JP2010247468A - シート搬送装置及びプリンタ - Google Patents
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Abstract
【課題】 搬送ローラの部分的な偏芯状態の変化の影響を小さくし、プリント品質を従来以上に向上させる。
【解決手段】 ローラを含む機構によってシートを第1方向に搬送する搬送機構と、前記シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサと、前記第1方向と交差する第2方向において、前記センサの検出位置を可変とする手段と、前記第2方向に沿った前記ローラの部分的な偏芯に関する情報に基づいて設定された前記第2方向における前記検出位置において、前記センサによって前記シートの移動情報を検出するように制御する制御部を有する。
【選択図】 図2
【解決手段】 ローラを含む機構によってシートを第1方向に搬送する搬送機構と、前記シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサと、前記第1方向と交差する第2方向において、前記センサの検出位置を可変とする手段と、前記第2方向に沿った前記ローラの部分的な偏芯に関する情報に基づいて設定された前記第2方向における前記検出位置において、前記センサによって前記シートの移動情報を検出するように制御する制御部を有する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、プリンタに好適に用いられるシート搬送装置の技術分野に関する。
プリンタのプリント品質に対する要求は厳しくさらなる精度向上が望まれている。そこで、シートの移動を高精度に検出して、フィードバック制御により安定した搬送を実現するために、イメージセンサによってシートの表面を撮像して、搬送されるシートの移動を画像処理によって検出する試みがなされている。
特許文献1はこのシートの移動検出についての手法を開示する。これは、移動するシートの表面をイメージセンサにより時系列に複数回撮像し、得られた複数の画像同士をパターンマッチング処理で比較して、画像のずれ量からシートの移動量を検出するものである。このように、シートを撮像して画像データを取得し画像処理によってシートの移動を直接検出するタイプのセンサを、以下、ダイレクトセンサと呼ぶ。
例えば大判ロールシートを使用するプリンタの場合、シート搬送用のローラにはロールシートの幅以上の長さ(例えばB0サイズ幅に対応する場合1030mm以上)に渡る長軸のローラが必要である。しかし、長軸になるほど、軸方向に渡ってすべて偏芯(シャフト中心からローラ外周までの半径のムラ)なくローラを製作することは困難である。そのため、軸方向に沿ってローラの偏芯量や偏芯方向が微妙に変化して、箇所によって偏芯状態が部分的に異なったものとなる。ローラ偏芯量が異なる部分同士を比較すると、ローラを所定角度回転させたときのシート搬送量が異なり、またローラが一回転する際の搬送速度(ローラ外周の周速度)のムラも異なる。ここでは、軸方向において、ローラ端部の偏芯量が最小、ローラ中央部の偏芯量が最大である搬送ローラを想定する。このようなローラにおいて、ダイレクトセンサをローラ端部の近傍に配置すると、検出される移動量はローラ中央部での実際の搬送量を正確に反映したものとはならない。その結果、ローラ中央近傍でのプリント品質の低下につながる。
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、従来の装置のさらなる改良を目的とする。本発明のより具体的な目的は、軸方向での搬送ローラの部分的な偏芯状態の変化の影響を小さくすることができ、精度の高い精度の高い搬送情報の検出を行なえることができるシート搬送装置の提供である。本発明の別の目的は、上記シート搬送装置を用いることでプリント品質を従来以上に向上させることができるプリンタの提供である。
