以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図3は、本実施形態の記録装置の一例であるインクジェット記録装置の主要部の構成を示す断面図である。記録装置は、記録媒体をベルト搬送系によって副走査方向(第1方向、所定方向、X方向)に移動させる搬送機構と、移動する記録媒体に対して記録ヘッドを用いて記録を行なう記録部とを有する。記録装置は更に、ベルトの移動状態を間接的に検出するエンコーダ133と、ベルトの移動状態を直接的に検出するダイレクトセンサ134を有する。
搬送機構は、回転体である第1ローラ202、第2ローラ203、およびこれらローラの間に所定のテンションで掛けられた移動体である幅広の搬送ベルト205を有する。記録用紙(記録媒体)206は搬送ベルト205の表面に静電力等による吸着もしくは粘着によって密着して、搬送ベルト205の移動に伴って搬送される。副走査のための駆動源である搬送モータ171の回転力は駆動ベルト172によって駆動ローラである第1ローラ202に伝達され、第1ローラ202が回転する。第1ローラ202と第2ローラ203は搬送ベルト205によって同期回転する。搬送機構は更に、トレイ208の上に積載された記録用紙(記録媒体)206を一枚ずつ分離して搬送ベルト205の上に給送するための給送ローラ209と、これを駆動する給送モータ161(図1では不図示)を有する。給送モータ161の下流(記録媒体に画像記録を行なう際の記録媒体の移動方向を基準とした下流を意味する。以下同様とする。)に設けられたペーパーエンドセンサ132は、記録媒体の搬送のタイミングを取得するために記録媒体の先端または後端を検出するものである。
ロータリ式のエンコーダ133(回転角センサ)は、第1ローラ202の回転状態を検出して、搬送ベルト205の移動状態を間接的に取得するのに用いられる。エンコーダ133はフォトインタラプタを備え、第1ローラ202と同軸に取り付けられたコードホイール204の円周に沿って刻まれている等間隔のスリットを光学的に読み取って、パルス信号を生成する。
ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の下方(記録用紙206の載置面とは反対の裏面側)に設置されている。ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の面にマーキングされた検出用パターンを含む領域を撮像するイメージセンサ(撮像デバイス)を備える。ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の移動状態を、後述する画像処理により直接的に検出するものである。搬送ベルト205に対して記録媒体206は面同士で強固に密着しているので、ベルト表面と記録媒体との間での滑りによる相対位置変動は無視できるほど小さい。そのため、ダイレクトセンサ134は記録媒体の移動状態を直接的に検出するのと等価とみなすことができる。なお、ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の裏面を撮像する形態には限定されず、搬送ベルト205の表面の記録用紙206で覆われない領域を撮像するようにしてもよい。また、ダイレクトセンサ134は、被写体として搬送ベルト205ではなく記録用紙206の表面を撮像するものであってもよい。
記録部は、主走査方向に往復移動するキャリッジ212と、これに搭載された記録ヘッド213およびインクタンク211を備えている。キャリッジ212は主走査モータ151(図1では不図示)の駆動力によって主走査方向(第2方向)に往復移動する。この移動に同期して記録ヘッド213のノズルからインクを吐出して、記録用紙206上に記録する。記録ヘッド213とインクタンク211は一体化してキャリッジ212に対して着脱されるものであっても、別体として個別にキャリッジ212に対して着脱されるものであってもよい。記録ヘッド213はインクジェット方式によりインクを吐出するものであり、その方式は発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。
なお、本実施形態では、記録ヘッドの往復移動(主走査)と記録媒体の所定量のステップ送り(副走査)とを交互に行なって二次元画像を形成する、いわゆるシリアルプリンタについて説明をした。しかしながら本発明はこのような記録装置に限定されるものではない。例えば、記録幅をカバーする長尺ライン型記録ヘッドを持ち、固定された記録ヘッドに対して記録媒体が移動して二次元画像を形成する、いわゆるラインプリンタにも適用可能である。
