材の内径面に歯部が形成されたトルク伝達要素に対する、上記歯部の状態を外径面側から超音波探傷で検査する歯部の検査方法であって、
径方向で上記歯部位置と重なる上記筒状部材の外径面位置から歯先に向けて超音波を入射し、その入射した超音波における、歯先先端面から直接反射して戻ってきた底面エコーと、その底面エコーに遅れて検出される反射エコーのうち一番受信強度が大きな遅れエコーとを上記外径面側で検出し、その検出した底面エコーと遅れエコーの時間差に基づき歯部の歯先厚を推定することを特徴とするものである。
次に、請求項に記載した発明は、歯先厚が分かっている状態のときに検出した上記底面エコーと遅れエコーの時間差及びそのときの歯先厚を前もって記憶しておき、その記憶した時間差及び歯先厚と、歯先厚を求めるために検出した上記戻りエコーと遅れエコーの時間差とに基づき、歯先厚を推定することを特徴とするものである。
次に、請求項に記載した発明は、検査対象とするトルク伝達要素と同型のトルク伝達要素について、上記歯部の歯先厚が異なる状態で上記底面エコーと遅れエコーの時間差をそれぞれ測定して、歯先厚と時間差との相関を予め求めておき、その相関と、歯先厚を求めるために検出した上記戻りエコーと遅れエコーの時間差とに基づき、歯先厚を推定することを特徴とするものである。
次に、請求項に記載した発明は、筒状部材の内径面に歯部が形成されたトルク伝達要素に対する、上記歯部の状態を外径面側から超音波探傷で検査する歯部の検査装置であって、
径方向で上記歯部位置と重なる筒状部材の外径面位置から歯先に向けて超音波を入射し、反射して戻ってきたエコーを受信する超音波探触子と、
上記超音波探触子が受信したエコーのうち、歯先先端面から直接反射して戻ってきた底面エコーと、遅れエコーのうち一番強度が大きな最大遅れエコーとを選別し、その底面エコーと最大遅れエコーとを受信した時間の差である時間差を求める時間差検出手段と、
上記時間差検出手段が求めた時間差に基づき歯部の歯先厚を演算する歯先厚演算手段と、を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、1カ所で発振した超音波による反射エコーによって測定するため、簡易に歯先の摩耗状態を推定することが可能となる。
試験体における底面エコーと遅れエコーを説明する図である。 図1における底面エコーと遅れエコーとの関係を示す図である。 縦波入射時の音圧反射列率を示す図である。 横波入射時の音圧反射列率を示す図である。 歯部位置のトルク伝達要素の実寸モデルを例示した図である。 図5のモデルにおける底面エコーと遅れエコーを示す図である。 底面エコーの反射ルートを示す図である。 本実施形態で採用する遅れエコーの反射ルートを示す図である。 歯先厚と遅れエコーの検出時間との関係を示す図である。 歯先厚とビーム路程差との関係を示す換算テーブルを表す図である。 歯部の検出方法を説明する構成図である。 試験片による測定精度確性を示すための図である。 実機確性結果を示す図である。 実機確性結果を示す図である。 実機確性結果を示す図である。
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(発明の原理について)
先に、本発明の原理について説明する。
通常、図1(a)に示すように、垂直探触子1を用いて、細長い試験体2をその長手方向の上端面から下端面の探傷すると、図1(a)に示すように、入射した超音波ビーム(縦波超音波)の大部分は直進して反対側の下端面(底面)で直接反射して探触子1に返ってくる底面エコーとなる。