上記課題を解決する本発明のシート搬送装置は、ローラを含む機構によってシートを第1方向に搬送する搬送機構と、前記シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサと、前記第1方向と交差する第2方向において、前記センサの検出位置を可変とする手段と、前記第2方向に沿った前記ローラの部分的な偏芯に関する情報に基づいて設定された前記第2方向における前記検出位置において、前記センサによって前記シートの移動情報を検出するように制御する制御部を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、センサの検出位置を可変として最適な検出位置を設定するので、精度のよい検出を行なうことができる。その結果、プリント品質を従来以上に向上させることができる。また、種々のシートサイズに対応して精度のよいプリントを行なうことができる。
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示する。ただし、例示する実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する主旨のものではない。
本発明の適用範囲は、プリンタを始めとして、シート状の物体の移動を高精度に検出することが要求される移動検出の分野に広く渡る。例えば、プリンタ、スキャナ等の機器や、物体を搬送して処理部において検査、読取、加工、マーキング等の各種の処理を施す、工業分野、産業分野、物流分野などで使用する機器に適用可能である。本発明をプリンタに適用する場合、単機能のプリンタはもとより、複写機能や画像スキャン機能等を併せ持った複合機いわゆるマルチファンクションプリンタにも適用可能である。プリント方式はインクジェット方式、電子写真方式、熱転写方式などさまざまな方式にも適用可能である。インクジェット方式の場合は、発熱体を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式など、さまざまな方式を用いることができる。また、なお、本明細書において、シートとは、紙、プラスチックシート、フィルム、ガラス、セラミック、樹脂等のシート状あるいは板状の物体をいう。
図1は本実施形態のインクジェットプリンタの内部構成を示す断面図である。図2は装置内を右前方から見た斜視図、図3は装置内を右後方から見た斜視図である。本実施形態では、最大でA2幅のロール状のシート(ロールシート)とカットシートを使い分けてプリントするものである。装置は、上カバー2、後カバー3、下カバー9からなる外装部によって覆われている。給紙部100は積層されたカットシートを1枚ずつ取り出して給送する。給紙部200はロール状に巻回された長尺のシート(ロールシート)を巻出しながら給送する。各給紙部から給送されたシートは、搬送ローラ16を含む搬送手段により、画像をプリントするプリント部300を通して搬送される。プリント部300は搬送ローラ16で搬送されるシートに対し、プリントヘッド42により画像をプリントする。プリントヘッドはインクジェット方式でシートに対してインクを吐出するものである。プリントされたシートは排出口65から排出される。プリントヘッド42と対向する位置には、シートを支持するプラテン33が配設されている。プラテン33の搬送方向の下流側には下流プラテン34が配されている。下流プラテン34のさらに下流側には、排出ローラ18及び拍車19からなる排出機構が設けられている。制御部90はCPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを備え、装置全体の動作制御を司る。
カットシートにプリントするときの流れについて説明する。カセット1内に積載されたカットシートは、給送ローラにより1枚ずつ分離されて送り出される。そして、中間ローラ14とピンチローラ15のニップへ送り込まれ、中間ローラ14の回転により搬送されて搬送ローラ16とピンチローラ17のニップに突き当たる。そこで、搬送ローラ16を回転させ、シートをプリント部300のプリント開始位置まで搬送する。インクを吐出するプリントヘッド42は、シートの幅方向に往復移動可能なキャリッジ41に搭載されている。キャリッジ41は、キャリッジモータにより、シート幅方向に延びるガイドシャフト43及びガイドレールに沿って往復移動させられる。キャリッジ41の移動(主走査)による1ライン分(1バンド分)のプリントと所定ピッチの搬送(副走査)を交互に繰り返しながらカットシートの全体のプリントが行われる。カットシートの先端はプリント部300内をある距離だけ搬送されたところで排出ローラ18と拍車19のニップに送り込まれ、排出口65から装置外へ送り出され、排出トレイ4に載置される。