また、本実施形態では、インクジェット方式の記録装置について説明したが、本発明はインクジェット方式の記録装置に限定されるものではない。例えば、電子写真方式、サーマル方式、ドットインパクト方式などの様々な方式の記録装置に適用可能である。また、本実施形態での記録媒体は記録用紙を使用したが、本発明は記録用紙に限定されず、プラスチックシート、フィルム、ガラス、セラミック、樹脂等のシート状あるいは板状の媒体を使用してもよい。
図4は記録装置のシステムブロック図である。コントローラ100は、CPU101、ROM102、RAM103を有している。コントローラ100は、記録装置全体の各種制御や画像処理等を司る制御部と処理部とを兼ね備えている。情報処理装置110は、コンピュータ、デジタルカメラ、TV、携帯電話機など、記録媒体に記録するための画像データを供給する装置であり、インターフェース111を通してコントローラ100と接続される。操作部120は操作者とのユーザーインターフェースであり、電源スイッチを含む各種入力スイッチ121と表示器122を備えている。センサ部130は記録装置の各種状態を検出するためのセンサ群である。ホームポジションセンサ131は往復移動するキャリッジ212のホームポジションを検出する。センサ部130は、上述したペーパーエンドセンサ132、エンコーダ133、およびダイレクトセンサ134を備えている。これらの各センサはコントローラ100に接続されている。コントローラ100の指令に基づいて、ドライバを介して記録ヘッドや記録装置の各種モータが駆動される。ヘッドドライバ140は記録データに応じて記録ヘッド213を駆動する。モータドライバ150は主走査モータ151を駆動する。モータドライバ160は給送モータ161を駆動する。モータドライバ170は副走査のための搬送モータ171を駆動する。
図5は、ダイレクトセンシングを行なうためのダイレクトセンサ134の構成図である。ダイレクトセンサ134は、LED、OLED、半導体レーザ等の光源301を含む発光部、イメージセンサ302と屈折率分布レンズアレイ303を含む受光部を有する。更に、これら発光部と受光部と、さらに駆動回路やA/D変換回路などの回路部304を1つのセンサユニットとしたものである。光源301によって撮像対象である搬送ベルト205の裏面側の一部を照明する。イメージセンサ302は撮像光学系303を介して照明された所定の撮像領域を撮像する。イメージセンサはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの二次元エリアセンサまたはラインセンサである。イメージセンサ302の信号はA/D変換されデジタル画像データとして取り込まれる。イメージセンサ302は、搬送ベルト205の表面を撮像して異なるタイミングで複数の画像データ(連続して取得したものを、第1画像データ、第2画像データという)を取得するのに用いられる。そして後述するように、画像処理部で第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、第2画像データの中で第1画像データから切り出されたテンプレートパターンと相関が大きい領域を画像処理でサーチする。第1画像データのテンプレートパターンと相関の大きい第2画像データを検索することにより、ベルトの移動状態を求めることができる。画像処理を行なう処理部はコントローラ100であってもよいし、ダイレクトセンサ134のユニットに処理部を内蔵するようにしてもよい。
図6は、記録媒体の給送、記録、排出の一連の動作シーケンスを示すフローチャートである。これらの動作シーケンスはコントローラ100の指令に基づいてなされる。まず、給送モータ161を駆動して給送ローラ209によりトレイ208上の記録媒体206を1枚ずつ分離して搬送経路に沿って給送する(ステップS501)。ペーパーエンドセンサ132が給送中の記録媒体206の先頭を検出すると、この検出タイミングに基づいて記録媒体の頭出し動作を行ない記録開始位置まで搬送する。
次に、搬送ベルト205を用いて記録媒体を所定量ずつステップ送りする(ステップS502)。所定量とは1バンド(記録ヘッドの1回の主走査)の記録における副走査方向の長さである。例えば、記録ヘッド213の副走査方向におけるノズル列幅の半分ずつ送りながら2回ずつ重ねてマルチパス記録を行なう場合は、所定量はノズル列幅の半分の長さとなる。