また、超音波ビームの広がりにより縦波超音波の一部が、図1(b)のように、試験体2の側面2aに斜め入射する。試験体2の側面2aに斜めに入射した超音波は、その側面2aでの反射時に一部の超音波がモード変換(縦波→横波)を起こす。このモード変換を起こした横波の超音波が反対側の側面2bに斜め入射し、また反射時に横波の超音波の一部がモード変換(横波→縦波)を起こすというように、試験体2の側面2a、2bに斜め入射して反射する毎にモード変換を起こしながら探触子1に戻ってくる。このように複数箇所で反射して戻ってくるエコーは遅れエコーと呼ばれる。上記底面エコーと遅れエコーとを、Aスコープで表示すると、図2に示すような関係となっている。この図2に示されるように、上記遅れエコーは、直接底面から反射した底面エコーに比べて超音波は伝播距離(ビーム路程)が長く、しかもモード変換によって速度の遅い横波になるため、上記遅れエコーは底面エコーよりも遅れて検出される。
ここで、上記底面エコーと遅れエコーのビーム路程の差をΔWnとすると、ΔWnは下記(1)式で表すことができる。
ΔWn =((n・d)/2)・√((CL/Cs)2−1) ・・・(1)
ここで
d:試験体2の厚み
CL:試験体2中の縦波音速
Cs:試験体2中の横波音速
n:試験体2中の幅を横切った回数(なお、複数の底面エコーのうち、n番目に現れる遅れエコーである。)
である。
上記(1)式から分るように、試験体2の厚みdと路程差△Wnは比例関係にあることから、△Wnを計測することで試験体2の厚みdを求めることができる。
また、遅れエコーのエコー高さ(受信強度)は、図3及び図4に示す音圧反射率により決まる。図3は縦波入射時の音圧反射率を示し、横軸は縦波の入射角度、縦軸は音圧反射率を表す。同様に図4についても横軸は横波の入射角度、縦軸は音圧反射率を表す。たとえば図1(a)のように縦波の直接反射の場合、図3をみると、入射角度0度の場合、縦波の音圧反射率は1.0となり入射と反射の音圧は同じである。次に図1(b)のように縦波が側面に斜め入射する場合、たとえば、入射角度を70度とすると、図3から縦波の多くは横波にモード変換し音圧反射率は0.88となる。さらにその横波は反対側の側面に入射しており、入射角度を20度とすると、横波は縦波にモード変換し音圧反射率は0.55となり、次にその縦波は底面で反射し、入射角度を20度とすると図3から正反射した縦波は0.85の音圧となる。つまり、探触子1から側面2aに入射した縦波の音圧を1.0とすると探触子1に戻ってきた縦波の音圧は0.41(=0.88×0.55×0.85)となる。
上記説明してきた試験体2は、直方体であって対向する側面が鉛直で互いに平行な面の場合であるが、ギヤカップリングやスプラインカップリングにあっては、歯部11は、断面台形を基本形状としており、上記試験体2のように対向する側面が超音波の入射方向に対して平行な面となっていない。そして、本発明者らは、このように隣り合う面が平行ではない場合でも遅れエコーが発生し、しかも他の遅れエコーよりも有意に大きな受信強度の遅れエコーが発生することを発見した。
そして、上記遅れエコーの反射ルートと歯先厚みとの関係を明確にして、歯先の厚みを求める方法に結びつけたのが本発明である。
すなわち、図5に示す歯型寸法(モジュール6、圧力角度20度)を有する試験片3の外径側(上面)から歯先の端面4に向けて、垂直探触子1により超音波(縦波)を入射した場合、当該探触子1の位置及びその近傍で受信した反射エコーは、図6に示すように、底面エコーに遅れて所定強度の遅れエコーが検出される(Aエコーで示す)。
ここで、底面エコーの反射ルートXは、図7に示すように歯先の端面4で直接反射する最短ルートとなる。一方、遅れエコーのルートは無数に考えられる。そこで、遅れエコーのルートの中から、底面エコーのビーム路程長に最も近く、且つ音圧(受信強度)が最も高いルートをシミュレーションで求めた。その反射ルートYを図8に示す。この反射ルートYは、まず歯先先端近傍の一方の側面5aで反射することで、反射した縦波は横波にモード変換し、続いて、モード変換した横波は歯先先端面4で正反射し、さらに、歯先先端近傍の他方の側面5bで反射して縦波にモード変換して探触子1に戻るルートである。このときの音圧は、各面5a、4、5bへの入射角度から先ほどの図3および図4の縦波と横波の音圧反射率より読み取ると、最初に側面に入射した縦波の0、68の音圧となって探触子1に戻ったことになる。