ロールシートにプリントするときの流れについて説明する。ロールシート5は、ユーザによってロールシートセット部6にセットされる。セットされたロールシート5は、その先端が離間した中間ローラ14とピンチローラ15の間を通過するまで、ユーザによってロールシートガイド7を通して送り込まれる。ロールシートガイド7には、送り込まれるロールシート先端が容易に通過するように、回転自在なガイドコロ8が複数箇所に配されている。ロールシートガイド7の搬送下流側であって、カットシート搬送パス(Uターン搬送パス)との合流点付近にジャムセンサ21が配されている。共通の中間ローラ14及びピンチローラ15はジャムセンサ21の搬送下流側に配されている。ロールシートの先端部が送り込まれたことはジャムセンサ21によって検知される。ロールシートの給送が検知されると、ピンチローラ15を中間ローラ14に圧接するとともに、中間ローラ14を回転駆動することによりロールシートを搬送する。さらに、送り出されたロールシートSは、搬送ローラ16の回転によりプリント開始位置まで搬送される。中間ローラ14の搬送下流側にはシートの先端及び後端を検知するエッジセンサ22が配置されており、シート(カットシートも含む)が搬送されてきたことが検知される。また、中間ローラ14と搬送ローラ16との間にはシートの幅を検知するためのシート幅センサ20が配置されている。シート幅センサ20によって、搬送されてきたシートの幅がA4幅以下、A4幅〜A3幅、A3幅〜A2幅のいずれであるかを検出する。プリント部300においては、ロールシート5から巻出された連続シートSに対しても、キャリッジ41に搭載されたプリントヘッド42により、上述のカットシートの場合と同様の動作でプリントが行われる。
図2、図3はプリント部の周囲の構成を示す。プリントヘッド42を搭載したキャリッジ41はガイドシャフト43及びガイドレールに沿って矢印H方向に往復移動可能に案内支持されている。キャリッジ41の往復移動は、キャリッジモータにより、プーリ45を回って張架されたタイミングベルト46を介して行われる。キャリッジ41の側面にはシートの搬送量検出に使用されるダイレクトセンサ700が取り付けられており、キャリッジ41の移動によってダイレクトセンサ700も主走査方向に移動する。プリント動作中のシートの搬送及び排出は搬送モータにより同期駆動される中間ローラ14、搬送ローラ16及び排出ローラ18を備えた搬送手段により行われる。プラテン33には、搬送されるシートSをプラテン面に吸着させることでプリントヘッド42に対するプリント面の位置を規制するための吸引手段500が設けられている。装置本体の電気回路からプリントヘッド42への信号の送信及び電力の供給は、フレキシブルケーブル47によって行われる。キャリッジ41にはキャリッジエンコーダ48が取り付けられ、装置本体側にはスケール49が張設されている。キャリッジエンコーダ48でスケール49を読み取ることにより、プリントヘッド42の主走査方向の位置及び速度が検出される。搬送ローラ16の端部には、円周状に多数のスリットが形成されたスケール81が取り付けられ、スケール81のスリットを読み取る位置にロータリエンコーダ82が取り付けられている。ロータリエンコーダ82でスリットを読み取るごとにパルス信号が出力され、搬送ローラ16の回転(回転量、回転角度)が検出される。キャリッジ41の側面には、ダイレクトセンサ700が取り付けられている。ダイレクトセンサ700は、検出位置においてシートの局所的な一部を撮像して画像データを取得し、画像処理によってシートの移動情報を取得するものである。つまり、ダイレクトセンサ700は、シート自体の画像情報を直接取得して、シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサである。