次に、キャリッジ212によって記録ヘッド213を主走査方向に移動させながら、1バンド分の記録を行なう(ステップS503)。そして、すべての記録データの記録が終了したかを判断する(ステップS504)。未記録のデータがある場合(NO)は、ステップS502に戻って副走査のステップ送りと主走査の1分の記録を繰り返す。全ての記録が終了したら、記録媒体206を記録部から排出する(ステップS505)。こうして1枚の記録媒体206に画像が形成される。
図7のフローチャートを用いて、図6のステップS502で説明した記録媒体を搬送する搬送機構の動作シーケンスについて詳細に説明する。
まず、ダイレクトセンサ134のイメージセンサで搬送ベルト205の検出用パターンを含む領域を撮像する(ステップS601)。取得した画像データは、移動開始前の搬送ベルトの位置を示すものであり、RAM103に記憶される。次に、エンコーダ133でローラ202の回転状態をモニタしながら搬送モータ171を駆動して搬送ベルト205の移動、すなわち記録媒体206の搬送制御を開始する(ステップS602)。目標とする搬送量だけ記録媒体206を搬送するようにコントローラ100がサーボ制御を行う。このエンコーダを用いた搬送制御と並行して、ダイレクトセンサを用いた搬送制御の処理実行を行なう(ステップS603からステップS607)。
ダイレクトセンサを用いた搬送制御の処理実行では、まずダイレクトセンサ134でベルトを撮像する(ステップS603)。撮像のタイミングについては、1バンド分の記録をするための目標とする記録媒体搬送量(以後、目標搬送量という。)、イメージセンサの第1方向における幅、および移動速度などによって予め決められた搬送量を搬送したと推定されるタイミングで撮像する。本実施形態では、予め決められた搬送量を搬送した時点でエンコーダ133が検出するであろうコードホイール204の特定のスリットを指定しておき、そのスリットをエンコーダ133が検出したタイミングで撮像を開始する。このステップS603の更なる詳細については後述する。
次に、直前にステップS603で撮像した第2画像データと、そのひとつ前に撮像した第1画像データとの間で、どれだけの距離を搬送ベルト205が移動したかを画像処理により検出する(ステップS604)。これを目標搬送量に応じて決められた回数を、所定のインターバルで撮像を行なう(ステップS605)。ここで、「第1画像データ」および「第2画像データ」とは、最初にステップS604の画像による検出を行なう場合には、第1画像データはステップS601で撮像した画像データであり、第2画像データは最初にステップS603で撮像した画像データである。次にステップS604の画像による検出を行なう場合には、第1画像データは1つ前の画像による検出に使用した第2画像データを使用し、第2画像データは2回目にステップS603で撮像した画像データを使用する。すなわち、第2回目以降の画像による検出は、1回前に画像による検出で使用した第2画像データが第1画像データとして、直前のステップS603で撮像された画像データが第2画像データとして使用される。移動量検出処理の詳細については後述する。
決められた回数の撮像を終了したか否かを判断する(ステップS605)。終了してない場合(NO)はステップS603に戻って終了するまで処理を繰り返す。決められた回数だけ繰返し搬送量を検出する毎に搬送量を累計して、最初にステップS601で撮像したタイミングからの1バンド分の搬送量を求める。
決められた回数の撮影を終了したら、1バンド分の、ダイレクトセンサ134で取得した搬送量とエンコーダ133から取得した搬送量の差分を計算する(ステップS606)。エンコーダ133は間接的な搬送量の検出であり、ダイレクトセンサ134による直接的な搬送量の検出に較べて検出精度に劣る。従って、上述の差分はエンコーダ133の検出誤差とみなすことができる。
最後に、ステップS606で求めたエンコーダの誤差分だけ搬送制御に補正を与える(ステップS607)。補正には、搬送制御の現在の位置情報を誤差分だけ増減して補正する方法、目標搬送量を誤差分だけ増減して補正する方法があり、いずれの方法を採用してもよい。このようにして、フィードバック制御により目標搬送量まで記録媒体206を正確に搬送して1バンド分の搬送が完了する。
次に図8から図10を用いて、図7のステップS604の画像処理を詳細に説明する。本実施形態の画像処理部での画像処理の処理内容は(1)類似度判定、(2)画素補間処理の2つの工程からなる。