次に、図9に歯先厚に対する底面エコーと遅れエコーのビーム路程差の関係を示す。図9に示すように、歯先厚が厚いAの場合、底面エコーと遅れエコーの差は大きいが、歯先厚が薄くなるに従いB→Cと底面エコーと遅れエコーのビーム路程差は小さくなる。そして、この歯先厚とビーム路程差の関係は幾何学的に計算可能である。その歯先厚とビーム路程差の関係を幾何学的に求めた換算テーブルの例を図10に示す。なお、モジュールや圧力角などの歯型寸法によって直線の傾きは異なるものの、歯先厚とビーム路程差は一次線形の関係にある。そして、図10のような、歯型寸法に基づきこの歯先厚とビーム路程差との関係を予め換算テーブルとして求めておくことが可能である。また、この換算テーブルは、実際に実験で求めた関係と精度良く近似していることを確認している。
なお図10の換算テーブルは、歯モジュール:8、圧力角:20、歯型:並歯、リム厚:27mm、歯数71の歯形寸法の場合の例である。
ここで、ビーム路程差は、各エコーを受信する時間の時間差に対応する。つまりビーム路程差は、底面エコーと遅れエコーの受信時間の時間差と同等の関係にある。
また、上記検出対象の遅れエコーは、図8に示すように、底面エコーのビーム路程に一番近いものであるので、底面エコーの次に受信する所定以上の音圧(受信強度)のエコーを上記遅れエコーと見なせばよい。
なお、図8のように、上記検出対象の遅れエコーは、歯先先端部側で歯部11の側面で反射するエコーである。このため、歯の摩耗による誤差が小さく抑えられる。
(歯部11の検出方法)
歯部11の検出は、例えば次の工程にて実施する。
「第1工程」
まず、図11に示すように、対象とするギヤカップリングの外径面10aに対し、径方向内方に超音波を入射するように超音波探触子1を設定する。超音波探触子1を設置する外径面10aの周方向位置は、検査対象の歯部11の歯先端面11aの周方向中央位置若しくはその近傍と、ギヤカップリングの径方向で対向する位置とする。
上記位置の決定は、例えば、予め外径面10aに探触子1の設置位置をマーキングしておき、そのマーキング位置に探触子1を設置することで決定する。または、検出した底面エコーの音圧(受信強度)が歯先端面11aと対向する位置沿ってずらしながら、上記遅れエコーが最大となる位置を検出し、その検出した位置を、上記検査対象の歯部11の歯先端面11aの周方向中央位置若しくはその近傍と、ギヤカップリングの径方向で対向する位置とする。
「第2工程」
上記第1工程で探触子1の設置位置を決定したら、探触子1から歯先端面11aに向けて超音波を発振し、探触子1で歯部11表面で反射したエコーを受信する。そして、上述のように、底面エコーと、受信強度が一番大きな遅れエコーを検出する遅れエコーとして選別し、その底面エコーと選別した遅れエコーの受信した時間の差である時間差をビーム路程差相当の値として算出する。続いて、算出した時間差と、図10に示すような換算テーブルとを使用して歯先厚を求める。
すなわち、探触子1は、演算部12からの発振指令信号に応じて超音波を発振すると共に受信した反射エコーの情報を演算部12に出力する。
演算部12は、エコー選別部12A、時間差検出部12B、歯先厚演算部12Cを備える。
エコー選別部12Aは、探触子1が検出した反射エコーから、歯先先端面11aから直接反射して戻ってきた底面エコーと、その底面エコーに遅れて受信した反射エコーのうち一番強度が大きな最大遅れエコーとを選別して、その選別したエコーの受信時間を時間差検出部12Bに出力する。
時間差検出部12Bは、上記底面エコーの検出時間と最大遅れエコーの検出時間との引き算を演算して時間差を求める。
歯先厚演算部12Cは、図10に示すような換算テーブルの参照や関数を使用して、上記時間差検出部が求めた時間差に基づき歯部11の歯先厚を演算し、演算結果を表示部13に出力する。表示部13は、演算結果を表示する。
ここで、エコー選別部12A及び時間差検出部12Bは、時間差検出手段を構成し、歯先厚演算部12Cは歯先厚演算手段を構成する。
上記説明では、対象とする歯部11の幾何学的な関係から、図10に示すような歯先厚とビーム路程差(時間差)との関係を求める場合で例示した。