以下、ダイレクトセンサ700の構成について説明する。図4はダイレクトセンサ700の光学部の構成図、図5は電気ブロック図である。図4において、ダイレクトセンサ700は、発光素子71、レンズ72、撮像素子73を有しセンサユニットとして一体化されている。図5において、撮像素子73で受光した信号はA/Dコンバータ74でデジタル信号に変換して、インターフェース75を介して、装置の制御部90に送られる。制御部90による発光の制御信号は、インターフェース75を介して発光素子71に伝えられる。発光素子71はLED、OLED、半導体レーザなど半導体光源である。撮像素子73は二次元に配列された画素を備えたCCDやCMOS構造のイメージセンサである。例えば、10μm×10μmの画素が二次元に配列されている。
図6はダイレクトセンサ700とシートSの位置関係を示す図である。図中Gの矢印は、シートSの搬送方向(第1方向)を示す。ダイレクトセンサ700はキャリッジ41に搭載されており、キャリッジモータの駆動により、主走査方向(第2方向)に移動可能な構成となっている。ダイレクトセンサ700は、第2方向に沿った任意の位置で画像の取得が可能である。つまり、キャリッジ41は、第2方向においてダイレクトセンサ700の検出位置を可変とする手段としての役割も持っている。キャリッジ41が図6の位置に有るときは、ダイレクトセンサ700は、シートS上の検出位置(読取エリア701)での画像を取得する。
ダイレクトセンサ700を用いたシートSの移動情報(移動量や移動速度)の検出方法について説明する。図7は時系列の異なるタイミングにおけるシート上の検出位置を示す図、図8はプリント動作におけるシートの移動検出と搬送制御のシーケンスを示すフローチャート図である。本例のプリンタは、所定ピッチのステップ送りによるシート搬送(副走査)と1ライン分のプリント(主走査)を交互に繰り返しながら1ページ分の画像をプリントする、所謂シリアルプリンタである。なお、後述するように、本発明はシリアルプリンタに限定されず、ラインプリンタにも適用することができる。
図8に示す動作シーケンスは制御部90の指令に基づいて実行される。シーケンスが開始されると、ステップS1で、ダイレクトセンサ700は制御部90の指令に基づいてシート上の読取エリア701(図7(a)参照)を撮像して1枚目の画像データを取得する。ステップS2では、送信した画像データを制御部90のメモリに記憶し、さらにメモリに記憶された画像データの中の所定領域のデータを切り出してテンプレートパターン710(図7(a)参照)としてメモリに記憶する。ステップS3では、搬送モータを駆動して搬送ローラ16を回転させ。シートSの搬送を開始する。制御部90は、搬送ローラ16の回転をロータリエンコーダ82で検出して、その検出結果に基づいてフィードバック駆動制御する。
ステップS4では、ダイレクトセンサ700が再度撮像して読取エリア701(図7(b)参照)の2枚目の画像データを取得してメモリに記憶する。ステップS1での1枚目の画像取得とステップS4での2枚目の画像取得とは時系列に撮像のタイミングが異なる。その間に、ステップS3によりシートSが僅かに移動しているので、取得する画像データもその移動ぶんだけずれた異なる部位のものとなる。
ステップS5では、ステップS2で切り出したテンプレートパターン710と最も類似する(最も相関度が高い)パターンが、ステップS4で取得した2枚目の画像データの中でどこにあるかをサーチする。このサーチ処理は所謂パターンマッチング処理と呼ばれる相関演算処理により行なう。パターンマッチング処理とは、画像データ同士の相関演算により、画像データの中から特定の画像パターンが存在する画像位置を検出する画像処理の手法である。相関演算には既知のArea−Basedマッチング法(ウィンドウマッチング)の処理手法を用いる。具体的な処理手法として、SAD法(差分絶対値和法)、SSD法(差分自乗和法)、NCC法(正規化相関法)、POC法(位相限定相関法)といったアルゴリズムが知られ、いずれかを採用する。そしてステップS6では、マッチングの結果からシートの移動距離を算出する。具体的には、1枚目の画像データに含まれるテンプレートパターン710の位置と、2枚目の画像データの中でテンプレートパターン710とマッチングした位置の差(画素数)を求める。そして、その差の画素数から2枚の画像データを取得したタイミング間におけるシート搬送量を算出する。図7(a)は1枚目の画像データを取得する様子、図7(b)は2枚目の画像データを取得する様子を示している。図7(a)におけるテンプレートパターン710は、図7(b)では元の位置702から距離Yだけずれた位置703に来ている。この距離Yが時系列の2つのタイミング間での実際のシート搬送量である。