(1)類似度判定
図8は、ダイレクトセンサ134の撮像で取得された搬送ベルト205の第1画像データ700および第2画像データ701を示す模式図である。第1画像データ700、第2画像データ701の中に黒点で示される多数の孤立点702(明暗の階調差がある点部分)は、搬送ベルト205に後述する規則に基づいて付与された孤立点の像である。第1画像データ700に対して、上流(記録媒体に画像記録を行なう際の記録媒体の移動方向を基準とした上流意味する。以下同様とする。)側の位置にテンプレート領域を設定して、この部分の画像をテンプレートパターン703として切り出す。第2画像データ701を取得すると、切り出したテンプレートパターン703と類似のパターンが、第2画像データ701のサーチ領域内のどこに位置するかをサーチする。
サーチはパターンマッチングの手法により行なう。類似度を判定するアルゴリズムは、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、NCC(Normalized Cross−Correlation)等が知られている。本発明ではいずれを採用してもよい。
なお、サーチ範囲は、エンコーダ133の情報により、移動後のテンプレート画像の存在が推定される領域に限定されているため、周囲に周期的類似パターンが存在しても、その類似パターンを検出することはない。
本実施形態では、最も類似するパターンが領域704に位置している。第1画像データ700におけるテンプレートパターン703と第2画像データ701における領域704との副走査方向における撮像デバイスの画素数の差分を求める。そして、この差分画素数に画素ピッチを掛けることで、この間の移動量(搬送量)を求めることができる。
ここで図9を用いて、類似度判定について画素レベルでの説明を行う。図中のマス目は画素を示し、マス目の中の数字は画素信号値を示している。説明簡略化のためにここでは2値画像とし、類似度計算はSADで行っている。SADは次の式で表され、2つの画像F、Gの画素信号値の差分絶対値和であり、その和が小さいほど類似度が高い。
例えば、第一画像3400からテンプレート画像3401を切り出し、別の時間に撮像した第二画像3402内から存在位置をスキャンすることで、テンプレート画像がどれだけ移動したかを検出する場合について説明する。
テンプレート画像3401の位置と、実際の位置を示す第二画像3402に着目する。本図によれば、テンプレート画像は3px=30umだけX方向に移動していることがわかる。テンプレート画像3401が第二画像3402内をSADによりスキャンしていく様子を3403〜3409で示している。そして各スキャン位置でのSADの計算過程の各pxにおける差分絶対値を3410〜3416で示し、それらの和である各スキャン位置におけるSsadの演算結果を3417〜3423に示している。
これらの各スキャン位置でのSAD演算結果を図10(a)の表とグラフに示す。本図によればX方向スキャン位置が3pxの位置でSADが最小値であることがわかる。つまり、テンプレート画像3401の移動量はX方向に+3px分動いた位置と判明する。更にここで1画素ピッチが10umだとすると、3(px)×10um=30umがテンプレート画像3401の移動量として算出される。
(2)画素補間処理
上記類似度判定の処理では検出分解能は画素ピッチ単位となり、分解能として不十分な場合がある。そこで画素ピッチ以上の解像度を実現するために、画素補間処理を行う。そのために(1)の類似度判定における各サーチ位置での類似度を任意の関数でフィッティングする。3次関数による画素補間を行った曲線を図10(a)の曲線3509に示す。補間後の曲線によれば、類似度が最も高い(SSadが最小値)ポイントは、X方向スキャン位置が3pxの位置であることがわかる。従って1画素ピッチが10umだとすると、3(px)×10um=30umの移動と計算される。この結果は、実際の移動量である3px=30umと一致する。
ここで、仮に図10(b)で示すような各px位置での類似度の結果であっても、画素補間処理によりピーク位置が2.5(px)と検出され、その結果が画素ピッチより細かい数値となる。この場合、2.5(px)×10(um)=25umの移動と計算され、結果、画素ピッチ以上の解像度で検出が画素補間処理により可能になっていることがわかる。