これに代えて、対象とするギヤカップリングと同型のギヤカップリングについて、予め、異なる歯先厚について探触子1を使用して上記時間差を求めることで、(歯先厚、時間差)のデータを2つ以上取得し、その取得した複数のデータを使用して図10の関係を求めておいても良い。
また、図10からわかるように、歯先厚とビーム路程差の関係を表すグラフは、ほぼ原点を通る一次線形のグラフである。従って、摩耗前など歯先厚が判明している状態で、上記第1及び第2工程を実施して時間差を求め、その求めた(時間差、歯先厚)と原点を通る直線で、上記歯先厚とビーム路程差の関係を表すグラフを近似して使用しても良い。この場合には、簡便に上記換算テーブルを設定することが出来る。
なお、各歯部11の摩耗状況はほぼ同じ状態と考えられるので、1つのギヤカップリングに対して、1カ所若しくは数カ所の歯部11について検査すればよい。
(作用効果)
以上説明してきたように、発明者らは、歯部11に対する遅れエコーについて検討したところ、図8のような左右対称に近い反射モードで戻ってくる遅れモードに着目すると、歯先厚の情報が精度良く取れることを見出した。また、この遅れエコーは他の遅れエコーと比べて大きな強度で検出できることも確認した。
このような新たな知見のもと、ギヤカップリングの外筒10の外径面10a側から超音波を入射すると、歯先先端面11aから直接反射して戻ってくる底面エコーと、その後に側面及び底面で反射した遅れエコーとが現れる。そして、この2つのエコーの時間差(ビーム路程差)と歯部11の歯先厚が比例関係にあることを利用して歯先厚を演算することで、新品歯先厚と比較した摩耗量を求めることが可能となる。
なお、細長い試験体2を超音波探傷すると、対面から直接反射する底面エコーの後に、側面でモード変換した遅れエコーが検出されることは公知であるが、本発明は、ギヤカップリングの歯部11においては、所定音圧以上の遅れエコーが発生することを見出し、その所定音圧以上の遅れエコーの反射ルートと歯先厚みとの関係を明確にして、歯先の厚みを測定可能としたものである。
そして、このような新たな知見のもとで、本実施形態を採用すると、外筒10(筒状部材)の外径面10a側から垂直探触子1を当て、発振した超音波の反射エコーによって、歯部構造を持つカップリングの歯部11の磨耗状態を精度よく測定することが出来る。
更に、本実施形では、探触子1の移動距離を測定することなく実施できて、手間をかけずに短時間で測定できる。この結果、高頻度の定期測定も可能となり、傾向管理による事故の未然防止を実施することも可能となる。
(試験片3による測定精度確性)
超音波探傷装置として、フェーズドアレイ法の画像の得られるオリンパス製のエポック−1000を採用した。探触子1もフェーズドアレイ探触子の5L32を採用した。
また試験片3として、モジュール4,5,6の3種類について、上記実施形態で説明した方法に準拠して歯部11について検査を行った。
すなわち、歯とは反対側の外径面10aに探触子1を当てて超音波を発振すると共に反射して帰ってきた反射エコーを受信した。
図12は、各試験片3に対する測定結果を整理したものである。
図12に示す確性結果グラフは、横軸を実歯厚、縦軸を上記実施形態による検出方法で測定した結果を示すものである。
図12の確性結果から分かるように、実歯厚が2mmより大きい場合には、精度良く検出が出来ていることが分かる。ここで、モジュール4と6のデータは実歯厚2mm以下になると測定値が極端に近似線から有意に外れている。これは超音波の特性上(探傷周波数・拡散損失など)、2mm以下については分解できないためと推定される。
2mm以下をはずして測定精度を求めると2σで±0.34mmであった。なお、2mm以下まで摩耗すると判定不能となっているが、歯先の磨耗が大きくなると底面エコーが小さくなっていくことから、磨滅寸前の判定は可能である。
(実機確性結果)
次に実機確性結果について説明する。