ステップS7では、算出されたシート搬送量(Y)と、制御系の目標搬送距離(ステップ送りの所定ピッチ量)とを比較して差分を求める。目標搬送距離に対してシート搬送量Yが不足の場合(差分がある場合)は、搬送モータの駆動を継続して、ダイレクトセンサで検出されるシート搬送量が目標搬送距離に達するまで、上述のステップS4からステップS6までの処理を繰り返す。ステップS7でシート搬送量Yが目標搬送距離と一致したら、ステップS8に移行する。ステップS8では、搬送モータを停止させシート搬送を停止する。このように、制御部90はロータリエンコーダ82及びダイレクトセンサ700のそれぞれの検出に基づいて搬送ローラ16の駆動を制御するものである。
ステップS9では、キャリッジ41が主走査方向に移動しながらシートS上に1ライン分(1バンド分)のプリントを行なう。シリアルプリンタなので、以上の1ライン分の副走査と主走査を繰返す。ステップS10では、1ページ分の画像プリントが終了したかを判断する。未終了の場合はステップS1に戻って以上の処理を繰り返す。なお、このとき、ステップS1での画像データ取得は、以前にステップS4ですでに取得済みの2枚目の画像データをそのまま流用してもよい。1ページ分の画像情報のプリントが終了したら、ステップS11に抜けて本シーケンスを終了する。
次に、軸方向における搬送ローラの部分的な偏芯状態の変化の影響を小さくする、搬送機構のキャリブレーション動作について説明する。基本概念は次のとおりである。ダイレクトセンサ700は、ローラ軸方向に沿った方向に検出位置が可変であり、複数の異なる箇所(本例では4箇所)に選択的に位置させる。最初に、測定用のロールシート又はカットシートを搬送して、異なる4箇所のそれぞれにおいて、シート搬送量(ダイレクトセンサ700の出力)とローラ角度(ロータリエンコーダ82の出力)の関係を測定する。これにより、それぞれの箇所でのローラ偏芯の影響の大きさに関する情報、すなわちローラ軸方向に沿ったローラの部分的な偏芯に関する情報を得る。この情報に基いて、搬送誤差を最も小さくするためには、4箇所の内どの位置でシート搬送量を検出して搬送制御を行うのがよいかを判断して選択する。そして、選択した位置にダイレクトセンサ700を移動させて、その位置においてシート搬送量を検出しながら搬送制御を行う。以下、より詳細に説明する。
図9は搬送ローラ16の断面図である。g1は偏芯のない理想的な原点位置であり、偏芯により原点位置がずれたもの原点がg2である。原点位置g1に対して、0°、90°、180°、270°の角度を定義する。ローラの半径はRとする。ローラの偏芯状態は、原点g1と原点g2までの距離である偏芯量eと、原点g1とg2を結ぶ線と0°線とのの角度fで表される。すなわち、角度fの偏芯方向に偏芯量eだけ偏芯している。偏芯状態に応じて、搬送ローラを所定角度回転させたときの搬送ローラとシートが接する部分での周速度が変化するので、搬送量に差が生じる。
図10は偏芯状態に応じた搬送量の変化を示すグラフ図である。縦軸は搬送ローラの22.5°回転毎(=1/16回転ごと)のシート搬送量、横軸はローラ角度である。図10のL1、L2、・・・、L16は偏芯が無い理想形態でのローラ角度と搬送距離の関係を表している。L1はg1を原点として搬送ローラ16を0°から22.5°まで回転させたときの搬送量、L2はローラを22.5°から45°まで回転させたときの搬送量である。以下同様に、L16はローラを337.5°から360°まで回転させたときの搬送量である。搬送ローラに偏芯が無いのでローラ回転角度ごとの搬送量は一定値となる。これに対して、図10のk1、k2、・・・、k16は搬送ローラ16に偏芯がある場合のローラ角度と搬送距離の関係を表している。k1はg1を原点として搬送ローラ16を0°から22.5°回転させたときの搬送量、k2は22.5°から45°回転させたときの搬送量、・・・・・・、k16はローラを337.5°から360°回転させたときの搬送量である。このように、搬送ローラ16に偏芯がある場合は、ローラ角度と搬送量の関係は振幅Bと位相Fを有する曲線となる。偏芯量が大きいほど振幅Bの値が大きくなり、偏芯量が小さい箇所との搬送量の差分が大きくなる。ローラ軸方向に沿った複数位置(本例では4箇所)について、それぞれ上述の方法で振幅Bと位相Fを検出して制御部90のメモリに記憶し、その値を比較することにより、4箇所のうち偏芯の影響の大きい箇所を知ることができる。搬送ローラ16の回転角度はロータリエンコーダ82を使用して検出し、シート搬送量はダイレクトセンサ700を使用して検出する。なお、22.5°回転毎(=1/16回転ごと)という数字は一例であって、この限りではない。