図11(a)は、本実施形態の移動体であるエンドレス状の搬送ベルト205の周の一部を切り出し、その切り出したうちの内面側の模式図を示している。ベルト内面でイメージセンサと対向する領域には、光学的に識別可能な検出用パターン290がマーキングされている。検出用パターン290は、搬送方向(X方向)に沿ってベルト全周に渡って形成されている。検出用パターンは以下の(1)〜(6)のいずれかの方法又はこれら方法の任意の組み合わせでマーキングされたものが使用できるが、パターンのコントラストが十分に得られるのであれば、別の手段で形成されたものでも良い。
(1)搬送ベルトに塗料で直接描画
(2)パターニングを施したシールを搬送ベルトに貼り付け
(3)搬送ベルト表面に凹凸を形成
(4)搬送ベルト表面の塗膜面を削って形成
(5)搬送ベルトの素材にレーザマーキング
(6)透過性の搬送ベルトの内面に不透過パターンを形成
図11(b)は検出用パターン290の拡大図である。検出用パターン290は搬送方向(X方向)に沿って細長い形状で搬送ベルト205内面に沿って周状となっている。検出用パターン290の幅方向サイズはイメージセンサの撮像領域の幅以上であることが望ましい。
なお本実施形態においては、屈折率分布レンズアレイの直径は300umであり、画像センサの画素ピッチは10umとする。一般に画素ピッチは小さいほど検出分解能は高く、μmレベルの検出分解能をもたせるには一桁〜30um程度の画素ピッチが選択され、そのサイズは屈折率分布型レンズアレイの直径に対して小さいものが一般的である。
検出用パターン290を構成する孤立点は、センサ上に結像される孤立点が屈折率分布型レッズアレイのレンズの径に応じた周期性の半周期の位相差でズレ量が検出されるように、一の孤立点と他の孤立点とが配置される。以下、このような孤立点の組み合わせを「対称的特性をもつ孤立点」ともいう。以下に詳しく説明する。
図12(a)は、本実施形態の孤立点配置パターンを示している。孤立点は、レンズの径に応じた周期性の半周期の位相差でズレ量が検出されるように配置される。ここで、孤立点の位置が半周期の位相差でズレ量が検出されるように配置されることについて説明をする。
図12(b)は、検出用パターンの孤立点の位置とその孤立点がセンサ上に結像する位置を示した図である。テンプレート内の位置Cの孤立点が、A位置から+X方向へ150umずれて配置されている。屈折率分布型レンズアレイの端部においては、隣接するレンズアレイと影響し合うことで、結果的に収差による位置ズレが小さくなり、実際の孤立点の位置とセンサ上の結像位置がほぼ一致している。また、レンズ中央部でも収差によるズレの影響はほとんど受けず、実際の孤立点の位置とセンサ上の結像位置がほぼ一致している。1601は取得したテンプレート画像である。
次に、図12(c)では、位置AからX17(825um)+X方向に移動したD位置にある孤立点の検出を説明する。移動後の孤立点の結像位置は、収差の影響を受け実際の位置からΔD17(4.25um)−X方向にずれた位置になる。このため画像処理によりテンプレート画像1601の位置を検出すると、その検出量D17は、実際の移動量X17と比較してΔD17(4.25um)−X方向ずれる。また、位置AからX方向にX10(825um)移動した位置Bの孤立点のセンサ上に結像する位置B´は、レンズの中央直下からΔD10(+4.25um)+X方向にずれた位置になる。
図13(a)から(c)は、屈折率分布型レンズアレイを適用して連続的に孤立点の移動量検出を行なったときの検出ズレ量の測定結果を示したグラフである。図13(a)は、孤立点がA位置からB位置に移動するときの検出ズレ量を測定したグラフである。また、図13(b)は孤立点がB位置からD位置に移動するときの検出ズレ量を測定したグラフである。これらは、レンズの径に応じた周期的特性を示すずれが発生しているのがわかる。そして、図13(a)と図13(b)のグラフを重ね合わせると、図13(c)のグラフになる。本図を参照するに、線(a)は孤立点がA位置でズレ量が0で搬送方向に位置を変えていくと、ズレ量が−、すなわち搬送方向と反対方向にズレ量が大きくなっていく。ズレ量が最大になると、ズレ量は0に近づき、再びズレ量が0になる。さらに搬送方向に位置を変えていくと、ズレ量が+、すなわち搬送方向にずれ量が大きくなっていく。ズレ量が最大になると、ズレ量は0に近づき、再びズレ量が0になる。線(a)はこれを1周期として繰り返される。一方、線(b)は、孤立点がC位置でズレ量が0で搬送方向に位置を変えていくと、ズレ量が+、すなわち搬送方向にズレ量が大きくなっていく。ズレ量が最大になると、ズレ量は0に近づき、再びズレ量が0になる。さらに搬送方向に位置を変えていくと、ズレ量が−、すなわち搬送方向と反対方向にずれ量が大きくなっていく。ズレ量が最大になると、ズレ量は0に近づき、再びズレ量が0になる。線(b)はこれを1周期として繰り返される。このように、A位置の孤立点とC位置の孤立点との屈折率分布型レンズアレイで撮像されたズレ量はお互いに半周期ずれた位置になる関係を有している。本実施形態では、それぞれの検出ズレ量の特性は、150umずれた周期性を持っている。