図13は、圧延機で使用するスピンドルハーフカップリングの故障発生品で磨滅寸前の場合である。探傷画像は、横軸はギヤのピッチ円方向、縦軸はギヤの高さ方向を表している。色が濃い部分は超音波の反射ポイントを表し、色が濃いほど反射音圧が高いことを示す。画像の中にCADで描いた歯の形状を合成している。
なお、この場合には、歯部の左右に位置する非歯部の底面15の2つの検出強度が等しくなる位置に探触子1を設定すればよい。
図13では、画像の上側から超音波は入射しており、CAD図のギヤ歯底付近で大きく反射しているのが分かる。また、その下側に磨滅した歯の先端部から反射する微小の底面エコーが観察出来る。本来、摩耗が少ない場合は底面エコーの下側に遅れエコーが現れるが、画像には全く現れていない。これにより摩耗が進行し、歯先厚が2mm以下と歯先厚が小さくなっている状態を推定できる。
次に、図14は、圧延機のテーブルロール用ギヤカップリングの新品予備品について測定した結果である。この場合には、底面エコー、および遅れエコーともに音圧も高く明確に表れている。ビーム路程差から歯先厚を求め、図寸と比較すると−0.1mmの誤差となっていた。
最後に、図15は、焼結設備で使用されるスクリーン減速機用ギヤカップリングの新品を測定した例である。この場合には、形状が新品にも関わらず中細りになっている。底面エコー、遅れエコーとも明瞭にあらわれておりビーム路程差から歯先厚を算出、図寸と比較すると−0.3mmの誤差となった。
以上のように精度良く歯部11の摩耗状態を推定することが可能となっていた。
1 探触子
2 試験体
3 試験片
10 外筒
10a 外径面
11 歯部
11a 歯先端面
12 演算部
12A エコー選別部
12B 時間差検出部
12C 歯先厚演算部
13 表示部
X 底面エコーの反射ルート
Y 戻りエコーの反射ルート

Claims (4)

  1. 筒状部材の内径面に歯部が形成されたトルク伝達要素に対する、上記歯部の状態を外径面側から超音波探傷で検査する歯部の検査方法であって、
    径方向で上記歯部位置と重なる上記筒状部材の外径面位置から歯先に向けて超音波を入射し、その入射した超音波における、歯先先端面から直接反射して戻ってきた底面エコーと、その底面エコーに遅れて検出される反射エコーのうち一番受信強度が大きな遅れエコーとを上記外径面側で検出し、その検出した底面エコーと遅れエコーの時間差に基づき歯部の歯先厚を推定することを特徴とする歯部の検査方法。
  2. 歯先厚が分かっている状態のときに検出した上記底面エコーと遅れエコーの時間差及びそのときの歯先厚を前もって記憶しておき、その記憶した時間差及び歯先厚と、歯先厚を求めるために検出した上記戻りエコーと遅れエコーの時間差とに基づき、歯先厚を推定することを特徴とする請求項1に記載した歯部の検査方法。
  3. 検査対象とするトルク伝達要素と同型のトルク伝達要素について、上記歯部の歯先厚が異なる状態で上記底面エコーと遅れエコーの時間差をそれぞれ測定して、歯先厚と時間差との相関を予め求めておき、その相関と、歯先厚を求めるために検出した上記戻りエコーと遅れエコーの時間差とに基づき、歯先厚を推定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した歯部の検査方法。
  4. 筒状部材の内径面に歯部が形成されたトルク伝達要素に対する、上記歯部の状態を外径面側から超音波探傷で検査する歯部の検査装置であって、
    径方向で上記歯部位置と重なる筒状部材の外径面位置から歯先に向けて超音波を入射し、反射して戻ってきたエコーを受信する超音波探触子と、
    上記超音波探触子が受信したエコーのうち、歯先先端面から直接反射して戻ってきた底面エコーと、遅れエコーのうち一番強度が大きな最大遅れエコーとを選別し、その底面エコーと最大遅れエコーとを受信した時間の差である時間差を求める時間差検出手段と、
    上記時間差検出手段が求めた時間差に基づき歯部の歯先厚を演算する歯先厚演算手段と、を備えることを特徴とする歯部の検査装置。
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