図11は、ローラ軸方向(主走査方向)における4つの検出位置711、712、713、714にダイレクトセンサ700が位置する様子を示す。図11(a)の検出位置711はシート右端、図11(b)の検出位置712はシート中央右、図11(c)の検出位置713はシート中央左、図11(d)の検出位置714はシート左端である。ここでは、シートSはA2サイズの横幅を持つシートとする。
制御部90は搬送機構のキャリブレーション動作を次のように行なう。最初に、測定用のシートを搬送ながら、検出位置711でのローラ角度と搬送量の関係を測定する。キャリッジモータを駆動させてキャリッジ41に搭載されたダイレクトセンサ700の検出位置が検出位置711となるように移動させる(図11(a))。この時の主走査方向の位置はキャリッジエンコーダ48で検出される。搬送モータを駆動して搬送ローラ16を回転させる。そして図10に示したように、ロータリエンコーダ82の原点を基準として、22.5°回転毎(=1/16回転ごと)のシート搬送量をダイレクトセンサ700を使用してそれぞれ検出する。得られたローラ角度22.5°毎の搬送量データから、図10に示したように、振幅B及び位相Fを算出する。同様に、検出位置712、713、714についても、それぞれダイレクトセンサ700を移動させて測定動作を行い、振幅B及び位相Fを算出する。そしてその結果を制御部90のメモリに記憶する。検出位置711から714それぞれで求めた振幅B及び位相Fの数値例を表1に示す。
図12は、表1の数値(振幅Bと位相F)を、XY軸座標に変換し、各検出位置をマークしたグラフ図である。表1と図12から搬送ローラの複数箇所の偏芯状況を比較することができる。本例の場合には、検出位置714の振幅Bが他の3箇所と比較して最も大きので、検出位置714のローラ偏芯量が他の3箇所に較べて大きいことが分かる。
シート搬送動作を行った時に各検出位置で生じる搬送量誤差の大きさを比較する。まず、検出位置711にダイレクトセンサ700を位置させて、図8に示したシーケンスでシート搬送動作を行う。検出位置711での搬送量を基準ととして、検出位置711での搬送量の振幅及び位相を0とする。図13(a)のXY座標のグラフにおいて、検出位置711の結果が原点0に配置されるよう全体を平行移動させる。平行移動させた結果を図13(b)に示す。原点0(検出位置711)から各検出位置への直線の距離が大きい箇所ほど、検出位置711で検出される搬送量に対して搬送量の相違(誤差)が大きいことになる。検出位置711を基準としたときの各検出位置の搬送量誤差の大きさを計算した結果を表2に示す。本例では、検出位置714の搬送量誤差が最も大きくなる(誤差最大値0.39mm)ことが分かる。
制御部は同様の手順で、検出位置712、713、714を基準にした場合についてもそれぞれ計算を行う。そしてその結果を制御部90のメモリに記憶する。図14のグラフは検出位置713を基準(原点0)にした場合の例を示す。そして、各検出位置を測定基準とした場合に、搬送量誤差が最も大きくなる箇所をそれぞれ求める。本例では、検出位置712を基準とした場合は検出位置714が、検出位置713を基準の場合は検出位置711が、検出位置714を基準とした場合は検出位置711が最も搬送量誤差が大きくなる。これらの結果をまとめたものを表3に示す。
検出位置713を基準としたときに搬送量誤差が4つの中で最も小さくなっている(誤差最大値0.21mm)ことが表3から分かる。検出位置713を基準とすると、全体として搬送量誤差がもっとも小さくなって、4つの中で最も好ましい搬送状態が得ることができる。