このように、屈折率分布型レンズアレイで撮像された孤立点の結像位置は、実際の孤立点の位置と周期的に生ずるズレ量分ずれることがわかる。したがって、2つの孤立点から成る1組の孤立点は、屈折率分布型レンズアレイにより撮像すると、検出量ズレが対象に現れる。そして、テンプレート画像と類似する領域を検出する一連の画像処理により、最も近しい画像を選択するために検出位置は実際の孤立点とほぼ等しい位置が選択される。すなわち、一の孤立点と他の孤立点の屈折率分布型レンズアレイで撮像された結像位置が、屈折率分布型レンズアレイのレンズの径に応じた検出量ズレの周期性の半周期の位相差でお互いずれた位置になるように、検出用パターン上の一の孤立点と他の孤立点の位置が定められている。このような位置関係を有する孤立点は、後述する画像処理により互いのズレ影響を打ち消しあうように、検出用パターン上の孤立点の位置に近しい位置を選択することができるのである。
ここで図14および図15を用いて、実際の孤立点の存在位置に近しい位置を画像処理により選択できることについて説明をする。ここでは、第一画像3700中から取得したテンプレート画像3701が、対称的特性による結像位置ズレが発生した第二画像3702においてサーチされた場合に、実際の位置3724への移動量と等しい量が検出できている例を示す。
テンプレート画像3701の位置と、実際の位置3724に着目する。本図によれば、テンプレート画像は3px、X方向に移動していることがわかる。実際の位置3724と第二画像に着目する。本図によれば、実際の孤立点位置がレンズの収差による結像位置ズレの影響を受けて、それぞれ1pxずつ寄る方向に結像されている。テンプレート画像3701を第二画像3702内でSADによりスキャンしていく様子を3703〜3709で示す。SADの計算過程の各pxにおける差分絶対値を3710〜3716で示し、それらの和である各スキャン位置におけるSADの演算結果を3717〜3723に示す。
これらの各スキャン位置でのSAD演算結果を図15の表とグラフに示す。更にグラフ中には、3次関数による画素補間を行った曲線を示す。補間後の曲線によれば、類似度が最も高い(SSadが最小値)ポイントは、X方向スキャン位置が3pxの位置であることがわかる。この結果は、実際の移動量である3pxと一致する。つまり、結像位置ズレが対称的特性を有する画像における検出であれば、実際の位置に近しい位置を検出できるのである。
補足として、図16(a)および(b)を用いて、他移動量の場合について同様の効果が得られることを確認する。
16(a)は、位置Aおよび位置CからX20(900um)+X方向の位置Eおよび位置Fに孤立点が移動した場合の、実際の孤立点位置と結像位置の関係を示す。X20移動後の位置では、孤立点がレンズ中央部と端部位置に存在し、収差による結像位置ズレの影響が小さい。その結果、検出量D20は実際の孤立点の移動量と等しい位置が選択される。
図16(b)は、位置Aおよび位置CからX21(975um)+X方向の位置Dおよび位置Gに孤立点が移動した場合の、実際の孤立点位置と結像位置の関係を示す。X21の位置では、各孤立点が収差の影響を受け、それぞれΔX2101(4.25um)−X方向に,ΔX2102(4.25um)+X方向に結像位置がズレる。しかし画像処理においては類似度判定および画素補間処理により最も近しい画像を選択するために、検出位置は実際の孤立点とほぼ等しい位置が選択される。対照的特性をもつ孤立点によれば、その結像位置ズレの方向が対称的であるために、互いのズレ影響を打ち消しあうように、実際の孤立点の存在位置に近しい位置を画像処理により選択することができる。
以上説明したように、屈折率分布型レンズアレイの収差による結像位置ズレ量が対称的特性を持つ位置に孤立点を配置することにより、屈折率分布型レンズアレイの収差によるダイレクトセンシングの検出結果のズレを低減することができる。