このように制御部90は、主走査方向に沿った複数の箇所において、それぞれ対応する搬送ローラの位置での搬送ローラによるシート搬送量に関する情報を、搬送ローラの回転角度に対応付けてメモリに記憶する。そして制御部90は、それを元に表3のデータテーブルを作成して、このデータテーブルに基づいて検出位置713を選択して設定する。プリントを行なう際のシート搬送時には、検出位置713でダイレクトセンサ700による検出を行なうように、設定した検出位置713にダイレクトセンサ700を移動させる。図8に示すシーケンスによってシリアルプリント方式でプリントを行なう。
少なくとも製品出荷前に上述のキャリブレーション動作を行なって、その結果は制御部の不揮発性のメモリに記憶しておく。なお、大量のシート搬送を行なってプリンタの使用時間が長くなると、シートと搬送ローラの間の摩擦係数が変化してローラ回転角度と搬送量の関係が変化する場合がある。したがって、プリンタの累積使用時間、累積プリント枚数、搬送ローラの累積回転時間などの、搬送ローラの劣化を示すパラメータをもとに、定期的に上述のキャリブレーション動作を行なうことが好ましい。より高い品質を維持したいのであれば、ユーザがロールシートを交換するごとにキャリブレーション動作を実行するようにしてもよい。
検出位置は4箇所に限らず、シートサイズ(シート幅)に応じた2以上の複数箇所を設定することが好ましい。例えば、図15は、A2よりも小さなA3サイズのシートを用いた場合に検出位置を3箇所にした場合の例を示す。図15(a)〜(c)はダイレクトセンサ700の検出位置が、検出位置711〜713のそれぞれの場合を示す。制御部90は、認識しているシート幅及びキャリブレーション動作でメモリに記憶されたシート搬送量に関する情報に元に適切な検出位置の数を設定する。キャリブレーション動作では、使用が想定されるシートサイズごとに、使用する検出位置で測定を行なってメモリに記憶させることが好ましい。シート幅は、ユーザーがプリントドライバに設定したシートサイズから認識したり、シート幅センサ20を用いて自動的に認識することができる。
なお、以上の実施形態はシリアルプリンタの例であるが、本発明はラインプリンタに適用することもできる。ラインプリンタはシートが移動する副走査方向と交差する方向を含む方向に沿って複数ノズルが形成された長尺のラインヘッドを用いる。そして、シートを連続的に搬送しながらラインヘッドのノズルから同時又はほぼ同時にインクを吐出して高速にプリントする。
また、以上の実施形態ではダイレクトセンサ700はキャリッジ41に搭載され、キャリッジ41によって主走査方向に移動する構成としたが、本発明はこの限りではない。なんらかの手段によってシート搬送方向(第1方向)と交差する方向(第2方向)で、ダイレクトセンサの検出位置を可変とするものであればよい。例えば、ダイレクトセンサがキャリッジとは独立して主走査方向に移動する構成としてもよい。あるいは、複数個の同一構造のダイレクトセンサを複数の検出位置にそれぞれ固定配置して選択して使用するようにしてもよい。あるいは、ダイレクトセンサに長尺のラインセンサを使用して、センサの中で画像を取り込む範囲を可変にしてもよい。この構成はラインプリンタの場合にとくに有効である。
また、以上の実施形態では、シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサとして、局所的にシートを撮像して画像データを取得し画像処理によって前記シートの移動情報を取得するダイレクトセンサを用いたが、本発明はこの限りではない。例えば、シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサとして、局所的にシートに光を照射して移動情報を計測するレーザー等の光を用いたドップラ速度計を用いることもできる。ドップラ速度計の構成や測定原理は周知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
以上説明した本実施形態によれば、ダイレクトセンサの検出位置を可変とすることで、搬送ローラの部分的な偏芯状態の変化の影響を小さくすることができ、プリント品質を従来以上に向上させることができる。また、種々のシートサイズに対応して精度のよいプリントを行なうことができる。経時変化で搬送ローラが変化しても、定期的にキャリブレーション動作を実行することで搬送精度を高く保つことがき、長期間に渡って安定したプリント品質が得られる。
16 搬送ローラ
20 シート幅センサ
33 プラテン
41 キャリッジ
42 プリントヘッド
90 制御部
700 ダイレクトセンサ
20 シート幅センサ
33 プラテン
41 キャリッジ
42 プリントヘッド
90 制御部
700 ダイレクトセンサ
Claims (15)
- ローラを含む機構によってシートを第1方向に搬送する搬送機構と、
前記シートの局所的な移動情報を直接検出するセンサと、
前記第1方向と交差する第2方向において、前記センサの検出位置を可変とする手段と、
前記第2方向に沿った前記ローラの部分的な偏芯に関する情報に基づいて設定された前記第2方向における前記検出位置において、前記センサによって前記シートの移動情報を検出するように制御する制御部を有することを特徴とするシート搬送装置。 - 前記制御部は、前記センサで検出した結果に基づいて前記搬送ローラの駆動を制御することを特徴とする、請求項1記載のシート搬送装置。
- 前記制御部は、前記第2方向に沿った複数の箇所において、前記センサの検出結果を元に前記箇所に対応する位置での前記ローラによるシート搬送量に関する情報を、前記ローラの回転角度に対応付けて取得し、前記取得した情報を元に前記第2方向における前記検出位置を設定することを特徴とする、請求項1又は2記載のシート搬送装置。
- 前記制御部は、前記複数の箇所のうち、全体として搬送量誤差がもっとも小さくなる箇所を選択して前記検出位置を設定することを特徴とする、請求項3記載のシート搬送装置。
- 前記回転角度を検出するエンコーダを有し、前記制御部は前記エンコーダと前記センサのそれぞれの検出の差分に基づいて前記ローラの駆動を制御することを特徴とする、請求項3又は4記載のシート搬送装置。
- 前記センサは、局所的にシートを撮像して画像データを取得し画像処理によって前記シートの移動情報を取得するダイレクトセンサであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか記載のシート搬送装置。
- 前記センサは、前記第1方向へのシート搬送に伴って時系列に取得した複数の画像データ同士の相関演算によって、前記シートの移動量又は移動速度を取得することを特徴とする、請求項6記載のシート搬送装置。
- 前記センサは、局所的にシートに光を照射して移動情報を計測するドップラ速度計であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか記載のシート搬送装置。
- 前記制御部は、使用するシートの幅の情報も用いて前記第2方向における前記検出位置を設定することを特徴とする、請求項1から8のいずれか記載のシート搬送装置。
- 前記シートの幅を自動的に検出する検出手段を有することを特徴とする、請求項9記載のシート搬送装置。
- 請求項1から10のいずれか記載のシート搬送装置と、
搬送されるシートに対してプリントを行なうプリント部と
を有することを特徴とするプリンタ。 - 前記プリント部はプリントヘッドを搭載して前記第2方向に往復移動するキャリッジを有すること特徴とする、請求項11記載のプリンタ。
- 前記センサは前記キャリッジに搭載され、キャリッジの移動に応じて前記検出位置が変化することを特徴とする、請求項12記載のプリンタ。
- 前記プリント部は前記第2方向を含む方向に沿って複数のノズルが形成された長尺のラインヘッドを有し、前記第1方向に搬送されるシートに前記ラインヘッドでプリントを行なうこと特徴とする、請求項11記載のプリンタ。
- 前記プリント部は、インクジェット方式によってインクを吐出させてプリントを行なうことを特徴とする、請求項11から14のいずれか記載のプリンタ。
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JP2009101050A JP2010247468A (ja) | 2009-04-17 | 2009-04-17 | シート搬送装置及びプリンタ |
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