なお、本実施形態では検出されるズレ量の周期は、屈折率分布型レンズアレイのレンズ系に応じたものについて説明をしたが、ズレ量の周期はレンズ系に応じたものに限定されるものではない。例えば、ズレ量が一定の周期をもって一の孤立点の結像と他の孤立点の結像が左右対称にズレるものでもよく、そのために、レンズの屈折率分率に応じた周期であってもよい。
また、本実施形態では屈折率分布型レンズアレイへの適用による説明を行ったが、本発明はこのようなレンズに限定されるものではない。すなわち、別のレンズ系においても、結像位置ズレ特性が対称的特性となるパターンであれば、本発明の適用は可能である。
また、本発明は、記録装置を始めとした物体の移動を高精度に検出することが要求される移動検出の分野に広く渡る。例えば、スキャナ等の機器や、物体を搬送して検査、読取、加工、マーキング等の各種の処理を施す、工業分野、産業分野、物流分野などで使用する機器に適用可能である。
(実施形態2)
実施形態1では、屈折率分布型レンズアレイの収差による結像位置ズレ量が対称的特性を持つ位置に孤立点の組は2つの孤立点から成り、1の孤立点と他の孤立点との間は、屈折率分布型レンズアレイの直径よりも短いものであった。しかしながら、本発明は孤立点が2以上含まれていても、孤立点間が屈折率分布型レンズアレイの直径より大きいものであってもよい。
図17(a)、(d)および図18(a)、(b)は、本実施形態の孤立点の配置パターンを示す図である。
図17(a)は、テンプレート内に、対称的特性をもつ孤立点の組み合わせが複数含まれている。このように、孤立点数を増やすことにより画像情報が増えるため、画像処理の精度向上を得られる。さらに、図17(b)は、テンプレート内に対称的特性をもつ孤立点の組み合わせと、それ以外の孤立点が混在する配置パターンを示す図である。
図18(a)は、対称的特性をもつ孤立点の組み合わせのうち、一の孤立点と他の孤立点とが、他の屈折率分布型レンズアレイに渡ってテンプレート内に孤立点が存在している配置パターンを示している。適宜、孤立点の距離を離すことで移動中の撮像で発生する像伸びした孤立点像が同様に像伸びした隣接する孤立点像と干渉することを防ぎ、検出精度劣化を防ぐ効果を得られる。さらに、図18(b)は、搬送方向および搬送方向の垂直方向に孤立点が配置されたパターンを示す図である。Y方向に複数列パターンを設けて配置されている。その場合、Y方向にも対称的特性をもつ孤立点の組み合わせを実現する孤立点配置間隔があるならば、Y方向に関してもX方向と同様の考え方で孤立点を配置すればX,Y方向共に検出量ズレの低減効果も得ることができる。
(実施形態3)
実施形態1および2で説明した孤立点の位置は、テンプレート取得時の収差による影響が小さい位置であった。しかしながら本発明は、テンプレート取得時において孤立点の結像位置が収差の影響によりズレが生じている場合であってもよい。
図19は,テンプレート取得時の孤立点の結像位置が収差の影響によりズレている場合の模式図を示している。それぞれX方向の上流側の孤立点は、ΔT2801だけ+X方向へ、下流側の孤立点はΔT2802だけ−X方向に結像位置がずれている。この状態で取得したテンプレート画像は2803である。
続いて、X2801+X方向に孤立点が移動した場合の孤立点の位置とその結像位置をX方向の下流側に示す。孤立点は収差の影響を受け、実際の位置からそれぞれΔD2801だけ+X方向へ、ΔD2802だけ−X方向にずれる。この結像画像に対してテンプレート画像2803の捜索を行うと、D2801の位置に検索され、移動量であるX2801と等しい結果を得ることができる。テンプレート画像の孤立点の結像位置ズレ特性も対照的特性をもつために、結果的に互いのズレ影響を打ち消しあうようにして、実際の孤立点の存在位置に近しい位置を画像処理により選択することができる。
(実施形態4)
本実施形態では、対称的特性をもつ孤立点の組み合わせが、複数のテンプレート内に存在する場合について説明する。つまり、本発明では1組の孤立点が、1以上のテンプレート画像に含まれていればよい。
図20(a)は、本実施形態の孤立点の位置関係を示す模式図である。テンプレート画像2901と、テンプレート画像2902に存在する孤立点が、対称的特性をもつ孤立点の組み合わせになっている。実際の孤立点の位置はレンズの中央と端部に存在し、レンズ収差によるズレの影響が小さいために、実際の孤立点の位置とセンサ上の結像位置がほぼ一致している。
続いてX3001(825um)+X方向に孤立点が移動した場合の実際の孤立点位置と結像位置の関係を示す。X3001移動後の位置では、各孤立点が収差の影響を受け、それぞれΔD3001(4.25um)+X方向、ΔD3002(4.25um)−X方向に実際の位置と結像位置のずれを生じる。この状態においてテンプレート2901、テンプレート2902による移動量検出結果は、それぞれD3001、D3002となり実際の位置とのズレはΔD3001(4.25um)+X方向、ΔD3002(4.25um)−X方向にズレる。ここで対称的特性をもつ孤立点の組み合わせの特性から、ΔD3001,ΔD3002の絶対量は等しくズレ方向は反対であることから、それぞれの検出量を組み合わせることで検出ズレ量を低減できる。例えば両方のテンプレートの検出結果の平均をとることで、単独のテンプレートで発生していた検出ズレ量を低減することができる。具体的には、(D3001+D3002)/2={(X3001+ΔD3001)+(X3001−ΔD3002)}/2≒X3001 (∵Δ3001=Δ3002)である。
テンプレート2901、テンプレート2902による移動量検出ズレを連続的に測定すると、それぞれ図20(b)、図20(c)となりズレ量の最大値は約5um程度である。一方、それぞれの平均値をとった場合の検出ズレ量は図20(d)となりズレ量の最大値は約1.4umとなり、単独のテンプレートによる検出時と比較して大きく低減する。以上で示したように、複数のテンプレート内に含まれている孤立点が、対照的特性をもつ孤立点の組み合わせとなれば互いの移動量検出結果を組み合わせることでズレ影響を打ち消しあい、ズレ量の少ない移動量検出が可能になる。
(実施形態5)
実施形態4では、テンプレート取得時における孤立点の位置は、収差による影響が小さい位置であった。しかしながら本実施形態では、テンプレート取得時に孤立点の結像位置が収差の影響によりズレが生じている場合でも、本発明の効果が得られることを説明する。
図21は、本実施形態の孤立点の位置関係を示す模式図である。孤立点の結像位置が収差の影響によりズレている。X方向の上流側の孤立点はΔT3201+X方向へずれている。そのため搬送量検出時に検出結果が短くなる影響及ぼす。一方、X方向の下流側の孤立点はΔ3202−X方向に結像位置がずれている。そのため、搬送量検出時に検出結果が長くなる影響を及ぼす。この状態で取得したテンプレート画像は3201、3202である。
続いて、X方向の上流側の孤立点はΔD3301+X方向へずれている。そのため、搬送量検出時に検出結果が長くなる影響及ぼす。一方、X方向の下流側の孤立点はΔD3302−X方向に結像位置がずれている。そのため、搬送量検出時に検出結果が短くなる影響を及ぼす。ここで、テンプレート画像3201による検出結果は、テンプレート取得時に検出結果が短くなる影響、移動後の位置においては、検出結果が長くなる影響を受ける。一方でテンプレート画像3202による検出結果は、テンプレート取得時に検出結果が長くなる影響、移動後の位置においては、検出結果が短くなる影響を受ける。つまり上流側テンプレートと下流側テンプレートが受ける影響は、ズレる方向が対称的であることがわかる。その結果、両者のテンプレートによる検出値を組み合わせることで、ズレをキャンセルし合い結像位置ズレによる影響を低減した検出結果を得ることができる。
なお、対称的特性をもつ孤立点の組み合わせが、他ロッドレンズアレイに渡った孤立点により存在してもよいし、対称的特性をもつ孤立点の組み合わせが複数含まれていてもよい。また、対称的特性をもつ孤立点ペアとそれ以外の孤立点が混在する場合であってもよいし、Y方向に複数列パターンを設けてもよい。その際にY方向にも対称的特性をもつ孤立点の組み合わせを実現する孤立点配置間隔があるならば、Y方向に関してもX方向と同様の考え方で孤立点を配置すればX,Y方向共に検出量ズレの低減効果も得られる。
(その他)
上述した実施形態では、記録装置について説明した。しかしながら本発明は、記録媒体を搬送するための搬送装置であってもよい。本発明の搬送装置は、上述の実施形態で説明した記録媒体を搬送する搬送機構とダイレクトセンサと画像処理部とを備えているものである。
また、上述した実施形態では、記録媒体を搬送する搬送装置について説明したが、本発明は記録媒体を搬送する搬送装置に限定されるものではない。本発明の搬送装置は一般的な物を搬送する搬送装置であっても適用することができる。